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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1332667
審判番号 不服2016-685  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-15 
確定日 2017-09-13 
事件の表示 特願2014-114908「トップエミッション型青色発光OLEDおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月20日出願公開、特開2015- 76602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成26年6月3日の出願(パリ条約による優先権主張2013年10月12日、中国)であって、平成27年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年1月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、同年11月30日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年2月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

(2)本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成29年2月28日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「陽極とする反射電極と、
前記反射電極の上に形成される正孔注入層と、
前記正孔注入層の上に形成される発光層と、
前記発光層の上に形成される電子輸送層と、
陰極として前記電子輸送層の上に形成される透明電極と
を備え、
前記正孔注入層は、青色の光を反射し、かつ、青色の光以外の光を吸収するフタロシアニン系化合物を含み、前記フタロシアニン系化合物が前記正孔注入層内で上方に設けられ、前記正孔注入層の厚さが100nmより大きい
ことを特徴とするトップエミッション型青色発光OLED。」(以下「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は概ね次のとおりである。
本件出願の平成28年1月15日付けで手続補正がなされた請求項1ないし8に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例1.特開2005-150042号公報
引用例2.特開2011-175952号公報
引用例3.特開2007-5784号公報
引用例4.特開2007-206240号公報

引用例1に記載された発明において、正孔注入層の厚さを100nmより大きい厚さとなすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。

3 引用例の記載事項
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由で引用例1として引用された刊行物である特開2005-150042号公報には、次の事項が図とともに記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。
(1)「【0032】
本発明の第2の実施形態の有機EL発光素子を図2に示す。図2に示した有機EL発光素子は、反射層5に代えて高屈折率層11を形成したことを除いて第1の実施形態と同様の層構成を有する。高屈折率層以外の層は、第1の実施形態と同様の材料から形成することができる。
【0033】
高屈折率層11は、陽極から注入される正孔を通過させると同時に、高屈折率を有する材料から形成される。正孔の通過に対するポテンシャル障壁を形成しないために、高屈折率層11は、4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、より好ましくは5.0eV以上の仕事関数を有することが望ましい。また高屈折率層11は、可視光領域において2.0以上、好ましくは2.0?3.0の屈折率を有することが好ましい。高屈折率層11は、SnO_(2)、In_(2)O_(3)、ITO、IZO、ZnO:Alのような導電性金属酸化物を用いて形成することができる。エリプソメータで測定した際に2.2(450nm)、2.0(620nm)の屈折率を有するIZOを用いることが特に望ましい。
【0034】
本実施形態の有機EL発光素子においては、有機発光層7から陽極側に発せられる光を正孔注入層4と高屈折率層11の界面にて反射された光と有機発光層7から透明陰極10側に発せられる光との間の多重干渉を起こさせないようにすることによって、特性波長のみではなく広い波長範囲において、色純度の確保および高い光取り出し効率を達成することが可能となる。
・・・略・・・
【0038】
本実施形態において、高屈折率層11は、連続層を形成するのに充分な10?40nm、好ましくは10?30nmの膜厚を有することが望ましい。また、本実施形態においても、正孔輸送層6の膜厚によって干渉を制御することが望ましい。高屈折率層11の屈折率および膜厚に依存するが、波長λが400?700nmの範囲内である場合、正孔輸送層6の厚さを89nm未満とすることが望ましい。また、有機発光層7に対して正孔を円滑に輸送するために、正孔輸送層6は、10nm以上の厚さを有することが好ましい。
【0039】
本実施形態の有機EL発光素子において、有機発光層7に注入されるキャリアのバランスは、正孔注入層4/高屈折率層11/正孔輸送層6の総膜厚と、電子輸送層8/バッファ層9の総膜厚との比を変化させることにより維持される。望ましくは、正孔注入層4の膜厚を変化させて、キャリアバランスを維持する。本実施形態の有機EL発光素子においては、正孔注入層4/高屈折率層11/正孔輸送層6の総膜厚が40?260nmの範囲内であり、正孔注入層4の膜厚が20?240nmの範囲内であることが望ましい。
【0040】
本発明の第3の実施形態の有機EL発光素子を図3に示す。図3の有機EL発光素子は、基板1上に、反射陽極2、透明陽極3、第1正孔層12、第2正孔層13、有機発光層7、電子輸送層8、バッファ層9および透明陰極10が順次積層された構造を有する。第1正孔層12および第2正孔層13を除くそれぞれの層は、第1の実施形態と同様の材料を用いて形成することができる。
【0041】
第1正孔層12は、正孔注入性材料または正孔輸送性材料をポリマー中に分散させた高分子材料から形成される層である。分散される正孔注入性材料としては、フタロシアニン類(銅フタロシアニンなど)またはインダンスレン系化合物を用いることができる。分散される正孔輸送性材料としては、TPD、α-NPD、m-MTDATA、TBPBなどのトリアリールアミン系化合物を用いることができる。また、高分子材料を形成するポリマーとしては、ポリエステル、ポリイミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを含み、より好ましくはポリエステルまたはポリイミドを用いることができる。あるいはまた、第1正孔層12を、前述の正孔注入性材料または正孔輸送性材料を前述のポリマー分子に化学的に結合させた高分子材料から形成してもよい。たとえば、前述の正孔注入性材料または正孔輸送性材料をポリアミド酸に化学的に結合させ、それを加熱することにより形成されるポリイミドを用いることができる。このような高分子材料を用いて第1正孔層12を形成することにより、その屈折率を1.5程度まで低下させることができる。第1正孔層12は、たとえばスピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法によって形成することができる。
【0042】
第2正孔層13は、正孔注入性材料または正孔輸送性材料から形成される層であり、望ましくは正孔輸送性材料から形成される層である。正孔輸送性材料としては、TPD、α-NPD、m-MTDATA、TBPBなどのトリアリールアミン系化合物を用いることができる。これらの材料は、1.85(450nm)、1.75(530nm)、1.72(620nm)の屈折率を有するので、高分子材料を用いた第1正孔層12との間に、充分な屈折率差を付与することが可能となる。
【0043】
本実施形態の有機EL発光素子においては、第2正孔層13の屈折率を第1正孔層12の屈折率よりも大きくして、第1正孔層12/第2正孔層13の界面において有機発光層7からの光を反射させる。第2正孔層13の屈折率は、第1正孔層12の屈折率よりも10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上大きいことが望ましい。そして、有機発光層7から陽極側に発せられる光を第1正孔層12と第2正孔層13との界面にて反射された光と有機発光層7から透明陰極10側に発せられる光との間の多重干渉を起こさせないようにすることによって、特性波長のみではなく広い波長範囲において、色純度の確保および高い光取り出し効率を達成することが可能となる。
・・・略・・・
【0047】
有機発光層7は所望される強度の光を得るために20?60nmの厚さが必要であるので、本実施形態においても第2正孔層13の膜厚によって干渉を制御する(多重干渉を防止する)ことが望ましい。波長λが400?700nmの範囲内である場合、干渉の制御のためには、第2正孔層13の厚さを100nm未満とすることが望ましい。
【0048】
一方、第1正孔層12は、反射面を形成するために連続層を形成することができ、かつ第2正孔層13と協調してキャリアバランスを維持するのに充分な膜厚を有することが好ましい。第1正孔層12は、20?200nmの膜厚を有する。」

(2)「【0055】
(実施例2)
ガラス基板上に膜厚100nmのCrBをDCスパッタ法にて堆積させ、反射陽極2を形成した。DCスパッタ法による堆積は、室温にて、スパッタリングガスとしてArを用い、300Wのスパッタパワーを印加して行った。引き続いて、反射陽極2の乾燥処理(150℃)およびUV処理(室温および150℃)を行った。
【0056】
反射陽極2を形成した基板を7室型蒸着装置内に配置し、有機EL層の成膜を行った。成膜に際して真空槽内圧は1×10^(-5)Paまで減圧した。蒸発源はそれぞれの層の材料により石英、Mo、BN、PBN製の抵抗加熱式るつぼを用いた。正孔注入層4、高屈折率層11、正孔輸送層6、有機発光層7、電子輸送層8、バッファ層9、陰極10を真空を破らずに順次成膜した。各有機材料の蒸着レートは2?4Å/sとした。正孔注入層4として膜厚60nmの銅フタロシアニン(CuPc)を、高屈折率層11として膜厚10nmのIZO(屈折率2.2)を、正孔輸送層6として膜厚20nmのTBPBを、有機発光層7として膜厚40nmのDPVBiを、電子輸送層8として膜厚20nmのAlqを蒸着法により積層した。引き続いて、バッファ層9として膜厚5nmのMgAgを蒸着法により積層した。次に、スパッタリングターゲットとしてIZO(In_(2)O_(3)-10%ZnO)、スパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタ法にて、膜厚30nmのIZOを積層して、透明陰極10を得た。
【0057】
以上のように作製した素子を、大気に暴露せずにグローブボックス(酸素および水分濃度ともに数ppm以下)に移動して、上記積層体が設けられていない部位にゲッター剤を塗布し、該ゲッター剤の外側の基板周縁部に紫外線硬化型接着剤を塗布し、そしてガラス基板を用いてUV封止を行った。
【0058】
(実施例3)
ガラス基板上に膜厚100nmのCrBをDCスパッタ法にて堆積させ、反射陽極2を形成した。DCスパッタ法による堆積は、室温にて、スパッタリングガスとしてArを用い、300Wのスパッタパワーを印加して行った。引き続いて、反射陽極2の乾燥処理(150℃)およびUV処理(室温および150℃)を行った。
【0059】
次に、反射陽極2の上に、CuPcを分子分散させたポリエステルをスピンコート法により塗布し、膜厚40nmの第1正孔層12(屈折率1.5)を形成した。第1正孔層12は、その全重量を基準として50質量%の含有量でCuPcを含んだ。
【0060】
第1正孔層12を形成した基板を7室型蒸着装置内に配置し、有機EL層の成膜を行った。成膜に際して真空槽内圧は1×10^(-5)Paまで減圧した。蒸発源はそれぞれの層の材料により石英、Mo、BN、PBN製の抵抗加熱式るつぼを用いた。第2正孔層13、有機発光層7、電子輸送層8、バッファ層9、陰極10を真空を破らずに順次成膜した。各有機材料の蒸着レートを、2?4Å/sに設定した。第2正孔層13として膜厚20nmのTBPBを、有機発光層7として膜厚40nmのDPVBiを、電子輸送層8として膜厚20nmのAlqを蒸着法により積層した。引き続いて、バッファ層9として膜厚5nmのMgAgを蒸着法により積層した。次に、スパッタリングターゲットとしてIZO(In_(2)O_(3)-10%ZnO)、スパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタ法にて、膜厚30nmのIZOを積層して、透明陰極10を得た。
【0061】
以上のように作製した素子を、大気に暴露せずにグローブボックス(酸素濃度、水分濃度 数ppm以下)に移動して、上記積層体が設けられていない部位にゲッター剤を塗布し、該ゲッター剤の外側の基板周縁部に紫外線硬化型接着剤を塗布し、そしてガラス基板を用いてUV封止を行った。
・・・略・・・
【0064】
(評価)
実施例1および2、比較例1および2の各有機EL発光素子に対して、1.0×10^(-2)A/cm^(2)の電流密度の電流を流す電圧を印加して発光させ、その際の輝度およびスペクトルを測定した。有機EL層を構成する層の膜厚を第1表に、各有機EL発光素子の電流密度および輝度を第2表に、および各有機EL発光素子の発光スペクトルを図5に示した。なお、図5に示した発光スペクトルは、各素子の発光極大波長における輝度を1.0として規格化されたものである。」

(3)「【図2】

【図3】

・・・略・・・
【図5】



(4)各有機EL発光素子の発光スペクトルを示した図5(上記(3))の記載より、実施例2の有機EL発光素子の発光スペクトルのピーク波長が475nm付近であることが看取でき、実施例2の有機EL発光素子は青色を発光しているものと認められる。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、引用例1には、実施例2の有機EL発光素子として、次の発明が記載されているものと認められる。
「反射陽極2を形成した基板に正孔注入層4、高屈折率層11、正孔輸送層6、有機発光層7、電子輸送層8、バッファ層9、陰極10を順次成膜した有機EL発光素子であって、
正孔注入層4として膜厚60nmの銅フタロシアニン(CuPc)を、高屈折率層11として膜厚10nmのIZO(屈折率2.2)を、正孔輸送層6として膜厚20nmのTBPBを、有機発光層7として膜厚40nmのDPVBiを、電子輸送層8として膜厚20nmのAlqを蒸着法により積層し、引き続いて、バッファ層9として膜厚5nmのMgAgを蒸着法により積層し、次に、スパッタリングターゲットとしてIZO(In_(2)O_(3)-10%ZnO)、スパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタ法にて、膜厚30nmのIZOを積層して、透明陰極10を得た、
青色を発光する、
有機EL発光素子。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「反射陽極2」、「正孔注入層4」、「有機発光層7」、「電子輸送層8」及び「透明陰極10」は、それぞれ本願発明の「陽極とする反射電極」、「正孔注入層」、「発光層」、「電子輸送層」及び「『陰極』としての『透明電極』」に相当する。

(2)引用発明は、「反射陽極2」(本願発明の「陽極とする反射電極」に相当。以下「」に続く()内に、相当する本願発明の構成要素を記す。)を形成した基板に、「正孔注入層4」(正孔注入層)、高屈折率層11、正孔輸送層6、「有機発光層7」(発光層)、「電子輸送層8」(電子輸送層)、バッファ層9、「陰極10」(陰極としての透明電極)を順次成膜したのであるから、引用発明は、本願発明の「陽極とする反射電極と、前記反射電極の上に形成される正孔注入層と、前記正孔注入層の上に形成される発光層と、前記発光層の上に形成される電子輸送層と、陰極として前記電子輸送層の上に形成される透明電極とを備え」との構成を有していることは明らかである。

(3)ア 引用発明において、「正孔注入層4」(正孔注入層)に含まれる銅フタロシアニンは、青色のフタロシアニン系化合物であり、本願の明細書の【0020】及び【0021】の記載によれば、銅フタロシアニンが「青色の光を反射し、かつ青色以外の光を吸収するフタロシアニン系化合物」であることは明らかである。
イ 銅フタロシアニンは、正孔注入層内において特段偏在しているとの記載も引用例にないことから、正孔注入層内において上方も含め均一に設けられていると解される。そして、本願発明の「フタロシアニン系化合物が正孔注入層内で上方に設けられ」の意味するところは、例えば上方に「のみ」との限定がないことから、少なくとも上方にフタロシアニン系化合物が設けられているものであると解される。
ウ そうすると、引用発明の「銅フタロシアニン」(フタロシアニン系化合物)は、「正孔注入層4」(正孔注入層)内の「上方に設けられ」ているといえるから、引用発明の「正孔注入層4」と、本願発明の「正孔注入層」とは、「青色の光を反射し、かつ、青色の光以外の光を吸収するフタロシアニン系化合物を含み、前記フタロシアニン系化合物が前記正孔注入層内で上方に設けられた」という点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、引用発明の「有機EL発光素子」は、青色を発光し、基板の反対側の透明陰極から光を取り出すのであるから、本願発明の「トップエミッション型青色発光OLED」に相当することは明らかである。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明と引用発明とは、
「陽極とする反射電極と、
前記反射電極の上に形成される正孔注入層と、
前記正孔注入層の上に形成される発光層と、
前記発光層の上に形成される電子輸送層と、
陰極として前記電子輸送層の上に形成される透明電極と
を備え、
前記正孔注入層は、青色の光を反射し、かつ、青色の光以外の光を吸収するフタロシアニン系化合物を含み、前記フタロシアニン系化合物が前記正孔注入層内で上方に設けられた、
トップエミッション型青色発光OLED。」の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点
正孔注入層は、
本願発明では、「厚さが100nmより大きい」のに対し、
引用発明では、厚さが60nmである点。

5 判断
(1)相違点について検討する。
ア 引用例1には、「【0039】・・・有機発光層7に注入されるキャリアのバランスは、正孔注入層4/高屈折率層11/正孔輸送層6の総膜厚と、電子輸送層8/バッファ層9の総膜厚との比を変化させることにより維持される。望ましくは、正孔注入層4の膜厚を変化させて、キャリアバランスを維持する。本実施形態の有機EL発光素子においては、正孔注入層4/高屈折率層11/正孔輸送層6の総膜厚が40?260nmの範囲内であり、正孔注入層4の膜厚が20?240nmの範囲内であることが望ましい。」(上記(1))と記載されている。
イ 上記アを考慮すれば、引用発明において、有機発光層7に注入されるキャリアのバランスを考慮して、正孔注入層の厚さを100nmより大きい厚さとなすこと、すなわち、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。

(2)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(3)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-11 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-01 
出願番号 特願2014-114908(P2014-114908)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 好子  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 トップエミッション型青色発光OLEDおよびその製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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