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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1332647
審判番号 不服2017-4096  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-22 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2014- 69064「表示データ作成システム、表示データ作成方法及び表示データ作成用コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-191495、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月28日の出願であって、平成28年8月22日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年10月31日付けで手続補正がされ、平成29年2月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-166763号公報
2.特開2007-178644号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平9-179285号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-160006号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2004-240843号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
6.特開2011-3039号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年3月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 [請求項1]
雑誌・新聞または書籍である印刷媒体の電子データを入力として、表示装置の表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを作成する表示データ作成システムであって、
前記表示装置は、前記表示画面に表示される前記画像を上下左右にスクロールする機能を有する携帯端末であり、
実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部と、
前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部とを備えてなり、
前記印刷媒体のサイズが前記表示画面よりも大きい場合、前記印刷媒体の原寸表示画像が前記表示画面をはみ出すように表示される表示データ作成システム。
[請求項2]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項3]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項4]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項5]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項6]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項7]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項8]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項9]
……請求項1に記載の表示データ作成システム。
[請求項10]
雑誌・新聞または書籍である印刷媒体の電子データを入力として、コンピュータを内蔵し且つ表示画面に表示される画像を上下左右にスクロールする機能を有する携帯端末からなる表示装置の前記表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを前記コンピュータを用いて作成する表示データ作成方法であって、
実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得ステップと、
前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部ステップとを前記コンピュータが実行し、
前記印刷媒体のサイズが前記表示画面よりも大きい場合、前記印刷媒体の原寸表示画像が前記表示画面をはみ出すように表示されることを特徴とする表示データ作成方法。
[請求項11]
雑誌・新聞または書籍である印刷媒体の電子データを入力として、コンピュータを内蔵し且つ表示画面に表示される画像を上下左右にスクロールする機能を有する携帯端末からなる表示装置の前記表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを前記コンピュータを用いて作成するために前記コンピュータにインストールされて実行される表示データ作成用コンピュータプログラムであって、
実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部と、
前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部とを、前記コンピュータ内に実現するように構成されており、
前記印刷媒体のサイズが前記表示画面よりも大きい場合、前記印刷媒体の原寸表示画像が前記表示画面をはみ出すように表示される表示データ作成用コンピュータプログラム。」

本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10、11は、本願発明1に対応する「方法」、「プログラム」の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落[0006]
「[0006]第4に示す例は、紙等に記述された文書や画像をスキャナー等の画像取込装置を使って、パーソナルコンピュータへ、文書や画像データとして取り込んだ後、液晶ディスプレイ等の表示装置で表示して、さらに表示された文書や画像データをプリンタ等の印刷装置で紙等に印刷することである。」

(2) 段落[0013]-[0017]
「[0013]
[発明が解決しようとする課題]しかしながら、従来の画像表示装置では、表示装置上で表示される文書および画像のイメージは、実物と縦横の寸法が一致する絶対的なイメージではなく、全体(例えば1頁分)に対する文字および画像の形や位置関係を示す相対的なイメージである。したがって、画面サイズが異なる表示装置で同じように文書や画像を表示させた場合には、大きさが異なる表示となってしまう。

・・・(中略)・・・

[0016]したがって、従来の画像表示装置のように表示装置上の表示が相対的なイメージであれば、表示装置上では容易に読めた文字が印刷後の文書では読みにくいものになる。その結果、印刷後においても文字等が容易に読めるように、修正と印刷とを繰り返す必要がある。しかし、このように修正と印刷とを繰り返すと紙の無駄使いとなる。また、オンラインショッピングのように表示装置上のみで確認して購入した品物が届いてみると、表示装置上のイメージと異なり、大きすぎたり、小さすぎたりということになる可能性がある。
[0017]本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、画面サイズの相違に関らず表示装置上で文書および画像を実寸または実寸に対する任意の倍率を表示して、表示装置上で容易に実物の大きさを確認できる画像表示装置を提供することである。」

(3) 段落[0023]-[0026]
「[0023]
[発明の実施の形態]以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施例である画像表示装置のブロック図である。本願の画像表示装置は、パーソナルコンピュータ上でワープロ、グラフィックソフトにより作成された文書、画像データおよびネットワーク、インターネットから取り込んだ文書、画像データについて表示装置1で表示する場合を想定する。また表示装置1についての単位長さ当りの解像度は、DPI(1インチ当りのドット数)を用いる。
[0024]図1のブロック図に示すように、ワープロ、グラフィックソフトによる文書や画像の入力手段3により入力した文章や画像は、実寸データの保存手段4で何mm、何インチという実寸データとして保存される。この実寸データから、表示装置1、単位長さ当りの表示解像度の取得手段2から取得した単位長さ当りの表示解像度と、実寸での表示パターンを算出する演算装置5により、次に示すように実寸での表示パターンのドット数を算出する。
[0025]A5サイズの矩形を表示する場合は、任意のディスプレイが15インチ(横×縦:304mm×228mm)、XGA(1024×768)である場合には、
横の単位長さ当りの表示解像度=1024dots/304mm×(25.4mm/インチ)=85.6DPI
縦の単位長さ当りの表示解像度=768dots/228mm×(25.4mm/インチ)=85.6DPI
となり
A5の横線のドット数=A5の横の長さ148mm/(25.4mm/インチ)×85.6DPI=499ドット
A5の縦線のドット数=A5の縦の長さ210mm/(25.4mm/インチ)×85.6DPI=708ドット
ディスプレイが18.1インチ(横×縦:358mm×287mm)、SXGA(1280×1024)である場合には、
横の単位長さ当りの表示解像度=1280dots/358mm×(25.4mm/インチ)=90.8DPI
縦の単位長さ当りの表示解像度=1024dots/287mm×(25.4mm/インチ)=90.8DPI
となり
A5の横線のドット数=A5の横の長さ148mm/(25.4mm/インチ)×90.8DPI=529ドット
A5の縦線のドット数=A5の縦の長さ210mm/(25.4mm/インチ)×90.8DPI=751ドット
となる。
[0026]前述のように算出された表示パターンを、表示装置1への出力手段6により表示装置1へ出力することで、表示装置1上に実寸での表示が可能になる。」

(4) 段落[0035]-[0036]
「[0035]また、画像取込装置13で取り込まれた入力パターンに、単位長さ当りの入力解像度の取得手段14からの入力解像度を用いて、入力パターンの演算装置15により実寸での入力パターンを算出し実寸データの保存手段4へ保存するようにしてもよい。例として示すと、100mmの直線を取り込む場合、任意のスキャナーの単位長さ当りの入力解像度が600DPIであるとすると、入力パターンの演算装置15により、
100mmの直線のドット数=100mm/(25.4mm/インチ)×600DPI=2362ドット
のデータが算出される。そしてこのデータを実寸で保存するときは、
実寸での保存データ=2362ドット/600DPI(25.4mm/インチ)=100mm
のようにドット数より逆算されて、実寸データの保存手段4へ保存される。
[0036]したがって、算出された実寸での保存データは、画像取込装置13で取り込む前と同じ大きさで、画像イメージ通りに表示あるいは印刷される。単位長さ当りの入力解像度の取得は、画像入力デバイス用の通信手段TWAIN等で実現できる。」

したがって、関連図面と技術常識に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「画像表示装置は、
パーソナルコンピュータ上でワープロ、グラフィックソフトにより作成された文書、画像データおよびネットワーク、インターネットから取り込んだ文書、画像データについて、液晶ディスプレイ等の表示装置1で表示する場合、
ワープロ、グラフィックソフトによる文書や画像の入力手段3により入力した文章や画像は、実寸データの保存手段4で何mm、何インチという実寸データとして保存され、
この実寸データから、表示装置1、単位長さ当りの表示解像度の取得手段2から取得した単位長さ当りの表示解像度と、実寸での表示パターンを算出する演算装置5により、実寸での表示パターンのドット数を算出するものであって、
A5サイズの矩形を表示する場合は、
任意のディスプレイが15インチ(横×縦:304mm×228mm)、XGA(1024×768)である場合には、
横の単位長さ当りの表示解像度=85.6DPI
縦の単位長さ当りの表示解像度=85.6DPI
となり、
A5の横線のドット数=A5の横の長さ148mm/(25.4mm/インチ)×85.6DPI=499ドット
A5の縦線のドット数=A5の縦の長さ210mm/(25.4mm/インチ)×85.6DPI=708ドット
となり、
算出された表示パターンを、表示装置1への出力手段6により表示装置1へ出力することで、表示装置1上に実寸での表示が可能になり、
紙等に記述された文書や画像をスキャナー等の画像取込装置を使って、パーソナルコンピュータへ、文書や画像データとして取り込んだ後、
画像取込装置13で取り込まれた入力パターンに、単位長さ当りの入力解像度の取得手段14からの入力解像度を用いて、入力パターンの演算装置15により実寸での入力パターンを算出し実寸データの保存手段4へ保存するようにしてもよく、
例として示すと、100mmの直線を取り込む場合、任意のスキャナーの単位長さ当りの入力解像度が600DPIであるとすると、入力パターンの演算装置15により、
100mmの直線のドット数=100mm/(25.4mm/インチ)×600DPI=2362ドット
のデータが算出され、そしてこのデータを実寸で保存するときは、
実寸での保存データ=2362ドット/600DPI(25.4mm/インチ)=100mm
のようにドット数より逆算されて、実寸データの保存手段4へ保存される、
画像表示装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、段落[0153]に、「これに対し、ディスプレイ513が取り替え可能なタイプのディスプレイ装置320であれば、ユーザが最初にディスプレイ装置320を使用する際に、初期設定でユーザがディスプレイサイズ(ディスプレイ513の寸法Hd)を設定してもよいし、ネットワークを介して、ディスプレイサイズ(ディスプレイ513の寸法Hd)を自動的に取得するようにしてもよい。具体的には、ホームネットワークを介してディスプレイ装置320が自動的に接続されているディスプレイを検出し、検出されたディスプレイのサイズ情報をディスプレイ本体あるいは家電機器を管理しているホームサーバなどから取得するように構成することができる。」と記載されるから、外部から表示装置のサイズ情報を取得することは、周知技術であると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落[0021]-[0022]に、「 …… 一方、ここで用いた編集レイアウト装置11では更に図4に示すように、モニタ画面上で解像度を指定することにより、実寸表示(100%)、縮小表示(50%、75%)、拡大表示(200%)と切り替え可能となっている。“全体表示”とあるのは、検版対象の画像をモニタ画面全体に表示する機能であり、“サムネール”というのは、検版対象の画像を縮小して、複数の画像を並べて表示する機能である。尚、表示倍率は、ここで示された値に限定されず、任意の倍率および縮小率が設定可能となっている。 …… 」と記載されるから、実寸表示と、所定の拡大・縮小率の表示とを切り替えて表示することは、周知技術であると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落[0046]に、「 …… これにより使用者は、パネル18によって規定されるx-y平面内で携帯電話10を移動させるという操作によって、印刷プレビュー画像のスクロール操作を行うことが可能となる。また、使用者は、パネル18によって規定されるx-y平面に対して垂直下方(負のz方向)に携帯電話10を移動させるという操作によって、印刷プレビュー画像の拡大表示操作を行うことが可能となる。また、x-y平面に対して垂直上方(正のz方向)に携帯電話10を移動させるという操作によって、印刷プレビュー画像の縮小表示操作を行うことが可能となる。」と記載されるから、端末を移動させることで、表示範囲を変更することや、拡大・縮小することは、周知技術であると認められる。

5.引用文献5について
原査定において周知技術を示す文献として新たに引用された上記引用文献5の段落[0069]、[0078]を参照すると、携帯端末に雑誌・新聞または書籍を取り込むことは、周知技術であると認められる。

6.引用文献6について
原査定において周知技術を示す文献として新たに引用された上記引用文献6の段落[0028]の記載を参照すると、表示縮尺やスクロール機能を用いて、表示する画像を操作する表示装置は周知技術であると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明においてスキャナー等の「画像取込装置13」が取り込む、「紙等に記述された文書や画像」は、本願発明1の「雑誌・新聞または書籍である印刷媒体」と、「印刷媒体」である点で共通するといえる。
引用発明の「紙等に記述された文書や画像をスキャナー等の画像取込装置を使って、パーソナルコンピュータへ、文書や画像データとして取り込んだ後、・・・(中略)・・・、入力パターンの演算装置15により実寸での入力パターンを算出し実寸データの保存手段4へ保存するようにしてもよ」い「実寸データ」は、本願発明1の「雑誌・新聞または書籍である印刷媒体の電子データ」と、「印刷媒体の電子データ」である点で共通するといえる。
引用発明の「液晶ディスプレイ等の表示装置1」、及び、「実寸での表示パターン」は、それぞれ、本願発明1の「表示画面」を備える「表示装置」、及び、「表示データ(実寸表示データ)」に相当する。
引用発明において、「液晶ディスプレイ等の表示装置1」や、「パーソナルコンピュータ」、スキャナー等の「画像取込装置13」などから構成される「画像表示装置」は、全体として、本願発明1の「表示データ作成システム」に相当する。
よって、「この実寸データから、表示装置1、単位長さ当りの表示解像度の取得手段2から取得した単位長さ当りの表示解像度と、実寸での表示パターンを算出する演算装置5により、実寸での表示パターンのドット数を算出する」、引用発明の「画像表示装置」は、本願発明1の「雑誌・新聞または書籍である印刷媒体の電子データを入力として、表示装置の表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを作成する表示データ作成システム」と、「印刷媒体の電子データを入力として、表示装置の表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを作成する表示データ作成システム」である点で共通するといえる。

イ 引用発明の「単位長さ当りの表示解像度の取得手段2」は、本願発明1の「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部」と、「前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「実寸での表示パターンを算出する演算装置5」は、「この実寸データから、表示装置1、単位長さ当りの表示解像度の取得手段2から取得した単位長さ当りの表示解像度と、実寸での表示パターンを算出する演算装置5により、実寸での表示パターンのドット数を算出するものであって」、「算出された表示パターンを、表示装置1への出力手段6により表示装置1へ出力することで、表示装置1上に実寸での表示が可能にな」るから、本願発明1の「前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部」と、「前記解像度情報に基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部」である点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「印刷媒体の電子データを入力として、表示装置の表示画面に前記印刷媒体の画像を表示するために必要な表示データを作成する表示データ作成システムであって、
前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部と、
前記解像度情報に基づいて、前記表示画面に表示する前記印刷媒体の画像のサイズを実際に印刷される前記印刷媒体と同じサイズにするために必要な実寸表示データに、前記電子データを変換するデータ変換部とを備えてなる、
表示データ作成システム。」

[相違点1]
本願発明1は、「雑誌・新聞または書籍である」印刷媒体の電子データを入力とするのに対して、引用発明は、スキャナー等の画像取込装置13が取り込む「紙等に記述された文書や画像」が、「雑誌・新聞または書籍である」ことは特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「前記表示装置は、前記表示画面に表示される前記画像を上下左右にスクロールする機能を有する携帯端末であ」るのに対して、引用発明の「液晶ディスプレイ等の表示装置1」は、「前記表示画面に表示される前記画像を上下左右にスクロールする機能を有する携帯端末」ではない点。

[相違点3]
本願発明1では、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部」を備えるのに対して、引用発明の「単位長さ当りの表示解像度の取得手段2」は、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」は取得していない点。

[相違点4]
本願発明1では、「データ変換部」が、「前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて」、電子データを実寸表示データに変換するのに対して、引用発明では、「この実寸データから、表示装置1、単位長さ当りの表示解像度の取得手段2から取得した単位長さ当りの表示解像度と、実寸での表示パターンを算出する演算装置5により、実寸での表示パターンのドット数を算出する」もの、具体的には、例えば、「A5の横線のドット数=A5の横の長さ148mm/(25.4mm/インチ)×85.6DPI=499ドット」、すなわち、「何mm、何インチという実寸データ」に、「単位長さ当りの表示解像度」を乗算することによって、「実寸での表示パターン」を算出するものであって、算出の過程において、「前記印刷サイズ情報」、すなわち、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」を用いていない点。

[相違点5]
本願発明1は、「前記印刷媒体のサイズが前記表示画面よりも大きい場合、前記印刷媒体の原寸表示画像が前記表示画面をはみ出すように表示される」のに対して、引用発明では、「表示画面をはみ出すように表示される」場合があることは特定されていない点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑みて、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」に関連する、上記[相違点3]と[相違点4]について先に検討する。
上記[相違点3]、[相違点4]に記載したとおり、引用発明は、「実寸データ」に「表示解像度」を乗算することで「実寸での表示パターン」を算出するものであって、算出の過程において、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」を取得して用いるものではない。
また、上記[相違点3]、[相違点4]に係る本願発明1の構成である、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」を取得して利用する構成を、引用発明に対して付加する動機付けとなるような記載、示唆はない。

上記[相違点3]、[相違点4]に係る本願発明1の構成、すなわち、「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報と前記表示画面の解像度情報を取得する情報取得部」を備えて、「データ変換部」が、「前記印刷サイズ情報と前記解像度情報とに基づいて」、電子データを実寸表示データに変換する構成は、引用文献2-6にも記載されておらず、また、周知技術とも認められない。

したがって、上記[相違点1]、[相違点2]、[相違点5]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明10-11は、本願発明1に対応する「方法」、「プログラム」の発明であって、本願発明1の上記[相違点3]、[相違点4]の「実際に印刷される前記印刷媒体の印刷サイズ情報」に関する構成と実質的に同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-11も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-11は、当業者が引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2014-69064(P2014-69064)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮下 誠  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 山澤 宏
稲葉 和生
発明の名称 表示データ作成システム、表示データ作成方法及び表示データ作成用コンピュータプログラム  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  
代理人 ▲高▼見 良貴  
代理人 出山 匡  

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