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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1332540
審判番号 不服2016-1086  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-26 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2014- 98653「吸水性ポリマー粒子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-141686〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年6月3日 欧州特許庁)を国際出願日とする特願2012-513592号の一部を平成26年5月12日に新たな出願としたものであって、平成26年6月11日に手続補正書が提出され、平成27年1月14日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月17日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年1月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月12日付けで当審で拒絶理由が通知され、平成29年3月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明は、平成29年3月17日に補正された特許請求の範囲、願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与された乾燥前の水性ポリマーゲル層が以下の断面プロフィール;

(上記符号h_(1)は中央領域における高さ、符号h_(2)は外側縁部における隆起、符号b1は中央領域の幅、符号b_(2)は外側縁領域を示す)を有しており、その際、上記ポリマーゲル層は中央領域において一定の高さを示し、上記中央領域はコンベアベルト幅の75?95%に相当し、かつ上記ポリマーゲル層の高さはコンベアベルトの側縁部に向かって10?40%だけ増加しており、かつ、水性ポリマーゲルは、
a)少なくとも1種のエチレン系不飽和の酸基含有モノマー、この場合、このモノマーは少なくとも95モル%がアクリル酸からなり(モノマーa)の全量に対する割合)、かつ、40?75モル%の中和度を示し、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)少なくとも1種の開始剤、
d)任意選択で、a)に挙げられたモノマーと共重合可能な1種またはそれ以上のエチレン系不飽和モノマー、および
e)任意選択で、1種またはそれ以上の水溶性ポリマーを含有する水性モノマー溶液または水性モノマー懸濁液を重合することにより得られ、かつ、その含水量は、空気循環式バンド乾燥機上での乾燥前に30?70質量%である、前記水性ポリマーゲル層。」


第3 当審での拒絶の理由の概要

平成28年12月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2の概要は以下のとおりである。

「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.この出願は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 」


第4 当審の判断
1.理由1について
(1)本願明細書【0009】の「本発明の課題は、空気循環式バンド乾燥機上で水性ポリマーゲルを乾燥させるための改善された方法、特に、むらのない乾燥および減少した生産阻害を導く方法を提供することである。」の記載によれば、本願発明の課題は、「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与された乾燥前の水性ポリマーゲル層」の「むらのない乾燥および減少した生産阻害」にあるものと認める。
本願発明が、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を越えるものであるか否かを、以下検討する。

(2)本願発明は、
「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与された乾燥前の水性ポリマーゲル層」が



(上記符号h_(1)は中央領域における高さ、符号h_(2)は外側縁部における隆起、符号b1は中央領域の幅、符号b_(2)は外側縁領域を示す)を有しており、その際、上記ポリマーゲル層は中央領域において一定の高さを示し、上記中央領域はコンベアベルト幅の75?95%に相当し、かつ上記ポリマーゲル層の高さはコンベアベルトの側縁部に向かって10?40%だけ増加」

を発明特定事項の一つとするものである。(以下、上記の図を「本願発明断面プロフィール」といい、また、本発明特定事項を「発明特定事項A」という。)
そして、本願明細書【0099】?【0112】の例1で、水性ポリマーゲルとして、特定の条件で反応させて得られた特定のアクリル酸重合体からなるものを用いて、特定の条件で回転する旋回ベルトによって空気循環式バンド乾燥機に施与した時に、「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上のポリマーゲル床は、図1によるプロフィールを示し、その際、高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm、幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cmであった。」と記載されている。そして、図1は

であって、本願発明断面プロフィールと同じ形状のものである。そして、「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトは4.4mの有効幅を有」するものである(本願明細書【0106】)ところ、「高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm、幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cm」であるのだから、中央領域の幅(b_(1))がコンベアベルト幅に占める割合は約85%(376cm÷4.4m)であり、また、コンベアベルトの側縁部の高さ(h_(1)+h_(2))は中央領域の高さ(h_(1))よりも25%増加(2.5cm÷10cm)しているから、発明特定事項Aの「中央領域はコンベアベルト幅の75?95%に相当し、かつ上記ポリマーゲル層の高さはコンベアベルトの側縁部に向かって10?40%だけ増加」との条件を満たすものである。
そうしてみると、例1は本願発明の発明特定事項Aを満たす水性ポリマーゲル層であるといえる。

(3)しかしながら、本願明細書【0113】?【0118】の例2?例4の「比較例」とされている例では、空気循環式バンド乾燥機上の水性ポリマーゲルの形状が何ら示されていないし、斯かるポリマーゲルが発明特定事項Aで規定される事項を満たすか否かも記載されていない。
そうしてみると、発明特定事項Aを満たすか否かで、水性ポリマーゲルの乾燥にどのような影響があるのかを確認することができず、本願明細書が、発明特定事項Aを備えることにより、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載され」ているものとすることができないし、そのようにすることによって課題が解決されるとの技術常識があるものとも認めることができない。

(4)この点に関する、平成29年3月17日付け意見書での審判請求人の主張について以下検討する。
ア まず、「例1に引き続いて、一部の工程条件を変更した例2-4が比較例として記載されています。これらは、本願発明に係る例と同一のポリマー材料を使用しながらも、一部の工程条件が異なる結果、本願発明の水性ポリマーゲル層とは異なる断面プロフィールを示します。このことは、たとえば、本願明細書の段落0118における例4のポリマーゲル層についての「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上での乾燥中に水性ポリマーゲルが収縮した結果、コンベアベルトの側縁部はもはや覆われていなかった。」なる記載によってもご理解いただけますものと思料します。」と主張する。
しかしながら、まず例4についての斯かる記載は、たとえば例4で得られた水性ポリマーゲルの形状が「本願発明断面プロフィール」の形状を保ったまま、全体として中央に収縮した場合を表現したとも解釈できるものであるから、例4で得られた水性ポリマーゲルの形状は「本願発明断面プロフィール」で示される形状とは異なるものであることを示すものとまですることはできない。
そして、例2ないし例4の断面プロフィールは、「本願発明の水性ポリマーゲル層とは異なる断面プロフィールを示します」とのみ主張するだけで、これらがどのような形状であるのかを具体的に主張するものではない。すなわち、「本願発明の水性ポリマーゲル層とは異なる断面プロフィール」ということは、本願発明断面プロフィールと異なる形状を示すものとも解釈できるし、また、本願発明断面プロフィールに相似する形状であるが、「中央領域において一定の高さを示し、上記中央領域はコンベアベルト幅の75?95%に相当し、かつ上記ポリマーゲル層の高さはコンベアベルトの側縁部に向かって10?40%だけ増加」という条件を満たさないものであるとも解釈できるものであり、その形状を特定していない。
そうしてみると、斯かる主張によっても、例2ないし例4のポリマーゲル層の形状は不明と言わざるを得ない

イ さらに、「例2、例3におけるCRCおよび抽出分の増大は、架橋度合いの減少に伴う悪影響の結果である」とした上で、
「また、参考までに、例2-4のポリマーゲル層の断面プロフィールに関するデータを以下に示します。

なお、h_(1)、b_(1)は、補正後の請求項1に示す断片プロフィールのh_(1)、b_(1)に相当します。
よって、本願発明は「むらのない乾燥および減少した生産阻害」を達成できるものであって、発明の詳細な説明について「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を越えたものではありません。」と主張する。
(ア)ここで、「h_(1)、b_(1)は、補正後の請求項1に示す断片プロフィールのh_(1)、b_(1)に相当します。」の記載は、表でh_(1)、b_(1)の数値が記載されている例1?例3での水性ポリマーゲルの形状は、その大きさ(比率)はともかくとして、「本願発明断面プロフィール」の形状に相似するものであったことを示していると解釈できる。
斯かる表において、たとえば例1のh_(1)が約85%、b_(1)が約25%とされている。その趣旨から、h_(1)が約85%であるということはh_(1)+h_(2)に対するh_(1)の比率が約85%であり、b_(1)が約25%であるということはb_(1)+b_(2)に対するb_(1)の比率が約25%であると解釈するのが素直であるが、h_(1)が約85%、b_(1)が約25%ということが、例1の「高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm、幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cm」を表現しているものとは、その数値上認めることができない。
仮に、b_(1)が約25%であるということは、発明特定事項Aで規定されている中央領域b_(1)がコンベアベルト幅に占める割合であるとしても、同様である。
またさらに、表においてh_(1)とb_(1)とが逆に記載されていたとしても、(表の中ではh_(1)とされている)例1のb_(1)の値(約85%)は、中央領域b_(1)がコンベアベルト幅に占める割合であると解釈すれば、例1の「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトは4.4mの有効幅」、「幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cm」を示したものであるが、(表の中ではb_(1)とされている)例1のh_(1)の値(約25%)は、例1の「高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm」でのh_(1)の比率を表現しているものとすることができない。
そうしてみると、仮に、事後的に示された斯かる記載を考慮したとしても、例1?例3の水性ポリマーゲルの形状が「本願発明断面プロフィール」の形状に相似することはともかくとして、例1のものとして表中に示されている具体的な数字が、本願明細書に具体的に記載されている例1の水性ポリマーゲルの形状に関する数値から算出される値と一致していないので、そのような表の記載を基にしてポリマーゲル層の断面プロフィールが発明特定事項Aを満たすか否かの判断をすることはできない。
(イ)なお、表において、「h_(1)」が中央領域b_(1)がコンベアベルト幅に占める割合を示し、「b_(1)」がh_(2)のh_(1)に対する割合とした場合には、例1の「空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトは4.4mの有効幅」、「高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm、幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cm」を表したものと解釈できるので、これを前提とした検討も念のために以下で行う。
その前提では、例2の中央領域b_(1)がコンベアベルト幅に占める割合は80%、h_(2)のh_(1)に対する割合は40%であり、例3の中央領域b_(1)がコンベアベルト幅に占める割合は75%、h_(2)のh_(1)に対する割合は33%であるが、これらの値はいずれも、発明特定事項Aの「中央領域はコンベアベルト幅の75?95%に相当し、かつ上記ポリマーゲル層の高さはコンベアベルトの側縁部に向かって10?40%だけ増加」を満たすこととなる。すなわち、例2、例3のポリマーゲル層は、例1のそれと同様に発明特定事項Aを満たすものとなり、例2、例3は比較例であって、「例2、例3におけるCRCおよび抽出分の増大は、架橋度合いの減少に伴う悪影響の結果である」との審判請求人の主張と矛盾することとなる。

ウ 以上のとおりであるので、審判請求人の主張はいずれも採用することができない。

(5)よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

2.理由2.について
(1)上記の理由1.のとおり、本願明細書の例1で、水性ポリマーゲルは、空気循環式バンド乾燥機上で

の断面プロフィールとなったことが示されているが、それ以外の例では、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した時の水性ポリマーゲルの断面プロフィールは示されていない。

(2)そもそも、本願発明の水性ポリマーゲルは、「ゲル」である以上相応の粘性を有するものであるが、流動性も備えていると認められるから、これを旋回ベルトによって空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に「本願発明断面プロフィール」の形状、特に、端部においてコンベアベルトに対して垂直な面を持つ形状、に積み上げることは、たとえコンベアベルトが止まっていたとしてもできないと考える方が自然であるから、当業者といえども

の断面プロフィールをもつ水性ポリマーゲル層を得ることはできないとすべきである。

(3)本願明細書の例1では、0.022m/sで動く空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に、特定の条件で重合させた水性ポリマーゲルを最大角速度33°/sで旋回する旋回ベルトで施与して、

の断面プロフィール(両端部が垂直になっていて、高さh_(1)は約10cm、高さh_(2)は約2.5cm、幅b_(1)は約376cmであり、かつ幅b_(2)は約32cm)をもたらしたものであるが、その技術的な困難度は極めて高いものといわざるを得ない。
その上で検討すると、旋回ベルトの回転速度や空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトの速度等、水性ポリマーゲルに関するもの以外の条件が同じであったとしても、水性ポリマーゲルを構成する重合体が異なれば、水性ポリマーゲルの粘度等も異なるものになるから、斯かるゲルを空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した際の断面プロフィールも異なってくることは明らかである。さらには、たとえアクリル酸重合体であったとしても、アクリル酸を反応させる条件が異なれば含水量や重合度等が異なることとなり、得られるアクリル酸重合体の粘度等の性状が異なるものになることも明らかであって、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した際の断面プロフィールも異なってくることは明らかである。
さらに、旋回ベルトの回転速度、旋回ベルトと空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトとの距離、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトの速度など、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した際の水性ポリマーゲルの断面プロフィールに影響を及ぼす項目は非常に多く存在すると認められる。
そのような項目をどのような値とするか、あるいはどのような条件とするかについては、本願明細書【0010】?【0026】、【0037】?【0090】等に一応の記載はあるが、たとえば数値範囲も非常に広範なものとなっていて総じて一般的な記載に留まっている。
なお水性ポリマーゲルに関し、平成29年3月17日付け手続補正によって、水性ポリマーゲルは、
「a)少なくとも1種のエチレン系不飽和の酸基含有モノマー、この場合、このモノマーは少なくとも95モル%がアクリル酸からなり(モノマーa)の全量に対する割合)、かつ、40?75モル%の中和度を示し、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)少なくとも1種の開始剤、
d)任意選択で、a)に挙げられたモノマーと共重合可能な1種またはそれ以上のエチレン系不飽和モノマー、および
e)任意選択で、1種またはそれ以上の水溶性ポリマーを含有する水性モノマー溶液または水性モノマー懸濁液を重合することにより得られ、かつ、その含水量は、空気循環式バンド乾燥機上での乾燥前に30?70質量%である」
ことが特定されることとなった。しかしながら、たとえば、水性ポリマーゲルの含水量は「30?70質量%」と幅広く、それぞれの含水量に応じて水性ポリマーゲルの粘度も当然に大きく変わるから、そのような水性ポリマーゲルを空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した際の断面プロフィールも大きく異なるとすべきである。
そうしてみると、当業者が、このような水性ポリマーゲルを空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した時に、「発明特定事項A」を満たす水性ポリマーゲルを得るためには、それぞれの粘度に応じて、旋回ベルトの回転速度、旋回ベルトと空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトとの距離、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトの速度などの各項目の緻密な調整が必要であって、例1に記載されている以外の条件で 「発明特定事項A」を満たす水性ポリマーゲルを得るためには当業者に通常以上の試行錯誤を行うことを求めるものと認められる。

(4)平成29年3月17日付け意見書で、審判請求人は、「吸水性ポリマー粒子を製造するにあたり空気循環式バンド乾燥機を使用してポリマーゲルを乾燥させること、また、むらのない乾燥を達成するにあたり、コンベアベルト上にポリマーゲルを均一に分配することは本願出願時の技術常識であって、それを達成するための手段(たとえば、レーキ、振動ベルト等)についても知られていました」、「このことから、旋回ベルトの回転速度、旋回ベルトと空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトとの距離、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルトの速度など、空気循環式バンド乾燥機のコンベアベルト上に施与した際の水性ポリマーゲルの断面プロフィールに影響を及ぼす項目が多く存在していたとしても、どのような手段を用いて、所望の断面プロフィールを有する水性ポリマーゲル層を獲得できるのか、当業者であれば、詳細な工程条件ついて言及する本願明細書の実施例等の記載と本願出願時の技術常識とに基づいて、当業者であれば通常以上の試行錯誤を行うことなく十分に理解できるものと思料します。」と主張する。
しかしながら、「ポリマーゲルを均一に分配すること」が技術常識であったとしても、本願発明は、

という、中央部に均一な平面部位があることに加えて、末端に向けて直線的に高くなり、頂点から垂直な面を有する特定の「本願発明断面プロフィール」を有するものであって、そのようなプロフィールを得ることまでが技術常識であったとすることはできない。
したがって、斯かる主張は採用することができない。

(5)以上のとおりであるので、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができるように記載したものとすることができない。


第5 結び

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明について、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないし、本願の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明についてさらに検討するまでもなく、本願はこれらの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-13 
結審通知日 2017-04-17 
審決日 2017-05-01 
出願番号 特願2014-98653(P2014-98653)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C08F)
P 1 8・ 537- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 英樹  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
大島 祥吾
発明の名称 吸水性ポリマー粒子の製造方法  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 神谷 雪恵  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  

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