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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G12B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G12B
管理番号 1332819
審判番号 不服2016-18969  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-19 
確定日 2017-10-23 
事件の表示 特願2015-255505「精密傾斜ステージ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-116514、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月26日の出願であって、平成28年5月10日付けで拒絶理由が通知され、平成28年7月11日付けで手続補正がなされたが、平成28年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年12月19日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年6月29日付けで拒絶理由が通知され、平成29年8月31日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」)という。)は、平成29年8月31日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ステージ中央部に直立して設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成し、センサ素子を前記ヒンジ部に設けた精密傾斜ステージ。
【請求項2】
前記角溝を異なる高さに直交して設けた、請求項1記載の精密傾斜ステージ。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平4-348834号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微小単位移動するX-Yテーブルに関する。」

イ 「【0005】
【作用】移動部と固定部の間に設けられた平行板バネがX,Y軸に対して垂直の方向に直線状に伸びているので、X軸およびY軸駆動装置により移動部に推力を作用させると、平行板バネのX切欠き部およびY切欠き部が互いに干渉することなく独立して弾性変形し、平行バネのX軸、Y軸両方向のばね定数に応じた変位を移動部に発生させる。
【0006】
【実施例】本発明を図に示す実施例について説明する。
図1は本発明の実施例を示す斜視図で、箱形の移動部1の底面の4か所の角部付近にX,Y軸の両移動方向に対して垂直に伸びる4本の平行板バネ6の一方端がそれぞれ固定され、他方端は固定部3にそれぞれ固定されている。平行板バネ6の両端付近にはX軸方向に切り欠いたX切欠き部61とY軸方向に切り欠いたY切欠き部62とを隣接して設け、X切欠き部61とY切欠き部62のばね定数が同じ値になるような断面形状にしてある。移動部1のX軸方向に垂直な側面11およびY軸方向に垂直な側面12にそれぞれ対向して移動部1を駆動するX軸駆動装置4およびY軸駆動装置5が設けられ、固定部3から伸びる支柱31に固定されている。」

ウ 「【0007】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、X,Y方向の駆動装置の推力によって弾性変形し、移動部に変位を与える平行板バネのX切欠き部およびY切欠き部は互いに干渉することなく、独立して弾性変形するので、それぞれの駆動装置の駆動力と移動部の変位とが誤差のない比例関係を維持できる。また、移動部に作用する推力が中心からずれたり、平行板バネの加工誤差のため移動部に回転モーメントが作用しても移動部に変位を発生せず、移動部は直線運動をするので高精度の位置決めができる効果がある。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「微小単位移動するX-Yテーブル(段落【0001】より)であって、
箱形の移動部1の底面の4か所の角部付近にX,Y軸の両移動方向に対して垂直に伸びる4本の平行板バネ6の一方端がそれぞれ固定され、他方端は固定部3にそれぞれ固定され、平行板バネ6の両端付近にはX軸方向に切り欠いたX切欠き部61とY軸方向に切り欠いたY切欠き部62とを隣接して設け、X切欠き部61とY切欠き部62のばね定数が同じ値になるような断面形状にしてあり、移動部1のX軸方向に垂直な側面11およびY軸方向に垂直な側面12にそれぞれ対向して移動部1を駆動するX軸駆動装置4およびY軸駆動装置5が設けられ、固定部3から伸びる支柱31に固定され(段落【0006】より) 、
X軸およびY軸駆動装置により移動部に推力を作用させると、平行板バネのX切欠き部およびY切欠き部が互いに干渉することなく独立して弾性変形し、平行バネのX軸、Y軸両方向のばね定数に応じた変位を移動部に発生させ(段落【0005】より)、移動部は直線運動をするので高精度の位置決めができる(段落【0007】より)、
微小単位移動するX-Yテーブル(段落【0001】より)。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特表2002-501222号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
ア 「【0001】
(技術分野)
本発明は、支持構造体に装置を均衡に取り付け、6の自由度に沿ってこの装置の位置に対する補正を可能にするために設計された小型および一体型のアセンブリに関する。」

イ 「【0018】
(発明の説明)
本発明の主な目的は、1マイクロメートルの数10分の1の分解能で、並進運動においては数100マイクロメートル、また回転においては数100マイクロラジアンまでの距離を超えて、6の自由度まわりに自動位置および姿勢補正を可能にする、支持構造体に装置を取り付けるための小型で一体化されたアセンブリにある。」

ウ 「【0038】
(発明の実施形態の詳細な説明)
図1および図2に図示されている本発明の好ましい実施形態は、このアセンブリによって支持される装置(図示せず)の対称軸10まわりに対称的に配置される取付けアセンブリの場合に関する。その他の実施形態(図示せず)において、支持されるべき装置が対称軸を有していないか、あるいはこの対称がサイズの問題などの実際上の理由のために考慮することができないかのいずれかの理由で、この対称性は存在していない。
【0039】
既に述べたように、本発明による取付けアセンブリは、特に、支持されるべき装置が宇宙望遠鏡の副鏡などの鏡である場合に適している。しかし、その他の適用は、本発明の枠から外れることなしに考慮されることができる。
【0040】
図1に示されるように、本発明による取付けアセンブリは、同一であることが好ましい3つの取付け装置12を備えている。図1に図示されている対称的な配置において、3つの取付け装置12は、支持される装置の対称軸10まわりに互いに120度の間隔で均等に配置されている。
【0041】
図2に一層明瞭に示されるように、各取付け装置12は、支持される装置の対称軸10に平行な平面においてほぼ変形可能な三角形の形状をなしている。より正確には、取付け装置12のそれぞれによって形成される三角形の平面は、対称軸10(図1)の中心に置かれる円にほぼ接している。
【0042】
より正確には、取付け装置12のそれぞれによって形成される変形可能な三角形は、2つのアンカー部分16によって支持構造体(図示せず)に取付けられるように設計される第1可変長アーム14を備えている。変形可能な三角形はさらに、通常等しい長さであり、第1アーム14と対向する三角形の第1頂点で互いに接続され、かつ支持部分20によって実現(具体化)される2つの第2側辺部(サイド)18を備えている。」

エ 「【0046】
図2により詳細に図示されている本発明の好ましい実施形態において、第2側辺部18のそれぞれの1つの端部は、遊びのない(zero play)無摩擦(friction free)ヒンジ26によって支持部分20に接続されている。第2側辺部18のそれぞれの第2端部は、遊びのない別の無摩擦ヒンジ26によって第1アーム14の対応する端部に固定された連結部分28に接続されている。任意に、遊びのない別の無摩擦ヒンジ26は、第1アーム30(図2の前方)の第1端部と、第1アンカー部分16(図2の左側)との間に、および別のアーム30(図2の後方)の第2端部と、第2アンカー部分16(図2の右側)との間に挿入されている。」

オ 「【0057】
三角形の種々の変形は、第1アーム30の種々の長さの変化を制御することによって得ることが可能である。従って、要求される運動に応じて、組み合わされたあるいは独立した方法で、軸10の方向に、またこの軸の中心に置かれる円の接線方向に、支持部分20を移動することが可能である。」

カ 「【0060】
取付け装置12のそれぞれによって与えられる種々の変位の組み合わせは、取付けアセンブリ上の支持装置のために必要とされる6の自由度を得るために使用されることが可能である。」

したがって、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「6の自由度まわりに自動位置および姿勢補正を可能にする、支持構造体に装置を取り付けるための小型で一体化されたアセンブリ(段落【0018】より)であって、
取付けアセンブリは、同一であることが好ましい3つの取付け装置12を備え、対称的な配置において、3つの取付け装置12は、支持される装置の対称軸10まわりに互いに120度の間隔で均等に配置され(段落 【0040】より)、
各取付け装置12は、支持される装置の対称軸10に平行な平面においてほぼ変形可能な三角形の形状をなし、取付け装置12のそれぞれによって形成される三角形の平面は、対称軸10の中心に置かれる円にほぼ接しており(段落 【0041】より)、
取付け装置12のそれぞれによって形成される変形可能な三角形は、2つのアンカー部分16によって支持構造体に取付けられるように設計される第1可変長アーム14を備え、変形可能な三角形はさらに、通常等しい長さであり、第1アーム14と対向する三角形の第1頂点で互いに接続され、かつ支持部分20によって実現(具体化)される2つの第2側辺部(サイド)18を備え(段落【0042】より)、
第2側辺部18のそれぞれの1つの端部は、遊びのない(zero play)無摩擦(friction free)ヒンジ26によって支持部分20に接続され、第2側辺部18のそれぞれの第2端部は、遊びのない別の無摩擦ヒンジ26によって第1アーム14の対応する端部に固定された連結部分28に接続され(段落【0046】より)、
三角形の種々の変形は、第1アーム30の種々の長さの変化を制御することによって得ることが可能であり、従って、要求される運動に応じて、組み合わされたあるいは独立した方法で、軸10の方向に、またこの軸の中心に置かれる円の接線方向に、支持部分20を移動することが可能である(段落【0057】より)、
取付けアセンブリ(段落 【0040】より)。」

3 その他の引用文献について
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献3(特開平5-304323号公報)には、次の事項が記載されているものと認められる(下線は、当審で付与した。)。
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の変位拡大機構は、固定部と、上記固定部に対向する変位部と、上記固定部の一面と上記変位部の一面とをそれぞれ両端のヒンジによって固定するとともに加電によって伸張する2つの圧電素子とを有し、上記圧電素子のいずれか一方および両方に加電することによって上記固定部と上記変位部との相互の面間の角度変位を2方向制御する変位拡大機構において、上記変位拡大機構が、さらに、上記2つの圧電素子の間に配置されて上記固定部の一面と上記変位部の一面とを両端のヒンジ部によって固定するとともに、上記圧電素子の一方に加電があるときには上記圧電素子の他方のヒンジを支点として上記角度変位を生じせしめる剛性を有する変位調整部を備えている。
【0005】
【実施例】次に本発明について図面を参照して説明する。
【0006】図1は本発明の一実施例の側面図である。図1の変位拡大機構は、図3に示した従来技術の変位拡大機構に加えて、上記圧電素子2と3との間に、両端にヒンジ部4aおよび4bを有し上記ヒンジ部4aおよび4bによって上記変位部1の面1aおよび固定部5の面5aに固定された棒状の変位調整部4を備えている。上記変位調整部4は、インバー等でつくられており、一方の圧電素子,例えば圧電素子3に加電してこの圧電素子3が伸張したときに、他方の圧電素子2に固定されたヒンジ7aおよび7bを支点として上記変位部1を角度変位させる剛性値を有している。この剛性値は、例えば変位調整部4の太さを変化させることにより選ぶことができる。」

よって、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「固定部と、上記固定部に対向する変位部と、伸張する2つの圧電素子とを有し、上記固定部と上記変位部との相互の面間の角度変位を2方向制御する変位拡大機構において、上記変位拡大機構は、圧電素子2と3との間に、両端にヒンジ部4aおよび4bを有し上記ヒンジ部4aおよび4bによって上記変位部1の面1aおよび固定部5の面5aに固定された棒状の変位調整部4を備える、変位拡大機構。」

次に、拒絶査定の備考欄で新たに引用された引用文献4(特開昭61-45304号公報)には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「ロボットに付与される外力によるたわみを検出するバネ機構であって、力センサと一体化されたバネ機構5は互いに直交するX方向、Y方向に変位可能な2組の平行板バネ51、52によって構成され、歪ゲージ56a、56bが、各々X方向平行バネ51、Y方向平行バネ52の壁面に設けられ、平行バネに付与されるモーメントMe、Mfを検出する」ことが記載されていると認められる(【特許請求の範囲】(1)、第6頁左上欄第17?19行、同頁右上欄第8?10行、同頁左下欄第6?10行の各記載より。)。

また、拒絶査定の備考欄で新たに引用された引用文献5(特開平11-304459号公報)には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「精密位置ステージが移動すると移動に伴い板バネ2に変形が加わり、板バネ2の両側に付いている2つの歪みゲージにも変形が加わり、前記歪みゲ-ジ5の抵抗値の変化から、ステージの移動量を求める。」(段落【0006】、【0007】より)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用文献1を主引用例とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1における「微小単位移動するX-Yテーブル」が、本願発明1における「ステージ」に相当する。
(イ)引用発明1における「X,Y軸の両移動方向に対して垂直に伸びる4本の平行板バネ6」は、「箱形の移動部1の底面の4か所の角部付近に」「一方端がそれぞれ固定され、他方端は固定部3にそれぞれ固定され」ているから、本願発明1における「ステージ中央部に直立して設けた支柱」とは、「ステージに直立して設けた支柱」の点で共通する。
(ウ)引用発明1における「平行板バネ6の両端付近」に設けられた「X軸方向に切り欠いたX切欠き部61とY軸方向に切り欠いたY切欠き部62」は、「X切欠き部61とY切欠き部62のばね定数が同じ値になるような断面形状にしてあり」、「X軸およびY軸駆動装置により移動部に推力を作用させると、平行板バネのX切欠き部およびY切欠き部が互いに干渉することなく独立して弾性変形し、平行バネのX軸、Y軸両方向のばね定数に応じた変位を移動部に発生させ」るから、本願発明1における「支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成」したものとは、「支柱の側面に、横方向の溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成」したものである点で共通する。
(エ)引用発明1における「移動部は直線運動をするので高精度の位置決めができる」「微小単位移動するX-Yテーブル」と、本願発明1における「精密傾斜ステージ」とは、「微動ステージ」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ステージに直立して設けた支柱の側面に、横方向の溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成した微動ステージ。」

(相違点1)
本願発明1は、「支柱」が「ステージ中央部」に設けられた「精密傾斜ステージ」であるのに対し、引用発明1では、「平行板バネ6」が「箱形の移動部1の底面の4か所の角部付近」に設けられた、「移動部は直線運動をする」「微小単位移動するX-Yテーブル」である点。

(相違点2)
本願発明1では、ヒンジ部における支柱の側面の切り欠きが、「角部を直角に形成した横方向の角溝」であるのに対し、引用発明1では、X切欠き部61とY切欠き部62の形状が特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、「センサ素子を前記ヒンジ部に設け」ているのに対し、引用発明1では、センサ素子を用いることが示されていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1及び相違点3についてまとめて検討する。
本願発明1は、「精密傾斜ステージ」における角度傾斜を精密に制御するため、支柱を「ステージ中央部」に設け、かつ、「センサ素子」を前記支柱の「ヒンジ部」に設けたものである。
これに対し、引用発明1では、「移動部」を「直線運動」させて「高精度の位置決めができる」ようにするため、「箱形の移動部1の底面の4か所の角部付近にX,Y軸の両移動方向に対して垂直に伸びる4本の平行板バネ6の一方端がそれぞれ固定され、他方端は固定部3にそれぞれ固定され」ているのであるから、「移動部」を傾斜させるため、「板バネ6」を「箱形の移動部1の底面」の中央部に設けることは、当業者に動機付けられないことである。
また、引用発明1には、「センサ素子」を「バネ6」に設けることも示されていない。
よって、
(ア)引用文献3に、「固定部」と「変位部との相互の面間の角度変位を2方向制御する変位拡大機構」として、「圧電素子2と3との間」(つまり、「変位部」の中央部)に、「両端にヒンジ部4aおよび4bを有し上記ヒンジ部4aおよび4bによって上記変位部1の面1aおよび固定部5の面5aに固定された棒状の変位調整部4を備える」ことが記載され、
(イ)引用文献4に、「歪ゲージ56a、56bが、各々X方向平行バネ51、Y方向平行バネ52の壁面に設けられ、平行バネに付与されるモーメントMe、Mfを検出する」ことが記載され、
(ウ)引用文献5に、「板バネ2の両側に付いている2つの歪みゲージ」の「抵抗値の変化から、ステージの移動量を求める。」ことが記載されているとしても、
引用発明1において、上記相違点1及び相違点3に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者といえども、容易になし得たことではない。

(2)引用文献2を主引用例とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2における「3つの取付け装置」は、「6の自由度まわりに自動位置および姿勢補正を可能に」「装置」の「姿勢補正」を可能にする自由度を含んでいることは明らかであるから、引用発明2の「取付けアセンブリ」における、「装置」を支持する「3つの取付け装置」と、本願発明1における「精密傾斜ステージ」とは、「精密傾斜が可能なステージ」の点で共通する。
次に、引用発明2における、各「取付け装置12」の「三角形」の「2つの第2側辺部(サイド)18」は、「第2側辺部18のそれぞれの1つの端部」が「遊びのない(zero play)無摩擦(friction free)ヒンジ26によって支持部分20に接続され、第2側辺部18のそれぞれの第2端部は、遊びのない別の無摩擦ヒンジ26によって」「連結部分28に接続され」ているから、本願発明1における「ステージ中央部に直立して設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成」したものとは、「ステージに設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成」したものである点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明2との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
「ステージに設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成した、精密傾斜が可能なステージ。」

(相違点)
本願発明1では、「ステージ中央部に直立して設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジ部を構成し、センサ素子を前記ヒンジ部に設け」ているのに対し、引用発明2では、「装置を取り付けるための小型で一体化されたアセンブリ」を有し、「取付けアセンブリ」は、「3つの取付け装置12を備え、対称的な配置において、3つの取付け装置12は、支持される装置の対称軸10まわりに互いに120度の間隔で均等に配置され」、各「取付け装置12」の「三角形」の「2つの第2側辺部(サイド)18」は、「第2側辺部18のそれぞれの1つの端部」が「遊びのない(zero play)無摩擦(friction free)ヒンジ26によって支持部分20に接続され、第2側辺部18のそれぞれの第2端部は、遊びのない別の無摩擦ヒンジ26によって」「連結部分28に接続され」ている点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記「(1)」「イ 相違点についての判断」で述べたとおり、本願発明1は、「精密傾斜ステージ」における角度傾斜を精密に制御するため、支柱を「ステージ中央部」に設け、かつ、「センサ素子」を前記支柱の「ヒンジ部」に設けたものである。
これに対し、引用発明2では、「6の自由度まわりに自動位置および姿勢補正を可能にする」ために、「3つの取付け装置12は、支持される装置の対称軸10まわりに互いに120度の間隔で均等に配置され」ているのであるから、引用発明2において「取付け装置12」を中央に配置し、「対称軸10」の位置に「直立」して設けたのでは、位置および姿勢について補正可能な自由度が限定されてしまい、引用発明2の目的にそぐわないものとなる。
よって、引用発明2において、「支持される装置」を傾斜させるため、「3つの取付け装置12」を中央に配置し、「対称軸10」の位置に「直立」して設けることは、当業者に動機付けられないことである。

従って、引用文献3-5に、上記「(1)」「イ」、「(ア)」-「(ウ)」に記載したとおりの技術的事項が記載されていたとしても、引用発明2において、上記相違点に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者といえども、容易になし得たことではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献3-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、引用発明2及び引用文献3-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の上記「1」「(1)」「ア」の(相違点1)-(相違点3)に係る構成、及び上記「1」「(2)」「ア」の(相違点)に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献3-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、引用発明2及び引用文献3-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-2に係る発明について、上記引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本願発明1-2が、上記引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないことは、上記「第4 対比・判断」にて述べたとおりである。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の「センサ素子を設けた」との記載では、センサ素子が、支柱の側面のどこに設けられているのか、明確でないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、との拒絶理由を通知しているが、平成29年8月31日付けの手続補正において、上記「センサ素子を設けた」との記載が「センサ素子を前記ヒンジ部に設けた」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-2は、当業者が、上記引用文献1-5に基づいて、容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2015-255505(P2015-255505)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G12B)
P 1 8・ 537- WY (G12B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 関根 洋之
清水 稔
発明の名称 精密傾斜ステージ  

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