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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1332744
審判番号 不服2016-7201  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-17 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2013-258674「発電プラント運転における漏れ低減システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月30日出願公開、特開2014-119251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月13日(パリ条約による優先権主張2012年12月14日 欧州特許庁)の外国語書面出願であって、平成26年2月14日に外国語明細書、外国語特許請求の範囲、外国語図面及び外国語要約書の日本語による翻訳文が提出され、平成27年1月28日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年8月3日に意見書が提出されたが、平成28年1月12日付けで拒絶査定がされ、平成28年5月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成28年10月3日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年5月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年5月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1)本件補正の内容
平成28年5月17日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成26年2月14日提出の翻訳文提出書に添付した)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
発電プラント運転における漏れ低減システム(1000)であって、該漏れ低減システム(1000)は、
再生式熱交換器(100)であって、該再生式熱交換器(100)は、ロータポスト(104)に沿って回転可能に取り付けられたロータアセンブリ(102)であって、熱伝達エレメント(106)を有するロータアセンブリ(102)と、内部にロータアセンブリ(102)を収容するように構成されたハウジング(108)であって、煙道ガス流を通過させるための第1の入口プレナム(110a)及び第1の出口プレナム(110b)と、第2の入口プレナム(112a)及び第2の出口プレナム(112b)とを有するハウジング(108)と、を有する、再生式熱交換器(100)と、
第2の入口プレナム(112a)に構成されたダクト配列(200)と、
分離配列(300)であって、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガスを通過させるための一次入口(210)と、リサイクルされた煙道ガスを通過させ、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス流が煙道ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記一次入口(210)に隣接した二次入口(220)と、を構成するために第2の入口プレナム(112a)のダクト配列(200)を横切って配置されている、分離配列(300)と、
を備えることを特徴とする、発電プラント運転における漏れ低減システム(1000)。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
発電プラント運転における漏れ低減システム(1000)であって、該漏れ低減システム(1000)は、
再生式熱交換器(100)であって、該再生式熱交換器(100)は、ロータポスト(104)に沿って回転可能に取り付けられたロータアセンブリ(102)であって、熱伝達エレメント(106)を有するロータアセンブリ(102)と、内部にロータアセンブリ(102)を収容するように構成されたハウジング(108)であって、煙道ガス流を通過させるための第1の入口プレナム(110a)及び第1の出口プレナム(110b)と、第2の入口プレナム(112a)及び第2の出口プレナム(112b)とを有するハウジング(108)と、を有する、再生式熱交換器(100)と、
第2の入口プレナム(112a)に構成されたダクト配列(200)と、
分離配列(300)であって、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガスを通過させるための一次入口(210)と、リサイクルされた煙道ガスを通過させ、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス流が煙道ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記一次入口(210)に隣接した二次入口(220)と、を構成するために第2の入口プレナム(112a)のダクト配列(200)を横切って配置されており、前記二次入口(220)は、前記第2の入口プレナム(112a)から前記第1の出口プレナム(110b)に通じている、分離配列(300)と、
を備えることを特徴とする、発電プラント運転における漏れ低減システム(1000)。」
(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「分離配列(300)」に関して、本件補正前の「分離配列(300)であって、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガスを通過させるための一次入口(210)と、リサイクルされた煙道ガスを通過させ、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス流が煙道ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記一次入口(210)に隣接した二次入口(220)と、を構成するために第2の入口プレナム(112a)のダクト配列(200)を横切って配置されている、分離配列(300)」という事項を、本件補正後に「分離配列(300)であって、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガスを通過させるための一次入口(210)と、リサイクルされた煙道ガスを通過させ、酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス流が煙道ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記一次入口(210)に隣接した二次入口(220)と、を構成するために第2の入口プレナム(112a)のダクト配列(200)を横切って配置されており、前記二次入口(220)は、前記第2の入口プレナム(112a)から前記第1の出口プレナム(110b)に通じている、分離配列(300)」と限定することにより、請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件についての判断
本件補正における特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特公平3-11362号公報(以下、「引用文献」という。)には、「ボイラの風煙道系における回転再生式空気予熱器」に関し、図面とともに、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

(ア)「〔発明の利用分野〕
本発明は、ボイラの風煙道系に使用され、排ガスの熱回収のため、ほとんどのボイラに設置されている回転再生式空気予熱器に係り、特に燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するために好適なボイラの風煙道系における回転再生式空気予熱器に関する。」(第1ページ第1欄第23行ないし第2欄第3行)

(イ)「〔発明の背景〕
大型ボイラの風煙道系においては、排ガスの熱回収のため、通常特開昭55-53623号のような回転再生式空気予熱器(以下、空気予熱器という)が設置されている。
第3図に、この従来の空気予熱器を有するボイラの風煙道系統を示す。
この図に示すボイラの風煙道系統では、ボイラの燃焼用の空気は押込通風機1から取り入れ、昇圧して空気予熱器2でボイラからの排ガスと熱交換することによって温められる。その熱空気は、風箱3,3′を通じて火炉4に送られ、燃焼に供される。
燃焼による排ガスは、ボイラ排煙道5、および煙道6を通り、空気予熱器2で空気側に熱を与えて煙突7から排出される。
排ガスの一部は、ガス再循環通風機8により昇圧され、かつ二つに分岐され、分岐された一方の排ガスはボイラの再熱蒸気温度制御のために火炉ホッパダクト9を通じて再度火炉4へ循環され、他方の排ガスは燃焼による窒素酸化物の発生を抑えるためにガス混合ダクト10を通じて燃焼用の空気に混合され、空気中の酸素分圧を下げるために使われる。
第4図に、従来の空気予熱器の構造を示す。
この図に示す空気予熱器2は、空気予熱器ケーシング11を備えており、その内部は空気側ダクト12と排ガス側ダクト13に分けられ、また空気予熱器ケーシング11の内部には回転体14が設置されている。
前記回転体14は、回転軸15と、伝熱体16のメッシュとにより構成されており、ゆっくりと回転するようになっている。
そして、前記空気予熱器2では、排ガス側ダクト13に入った熱ガスは前記伝熱体16のメッシュを通過する時に伝熱体16に熱を与え、冷ガスとなって出て行く。この時、回転体14がゆっくり回っているので、この温まった伝熱体16が空気側ダクト12へ回った時に冷空気と接し、これを温め、熱空気としてボイラへ供給するようになっている。
しかし、前記従来の空気予熱器は、伝熱体16のメッシュを通じて、また回転体14の端部のクリアランスを通じて、押込通風機1で昇圧された空気が5?10%、排ガス側へ漏洩する。このため、押込通風機1の容量を空気の漏洩分だけ大きく設計する必要があり、所要動力を増やす必要がある。最近の大型ボイラでは1台当たり6000?8000kWの押込通風機を使用しており、これが2台分になると最高16000kWにも達し、その10%の空気が漏洩すると、1600kWの動力損失になる。これを低減することが最近大きな課題となっている。
また、ボイラの空気流量制御用の空気流量検出器は、押込通風機1の吸込側に設置されることが多い。したがって、前述の空気の漏洩はボイラへ供給する空気量の精度に大きく影響することになり、空気の漏洩を無くすことによってボイラへ供給される空気流量を正確に把握できることになり、ボイラの制御の向上に大きく寄与することになる。」(第1ページ第2欄第4行ないし第2ページ第3欄第38行)

(ウ)「〔発明の目的〕
本発明の目的は、前記従来技術の問題を解決し、予熱すべき空気の排ガス側への漏洩を防止し得る空気予熱器を提供するにある。」(第2ページ第3欄第39行ないし第3欄第42行)

(エ)「〔発明の概要〕
本発明は、押込通風機から昇圧した空気を空気予熱器でボイラからの排ガスと熱交換して温め、火炉に送って燃焼に供し、燃焼による排ガスをボイラ排煙道および煙道を通じて上記空気予熱器で空気側に熱を与えて煙突から排出し、かつ上記燃焼による排ガスの一部をガス再循環通風機により昇圧し、2つに分岐して分岐した一方の排ガスをボイラの再熱蒸気温度制御のために火炉ホッパダクトを通じて再び上記火炉に循環し、他方の排ガスを燃焼による窒化酸化物の発生を抑えるためにガス混合ダクトを通じて燃焼用の空気に混合して空気中の酸素分圧を下げるボイラの風煙道系において、前記空気予熱器のケーシングの内部に形成され前記押込通風機の出口に接続する空気側ダクトと前記煙道に接続する排ガス側ダクトとの間にシールガスダクトを設置するとともに該シールガスダクトに前記ガス再循環通風機の出口から再循環ガスの一部を分岐し導入するように構成したことに特徴を有するもので、この構成により、前記目的を確実に達成することができる。」(第2ページ第3欄第43行ないし第4欄第19行)

(オ)「〔発明の実施例〕
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
第1図は、本発明の一実施例を示すもので、空気予熱器ケーシング11の内部に形成された空気側ダクト12と排ガス側ダクト13との間に、シールガスダクト17が設置されている。
前記シールガスダクト17は、この実施例では空気予熱器ケーシング11の中央部よりも空気側ダクト12側寄りに設けられている。このシールガスダクト17には、前記空気側ダクト12を流れる空気よりも高圧のシールガスを導入し、このシールガスにより空気側ダクト12から排ガス側ダクト13への空気の漏洩を封止している。
この第1図に示す実施例の空気予熱器では、空気側ダクト12と排ガス側ダクト13との間にシールガスダクト17を設け、このシールガスダクト17に、空気側ダクト12を流れる空気よりも高圧のシールガスを導くようにしているので、このシールガスの作用により、空気側ダクト12から排ガス側ダクト13への空気の漏洩を効果的に防止することができる。
そして、第1図に示す実施例のものは、シールガスダクト17を空気予熱器ケーシング11の中央部よりも空気側ダクト12側へ寄った位置に配置しているので、構造の簡略化、シールガスの回収、伝熱体16の端部のクリアランスからの空気の漏洩防止などの点で有利である。
なお、この第1図に示す実施例の他の構成、作用については、前記第4図に示すものと同様であり、同一部材には同じ符号を付けて示し、これ以上の説明を省略する。
次に、第2図は前記第1図に示す空気予熱器18を配備した風煙道系統を示す。
この図に示す風煙道系統では、空気予熱器18の空気側ダクト12は押込通風機1の出口に接続され、排ガス側ダクト13は煙道6に接続され、シールガスダクト17はガス再循環通風機8の出口に接続されている。そして、前記シールガスダクト17の出口は風道側に、空気側ダクト12から出た熱空気にシールガスを混入させ得るように接続されている。
これにより、前記シールガスダクト17にはガス再循環通風機8で昇圧された排ガスの一部がシールガスとして導入される。前記ガス再循環通風機8は、元来空気予熱器から出た燃焼用の空気に排ガスの一部を混合させる目的で設置されているため、ガス再循環通風機8の吐出圧力は空気予熱器18の空気側ダクト12を流れる空気よりも高い圧力が得られ、したがってシールガスとしての用に供することができる。
前記空気予熱器18のシールガスダクト17に導入されたシールガスは、空気側ダクト12を流れる空気以上の圧力があるため、シールガスダクト17から排ガス側ダクト13側へ、従来の空気予熱器において空気側ダクトから排ガス側ダクトへ漏洩する空気量に相当する分量のシールガスが漏洩することになる。したがって、シールガスダクト17を有する空気予熱器18を配備したボイラプラントのファンの動力低減量は、空気予熱器18の空気側ダクト12から排ガス側ダクト13側へ漏洩する空気の低減による押込通風機1の動力低減量と、シールガスダクト17から排ガス側ダクト13側へ漏洩するシールガスの増大によるガス再循環通風機8の動力増加量との差ということになる。そして、ボイラプラントのファンの動力低減量は次のように求めることができる。
すなわち、押込通風機1の流体は外部からの空気であり、温度は約0?35℃であって、絶対温度に直すと300°K前後である。一方、ガス再循環通風機8が吐出する流体はボイラ排ガスであり、約300℃であって、絶対温度に直して約600°Kである。同一圧力であれば比重は絶対温度に反比例し、ファンの動力は比重に比例する。したがって、第2図に示す実施例で空気予熱器18のシールガスダクト17から排ガス側ダクト13側へのシールガスの漏洩量を、第3図に示す従来例における空気予熱器2の空気側ダクト12から排ガス側ダクト13側への空気の漏洩量と、同じ分量とした場合、第2図に示す実施例におけるガス再循環通風機8の動力増加量は押込通風機1の動力低減量の約1/2で済み、この差がボイラプラントのファンの動力低減量となる。
また、第2図に示す実施例において、シールガスダクト17の出口を風道側に、空気側ダクト12から出た熱空気にシールガスを混入させ得るように接続しているので、風道側においても熱空気と排ガスとの混合作用を行うことができる。
なお、第2図に示す実施例の他の構成、作用については、前記第3図に示す従来例と同様であり、同一部材には同じ符号を付けて示している。」(第2ページ第4欄第20行ないし第3ページ第6欄第21行)

(カ)「〔発明の効果〕
以上説明した本発明によれば、空気予熱器ケーシングの内部に形成された空気側ダクトと排ガス側ダクトとの間に、シールガスダクトを設置するとともに、このシールガスダクトに、ボイラの風煙道系に使用されているガス再循環通風機の出口から、前記空気側ダクトを流れる空気よりも高圧の再循環ガスの一部を分岐し導入するように構成したことにより、シールガスの作用により排ガス側への空気の漏洩を防止し得る効果があり、したがってボイラプラントに配備した場合に、押込通風機の動力損失を低減でき、省エネルギー化を図り得る効果を有する外、押込通風機の吸込側で計測した空気流量に基づいてボイラプラントを適正に制御し得る効果がある。また空気予熱器からの空気が風管を通じて火炉に送られるさいにガス再循環送風機以外に特別に昇圧するためのファンを設置する必要がなく、かつ空気予熱器の空気ダクトと排ガス側との間にガス遮閉板を設ける必要がないので、簡単な構成にて排ガス側への空気の漏洩を防止できる効果がある。」(第3ページ第6欄第22行ないし第42行)

(2)引用文献の記載から分かること
上記(1)及び第1図ないし第4図の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていることが分かる。

(サ)上記(1)(特に(ア)を参照。)及び第1図ないし第4図の記載から、引用文献には、ボイラの風煙道系における(すなわち、ボイラ運転における)回転再生式空気予熱器の燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するシステムが記載されていることが分かる。

(シ)上記(1)(オ)の「第1図は、本発明の一実施例を示すもので、空気予熱器ケーシング11の内部に形成された空気側ダクト12と排ガス側ダクト13との間に、シールガスダクト17が設置されている・・・第1図に示す実施例のものは、シールガスダクト17を空気予熱器ケーシング11の中央部よりも空気側ダクト12側へ寄った位置に配置しているので、構造の簡略化、シールガスの回収、伝熱体16の端部のクリアランスからの空気の漏洩防止などの点で有利である。」という記載及び第1図の記載から、引用文献に記載された回転再生式空気予熱器の燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するシステムにおいて、第1図における空気予熱器18の上面と下面との間を貫通して、空気側ダクト12、シールガスダクト17及び排ガス側ダクト13が設けられていることが分かる。(以下、第1図における空気予熱器18の上面側を「上方」、下面側を「下方」という。)
そして、上記(オ)の記載及び第1図の記載から、空気側ダクト12においては、下方に設けられたダクト入口から冷空気が入り、上方に設けられたダクト出口から熱空気が出ることが分かる。同様に、シールガスダクト17においては、下方に設けられたダクト入口からシールガスが入り、上方に設けられたダクト出口からシールガスが出ることが分かる。また、排ガス側ダクト13においては、上方に設けられたダクト入口から熱ガスが入り、下方に設けられたダクト出口から冷ガスが出ることが分かる。

(ス)上記(1)、上記(シ)及び第1図ないし第4図の記載から、引用文献に記載された回転再生式空気予熱器の燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するシステムは、空気予熱器18であって、該空気予熱器18は、回転軸15に沿って回転可能に取り付けられた回転体14であって、伝熱体16を有する回転体14と、内部に回転体14を収容するように構成された空気予熱器ケーシング11であって、排ガスを通過させるための上方のダクト入口及び下方のダクト出口と、空気及びシールガスを通過させるための下方のダクト入口及び上方のダクト出口とを有する空気予熱器ケーシング11と、を有する、空気予熱器18を備えることが分かる。

(セ)上記(1)、上記(シ)及び第1図ないし第4図の記載から、引用文献に記載された回転再生式空気予熱器の燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するシステムにおいて、図1の空気予熱器18の下方のダクト入口には、空気側ダクト12の入口と、シールガスダクト17の入口とが設けられているといえる。

(ソ)上記(1)、上記(シ)及び第1図ないし第4図の記載から、引用文献に記載された回転再生式空気予熱器の燃焼用の空気の排ガス側への漏洩を防止するシステムにおいて、第1図の上方のダクト出口に空気ダクト出口とシールガスダクト出口を横切って分離壁が配置されているのと同様に、下方のダクト入口に空気ダクト入口とシールガスダクト入口を横切って分離壁が配置されているといえる。

(タ)上記(1)(ウ)の「本発明の目的は、前記従来技術の問題を解決し、予熱すべき空気の排ガス側への漏洩を防止し得る空気予熱器を提供するにある。」、(オ)の「この第1図に示す実施例の空気予熱器では、空気側ダクト12と排ガス側ダクト13との間にシールガスダクト17を設け、このシールガスダクト17に、空気側ダクト12を流れる空気よりも高圧のシールガスを導くようにしているので、このシールガスの作用により、空気側ダクト12から排ガス側ダクト13への空気の漏洩を効果的に防止することができる。」及び(カ)の「シールガスの作用により排ガス側への空気の漏洩を防止し得る効果があり」という記載から、シールガスの作用により、空気側ダクト12から排ガス側ダクト13への空気の漏洩を効果的に防止することができるという効果を奏することが分かる。

(チ)上記(1)(オ)の「前記空気予熱器18のシールガスダクト17に導入されたシールガスは、空気側ダクト12を流れる空気以上の圧力があるため、シールガスダクト17から排ガス側ダクト13側へ、従来の空気予熱器において空気側ダクトから排ガス側ダクトへ漏洩する空気量に相当する分量のシールガスが漏洩することになる。」という記載から、空気予熱器18のシールガスダクト17(の入口)は、排ガス側ダクト13(の出口)に通じているといえる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに第1図ないし第4図の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ボイラ運転における空気漏洩防止システムであって、該空気漏洩防止システムは、
(回転再生式)空気予熱器18であって、該空気予熱器18は、回転軸15に沿って回転可能に取り付けられた回転体14であって、伝熱体16を有する回転体14と、内部に回転体14を収容するように構成された空気予熱器ケーシング11であって、排ガス流を通過させるための上方のダクト入口及び下方のダクト出口と、下方のダクト入口及び上方のダクト出口とを有する空気予熱器ケーシング11と、を有する、空気予熱器18と、
下方のダクト入口に構成された空気側ダクト入口及びシールガスダクト入口の配列と、
シールガスダクト17の分離壁であって、空気を通過させるための空気側ダクト入口と、シールガスを通過させ、空気流が排ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記空気側ダクト入口に隣接したシールガスダクト入口と、を構成するために下方のダクト入口の空気側ダクト入口及びシールガスダクト入口の配列を横切って配置されており、前記シールガスダクト入口は、前記下方のダクト入口から前記下方のダクト出口に通じている、シールガスダクト17の分離壁と、
を備える、ボイラ運転における空気漏洩防止システム。」

2-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「空気漏洩防止システム」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「漏れ低減システム(1000)」に相当し、以下同様に、「(回転再生式)空気予熱器18」は「再生式熱交換器(100)」に、「回転軸15」は「ロータポスト(104)」に、「回転体14」は「ロータアセンブリ(102)」に、「伝熱体16」は「熱伝達エレメント(106)」に、「空気予熱器ケーシング11」は「ハウジング(108)」に、「排ガス」は「煙道ガス流」に、「上方のダクト入口」は「第1の入口プレナム(110a)」に、「下方のダクト出口」は「第1の出口プレナム(110b)」に、「下方のダクト入口」は「第2の入口プレナム(112a)」に、「上方のダクト出口」は「第2の出口プレナム(112b)」に、「空気側ダクト入口及びシールガスダクト入口の配列」は「ダクト配列(200)」に、「シールガスダクト17の分離壁」は「分離配列(300」に、「空気側ダクト入口」は「一次入口(210)」に、「排ガス」は「煙道ガス」に、「シールガスダクト入口」は「二次入口」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「シールガス」は、排ガスの一部が導入されてシールガスとして再利用されるものである(上記(1)(オ)の「・・・シールガスダクト17にはガス再循環通風機8で昇圧された排ガスの一部がシールガスとして導入される。」という記載を参照。)から、本願補正発明における「リサイクルされた煙道ガス」に相当する。
また、引用発明における「ボイラ運転」は、「ボイラを有するプラントの運転」という限りにおいて、本願補正発明における「発電プラント運転」に相当する。
また、引用発明における「空気」は、火炉4において燃料を燃焼させるために用いられるものであるから、「酸素を含む燃焼用ガス」という限りにおいて、本願補正発明における「酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス」に相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「ボイラを有するプラントの運転における漏れ低減システムであって、該漏れ低減システムは、
再生式熱交換器であって、該再生式熱交換器は、ロータポストに沿って回転可能に取り付けられたロータアセンブリであって、熱伝達エレメントを有するロータアセンブリと、内部にロータアセンブリを収容するように構成されたハウジングであって、煙道ガス流を通過させるための第1の入口プレナム及び第1の出口プレナムと、第2の入口プレナム及び第2の出口プレナムとを有するハウジングと、を有する、再生式熱交換器と、
第2の入口プレナムに構成されたダクト配列と、
分離配列であって、酸素を含む燃焼用ガスを通過させるための一次入口と、リサイクルされた煙道ガスを通過させ、酸素を含む燃焼用ガス流が煙道ガス流に向かって方向転換することを実質的に防止し、これにより、その漏れを低減するための、前記一次入口に隣接した二次入口と、を構成するために第2の入口プレナムのダクト配列を横切って配置されており、前記二次入口は、前記第2の入口プレナムから前記第1の出口プレナムに通じている、分離配列と、
を備える、ボイラを含むプラント運転における漏れ低減システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(ア)「ボイラを有するプラントの運転」に関して、本願補正発明においては「発電プラント運転」であるのに対し、引用発明においては「ボイラ運転」である点(以下、「相違点1」という。)。

(イ)「酸素を含む燃焼用ガス」に関して、本願補正発明においては「酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス」であるのに対し、引用発明においては「空気」である点(以下、「相違点2」という。)。

2-3 判断
(ア)相違点1について
ボイラの技術分野において、「ボイラ運転」を「発電プラント運転」として用いることは、本願の優先日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、引用文献において従来技術を示す文献として記載されている特開昭55-53623号公報(第1ページ右下欄第12ないし13行の「蒸気を発生してタービン発電機を回転させるボイラ装置にあっては、・・・」等の記載を参照。)、特開平5-26409号公報(段落【0002】等の記載を参照。)、特開2009-270753号公報(段落【0002】等の記載を参照。)等を参照。)である。
したがって、引用発明において、周知技術1を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

(イ)相違点2について
ボイラの技術分野において、燃料を燃焼させるために空気を用いることは例を挙げるまでもなく本願の優先日前の周知技術であり、燃料を燃焼させるために「酸素濃度が高められたリサイクルされた煙道ガス」を用いることもまた本願の優先日前の周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、平成27年1月28日付け拒絶理由通知書において周知技術を示す例として引用された国際公開第2012/035777号(段落[0010]、[0027]等の記載を参照。)、特開平5-26409号公報(特許請求の範囲の請求項1等の記載を参照。)、実願昭56-125847号(実開昭58-32207号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲の請求項1等の記載を参照。)、等を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

(ウ)効果について
そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(エ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「これに対し、本願発明では、上述したように、分離配列(300)の「前記二次入口(220)は、前記第2の入口プレナム(112a)から前記第1の出口プレナム(110b)に通じて」います。つまり、二次入口(220)は、再生式熱交換器(100)のハウジング(108)を貫通している訳ではありません。」(4.(2))と主張する。
しかしながら、本願の明細書には、「リサイクルされた煙道ガス流は、第2の入口プレナム112aから熱交換器100に進入し、第2の出口プレナム112bから出る。前記ガスは、熱交換器100へ進入すると熱伝達エレメント106を通過する。」(段落【0022】)と記載されており、請求人の主張はこの記載と矛盾するものであるから、採用できない。
また、請求人は、上申書において、「引用文献1には、同時に、「前記シールガスダクト17の出口は風道側に、空気側ダクト12から出た熱空気にシールガスを混入させ得るように接続されている。」(公報第5欄第13-16行)とも記載されていることから、引用文献1に記載の発明では、本願発明でいうところの「第2の出口プレナム112b」において、シールガスと熱空気とが混入されるものと理解されます。」(上申の内容)と主張する。
しかしながら、引用文献において、シールガスを熱空気に混入させるのは、窒化酸化物(窒素酸化物)の発生を抑えるためであり、窒化酸化物(窒素酸化物)の発生を抑える必要が無ければ、シールガスを熱空気に混入させる必要もないことは明らかである。なお、シールガスを熱空気に混入させることなく排出する技術は、本願の優先日前に周知の技術(例えば、特開2001-21140号公報(特に段落【0012】及び【0013】並びに図1及び2等の記載を参照。)である。
なお、請求人は、平成28年10月3日付け上申書において補正案を添付しているが、該補正案は、「リサイクルされた煙道ガス」を、「酸素濃度が高められていないリサイクルされた煙道ガス」と限定するだけのものであるから、本願補正発明と同様に、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
したがって、上記2において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、平成28年5月17日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成26年2月14日に提出された明細書、特許請求の範囲及び図面の翻訳文記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。

2 引用文献及び引用発明
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特公平3-11362号公報)及び引用発明は、前記第2[理由]2-1に記載したとおりである。

3 対比・判断
前記第2[理由]1(2)で検討したとおり、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明は、実質的に本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]2-2に記載したとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-19 
結審通知日 2017-04-24 
審決日 2017-05-09 
出願番号 特願2013-258674(P2013-258674)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23G)
P 1 8・ 575- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 貴雄青木 良憲  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 発電プラント運転における漏れ低減システム  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
代理人 前川 純一  

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