• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28F
管理番号 1333035
審判番号 不服2015-18259  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-07 
確定日 2017-10-02 
事件の表示 特願2014-205714「放熱装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 75422〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月6日の出願であって、平成26年11月19日付け拒絶理由通知に対して平成27年1月23日付けで手続補正がなされ、同年2月4日付け最後の拒絶理由通知に対して同年4月9日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について同年7月16日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年10月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審の平成28年3月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月26日付けで手続補正がなされ、その後、当審の同年12月12日付け最後の拒絶理由通知に対し、平成29年2月10日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成29年2月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
(補正却下の決定の結論)
平成29年2月10日付けの手続補正を却下する。

(理由)
1.本件補正
平成29年2月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前(平成28年5月26日付け手続補正書)に
「 【請求項1】
周壁、および前記周壁内に配置されて前記周壁の一方の端部側から前記周壁の他方の端部側へ延びる複数の熱媒体流通空間を区画する複数の隔壁を有する放熱本体部と、
前記放熱本体部のそれぞれの端部に一体に設けられ、前記複数の熱媒体流通空間を相互に繋げる熱媒体連絡空間を有して前記複数の熱媒体流通空間のそれぞれの端部を塞ぐ一対の閉塞部と、
前記熱媒体流通空間の少なくとも1つに繋がる熱媒体導入路を有して前記放熱本体部のいずれか一方の端部から突出する熱媒体導入部と、を備え、
前記放熱本体部は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の熱媒体流通空間は、前記放熱本体部の幅方向に並び、
前記熱媒体導入部は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記放熱本体部の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の閉塞部のそれぞれは、前記放熱本体部の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の閉塞部の一方は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の閉塞部の他方は、前記放熱本体部の幅方向に延びて前記放熱本体部の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法であって、
前記放熱本体部、前記一対の閉塞部、および前記熱媒体導入部を、前記熱媒体流通空間になる線状の空間を有する板材から一体成形し、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記複数の隔壁の開口端側と、前記周壁の開口端側の側部とを切り欠くか、または、
前記周壁の開口端側の側部を除いた前記複数の隔壁の開口端側を切り欠くことによって、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って連通するように形成されたスリットを形成した後、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺の開口端側の先端部のみを塑性加工によって押し潰して、圧着することにより前記一対の閉塞部を形成し、
これにより、前記複数の熱媒体流通空間の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように熱媒体連絡空間を形成する、
ことを特徴とする放熱装置の製造方法。
【請求項2】
前記スリットは、前記隔壁の高さよりも小さい溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。
【請求項3】
前記スリットは、前記隔壁の高さと実質的に同じ溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。
【請求項4】
前記スリットは、前記隔壁の高さよりも大きく、前記周壁の一部を切り欠く溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。」
とあったところを、

本件補正により、
「 【請求項1】
周壁、および前記周壁内に配置されて前記周壁の一方の端部側から前記周壁の他方の端部側へ延びる複数の熱媒体流通空間を区画する複数の隔壁を有する放熱本体部と、
前記放熱本体部のそれぞれの端部に一体に設けられ、前記複数の熱媒体流通空間を相互に繋げる熱媒体連絡空間を有して前記複数の熱媒体流通空間のそれぞれの端部を塞ぐ一対の閉塞部と、
前記熱媒体流通空間の少なくとも1つに繋がる熱媒体導入路を有して前記放熱本体部のいずれか一方の端部から突出する熱媒体導入部と、を備え、
前記放熱本体部は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の熱媒体流通空間は、前記放熱本体部の幅方向に並び、
前記熱媒体導入部は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記放熱本体部の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の閉塞部のそれぞれは、前記放熱本体部の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の閉塞部の一方は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の閉塞部の他方は、前記放熱本体部の幅方向に延びて前記放熱本体部の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法であって、
前記放熱本体部、前記一対の閉塞部、および前記熱媒体導入部を、前記熱媒体流通空間になる線状の空間を有する板材から一体成形し、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた、前記複数の隔壁の開口端側と、前記周壁の開口端側の側部とを切り欠くか、または、
前記周壁の開口端側の側部、および、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた前記複数の隔壁の開口端側を切り欠くことによって、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて、連通するように形成されたスリットを形成するとともに、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口と反対側において、連通するように形成されたスリットを形成した後、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺の開口端側の先端部のみを塑性加工によって押し潰して、圧着することにより前記一対の閉塞部を形成し、
これにより、前記複数の熱媒体流通空間の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように熱媒体連絡空間を形成する、
ことを特徴とする放熱装置の製造方法。
【請求項2】
前記スリットは、前記隔壁の高さよりも小さい溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。
【請求項3】
前記スリットは、前記隔壁の高さと実質的に同じ溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。
【請求項4】
前記スリットは、前記隔壁の高さよりも大きく、前記周壁の一部を切り欠く溝幅を有する請求項1に記載の放熱装置の製造方法。」
とするものである。

上記補正は、本件補正前の請求項1において、「前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って連通するように形成されたスリットを形成」するに際し、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて」との限定を付加するとともに、熱媒体導入路の導入口の反対側では、連通に際し除く部分がないことを明確にするために、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口と反対側において、連通するように形成されたスリットを形成」との限定を付加するものである。また、上記限定に関連して、スリットを形成する前段階として、開口端側、または開口端側と開口端側の側部を切り欠くに際し、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた」との限定を付加するものである。
よって、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項の限定を目的にするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

2.引用例
(1)引用文献1
当審の最後の拒絶理由通知に引用された特開2001-272189号公報(以下、「引用例1」という。)には、「ヒートパイプおよびその製造方法」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0002】
【従来の技術】従来、偏平型のヒートパイプは、図19に示すように、複数の連通孔2を有する板状体である押出管1を用いて、その内部に、熱を搬送する何らかの流体を流すことで実現されていた。押出管1の両端においては、図20に示すようなマニホールド3を図21に示すようにかぶせて接着することで、複数の連通孔2による流路は1本にまとめられ、外部の他の配管と接続可能となっていた。
【0003】押出管1の材質は、たとえば、アルミニウム合金であり、ヒートパイプとしての用途としては、全体の厚みが2mm以下、連通孔2の直径が1mm以下というような薄型のものも実現されている。この押出管1自体は、上述のような薄さの下では、その個々の連通孔2が十分細く、流路が複数本に分散していることから、ある程度の高圧に耐えられる構造となっていた。」

イ.「【0007】そこで、本発明では、超臨界流体を熱搬送媒体として用いても破断のおそれがなく、取扱いに便利なヒートパイプおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に基づくヒートパイプの製造方法は、複数の連通孔を有する板状体の両端において、上記連通孔を互いに連絡する横孔を穿設する工程と、上記板状体の内部に流体を入れるための封入口を設ける封入口形成工程と、上記横孔が外界に直接通じる横孔開口部のうち、上記封入口として用いられるもの以外をいずれも封止する、横孔封止工程と、上記連通孔が外界に直接通じる連通孔開口部のうち、上記封入口として用いられるもの以外をいずれも封止する、連通孔封止工程と、上記封入口から流体を注入して上記封入口を封止する流体封止工程とを含む。
【0009】上記構成を採用することにより、横孔開口部および連通孔開口部のうち封入口として用いられるもの以外をいずれも封止するため、従来のようなマニホールドを用いる必要はなくなり、封入口から直接流体を封入可能となるため、接続部分の強度不足による破断や漏れのおそれを低減できる。したがって、内部に封入した流体が超臨界状態となるような高圧の条件で使用しても破断せず信頼性の高いヒートパイプを製造することができる。
(中略)
【0016】上記発明において好ましくは、上記封入口形成工程は、上記板状体の端部において、封入口とすべき一部の上記連通孔を内包する部分を管状突出部として残し、他の部分については端から一定長さ分切除する工程を含む。
【0017】上記構成を採用することにより、一体物として管状突出部を形成することができるため、十分な強度を有し、流体を高圧で注入したとしても、使用中に高圧になったとしても、破断しにくいヒートパイプを製造することができる。
(中略)
【0026】上記発明において好ましくは、上記板状体の端部において、一部の上記連通孔を内包する部分を管状突出部として残し、他の部分については端から一定長さ分切除されている。この構成を採用することにより、一体物として管状突出部が形成されているため、十分な強度を有し、流体を高圧で注入したとしても、使用中に高圧になったとしても、破断しにくいヒートパイプとすることができる。」

ウ.「【0043】(実施の形態3)
(製造方法)図9?図17を参照して、本実施の形態における製造方法について説明する。図9に示すように、押出管1の端部において、封入口とすべき一部の連通孔2を内包する部分を管状突出部11として残し、他の部分については端から一定長さ分切除する。この切除は、ワイヤ放電加工などによって行なうことができる。管状突出部11以外の連通孔開口部7は、封入口として用いられるものではないので、図10に示すように、いずれもプレスなどにより封止する。
【0044】図11に示すように、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設する。図12に示すように、横孔開口部8をいずれも封止する。この例では、横孔開口部8の封止は、詰め物をして、外側からろう付けすることによって行なっているが、他の方法によって封止してもよい。管状突出部11に対しては、図13に示すように、継手管6aを介して外部の配管12と接続することができる。さらに必要があれば、管状突出部11の外周を削るか塑性変形させるかなどの方法によって、図14に示すように、管状突出部11の断面形状が略円形になるよう加工する。このように加工すれば、図15に示すように、管状突出部11の外径にほぼ等しい内径を有する外部の配管12aを管状突出部11の外側にかぶせるように嵌合することによっても接続することが可能となる。
(中略)
【0046】(構成)本実施の形態におけるヒートパイプは、上述の製造方法で得られるものである。すなわち、このヒートパイプは、互いに連絡した複数の連通孔2を有する板状体としての押出管1の内部に、使用環境における温度および圧力の下で超臨界状態となるような初期温度および初期圧力で流体としての二酸化炭素を入れ、密封したものである。また、押出管1の端部においては、一部の連通孔2を内包する部分を管状突出部11として残し、他の部分については端から一定長さ分切除されている。
【0047】(作用・効果)上述のヒートパイプの構成およびその製造方法によれば、従来のようなマニホールド3(図21参照)を用いないため、接続部分の強度不足による破断や漏れのおそれを低減できる。また、元の押出管1から一体のものと形成される管状突出部11を封入口として利用するため、接続部分を極力少なくすることができ、薄く小さなヒートパイプに関しても十分高い圧力に耐えうる構造とすることができる。その結果、内部に封入した流体が超臨界状態となるような条件で使用しても破断せず信頼性の高いヒートパイプを提供することができる。
【0048】なお、上記各実施の形態においては、継手管6の嵌入、封入管9の嵌合、連通孔開口部7の封止および横孔開口部8の封止の各工程の順序は、各実施の形態で説明した順序に限られず、異なる順序で行なっても同様の効果を得ることが可能である。」

上記アないしウから、引用例1には以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、偏平型のヒートパイプは、複数の連通孔2を有する板状体である押出管1を用いて、その内部に、熱を搬送する何らかの流体を流すことで実現されており、押出管1の材質は、たとえば、アルミニウム合金である。
・上記イによれば、引用例1は、破断の恐れがなく、取扱いに便利なヒートパイプおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
・上記イによれば、上記目的を達成するため、複数の連通孔を有する板状体の端部において、一部の上記連通孔を内包する部分を管状突出部として残し、他の部分については端から一定長さ分切除する構成を採用することにより、一体物として管状突出部が形成されるため、十分な強度を有し、破断しにくいヒートパイプとするものである。
・上記ウ、図9によれば、板状体としての押出管1は、四角形の板状に拡がって形成されている。
・上記ウ、図9、図10によれば、実施の形態として、押出管1の端部において、一部の連通孔2を内包する部分を管状突出部11として残して封入口として利用し、管状突出部11以外の押出管1の端部については端から一定長さ分切除して、管状突出部11以外の連通孔開口部7は、何れもその端部をプレスなどにより封止し、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設し、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製されるものである。
・上記ウ、図9、図10によれば、管状突出部11以外の連通孔開口部7の封止は、何れもその端部をプレスなどにより封止して、押出管1の対辺のそれぞれに直線状に延びて一対の封止部として形成されるものである。また、一対の封止部の一方は、押出管1の端部において、封入口として利用する管状突出部11以外の残部に設けられ、一対の封止部の他方は、押出管1の他端部において、押出管1の幅方向に延びて押出管1の一方の側部から他方の側部に達するように構成されている。
・上記ウによれば、従来のようなマニホールド3(図21参照)を用いないため、接続部分の強度不足による破断や漏れのおそれを低減でき、元の押出管1から一体のものと形成される管状突出部11を封入口として利用するため、接続部分を極力少なくすることができ、薄く小さなヒートパイプに関しても十分高い圧力に耐えうる構造とすることができる。
・上記ウによれば、各実施の形態において、継手管6の嵌入、封入管9の嵌合、連通孔開口部7の封止および横孔開口部8の封止の各工程の順序は、各実施の形態で説明した順序に限られず、異なる順序で行なっても同様の効果を得ることが可能である。

そうすると、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数の連通孔2を有する板状体としての押出管1と、
前記押出管1のそれぞれの端部に一体に設けられ、前記複数の連通孔2を互いに連絡する横孔5を有して前記複数の連通孔2のそれぞれの端部を塞ぐ一対の封止部と、
前記押出管1の端部において、封入口とすべき一部の連通孔2を内包する部分を管状突出部11として残し、他の部分については端から一定長さ分切除し、
前記押出管1は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の連通孔2は、前記押出管1の幅方向に並び、
前記封入口は、前記押出管1のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記押出管1の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の封止部のそれぞれは、押出管1の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の封止部の一方は、前記押出管1のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の封止部の他方は、前記押出管1の幅方向に延びて前記押出管1の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法であって、
前記押出管1、前記一対の封止部、および前記管状突出部11を、前記連通孔2になる線状の空間を有する板状体から一体成形し、
前記板状体の前記線状の空間の連通孔開口部7を有する辺において、
一部の前記連通孔2を内包する部分を前記管状突出部11として残して前記封入口として利用し、前記管状突出部11以外の前記押出管1の端部については端から一定長さ分切除して、前記管状突出部11以外の前記連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、前記連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の前記管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、前記連通孔2が互いに連絡するように形成された前記横孔5を形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製され、
これにより、前記複数の連通孔2の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように横孔5を形成する、
ことを特徴とするヒートパイプの製造方法。」

(2)引用文献2
また、当審の最後の拒絶理由通知に引用された特開昭60-106633号公報及び昭和62年10月19日発行の特許法第17条の2の規定による補正の掲載(以下、「引用例2」という。)には、「ヒートパイプ容器」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

エ.「2.特許請求の範囲
(1)複数の仕切り壁を介して複数の流体通路をアルミニウム材料の押し出し成形によって形成した容器本体と、この容器本体の両端部を連通、封止してなることを特徴とするヒートパイプ容器。
(中略)
(4)容器本体の連通は、両端部における仕切り壁を切欠、容器本体の封止はプレス加工により接合し、この接合部を溶着してなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のヒートパイプ容器。(昭和62年10月19日発行補正第1頁左下欄4行?右下欄1行目)」

オ.「(発明が解決しようとする問題点)
(中略)・・・この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、集熱効率の向上と組立作業性の向上を図ることができるヒートパイプ容器を提供することにある。
(発明の構成)
(問題点を解決するための手段と作用)
この発明は、複数の仕切り壁を介して複数の流体通路をアルミニウム材料の押し出し成形し、容器本体を形成するとともに、この容器本体の両端部を連通、封止して、流体通路と集熱板とを一体に形成したことにある。
(実施例)
以下、この発明の各実施例について図面に基づいて説明する。
第1図(A)(B)は第1の実施例を示すもので、アルミニウム材料の押し出し成形によって得られた平板状の容器本体で、この内部には複数の仕切り壁2・・・によって複数の流体通路3・・・が形成されている。さらに容器本体1の両端部には端部キャップ4、4が嵌着され、前記各流体通路3・・・を連通させているとともに、一方の端部キャップ4には排気・封入用のパイプ5が取付けられている。
第2図(A)(B)は第2の実施例を示すもので、第1の実施例に示したような容器本体1の端部における仕切り壁2・・・をエンドミルなどの工具6を矢印方向に移動させて容器本体1の端部における仕切り壁2・・・を研削したのち、容器本体1の端部に端板7を溶接して封止したものである。
第3図(A)(B)は第3の実施例を示すもので、第2の実施例で示した工具6を矢印方向に移動させて仕切り壁2・・・とともに、容器本体1の両側壁まで研削したのち、その容器本体1の端部をプレス成形し、ついで端部の周縁を溶着して封止したものであり、第4図(A)(B)は容器本体1の両側壁を残して仕切り壁2・・・のみを研削し、前記両側壁をプレス成形して封止したものである。
なお、容器本体1の端部において、流体通路3・・・を連通する手段としては、前記実施例のようにエンドミル等の工具6に限定されず、第5図乃至第7図に示すようにしてもよい。すなわち、11は研削工具としての円板状カッタで、これは容器本体1の仕切り壁2・・・によって形成される流体通路3・・・の高さとほぼ等しい肉厚で、その外周面に切削歯12を形成したものである。このカッタ11は駆動モータ(図示しない)の回転軸13に装着され、矢印方向に移動できるようになっている。しかして、容器本体1を治具等によって固定的に保持した状態で、カッタ11を回転しながら前進させると、容器本体1の端部における仕切り壁2・・・は研削されるとともに、容器本体1の両側壁1a、1aと同時に研削される。したがって、容器本体1の端部に円弧状の端部連通部14が形成される。カッタ11によって容器本体1の端部を所定の深さまで研削したのち、カッタ11を後退させ、つぎに容器本体1の端部をプレス加工すると、第7図に示すように容器本体1の端部は接合される。そして、つぎに容器本体1の接合部を突き合せ溶接すると、端部連通部14は封止され、各流体通路3・・・は端部連通部14において連通することになる。(昭和62年10月19日発行補正第2頁左上欄5行?右下欄5行目)」

上記エ、オの記載及び図面によれば、引用例2には、複数の仕切り壁を介して複数の流体通路をアルミニウム材料の押し出し成形によって形成した容器本体と、この容器本体の両端部を連通、封止してなることを特徴とするヒートパイプ容器の容器本体の連通において、
「容器本体1の複数の仕切り壁2を介して複数の流体通路3の端部を有する辺に沿って、複数の仕切り壁2の端部側と、容器本体1の端部側の側部とを切り欠くか、または、容器本体1の端部側の側部を除いた複数の仕切り壁2の端部側を切り欠くことによって、
容器本体1の複数の流体通路3の端部を有する辺に沿って連通するように形成された端部連通部とを備え、
容器本体1の複数の仕切り壁2を介して複数の流体通路3の端部を有する辺の端部の先端部のみをプレス成形し、ついで端部の周縁を溶着して封止することにより端部連通部を形成する」技術事項が記載されている。

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「連通孔2」は、内部に熱を搬送する何らかの流体(熱搬送媒体)を流すために、周りに壁を有する板状体の一方の端部側から他方の端部側へ延びる複数の連通孔2を有するものであるから、本願補正発明の「熱媒体流通空間」に相当する。
・引用発明の「押出管1」は、複数の連通孔2を有する板状体をなすもので、板状体の周りは壁で構築され、複数の連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)を区画する複数の隔壁を有するものであるから、本願補正発明の「放熱本体部」に相当する。
・引用発明の「横孔5」は、押出管1(本願補正発明の「放熱本体部」)のそれぞれの端部に一体に設けられ、複数の連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)を互いに連絡するものであるから、本願補正発明の「熱媒体連絡空間」に相当する。
・引用発明の「封止部」は、複数の連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)を互いに連絡する横孔5(本願補正発明の「熱媒体連絡空間」)を有して複数の連通孔2のそれぞれの端部を塞ぐ一対のものであるから、本願補正発明の「閉塞部」に相当する。
・引用発明の「封入口」は、押出管1(本願補正発明の「放熱本体部」)の端部において、熱搬送媒体の流体を封入可能とするため、一部の連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)を内包する部分を残して形成するものであるから、本願補正発明の「熱媒体導入路」に相当する。
・引用発明の「管状突出部11」は、押出管1(本願補正発明の「放熱本体部」)の端部において、封入口(本願補正発明の「熱媒体導入路」)とすべき一部の連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)を内包する部分を残し、他の部分については端から一定長さ分切除して形成するもので、結果的に押出管1のいずれか一方の端部から突出するものであるから、本願補正発明の「熱媒体導入部」に相当する。
・そうすると、引用発明の「前記押出管1は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の連通孔2は、前記押出管1の幅方向に並び、
前記封入口は、前記押出管1のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記押出管1の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の封止部のそれぞれは、押出管1の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の封止部の一方は、前記押出管1のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の封止部の他方は、前記押出管1の幅方向に延びて前記押出管1の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法」は、本願補正発明の「前記放熱本体部は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の熱媒体流通空間は、前記放熱本体部の幅方向に並び、
前記熱媒体導入部は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記放熱本体部の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の閉塞部のそれぞれは、前記放熱本体部の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の閉塞部の一方は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の閉塞部の他方は、前記放熱本体部の幅方向に延びて前記放熱本体部の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法」に相当する。
・引用発明の「前記押出管1、前記一対の封止部、および前記管状突出部11を、前記連通孔2になる線状の空間を有する板状体から一体成形し」は、
本願補正発明の「前記放熱本体部、前記一対の閉塞部、および前記熱媒体導入部を、前記熱媒体流通空間になる線状の空間を有する板材から一体成形し」に相当する。
・引用発明の「連通孔開口部7」は、連通孔2(本願補正発明の「熱媒体流通空間」)が外界に直接通じる開口部であるから、本願補正発明の「開口端」に相当する。
・そうすると、引用発明の「前記板状体の前記線状の空間の連通孔開口部7を有する辺において、一部の前記連通孔2を内包する部分を前記管状突出部11として残して前記封入口として利用し、前記管状突出部11以外の前記押出管1の端部については端から一定長さ分切除して、前記管状突出部11以外の前記連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、前記連通孔2が互いに連絡するように形成された前記横孔5を形成し」は、本願補正発明の「前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、連通するように形成されたスリットを形成し、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺の開口端側の先端部のみを塑性加工によって押し潰して、圧着することにより前記一対の閉塞部を形成し」に相当する。
・引用発明の「前記複数の連通孔2の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように横坑5を形成する」は、本願補正発明の「前記複数の熱媒体流通空間の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように熱媒体連絡空間を形成する」に相当する。
・引用発明の「ヒートパイプ」は、熱を搬送する熱搬送媒体としての機能を備えるものであるから、本願補正発明の「放熱装置」に相当する。
・なお、本願補正発明の「熱媒体連絡空間」は、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた、前記複数の隔壁の開口端側と、前記周壁の開口端側の側部とを切り欠くか、または、
前記周壁の開口端側の側部、および、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた前記複数の隔壁の開口端側を切り欠くことによって、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて、連通するように形成されたスリットを形成するとともに、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口と反対側において、連通するように形成されたスリットを形成した後、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺の開口端側の先端部のみを塑性加工によって押し潰して、圧着することにより前記一対の閉塞部を形成」することにより形成されるのに対し、引用発明では、「前記管状突出部11以外の前記押出管1の端部については端から一定長さ分切除して、前記管状突出部11以外の前記連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、前記連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の前記管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、前記連通孔2が互いに連絡するように形成された前記横孔5を形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製され」ることにより形成される点で相違する。
・さらに、本願補正発明の「熱媒体連絡空間」は、連通するように形成されたスリットを、前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて形成する」のに対し、引用発明の「横孔5」は、「長手方向の前記管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、前記連通孔2が互いに連絡するように形成され」ている点で相違する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「周壁、および前記周壁内に配置されて前記周壁の一方の端部側から前記周壁の他方の端部側へ延びる複数の熱媒体流通空間を区画する複数の隔壁を有する放熱本体部と、
前記放熱本体部のそれぞれの端部に一体に設けられ、前記複数の熱媒体流通空間を相互に繋げる熱媒体連絡空間を有して前記複数の熱媒体流通空間のそれぞれの端部を塞ぐ一対の閉塞部と、
前記熱媒体流通空間の少なくとも1つに繋がる熱媒体導入路を有して前記放熱本体部のいずれか一方の端部から突出する熱媒体導入部と、を備え、
前記放熱本体部は、四角形の板状に拡がり、
前記複数の熱媒体流通空間は、前記放熱本体部の幅方向に並び、
前記熱媒体導入部は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の一部に設けられて前記放熱本体部の一方の側部に連続して突出し、
前記一対の閉塞部のそれぞれは、前記放熱本体部の対辺のそれぞれに直線状に延び、
前記一対の閉塞部の一方は、前記放熱本体部のいずれか一方の端部の残部に設けられ、
前記一対の閉塞部の他方は、前記放熱本体部の幅方向に延びて前記放熱本体部の一方の側部から他方の側部に達するように構成した放熱装置の製造方法であって、
前記放熱本体部、前記一対の閉塞部、および前記熱媒体導入部を、前記熱媒体流通空間になる線状の空間を有する板材から一体成形し、
これにより、前記複数の熱媒体流通空間の全てを、相互に一直線状に直接繋げるように熱媒体連絡空間を形成する、
ことを特徴とする放熱装置の製造方法。」

(相違点1)
熱媒体連絡空間の形成において、本願補正発明は「前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記複数の隔壁の開口端側と、前記周壁の開口端側の側部とを切り欠くか、または、
前記周壁の開口端側の側部を除いた前記複数の隔壁の開口端側を切り欠くことによって、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って連通するように形成されたスリットを形成した後、
前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺の開口端側の先端部のみを塑性加工によって押し潰して、圧着することにより前記一対の閉塞部を形成し」ているのに対し、引用発明は「前記管状突出部11以外の前記押出管1の端部については端から一定長さ分切除して、前記管状突出部11以外の前記連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、前記連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の前記管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、前記連通孔2が互いに連絡するように形成された前記横孔5を形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製され」る点で相違する。

(相違点2)
熱媒体連絡空間の形成において、本願補正発明は、連通するように形成されたスリットを、前記板材の前記線状の空間の開口端を有する辺に沿って、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて形成する」のに対し、引用発明の「横孔5」は、「長手方向の前記管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、前記連通孔2が互いに連絡するように形成され」ている点で相違する。

4.判断
上記各相違点について検討する。

(相違点1)について
複数の仕切り壁を介して複数の流体通路をアルミニウム材料の押し出し成形によって形成した容器本体と、この容器本体の両端部を連通、封止してなることを特徴とするヒートパイプ容器の容器本体の熱媒体連絡空間の形成において、引用例2には、「容器本体1の複数の仕切り壁2を介して複数の流体通路3の端部を有する辺に沿って、複数の仕切り壁2の端部側と、容器本体1の端部側の側部とを切り欠くか、または、容器本体1の端部側の側部を除いた複数の仕切り壁2の端部側を切り欠くことによって、
容器本体1の複数の流体通路3の端部を有する辺に沿って連通するように形成された端部連通部とを備え、
容器本体1の複数の仕切り壁2を介して複数の流体通路3の端部を有する辺の端部の先端部のみをプレス成形し、ついで端部の周縁を溶着して封止することにより端部連通部を形成する」技術事項が記載されている。
ここで、引用発明と引用例2は、何れも押し出し成形によって形成した容器本体を加工して形成する放熱装置の製造方法に関する発明である点で共通し、容器本体のそれぞれの端部に一体に設けられ、複数の熱媒体流通空間を相互に繋げる熱媒体連絡空間を有する点でも共通する。
そして、容器本体を加工して形成する放熱装置の製造方法において、熱媒体連絡空間を形成する順序は、引用例1の段落【0048】に「上記各実施の形態においては、(中略)連通孔開口部7の封止および横孔開口部8の封止の各工程の順序は、各実施の形態で説明した順序に限られず、異なる順序で行なっても同様の効果を得ることが可能である」ことが記載されており、各工程の順序を異ならせることも示唆されていると認められる。
そうすると、引用発明の熱媒体連絡空間の形成において、引用例2の上記技術事項を適用し、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、連通孔2が互いに連絡するように形成された横孔5を形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製する工程を、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に形成した後、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止することにより作成する工程とすることにより、相違点1の形成工程とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

(相違点2)について
上記「(相違点1)について」で既述したように、引用発明の「熱媒体連絡空間の形成において、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に穿設して、連通孔2が互いに連絡するように形成された横孔5を形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製する工程」に、引用例2の技術事項を適用すると、
「管状突出部11以外の連通孔開口部7を、先にプレスなどにより封止した後に、連通孔2を互いに連絡する横孔5を穿設して作成する工程を、管状突出部11以外の連通孔開口部7の複数の仕切り壁の端部側を切り欠くことによって、容器本体の複数の流体通路の端部を有する辺に沿って連通するように形成された端部連通部とを備え、容器本体の複数の仕切り壁を介して複数の流体通路の端部を有する辺の端部の先端部のみをプレス成形し、ついで端部の周縁を溶着して封止することにより端部連通部を形成する工程」となり、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、先に切り欠くことによって端部連通部を形成することになるから、端部連通部が管状突出部の連通孔開口部にまで達することはない。
そうすると、相違点2の構成とすることは、引用発明の熱媒体連絡空間の形成において、引用例2の技術事項を適用して、上記相違点1の形成工程とすることにより通常導き出される構成であるから、当業者が容易になし得たものである。

なお、審判請求人は、平成29年2月10日付け意見書において、「引用文献1では、本願発明の熱媒体導入部16の熱媒体導入路15の導入口側の隔壁17に相当する部分が、切り欠かれた状態であるので、この部分から、導入された熱媒体が拡散してしまい、全体に均一に充填しにくく、伝熱効率(放熱効率)に劣ることになる。」旨主張している。
しかしながら、上記「(相違点2)について」で既述したように、引用発明の熱媒体連絡空間の形成において、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、いずれもプレスなどにより封止し、連通孔2を互いに連絡する横孔5を、長手方向の管状突出部11を除いた部分の両端の近傍に形成した後、横孔開口部8をいずれも封止することにより作製する工程に、引用例2の技術事項を適用することは、管状突出部11以外の連通孔開口部7の複数の仕切り壁の端部側を切り欠くことによって、容器本体の複数の流体通路の端部を有する辺に沿って連通するように形成された端部連通部とを備え、容器本体の複数の仕切り壁を介して複数の流体通路の端部を有する辺の端部の先端部のみをプレス成形し、ついで端部の周縁を溶着して封止することにより端部連通部を形成する工程とすることであって、管状突出部11以外の連通孔開口部7を、先に切り欠くことによって端部連通部を形成することになるから、端部連通部が管状突出部の連通孔開口部にまで達することはなく、本願補正発明で言うところの熱媒体導入部16の熱媒体導入路15の導入口側の隔壁17に相当する部分が、切り欠かれた状態になるとは認められない。
よって請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明および引用例2に記載された技術事項により当業者が容易になし得たものである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1および2から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成29年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年5月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例
当審の最後の拒絶理由通知で引用された引用例およびその記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側において、前記熱媒体導入部の熱媒体導入路を除いて」との限定を削除し、「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口と反対側において、連通するように形成されたスリットを形成」との限定を削除したものである。また、上記限定の削除に関連して、スリットを形成する前段階における「前記熱媒体導入部の熱媒体導入路の導入口側の隔壁を除いた」との限定も削除したものである。
したがって、本願発明と引用発明は、上記「第2 3.」に記載の「(相違点1)」の点で相違し、その余の点で一致する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.」および「第2 4.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-08 
結審通知日 2017-08-09 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2014-205714(P2014-205714)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (F28F)
P 1 8・ 121- WZ (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
森川 幸俊
発明の名称 放熱装置の製造方法  
代理人 牧村 浩次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ