• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01L
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H01L
管理番号 1332444
審判番号 訂正2017-390051  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-06-14 
確定日 2017-08-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5120680号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5120680号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5120680号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての手続の経緯は、以下のとおりである。
平成24年 3月23日 特許出願
(特許法第41条に基づく優先権主張(優先日:平成16年3月12日及び同年10月28日、優先権主張の基礎となる出願:特願2004-71186号及び特願2004-313350号)を伴い、平成17年3月10日を国際出願日とする出願(特願2006-511062号)の一部を、平成19年8月10日に、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2007-210197号、以下「子出願」という。)とし、子出願の一部を、平成20年9月17日に、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2008-238154号、以下「孫出願」という。)とし、孫出願の一部を、平成23年10月14日に、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2011-226907号、以下「ひ孫出願」という。)とし、ひ孫出願の一部を、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2012-67089号)とした。)
平成24年 4月20日 審査請求
平成24年 9月25日 特許査定
平成24年11月 2日 特許の設定登録
平成29年 6月14日 本件訂正審判請求

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 本件訂正の内容
平成29年6月14日に提出された審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)の記載より、本件審判請求書で請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に「基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、」とあるのを、「基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した酸素欠損を有する多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、」に訂正し、請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する、というものであると認められる。(当審注.訂正箇所に下線を付した。)
そして、本件特許の特許請求の範囲は、本件訂正の前後で以下のとおりである。
・本件訂正前
「【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。」
・本件訂正後
「【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した酸素欠損を有する多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。」

第4 当審の判断
1 特許法第126条第1項ただし書(訂正の目的)について
(1)特許法第126条第1項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)について
本件特許明細書の段落【0017】に「酸素欠損や格子欠陥がほとんど無い理想的な単結晶MgO」と記載されているように、トンネル障壁層の製造に際しては、理想的な単結晶でさえ「酸素欠損」を完全に無い状態とはできず、少なからず「酸素欠損」が含まれてしまうものであるところ、単結晶より欠陥を多く含み得る多結晶においては、トンネル障壁層が「酸素欠損」を有することが不可避であることは技術常識であると認められる。
そうすると、酸素欠損を全く有しない「多結晶酸化マグネシウム層」を形成することは不可能であり、少なくとも結晶粒界及び界面においては、ある程度の酸素欠損が生じるものと認められるから、本件訂正前の請求項1及び2に係る発明における「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損を有する」ものであることは明らかである。
よって、本件訂正前の請求項1に係る発明と本件訂正後の請求項1に係る発明は実質的に同一であり、また、本件訂正前の請求項2に係る発明と本件訂正後の請求項2に係る発明は実質的に同一であるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものとはいえない。
(2)特許法第126条第1項ただし書第2号(誤記又は誤訳の訂正)及び第4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)について
本件訂正は、請求項1に「酸素欠損を有する」との記載を新たに加入するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項(誤記又は誤訳の訂正)を目的とするものではないことは明らかであり、また、同第4号に掲げる事項(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものではないことも明らかである。
(3)特許法第126条第1項ただし書第3号(明瞭でない記載の釈明)について
本件訂正前の請求項1には「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損を有する」とは記載されておらず、本件訂正前の請求項1の記載のみからでは、「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損を有する」のか否かが明確でない。
他方、上記(1)のとおり、当該技術分野における技術常識を参酌すれば、本件訂正前の請求項1に記載された「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損を有する」ものであることは明らかである。
このように、本件訂正は、「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損を有する」との確認的な記載を加入することによって、請求項1の記載を明確にすることを目的とするものであるといえるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものであると認める。
(4)特許法第126条第1項ただし書(訂正の目的)についてのまとめ
上記(3)のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものであるから、同項ただし書の規定に適合する。

2 特許法第126条第5項(新規事項)について
(1)本件特許の願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、本件特許に係る発明である「磁気抵抗素子」について、以下の記載がある。
ア「【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。」
イ「【0022】
・・・
図1は、本実施の形態によるTMR素子構造(図1(B))と、強磁性体金属であるFe(001)のエネルギーバンド構造を示す図であり、波数空間の[001]方向に対するE-E_(F)の関係を示す図(図1(A))である。図1(B)に示すように、本実施の形態によるTMR素子構造は、第1のFe(001)層1と、第2のFe(001)層5と、これらの間に挟まれた単結晶MgO_(x)(001)層あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgO_(x)(0<x<1)層3と、を有して構成されている。
・・・
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態による磁気抵抗素子及びその製造方法について図面を参照しつつ説明を行う。図2(A)から図2(D)までは、本発明の実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)構造を有する磁気抵抗素子(以下、「Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子」と称する。)の製造工程を模式的に示す図である。Fe(001)は、BCC構造を有する強磁性体である。まず、単結晶MgO(001)基板11を準備し、MBE法(分子線エピタキシー法)により、単結晶MgO(001)基板11の表面のモフォロジーを改善するため、MgO(001)シード層15を成長する。連続して、図1(B)に示すように、50nm厚のエピタキシャルFe(001)下部電極(第1電極)17をMgO(001)シード層15上に室温で成長し、次いで、超高真空下(2×10^(-8)Pa)において、350℃でアニールを行う。
・・・
【0037】
次に、本発明の実施の形態の変形例による磁気抵抗素子について図面を参照しつつ説明を行う。図11は、本発明の実施の形態の変形例によるTMR素子の構造を示す図であり、図1(B)に対応する図である。図11に示すように、本実施の形態による磁気抵抗素子は、上記実施の形態による磁気抵抗素子と同様に、単結晶MgO_(x)(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した酸素欠損多結晶MgO_(x)(0<x<1)層503の両側に設けられる電極として、アモルファス強磁性合金、例えばCoFeB層501、505を用いた点に特徴がある。アモルファス強磁性合金は、例えば蒸着法或いはスパッタリング法を用いて形成可能である。得られた特性等は第1の実施の形態の場合とほぼ同様である。
【0038】
尚、アモルファス磁性合金については、例えば、FeCoB、FeCoBSi、FeCoBP、FeZr、CoZrなどを用いることもできる。また、素子を作製した後にアニール処理を施すと電極層のアモルファス磁性合金が部分的あるいは全体的に結晶化する場合があるが、これによってMR比が大きく劣化することはない。したがって、このように結晶化したアモルファス磁性合金を電極層に用いても構わない。」
ウ 【図1】

エ 【図11】


(2)上記(1)アないしエの本件特許明細書等の記載より、本件特許明細書等には「基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。」における「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損多結晶MgO_(x)(0<x<1)層」であることが記載されていると認められ、当該「酸素欠損多結晶MgO_(x)(0<x<1)層」は「酸素欠損を有する多結晶酸化マグネシウム層」であるといえる。
したがって、本件特許明細書等には、本件訂正後の請求項1に記載された事項が記載されていると認められる。
また、上記(1)アないしエの本件特許明細書等の記載より、本件特許明細書等には、「基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。」における「磁性合金」が「FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれか」であり、かつ、「多結晶酸化マグネシウム層」が「酸素欠損多結晶MgO_(x)(0<x<1)層」であることが記載されていると認められ、当該「酸素欠損多結晶MgO_(x)(0<x<1)層」は、「酸素欠損を有する多結晶酸化マグネシウム層」であるといえる。
したがって、本件特許明細書等には、本件訂正後の請求項2に記載された事項が記載されていると認められる。
(3)以上より、本件訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3 特許法第126条第6項(拡張・変更)について
上記1(1)のとおり、本件訂正前の請求項1に係る発明と、本件訂正後の請求項1に係る発明は実質的に同一であり、また、本件訂正前の請求項2に係る発明と、本件訂正後の請求項2に係る発明は実質的に同一であるから、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

4 特許法第126条第7項(独立特許要件)について
上記1(1)及び(2)のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、特許法第126条第7項の規定に適合するか否かについて検討する必要はない。

第5 結言
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した酸素欠損を有する多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-08-01 
結審通知日 2017-08-04 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2012-67089(P2012-67089)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H01L)
P 1 41・ 841- Y (H01L)
P 1 41・ 855- Y (H01L)
P 1 41・ 851- Y (H01L)
P 1 41・ 854- Y (H01L)
P 1 41・ 853- Y (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 羽鳥 友哉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
加藤 浩一
登録日 2012-11-02 
登録番号 特許第5120680号(P5120680)
発明の名称 磁気抵抗素子および磁気抵抗素子の製造方法  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 高橋 雄一郎  
代理人 望月 尚子  
代理人 望月 尚子  
代理人 望月 尚子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ