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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1332663
審判番号 不服2015-21372  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-02 
確定日 2017-09-13 
事件の表示 特願2014-510457「容器内の化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日国際公開、WO2012/154918、平成26年 6月 5日国内公表、特表2014-513695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月10日(パリ条約による優先権主張:平成23年5月10日(欧州特許庁)、平成24年5月4日(欧州特許庁))を国際出願日とする出願であって、平成26年10月29日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年12月2日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[結論]
平成27年12月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の
「少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器内の化粧品組成物であって、前記外容器が、前記内袋を封入し、かつ前記内袋を圧縮する高圧ガスを充填し、前記内袋に取り付けられる弁機構が、前記内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能であり、前記内袋内の前記組成物は、
a)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤(A)と、
b)0.1?10重量%の脂肪アルコール(B)と、
c)0.1?10重量%の二酸化炭素と、
を含む、化粧品組成物。」を、
「少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器内の化粧品組成物であって、前記外容器が、前記内袋を封入し、かつ前記内袋を圧縮する高圧ガスを充填し、前記内袋に取り付けられる弁機構が、前記内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能であり、前記内袋内の前記組成物は、
a)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤(A)と、
b)0.1?10重量%の脂肪アルコール(B)と、
c)0.1?10重量%の二酸化炭素と、
を含み、
前記容器内の前記内袋が、平坦な外側縁を有し、且つ前記袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を備える、化粧品組成物。」とする補正(以下、「補正事項1」という。なお、下線部は補正箇所を示す。)を含むものである。

2 補正の目的等
補正事項1は、補正前の内袋について、「容器内の前記内袋が、平坦な外側縁を有し、且つ前記袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を備える」との限定を発明特定事項として追加するものである。
これは、本件出願当初の請求項8における「前記内袋が、平坦な外側縁を有する」との記載、及び、同請求項9における「前記袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を備える」との記載に基づきなされたものといえる。
このため、補正事項1は新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。また、内袋の形状を限定するものであり、補正の前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項1は特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たしている。

3 独立特許要件
補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の場合に該当するから、同条第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合しているか否かを検討する。
(1)補正事項1による本願請求項に係る発明
補正事項1による本願請求項1に記載される発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりである。
「少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器内の化粧品組成物であって、前記外容器が、前記内袋を封入し、かつ前記内袋を圧縮する高圧ガスを充填し、前記内袋に取り付けられる弁機構が、前記内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能であり、前記内袋内の前記組成物は、
a)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤(A)と、
b)0.1?10重量%の脂肪アルコール(B)と、
c)0.1?10重量%の二酸化炭素と、
を含み、
前記容器内の前記内袋が、平坦な外側縁を有し、且つ前記袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を備える、化粧品組成物。」
(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物は、次の刊行物A-Cである。
A 特表2006-518653号公報
B 特表2009-501781号公報
C 特表2009-522173号公報
(3)引用刊行物の記載事項
刊行物A-C(原査定の引用文献1-3)には、次の事項が記載されている。
ア 刊行物Aの記載事項
(ア) 「【請求項1】
包装されたガス溶解製品であって、
第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品と、
前記ガス溶解製品を保持し且つ小出しするための組立体と、を有し、
前記組立体は、シールされた剛性の外容器(1)と、ガス不透過性材料で作られ、前記ガス溶解製品を保持し、前記外容器(1)内に気密に配置され且つ前記外容器(1)との間に空間(4)を形成する可撓性内容器(2)と、前記内容器(2)内に収容された前記ガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサ(3)と、を有し、
前記空間(4)内に、第2のガスが前記第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填されることを特徴とする、包装されたガス溶解製品。」
(イ) 「【請求項4】
前記製品ディスペンサは、更に、前記ガス溶解製品を前記内容器内に注入し且つ前記ガス溶解製品を小出しするための弁組立体を有する、請求項1?3の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。」
(ウ) 「【請求項16】
前記ガス溶解製品は、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、スプレー、およびエアロゾル発泡体からなるグループから選択される形態をなす、請求項1?15の何れか1項に記載の包装されたガス溶解製品。」
(エ) 「【0010】
典型的には、最初、内容器と外容器との間の空間を充填ガスで充填する。次に、内容器を、溶解ガスを含有するガス溶解製品で充填する。その結果、内容器をガス溶解製品で充填するとき、内容器と外容器との間の容積が減少することにより、充填ガスの圧力が増大する。ガス溶解製品を内容器2から小出しすると、充填ガスの圧力が低下するが、ガス溶解製品中に溶解された第1のガスの第1の圧力以下に低下することは決してない。従って、本発明は、ガス溶解製品中に溶解されたガスの濃度を、小出しする間、維持することを可能にする。」
(オ) 「【0026】
本発明は、その第1の側面において、第1の圧力で第1のガスが溶解された製品と、ガス溶解製品を保持しかつ小出しする組立体と、を有する包装されたガス溶解製品を提供する。第1のガスは、適用例に望まれる任意のガスである。例えば、1つの実施形態では、第1のガスは酸素であり、製品は化粧品または治療薬製品である。他の実施形態では、第1のガスは二酸化炭素であり、製品は化粧品である。製品は、ガスが不飽和であってもよいし、飽和であってもよいし、過飽和であってもよい。製品は、実質的に任意の形態にすることができる。例えば、製品として、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、液体、溶液、スプレーおよびエアロゾル発泡体からなるグループから選択される形態をなす。」
(カ) 「【0031】
1つの実施形態では、整理番号35,540の米国特許出願に詳細に説明されているように、内容器2は、ガセット、即ち、まち付きの底を形成するように1つの縁部に沿って折畳まれ、他の3つの縁部に沿ってシールされる。内容器2に製品が充填されると、内容器2が膨脹し且つガセット部分が外容器1の底に沿って拡大する。もし内バッグが自由空間内に吊下げられると、製品の質量は、外容器1の底に載るのではなく、内容器とディスペンサとの間の接合部によって支持されることになるので、製品が内バッグ内にあるとき、ガセットは、製品ディスペンサ3と内容器2との間のシールに過度の力が作用することを防止するのに役立つ。ガセットは、バッグがより均一にかつより完全に充填されるように、充填作業を制御する。」
(キ) 「【0035】
内容器と外容器との間の空間を満たす第2のガスは、内容器2の壁を透過することができない任意のガスである。第2のガスは、製品中に含まれる第1のガスと同じガスでもよいし、異なるガスでもよい。第2ガスの例は、限定するわけではないが、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、窒素、二酸化炭素ガス、酸素、及びそれらの任意の組合せを含む。好ましくは、第2のガスは、不活性の非爆発性ガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、又は、ヘリウム又はアルゴン等の希ガスの1つである。第2のガスは、好ましくは、製品を小出しするための非接触推進剤として役立ち、製品の完全な送出、即ち、送出される全充填重量の95%よりも多い送出を可能にする。」
イ 刊行物Bの記載事項
(ア) 「【請求項1】
(A)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤、
(B)0.1?10重量%の脂肪族アルコール、
(C)0.1?10重量%の二酸化炭素、および
(D)0?1重量%の追加的な噴射剤
を含むことを特徴とするエアロゾル組成物。」
(イ) 「【0009】
本発明は、ツルツルした油っぽい毛髪の感触を低下または軽減させると共に、改善された手触り、櫛通り、位置決め、および体積低減を毛髪へ提供することができると同時に、優れた拡散、拡散する感じ、および感触を有する、濃厚なクリーム状のレオロジーを有するエマルションで処方される、安定なエアロゾルクリームムース組成物、好ましくはヘアケア組成物を提供する。
【0010】
驚くことに、カチオン性界面活性剤と、高級アルコールと、好ましくは唯一の噴射剤としての二酸化炭素との製剤を利用することにより、極めて濃厚で、クリーム状の、光沢のあるエアロゾルムースが達成できることが分かった。」
(ウ) 「実施例1
【0076】
【表1】


(エ) 「【0087】
比較実験
ムース稠度
あまりクリーム状ではない稠度に付随して、日本国特許第3,616,154号の実施例1に記載のエアロゾルムース(写真2参照)は、本発明の実施例1のムース(写真1参照)よりもかなり大きな泡をもたらす。エアロゾルムースの顕微鏡写真(写真3/本発明の実施例1)および(写真4/日本国特許第3,616,154号の実施例1)は共に、0.5mmスケールで表されている。
【0088】
【表7】

【0089】
写真3および4並びに上記の表から理解できるように、本発明によるエアロゾルムースの泡は、日本国特許第3,616,154号の実施例1のエアロゾルムースの泡よりも約7倍小さい。これにより、よりクリーム状で光沢のある稠度と、更にはより良好なコンディショニング性能がもたらされる。より細かな泡を含有するフォームは、毛髪に適用した後、より均質な分布をもたらす。
【0090】
半頭試験
更にスタイリストが行った半頭試験は、日本国特許第3,616,154号の実施例1のエアロゾルムースと比較して、本発明の実施例1によるエアロゾルムースの性能優位も示している。半頭比較によって、ヘアスタイリストは、ヘア製品の効果を、定義した標準と比較して評価することができる。このことは、試験製品の一試料を一人のモデルの頭に適用した後、様々な技術整髪評価基準に準じて、比較試料または未処理の毛髪と直接比較することを伴う。この試験は、試験試料をそれぞれ頭の半分づつに適用することから半頭比較と呼ばれ、そのため、完全に同一の試験条件(全く同じ頭部構造、損傷程度、毛髪の色、など)において直接比較することができる。本発明(実施例1)によるエアロゾルムースの性能を、日本国特許第3,616,154号の実施例1のエアロゾルムースの性能と比較した。エアロゾルムースはいずれも、リンスオフコンディショナーとして適用した。半頭試験の詳細な説明を、更に以下に示す。
【0091】
次のヘアケア評価基準について、経験豊富なスタイリストが評価した:
・ムースの分配
・ムースのクリームの質
・適用して洗い流した後の濡れた状態での櫛通り
・乾燥後の乾き具合
・毛髪の光沢
【0092】
5人のボランティアで半頭試験を行い、数字は、各評価基準について何人のボランティアをどのように判断したかを表している:
【0093】
【表8】

【0094】
結果から、本発明によるエアロゾルムースは、適用中に毛髪での分配がより良好で、よりクリーム状で、櫛通りがより良く、乾き具合もより良好で、また毛髪の光沢がより鮮明であることが明白に示された。」
ウ 刊行物Cの記載事項
(ア) 「【請求項1】
不透過性材料から形成された、バッグ(4)を所望の製品で充填することを可能にするバルブ(6)によってシールされた開口が設けられたフレキシブルなバッグ(4)有する改良されたバッグオンバルブであって、空のバッグ(4)が長手方向軸線(X-X′)を中心に丸められているか又は折り畳まれておりかつ丸められた位置に維持されている形式のものにおいて、バッグ(4)に、バッグが所望の製品で充填されているときにバッグ(4)が伸長することを可能にする手段が設けられていることを特徴とする、改良されたバッグオンバルブ。
【請求項2】
バッグ(4)に、上方へ折り畳まれることができるフラップ(16)を形成した、空のバッグ(4)の内側に向かって折り畳まれた底部(14)が設けられている、請求項1記載のバッグオンバルブ。
【請求項3】
バッグ(4)が、重ね合わされた2つの層(12,13)と、2つに折り畳まれかつ該2つの層(12,13)の間に挿入された底部(14)とから形成されており、2つの層(12,13)と底部(14)とが、上方へ折り畳まれることができる2つのフラップ(16)を形成するために、接触する領域におけるガース(15)において溶接されている、請求項1又は2記載のバッグオンバルブ。」
(イ) 「【0002】
バッグオンバルブは、例えばエーロゾル缶等の圧力下の製品のためのディストリビュータにおいて使用されている。」
(ウ) 「【0005】
この丸められたバッグオンバルブは次いで、バッグオンバルブのバルブによって遮断される開口を備えた受容体に導入される。
【0006】
受容体にバッグオンバルブを組み付けることによってこのように得られるディストリビュータは、次いで、一方では、バッグオンバルブに圧力をかけられながら導入される、分配されるべき製品と、他方では、受容体とバッグオンバルブとの間に形成された空間を充填する、圧力をかけられたガスとで充填され、このガスは、バルブが、バルブに取り付けられたスプレーボタンによって作動させられた場合に製品を分配するための圧力源として働く。」
(エ) 「【0017】
充填中にバッグが伸長することを可能にするこれらの手段は、有利には、バッグの底部が空のバッグの内側に向かって折り畳まれており、これにより、折り返されることができるフラップを形成していることによって実現されている。」
(オ) 「


(カ) 「


(キ) 「


(4)刊行物Aに記載された発明
ア 刊行物Aには、包装されたガス溶解製品であって、第1のガスを第1の圧力で溶解させたガス溶解製品と、前記ガス溶解製品を保持し且つ小出しするための組立体と、を有し、前記組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ、前記ガス溶解製品を保持し、前記外容器内に気密に配置され且つ前記外容器との間に空間を形成する可撓性内容器と、前記内容器内に収容された前記ガス溶解製品と流体連通している製品ディスペンサと、を有し、前記空間内に、第2のガスが前記第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填されることを特徴とする、包装されたガス溶解製品が記載されている(上記(3)ア(ア))。前記製品ディスペンサは、ガス溶解製品を小出しするための弁組立体を有することが記載されている(上記(3)ア(イ))。製品は、エアロゾル発泡体等の形態をなすことが記載されている(上記(3)ア(ウ)、(オ))。第1のガスが二酸化炭素であり、製品が化粧品である実施形態が記載されている(上記(3)ア(オ))。前記内容器がまち付きの底を形成するように1つの縁部に沿って折り畳まれ、他の3つの縁部に沿ってシールされることが記載されている(上記(3)ア(カ))。第2のガスは、製品を小出しするための非接触推進剤として役立ち、製品の完全な送出、即ち、送出される全充填重量の95%よりも多い送出を可能にすることが記載されている(上記(3)ア(キ))。
イ そうすると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。
「包装されたエアロゾル発泡体化粧品であって、第1のガスを第1の圧力で溶解させた前記化粧品と、前記化粧品を保持し且つ小出しするための組立体と、を有し、前記組立体は、シールされた剛性の外容器と、ガス不透過性材料で作られ、前記化粧品を保持し、前記外容器内に気密に配置され且つ前記外容器との間に空間を形成する可撓性内容器と、前記内容器内に収容された前記化粧品と流体連通している製品ディスペンサと、を有し、前記空間内に、第2のガスが前記第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填され、前記製品ディスペンサは前記化粧品を小出しするための弁組立体を有し、前記第1のガスは二酸化炭素であり、第2のガスは化粧品を小出しするための非接触推進剤である、包装された化粧品」
(5)対比
補正発明と引用発明Aを対比する。
ア 引用発明Aの「ガス不透過性材料で作られ」る「可撓性内容器」は、本願明細書【0087】に、補正発明の「内袋」は、可撓性であり、ガス障壁の機能を果たす材料から作製されてもよいことが示されていることからみて、補正発明の「内袋」に相当する。
イ 引用発明Aの「シールされた剛性の外容器」と、「前記外容器内に機密に配置され且つ前記外容器との間に空間を形成する可撓性内容器」とを有する「組立体」は、補正発明の「少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器」であって、「前記外容器が、前記内袋を封入する」ものに相当する。
ウ 引用発明Aにおける「第2のガス」は、「第1の圧力よりも高い初期充填圧力で充填され」る、「製品を小出しするための非接触推進剤」であるから、補正発明における「内袋を圧縮する高圧ガス」に相当する。
エ 引用発明Aにおける「弁組立体」は、内容器内のエアロゾル発泡体化粧品を小出しにするためのものである(上記(3)ア(イ))。そして、「小出し」とは製品を複数回に分けて放出することであるから、前記弁組立体は、補正発明の「内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能」な弁機構に相当するといえる。
オ そうすると、補正発明と引用発明Aとは
「少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器内の化粧品組成物であって、前記外容器が、前記内袋を封入し、かつ前記内袋を圧縮する高圧ガスを充填し、前記内袋に取り付けられる弁機構が、前記内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能であり、前記内袋内の前記組成物は、c)二酸化炭素を含む、化粧品組成物。」
の点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:補正発明は、「組成物は、a)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤(A)と、b)0.1?10重量%の脂肪アルコール(B)と、c)0.1?10重量%の二酸化炭素と、を含」むのに対し、引用発明Aには、組成物中のc)二酸化炭素の量が特定されておらず、a)カチオン性界面活性剤及びb)脂肪アルコールを含むことが特定されていない点。
相違点2:補正発明は、「前記容器内の内袋が、平坦な外側縁を有し、且つ前記袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を備える」のに対し、引用発明Aにはその旨特定されていない点。
(6)判断
上記相違点1、2について検討する。
ア 相違点1について
刊行物Bの記載から、上記a)-c)を満たし、濃厚なクリーム状で光沢に優れ、良好なコンディショニング性能をもたらすヘアケアエアロゾルクリームムース組成物が本願優先権主張日前に公知である(上記(3)イ(ア)-(エ))。そして、ヘアコンディショニングのための組成物は頭髪用の化粧品組成物に他ならないから、引用発明Aの包装されたエアロゾル発泡体化粧品として、同じく二酸化炭素を含有する上記ヘアケアエアロゾルクリームムース組成物を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。
イ 相違点2について
刊行物Aには、内容器として、まち付きの底が形成され、製品が充填されると膨張し、ガセット部分が外容器の底に沿って拡大する形態のものが例示されている(上記(3)ア(カ))。一方、刊行物Cの記載から、まち付きの底を有する内袋と外容器とを備える容器内のエアロゾル組成物において、前記内袋に平坦な外側縁、及び、袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を設けることは、本願優先権主張日前において公知である(上記(3)ウ(ア)-(カ))。そうすると、引用発明Aの外容器に配置される可撓性の内容器において、平坦な外側縁及び袋の上端部に向かって指向される底部折り曲げ部を設けることは、当業者が容易になしうる事項である。
ウ 補正発明の効果について
補正発明により奏される効果(本願明細書【0008】、【0011】-【0016】)のうち、様々な高圧ガスを使用可能であるという効果、及び、消耗可能な量が増加するという効果については、刊行物Aに、内容器と外容器との間の空間を満たす第2のガスが内容器の壁を透過することができない任意のガスであること(上記(3)ア(キ))、及び、第2のガスが製品を小出しするための非接触推進剤として役立ち、製品の完全な送出、即ち、送出される全充填重量の95%よりも多い送出を可能にすること(上記(3)ア(キ))が記載されているから、格別の作用効果とはいえない。また、高いクリーム度及び豊潤度をもたらすという効果については、刊行物Aにおいて製品中のガス溶解濃度を維持できることが開示されている組立体(上記(3)ア(ア)、(エ))に対し、刊行物Bに記載のそれ自体が高いクリーム度及び豊潤度を有する組成物(上記(3)イ(イ)-(エ))を適用すれば、ガス溶解濃度が維持されるため品質が低下しにくく、良好な製品を得られることは、当業者に予測しうる範囲内の事項である。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 上記第2で結論したとおり平成27年12月2日付け手続補正書による補正は却下されたので、本願に係る発明は平成27年1月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つの内袋と、外容器と、を備える容器内の化粧品組成物であって、前記外容器が、前記内袋を封入し、かつ前記内袋を圧縮する高圧ガスを充填し、前記内袋に取り付けられる弁機構が、前記内袋内に格納される組成物を発泡体として前記高圧ガスの圧力により放出することができる開放位置と、前記組成物を放出することができない閉鎖位置との間で移動可能であり、前記内袋内の前記組成物は、
a)0.1?5重量%のカチオン性界面活性剤(A)と、
b)0.1?10重量%の脂肪アルコール(B)と、
c)0.1?10重量%の二酸化炭素と、
を含む、化粧品組成物。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由とされた、平成26年10月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のとおりである(特許法第29条第2項の適用部分について)。
「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2006-518653号公報
2.特表2009-501781号公報 」

3 当審の判断
本願発明1は、前記第2の3(1)に記載した補正発明を含むものであって、引用発明Aとの間に上記第2 3(5)で挙げた相違点2を有しないものである。
そうすると、上記第2 3(5)、(6)で相違点1について検討したとおり、引用発明Aに対して刊行物Bに記載の構成を採用することは、当業者が容易になしうることであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明A及び刊行物Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願については、他の請求項について検討するまでもなく上記理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-17 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-02 
出願番号 特願2014-510457(P2014-510457)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 麻紀子今村 明子大島 彰公  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 関 美祝
長谷川 茜
発明の名称 容器内の化粧品組成物  
代理人 大宅 一宏  
代理人 飯野 智史  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  

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