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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1332774
審判番号 不服2016-13821  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-14 
確定日 2017-09-21 
事件の表示 特願2015-153723「探傷装置及び探傷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 9日出願公開、特開2015-197447〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年3月31日に出願された特願2014-74345号の一部を、平成27年8月3日に新たに出願したものであって、平成27年10月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月14日付けで拒絶査定されたところ、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において平成29年5月10日付けで補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願請求項1ないし4に係る発明は、平成29年7月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載の事項により特定される発明であると認める。
そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してA)ないしF)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

「【請求項1】
A) 構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第1探触子と、
B) 前記第1探触子とは異なる位置で前記構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第2探触子と、
C) 所定の方向に移動し、前記第1探触子を前記所定の方向における第1の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第1の軸線に対して前記第1の一方側の位置と線対称である第1の他方側の位置に、前記第1探触子を前記第1の一方側の位置から前記第1の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第1探触子を前記第1の他方側の位置から前記第1の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第1腕と、前記所定の方向に前記第1腕とともに移動し、前記第2探触子を前記所定の方向における第2の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第2の軸線に対して前記第2の一方側の位置と線対称である第2の他方側の位置に向けて、前記第2探触子を前記第2の一方側の位置から前記第2の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第2探触子を前記第2の他方側の位置から前記第2の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第2腕とを備える保持体と、
D) 前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体の前記所定の方向への移動を案内する回転体と、
E) 前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体と前記構造体との間に吸引力を発生させる吸引機構と、
F) を含む探傷装置。」

第3 平成29年5月10日付け拒絶理由の概要

当審による平成29年5月10日付け拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、請求項1に係る発明は、その出願遡及日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

刊行物1:特開2012-37505号公報
刊行物2:特開平5-209869号公報
刊行物3:特開平6-242088号公報
刊行物4:実願昭57-12704号(実開昭58-116661号)のマイクロフィルム

第4 引用刊行物記載の事項

1 刊行物1

(1) 刊行物1記載の事項

(刊1-ア)「【請求項1】
第一部材と第二部材が隅肉溶接される溶接部の溶け込み深さを当該溶接部の溶接線方向に沿って連続的に検査する探傷装置であって、
前記第一部材に対向する第一フレームと、
前記第一フレームに連結され、前記第二部材に対向する第二フレームと、
前記第一フレームおよび前記第二フレームの少なくとも一方に保持され、前記溶接部に向けて超音波を出力する探触子と、
前記第一フレームおよび前記第二フレームを前記溶接線方向に移動させたときの移動量を検出する移動量検出部と、
前記第一フレームおよび前記第二フレームを前記溶接線方向に移動させながら前記探触子から出力した超音波の反射波を検出する反射波検出部と、
前記反射波検出部で検出した前記反射波と前記移動量検出部で検出される前記移動量とに基づき、前記探触子を前記溶接線方向に移動させたときのエコー画像を生成して出力するデータ処理部と、を備えることを特徴とする探傷装置。」

(刊1-イ)「【0045】
[第三の実施形態]
次に、探傷装置10の他の例を示す。ここで、以下の説明においては、上記第一および第二の実施形態と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
図14、図15に示すように、探傷装置10’は、探触子20と、探触子20を保持する治具80と、コントローラ50と、を有している。
探触子20は、治具80を構成する第一フレーム81、第二フレーム82のそれぞれに設けられている。
【0046】
治具80は、それぞれ矩形状に組まれた第一フレーム81と第二フレーム82とが、回転機構83を介して回動自在に連結されている。
回転機構83は、第一フレーム81、第二フレーム82において、デッキプレート101やリブ102に対向する対向面81a、82aに沿った仮想線の交点(デッキプレート101の表面101aとリブ102の表面102aとの交点)Oを中心として、第一フレーム81と第二フレーム82は、その開き角が調整可能とされている。
【0047】
そこで、回転機構83として、例えば、第一フレーム81、第二フレーム82の一方に、円弧状のガイド溝84aを有したガイドプレート84を設け、他方に、ガイド溝84aに沿って移動可能なネジ突起(図示無し)を設けることができる。ガイド溝84aは、前記の交点Oを中心とした同心円状に形成する。そして、ネジ突起には、蝶ナット85をねじ込み、その先端面をガイドプレート84に押し付けることによって、第一フレーム81、第二フレーム82の開き角を固定できるようになっている。」

(刊1-ウ)「【0049】
図15に示すように、第一フレーム81、第二フレーム82には、走行用のローラ90が設けられている。各ローラ90は、X軸方向に走行移動可能なように回転自在に保持されている。
各ローラ90は、円板状の磁石90aと、円板状のゴム90bとを積層することで構成されている。これにより、各ローラ90の磁石90aにより、鋼材からなるデッキプレート101またはリブ102に対して磁力による吸引力を発揮することで、第一フレーム81、第二フレーム82は、ローラ90の回転によりデッキプレート101またはリブ102に沿って吸い付きながら走行移動するようになっている。
【0050】
また、第一フレーム81、第二フレーム82において、ローラ90が設けられた側の面には、磁石39が設けられている。この磁石39は、ローラ90がデッキプレート101またはリブ102に接触した状態で、デッキプレート101またはリブ102との間にクリアランスを隔てて対向するよう設けられている。この磁石39によっても、鋼材からなるデッキプレート101またはリブ102に対して磁力による吸引力を発揮することで、第一フレーム81、第二フレーム82は、ローラ90の回転によりデッキプレート101またはリブ102に沿って吸い付きながら走行移動するようになっている。」

(刊1-エ)図14




(刊1-オ)図15




(2) 刊行物1に記載された発明の認定

上記(刊1-ウ)における「鋼材からなるデッキプレート101またはリブ102」が、上記(刊1-ア)における「第一部材」又は「第二部材」に対応することは明らかである。

よって、上記(刊1-ア)ないし(刊1-オ)を含む刊行物1全体の記載を総合すると、刊行物1には、

「鋼材からなる第一部材と第二部材が隅肉溶接される溶接部の溶け込み深さを当該溶接部の溶接線方向に沿って連続的に検査する探傷装置であって、
前記第一部材に対向する第一フレームと、前記第一フレームに連結され、前記第二部材に対向する第二フレームからなる、治具と、
溶接部に向けて超音波を出力する探触子と、を備える探傷装置であり、
探触子は、治具を構成する第一フレーム、第二フレームのそれぞれに設けられ、
第一フレーム、第二フレームには、走行用のローラが設けられ、
第一フレーム、第二フレームにおいて、ローラが設けられた側の面には、磁石が設けられ、この磁石によって、第一部材又は第二部材に対して磁力による吸引力を発揮することで、第一フレーム、第二フレームは、ローラの回転により第一部材又は第二部材に沿って吸い付きながら走行移動する
探傷装置。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 刊行物2

(1)刊行物2記載の事項

(刊2-ア)「【請求項1】厚板上を自走行しながら探触子により厚板を探傷する装置において、
探触子が設けられた探傷ヘッドと、
厚板の対向する板端部をレールとし、又は板端部にレールを設けて、該レールに転接して走行する一対の案内用車輪部と、
前記案内用車輪部と連結されて、且つ、前記車輪部の走行方向と直交する方向に延設されており、前記探傷ヘッドを支持するための横行ビームと、
前記横行ビームを前記走行方向に駆動させるための走行駆動部と、
前記探傷ヘッドを横行ビームに沿う横行方向に駆動させるための横行駆動部と、
前記走行駆動部及び横行駆動部の駆動を制御するための駆動制御部と、
を備えたことを特徴とする厚板用自走行式探傷装置。」

(刊2-イ)「【0016】図1において、符号1は被探傷物の厚鋼板である。又、2は超音波探触子であり、厚鋼板1の表面に接触して当該厚鋼板1の内部欠陥を超音波探傷し、探傷信号を出力するものである。超音波探触子2は、探傷ヘッド8に支持されて該ヘッド8の移動により厚鋼板1上を走査する。」

(刊2-ウ)「【0020】又、符号6は、前記横行ビーム5を前記走行方向に走行させるための走行駆動部であり、横行ビーム5の長手方向の略中央部に取付けられ、厚鋼板1の表面に転接する2輪のマグネット車輪の駆動により走行するようになっている。
【0021】又、符号7は、前記探触子2を横行方向に駆動させるための横行駆動部であり、該横行駆動部7は、探傷ヘッド8を支持し、且つ、ガイドバー7Aに摺動してラック7Bにより横行方向に移動し、これにより探傷ヘッド8を横行方向に移動させる。
【0022】前記探傷ヘッド8は、その先端側に、前記探触子2が固定された枠体9を上下動可能に、且つ、下方向への付勢力を加えるように備えており、前記探触子2を、厚鋼板1の表面に追従して接触させるように前記横行駆動部7に固定される。なお、この探傷ヘッド8は、横行駆動部7との走行方向への位置関係が自由に選べるように固定可能である。又、横行ビーム5の走行方向のいずれの側にも前記探触子2を位置させることができる。」

(刊2-エ)「【0030】ここで、図3の(A)においては、鋼板1上に未探傷部1Aが存在する。これは、探触子2が、横行ビーム5のいずれかの側へ延びた探傷ヘッド8上に設けられているからである。この未探傷部1Aについて探傷して厚鋼板1の全面を探傷するためには、探傷ヘッド8を、元に設置されていた方向とは逆方向に延びるように設置しなおす。これにより、全面の探傷が可能となる。この設置しなおした後の探傷経路の軌跡は、図3の(B)に示すようになる。」

(刊2-オ)図1




(刊2-カ)図3




(2) 刊行物2に記載された技術の認定

上記(刊2-オ)に示した図1を参照すると、探傷ヘッド8は、自走行式探傷装置の走行方向に延びていることは明らかである。
また、同図より、探傷ヘッド8は、その端部において超音波探触子2を支持している点が見て取れる。

よって、上記(刊2-ア)ないし(刊2-カ)を含む刊行物2全体の記載を総合すると、刊行物2には、

「厚板上を自走行しながら超音波探触子により厚鋼板を探傷する装置において、
走行方向に延び、その端部において超音波探触子を支持する探傷ヘッドと、
前記探傷ヘッドを支持するための横行ビームとを備え、
探傷ヘッドは、横行ビームの走行方向のいずれの側にも前記超音波探触子を位置させることができ、
厚鋼板の全面を探傷するために、探傷ヘッドを、元に設置されていた方向とは逆方向に延びるように設置しなおすことができる技術。」

が記載されている(以下、「刊行物2技術」という。)。

第5 対比

引用発明と本願発明とを対比する。

1 本願発明のA)及びB)の特定事項について
ア 引用発明の「鋼材からなる第一部材と第二部材」は、本願発明の「構造体」に相当する。
イ 引用発明の「超音波」、「出力」すること、「探触子」は、それぞれ、本願発明の「検査波」、「発信」すること、「探触子」に相当する。
ウ 引用発明は、超音波を用いて探傷するものであるが、超音波を用いた探傷は、その反射波を検出するものであり、その検出も同じ探触子が行うものであることは、当業者の技術常識であるから、引用発明の探触子も、反射波の検出を行うものであることは明らかである。
エ 引用発明の探触子は、「治具を構成する第一フレーム、第二フレームのそれぞれに設けられ」るものであるから、「第一フレーム」に設けられた「探触子」と「第二フレーム」に設けられた「探触子」は、それぞれ異なる位置で「鋼材からなる第一部材と第二部材」に超音波を出力するものといえる。
オ よって、引用発明の「鋼材からなる第一部材と第二部材が隅肉溶接される溶接部」「に向けて超音波を出力する」、「第一フレーム」「に設けら」た「探触子」は、本願発明の「構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第1探触子」に相当し、「鋼材からなる第一部材と第二部材が隅肉溶接される溶接部」「に向けて超音波を出力する」、「第二フレーム」「に設けら」た「探触子」は、本願発明の「前記第1探触子とは異なる位置で前記構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第2探触子」に相当する。

2 本願発明のC)の特定事項について
ア 引用発明の「溶接部の溶接線方法」は、本願発明の「所定の方向」に相当する。
イ 引用発明の「走行移動する」ことは、本願発明の「移動」することに相当する。
ウ 引用発明の「第一フレーム」と「第二フレーム」から構成される「治具」は、「溶接部の溶接線方法」に「走行移動する」ものであり、各々の探傷子が設けられる部材である。一方、本願発明の「保持体」は、「第1探触子」と「第2探触子」を保持する「第1腕」と「第2腕」を備え、「所定の方向に移動」するものであり、「第1探触子」と「第2探触子」は、「第1腕」と「第2腕」を介して「保持体」に保持されているといえる。
エ よって、引用発明の「治具」と、本願発明の「保持体」は、所定の方向に移動するものであり、第1探触子と第2探触子を保持して移動させる「保持体」といえる点で一致する。

3 本願発明のD)の特定事項について
ア 引用発明に「走行用のローラ」は「ローラの回転により第一部材又は第二部材に沿って」「走行移動する」ものであるから、「第一フレーム」と「第二フレーム」から構成される「治具」の「第一部材又は第二部材」に対向する部分に設けられることは明らかである。
イ よって、引用発明の「第一フレーム」と「第二フレーム」から構成される「治具」の「第一部材又は第二部材」に対向する部分に設けられる「第一部材又は第二部材に沿って」「走行移動する」「走行用のローラ」は、本願発明の「前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体の前記所定の方向への移動を案内する回転体」に相当する。

4 本願発明のE)の特定事項について
引用発明の「ローラが設けられた側の面に」「設けられ」、「第一部材又は第二部材に対して磁力による吸引力を発揮する」「磁石」は、本願発明の「前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体と前記構造体との間に吸引力を発生させる吸引機構」に相当する。

5 本願発明のF)の特定事項について
引用発明の「探傷装置」は、本願発明の「探傷装置」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
「構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第1探触子と、
前記第1探触子とは異なる位置で前記構造体に検査波を発信して前記構造体からの反射波を検出する第2探触子と、
所定の方向に移動し、第1探触子と第2探触子を保持して移動させる保持体と、
前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体の前記所定の方向への移動を案内する回転体と、
前記保持体の前記構造体と面する部分に設けられて、前記保持体と前記構造体との間に吸引力を発生させる吸引機構と、
を含む探傷装置。」

また、両者は、以下の点で相違している。

<相違点>
保持体に関して、本願発明は、「第1探触子を所定の方向における第1の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第1の軸線に対して前記第1の一方側の位置と線対称である第1の他方側の位置に、前記第1探触子を前記第1の一方側の位置から前記第1の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第1探触子を前記第1の他方側の位置から前記第1の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第1腕と、前記所定の方向に前記第1腕とともに移動し、前記第2探触子を前記所定の方向における第2の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第2の軸線に対して前記第2の一方側の位置と線対称である第2の他方側の位置に向けて、前記第2探触子を前記第2の一方側の位置から前記第2の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第2探触子を前記第2の他方側の位置から前記第2の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第2腕とを備える」ものであるの対して、引用発明は、そのように構成されていない点。

第6 検討・判断

上記相違点について以下に検討する。

引用発明では、溶接部の両端部が探傷できないことは明らかであり、引用発明においても、溶接部の両端部を探傷したいという課題があることは当業者にとって明らかである。

一方、上記「第4 引用刊行物記載の事項」「2 刊行物2」を参照すると、刊行物2には、刊行物2技術が記載されており、厚鋼板の両端部を含む全面を探傷できるように、「走行方向に延び、その端部において超音波探触子を支持する」「探傷ヘッドを、元に設置されていた方向とは逆方向に延びるように設置しなおすこと」が開示されている。

したがって、刊行物1及び刊行物2に接した当業者であれば、引用発明において、溶接部の両端部を含む溶接部全体を探傷するために、走行方向に延び、端部に超音波探触子を支持し、さらに、超音波探触子を、元に設置されていた方向とは逆方向に延びるように設置しなおすことができる探傷ヘッドを適用しようとする十分な動機付けがあるというべきである。

そして、探触子が設けられる位置は、当業者が調査を実施したい部位に対応させて適宜設定するものであり、元に設置されていた方向とは逆方向に延びるように設置しなおされる位置を、「前記所定の方向と直交する方向に沿った」「軸線に対して」「一方側の位置と線対称である」「他方側の位置」と特定することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

よって、引用発明の「第一フレーム」と「第二フレーム」のそれぞれの「探触子」について、走行方向に延びる端部に超音波探触子を支持する探傷ヘッドを備えた刊行物2技術を適用し、保持体を、「所定の方向に移動し、前記第1探触子を前記所定の方向における第1の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第1の軸線に対して前記第1の一方側の位置と線対称である第1の他方側の位置に、前記第1探触子を前記第1の一方側の位置から前記第1の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第1探触子を前記第1の他方側の位置から前記第1の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第1腕と、前記所定の方向に前記第1腕とともに移動し、前記第2探触子を前記所定の方向における第2の一方側の位置又は前記所定の方向と直交する方向に沿った第2の軸線に対して前記第2の一方側の位置と線対称である第2の他方側の位置に向けて、前記第2探触子を前記第2の一方側の位置から前記第2の他方側の位置へ入れ替え可能に、かつ、前記第2探触子を前記第2の他方側の位置から前記第2の一方側の位置へ入れ替え可能に、端部で保持する第2腕とを備え」たものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本願発明の効果は、刊行物1及び刊行物2の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

第7 結語

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び刊行物2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-20 
結審通知日 2017-07-25 
審決日 2017-08-07 
出願番号 特願2015-153723(P2015-153723)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 比嘉 翔一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 松岡 智也
▲高▼橋 祐介
発明の名称 探傷装置及び探傷システム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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