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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1332662
審判番号 不服2015-19609  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-30 
確定日 2017-09-13 
事件の表示 特願2013-165976「警告を備えた無線ゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月9日出願公開、特開2014-428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2006年7月7日(パリ条約による優先権主張2005年7月8日,2005年8月9日,米国)を国際出願日とする出願である特願2008-520389号(以下,「原出願」という。)の一部を,平成25年8月9日に新たな特許出願として出願したものであって,平成26年12月9日付けで手続補正書が提出され,平成27年6月23日付けで拒絶の査定がなされ,これに対し,同年10月30日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され,特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。
なお,平成27年10月30日付けの特許請求の範囲を補正する手続補正は,補正前の請求項5にあった「ギャンブルの機械」という誤記を「ギャンブルの機会」と補正するものである。

2 当審の判断
(1) 補正内容
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年10月30日付けで補正された特許請求の範囲における,【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサと,命令を格納した少なくとも1つのメモリとを有する装置であって,
前記命令は,前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合,前記少なくとも1つのプロセッサに対して,
第1のユーザの第1の移動ゲーム装置の第1の位置を決定し,ただし,前記第1の移動ゲーム装置は,前記第1の移動ゲーム装置を介したゲームを行うために,複数のゲーム活動を前記第1のユーザに利用可能にするように動作可能であり,
前記第1のユーザが前記第1の位置でゲーム活動に関与していることを決定し,
第2のユーザの第2の移動ゲーム装置の位置の変化を決定し,
(a)前記第2の移動ゲーム装置の位置の変化の決定と,(b)前記第1のユーザが前記第1の位置で前記ゲーム活動に関与しているという決定とに少なくとも応じて,前記第1の移動ゲーム装置の前記第1の位置についての情報を含む警告を生成し,
前記警告を前記第2の移動ゲーム装置に出力させるように指示する装置。」

(2) 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用し,本願の原出願の優先日前である平成13年3月21日に頒布された特開2001-70658号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。)
ア 「【0020】図1に示したサーバーシステム20のように,インターネット上でサービスを展開しているサービスプロバイダのサーバーシステムは幾つかの機能を備えている。電子メールの送受信を行うメールサーバ21はほとんどのサーバーシステムに用意されている。本例のサーバーシステム20は,さらに,情報提供サーバ22が用意されており,上述したGPS基地局からの差分情報に加え,地図データサーバ23から地図情報が提供され,さらには,位置関連情報データサーバ24から後述するロールプレイングゲームの情報,このゲームを行っている上で要求される位置関連情報などが提供されるようになっている。また,サービスプロバイダのユーザ情報もパーソナルデータサーバ27に保持されており,提供されるゲームのグレードや位置関連情報の選択に利用される。もちろん,インターネット1に接続されている他のデータベースサーバ4からの情報を情報提供サーバ22を介してユーザに提供することも可能である。
【0021】現在地を求める他の方法として,PHSにより公衆電話網7と接続できる携帯端末6であれば,最も近い基地局7aの識別情報(CSID)を受信して,CSIDから基地局の位置を知ることにより携帯端末6の現在地を求める方法がある。携帯端末に接続されたPHSによりCSIDが得られれば,基地局の位置情報サーバ(CSIDサーバ)29から基地局の座標は簡単に得ることができる。また,携帯端末6が携帯電話としての機能を備えている場合は,携帯電話の基地局7bの座標から携帯端末6の位置を求めることができるが,PHSと比較すると精度は良くない。しかしながら,CDMAなどの今後採用される通信方式によって,求められる位置の精度は格段に向上するものと考えられている。
【0022】図2に,本発明にかかるゲームシステム10が稼働する携帯端末6の環境の一例を示してある。まず,本例の携帯端末6は,端末の現在地を取得するGPSユニット51を備えている。また,携帯端末6は,サービスプロバイダに公衆電話網7あるいはインターネット1を介して接続するためにPHSユニット52と,ダイアルアップ接続機能53を備えている。そして,入出力機構として,LCD61とタッチパネルまたはポインティングデバイスとスイッチ類からなる操作パネル62を備えている。もちろん,これらの加え,ハードディスク装置やフロッピーディスク装置などの記憶装置,デジタルカメラ,プリンタなどの周辺装置を組み込んだ端末あるいは組み込み可能な端末であっても良い。
【0023】この携帯端末6にインストールされている本例のゲームシステム10は,位置情報を用いてロールプレイングゲームが行える構成になっている。そのため,ゲームシステム10は,GPSユニット51を用いて現在地を取得する機能11を備えており,必要に応じてPHSのCSIDを取得して現在地にかかる情報を得ることもできるようになっている。得られた現在地は,距離カウンタ12によって合計されると共に,表示制御部30に提供され,LCD61に表示されるロールプレイングゲームの仮想世界の中の位置(仮想位置)および変位(仮想変位)としても表示される。
【0024】ゲームシステム10は,仮想世界を表示するための表示制御部30を備えており,この表示制御部30は幾つかの機能を備えている。先ず,サーバーシステム20からロールプレイングゲームで表示する画面の情報を取得して表示する機能31を備えている。この機能31は,ゲームシステム10が起動されると,既に最初の画面の情報がダウンロードされていなければ,まず,ダイアルアップ接続機能53を用いてサーバに接続し,ロールプレイングゲームを構成する仮想世界の情報15をダウンロードする。この機能31は,さらに,以下に説明するように,次の画面(仮想世界)を表示する条件が整ったときには,次の画面となる仮想世界の情報をサーバ20から取得する機能も備えている。さらに,GPSユニット51から得られる現在地の移動方向(実変位)から仮想変位の進行方向が常に上を向くように回転して表示するといった機能を付加することも可能である。もちろん,方位ユニットを新たに組み込んでも良い。」

イ 「【0025】表示制御部30は,さらに,取得した現在地,およびその変位(実変位)を仮想世界の仮想位置および仮想変位に変換して表示する機能32を備えている。この機能32により,端末6あるいは端末6を持ったユーザの動きがLCD61に表示されているロールプレイングの画面上に反映される。したがって,ロールプレイングゲームを開始するのに先立って現在地と仮想位置との対応を定め,実変位を仮想変位に変換する比率を定める初期設定を行うことが望ましい。そのため,初期設定を行う機能33が表示制御部30の機能の1つとして用意されており,そこで設定された設定パラメータ13はROMあるいはRAMなどにを記憶される。もちろん,ディフォルトとして設定されているパラメータを使用することも可能である。
【0026】ロールプレイングゲームの画面には,次の画面に移行するための位置あるいは領域が設定されており,その目的地あるいは目的領域はアイコンなどによって表示されている。したがって,以降においては,そのような目的地あるいは目的領域がアイコンで表示されている例を示し,そのアイコンをイベントアイコンと呼ぶことにする。このため,表示制御部30は,現在地を変換した仮想位置あるいは実変位を変換した仮想変位がイベントアイコンと一致あるいはそれに対して設定された所定の範囲に入ったことを判定する,すなわち,仮想世界の移行条件を判定する機能34を備えている。そして,イベントアイコンに仮想位置が重なると(一致および所定の範囲に入ったことを示す),仮想世界を取得および表示する機能31によって次の画面を取得して表示する。
【0027】上述した仮想世界の情報を取得する機能31は,さらに,イベントアイコンによっては,現在地をサーバーシステム20に送信して,現在地に関する情報を含む仮想世界あるいは移動する領域のない単なるコンテンツをサーバーシステム20から取得する機能も備えている。その際,現在地に加えて,システム10に記憶されたユーザの個人情報17をサーバーシステム20に送ったり,サーバーシステム20にある個人情報を用い,現在地に関連する情報のうち,さらにユーザに適した情報が得られるようにすることも可能である。」

ウ 「【0033】先ず,ステップ81で,ダイアルアップ接続機能53を用い,サーバーシステム20と回線を繋ぐ。そして,サーバーシステム20からロールプレイングゲームの最初の画面の情報を受信し,回線を切断する。例えば,図9(a)に示すように,サーバーシステム20と接続すると,ロールプレイングゲームを選択する画面が表示され,ユーザがいずれかを選択するとそのロールプレイングゲームの情報がサーバーシステム20から送信される。
【0034】次に,ステップ82で現在地取得機能11を用いて現在地を取得する。GPSユニット51,あるいはPHSユニット52から現在地を示す情報を取得できることは上述した通りである。もちろん,携帯電話ユニットを搭載している端末であれば,携帯電話ユニットから現在地を示す情報を得ても良い。このとき,現在地が取得できない状況であれば,「現在地を取得できません」などのエラーメッセージを表示する。」

エ 「【0035】次に,ステップ83で,図9(b)に示すように,仮想世界を表示する機能31により,ロールプレイングゲームの最初の画面(第1の仮想世界)111を表示し,ステップ84で仮想位置および仮想変位を表示する機能32によりその画面111の初期位置112に現在地に対応する仮想位置を示す位置アイコン113を表示する。この位置アイコンまたは位置表示アイコン113は,ユーザによって適当にアレンジすることが可能であり,人の姿をしたものや,ユーザの顔を示すものなどが採用できる。
【0036】位置アイコン113が表示された仮想位置に対し,そのときの現在地を初期位置として定めるのに適当な位置であれば,ユーザが適当な操作により初期設定機能33が,その現在地が画面111の初期位置112として設定し,パラメータ13として記憶する。選択されたロールプレイレイングゲームを最初に実行する場合は,そのロールプレイングゲームの開始位置が初期位置112になる。選択したロールプレイングゲームが中断状態にあるのであれば,中断した位置をシステム10あるいはサーバーシステム20で記憶しておき,その中断した位置を初期位置112にしても良い。もちろん,開始位置を選択することも可能である。」

オ 「【0038】図9(b)に示すように,画面111には,目的地として城を示すイベントアイコン115と,2つの町角を示すイベントアイコン116および117が含まれている。したがって,仮想位置113がこれらのイベントアイコン115,116あるいは117に重なると,次の画面(第2の仮想世界)が表示される。したがって,ユーザはこれらのイベントアイコン115,116あるいは117に位置アイコン113が向かうように実世界を移動することによりロールプレイングゲームが進む。
【0039】このようにしてステップ72の初期処理が終了すると,実際にロールプレイングゲームがスタートする。ゲームがスタートするとステップ73で現在地取得機能11で現在地が取得され,それを変換して仮想位置および仮想変位を表示する機能32が画面上に表示する。したがって,ロールプレイングゲームの最初の画面にユーザーが端末6を持って移動する様子が仮想位置および仮想変位で表示される。すなわち,初期設定された値,もしくはデフォルトであらかじめ決まっている値(たとえば画面上の1dot=1mなど)に基づき,GPSユニット51による実位置の変化あるいは移動(実変位)にあわせて画面上の位置アイコン113が移動する。実際には,GPSによって得られた位置情報(N36°9’3.41”,E137°57’20.73”など)で値が変化した場合,その実変位を,画面上の水平,垂直の距離(仮想変位,H90dot,V90dotなど)に初期設定されたパラメータ13を用いて計算して,その位置を表示する。
【0040】ステップ73で得られた現在地の移動(実変位)は,画面上に仮想変位として表示すると共に,距離カウンタ12に加算される。現在地あるいは実変位は,サーバーシステム20から適当なタイミングで差分情報を得てDGPSにより求めても良い。しかしながら,そのために通信時間および計算時間がかかる。したがって,本例ではGPS単独測位により現在地および実変位を求めている。単独測位では,誤差が上記のように数10m程度あると共に,セレクティブアベイラビリティー(SA)が含まれるので誤差がランダムになる可能性があり,現在地にランダムなフラクチュエーションが含まれる可能性がある。このため,実際のロールプレイングゲームでは,適当なタイミングで位置アイコン113とイベントアイコン115などを重ねないと,次のタイミングでは離れてしまうことなどが起こりうる。したがって,ロールプレイングゲームとしてのゲーム感覚が増し,面白いゲームを提供することができる。」

カ 「【0053】このように,本例のゲームシステム10は,ユーザの現在地を取得し,それを制御要素してゲームを進めるので,ゲームシステム10の中に現在地に関わる情報を埋め込むことができる。さらに,サーバーシステム20と通信で接続できるようにすることにより,サーバーシステム20から現在地に関わる情報を取得し,ゲームのイベントとして随時埋め込むことができる。
【0054】さらに,イベントアイコン,特に実在アイコンとして他のユーザを示すアイコンを設けることも可能である。図11(d)などに示した最初の画面111に戻った状態でユーザが移動し,この画面111に設けられた町角アイコン117に位置アイコン113が重なると,図13(a)に示した次の画面141がサーバーシステム20から取得され,表示される。この詳しい過程は上述したものと同じなので省略する。新しい仮想世界141が表示されると,その入り口に位置アイコン113がセットされ,この仮想世界141に用意されたイベントアイコンに向かって移動できるようになる。この仮想世界141は,サーバーシステム20が送られてきた現在地の情報に基づいて現在地に関連する情報を選択して埋め込んだ世界である。その際,同じロールプレイングゲームを行っている他のユーザであって,この情報端末6のユーザ(仮にA氏とする)に対し実世界における距離がたとえば1km程度の適当な範囲にいる端末がサーチされる。そして,そのような端末が見つかるとそのユーザ(仮にJ氏とする)のデータ,たとえば,メールアドレスなどのアクセス情報がアイコン化された画面141に埋め込まれる。このため,この仮想世界141には,レストランを示すアイコン142と,コンビニエンスストアを示すアイコン143に加え,近くにいるJ氏のアイコン144という3つの実在アイコンが設けられている。
【0055】この画面141が端末6のLCD61に表示された状態で,端末6を持ったユーザが移動し,J氏のアイコン144と重なると,図4に示したステップ74で,移行条件を判断する機能34によりイベントアイコンと重なったことが判断され,さらに,ステップ75でイベントアイコンが他のユーザであることが判断される。したがって,ステップ77でチャットを行う処理をする。
【0056】図7に,チャットの詳しい処理を示してある。先ずステップ95で,既に説明したようなサーバー接続画面を表示してサーバーシステム20とダイアルアップ接続を行う。次に,端末6(ゲームシステム10)からアクセス相手,すなわちJ氏の情報がサーバーシステム20に送られる。サーバーシステム20においては,ステップ101でJ氏の端末に図13(b)に示したような画面を表示して近くに同じロールプレイングゲームを楽しんでいるA氏がいることと,チャットの申し込みがあったことを伝える。ステップ102において,J氏から接続が許可されると,ステップ97でA氏の端末6に許可されたことを伝える。そして,ステップ98で,A氏とJ氏の間のネットワークを確立し,インターネットを介してデータを交換(送受信)できるようにする。このようにして双方を接続する環境が整うと,ステップ99で,A氏とJ氏とが図13(c)に示すようなチャットを行う。
【0057】このように,共通のゲームを行っているユーザのアイコンを示してチャットを行うことが可能である。さらに,本例のゲームシステムを用いると,双方の位置情報がわかるので,仮想世界である画面上で近くに居るだけでなく,実世界でも距離的に近い位置に居るユーザ同士を紹介することができる。したがって,両者が望めば,実際に町角で両者が出会うことが可能となる。このため,本例のロールプレイングゲームにより,出会い頭というような,実世界ではありうる簡単なコミュニケーションを発生させることが可能となり,それまでは面識のない他人と出会う機会を作ることができる。」

上記「ア」乃至「カ」の記載を総合すると,刊行物1には,次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。
「電子メールの送受信を行うメールサーバ,GPS基地局からの差分情報を提供する情報提供サーバ,地図情報を提供する地図データサーバ,ロールプレイングゲームの情報及びこのゲームを行っている上で要求される位置関連情報などを提供する位置関連情報データサーバ,サービスプロバイダのユーザ情報を保持するパーソナルデータサーバを含むサーバーシステムであって,
携帯端末は,端末の現在地を取得するGPSユニットと,サービスプロバイダに公衆電話網あるいはインターネットを介して接続するためにPHSユニットと,ダイアルアップ接続機能と,LCDとタッチパネルまたはポインティングデバイスとスイッチ類からなる操作パネルで構成された入出力機構と,ハードディスク装置やフロッピーディスク装置などの記憶装置と,GPSユニットを用いて現在地を取得する現在地取得機能と,距離カウンタと,を備え,
また,携帯端末は,インストールされているゲームシステムによって,ロールプレイングゲームが行えるものであって,
該ゲームシステムは,仮想世界を表示するための表示制御部を備えており,
表示制御部は,サーバーシステムからロールプレイングゲームで表示する画面の情報を取得して表示し,さらに仮想世界の情報をサーバーシステムから取得して表示する機能を有する機能を備え,
また,表示制御部は,取得した現在地,およびその変位(実変位)を仮想世界の仮想位置および仮想変位に変換して表示する機能を備えることで,携帯端末あるいは携帯端末を持ったユーザの動きがLCDに表示されているロールプレイングの画面上に反映させるものであって,
該ロールプレイングゲームにおいて,現在地取得機能を用いて現在地を取得し,ロールプレイングゲームの最初の画面(第1の仮想世界)を表示し,その画面の初期位置に現在地に対応する仮想位置を示す位置アイコンを表示し,現在地の移動(実変位)は,画面上に仮想変位として表示され,ロールプレイングゲームの最初の画面にユーザーが携帯端末を持って移動する様子が仮想位置および仮想変位で表示され,
さらに,携帯端末において,実在アイコンとして他のユーザを示すアイコンを設けることも可能であり,
具体的には,あるユーザ(以下「A氏」という。)の携帯端末には,他のユーザ(以下「J氏」という。)を示す実在アイコンを設けることが可能であり,A氏の携帯端末に対し実世界における距離がたとえば1km程度の適当な範囲にいる,同じロールプレイングゲームを行っているJ氏の携帯端末がサーチされ,そのような携帯端末が見つかると,J氏のメールアドレスなどのアクセス情報がアイコン化されて,サーバーシステムが送られてきた現在地の情報に基づいて現在地に関連する情報を選択して埋め込んだ世界である仮想世界である画面に埋め込まれ,この画面がA氏の携帯端末のLCDに表示された状態で,携帯端末を持ったA氏が移動し,J氏のアイコンと重なると,チャットを行う処理をし,
該チャットを行う処理は,サーバーシステムとダイアルアップ接続を行い,J氏の情報がサーバーシステムに送られ,J氏の携帯端末に,近くに同じロールプレイングゲームを楽しんでいるA氏がいることと,チャットの申し込みがあったことを伝える画面を表示させ,J氏が接続を許可すると,A氏の携帯端末に許可されたことを伝え,A氏とJ氏の間のネットワークを確立し,インターネットを介してデータを交換(送受信)できるようにして,A氏とJ氏とがチャットを行うシステム。」

(3) 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
後者の「サーバーシステム」は,公衆電話網あるいはインターネットを介してユーザの携帯端末と接続されるものであるから,前者の「装置」に相当し,「サーバーシステム」である以上,「少なくとも1つのプロセッサと,命令を格納した少なくとも1つのメモリとを有する」ことは,当業者にとって自明である。
後者の「携帯端末」は,前者の「移動ゲーム装置」に相当する。
後者の「A氏」は,「J氏のメールアドレスなどのアクセス情報がアイコン化されて,サーバーシステムが送られてきた現在地の情報に基づいて現在地に関連する情報を選択して埋め込んだ世界である仮想世界である画面に埋め込まれ,この画面がA氏の携帯端末のLCDに表示された状態で,携帯端末を持ったA氏が移動し,J氏のアイコンと重なると,チャットを行う処理」がなされるのであるから,A氏の携帯端末の位置の変化が決定されていることは明らかであって,後者の「A氏」は,前者の「第2のユーザ」に相当する。
後者の「J氏」は,「(イ)A氏の携帯端末に対し実世界における距離がたとえば1km程度の適当な範囲にいる」こと,「(ロ)同じロールプレイングゲームを行っている」ことを満たすと,「(ハ)J氏のメールアドレスなどのアクセス情報がアイコン化されて,サーバーシステムが送られてきた現在地の情報に基づいて現在地に関連する情報を選択して埋め込んだ世界である仮想世界である画面に埋め込まれ,この画面がA氏の携帯端末のLCDに表示」されるものである。
そして,上記(イ)から,「J氏の携帯端末の位置を決定している」ことは明らかである。
同様に上記(ロ)から,「J氏の携帯端末は,前記J氏の携帯端末を介したゲームを行うために,ゲーム活動をJ氏に利用可能にするように動作可能」となっていることは明らかである。
したがって,上記(イ)及び(ロ)より,後者は,「J氏がJ氏の位置でゲーム活動に関与していることを決定」しているともいえる。
また,上記の「A氏の携帯端末の位置の変化が決定されている」ことと,上記(ハ)から,「A氏の携帯端末の位置の変化が決定」と,「J氏がJ氏の位置でゲーム活動に関与しているという決定とに少なくとも応じて,J氏の携帯端末の前記J氏の位置についての情報を含むアクセス情報を生成し,前記アクセス情報をA氏の携帯端末に出力」させていることは明らかである。
よって,後者の「J氏」は,前者の「第1のユーザ」に相当する。
以上のことより,後者の「J氏」が,前者の「第1のユーザ」に相当することから,ロールプレイングゲームにおいてJ氏が使用中の「J氏の携帯端末」は,前者の「第1の移動ゲーム装置」に相当することとなり,その「J氏の携帯端末」の位置は,前者の「第1の位置」に相当するものとなる。
後者の「A氏」が,前者の「第2のユーザ」に相当することから,ロールプレイングゲームにおいてA氏が使用中の「A氏のユーザの携帯端末」は,前者の「第2の移動ゲーム装置」に相当することとなり,その「A氏の携帯端末」の位置は,前者の「第2の位置」に相当するものとなる。
刊行物1発明において,位置の決定,ゲーム活動に関与していることの決定,位置の変化の決定,アクセス情報の生成,アクセス情報を携帯端末への表示について,サーバーシステムが司っていることは自明である。
刊行物1発明において,J氏の携帯端末に「近くに同じロールプレイングゲームを楽しんでいるA氏がいること」及び,「チャットの申し込みがあったこと」を伝える画面の表示は,A氏の移動ゲーム装置の位置の変化の決定と,J氏がJ氏の位置でゲーム活動に関与しているという決定とに少なくとも応じて,A氏の移動ゲーム装置のA氏の位置についての情報を含むものといえるから,前者の「警告」に相当する。
以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「少なくとも1つのプロセッサと,命令を格納した少なくとも1つのメモリとを有する装置であって,
前記命令は,前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合,前記少なくとも1つのプロセッサに対して,
第1のユーザの第1の移動ゲーム装置の第1の位置を決定し,ただし,前記第1の移動ゲーム装置は,前記第1の移動ゲーム装置を介したゲームを行うために,ゲーム活動を前記第1のユーザに利用可能にするように動作可能であり,
前記第1のユーザが前記第1の位置でゲーム活動に関与していることを決定し,
第2のユーザの第2の移動ゲーム装置の位置の変化を決定し,
(a)前記第2の移動ゲーム装置の位置の変化の決定と,(b)前記第1のユーザが前記第1の位置で前記ゲーム活動に関与しているという決定とに少なくとも応じて,前記第1の移動ゲーム装置の前記第1の位置についての情報を含む警告を生成し,
前記警告を前記第2の移動ゲーム装置に出力させるように指示する装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点1>
ゲーム活動に関して,本願発明は「複数のゲーム活動を前記第1のユーザに利用可能にするように動作可能」としているのに対して,刊行物1発明では「ロールプレイングゲーム」を行っているが,他のゲーム活動をさらに利用可能として「複数のゲーム活動を前記第1のユーザに利用可能にするように動作可能」としているかについては不明である点。

(4) 判断
相違点1について
移動ゲーム装置において,複数のゲームを実行可能とすること,すなわち「複数のゲーム活動を前記第1のユーザに利用可能にするように動作可能」とすることは,他に刊行物を挙げるまでもなく,ゲームの技術分野における周知技術である。
そして,周知技術を踏まえれば,刊行物1発明において,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは,つまり,移動ゲーム装置において,複数のゲームを実行可能とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
また,その結果として,本願発明において格別の作用効果が生じるものでもないから,本願発明は,刊行物1発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-12 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-02 
出願番号 特願2013-165976(P2013-165976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉村 尚
発明の名称 警告を備えた無線ゲームシステム  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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