• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する C12N
管理番号 1332447
審判番号 訂正2017-390031  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-04-28 
確定日 2017-08-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4313531号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4313531号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕、〔15-18〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4313531号に係る出願は、平成12年9月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年9月14日、オーストリア)を国際出願日とする出願であり、平成21年5月22日に設定登録され、平成29年4月28日に本件訂正審判の請求がなされたものである。


第2 請求の要旨
本件訂正審判は、本件特許の特許請求の範囲を、審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?13、請求項15?18について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は、下記1.および2.のとおりである。

1.訂正事項1
請求項1における「抗体または抗体誘導体」を「抗体または抗体誘導体(ただし、抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製を除く)」と訂正する。

2.訂正事項2
請求項15における「請求項1に記載の抗体または抗体誘導体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的調製物」を「第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体であって、凝血促進活性を増大させる、抗体または抗体誘導体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的調製物」と訂正する。


第3 当審の判断
1.一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?13について、請求項2?13は請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?13に対応する訂正後の請求項1?13は、特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項2に係る訂正前の請求項15?18について、請求項16?18は請求項15を直接的または間接的に引用するものであるから、訂正事項2によって記載が訂正される請求項15に連動して訂正されるものである。そして、審判請求書において「この訂正が認められる場合には、請求項15?18は、請求項1とは別途訂正することを求める」と、別の訂正単位とする求めを行っている。
したがって、訂正前の請求項15?18に対応する訂正後の請求項15?18は、訂正事項2が認められる前提で特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。

2.訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1から「抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製」を除くものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
審判請求書の添付書類(イ)(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製の製品説明書および全訳文)、および添付書類(ウ)(抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製の製品説明書および全訳文)の記載から、訂正事項1において「除く」とされる2つの抗体(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製)は、いずれも抗第IX因子抗体であると認められる。
そして、審判請求人より、平成29年7月10日付け上申書に添付して甲1?5号証が提出されたところ、審判請求人を原告とする、本件特許権に基づく特許権侵害差止等請求事件(平成28年(ワ)第11475号)において、被告である中外製薬株式会社が提出した証拠(甲1の1、甲1の2、甲2の1、甲2の2)の記載から、訂正事項1において「除く」とされる上記2つの抗体は、少なくとも公然知られていたものまたは公然実施をされたものであると一応認められる。そして、同事件において、同被告が作成して提出した「試験報告書(平成29年02月10日作成)」(甲4)には、この2つの抗体が「第VIII因子補因子活性を示す」こと、すなわち、本件の請求項1に記載される「凝血促進活性を増大させる」ことを示す実験結果が記載されていると認められる。
そうすると、この2つの抗体は、訂正前の請求項1に特定される要件を満足する、公然知られた発明または公然実施された発明に該当するものと一応認めることができる。
したがって、訂正事項1は、請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等を失う恐れがある場合に、訂正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該重なりのみを除く訂正に該当すると認められるから、訂正事項1は、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記(1)に記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を減縮するものであり、上記(2)に記載したとおり、新規事項を追加するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。

(4)独立特許要件について
上記(2)に記載したとおり、訂正事項1により、訂正前の請求項1に特定される要件を満足する2つの抗体(抗体クローンAHIX - 5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX - 1:SIGMA - ALDRICH社製)が、たとえ公然知られた発明又は公然実施をされた発明に該当するものであるとしても、これら2つの抗体が除かれることとなる訂正後の請求項1は新規性を有するものである。
また、本件審判請求書の添付書類(イ)の「用途」の項には、「ウエスタンブロット-可、ELISA-可、放射免疫測定(RIR)-可、精製のための使用-可」と記載されており、添付書類(ウ)の「用法注意及び免責の項」には、「本製品は研究開発の用途のみに使用されるものであり、治療薬、家庭用、その他用途での使用は不可。」と記載されているから、抗体クローンAHIX - 5041(Haematologic Technologies社製)、抗体クローンHIX - 1(SIGMA - ALDRICH社製)は、いずれも試験・研究用の試薬として公然知られていた又は公然実施をされていたと認められるとしても、これら2つの抗体が「凝血促進活性を増大させる」ことまでが知られていたと認めるにたる証拠は示されていない。
さらに、本件の優先日当時に、「第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体」が「凝血促進活性を増大させる」ことが知られていたことを示す証拠もない。
したがって、これら2つの抗体に基づいて「凝血促進活性を増大させる」抗体を作成することは、当業者にとって容易想到ではなく、訂正後の請求項1に係る発明は進歩性を有するものである。
また、訂正後の請求項1に係る発明に、他に特許を受けることができない理由があるとは認められない。
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第126条第7項に適合するものである。

3.訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項15が請求項1を引用する引用形式で記載されていたものから、引用する請求項1の記載事項をそのまま記載することで、請求項15を独立形式の記載とする訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項2は、上記(1)に記載したとおり、請求項間の引用関係を解消するものであるから、何ら新たな技術的事項を導入するものではなく、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項2は、上記(1)に記載したとおり、請求項間の引用関係を解消するものであり、上記(2)に記載したとおり、新規事項を追加するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、第126条第6項に適合するものである。


第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号および第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体であって、凝血促進活性を増大させる、抗体または抗体誘導体(ただし、抗体クローンAHIX‐5041:Haematologic Technologies社製、および抗体クローンHIX‐1:SIGMA‐ALDRICH社製を除く)。
【請求項2】
前記抗体または抗体誘導体が、FVIIIインヒビターの存在下で凝血促進活性を増大させる、請求項1に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項3】
前記抗体が、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体およびIgE抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体または抗体誘導体であって、ここで、該抗体または抗体誘導体は、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、ダイアボディー、およびそれらのダイマー、オリゴマー、またはマルチマーからなる群から選択される、抗体または抗体誘導体。
【請求項5】
請求項1に記載の抗体または抗体誘導体であって、ここで、該抗体または抗体誘導体の可変領域が、配列番号82に示されるアミノ酸1?357およびアミノ酸403?726を含む、抗体または抗体誘導体。
【請求項6】
前記抗体誘導体が、人工的なリンカー配列を含む、請求項5に記載の抗体誘導体。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体または抗体誘導体であって、ここで、該抗体または抗体誘導体の可変領域が、配列番号84に示されるアミノ酸1?363およびアミノ酸409?747を含む、抗体または抗体誘導体。
【請求項8】
前記抗体誘導体が、人工的なリンカー配列を含む、請求項7に記載の抗体誘導体。
【請求項9】
請求項1に記載の抗体または抗体誘導体であって、ここで、該抗体または抗体誘導体の可変領域が、配列番号86に示されるアミノ酸1?366およびアミノ酸412?747を含む、抗体または抗体誘導体。
【請求項10】
前記抗体誘導体が、人工的なリンカー配列を含む、請求項9に記載の抗体誘導体。
【請求項11】
請求項1に記載の、抗体または抗体誘導体を発現する、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項12】
請求項11に記載のハイブリドーマ細胞株であって、ここで、該細胞株が、#198/AC1(ECACC No.99121619)、#198/A1(ECACC No.99090924)、#198/B1(ECACC No.99090925)、および、#198/BB1(ECACC No.99090926)からなる群から選択される、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項13】
請求項11に記載のハイブリドーマ細胞株によって発現される、請求項1に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項14】
DNA分子であって、該DNA分子が、配列番号85に示される抗体または抗体誘導体をコードする、DNA分子。
【請求項15】
第IX因子または第IXa因子に対する抗体または抗体誘導体であって、凝血促進活性を増大させる、抗体または抗体誘導体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的調製物。
【請求項16】
第IXaα因子および/または第IXaβ因子をさらに含む、請求項15に記載の調製物。
【請求項17】
血液凝固障害に罹患した患者を処置するための、請求項15に記載の調製物。
【請求項18】
請求項17に記載の調製物であって、ここで、前記血液凝固障害が、血友病Aおよび出血性素質を含む群から選択される、調製物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-07-28 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2001-523763(P2001-523763)
審決分類 P 1 41・ 832- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 騎見高深草 亜子長谷川 茜  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 山本 匡子
高堀 栄二
登録日 2009-05-22 
登録番号 特許第4313531号(P4313531)
発明の名称 第IX因子/第IXa因子の抗体および抗体誘導体  
代理人 加納 正裕  
代理人 落合 馨  
代理人 風間 智裕  
代理人 阿部 隆徳  
代理人 落合 馨  
代理人 加納 正裕  
代理人 阿部 隆徳  
代理人 風間 智裕  
代理人 壽 勇  
代理人 落合 馨  
代理人 壽 勇  
代理人 壽 勇  
代理人 阿部 隆徳  
代理人 風間 智裕  
代理人 加納 正裕  
代理人 木下 倫子  
代理人 木下 倫子  
代理人 木下 倫子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ