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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1332785
審判番号 不服2015-20978  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-26 
確定日 2017-10-13 
事件の表示 特願2013- 60394「アイテムデータの交換を活用した広告出力」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日出願公開、特開2014-183956、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月22日の出願であって、平成27年3月19日付けで手続補正がなされ、同年9月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成29年6月21日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年8月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年9月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 :1、4、6、8
・引用文献等:1、2、5?7

・請求項 :5
・引用文献等:1?3、5?7

・請求項 :7
・引用文献等:1、2、4?7

<引用文献等一覧>
1.特開2008-142181号公報
2.国際公開第2008/059692号
3.特開2012-113440号公報
4.特開2009-212688号公報
5.特開2001-291004号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2002-312612号公報(周知技術を示す文献)
7.特表2007-508628号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 :1、4?8
・引用文献等:1?5

<引用文献等一覧>
1.特開2001-291004号公報
2.特表2007-508628号公報
3.特開2008-142181号公報
4.国際公開第2008/59692号
5.特開2009-212688号公報(周知技術を示す文献)


第4 本願発明
本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成29年8月14日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された次のとおりのものと認められる。(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明7」という。)

「【請求項1】
一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部と、
プログラムを実行するプログラム実行部と、
実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持部と、
保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力部と、
相手属性情報とともにアイテムデータをピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて受信するアイテムデータ受信部と、
アイテムデータ受信部にて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持部と、
アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウント部と、
保持されている相手属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部と、
ネットワーク通信部と、を有し、
前記広告出力部は、
相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段を有する端末装置。
【請求項2】
プログラム実行部は、
対戦ゲームプログラムを実行する対戦ゲームプログラム実行手段を有し、
前記出力部は、
前記アイテムデータがピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信を利用して対戦ゲームをした相手に対して出力するものである場合には、アイテムデータとともに出力する所有者属性情報を増加させる出力所有者属性情報増加手段を有する請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
他の端末装置との近接回数を端末装置毎にカウントする近接回数カウント部を有し、
出力部は、
他の端末装置毎にカウントされた近接回数に応じて所有者属性情報の出力を制御する近接回数依存制御手段を有する請求項1又は2に記載の端末装置。
【請求項4】
プログラム実行部は、
友人関係情報を利用するSNSプログラムを実行するSNSプログラム実行手段を有し、
出力部は、
SNSプログラムの実行によって保持されている友人関係情報に応じて所有者属性情報の出力を制御するSNS依存制御手段を有する請求項1から3のいずれか一に記載の端末装置。
【請求項5】
一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部と、ネットワーク通信部を有する端末装置の駆動プログラムであって、
プログラムを実行するプログラム実行ステップと、
実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持ステップと、
保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力ステップと、
相手属性情報とともにアイテムデータを、ピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて受信するアイテムデータ受信ステップと、
アイテムデータ受信ステップにて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持ステップと、
アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウントステップと、
保持されている相手属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力ステップと、を有し、
前記広告出力ステップは、
相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御サブステップを有する端末装置駆動プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の端末装置駆動プログラムを保持する端末装置駆動プログラム保持部と、
端末装置からの端末装置駆動プログラムダウンロード要求を受信するダウンロード要求受信部と、
ダウンロード要求に応じて端末装置駆動プログラムをダウンロードさせるダウンロード部と、
を有するプログラムサーバ装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一に記載の端末装置から相手属性情報を取得する相手属性情報取得部と、
取得した相手属性情報に応じて広告のためのデータを取得する広告データ取得部と、
取得した広告データを前記相手属性情報を取得した端末装置に対して送信する広告送信部と、
を有する広告サーバ装置。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年6月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成13年10月19日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2001-291004号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 双方向の回線を利用したオンラインゲーム配信に伴う広告表示システムであって、
回線網を利用して双方向のデータ送信を可能とするインターネットなどの送受信手段と、
1つ、又は、複数のオンラインゲームを有するゲームサーバと、
1つ、又は、複数の広告情報を有する広告サーバと、
前記オンラインゲームを表示するためのゲーム画面を有する1つ、又は、複数のゲーム端末とを備え、
前記広告情報は、前記送受信手段を介して、予め前記広告サーバから前記ゲームサーバに送信されて、前記ゲームサーバに登録され、
前記ゲームサーバは、前記送受信手段を介して、プレイヤにより前記ゲーム端末から接続され、前記プレイヤにより入力された前記プレイヤの個人情報と前記オンラインゲームを特定するゲーム情報とに基づき広告情報を選定し、前記オンラインゲームと選定された前記広告情報とを前記ゲーム端末に配信し、
前記広告情報は、前記プレイヤが前記オンラインゲームをプレイする間、前記ゲーム画面が有する広告スペースに表示されることを特徴とするオンラインゲーム配信に伴う広告表示システム。
【請求項2】 前記オンラインゲームは、複数のプレイヤで利用される対戦ゲームであり、
該対戦ゲームは、前記送受信手段を介して前記ゲームサーバに接続した前記ゲーム端末のうち、第1のゲーム端末と第2のゲーム端末とでオンラインにてプレイが行われ、
前記広告情報は、前記ゲームサーバから、前記第1のゲーム端末と前記第2のゲーム端末とに配信され、各々の前記ゲーム端末が有する前記ゲーム画面の前記広告スペースに表示されることを特徴とする請求項1に記載のオンラインゲーム配信に伴う広告表示システム。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広告表示方法に関し、特に双方向の回線を利用したオンラインゲーム配信に伴う広告表示システム及びその広告表示方法に関する技術に属する。」
(3)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術には以下に掲げる問題点があった。広告を見る閲覧者が別のホームページに移ってしまった場合は、広告の表示が途中であっても継続して表示することはできなかった。即ち、閲覧者が不特定のため、必要とされる広告表示の時間と、閲覧者が閲覧する時間との関係付けができなかった。また、広告の内容も、閲覧者に関係付けることができず、表示される広告の有効度を高めることができないという問題点があった。
【0004】本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オンラインゲームなど、双方向の回線を利用し、長時間にわたって接続されて利用されるソフトウェアなどに広告を表示することにより、継続的に広告を表示し、また、利用されるソフトウェアの内容に関する情報や、プレイヤの情報を参照して、利用者に対して効果的な広告情報を表示させるオンラインゲーム配信に伴う広告表示システム及びその広告表示方法に関する技術を提供する点にある。」
(4)上記(1)【請求項1】より、「ゲーム端末」は、「広告表示システム」を構成する「ゲーム端末」といえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「双方向の回線を利用したオンラインゲーム配信に伴う広告表示システムに備えられたゲーム端末であって、
広告表示システムは、
回線網を利用して双方向のデータ送信を可能とするインターネットなどの送受信手段と、
1つ、又は、複数のオンラインゲームを有するゲームサーバと、
1つ、又は、複数の広告情報を有する広告サーバと、
前記オンラインゲームを表示するためのゲーム画面を有する1つ、又は、複数のゲーム端末とを備え、
前記広告情報は、前記送受信手段を介して、予め前記広告サーバから前記ゲームサーバに送信されて、前記ゲームサーバに登録され、
前記ゲームサーバは、前記送受信手段を介して、プレイヤにより前記ゲーム端末から接続され、前記プレイヤにより入力された前記プレイヤの個人情報と前記オンラインゲームを特定するゲーム情報とに基づき広告情報を選定し、前記オンラインゲームと選定された前記広告情報とを前記ゲーム端末に配信し、
前記広告情報は、前記プレイヤが前記オンラインゲームをプレイする間、前記ゲーム画面が有する広告スペースに表示され、
前記オンラインゲームは、複数のプレイヤで利用される対戦ゲームであり、
該対戦ゲームは、前記送受信手段を介して前記ゲームサーバに接続した前記ゲーム端末のうち、第1のゲーム端末と第2のゲーム端末とでオンラインにてプレイが行われ、
前記広告情報は、前記ゲームサーバから、前記第1のゲーム端末と前記第2のゲーム端末とに配信され、各々の前記ゲーム端末が有する前記ゲーム画面の前記広告スペースに表示されるものである、オンラインゲーム配信に伴う広告表示システムを構成するゲーム端末。」

2.引用文献2について
平成29年6月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成19年4月5日に頒布された刊行物である引用文献2(特表2007-508628号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有するゲーム用システム:
移動無線ネットワーク(3),
移動無線ネットワーク用のインターフェース及び少なくとも1つのゲーム・アプリケーションを有するゲーム端末機(1)としての少なくとも1つの移動電話,
このゲーム端末機は、携帯できるパーソナルIDモジュール(10)を有し、
移動無線ネットワークを通じてゲーム・アプリケーションから別々にゲーム端末機(1)に対して広告コンテンツを提供する広告コンテンツサーバシステム (4),
広告コンテンツが、ゲームの間にプレーヤーに対してゲームの中に再生されるように、ゲーム・アプリケーションがプログラミングされているシステムにおいて、
ゲームの間に宣伝された製品又はコンポネント(40)が、移動無線ネットワーク(3)を通じて注文され得るように、ゲーム・アプリケーションがプログラミングされていることを特徴とするシステム。

【請求項19】
ゲーム端末機(1)内にダウンロードされる広告コンテンツは、プレーヤーのプロフィール又は好みに依存する請求項1?18のいずれか1項に記載のシステム。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、移動無線ネットワークにおける電子ゲーム用のシステム及び方法に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、オンラインゲームに対して改良されたシステム及び方法を提供することにある。
【0005】
特に本発明の課題は、プレーヤー,新しいゲーム及びプレーヤーに対する注文可能性に対するより効果的な宣伝キャンペーンを可能にするシステム及び方法を提供することにある。」
(4)「【0016】
広告プロバイダ6は、広告コンテンツを配信するための提供プランを記憶領域41内に記憶できる。この広告プランは、各広告コンテンツに対してサーバ4内に1つ又は幾つかの提供規準を有し得る。この提供規準は、異なる事象、例えばプレーヤー1の身元,そのプレーヤー1の(登録された興味のあるプロフィールを含む)プロフィール,端末機1の種類及びディスプレイの分解能及び特徴,時間,曜日,日付,移動装置1の場所に応じて広告条項の各条項を提供し、広告,ゲームの進化(例えば、取得したスコア)又はプレーヤー若しくは広告プロバイダの明確なコマンドを前もって送信する。次いで、規準が満たされている場合、提供規準に関連する広告が送信される。この提供が、サーバシステム4の操作者によって広告プロバイダに対して支払請求され得る。
【0017】
この方法では、地理的に及び時間的に制限されるか又は消費者のプロフィールに応じた宣伝キャンペーンが計画され得る。これらの宣伝キャンペーンは、狙いを定めたプレーヤーだけに呼びかけられる。これらの広告キャンペーンは、(例えば、既知のインターネット又は協定支払法を通じて)支払及び請求プラットフォーム31によって広告プロバイダに対して支払請求される。
【0018】
広告プロバイダ6の例としては、この方法でプレーヤーにゲーム・コンポネント,アクセサリー,ゲーム・エクステンション又はゲームの新バージョンの提供を希望するゲーム・アプリケーションの販売人が挙げられ得る。広告キャンペーンは、地理的に及び時間的に限定されるか又は消費者のプロフィールに依存するので、プレーヤーの適切な時間,言語及び通貨で宣伝され得、そのプレーヤーの端末機に適合され得る。」
(5)上記(1)より、「ゲーム端末機」は、「システム」を構成する「ゲーム端末機」といえる。

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「移動無線ネットワーク,
移動無線ネットワーク用のインターフェース及び少なくとも1つのゲーム・アプリケーションを有するゲーム端末機としての少なくとも1つの移動電話,
このゲーム端末機は、携帯できるパーソナルIDモジュールを有し、
移動無線ネットワークを通じてゲーム・アプリケーションから別々にゲーム端末機に対して広告コンテンツを提供する広告コンテンツサーバシステム,
広告コンテンツが、ゲームの間にプレーヤーに対してゲームの中に再生されるように、ゲーム・アプリケーションがプログラミングされているシステムを構成するゲーム端末機において、
システムは、
ゲームの間に宣伝された製品又はコンポネントが、移動無線ネットワークを通じて注文され得るように、ゲーム・アプリケーションがプログラミングされており、
ゲーム端末機内にダウンロードされる広告コンテンツは、プレーヤーが興味のある登録されたプロフィール又は好みに依存するものである、システムを構成するゲーム端末機。」

3.引用文献3について
平成29年6月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成20年6月26日に頒布された刊行物である引用文献3(特開2008-142181号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されている前記プレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、
自装置とは異なる他装置から無線通信によって配信されたゲーム情報を受信する情報受信手段と、
該情報受信手段が受信したゲーム情報として、特定の条件を満たさないと閲覧が可能とならない条件付閲覧データと、無条件で閲覧が可能となる無条件閲覧データと、を蓄積する情報蓄積手段と、
前記情報蓄積手段に蓄積されているゲーム情報が示す閲覧データを閲覧可能に設定する情報設定手段と、
前記ビデオゲームの進行に際して前記特定の条件を満たしたか否かを判定する条件判定手段とを備え、
前記情報設定手段は、
前記ゲーム情報が前記無条件閲覧データである場合には、該無条件閲覧データが前記情報蓄積手段に蓄積されたことに応じて、当該無条件閲覧データを閲覧可能に設定し、
前記ゲーム情報が前記条件付閲覧データである場合には、前記条件判定手段によって前記特定の条件を満たしたと判定されたことに応じて、当該条件付閲覧データを閲覧可能に設定する
ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて表示画面上に表示されているプレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するための技術に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1および特許文献2に開示されている携帯ゲーム装置では、各携帯ゲーム装置間で交換されるアイテムなどのゲーム情報を取得する場合に、シャッフルされたり特定の動作が完了したりしたときに必ず取得することができるように設定されているため、ゲーム情報の取得に関してプレイヤにとっては大きな障害や課題となる要素がなく、プレイヤに対するゲームプレイのさらなる趣向の提供が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題を解消し、無線通信によって取得されたゲーム情報のうち、所定のゲーム情報については特定の条件を満たした場合に利用することができるようにすることで、各装置間で通信されるゲーム情報の利用困難性を高める要素を付加し、ゲームプレイの趣向性を向上させることができるようにすることを目的とする。」
(4)「【0074】
本例のビデオゲーム装置100では、上記ステップS111からステップS112におけるその他操作に応じた処理に関連して、例えば、一のプレイヤが使用するビデオゲーム装置本体10の近隣所定範囲内に存在する他のプレイヤが使用するビデオゲーム装置本体との間で、通信に関する親機と子機との関係を自動的に切り替えて通信相手を探索し、通信相手が見つかった場合は自動的に接続してデータ(情報)交換を行った後に接続を切断する近距離無線通信(例えば、すれ違い通信(登録商標))による通信が行われた場合であれば、取得したゲーム情報を蓄積して、蓄積したゲーム情報の種類に応じて無条件に閲覧可能にしたり特定の条件を満たす場合に閲覧可能にしたり、あるいは通信結果を示す通信結果情報を利用したりして、ゲームプレイに用いることができる。このため、各ビデオゲーム装置本体間で通信されるゲーム情報の利用困難性を高める要素を付加しつつ、ゲームプレイの趣向性を向上させ、遊戯の興趣を向上させるという新たなゲーム要素を実現している。」
(5)「【0102】
ここで、経過表示領域214に表示される「○○○○」、「××××」および「△△△△」は、例えば本例のビデオゲーム装置100では、次のように定義される。すなわち、「○○○○」は、ビデオゲーム装置本体10と同一の端末であり、かつ同一のソフトウェアを使用している他のビデオゲーム装置本体と遭遇した場合にカウントされ、「××××」は、ビデオゲーム装置本体10と同一の端末であるが、他のソフトウェアを使用している他のビデオゲーム装置本体と遭遇した場合にカウントされる。なお、「△△△△」は、上述した条件以外の場合にカウントされる。そして、「○○○○」とカウントされる通信が行われた場合は、上述した交換可情報などの他に、プロフィール表示画面210に表示されたステッカー250やユーザプロフィールに関する情報、キャラクタステータスの所定のステータス内容の設定指示を行うためのステータス指示データなども各端末間で送受信されそれぞれに保存される。」
(6)「【0114】
ここでは、上記ステップS150にて蓄積されたゲーム情報のうち、ユーザプロフィール情報が無条件に閲覧可能となる無条件閲覧データであり、このユーザプロフィール情報に関連付けられたステッカー250が特定の条件を満たさないと閲覧可能とならない条件付閲覧データであることとする。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「プレイヤキャラクタを画像表示装置の表示画面上に表示し、プレイヤの操作に応じて前記表示画面上に表示されている前記プレイヤキャラクタの行動を制御することでビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、
自装置とは異なる他装置から近距離無線通信によって配信されたアイテムなどのゲーム情報を受信する情報受信手段と、
該情報受信手段が受信したゲーム情報として、特定の条件を満たさないと閲覧が可能とならない条件付閲覧データと、無条件で閲覧が可能となる無条件閲覧データと、を蓄積する情報蓄積手段と、
前記情報蓄積手段に蓄積されているゲーム情報が示す閲覧データを閲覧可能に設定する情報設定手段と、
前記ビデオゲームの進行に際して前記特定の条件を満たしたか否かを判定する条件判定手段とを備え、
前記情報設定手段は、
前記ゲーム情報のうち、ユーザプロフィール情報が前記無条件閲覧データである場合には、該無条件閲覧データが前記情報蓄積手段に蓄積されたことに応じて、当該無条件閲覧データを閲覧可能に設定し、
前記ゲーム情報のうち、ユーザプロフィール情報が前記条件付閲覧データである場合には、前記条件判定手段によって前記特定の条件を満たしたと判定されたことに応じて、当該条件付閲覧データを閲覧可能に設定し、
他のビデオゲーム装置本体と遭遇した場合にカウントされるプロフィール表示画面に表示されたステッカーやユーザプロフィールに関する情報、キャラクタステータスの所定のステータス内容の設定指示を行うためのステータス指示データなども各端末間で送受信されそれぞれに保存される、ビデオゲーム処理装置。」

4.引用文献4について
平成29年6月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である2008年5月22日に頒布された刊行物である引用文献4(国際公開第2008/59692号)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「[0001] 本発明は、通信端末に広告情報を提供する広告情報提供方法、広告情報提供システム及び広告情報提供プログラムに係り、友人等の関係者に関する情報を利用することにより、利用者の潜在的な嗜好を反映した広告情報を提供してその効果を高めることのできる広告情報提供方法等に関する。」
(2)「[0016] 本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、通信端末を利用する利用者に対し、その顕在的な嗜好のみならず潜在的な嗜好を反映する広告情報を提供することにより、利用者の新たな嗜好を高い確度で顕在化させるとともに、利用者に多彩な広告情報を提供することにより高い広告効果を維持し続けることのできる広告情報提供方法、広告情報提供システム及び広告情報提供プログラムを提供することを例示的課題とする。
[0017] また、広告情報を短期間で数多ぐかつその広告情報に一定の興味を示すであろう提供先に対して効率的に提供することのできる広告情報提供方法等を提供することを他の例示的課題とする。」
(3)「[0023] なお、利用者情報と利用者の関係者情報とが相互に関連付けられた登録データべースを有するものとして、ソーシャル'ネットワーク'サービス(SNS)等がある。SNS等で自身の情報(利用者情報)及び関係者情報を登録データベースに登録する利用者の数は近年急激に増加しており、これらの登録データベースを用いて本発明に係る広告情報提供方法を実現することで、より多くの利用者に潜在的な嗜好に合った広告情報を提供できるようになる。」
(4)「請求の範囲
[7] 通信端末の利用者を識別するための利用者情報を取得する利用者情報取得手段と、
該利用者情報と前記利用者の関係者を識別するための関係者情報と前記関係者の行動履歴を指標する関係者行動履歴情報とが相互に関連付けられて構築された登録データベースに基づいて、前記利用者の関係者の行動履歴に対応する前記関係者行動履歴情報を抽出する関係者行動履歴情報抽出手段と、
抽出された前記関係者行動履歴情報に基づいて、複数の広告情報が格納された広告情報データベースから第1の広告情報を抽出する第1の広告情報抽出手段と、
前記登録データベースに基づいて、前記利用者の関係者数を認識する関係者数認識手段と、
該関係者数が所定数以上の場合に、前記第1の広告情報とは異なる第2の広告情報及び前記抽出された第1の広告情報のうち少なくともいずれか一方を前記通信端末に向けて提供する広告情報提供手段と、を有する広告情報提供システム。」

したがって、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「通信端末の利用者を識別するための利用者情報を取得する利用者情報取得手段と、
該利用者情報と前記利用者の関係者を識別するための関係者情報と前記関係者の行動履歴を指標する関係者行動履歴情報とが相互に関連付けられて構築されたソーシャル'ネットワーク'サービス(SNS)等の登録データベースに基づいて、前記利用者の関係者の行動履歴に対応する前記関係者行動履歴情報を抽出する関係者行動履歴情報抽出手段と、
抽出された前記関係者行動履歴情報に基づいて、複数の広告情報が格納された広告情報データベースから第1の広告情報を抽出する第1の広告情報抽出手段と、
前記登録データベースに基づいて、前記利用者の関係者数を認識する関係者数認識手段と、
該関係者数が所定数以上の場合に、前記第1の広告情報とは異なる第2の広告情報及び前記抽出された第1の広告情報のうち少なくともいずれか一方を前記通信端末に向けて提供する広告情報提供手段と、を有する広告情報提供システム。」

5.引用文献5について
平成29年6月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成21年9月17日に頒布された刊行物である引用文献5(特開2009-212688号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末と、
ダウンロード要求に応じて、前記携帯端末にプログラムを送信するサーバとを備え、
前記携帯端末は、プログラムのダウンロードを要求する旨の要求情報を、前記サーバに送信するプログラム要求手段を含み、
前記サーバは、
前記携帯端末から前記要求情報を受信したことに基づいて、ダウンロード要求されたプログラムを前記携帯端末に送信するプログラム送信手段と、
前記ダウンロード要求されたプログラムを当該サーバ側で実行するプログラム実行手段とを含み、
前記プログラム実行手段は、前記プログラム送信手段によるプログラムの送信と並行して、前記ダウンロード要求されたプログラムを実行する
ことを特徴とするオンデマンドダウンロードプログラム実行システム。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、オンデマンドによりプログラムをダウンロードし実行するオンデマンドダウンロードプログラム実行システム、オンデマンドダウンロードプログラム実行方法、及びオンデマンドダウンロードプログラム実行プログラムに関する。また、本発明は、オンデマンドダウンロードプログラム実行システムが備える携帯端末及びサーバに関する。また、本発明は、携帯端末が搭載する携帯端末用プログラムに関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無線携帯端末機器のような携帯端末機器へのプログラムのダウンロードを行う場合、特許文献1に記載されたシステムを用いたとしても、プログラムをダウンロードし実行するまでのTATを十分に短縮できないことがある。すなわち、無線回線を利用したネットワークでは数Mbps程度の速度が一般的であるため、ダウンロードを行うために十分に広い帯域の回線を確保できるとは限らない。そのため、携帯端末機器へのダウンロードを行う場合には、無線回線を利用することが多いのであるから、有線回線を用いる場合と比較して広帯域回線を利用できず、プログラムをダウンロードし実行するまでのTATを十分に短縮できないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザリクエストに対するTATを高速にできるオンデマンドダウンロードプログラム実行システム、携帯端末、サーバ、オンデマンドダウンロードプログ
ラム実行方法、携帯端末用プログラム、及びオンデマンドダウンロードプログラム実行プログラムを提供することを目的とする。」

したがって、上記引用文献5には次の技術事項(以下、「引用文献5記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「携帯端末と、
ダウンロード要求に応じて、前記携帯端末にプログラムを送信するサーバとを備え、
前記携帯端末は、プログラムのダウンロードを要求する旨の要求情報を、前記サーバに送信するプログラム要求手段を含み、
前記サーバは、
前記携帯端末から前記要求情報を受信したことに基づいて、ダウンロード要求されたプログラムを前記携帯端末に送信するプログラム送信手段と、
前記ダウンロード要求されたプログラムを当該サーバ側で実行するプログラム実行手段とを含み、
前記プログラム実行手段は、前記プログラム送信手段によるプログラムの送信と並行して、前記ダウンロード要求されたプログラムを実行する、オンデマンドダウンロードプログラム実行システム。」

6.引用文献6について
原審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成24年6月14日に頒布された刊行物である引用文献6(特開2012-113440号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク上に開設されたSNS統括サイトを管理するとともに、このSNS統括サイトに登録する任意個数のSNSも管理するSNS統括サイト管理装置であって、
前記SNSに関する情報を記憶する第1記憶手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者に関する個人情報を記憶する第2記憶手段と、
SNS主催者が、前記SNS統括サイトへの登録を要求する際に使用するSNS主催者端末から、当該SNSに関する情報を受信して前記第1記憶手段に記憶させるSNS登録手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者に関する個人情報を、当該参加者の識別情報と対応づけた上で、前記第2記憶手段に記憶させるSNS参加者登録手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者が使用する参加者端末からの情報の開示レベル及びその開示レベルの対象範囲を受信し、両者を対応づけた上で、前記第2記憶手段に記憶させる開示レベル登録手段と、
参加者端末からの他の参加者に関する情報の閲覧要求を受信すると、前記第2記憶手段から当該他の参加者の開示レベルを参照し、閲覧許否を判定する開示許否判定手段と、を少なくとも有し、
一の参加者が開示を許可する他の参加者は、同一のSNSに参加していることを問わないことを特徴とするSNS統括サイト管理装置。

【請求項3】
前記第2記憶手段には、参加者毎の人脈が記憶されており、
情報の開示レベルと対応づけて登録される開示レベルの対象範囲とは、人脈の親疎関係を表わす関係度であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のSNS統括サイト管理装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワーク上に開設されたSNS統括サイト内に1人以上の参加者からなるSNSを登録し、SNS統括サイトあるいは登録されたSNSに参加するユーザは、同一あるいはSNS統括サイト内の異なるSNSに参加する他のユーザに自己が設定した範囲内で自己の情報を開示する方法およびこの方法を実現するための情報処理装置に関する。」
(3)「【0009】
以上の問題点に鑑み、本発明は、自らが参加するSNSに限らず、他のSNSに参加する者にも、自ら設定した範囲内で自己のプロフィールや日記などの情報を公開可能とする仕組みの提供を目的とする。
つまり、異なるSNSに参加する者同士の情報開示を可能とすることによって、各SNSは垣根を持ちつつ、参加者レベルでこの垣根を越えた交流ができ、個々のSNSはたとえ少人数であるとしても、情報交換の質量ともに増大させ、人数の少ないSNSでも、参加者数の増加を可能とさせる仕組みを提供する。」
(4)「【0018】
《第1の実施形態》
図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。請求項1にいう「SNS統括サイト」は、それ自体が個々のSNSを参加者とするSNSとみなすことができる。そのため、以下、「SNS統括サイト」を「メタSNS」と表現する。このメタSNSに参加しているSNSを「下位SNS」と表現する。
図1に従い、本実施形態のシステム構成を説明する。」
(5)「【0023】
記憶部4は、第1記憶手段7と、第2記憶手段8を含む。
第1記憶手段7には、SNS情報データベース(以下、「SNS情報DB」)9が格納されている。
第2記憶手段8には、参加者プロフィール情報データベース(以下、「参加者プロフィール情報DB」)10と、参加者所属情報データベース(以下、「参加者所属情報DB」)11と、参加者人脈情報データベース(以下、「参加者人脈情報DB」)12と、参加者開示レベル情報データベース(以下、「参加者開示レベル情報DB」)13が格納されている。」
(6)「【0040】
閲覧ユーザと対象ユーザとが、同一のSNSに参加していないならば(ステップS5でNo),図4のテーブルのうちから基本情報のみを取り出してユーザ端末3に送信する(ステップS7)。たとえば、ユーザDとユーザGは「無関係」であり、かつユーザTの所属する下位SNSに参加していないので、ユーザTのニックネーム「てぃー」等の最少限の基本情報のみを送信する。」

したがって、上記引用文献6には次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「通信ネットワーク上に開設されたSNS統括サイトを管理するとともに、このSNS統括サイトに登録する任意個数のSNSも管理するSNS統括サイト管理装置であって、
前記SNSに関する情報を記憶する第1記憶手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者に関する個人情報を記憶する第2記憶手段と、
SNS主催者が、前記SNS統括サイトへの登録を要求する際に使用するSNS主催者端末から、当該SNSに関する情報を受信して前記第1記憶手段に記憶させるSNS登録手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者に関する個人情報を、当該参加者の識別情報と対応づけた上で、前記第2記憶手段に記憶させるSNS参加者登録手段と、
前記SNS統括サイトへの直接参加者あるいは前記SNSいずれかへの参加者が使用する参加者端末からの情報の開示レベル及びその開示レベルの対象範囲を受信し、両者を対応づけた上で、前記第2記憶手段に記憶させる開示レベル登録手段と、
参加者端末からの他の参加者に関する情報の閲覧要求を受信すると、前記第2記憶手段から当該他の参加者の開示レベルを参照し、閲覧許否を判定する開示許否判定手段と、を少なくとも有し、
一の参加者が開示を許可する他の参加者は、同一のSNSに参加していることを問わず、
前記第2記憶手段には、参加者毎の人脈が記憶されており、
情報の開示レベルと対応づけて登録される開示レベルの対象範囲とは、人脈の親疎関係を表わす関係度である、SNS統括サイト管理装置。」

7.引用文献7について
原審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成14年10月25日に頒布された刊行物である引用文献7(特開2002-312612号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項3】 現実に存在する身近な街であり、かつ、その個性に惹かれて人々が訪れる街をモデルにした仮想的な街空間を生成する共有空間管理部と、
ユーザを象徴するキャラクタを設定し、そのキャラクタをユーザごとに管理するユーザ管理部と、
前記街空間の中に前記キャラクタの仮想的な部屋を開設する個別空間管理部と、
前記部屋を中心とした前記ユーザの仮想的な行動を前記キャラクタに代行させる行動管理部と、
を含むことを特徴とする仮想空間提供システム。
【請求項7】 前記街空間におけるイベントを発生させるイベント管理部をさらに含み、
前記ユーザ管理部は、広告情報の受け取りに関する前記ユーザの承諾を得た上で予め前記ユーザの属性に関する情報および嗜好に関する情報を取得し、
前記イベント管理部は、ユーザの属性または嗜好に適合する商品を選定し、その商品に関連するイベントを前記街空間で発生させ、そのイベントの中で登場するアイテムに予め前記商品の関連ページへリンクを設定しておくことを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の仮想空間提供システム。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、仮想空間提供方法およびシステムに関する。この発明は特に、電子的な処理によりネットワーク上に仮想空間を構築する技術に関する。」
(3)「【0005】本発明者は、以上の認識に基づき本発明をなしたもので、その目的は、ユーザが親近感をもって安らげる居心地のよいコミュニティをネットワーク上に構築する技術の提供にある。」
(4)「【0012】街空間におけるイベントを発生させるイベント管理部をさらに含み、ユーザ管理部は、広告情報の受け取りに関するユーザの承諾を得た上で予めユーザの属性に関する情報および嗜好に関する情報を取得し、イベント管理部は、ユーザの属性または嗜好に適合する商品を選定し、その商品に関連するイベントを街空間で発生させ、そのイベントの中で登場するアイテムに予め商品の関連ページへリンクを設定しておいてもよい。「イベント」は、たとえばその街で開催されるフリーマーケットや花火大会などであり、その中に設けられた店舗やその店舗で売られている商品をクリックすると関連するウェブページが表示されてもよい。どのイベントを発生させるかは、ユーザの属性や嗜好に基づいて決定されてもよい。「商品」には物品の他、サービスも含まれる。
【0013】イベント管理部は、選定した商品をモチーフとした配達物に予めその商品の関連ページへリンクを設定し、配達物をその配達物に応じたキャラクタを用いて部屋へ届けてもよい。たとえば、ユーザの部屋が表示された画面において、宅配便のキャラクタが商品を配達しに来てもよく、ユーザがその商品をクリックすると関連するウェブページが表示されてもよい。どの商品が届けられるかは、ユーザの属性や嗜好に基づいて決定されてもよい。」

したがって、上記引用文献7には次の技術事項(以下、「引用文献7記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「現実に存在する身近な街であり、かつ、その個性に惹かれて人々が訪れる街をモデルにした仮想的な街空間を生成する共有空間管理部と、
ユーザを象徴するキャラクタを設定し、そのキャラクタをユーザごとに管理するユーザ管理部と、
前記街空間の中に前記キャラクタの仮想的な部屋を開設する個別空間管理部と、
前記部屋を中心とした前記ユーザの仮想的な行動を前記キャラクタに代行させる行動管理部と、を含み、
前記街空間におけるイベントを発生させるイベント管理部をさらに含み、
前記ユーザ管理部は、広告情報の受け取りに関する前記ユーザの承諾を得た上で予め前記ユーザの属性に関する情報および嗜好に関する情報を取得し、
前記イベント管理部は、ユーザの属性または嗜好に適合する商品を選定し、その商品に関連するイベントを前記街空間で発生させ、そのイベントの中で登場するアイテムに予め前記商品の関連ページへリンクを設定しておく、仮想空間提供システム。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比(その1)
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「個人情報」、「広告サーバ」、「広告情報」、「インターネットなどの送受信手段」、及び「ゲーム端末」は、それぞれ、前者の「所有者属性情報」、「広告サーバ装置」、「広告データ」、「ネットワーク通信部」、及び「端末装置」に相当する。
後者の「プレイヤの個人情報」は、プレイヤによりゲーム端末ゲームサーバに入力されるものであるから、ゲーム端末が「一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部」を有することは明らかである。
後者は、「ゲーム端末」を用いて、プレイヤがオンラインゲームをプレイするものであるから、「プログラムを実行するプログラム実行部」を有することは明らかである。
後者の「ゲーム端末」には、広告情報が配信され、ゲーム画面が有する広告スペースに表示されるものであるから、「広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部」を有することは明らかである。

したがって、両者は、
「一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部と、
プログラムを実行するプログラム実行部と、
広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部と、
ネットワーク通信部と、を有する端末装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、「実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持部と、保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力部と、相手属性情報とともにアイテムデータをピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて受信するアイテムデータ受信部と、アイテムデータ受信部にて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持部と、アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウント部と、保持されている相手属性情報を広告サーバ装置に取得させることで」、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部と、を有し、「広告出力部は、相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」を有するものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

(2)相違点1についての判断
引用発明3の「アイテムなどのゲーム情報」、「ユーザプロフィール情報」、「近距離無線通信」、「情報受信手段」、及び「情報蓄積手段」は、それぞれ、本願発明1の「アイテムデータ」、「相手属性情報」、「ピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信」、「アイテムデータ受信部」、及び「アイテムデータ受信部にて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持部」に相当する。
また、引用発明3は、「自装置とは異なる他装置から近距離無線通信によって配信されたアイテムなどのゲーム情報を受信する情報受信手段」を備え、「他のビデオゲーム装置本体と遭遇した場合にカウントされるプロフィール表示画面に表示されたステッカーやユーザプロフィールに関する情報、キャラクタステータスの所定のステータス内容の設定指示を行うためのステータス指示データなども各端末間で送受信されそれぞれに保存される」ものであるから、「実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持部」及び「保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力部」を有することは明らかである。
また、引用発明3は「他のビデオゲーム装置本体と遭遇した場合にカウントされる」ものであるから、「アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウント部」を有するといえる。
そうすると、引用発明3には、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における「実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持部と、保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力部と、相手属性情報とともにアイテムデータをピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて受信するアイテムデータ受信部と、アイテムデータ受信部にて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持部と、アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウント部」が示されているといえる。
引用発明4の、「関係者情報」、及び「広告情報提供手段」は、それぞれ、本願発明1の「相手属性情報」、及び「広告サーバ装置」に相当する。
また、引用発明4の「広告情報提供システム」は、関係者行動履歴情報に基づいて、複数の広告情報が格納された広告情報データベースから第1の広告情報を抽出する第1の広告情報抽出手段と、第1の広告情報とは異なる第2の広告情報及び前記抽出された第1の広告情報のうち少なくともいずれか一方を前記通信端末に向けて提供する広告情報提供手段と、を有するものであるから、「保持されている相手属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部」を有するといえる。
そうすると、引用発明4には、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における「保持されている相手属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部」が示されているといえる。
しかし、引用発明3及び引用発明4のいずれにも、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における「広告出力部は、相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」については、記載も示唆もされていない。
また、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における「広告出力部は、相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」が設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項により、「本実施形態の端末装置は、他の端末装置との近接回数に応じて所有者属性情報の出力を制御することにより、多方面から所有者の属性情報を集め、より広範囲への広告配信を実行することが可能となる。」(【0092】参照。)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明1、引用発明3及び引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお、上記引用文献2、引用文献5乃至引用文献7を見ても、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は記載されていない。

(3)対比(その2)
本願発明1と引用発明2とを対比すると、
後者の「プロフィール」、「ゲーム・アプリケーション」、「広告コンテンツサーバシステム」、「広告コンテンツ」、「移動無線ネットワーク」、及び「ゲーム端末機」は、それぞれ、前者の「所有者属性情報」、「プログラム」、「広告サーバ装置」、「広告データ」、「ネットワーク通信部」、及び「端末装置」に相当する。
後者の「プロフィール」は、プレーヤーが興味のある登録されたものであるから、後者のゲーム端末機が「一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部」を有することは明らかである。
後者の「ゲーム端末機」を用いて、プレイヤがゲーム・アプリケーションを実行するものであるから、「ゲーム端末機」が、「プログラムを実行するプログラム実行部」を有することは明らかである。
後者の「広告コンテンツ」は、ゲームの間にプレーヤーに対してゲームの中に再生され、ゲーム端末機内にダウンロードされ、プレーヤーのプロフィール又は好みに依存するものであるから、「保持されている属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データ」といえる。そして、後者の「ゲーム端末機」が、「広告を出力するための広告出力部」を有するものであることは明らかである。

したがって、両者は、
「一以上の所有者属性情報を保持する所有者属性情報保持部と、
プログラムを実行するプログラム実行部と、
保持されている属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部と、
ネットワーク通信部と、を有する端末装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点2]
本願発明1が、「実行されるプログラム上で利用可能なアイテムのデータであるアイテムデータを保持するアイテムデータ保持部と、保持されているアイテムデータを保持されている所有者属性情報とともにピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて出力する出力部と、相手属性情報とともにアイテムデータをピアツーピア無線通信を含む近距離無線通信にて受信するアイテムデータ受信部と、アイテムデータ受信部にて受信した相手属性情報を保持する相手属性情報保持部と、アイテムデータの相手毎の受信回数をカウントするカウント部と」、保持されている「相手」属性情報を広告サーバ装置に取得させることで、広告サーバ装置から送信されてくる広告データに基づいて広告を出力するための広告出力部と、「前記広告出力部は、相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」を有するものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

(4)相違点2についての判断
上記「(2)相違点1についての判断」で検討した通り、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項における「広告出力部は、相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」については、引用発明3及び引用発明4に、記載も示唆もされていないし、設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項により、「本実施形態の端末装置は、他の端末装置との近接回数に応じて所有者属性情報の出力を制御することにより、多方面から所有者の属性情報を集め、より広範囲への広告配信を実行することが可能となる。」(【0092】参照。)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明2、引用発明3及び引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお、上記引用文献1、引用文献5乃至引用文献7を見ても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は記載されていない。

2.本願発明2乃至7について
本願発明2乃至4及び7は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至4及び7は、上記1.(2)及び(4)と同様の理由により、引用発明1、引用発明3及び引用発明4、又は、引用発明2、引用発明3及び引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本願発明5は、本願発明1に対応する端末装置駆動プログラムの発明であるから、本願発明5は、上記1.(2)及び(4)と同様の理由により、引用発明1、引用発明3及び引用発明4、又は、引用発明2、引用発明3及び引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本願発明6は、本願発明6の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明6は、上記1.(2)及び(4)と同様の理由により、引用発明1、引用発明3、引用発明4及び引用文献5記載の技術事項、又は、引用発明2、引用発明3、引用発明4及び引用文献5記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第7 原査定についての判断
平成29年8月14日付けの補正により、補正後の請求項1乃至請求項4及び請求項7は「相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」という技術的事項を有し、また、請求項5及び請求項6は「相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御サブステップ」という技術的事項を有するものとなった。
当該「相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御手段」または「相手毎の受信回数に応じて相手属性情報に基づく広告出力を制御する受信回数依存制御サブステップ」は、原査定における引用文献1乃至7には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1乃至7は、当業者であっても、原査定における引用文献1乃至7に基づいて容易に発明できたものとすることはできない

したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-02 
出願番号 特願2013-60394(P2013-60394)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松下 公一坪内 優佳前地 純一郎柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 アイテムデータの交換を活用した広告出力  
代理人 工藤 一郎  

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