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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B63B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B63B
管理番号 1332574
審判番号 不服2016-7657  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-25 
確定日 2017-10-03 
事件の表示 特願2011-263612号「小流物接近防止方法および小流物接近防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日出願公開、特開2013-116640号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月1日の出願であって、平成27年7月30日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年5月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成29年4月24日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1及び3に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許第6394015号明細書
2.特開平10-280369号公報
3.英国特許出願公開第951076号明細書
4.特開昭62-17213号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
[理由1]本願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
[理由2]本願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特公昭54-598号公報

第4 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1及び2」という。)は、平成29年6月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
小型船や流木を含む小流物が、大型船を含む非接近設備に接近するのを防止する小流物接近防止方法であって、
水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させ、気泡を含む前記水を前記非接近設備の喫水部から水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる、ことを特徴とする小流物接近防止方法。
【請求項2】
小型船や流木を含む小流物が、大型船を含む非接近設備に接近するのを防止するための小流物接近防止装置であって、
水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させる気泡発生手段と、
前記非接近設備の喫水部に配設され、気泡を含む前記水を水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる気泡放出手段と、
を備えることを特徴とする小流物接近防止装置。」

第5 当審の判断
2-1 当審拒絶理由について
(1)引用文献Aに記載された発明
ア 引用文献Aの1頁2欄18?27行及び2頁3欄5?15行の記載によれば、引用文献Aには、
「船体側面に計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域で略同一レベルに略水平方向に複数個の大きな開口を設け、該各開口を通して圧縮空気を吹き出させ、船体側面に沿って上昇する空気の膨張により該船体側面に沿って上昇する強い水の上昇流を生じさせ、船体近傍の面に水の畝を生成すると共に船体側面から離れる方向へ流れを生じさせ、氷塊又は氷片を船体から遠ざかる方向に押し離す方法。」(以下「引用発明A1」という。)が記載されているといえる。

イ また、引用文献Aの2頁3欄5?15行、同欄32?43行及び3頁6欄34行?4頁7欄2行の記載(なお、3頁6欄39行目の「含含し」は「包含し」の誤記と認める。)によれば、引用文献Aには、
「氷海中の船舶の前進抵抗減少装置として、
前記船舶の船体1の両側面上の計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域に実質上同一レベルで略水平に配設された複数個の大きな開口3と、
圧縮空気を生成する圧縮機7と、
該圧縮空気を前記各開口3に導く装置とを包含し、
前記各開口3から船体1に隣接した水中に吹出される圧縮空気の流量及び圧力は、船体側面に沿って膨張しながら上昇する空気によって該船体側面に沿って上昇する強い水流を生じさせ、該船体側面附近の水面を押し上げて明らかに目視しうる水の畝5を形成する程度の高い値を有している、
氷塊又は氷片を船体から遠ざかる方向に押し離す、
氷海中の船舶の前進抵抗減少装置。」の発明(以下「引用発明A2」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
(2-1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明A1とを対比する。
(ア)引用発明A1の「氷塊又は氷片」は、氷海中に存在するものであるから、本願発明1の「小型船や流木を含む小流物」とは、「小流物」の限度で共通する。
引用発明A1の「船体」と本願発明1の「大型船を含む非接近設備」とは、「船を含む非接近設備」の限度で共通する。
そして、引用発明A1の「遠ざかる方向に押し離す」ことは、言い換えれば、「接近するのを防止する」ということもできるから、引用発明A1の「氷塊又は氷片を船体から遠ざかる方向に押し離す方法」と、本願発明1の「小型船や流木を含む小流物が、大型船を含む非接近設備に接近するのを防止する小流物接近防止方法」とは、「小流物が、船を含む非接近設備に接近するのを防止する小流物接近防止方法」の限度で共通するものといえる。
(イ)引用発明A1の「船体側面から離れる方向へ流れを生じさせ」ることは、本願発明1の「水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明A1とは、
「小流物が、船を含む非接近設備に接近するのを防止する小流物接近防止方法であって、
水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる、小流物接近防止方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
「小流物」及び「船を含む非接近設備」について、本願発明1は、「小型船や流木を含む小流物」及び「大型船を含む非接近設備」であるのに対し、引用発明A1は、「氷塊又は氷片」及び「船体」である点。
<相違点2>
「水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる」構成について、本願発明1は、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させ、気泡を含む前記水を前記非接近設備の喫水部から水面側に向けて噴射」するものであるのに対し、引用発明A1は、「船体側面に計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域で略同一レベルに略水平方向に複数個の大きな開口を設け、該各開口を通して圧縮空気を吹き出させ、船体側面に沿って上昇する空気の膨張により該船体側面に沿って上昇する強い水の上昇流を生じさせ」るものである点。
なお、平成29年6月7日付けの手続補正により、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなった。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
本願発明1は、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させ、気泡を含む前記水を前記非接近設備の喫水部から水面側に向けて噴射」することで、「水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる」というものである。
他方、引用発明A1は、「船体側面に計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域で略同一レベルに略水平方向に複数個の大きな開口を設け、該各開口を通して圧縮空気を吹き出させ、船体側面に沿って上昇する空気の膨張により該船体側面に沿って上昇する強い水の上昇流を生じさせ」ることで「船体側面から離れる方向へ流れを生じさせ」るものであるから、引用発明A1と本願発明Aとは、「被噴射物を非接近設備の喫水部から水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から小流物側への水流を発生させる」点で共通した構成を有するものということができる。
しかし、引用文献Aには、引用発明A1について、「圧縮空気」に代えて、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させ、気泡を含む前記水」を被噴射物として設定することは記載されていないし、そのように構成することが、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
そして、本願明細書には、「例えば、図6に示すように、海水Wを汲み上げ、気泡発生装置51によって海水W中に気泡を発生させ、気泡を含む海水W3を水槽52に貯留する。そして、必要に応じて、水槽52中の海水W3をノズル体3に送ることで、気泡を噴射させるものである。この方法によれば、気泡を含む海水W3を噴射するため、空気自体を噴射する場合に比べて海水Wからの水圧に対抗でき、エネルギー効率が高く、均等かつ安定して気泡を噴射することができる。」(段落【0034】、下線は当審で付した。以下同様。)と記載されているように、本願発明1は、「気泡を含む前記水を前記非接近設備の喫水部から水面側に向けて噴射」することで、引用発明A1のように「圧縮空気(空気自体)」を噴射する場合に比して、水圧に対抗でき、エネルギー効率が高く、均等かつ安定して気泡を噴射することができる、という効果を奏することが明らかである。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明A1に基いて容易に発明できたものとはいえない。

(2-2)本願発明2について
ア 対比
本願発明2と引用発明A2とを対比する。
(ア)上記「(2-1)ア」の対比関係をも考慮すれば、引用発明A2の「氷塊又は氷片を船体から遠ざかる方向に押し離す、氷海中の船舶の前進抵抗減少装置」と、本願発明2の「型船や流木を含む小流物が、大型船を含む非接近設備に接近するのを防止するための小流物接近防止装置」とは、「小流物が、船を含む非接近設備に接近するのを防止するための小流物接近防止装置」の限度で共通するものといえる。
(イ)引用発明A2の「前記船舶の船体1の両側面上の計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域」は、本願発明2の「前記非接近設備の喫水部」に相当する。
(ウ)引用発明A2の「圧縮空気」と本件発明2の「気泡を含む前記水」とは、ともに水面側に向けて噴射されるものであるから、両者は「被噴射物」の限度で共通するものといえる。
(エ)引用発明A2の「前記船舶の船体1の両側面上の計画喫水線より計画喫水の少なくとも30%下方の領域に実質上同一レベルで略水平に配設された複数個の大きな開口3」と、本願発明2の「前記非接近設備の喫水部に配設され、気泡を含む前記水を水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる気泡放出手段」とは、上記(イ)及び(ウ)をも踏まえると、「前記非接近設備の喫水部に配設され、被噴射物を水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる気泡放出手段」の限度で共通するものといえる。

したがって、本願発明2と引用発明A2とは、
「小流物が、船を含む非接近設備に接近するのを防止するための小流物接近防止装置であって、
前記非接近設備の喫水部に配設され、被噴射物を水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる気泡放出手段と、
を備える小流物接近防止装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点I>
「小流物」及び「船を含む非接近設備」について、本願発明2は、「小型船や流木を含む小流物」及び「大型船を含む非接近設備」であるのに対し、引用発明A2は、「氷塊又は氷片」及び「船舶の船体1」である点。
<相違点II>
本願発明2は、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させる気泡発生手段」を具備し、被噴射物としての「気泡を含む前記水」を水面側に向けて噴射して水流を発生させるものであるのに対し、引用発明A2は、「圧縮空気を生成する圧縮機7」を具備し、被噴射物としての「該圧縮空気」を水面側に向けて噴射して水流を発生させるものである点。
なお、平成29年6月7日付けの手続補正により、本願発明2は、上記相違点IIに係る本願発明2の構成を有するものとなった。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点IIについて検討する。
本願発明2と引用発明A2とは、「前記非接近設備の喫水部に配設され、被噴射物を水面側に向けて噴射して、水面近傍における前記非接近設備から前記小流物側への水流を発生させる気泡放出手段」を具備する点で共通した構成を有するものということができる。
しかし、引用発明A2は、あくまでも「圧縮機7」を用いて「圧縮空気を生成」し、かかる「圧縮空気」を水面側に向けて噴射して水流を発生させるものであるところ、引用文献Aには、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させる気泡発生手段」を具備すること、及び「気泡を含む前記水」を水面側に向けて噴射して水流を発生させることは記載されていないし、そのように構成することが、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
そして、本願明細書には、「例えば、図6に示すように、海水Wを汲み上げ、気泡発生装置51によって海水W中に気泡を発生させ、気泡を含む海水W3を水槽52に貯留する。そして、必要に応じて、水槽52中の海水W3をノズル体3に送ることで、気泡を噴射させるものである。この方法によれば、気泡を含む海水W3を噴射するため、空気自体を噴射する場合に比べて海水Wからの水圧に対抗でき、エネルギー効率が高く、均等かつ安定して気泡を噴射することができる。」(段落【0034】)と記載されているように、本願発明2は、「水を汲み上げ、汲み上げた前記水に気泡を発生させる気泡発生手段」を具備し、「気泡を含む前記水」を水面側に向けて噴射して水流を発生させることで、引用発明A2のように「圧縮空気(空気自体)」を噴射する場合に比して、水圧に対抗でき、エネルギー効率が高く、均等かつ安定して気泡を噴射することができる、という効果を奏することが明らかである。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明A2に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2-2 原査定について
平成29年6月7日付けの手続補正により、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなり、本願発明2は、上記相違点IIに係る本願発明2の構成を有するものとなったが、それらの構成は、原査定における引用文献1?4には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1及び2は、当業者であっても、原査定における引用文献1?4に基いて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-19 
出願番号 特願2011-263612(P2011-263612)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B63B)
P 1 8・ 113- WY (B63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岸 智章岩▲崎▼ 則昌  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
尾崎 和寛
発明の名称 小流物接近防止方法および小流物接近防止装置  
代理人 原嶋 成時郎  

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