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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1332759
審判番号 不服2015-4779  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-11 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2013-89552「眼科用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月18日出願公開、特開2013-139485〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年9月11日(優先権主張:平成19年9月14日及び平成20年2月8日)を国際出願日とする特許出願(特願2009-532212号)の一部を平成25年4月22日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月11日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月28日付けで拒絶査定され、同年3月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成26年8月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及び(B)テルペノイドを含有するコンタクトレンズ用装着点眼液であって、
同一の組成でコンタクトレンズ装着液及びコンタクトレンズ装用中の点眼液の両方の用途に用いられる、コンタクトレンズ用装着点眼液。」

3.当審の判断
(1)引用する刊行物及びその記載事項
ア.本願出願前(優先日前)に頒布された刊行物である特開2006-241085号公報(原査定の引用文献1.以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
カルボキシメチルセルロースナトリウムと、テルペノイドを含有する粘膜適用組成物。
……
【請求項10】
点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である請求項1乃至9のいずれかに記載の粘膜適用組成物。」
(イ)「【発明の効果】
【0009】
本発明の粘膜的用組成物は、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともにテルペノイドを含有することによってコンタクトレンズ表面や角膜表面の濡れを改善することができる。すなわち、カルボキシメチルセルロースの優れた保水作用ともあいまって、濡れを持続させ潤いを保つことができる。また、本発明の組成物は使用感に優れ、ドライアイ、ドライノーズ、ドライマウスなどの粘膜が乾燥状態を呈する疾患や症状の予防や改善に優れた効果を有する粘膜適用組成物である。」
(ウ)「【0024】
本発明の粘膜的用組成物は、発明の効果を利用するものであればその使用用途は特定されず、医薬品、医薬部外品、雑品等の各種分野において、眼科用組成物、……等、粘膜に適用される組成物に利用することができる。例えば、眼科用組成物としては、点眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる点眼剤を含む、また、点眼薬ともいう。)、洗眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる洗眼剤を含む、また、洗眼薬ともいう。)、眼軟膏剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)、……などが挙げられる。好ましくは、点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤であり、特に好ましくは、点鼻剤、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液に有用である。また、コンタクトレンズの水濡れを改善するとの観点から、コンタクトレンズ用である点眼薬や洗顔薬、コンタクトレンズケア用剤、コンタクトレンズ装着液にさらに有用である。
なお、本明細書中でコンタクトレンズとは、ハード、ソフト、酸素透過型ハード、カラーなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。」
(エ)「【0044】
実施例
表中の各実施例1?9は、単位をg/100mlとして記載するものとする。また、表中、「点眼薬」とあるのは点眼薬(剤)、「洗眼薬」とあるのは洗眼薬(剤)、「人工点」とあるのは人工涙液型点眼薬(剤)、「装着液」とあるのは、コンタクトレンズ装着液、「CL用剤」とあるのはコンタクトレンズケア用剤をそれぞれ意味するものとする。これらの各実施例において、濡れが改善され使用感が向上していた。
……
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】



イ.本願出願前(優先日前)に頒布された刊行物である特開2007-77167号公報(原査定の引用文献9.以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載がされている。
「【請求項1】
平均分子量が500,000以下であるポリビニルピロリドン0.05?3.0重量%、増粘剤およびソルビン酸若しくはその塩0.05?0.3重量%を含有する眼科用組成物であって、イオン性のコンタクトレンズにポリビニルピロリドンを持続的に吸着させて、イオン性のコンタクトレンズの周囲に存在する涙液層を長時間安定に保持するための眼科用組成物。
【請求項2】
増粘剤が0.01?0.3重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1に記載の眼科用組成物。
……
【請求項5】
コンタクトレンズ用点眼剤または装着液である請求項1?4のいずれかに記載の眼科用組成物。
【請求項6】
平均分子量が500,000以下であるポリビニルピロリドン0.05?3.0重量%、増粘剤およびソルビン酸若しくはその塩0.05?0.3重量%を含有する眼科用組成物からなるコンタクトレンズ用点眼液を点眼すること、または装着前に該眼科用組成物をイオン性のコンタクトレンズに滴下するか若しくは該眼科用組成物からなる装着液に該コンタクトレンズを浸漬することにより、イオン性のコンタクトレンズにポリビニルピロリドンを持続的に吸着させて、イオン性のコンタクトレンズの周囲に存在する涙液層を長時間安定に保持する方法。
【請求項7】
平均分子量が500,000以下であるポリビニルピロリドン0.05?3.0重量%、増粘剤およびソルビン酸若しくはその塩0.05?0.3重量%を含有する眼科用組成物からなるコンタクトレンズ用点眼液を点眼すること、または装着前に該眼科用組成物をイオン性のコンタクトレンズに滴下するか若しくは該眼科用組成物からなる装着液に該コンタクトレンズを浸漬することにより、イオン性のコンタクトレンズの保水性を向上させる方法。
【請求項8】
増粘剤が0.01?0.3重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項6または7に記載の方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ装用時にレンズの周囲(レンズ表面及びレンズ裏面)に存在する涙液層を安定化することにより、コンタクトレンズ装用者の眼部の乾燥感や不快感を除去し、良好な潤い感および装用感を得る、涙液層の安定化システムに関するものである。」
「【0019】
本発明の増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ソルビトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、増粘作用をもつ添加物であれば特に制限されない。……」
「【0024】
本眼科用組成物を点眼液として用いる場合には、通常、1日2?5回、1回1?3滴を点眼すればよく、また、コンタクトレンズの装用に際して1?2滴の本組成物をコンタクトレンズに滴下して使用してもよい。また、本眼科用組成物を装着液として用いる場合には、コンタクトレンズの装用前にこれを装着液に浸漬して使用する。さらに、本眼科用組成物は、コンタクトレンズの保存液や洗浄液としても適用できる。」

ウ.本願出願前(優先日前)に国際公開された国際公開第2007/088783号(原査定の引用文献11。以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載がされている。
「[1] ソフトコンタクトレンズの規格に対して実質的に影響を及ぼすことのない、ソフトコンタクトレンズ装用眼に適用可能な点眼液又はソフトコンタクトレンズの装着液であって、滴定酸度が3.0?5.0mEq/Lであることを特徴とするソフトコンタクトレンズ用点眼・装着液。」(請求の範囲)
「[0035] 本発明に従うコンタクトレンズ用点眼・装着液において、その粘度を適宜に調整するためには、粘稠化剤を添加せしめることが有用である。そのような粘稠化剤としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、グルコン酸及びそれらの塩等の多糖類、ムコ多糖類、ヘテロ多糖類等の種々のガム類;ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、カルボキシビニルポリマー等の合成有機高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチ誘導体等を、挙げることが出来る。
……
[0037] 本発明において、清涼化剤は、点眼時に爽快感を与えたり、コンタクトレンズ装用時の異物感や痒みを解消すること等を目的として、添加せしめるものであって、例えば、メントール、ボルネオール、カンフル、ゲラニオール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウィキョウ油、ハッカ油、ローズ油、クールミント等を、例示することが出来る。」
「[0047] そして、以上のようにして得られる本発明に従うソフトコンタクトレンズ用点眼・装着液にあっては、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼に対して点眼しても、又はソフトコンタクトレンズの装着液として使用しても(当該液を、ソフトコンタクトレンズに付着させて、或いはコンタクトレンズベースカーブ面に乗せて、眼に装用しても)、レンズの規格変化に影響を及ぼさないため、使用感が良く、換言すれば、コンタクトレンズの装着が容易であり、そして、そのような規格変化に起因するレンズの角膜へのフィッティングの悪化、更にはレンズの角膜に対する吸着、ひいては涙液交換の低下、装用感の悪化等の問題を改善し、また、コンタクトレンズが角膜に吸着した状態でコンタクトレンズを取り外すことによる、角膜上皮の剥離の危険性を有利に回避することが出来る等という特徴を発揮する。
[0048] なお、かくの如き本発明に従う点眼・装着液は、点眼液として、又は、装着液として、それぞれ調製して使用されるだけでなく、点眼液と装着液とを兼ねたものとして調製して使用することも可能である。」

(2)刊行物1に記載された発明
上記刊行物1の摘示ア(ア)及び(ウ)の記載を踏まえると、刊行物1には、「カルボキシメチルセルロースナトリウムとテルペノイドを含有する眼科用組成物」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「カルボキシメチルセルロース」は、本願の明細書の発明の詳細な説明の【0020】の記載を踏まえると、本願発明の(A)の「セルロース系高分子化合物」に該当する。
また、本願発明の「コンタクトレンズ用装着点眼液」は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0015】によれば、「コンタクトレンズ装着液としての機能と、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼液としての機能の両方を同時に併せ持つ眼科用組成物」を意味するものであるから、「眼科用組成物」といえる。
そうすると、両者は、
「(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及び(B)テルペノイドを含有する眼科用組成物」の点で一致し、次の点で相違している。
相違点:
本願発明は、眼科用組成物が「コンタクトレンズ用装着点眼液」であって、「同一の組成でコンタクトレンズ装着液及びコンタクトレンズ装用中の点眼液の両方の用途に用いられる」ものであるのに対し、引用発明においては単に「眼科用組成物」としている点

この相違点について検討する。
刊行物1には、引用発明の眼科組成物が、「コンタクトレンズ装着液」としても、「コンタクトレンズ装用中にも使用することができる点眼剤」としても使用することができることが記載がされている(摘示ア(ウ)参照。)。そして、実施例(摘示ア(エ))には、コンタクトレンズ装着液(実施例2)、点眼薬(実施例4?6)及び人工涙液型点眼薬(実施例7?9)の処方例が記載されているが、これらの処方は格別相違するものではない。
そのうえ、上記刊行物2や3には、ひとつの眼科用組成物をコンタクトレンズ装着液とコンタクトレンズ装用中の点眼液のいずれにも使用する態様が記載されており、このような使用方法は格別なものではない。
なお、本願発明は、「同一の組成でコンタクトレンズ装着液及びコンタクトレンズ装用中の点眼液の両方の用途に用いられる」ことを特定しているが、「試験3:処方による組み合わせの有用性の確認」(【0083】?【0086】では、単に、コンタクトレンズ用装着点眼液をコンタクトレンズ装着液として使用した場合に、該コンタクトレンズ用装着点眼液をコンタクトレンズ装用中の点眼液としても使用できることを開示するのみで、他のコンタクトレンズ装着液や点眼液との組み合わせにおいても使用できること(すなわち、他のコンタクトレンズ装着液を使用した場合での点眼剤としての使用や、コンタクトレンズ装着液として使用した場合に他の点眼剤も使用可能であるというような使用態様)まで示されていない。このような使用方法は、上記引用文献2や3に記載された使用方法を超えるものではない。
そうすると、引用発明の眼科用組成物を、「コンタクトレンズ用装着点眼液」として、「同一の組成でコンタクトレンズ装着液及びコンタクトレンズ装用中の点眼液の両方の用途」に用いることは当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明によって得られる効果が、格別予想外の効果を奏したものということもできない。
よって、本願の請求項1に係る発明は刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、上記した理由により拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-26 
結審通知日 2016-05-31 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2013-89552(P2013-89552)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋杉江 渉  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 齊藤 光子
松浦 新司
発明の名称 眼科用組成物  
代理人 池田 正人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 坂西 俊明  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  

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