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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B |
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管理番号 | 1333059 |
審判番号 | 不服2016-3076 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-29 |
確定日 | 2017-10-04 |
事件の表示 | 特願2012-168710「マルチアンテナまたはマルチビームを用いた無線送受信ユニット-無線送受信ユニット(WTRU-WTRU)干渉の緩和」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 8日出願公開、特開2012-217212〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、2005年(平成17年)3月10日(パリ条約による優先権主張 2004年3月31日 米国、2004年12月29日 米国)を国際出願日として出願した特願2007?506203号の一部を、平成21年2月26日に新たに出願した特願2009?044792号の一部を、さらに平成24年7月30日に新たに出願したものであって、平成25年11月11日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月18日付けで意見書が提出され、平成26年7月18日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年5月19日付けで意見書が提出され、同年10月23日付けで拒絶査定されたところ、平成28年2月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において同年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして,特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年11月29日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 無線送受信ユニット(WTRU)であって、 アップリンク信号を送信するためにアンテナアレイの1または複数のアンテナ要素において受信される1または複数の信号が乗算されるアンテナ重みを作り出すように構成された回路と、 第1の周波数スペクトル送信を前記アンテナアレイを通じて基地局に送信するようにさらに構成された前記回路と を備え、 前記第1の周波数スペクトル送信は、前記作り出されたアンテナ重みを使用する、第1の周波数スペクトルにおける前記アップリンク信号の送信であり、および 前記第1の周波数スペクトル送信は、別のWTRUに関連付けられた第2の周波数スペクトル送信の一部のみにスペクトル的に重なる、 WTRU。」 2.引用発明等 (1)引用発明 これに対して,当審の拒絶理由で引用した特開2003-283466号公報(平成15年10月3日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 ア.「【0090】図2は、本発明のアダプティブアレイ端末2000の構成を説明するための概略ブロック図である。 【0091】図2を参照して、アダプティブアレイ端末2000は、データの送受信を行なうためのアンテナ♯AN1および♯AN2から構成されるアダプティブアレイアンテナと、アンテナ♯AN1および♯AN2の受信レベルを、それぞれ測定する受信レベル測定部2010と、アンテナ♯AN1および♯AN2のそれぞれに対して、送信時には送信信号を与え、受信時には、アンテナからの受信信号を通過させるためのスイッチ部2020および2022と、スイッチ部2020および2022からの信号を受けて、アダプティブアレイ処理を行なって、所望の基地局からの信号を分離するための受信アダプティブアレイ部2030と、受信アダプティブアレイ部2030からの信号の復調処理を行なって、ベースバンド信号を抽出するための復調回路2040とを備える。 【0092】アダプティブアレイ端末2000は、さらに、復調回路2040からの出力に基づいて、上述したCRCに基づいて、受信信号のエラー量を判定するためのエラー判定器2050と、復調回路2040からの出力に基づいて、基地局がSDMA方式による送受信を行なう基地局であるか、それ以外の基地局であるかを識別するための基地局種別識別装置2060と、エラー判定器2050および基地局種別識別装置2060からの受信信号情報と、受信アダプティブアレイ部2030からの受信信号情報とに基づいて、送信ウェイトを計算するための送信ウェイト計算機2070と、後に説明するように送信指向性の制御にあたり位相情報等を予め保持するためのメモリ2100とを備える。 ・・・略・・・ 【0094】アダプティブアレイ端末2000は、さらに、送信するベースバンド信号を受けて、変調処理を行なうための変調回路2080と、変調回路2080の出力を受け、送信ウェイト計算機2070からの送信ウェイトを受取って、送信アダプティブアレイ処理を行なうための送信アダプティブアレイ部2090とを備える。」(下線は当審で付与、以下同様。段落【0090】?【0094】参照) イ.「【0099】(1.送信ウェイトとして受信ウェイトをコピーする場合)送信ウェイト計算機2070は、受信ウェイトをコピーする場合、受信アダプティブアレイ部2030からの受信ウェイトを受取って、送信ウェイトとして転送する。通信状態が良好であれば、端末側も送受信に指向性を持たせることで、他の端末との間の干渉を排除した通信を行うことができる。」(段落【0099】参照) ウ.【図2】 (2)引用発明1の認定 上記摘記事項ア.?ウ.から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「アダプティブアレイ端末2000であって、 データの送受信を行なうためのアンテナ♯AN1および♯AN2から構成されるアダプティブアレイアンテナと、 アダプティブアレイ処理を行なって、所望の基地局からの信号を分離するための受信アダプティブアレイ部2030と、受信アダプティブアレイ部2030からの信号の復調処理を行なって、ベースバンド信号を抽出するための復調回路2040と、 受信アダプティブアレイ部2030からの受信信号情報に基づいて、送信ウェイトを計算するための送信ウェイト計算機2070と、 送信するベースバンド信号を受けて、変調処理を行なうための変調回路2080と、変調回路2080の出力を受け、送信ウェイト計算機2070からの送信ウェイトを受取って、送信アダプティブアレイ処理を行なうための送信アダプティブアレイ部2090と、 を含む構成を備え、 送信ウェイト計算機2070は、受信アダプティブアレイ部2030からの受信ウェイトを受取って、送信ウェイトとして転送し、 通信状態が良好であれば、端末側も送受信に指向性を持たせることで、他の端末との間の干渉を排除した通信を行うことができる、 アダプティブアレイ端末2000。」 (3)引用文献2について 当審の拒絶理由で引用した3GPPの規格文書である「3GPP TS 25.101 V6.3.0 (2003-12)」(以下,「引用文献3」という。)には,以下の事項が記載されている。 カ.「Table 5.0: UTRA FDD frequency bands」 (12頁 "Table 5.0: UTRA FDD frequency bands" 参照) (4)周知事項の認定 引用文献2は無線通信技術分野において当業者に周知の規格文書である。それを踏まえると、上記摘記事項カ.から、引用文献2には、次の周知事項(以下、「周知事項1」という。)が記載されていると認める。 「UTRA/FDDにおいて、オペレーションバンド2のUL周波数は、オペレーションバンド3のDL周波数の一部のみにスペクトル的に重なること」 3.対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「アダプティブアレイ端末2000」は、本願発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に相当する。 (2)引用発明1の「データの送受信を行なうためのアンテナ♯AN1および♯AN2から構成されるアダプティブアレイアンテナ」は、本願発明の「アレイアンテナ」に相当する。 (3)引用発明1の「受信ウエイト」、「送信ウエイト」は、本願発明の「アンテナ重み」に相当する。また、引用発明1の「アダプティブアレイ端末2000」は基地局と通信を行うものであることから、「アダプティブアレイ端末2000」の送信は、基地局への送信、すなわち、アップリンク信号の送信であることは明らかである。 そして、引用発明1では、「アダプティブアレイ処理を行なって、所望の基地局からの信号を分離するための受信アダプティブアレイ部2030」を備えており、「送信ウェイト計算機2070は、受信アダプティブアレイ部2030からの受信ウェイトを受取って、送信ウェイトとして転送し」ている。したがって、上記「送信ウエイト」は、「受信アダプティブアレイ部2030」において受信信号が乗算される「受信ウエイト」が「送信ウェイト計算機2070」で転送されたものであることを示している。 よって、引用発明1の「受信アダプティブアレイ部2030からの受信信号情報とに基づいて、送信ウェイトを計算するための送信ウェイト計算機2070」を含む「構成」は、本願発明の「アップリンク信号を送信するためにアンテナアレイの1または複数のアンテナ要素において受信される1または複数の信号が乗算されるアンテナ重みを作り出すように構成された回路」に相当する。 (4)引用発明1の「送信アダプティブアレイ部2090」は「送信するベースバンド信号を受けて、変調処理を行なうための変調回路2080と、変調回路2080の出力を受け、送信ウェイト計算機2070からの送信ウェイトを受取って、送信アダプティブアレイ処理を行なう」ものであって、アップリンク信号をアンテナアレイを通じて基地局に送信するためのものである。 ここで、送信するベースバンド信号を変調処理することによって「アップリンク信号」を生成することから、送信の際に、いずれかの周波数を設定してアップリンク信号を生成することは明らかであって、設定する周波数は本願発明1でいうところの「第1の周波数」といえる。 よって、引用発明1の「送信するベースバンド信号を受けて、変調処理を行なうための変調回路2080と、変調回路2080の出力を受け、送信ウェイト計算機2070からの送信ウェイトを受取って、送信アダプティブアレイ処理を行なうための送信アダプティブアレイ部2090」を含む「構成」は、本願発明の「第1の周波数送信をアンテナアレイを通じて基地局に送信するようにさらに構成された前記回路」に対応する。 (5)そして、引用発明1で送信される「アップリンク信号」は、「送信ウェイト計算機2070」によって作り出された送信ウェイトを使用するものであるから、引用発明1で送信される「アップリンク信号」は、本願発明の「前記第1の周波数送信は、前記作り出されたアンテナ重みを使用する、第1の周波数における前記アップリンク信号の送信であり」という事項に対応する。 (6)一致点、相違点について 以上から、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「無線送受信ユニット(WTRU)であって、 アップリンク信号を送信するためにアンテナアレイの1または複数のアンテナ要素において受信される1または複数の信号が乗算されるアンテナ重みを作り出すように構成された回路と、 第1の周波数送信を前記アンテナアレイを通じて基地局に送信するようにさらに構成された前記回路と を備え、 前記第1の周波数送信は、前記作り出されたアンテナ重みを使用する、第1の周波数における前記アップリンク信号の送信である、 WTRU。」 [相違点1] 引用発明1では、アダプティブアレイ携帯2000の送信するアップリンク信号が、「周波数スペクトル送信」であることについて言及がない点。 [相違点2] 引用発明1では、「前記第1の周波数スペクトル送信は、別のWTRUに関連付けられた第2の周波数スペクトル送信の一部のみにスペクトル的に重なる」ことについて言及がない点。 4.判断 以下、上記[相違点1]及び[相違点2]について判断する。 (1)[相違点1]について 本願発明の「周波数スペクトル送信」に関して、平成28年11月29日付け意見書において、審判請求人は、次のように主張している。 キ.「(4)理由2について (中略) 同2点目に関して、当業者は、周波数f1およびf1’が、それぞれ、UL送信およびDL送信の中心周波数であることを理解するものと思料します。UL送信およびDL送信が、帯域幅内の1または複数の個々の周波数を通じて送信されることは当技術分野において知られています。帯域幅は、UL信号およびDL信号が送信される一連の周波数(周波数スペクトラム)の上側周波数および下側周波数の間の差です。このことは図4において示されており、図4ではUL送信およびDL送信が「周波数」と記載されているx軸に沿って幅を有しています。この幅は、UL信号およびDL信号が送信される周波数の幅を示しています。中心周波数は、技術用語として知られており、帯域幅の下側周波数と上側周波数の間の平均を意味します。ここで、中心周波数f1およびf1’が互いに近いため、UL信号を送信するために使用される周波数スペクトラムは、DL信号を送信するために使用される周波数スペクトラムの一部に重なります。すなわち、DLおよびULの幅は、送信帯域幅(周波数スペクトラム)を表しています。図4においても、「周波数」と記載されているx軸の部分を「DL」および「UL」が占めておりますので、このことは示されているものと思料します。周波数f1およびf1’は、ULおよびDL帯域幅の中心周波数を示しているにすぎず、これは異なる送信帯域を識別する従来の方法です。よって、本願発明は、本願明細書の記載によってサポートされているものと思料します。」 ク.「(5)理由3について (中略) 同2、3点目に関しては、上記(4)において理由2の2点目として述べたように、「周波数スペクトル送信」は、図4に示されているULおよびDL帯域幅に相当します。図4の「UL」および「DL」ブロックは、UL信号およびDL信号が送信される周波数のスペクトルを表しています。UL信号およびDL信号の帯域幅は、周波数スペクトルにおいて互いに重なることができます。UL帯域幅およびDL帯域幅は、当技術分野において周知であり、本願発明は明確であると思料します。」 当該主張及び明細書の記載から、本願発明の「周波数スペクトル送信」とは、所定の帯域幅の周波数スペクトルを用いた送信であるといえる。 一方、引用発明1では、アップリンク信号がベースバンド信号を変調処理することによって設定される周波数によって送信されることが示されており、変調処理にて設定される周波数を用いたアップリンク送信を行っているといえ、また、このアップリンク送信は、当然所定の帯域幅の周波数スペクトルを持つことは、自明のことである。 してみれば、引用発明1のアップリンク信号の送信は、本願発明における「第1の周波数スペクトル送信」に相当するといえ、実質的に相違しない。 (2)[相違点2]について 周知事項1には、周知である3GPP規格において、オペレーションバンド2のUL周波数が、オペレーションバンド3のDL周波数の一部のみにスペクトル的に重なっていることが示されている。 そして、無線通信システムがどのようなオペレーションバンドを採用するかは、各国の電機通信政策、無線通信システムを構築する企業の方針等に応じて決定されるべき設計的事項であり、ある地域で一部周波数帯が重なるオペレーションバンド2及びオペレーションバンド3が採用され、その結果、オペレーションバンド2を採用した通信システムとオペレーションバンド3を採用した通信システムの各端末(WTRU)の間で、干渉の問題が発生する恐れが生じることは、当業者であれば当然想定されることである。 してみると、周知事項1から想定される端末間の干渉の問題を解決するため、利用する周波数帯が重なる状況下での端末間の干渉を減少させることができる引用発明1の構成を採用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 (3)小括 以上であるから、本願発明は、引用発明1及び周知事項1に基づいて当業者が容易に想到し得ることであって、また、本願発明の効果も、引用発明1及び周知事項1から、当業者が予測できる範囲のものである。 4.むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された引用発明1及び周知事項1に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであり、他の請求項を検討するまでも無く、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-02 |
結審通知日 | 2017-05-09 |
審決日 | 2017-05-23 |
出願番号 | 特願2012-168710(P2012-168710) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小池 堂夫、佐藤 敬介 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
水野 恵雄 山本 章裕 |
発明の名称 | マルチアンテナまたはマルチビームを用いた無線送受信ユニット-無線送受信ユニット(WTRU-WTRU)干渉の緩和 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |