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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1333036
審判番号 不服2015-18644  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-15 
確定日 2017-10-03 
事件の表示 特願2013-502752「局所投与部位における医薬組成物の保持改善のための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月13日国際公開、WO2011/126839、平成25年 6月17日国内公表、特表2013-523752〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成23年3月29日(パリ条約に基づく優先権主張 平成22年3月29日,アメリカ合衆国)にされたとみなされる特許出願であって,平成26年12月1日付けで拒絶理由が通知され,平成27年4月7日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され,同年6月5日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,同年12月1日付けで同法164条3項の規定による報告がされたものである。

第2 本願発明について
1 平成27年10月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について
(1) 本件補正の内容
本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ,特許請求の範囲全体の記載のうち,いわゆる独立項である本件補正前の請求項1及び請求項10並びにこれら請求項に対応する本件補正後の請求項1及び請求項10の記載を掲記すると,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(平成27年4月7日の手続補正書)
「【請求項1】
保持ビヒクルポリマーと,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーを架橋させるための制御放出性架橋剤と,を含む組成物であって,前記制御放出性架橋剤が多価イオンを含む塩を含む,前記組成物。
【請求項10】
内部にカプセル化された生物活性剤を含む生分解性ポリマー微粒子と,保持ビヒクルポリマーと,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーを架橋させるための制御放出性架橋剤と,を含む,注射によって生物活性剤を送達するための医薬組成物であって,前記制御放出性架橋剤が多価イオンを含む塩を含む,前記医薬組成物。」
・ 本件補正後
「【請求項1】
保持ビヒクルポリマーと,解離された架橋剤を補充して,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーの架橋を維持するための制御放出性架橋剤と,を含む組成物であって,前記制御放出性架橋剤が多価イオンを含む塩を含む,前記組成物。
【請求項10】
内部にカプセル化された生物活性剤を含む生分解性ポリマー微粒子と,保持ビヒクルポリマーと,解離された架橋剤を補充して,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーの架橋を維持するための制御放出性架橋剤と,を含む,注射によって生物活性剤を送達するための医薬組成物であって,前記制御放出性架橋剤が多価イオンを含む塩を含む,前記医薬組成物。」

(2) 本件補正の目的など
ア 本件補正は,請求項1又は請求項10の記載に係る発明を特定するために必要な事項である「制御放出性架橋剤」について,補正前において「対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーを架橋させるための」と特定していたものを「解離された架橋剤を補充して,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーの架橋を維持するための」と特定するものである。
請求人は,本件補正は特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮(特許法17条の2第5項2号)を目的とする補正に該当する旨主張するが(審判請求書3頁),本件補正が,「制御放出性架橋剤」について,「保持ビヒクルポリマーを架橋させるための」ものであることを限定するものであるかどうかはさておき,本件補正は「解離された架橋剤を補充」して「架橋を維持する」といった,本件補正前の発明には無かった新たな解決しようとする課題を付加するものであるといわざるを得ない。そうすると,本件補正の前後で,請求項1及び請求項10の記載に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるとはいえないから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる事項を目的とするものであると認めることはできない。
イ しかし,当合議体は,本件補正は明りょうでない記載の釈明(特許法17条の2第5項4号)を目的とする補正に該当するものと認めることとする。
すなわち,「制御放出性架橋剤」について,本願の明細書には,以下のとおり,その定義らしき記載がうかがえる。
「…「制御放出性架橋剤」は,解離された架橋剤を補充し,ポリマー鎖での架橋を長期間維持して,例えば架橋剤の放出を1週間,1ヶ月,またはそれを超える間維持して,保持ビヒクルポリマーの構造を保持することが可能な架橋剤である。」(【0016】。なお,下線は審決による。)
しかも,補正前の「制御放出性架橋剤」について,特許請求の範囲には明示的に記載されてはいなかったが,請求人は,「解離された架橋剤を補充」して「架橋を維持する」ものであることを前提とする主張をしていた経緯もある(意見書4頁5?9行)。
そうすると,本件補正は,補正前の「制御放出性架橋剤」について,明確に特定されていなかった事項を,上記定義に基づいて明りょうにするものであるといえる。
なお,本件補正は,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものではないから,その目的は,厳密には,特許法17条の2第5項4号に該当するものとはいえないが,当合議体はこの点の違法性は問わないこととする。
ウ また,本件補正は,いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。

(3) 小括
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2各項所定の要件をいずれも満たす。

2 本願発明
上記1のとおり,本件補正にはその要件に違法性はないので,本願の請求項1?19に係る発明は,平成27年10月15日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「保持ビヒクルポリマーと,解離された架橋剤を補充して,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーの架橋を維持するための制御放出性架橋剤と,を含む組成物であって,前記制御放出性架橋剤が多価イオンを含む塩を含む,前記組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1: 特表2008-517927号公報

第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 査定の理由で引用された引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は審決による。)
・「【要約】
薬剤又は治療剤の長期制御放出のためのシステムが記載される。本発明によれば,ミクロスフェアに含まれる1種以上の薬剤又は治療剤は,温度感受性ヒドロゲルと混合され,その後,薬剤又は治療剤の所望部位に直接導入される。温度感受性ヒドロゲルも,短期制御放出用の薬剤又は治療剤,例えば鎮痛薬を含むことができる。温度感受性ヒドロゲルは室温で液体状態であるが,注射の際には簡単にゲル状になる。このシステムは,疾患,障害又は症状,例えば腫瘍,椎間板起因の背痛,又は関節炎の治療に特に適しており,薬剤又は治療剤の局所投与を保証する。…」
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物内の特定の部位に薬剤又は治療剤を導入する方法であって,薬剤又は治療剤を含有する複数のポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア-ヒドロゲル混合物を動物内の特定の部位に導入することを含み,該ミクロスフェアは温度感受性ヒドロゲル中に分散されており,該ヒドロゲルは,室温又は室温付近で液体状態であり,かつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態であり,該薬剤又は治療剤が前記部位で放出される,上記方法。…
【請求項7】
ミクロスフェアに含まれる薬剤又は治療剤が、長期間の治療効果のために制御様式で放出される、請求項1に記載の方法。…
【請求項18】
薬剤又は治療剤の送達用の医薬組成物であって,該組成物が,室温又は室温付近で液体状態でありかつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態である温度感受性ヒドロゲルと,少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む複数のミクロスフェアとを含み,該ミクロスフェアが該ヒドロゲルに懸濁されることにより,前記薬剤又は治療剤を放出するヒドロゲル-ミクロスフェア混合物が形成される,上記医薬組成物。…
【請求項21】
ヒドロゲルが,N-イソプロピルアクリルアミド重合体,エチルヒドロキシエチルセルロース,ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド),ポロキサマー,PLURONICS(登録商標)重合体,ポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体,多糖,アルギナート,ポリホスファジン,ポリアクリレート,TETRONICS^(TM)重合体,ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体,並びにその誘導体及び類似体よりなる群から選択されるポリマーを含む,請求項18に記載の組成物。…」
・「【0001】
…本発明は,薬剤の制御送達のための温度感受性組成物…に関する。」
・「【0010】
…本発明は,温度感受性ヒドロゲル及び生体適合性ポリマーのミクロスフェアの使用により,薬剤又は治療剤の制御送達を可能にする。哺乳動物を治療するためのこのシステムの使用は,薬剤又は治療剤のより少ない投与頻度を要する利点及び外科的手術の介在を回避する利点を有する。したがって,本発明は,短期又は長期の効果或いは治療に適するシステム,方法及び医薬組成物を含む。」
・「【0028】
ポリマーは本発明の温度感受性ヒドロゲルを作製する際に使用される。温度感受性ヒドロゲルは,周囲の室温付近(約20℃)で液体であり,かつ体温付近(約37℃)で固体(ゲル)に転移するように設計される。温度感受性ヒドロゲルの作製に使用されるポリマーは,ヒドロゲルを支持するために必要な性質を保持する限り,非限定的に任意のポリマー材料であり得る。温度感受性ヒドロゲルを作製するために必要なポリマーの例として,これに限定されるものではないが,N-イソプロピルアクリルアミド重合体,エチルヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体,ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド-b-エチレンオキシド)(ポロキサマー又はPLURONICS(登録商標)重合体として一般的に知られる),並びにポリ(エチレングリコール)/ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)ブロック共重合体及びその類似体を含む。ポロキサマーは,ポリエチレンオキシドの2つの親水性ブロックと,それによって挟まれる,中心のポリプロプロピレンオキシドの疎水性ブロックとからなる,ABA型のブロック共重合体である。このポリマーは,プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続的な重合から誘導される。
【0029】
別の態様では,ヒドロゲルは,共有結合,イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して,水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造(open-lattice structure)を作ることによって作製される。ヒドロゲルを形成するために使用できる材料の例は,イオン的に架橋される,アルギナートなどの多糖,ポリホスファジン及びポリアクリレート,或いはそれぞれ温度又はpHによって架橋される,PLURONICS(登録商標)重合体又はTETRONICS(登録商標)重合体,ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体などのブロック共重合体を含む。これらのポリマーは市販されているか又は当業者に公知の方法を用いて合成することができる。…
【0030】
温度感受性ヒドロゲルは,当業者に慣用の標準的な技術を用いて作製することができる。例えば,温度感受性ヒドロゲルは,ポリマーを製造するか又は市販のポリマーを購入し,該ポリマーを水又は他の溶媒に溶解させ,溶解したポリマーに該ポリマーの架橋を容易にする試薬(例えばヒアルロン酸ナトリウム(SH)など)を添加することによって作製することができる。さらに実施例2?4を参照されたい。ヒドロゲルを製造するために必要な技術,量,温度,及び時間は当業者に公知である。」
・「【0058】
本発明の方法及び組成物は,制御様式で薬剤又は治療剤を放出するため,薬剤又は治療剤の最適な送達を提供する。制御送達により,薬剤が所望の期間にわたって送達される。言い換えれば,より遅くかつ安定な速度の送達により,動物に投与されるべき薬剤又は治療剤の頻度を低減し得る。
【0059】
薬剤又は治療剤の放出速度は多くの要因,例えばヒドロゲル及びミクロスフェアのポリマーの組成,及びヒドロゲルの重合度に左右される。薬剤又は治療剤の放出速度は,ミクロスフェアの生分解性ポリマーの分解速度にも左右される。…
【0060】
ミクロスフェアからの薬剤又は治療剤の放出速度に影響を与えるさらに別の要因は,薬剤又は治療剤の粒径である。上記の要因を調整することによって,分解,拡散及び制御放出は,非常に広範囲にわたって変化し得る。…」

(2) 上記(1)の摘記,特に【特許請求の範囲】及び【0029】などの記載から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「動物内の特定の部位に直接導入される薬剤又は治療剤の送達用の医薬組成物であって,
該組成物が,室温又は室温付近で液体状態でありかつ体温又は体温付近で固体又はゲル状態である温度感受性ヒドロゲルと,少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む複数のミクロスフェアとを含み,
上記ヒドロゲルは,溶解したポリマーに該ポリマーの架橋を容易にする試薬を添加することで,共有結合,イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造を作ることによって作製され,上記ヒドロゲルを形成するために使用できる材料としては,イオン的に架橋されるものの場合,アルギナートなどの多糖,ポリホスファジン及びポリアクリレート,或いはそれぞれ温度又はpHによって架橋される,PLURONICS(登録商標)重合体又はTETRONICS(登録商標)重合体,ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体などのブロック共重合体を含むものから選択され,
上記ミクロスフェアが上記ヒドロゲルに懸濁されることにより,上記薬剤又は治療剤を長期間の治療効果のための制御様式で上記部位で放出するヒドロゲル-ミクロスフェア混合物が形成される,医薬組成物。」

2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「(温度感受性)ヒドロゲル」は,本願発明の「保持ビヒクルポリマー」に相当するといえる。
また,引用発明の「医薬組成物」は「動物内の特定の部位に直接導入」されるものであり,また,当該「医薬組成物」の構成要素である「ヒドロゲル」は「溶解したポリマーに該ポリマーの架橋を容易にする試薬を添加することで,共有結合,イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造を作ることによって作製され」るものであるから,上記「ヒドロゲル」を作製する際に用いられるところのポリマーの架橋を容易にするとされる「試薬」は,本願発明の「対象においてインサイチュ」で保持ビヒクルポリマー(ヒドロゲル)を架橋するための「制御放出性架橋剤」に対応するものであるといえる。
さらに,引用発明の「医薬組成物」は,上記「(温度感受性)ヒドロゲル」とともに「少なくとも1種の薬剤又は治療剤を含む複数のミクロスフェア」とを含むものであるところ,本願明細書の記載からみて(例えば【0017】),本願発明(組成物)はこのようなミクロスフェアを含むことを排除するものではないといえるから,引用発明が上記ミクロスフェアを含むことは,本願発明との相違点とはならない。
そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
「保持ビヒクルポリマーと,対象においてインサイチュで保持ビヒクルポリマーを架橋するための架橋剤とを含む組成物」である点。
・ 相違点
(制御放出性)架橋剤について,本願発明は「多価イオンを含む塩を含む」ものであり,「解離された架橋剤を補充」して「保持ビヒクルポリマーの架橋を維持」する如く機能するものであるのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しておらず,「共有結合,イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造を作る」ものと特定する点。

3 相違点についての判断
引用発明の「ヒドロゲル」は,上記1(2)で認定のとおり,「溶解したポリマーに該ポリマーの架橋を容易にする試薬を添加することで,共有結合,イオン結合又は水素結合を介してポリマーを架橋して水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開口格子構造を作ることによって作製され」たものである。
このように,当該「ヒドロゲル」は「共有結合,イオン結合又は水素結合」を介して架橋されることで作製されるのものであるから,これら例示の架橋機序の中から特に「イオン結合」を選択してヒドロゲルを作製することに格別な困難性を認めることができない。そして,ポリマーをイオン結合を介し架橋させてヒドロゲルを作製するための試薬(架橋剤)として多価イオンを含む塩を用いることは,本願の優先日当時において周知の技術であるから(要すれば,特表2004-528278号公報(査定の理由で引用された引用文献2である。),特開平5-124968号公報及び特表2003-531682号公報(いずれも,平成28年2月22日付け上申書における主張で請求人が引用する刊行物である。)を参照することができる。),上記選択にあたり上述の周知技術を適用すること,すなわち,引用発明においてイオン結合を介してポリマーを架橋するのに際し,試薬(架橋剤)として多価イオンを含む塩を用いる程度のことは,当業者であれば想到容易である。
また,本願発明は「解離された架橋剤を補充」して「保持ビヒクルポリマーの架橋を維持する」ことを特定するものであるが,このような特定事項は,本願発明の「制御放出性架橋剤」が奏する作用ないしは性質を単に特定しているにすぎず,物の発明である本願発明を特定するのに何ら意味を持たない。あるいは,上述のとおり,引用発明の試薬として多価イオンを含む塩を用いることは想到容易であるといえるところ,上記特定事項は,引用発明の試薬として多価イオンを含む塩を用いた際に,当該塩が奏する作用ないしは性質を単に特定したにすぎないともいえる。

4 小括
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび
したがって,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明を主たる引用発明として,この引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-02 
結審通知日 2017-05-08 
審決日 2017-05-19 
出願番号 特願2013-502752(P2013-502752)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 樹理  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 長谷川 茜
関 美祝
発明の名称 局所投与部位における医薬組成物の保持改善のための組成物および方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 礒山 朝美  
代理人 久野 琢也  

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