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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1332584
審判番号 不服2016-15766  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2017-09-14 
事件の表示 特願2014-144233「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 6374〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年3月12日に出願した特願2010-56569号の一部を平成26年7月14日に新たな特許出願(特願2014-144233号)としたものであって、平成28年7月12日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
一方、当審において、平成29年4月10日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である平成29年6月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。

2 本願発明
この出願の請求項1?3に係る発明は、平成29年6月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める(当審において請求項1をA?Gに分説した。)。

「【請求項1】
A 遊技中に内部抽選が行われると、図柄を変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で停止表示させる図柄表示手段と、
B 前記図柄表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止表示されると、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
C 所定の表示領域内に遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出を表示する進行対応演出実行領域が区画して形成されるとともに、前記進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を表示する付加演出実行領域が前記進行対応演出実行領域とは別に前記表示領域内に区画して形成された演出表示手段と、
D 前記進行対応演出として、前記図柄表示手段による図柄の変動表示に対応させて演出図柄を変動表示させる変動表示演出、及び、図柄の停止表示に対応させて演出図柄を停止表示させる停止表示演出を、演出画像を用いて前記進行対応演出実行領域内で実行する図柄演出実行手段と、
E 前記付加演出を実行するか否かを抽選で決定する付加演出抽選手段と、
F 前記付加演出抽選手段により前記付加演出を実行すると決定された場合、前記付加演出実行領域内で演出画像を用いて前記付加演出を実行する付加演出実行手段とを備え、
G 前記付加演出実行手段は、
実行する前記付加演出として、前記図柄演出実行手段による前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容について解説を行う内容の第1付加演出と、前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容以外の興趣を提供する第2付加演出とを備えたことを特徴とする遊技機。」

3 刊行物
(1)当審において通知した拒絶の理由に刊行物2として引用された特開2005-218508号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、演出が複雑になると、抽選演出画像が何を表わしているのかわかりづらく、初心者や不慣れな遊技者はせっかくのストーリを楽しむことができないという問題点があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑がみなされたものであり、その目的は、一連のストーリに沿った抽選演出でリーチや大当り(特別遊技状態)への発展の期待を遊技者に与えながら、その抽選結果をわかりやすく遊技者につたえる抽選演出を行うことが可能な遊技機の制御装置、遊技機、制御プログラム及び情報記憶媒体を提供することにある。」

(1-b)「【0032】
遊技用の盤面10には、その中央部分に液晶等の画像表示手段を用いて構成された表示部12が配置されている。この表示部12には、パチンコ遊技機の遊技演出画像及びその他必要な情報が表示される。
・・・
【0036】
始動入賞口16に入賞する(玉が入る又は通過する)と、所与のルールに従い、特別遊技状態を発生させるための特別図柄抽選処理が行われる。本実施の形態では、この特別図柄抽選処理により、特別遊技状態として大当りの権利を遊技者に付与するか否かの決定が行われる。このとき表示部12には、遊技演出画像の一部として複数の図柄の組み合わせを用いた抽選演出画像の表示が行われ、全ての図柄が揃うと大当りとなる。すると、特別遊技が実行され、大当り入賞口18が開き、大当り入賞口18に玉が入ると、多くの玉が払い出される。」

(1-c)「【0047】
表示部12は、本実施の形態により生成された画像を出力するものであり、その機能は、LCD、CRTなどのハードウエアにより実現できる。
【0048】
なお表示部12として第1の表示部と第2の表示部を有し、抽選演出画像は第1の表示部に出力され、抽選演出画像に対応したテキスト情報は第2の表示部に出力されるようにしてもよい。」
(段落【0048】の「テキスト情報は第1の表示部に出力」は、テキスト情報は第2の表示部に出力」の誤記と認める。)

(1-d)「【0053】
遊技制御部76は、普通遊技状態、特別遊技状態、大当りモードの当選確率が高くなる確変遊技状態等の遊技機の遊技状態を制御するための処理を行なう。具体的には、検出部50からの入力信号や、抽選部72から提供される信号、保存データ等に基づき、普通遊技、特別遊技、確変遊技等を行なうためのプログラムを実行したり、大入賞口の開閉制御等を行なう。
【0054】
また、遊技制御部76は、確変時間制御部76としても機能し、抽選部72の抽選結果に基づき確変遊技が設定された場合に、確変遊技を実行する時間を設定する。
【0055】
更に、遊技制御部76は、抽選回数制御部80としても機能し、抽選部72から提供される信号に基づき、普通図柄抽選の抽選回数を制御する。ここで、抽選回数制御部80が普通図柄抽選の抽選回数を増加させると、始動入賞口16が開く回数が増加し、いわゆる時短遊技が行なわれる。
【0056】
抽選演出部82は、遊技機で行なわれる種々の抽選演出を実現するための処理を行なう。具体的には、検出部50からの入力信号や、抽選部72から提供される信号、保存データ等に基づき、表示部12、図示しない種々のランプやスピーカ等によって行なわれる抽選演出のための処理を行なう。
【0057】
また抽選演出部82は、前記抽選の結果に基づき、表示手段に表示される複数の特別図柄を所定時間変動表示させた後停止表示させ、停止表示された図柄の組合せにより前記抽選の結果を遊技者に告知する特別図柄変動表示演出を含む抽選演出の内容を演算する抽選演出手段として機能する。
【0058】
また抽選演出部82は、演出画像演算部84、テキスト情報出力制御部86を含む。
【0059】
演出画像演算部84の具体的な処理としては、3次元空間(オブジェクト空間)内に配置するオブジェクト(1又は複数のプリミティブ面)の位置や回転角度(オブジェクト空間内における位置を特定するためのワールド座標系X、Y又はZ軸回りの回転角度)を求める処理、オブジェクトを動作させる処理(モーション処理)、視点の位置(仮想カメラの位置)や視線角度(仮想カメラの回転角度)や視点の位置(仮想カメラの位置)を移動処理、マップオブジェクトなどのオブジェクトをオブジェクト空間へ配置する処理等が行われる。
【0060】
これらの処理により、例えば、複数の組み合わせ図柄が所与のルールに基づき変動した後に確定停止して、抽選の結果を表示する抽選演出画像等が演算される。
【0061】
演出画像演算部84は、抽選結果又は抽選結果に関連づけて設定された演出パターンに基づき、特別図柄変動表示演出に関連づけて行う抽選演出画像の展開パターン又は状況設定を決定し、決定された物語の展開パターン又は状況設定に応じて進行する一連のストーリを構成する抽選演出画像を生成するために必要な処理を行う。
【0062】
演出画像演算部84は、物語の展開パターン又は状況設定に対応して異なる抽選演出画像を生成するために必要な処理を行うようにしてもよい。
【0063】
また演出画像演算部84は、遊技イベントへの予告又は期待度を遊技者に示唆する内容を含む抽選演出画像を生成するために必要な演算を行うようにしてもよい。
【0064】
テキスト情報出力制御部86は、決定された抽選演出内容にしたがって関連するテキスト情報をテキスト情報記憶手段から読み出し、抽選演出画像に関連づけてテキスト情報を出力する。ここにおいて、抽選演出画像が表すストーリーに対応したテキスト情報が出力されるようにテキスト情報の出力制御を行う。」

(1-e)「【0110】
図8は場面1に対応した抽選演出画像とテキスト情報である。
【0111】
310は場面1で生成される抽選演出画像であり、オオカミ312がヤギの家314にいき扉をノックする動画像が生成される。また場面1の一部には変動中の特別図柄330、332,334が表示されている。
【0112】
320はテキスト情報であり、場面1に対応したテキスト情報(例えば350や360等)がテキスト情報記憶部から読み出されて表示される。
【0113】
350は、場面1に対応したテキスト情報であり、場面1のストーリ説明である。
【0114】
360は場面1に対応したテキスト情報であり、場面1の抽選演出画像に含まれた前記遊技イベント予告についての解説である。
【0115】
場面1のストーリ説明であるテキスト情報350が表示されることにより、遊技者は抽選演出画像が示すストーリを理解でき、物語として楽しむことができる。また場面1の抽選演出画像に含まれた遊技イベントの予告についての解説360が表示されることにより、遊技者は抽選演出画像に含まれた遊技イベントの予告の意味を知ることができるため、初心者でも楽しむことができる。
また場面1の抽選演出画像に含まれた前記遊技イベントの発生確率に関する情報(期待度)を遊技者に示唆する内容に関する説明360が表示されることにより、遊技者は抽選演出画像が示唆するリーチへの期待度を知ることができるため、初心者でも楽しむことができる。」

(1-f)図8には、
「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は子やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなテキスト情報350と、「扉が開くとリーチに発展するゾー」、「狼の変装状態によって扉の開きやすさが違うゾー」というようなテキスト情報360(図8左最下の「350」は「360」の誤記と認める。)が図示されている。
そして、段落【0064】には、テキスト情報出力制御部86でテキスト情報を出力することが記載され、段落【0111】には、テキスト情報350、360が表示される場面は、図柄の変動中であることが記載され、段落【0115】には、テキスト情報350がストーリ説明であり、テキスト情報360が抽選演出画像に含まれた遊技イベントの予告についての解説であること、段落【0032】には、パチンコ遊技機であること、が記載されているから、これらの記載事項と上記図示内容とから、
刊行物1には、テキスト情報出力制御部86は、図柄の変動中に出力するテキスト情報として、「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は子やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなストーリ説明であるテキスト情報350と、「扉が開くとリーチに発展するゾー」、「狼の変装状態によって扉の開きやすさが違うゾー」というような抽選演出画像に含まれた遊技イベントの解説360とを備えたパチンコ遊技機が記載されているといえる。

よって、以上の記載事項及び認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、この発明を「刊行物1発明」という。)。

「a’ 始動入賞口16に入賞すると、特別図柄抽選処理により特別遊技状態として大当りの権利を遊技者に付与するか否かの決定が行われ、このとき遊技演出画像の一部として複数の図柄の組み合わせを用いた抽選演出画像の表示を行う表示部12と(段落【0036】)、
b’ 前記表示部12に全ての図柄が揃うと、大入賞口の開閉制御等を行い、特別遊技を実行する遊技制御部76と(段落【0036】、【0053】)、
c’ 第1の表示部と第2の表示部を有し、抽選演出画像は第1の表示部に出力され、抽選演出画像に対応したテキスト情報は第2の表示部に出力される表示部12と(段落【0048】)、
d 抽選結果に基づき、図柄変動表示演出に関連づけて行う抽選演出画像の展開パターンを決定し、決定された物語の展開パターンに応じて進行する一連のストーリを構成する抽選演出画像を生成するために必要な処理を行う演出画像演算部84と(段落【0061】)、
f’ 抽選演出画像が表すストーリーに対応したテキスト情報の出力制御を行うテキスト情報出力制御部86とを備え(段落【0064】)、
g 前記テキスト情報出力制御部86は、図柄の変動中に出力するテキスト情報として、「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は子やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなストーリ説明であるテキスト情報350と、「扉が開くとリーチに発展するゾー」、「狼の変装状態によって扉の開きやすさが違うゾー」というような抽選演出画像に含まれた遊技イベントの解説であるテキスト情報360とを備えたパチンコ遊技機(認定事項(1-f))。」

(2)当審において通知した拒絶の理由に刊行物3として引用された特開2006-326215号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(2-a)「【0101】
ステップS430では、取得したボーナス演出パターン情報が、演出の解説を行うボーナス演出パターン情報であるか否かを判定する。演出の解説を行うボーナス演出パターン情報であるときは、ステップS440に進み、演出の解説を行わないボーナス演出パターン情報であるときは、ステップS450に進む。
【0102】
ここで、ボーナス演出パターン情報が、演出の解説を行うボーナス演出パターン情報であるか否かの判定は、図11に示すように、取得されたボーナス演出パターン情報と、解説のあるなしを対応付けた解説実行テーブルに従ってもよいし、他の方法、例えば、抽選によって解説のあるなしを決定してもよい。また、本実施形態における「演出の解説」とは、通常時に発生した演出(演出保存領域に保存された演出パターン情報)の解説を意味し、例えば、通常遊技時に「チャンバラ演出」が行われていれば、「チャンバラ演出」の解説を行うものであり、また、通常遊技時に「飲み比べ演出」が行われていれば、「飲み比べ演出」の解説を行うものである。また、解説の内容としては、具体的には、実行されている当該演出の発展の仕方(ストーリー)や、当該演出においてボーナス状態に移行するための態様(例えば、画面上から爺が降りてくる、など)などの説明(以下、ボーナス確定演出の説明という)を含むものである。尚、上述したボーナス確定演出の説明は、所定の条件を具備するときだけ、例えば、抽選に当選するなど、に限って実行してもよい。
【0103】
ステップS440では、演出の解説を行うボーナス演出パターンであるので、演出フラグをセットする。演出フラグは、演出の解説を行うことを示すフラグである。
【0104】
ステップS450では、セットしたボーナス演出パターン情報、及び設定された登場キャラクタ情報に基づいて、ボーナス中演出を実行する。即ち、通常ボーナス演出に加えて、通常時演出の続きを実行するものである。」

(2-b)「【0151】
<パチンコ>
また、上記実施の形態においては、メダルを用いるスロットマシン100に対して本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パチンコ球を用いるパチンコ遊技機(弾球遊技機)にも適用できるものである。
・・・
【0153】
詳しくは、パチンコ900では、パチンコ球901が始動入賞口930に入球すると、抽選を行い、この抽選結果が当りであるか否かを判定する。この抽選で大当たりに当選すると、図柄可変表示装置910により、特定の図柄による組み合わせ(例えば、777など)が表示され、大当たりモード(特別遊技状態)に移行する。大当たりモードでは、大入賞口940が、例えば、所定の時間又は所定の回数、開放され続けるので、パチンコ球901は入球しやすい状態となり、遊技者にとって有利な状態が実現される。」

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する(以下の(a)?(g)は、刊行物1発明の構成a’?gと対応している)。
(a)刊行物1発明の「特別図柄抽選処理」、「大当りの権利を遊技者に付与するか否かの決定」は、それぞれ、本願発明の「内部抽選」、「内部抽選の結果」に相当する。また、刊行物1発明の「複数の図柄の組み合わせを用いた抽選演出画像の表示を行う」ことは、本願発明の「内部抽選の結果を表す態様で図柄が停止表示させる」ことに相当する。
また、刊行物1発明の「表示部12」は「抽選演出画像」を表示するのに対して、本願発明の「図柄表示手段」は「演出図柄」ではなく「図柄」を表示するが(本願明細書の段落【0040】の記載によれば、本願発明の「図柄表示手段」は特別図柄表示装置であり、特別図柄を表示する。)、両者は表示手段である点において共通する。
よって、刊行物1発明の「始動入賞口16に入賞すると、特別図柄抽選処理により特別遊技状態として大当りの権利を遊技者に付与するか否かの決定が行われ、このとき遊技演出画像の一部として複数の図柄の組み合わせを用いた抽選演出画像の表示を行う表示部12」と、本願発明の「遊技中に内部抽選が行われると、図柄を変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で停止表示させる図柄表示手段」とは、「遊技中に内部抽選が行われると、図柄を変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で停止表示させる表示手段」である点で共通する。

(b)刊行物1発明の「全ての図柄が揃う」状態とは、大当りの状態、すなわち当選した状態であるから、本願発明の「非当選以外の態様で図柄が停止表示される」状態に相当する。
よって、刊行物1発明の「前記表示部12に全ての図柄が揃うと、大入賞口の開閉制御等を行い、特別遊技を実行する遊技制御部76」と、本願発明の「前記図柄表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止表示されると、特別遊技を実行する特別遊技実行手段」とは、「前記表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止表示されると、特別遊技を実行する特別遊技実行手段」である点で共通する。

(c)構成dによれば、刊行物1発明の「抽選演出画像」は、「決定された物語の展開パターンに応じて進行する一連のストーリを構成する」ものであるから、本願発明の「遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出」に相当し、刊行物1発明の「テキスト情報」は、抽選演出画像が表すストーリーに対応したものであるから、本願発明の「進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出」に相当する。
また、刊行物1発明の「第1の表示部」、「第2の表示部」は、「区画して」形成されたものではないが、それぞれ、本願発明の「進行対応演出実行領域」、「付加演出実行領域」に相当する。
そして、刊行物1発明において「抽選演出画像は第1の表示部に出力され、抽選演出画像に対応したテキスト情報は第2の表示部に出力される」から、「テキスト情報」の表示領域は、「抽選演出画像」の表示領域とは別に形成されているといえる。
よって、刊行物1発明の「第1の表示部と第2の表示部を有し、抽選演出画像は第1の表示部に出力され、抽選演出画像に対応したテキスト情報は第2の表示部に出力される表示部12」と、本願発明の「所定の表示領域内に遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出を表示する進行対応演出実行領域が区画して形成されるとともに、前記進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を表示する付加演出実行領域が前記進行対応演出実行領域とは別に前記表示領域内に区画して形成された演出表示手段」とは、「所定の表示領域内に遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出を表示する進行対応演出実行領域が形成されるとともに、前記進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を表示する付加演出実行領域が前記進行対応演出実行領域とは別に前記表示領域内に形成された演出表示手段」である点で共通する。

(d)刊行物1発明において「図柄変動表示演出に関連づけて行う抽選演出画像」には、図柄を変動表示、及び図柄を停止表示させる演出が含まれていることは自明な事項である。
そして、刊行物1発明の「抽選結果に基づき、図柄変動表示演出に関連づけて行う抽選演出画像の展開パターンを決定し、決定された物語の展開パターンに応じて進行する一連のストーリを構成する抽選演出画像」は、図柄変動表示演出と演出画像が含まれるから、本願発明の「図柄表示手段による図柄の変動表示に対応させて演出図柄を変動表示させる変動表示演出、及び、図柄の停止表示に対応させて演出図柄を停止表示させる停止表示演出を、演出画像を用いて」「実行する」「進行対応演出」に相当する。
また、上記(c)で検討したとおり、刊行物1発明において、抽選演出画像は第1の表示部に出力されるから、進行対応演出実行領域内で実行するといえる。
よって、刊行物1発明の「抽選結果に基づき、図柄変動表示演出に関連づけて行う抽選演出画像の展開パターンを決定し、決定された物語の展開パターンに応じて進行する一連のストーリを構成する抽選演出画像を生成するために必要な処理を行う演出画像演算部84」と、本願発明の「前記進行対応演出として、前記図柄表示手段による図柄の変動表示に対応させて演出図柄を変動表示させる変動表示演出、及び、図柄の停止表示に対応させて演出図柄を停止表示させる停止表示演出を、演出画像を用いて前記進行対応演出実行領域内で実行する図柄演出実行手段」とは、「前記進行対応演出として、演出図柄を変動表示させる変動表示演出、及び、図柄の停止表示に対応させて演出図柄を停止表示させる停止表示演出を、演出画像を用いて前記進行対応演出実行領域内で実行する図柄演出実行手段」である点で共通する。

(f)上記(c)で検討したとおり、「テキスト情報」は「第2の表示部」(付加演出実行領域)に出力されるものであり、「テキスト情報」は表示部12に表示されるから、一種の演出画像とみなすことができる。
よって、刊行物1発明の「抽選演出画像が表すストーリーに対応したテキスト情報の出力制御を行うテキスト情報出力制御部86」と、本願発明の「前記付加演出抽選手段により前記付加演出を実行すると決定された場合、前記付加演出実行領域内で演出画像を用いて前記付加演出を実行する付加演出実行手段」とは、「前記付加演出実行領域内で演出画像を用いて前記付加演出を実行する付加演出実行手段」である点で共通する。

(g)刊行物1発明の「扉が開くとリーチに発展するゾー」、「狼の変装状態によって扉の開きやすさが違うゾー」というような抽選演出画像に含まれた遊技イベントの解説であるテキスト情報360は、演出図柄の表示内容である「リーチ」について解説を行っているから、本願発明の「第1の付加演出」に相当する。
また、刊行物1発明の「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は子やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなストーリ説明であるテキスト情報350は、ストーリの説明であり、演出図柄の表示内容以外のものであるから「第2の付加演出」に相当する。
よって、刊行物1発明の「前記テキスト情報出力制御部86は、図柄の変動中に出力するテキスト情報として、「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は小やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなストーリ説明であるテキスト情報350と、「扉が開くとリーチに発展するゾー」、「狼の変装状態によって扉の開きやすさが違うゾー」というような抽選演出画像に含まれた遊技イベントの解説であるテキスト情報360とを備えた」点は、本願発明の「前記付加演出実行手段は、実行する前記付加演出として、前記図柄演出実行手段による前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容について解説を行う内容の第1付加演出と、前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容以外の興趣を提供する第2付加演出とを備えた」点に相当する。
また、刊行物1発明の「パチンコ遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「A’ 遊技中に内部抽選が行われると、図柄を変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で停止表示させる表示手段と、
B’ 前記表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止表示されると、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
C’ 所定の表示領域内に遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出を表示する進行対応演出実行領域が形成されるとともに、前記進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を表示する付加演出実行領域が前記進行対応演出実行領域とは別に前記表示領域内に形成された演出表示手段と、
D’ 前記進行対応演出として、演出図柄を変動表示させる変動表示演出、及び、図柄の停止表示に対応させて演出図柄を停止表示させる停止表示演出を、演出画像を用いて前記進行対応演出実行領域内で実行する図柄演出実行手段と、
F’ 前記付加演出実行領域内で演出画像を用いて前記付加演出を実行する付加演出実行手段とを備え、
G 前記付加演出実行手段は、
実行する前記付加演出として、前記図柄演出実行手段による前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容について解説を行う内容の第1付加演出と、前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容以外の興趣を提供する第2付加演出とを備えたことを特徴とする遊技機。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
表示手段に関して、本願発明は、当該表示手段が「図柄表示手段」であり、「図柄表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止されると」特別遊技を実行し、「図柄表示手段による図柄の変動表示に対応させて」演出図柄を変動表示させるのに対し、刊行物1発明は、当該表示手段が遊技演出画像を表示する表示部12である点。

[相違点2]
進行対応演出領域及び付加演出実行領域に関して、本願発明は、当該領域が「区画して」形成されるのに対して、刊行物1発明は、そのように特定されていない点。

[相違点3]
本願発明は、「付加演出を実行するか否かを抽選で決定する付加演出抽選手段を備え、付加演出抽選手段により付加演出を実行すると決定された場合に付加演出を実行する」のに対して、刊行物1発明は、そのように特定されていない点。

5 当審の判断
ア 上記相違点1について検討する。
遊技機の技術分野において、演出図柄表示手段とは別に、演出図柄表示手段の変動表示と同期して特別図柄の変動表示を行う特別図柄表示手段を設け、当該特別図柄表示手段は、特別図柄を変動表示させた後に大当り抽選の結果を示す態様で停止表示し、大当りの態様で特別図柄が停止表示すると、大当り遊技を実行する点は、本願の出願遡及日前において周知の技術である(例えば、特開2010-46274号公報の段落【0027】、【0031】、【0045】、【0086】、特開2010-35698号公報の段落【0056】、【0059】、【0067】、【0147】参照。以下「周知技術1」という。)。
そして、上記周知技術1における、特別図柄表示手段の変動表示と演出図柄表示手段の変動表示は同期していることは、「図柄表示手段による図柄の変動表示に対応させて演出図柄を変動表示させる」ことを意味するものであり、大当りの態様で特別図柄が停止表示すると、大当り遊技が実行されることは、「図柄表示手段により非当選以外の態様で図柄が停止されると特別遊技を実行」することを意味するものである。
ここで、本願の出願遡及日前において、刊行物1発明のように、図柄表示手段として、演出図柄表示手段のみを備えるタイプの遊技機と、周知技術1のように、演出図柄表示手段と、演出図柄表示手段に同期する特別図柄表示手段とを備えるタイプの遊技機が存在することは当業者に広く知られた事項である。
そうすると、刊行物1発明と周知技術1とは、演出図柄表示手段において図柄を変動表示させた後に停止表示し、大当りの態様で図柄が停止すると大当り遊技が実行されるという共通の機能を有するものであるから、刊行物1発明に周知技術1を適用し、表示部12(演出図柄表示手段)に加えて、特別図柄表示手段を設け、特別図柄表示手段に対応させて表示部12を変動させるように構成し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
遊技機の技術分野において、演出の表示領域、及び当該演出の解説を表示する表示領域を、それぞれ区画して形成する点は、本願の出願遡及日前において周知の技術である(例えば、特開2001-218930号公報の段落【0106】、【0107】、図16、特開2000-334105号公報の段落【0070】、図10参照。以下「周知技術2」という。)。
そして、刊行物1発明と周知技術2とは、複数の表示領域を有し、一方の表示領域で演出の解説を表示する遊技機である点で共通するものであるから、刊行物1発明に周知技術2を適用し、刊行物1発明の「第1の表示部」及び「第2の表示部」を「区画して」形成することで、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記相違点3について検討する。
刊行物2の段落【0102】には、「ボーナス演出パターン情報が、演出の解説を行うボーナス演出パターン情報であるか否かの判定は、・・・抽選によって解説のあるなしを決定してもよい。・・・解説の内容としては、具体的には、実行されている当該演出の発展の仕方(ストーリー)や、当該演出においてボーナス状態に移行するための態様(例えば、画面上から爺が降りてくる、など)などの説明(以下、ボーナス確定演出の説明という)を含むものである。」と記載され、段落【0151】には、「パチンコ球を用いるパチンコ遊技機(弾球遊技機)にも適用できる」と記載されている。
そして、上記刊行物2に記載された事項において、演出の解説は、実行されている当該演出の発展の仕方(ストーリ)や、当該演出においてボーナス状態に移行するための態様などの説明を含むもの、すなわち、遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出の内容に応じて付加的に実行されるものであるから、付加演出といえる。
そうすると、上記刊行物2に記載された事項には、遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を実行するか否かを抽選で決定するパチンコ遊技機が記載されているといえる。
刊行物1発明と刊行物2に記載された事項とは、遊技の進行状況に応じて実行される進行対応演出の内容に応じて付加的に実行される付加演出を含むとともに、付加演出の内容として演出の解説を含む点で共通するものである。
よって、刊行物1発明において、図柄の変動中にテキスト情報(付加演出)の出力制御を行う際に、刊行物2に記載された事項を適用し、テキスト情報の出力制御を実行するか否かを抽選により決定するように構成し、本願の上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1?3によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術1、2から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

請求人は、平成29年6月8日付け意見書において、「刊行物2に記載された発明は、「一連のストーリに沿った抽選演出でリーチや大当り(特別遊技状態)への発展の期待を遊技者に与えながら、その抽選結果をわかりやすく遊技者につたえる抽選演出を行う(段落【0009】)」ことを目的とするものであり、そのような目的は、様々に「遊技イベント予告の解説をする」ことで充分達成するものであるから、そこには、「変動中のいわゆる「間持ち」を図り、遊技の進行に大きな変化が生じていない状況で遊技者に飽きが生じるのを防止し、意欲の減退を抑える」といったことを付加演出で実現しようとする動機付けは特に見いだせない。」と主張する(意見書第12?18頁)。
しかしながら、請求人が主張する「変動中のいわゆる「間持ち」を図り、遊技の進行に大きな変化が生じていない状況で遊技者に飽きが生じるのを防止し、意欲の減退を抑える」構成として請求項1で特定しているのは「前記変動表示演出の中で実行される前記演出図柄の表示内容以外の興趣を提供する第2付加演出」である。
そして、この構成は、上記4(g)で検討したとおり、刊行物1発明においては「狼と7匹の子やぎのお話だよ。狼は子やぎを食べることができるかな」、「狼がやぎの家に行き、扉をノック」、「お母さんだよ。開けてちょうだい」というようなストーリ説明であるテキスト情報350として開示されている。
すなわち、刊行物1発明のテキスト情報350は、ストーリ説明という演出図柄の表示内容以外の興趣を提供しているから本願発明における「第2付加演出」といえるものであり、また、当該ストーリ説明は、変動中の「間持ち」を図るという効果を奏するといえる。
したがって、請求人が主張する付加演出は、刊行物1発明が構成として有しているものであるから、動機付けを検討するまでもなく、請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-14 
結審通知日 2017-07-18 
審決日 2017-07-31 
出願番号 特願2014-144233(P2014-144233)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 石原 徹弥
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 山崎 崇裕  

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