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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1332529
審判番号 不服2016-14115  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-21 
確定日 2017-10-03 
事件の表示 特願2011-265943号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年6月13日出願公開、特開2013-116702号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年12月5日の出願であって、平成27年10月9日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日に意見書が提出され、平成28年6月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年9月21日に拒絶査定不服審判が請求がされると同時に手続補正がされ、その後当審において、平成29年5月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月24日に意見書が提出されたものである。

第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1?4に係る発明は、下記の引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bに記載されている事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2001-138720号公報
B.特開2005-29017号公報

第3.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1、3、4に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-29017号公報(原査定時の引用文献B)
2.特開2001-138720号公報(原査定時の引用文献A)

第4.本願発明
本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成28年9月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりの発明であると認められる。なお、本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明である。

「【請求項1】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードコアの回りで内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、タイヤの外壁面を構成するサイドウォールゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードコアのタイヤ径方向外端を基準とした前記ビードフィラーの断面高さは、タイヤ断面高さの50?70%であり、
前記ビードフィラーの厚みは、前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ20mmの位置で1.7mm以下であって、かつ前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ向かって等厚部を含むことなく徐々に減少しており、
前記カーカスプライの巻上げ端は、前記ビードフィラーの外周端よりもタイヤ径方向内側で終端していることを特徴とする空気入りタイヤ。」

第5.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下同様。)
1-1.「【請求項1】
ビード部に、ビードコアの外面からタイヤ半径方向外側に先細状でのびるビードエーペックスが設けられた空気入りタイヤであって、
前記ビードエーペックスは、ゴム硬さが75?95度のゴム組成物からなり、かつ正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の基準状態におけるタイヤ子午線断面において、
前記ビードエーペックスは、そのタイヤ半径方向の外端と内端とを結ぶ直線Kの長さが40mm以上であり、
かつビードコアのタイヤ半径方向の内側面からタイヤ半径方向外側に15mmを隔てた位置Yでのビードエーペックスのタイヤ軸方向の厚さbが、該ビードエーペックスのビードコアに面した基端部のタイヤ軸方向の厚さaの35?50%であり、
しかも前記ビードエーペックスは前記位置Yから前記外端まで厚さが滑らかに漸減することを特徴とする空気入りタイヤ。」

1-2.「【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ビード部とリムフランジとが接触する領域付近のビードエーペックスの厚さを適切に限定することを基本として、乗り心地、低周波数域でのノイズ性能、操縦安定性などをバランス良く向上しうる空気入りタイヤ、とりわけ乗用車用空気入りタイヤを提供することを目的としている。」

1-3.「【0012】
またカーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aからのびて前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを有する。折返し部6bは、その端部をタイヤ軸方向最外側の総巾位置Mよりもタイヤ半径方向外側に位置させている。このようなハイターンアップ構造のカーカスプライ6Aは、ビード部4からサイドウォール部3にかけての横剛性の向上に役立つ。またカーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5の外面からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックス8が配されている。このビードエーペックスを用いてビード部4の剛性が調節される。」

1-4.「【0018】
本発明では、前記領域Fの上限位置をビードコア5の内面5iを基準とし、そこからタイヤ半径方向外側に15mmの距離Sを隔てる位置Yとして定める。そして、この位置Yでのビードエーペックス8のタイヤ軸方向の厚さbを基端部8Aのタイヤ軸方向の厚さaの35?50%に限定している。ビードエーペックス8は、基端部8Aから前記位置Yまで厚さが滑らか漸減している。このように、位置Yでのビードエーペックス8の厚さbを限定することにより、操縦安定性を維持しつつ乗り心地及び低周波数域でのノイズ性能の悪化を防止できる。」

1-5.【図2】には、ビード部4に埋設されたビードコア5、タイヤの外壁面を構成するサイドウォールゴムが示されている。

以上によれば、引用文献1には、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ビード部4に埋設されたビードコア5と、前記ビードコア5のタイヤ径方向外側に配置されたビードエーペックス8と、前記ビードコア5の回りで内側から外側に巻き上げられたカーカスプライ6Aと、タイヤの外壁面を構成するサイドウォールゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードエーペックス8は、そのタイヤ半径方向の外端8tと内端8eとを結ぶ直線Kの長さが40mm以上であり、
ビードエーペックス8の厚さは、前記ビードコア5の内面5iを基準とし、そこからタイヤ径方向外側に15mmの距離Sを隔てる位置Yでの厚さbが基端部8Aの厚さaの35?50%であって、かつ前記基端部8Aから外端まで厚さが滑らかに漸減しており、
前記カーカスプライ6Aの巻上げ端は、タイヤ軸方向最外側の総巾位置Mよりもタイヤ半径方向外側に位置している空気入りタイヤ。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
2-1.「【請求項1】ビード部に配された一対のビードコア間をトロイド状に跨る本体部の両端に前記ビードコアの廻りをタイヤ軸方向内側から外側に向けて折り返す折返し部を設けたカーカスプライを含むカーカスを具えた空気入りタイヤであって、
前記ビード部に、前記ビードコアの外面からタイヤ半径方向外側にのびるビード補強ゴム層を配するとともに、前記ビード補強ゴム層は、ゴム基材100重量部中に10?30重量部の短繊維を含有した短繊維補強ゴム材からなり、
しかも該ビード補強ゴム層は、前記ビードコアから小高さでのびかつタイヤ半径方向外側に向けて厚さが漸減する減厚部と、この減厚部に連なってタイヤ半径方向外側にのびかつ厚さを実質的に一定かつ1?2mmとした等厚部とを含むとともに、
このビード補強ゴム層の前記ビードコアの外面からの高さHaをタイヤ断面高さHの0.2?0.5倍としたことを特徴とする空気入りタイヤ。」

2-2.「【0004】発明者らはさらに研究を重ねた結果、図8に示す如く、空気入りタイヤのビード部bに埋設されたビードコアcの外面から厚さを徐々に減じた断面略三角形状をなしてのびるビードエーペックスゴムeに着目した。そして、このビードエーペックスゴムeのボリュームを減じて小型化すると転がり抵抗を低減しうることを突き止めたが、単にボリュームを減じて小型化するだけでは、操縦安定性を犠牲にしてしまうなどの不具合があった。
【0005】本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ビード部に、ビードコアの外面からタイヤ半径方向外側にのびるビード補強ゴム層を配するとともに、このビード補強ゴム層を、短繊維を含有した短繊維補強ゴム材から形成し、かつビードコアから小高さでのびかつタイヤ半径方向外側に向けて厚さが漸減する減厚部と、この減厚部に連なってタイヤ半径方向外側にのびかつ厚さを実質的に一定かつ1?2mmとした等厚部とを含んで構成することを基本として、操縦安定性などを犠牲にすることなく転がり抵抗を低減しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。」

2-3.「【0013】前記カーカスプライ6Aは、例えばカーカスコードをタイヤ赤道Cに対して75?90度の範囲の角度で傾けて配置される。またカーカスコードとしては、本例の乗用車用タイヤの場合、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミドなどの有機繊維コードが好ましく採用できる。またカーカスプライ6Aの前記折返し部6bの半径方向外端である折返し端X1は、図2に示すように、ビードベースラインBLから、例えばタイヤ断面高さHの0.20倍以下、好ましくは0.12?0.15倍の高さHcとした、いわゆるローターンナップ(LTU)構造とするのが転がり抵抗を低減しうる観点から望ましい。」

第6.当審拒絶理由の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
・後者の「ビード部4」は前者の「ビード部」に相当し、以下同様に、「ビードコア5」は「ビードコア」に、「ビードエーペックス8」は「ビードフィラー」に、「カーカスプライ6A」は「カーカスプライ」に、それそれ相当する。
・後者の「ビードエーペックス8の厚さは、前記ビードコア5の内面5iを基準とし、そこからタイヤ径方向外側に15mmの距離Sを隔てる位置Yでの厚さbが基端部8Aの厚さaの35?50%であって、かつ前記基端部8Aから外端まで厚さが滑らかに漸減しており」との構成と、前者の「前記ビードフィラーの厚みは、前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ20mmの位置で1.7mm以下であって、かつ前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ向かって等厚部を含むことなく徐々に減少しており」との構成は、「前記ビードフィラーの厚みは、前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ向かって等厚部を含むことなく徐々に減少しており」との構成の限度で共通する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードコアの回りで内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、タイヤの外壁面を構成するサイドウォールゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーの厚みは、前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ向かって等厚部を含むことなく徐々に減少している空気入りタイヤ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、「前記ビードコアのタイヤ径方向外端を基準とした前記ビードフィラーの断面高さは、タイヤ断面高さの50?70%であ」るのに対し、
引用発明は、「前記ビードエーペックス8は、そのタイヤ半径方向の外端8tと内端8eとを結ぶ直線Kの長さが40mm以上であ」る点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「前記ビードフィラーの厚みは、前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ20mmの位置で1.7mm以下であ」るのに対し、
引用発明は、「ビードエーペックス8の厚さは、前記ビードコア5の内面5iを基準とし、そこからタイヤ径方向外側に15mmの距離Sを隔てる位置Yでの厚さbが基端部8Aの厚さaの35?50%であ」る点。

〔相違点3〕
本願発明1は、「前記カーカスプライの巻上げ端は、前記ビードフィラーの外周端よりもタイヤ径方向内側で終端している」のに対し、
引用発明は、「前記カーカスプライ6Aの巻上げ端は、タイヤ軸方向最外側の総巾位置Mよりもタイヤ半径方向外側に位置している」点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3を先に検討する。
引用文献2の記載事項2-3.の記載内容及び【図2】を参酌すると、引用文献2には「カーカスプライ6Aの折返し端X1を、ビード補強ゴム層10の外端部10cよりもタイヤ径方向内側で終端しているローターンナップ構造のカーカスプライを採用すること。」が記載され(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)、本願発明1の上記相違点3に係る「前記カーカスプライの巻上げ端は、前記ビードフィラーの外周端よりもタイヤ径方向内側で終端している」との構成が開示されているといえる。
しかしながら、引用発明の「前記カーカスプライ6Aの巻上げ端は、タイヤ軸方向最外側の総巾位置Mよりもタイヤ半径方向外側に位置している」との構成の技術的意義は、記載事項1-3.に記載されているように「このようなハイターンアップ構造のカーカスプライ6Aは、ビード部4からサイドウォール部3にかけての横剛性の向上に役立つ。」ということであるから、当該構成に代えて、横剛性の低下を招くような上記引用文献2に記載されている事項の適用には阻害要因が存在するといえる。
したがって、引用発明に引用文献2に記載されている事項を適用する契機はないので、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明3、4について
本願発明3、4は、本願発明1をさらに減縮した発明であり、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて容易に発明することができたものとはいえない。

第7.原査定についての判断
平成28年9月21日に提出された手続補正書の補正により、本願発明1は、「ビードフィラーの厚みは、」「前記ビードコアのタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側へ向かって等厚部を含むことなく徐々に減少しており」(下線は、補正箇所。)との構成を含むものとなった。当該構成は、原査定における引用文献B(引用文献1の記載事項1-4.を参照。)に記載されている。(以下、「引用文献Bに記載されている事項」という。)
しかしながら、引用文献A(引用文献2)に記載されている発明(以下、「引用発明A」という。)は、その請求項1(記載事項2-1.を参照。)に記載されているとおりのものと認められるところ、引用文献Aに記載されている「ビードエーペックスゴムeのボリュームを減じて小型化すると転がり抵抗を低減しうることを突き止めたが、単にボリュームを減じて小型化するだけでは、操縦安定性を犠牲にしてしまうなどの不具合があった。」(記載事項2-2.を参照。)との課題を解決するために、「ビード補強ゴム層は、前記ビードコアから小高さでのびかつタイヤ半径方向外側に向けて厚さが漸減する減厚部と、この減厚部に連なってタイヤ半径方向外側にのびかつ厚さを実質的に一定かつ1?2mmとした等厚部とを含む」との構成にしたものであるから、引用発明Aの当該構成は必須のものであり、当該構成に代えて、上記課題と相反するような機能を有する引用文献Bに記載されている事項を適用する契機はないといえる。
したがって、本願発明1?4は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bに記載されている事項に基づいて容易に発明できたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8.むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2011-265943(P2011-265943)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
平田 信勝
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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