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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02B |
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管理番号 | 1332966 |
審判番号 | 不服2016-18422 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-07 |
確定日 | 2017-10-10 |
事件の表示 | 特願2012-106126「分岐開閉器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-236427、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年5月7日の出願であって、平成28年2月25日付けで拒絶理由が通知され、同年5月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年8月9日付け(発送日:同年9月6日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-23022号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるキャビネットについて「分電盤の」との限定、取付けられる分岐開閉器について「複数並設されて」との限定、ロックレバーについて「分岐開閉器の外郭に設けられた筒状の支持部にガイドされて」との限定、及び凹部について「前記電線差込孔の前方側であって、前記押圧部の下方に、手指の爪が引っ掛かる程度にロックレバーの幅方向に亘って形成され」とあったものを、「前記筒状の支持部の前方側と、前記押圧部の下方との間に、手指の爪が引っ掛かる程度にロックレバーの幅方向全体に亘って形成され」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記の各限定事項は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年12月7日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「前方が開口したボックスと該ボックスに取り付けされボックス前方側を覆うカバーからなる分電盤のキャビネット内部の中底に複数並設されて取付けられる分岐開閉器であって、 前記分岐開閉器は、 電線を差込接続する各極の電線差込孔と、 分岐開閉器の外郭に設けられた筒状の支持部にガイドされて、前記中底に設けられた係止部に係止されることにより分岐開閉器を取外す方向への移動を規制して分岐開閉器を取付固定する一方、前記係止部との係止が解かれることにより取付を解除するロックレバーとを備えるとともに、 前記ロックレバーには、 前記各極の電線差込孔の間に配置されて、該電線差込孔の前記前方側に延出される延出部と、 該延出部の前方側端部に設けられたロックレバーの押圧部及び引上部が形成されて構成される一方、 前記引上部は、前記分岐開閉器を取外す方向に開放された凹部が、 前記筒状の支持部の前方側と、前記押圧部の下方との間に、 手指の爪が引っ掛かる程度にロックレバーの幅方向全体に亘って形成され、分岐開閉器を取り外す方向からロックレバーを引き上げることができるように形成されて構成されたことを特徴とする分岐開閉器。」 第5 引用文献、引用発明等 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2012-23022号公報)には、「回路遮断機の安全装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 1 「【技術分野】 【0001】 本発明は、分電盤に組み込まれる回路遮断器の安全装置に関し、特に、回路遮断器の使用状態が適正な状態であるか否かを確認可能な回路遮断器に設けられた安全装置に関する。」 2 「【0009】 分電盤のボックス内には、主開閉器や分岐開閉器などの内部機器を取付板に取付けて構成された中底が取り付けされており、分電盤を壁面に取付け施工する場合、前記ボックス内に電線を引き込んだ状態で壁面方向に分電盤のボックスを押し当てていくと、前記電線の先端や側面の被覆部が前記中底に当接し、互いに摺動することにより、中底は壁面に分電盤を押し当てていく方向とは逆の方向に押し戻されるように力を受けることがある。 通常、前記取付板などの中底は、ボックス内にねじ止め固定されており、前述したように壁面に分電盤のボックスを押し当てていく方向とは逆の方向に押し戻されるように力を受けた場合であってもボックスからは外れないものとなっている。」 3 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 ところで、昨今では、製品安全に対する取り組みが従来に増して重要視されてきている。回路遮断器並びに回路遮断器を組み込む分電盤にあっては、電力会社から供給される電気を各分岐回路に供給する役割を持っている一方、回路遮断器は配線を電気事故から保護する保安の役割も持っており、使用に当たっては正しく分電盤に取り付けられた状態で使用される必要がある。 【0012】 分電盤における取付板に回路遮断器が正しく取り付けられているか否かを確認する場合、分電盤を構成する全面側のカバーを開き、回路遮断器の並び具合が適正に配置されているか否かを目視確認することに加え、前述のロックレバーが取付板の方向に適正に押下げられた状態であるか否かを目視確認する。」 4 「【0032】 (実施形態) ・・・(中略)・・・ 105、106は回路遮断器1の負荷側端子に電線を接続するための電線挿入孔である。電源側接続端子はプラグインタイプの端子を用い、負荷側接続端子は鎖錠接続端子を用いて構成している。 【0033】 また、回路遮断器1の電源側端子側を正面側、負荷側端子側を背面側、操作ハンドル103が設けられた側を前面側、後述する取付板に取り付けられる側を底面側とする。背面側には、安全装置104が設けられる。」 5 「【0038】 第二の規制部206は、取付板2の一部を凹状に曲げ加工して凹部を形成したものである。回路遮断器1の背面側には、回路遮断器1の底面から突出する、しないを外部つまみ1042により択一的に選択するロックレバー1041が設けられており、回路遮断器1の底面から突出したロックレバー1042が前記第二の規制部206の凹部に嵌り込み、互いに嵌合することにより、回路遮断器の正面側-背面側の方向の動きが規制される。 【0039】 取付板2に回路遮断器1を取り付けるときには、回路遮断器1を取付板2の上で母線の方向にスライドさせていくことにより、母線が電源側端子に差し込まれていくと同時に、前記第一の規制部204、205が回路遮断器1の係合片108、(図示しない)前記凹部と係合することにより、取付板2上の適正な位置に回路遮断器1が載置される。そして、前記ロックレバー1041の外部つまみ1042を取付板2の方向に押下げることにより、回路遮断器1の底面からロックレバー1041が突出して取付板2の凹部と嵌合し、取り付けが完了する。 【0040】 取付板2から回路遮断器1を取り外すときには、前記ロックレバー1041の外部つまみ1042を取付板と反対の方向(回路遮断器1の前面側)に引き上げて、ロックレバー1041を底面から突出しない状態にし、回路遮断器1を背面側に引き抜くように移動させることにより、前記第一の規制部104、205と回路遮断器との係合が外れると同時に母線と接続端子の接続が解かれ、取り外しが完了する。」 6 「【0043】 次に安全装置104について説明を行う。図4に安全装置の外観斜視図を示した。安全装置104は、ロックレバー1041と一体に形成されて、回路遮断器の底面側から前面側に向けてロックレバーから延出される延出部1043と、該延出部の端部に設けられた表示部1044とを備える。また、表示部1044の前面側端部には押圧部1045が形成されている。延出部1043には、該延出部の一部の肉が掘り込むことにより摺動部1048を形成している。該摺動部1048は、図5の要部断面図に示した筐体側に形成された摺動部1011と摺動され、安全装置104の動作の際にガイドの役割を果たすものである。 【0044】 前記表示部1044は、筐体に設けられた筒状の支持部1012、1022により表示部1044が筒状の支持部の内側を摺動自在に支持される。」 7 「【0050】 (実施形態2) 次に、この発明の第2の実施形態として、前記外部つまみ1042の周囲に配設した囲繞部に着目して図12乃至図15を用いて説明する。 【0051】 外部つまみ1042の周囲には、該外部つまみ1042の移動を妨げることがないように、前記上下方向の移動軌跡を避けて囲繞部109が構成されている。該囲繞部109は、安全装置104の外部つまみ1042の側面側109c,109d,及び底面側109a,109bに、回路遮断器の器体の一部にリブを形成することにより構成している。 【0052】 本実施形態においては、囲繞部109を構成する底面側の109a部と109b部を、回路遮断器の負荷側端子部に接続される電線が底面側から入り込まない程度に離間させて構成している。これは、回路遮断器の器体が並設方向において分割される構成となっており、それぞれの器体に設けた囲繞部同士の嵌合に所定の余裕度を持たせたためである。なお、底面側の109a部と109b部を離間させずに密着させて構成してもよい。 【0053】 また、囲繞部109の底面側の109a部と109b部は器体の中央部に進むにつれて前記外部つまみ1042との間隔が大きくなるように構成している。これにより、該外部つまみ1042を持って安全装置104を引き上げる場合に、指が囲繞部109と外部つまみの間に入り込みやすくなる。 ・・・(中略)・・・ 【0060】 また、回路遮断器1を取付板2から取り外す場合においては、安全装置104の外部つまみ1042を取付板と反対の方向に指で引き上げ、嵌合部206とロックレバー1041の係止部との嵌合を解除する。このとき、囲繞部109の底面側の109a部と109b部は器体の中央部に進むにつれて前記外部つまみ1042との間隔が大きくなるように構成しているので、該外部つまみ1042を引き上げる場合に、指が囲繞部109と外部つまみの間に入り込みやすい。 【0061】 また、前記安全装置における表示部1044及び押圧部1045において、一部を折り曲げ形状とした第二の外部つまみ1049を形成して構成するとよい。これにより、回路遮断器1の前面側から、ロックレバー7を押し下げることに加え、引き上げる操作も行うことができ、回路遮断器1の取り付け、取り外し時の更なる利便性の向上が期待できる。」 8 図12?図14を参照すると、第二の外部つまみ1049の下方には、回路遮断機1を取外す方向に開放された凹部が設けられており、該凹部は、筒状の支持部1012、1022の前面側(操作ハンドル103が設けられた側)と、前記押圧部1045の下方との間に、手指が引っ掛かる程度に安全装置104の幅方向に亘って、延出部1043の幅の部分を除いて、形成されていることが看取され、また、該凹部によって、回路遮断機1を取り外す方向から安全装置104を引き上げることができると解される。 上記の記載事項及び図面の記載を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、第2の実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ボックスとカバーからなる分電盤のボックス内の取付板2に複数並設されて取付けられる回路遮断機1であって、 前記回路遮断機1は、 電線を差込接続する各極の電線挿入孔105、106と、 回路遮断機1の外郭に設けられた筒状の支持部1012、1022にガイドされて、前記取付板2に設けられた第二の規制部206に係止されることにより回路遮断機1を取外す方向への移動を規制して回路遮断機1を取付固定する一方、前記第二の規制部206との係止が解かれることにより取付を解除する安全装置104とを備えるとともに、 前記安全装置104には、 前記各極の電線挿入孔105、106の間に配置されて、該電線挿入孔105、106の前記前面側に延出される延出部1043と、 該延出部1043の前面側端部に設けられた安全装置104の押圧部1045及び一部を折り曲げ形状とした第二の外部つまみ1049が形成されて構成される一方、 前記一部を折り曲げ形状とした第二の外部つまみ1049は、前記回路遮断機1を取外す方向に開放された凹部が、 前記筒状の支持部1012、1022の前面側と、前記押圧部1045の下方との間に、 手指が引っ掛かる程度に安全装置104の幅方向に亘って、延出部1043の幅の部分を除いて、形成され、回路遮断機1を取り外す方向から安全装置104を引き上げることができるように形成されて構成された回路遮断機1。」 第6 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ボックス」は、本願発明の「ボックス」及び「キャビネット」に相当する。 以下同様に、「取付板2」は、「中底」に、 「回路遮断機1」は、「分岐開閉器」に、 「電線挿入孔105、106」は、「電線差込孔」に、 「筒状の支持部1012、1022」は、「筒状の支持部」に、 「第二の規制部206」は、「係止部」に、 「安全装置104」は、「ロックレバー」に、 「前面側」は、「前方側」に、 「延出部1043」は、「延出部」に、 「押圧部1045」は、「押圧部」に、 「一部を折り曲げ形状とした第二の外部つまみ1049」は、「引上部」に、それぞれ相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 「ボックスとカバーからなる分電盤のキャビネット内部の中底に複数並設されて取付けられる分岐開閉器であって、 前記分岐開閉器は、 電線を差込接続する各極の電線差込孔と、 分岐開閉器の外郭に設けられた筒状の支持部にガイドされて、前記中底に設けられた係止部に係止されることにより分岐開閉器を取外す方向への移動を規制して分岐開閉器を取付固定する一方、前記係止部との係止が解かれることにより取付を解除するロックレバーとを備えるとともに、 前記ロックレバーには、 前記各極の電線差込孔の間に配置されて、該電線差込孔の前記前方側に延出される延出部と、 該延出部の前方側端部に設けられたロックレバーの押圧部及び引上部が形成されて構成される一方、 前記引上部は、前記分岐開閉器を取外す方向に開放された凹部が、 前記筒状の支持部の前方側と、前記押圧部の下方との間に、 ロックレバーの幅方向に亘って形成され、分岐開閉器を取り外す方向からロックレバーを引き上げることができるように形成されて構成された分岐開閉器。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 分電盤に関して、本願発明では、「前方が開口したボックスと該ボックスに取り付けされボックス前方側を覆うカバーからなる」のに対して、 引用発明では、ボックスとカバーからなるものの、そのボックス及びカバーの具体的な構成は、明らかではない点。 [相違点2] 凹部に関して、本願発明では、「手指の爪が引っ掛かる程度にロックレバーの幅方向全体に亘って形成」されているのに対して、 引用発明では、手指が引っ掛かる程度に安全装置104の幅方向に亘って、延出部1043の幅の部分を除いて、形成されている点。 2 相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。 手指の爪が引っ掛かる程度の凹部を、延出部1043の幅の部分に設けること、すなわち「手指の爪が引っ掛かる程度にロックレバーの幅方向全体に亘って形成」された凹部については、引用文献1に記載も示唆もされていない。 そうすると、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第7 原査定について 前記「第6 2」のとおり、本願発明は、原査定において引用された引用文献1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-08-29 |
出願番号 | 特願2012-106126(P2012-106126) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 学 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | 分岐開閉器 |