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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K
管理番号 1333102
審判番号 不服2016-2398  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-17 
確定日 2017-10-05 
事件の表示 特願2013-510124「調整潤滑表面を有する弁ステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日国際公開、WO2011/142974、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2011年4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年5月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年5月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成28年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、その後、当審において平成28年12月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年3月17日に意見書(以下、単に「意見書」という。)が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成29年3月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 流体弁であって、
前記流体弁のボンネット内に配置されたグラファイトパッキンリングと、該グラファイトパッキンリングの両側に位置付けられた一対の複合パッキンリングと、該複合パッキンリングの各々に隣接して位置付けられた一対のカーボンブッシングとを有する弁パッキンと、
前記ボンネット内に配置された表面を有し、該表面が凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを含み、該窪みが調整された寸法、形状および/またはサイズを有する弁ステムまたは弁シャフトと、
前記弁ステムまたは弁シャフトの前記窪み内に配置されて前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面に保持された潤滑材料であって、前記流体弁の動作中、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面が前記潤滑材料を前記グラファイトパッキンリングに移して前記グラファイトパッキンリングに接触させる、潤滑材料と、
前記複合パッキンリングは、前記グラファイトパッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁ステムまたは弁シャフトへの前記グラファイトパッキンリングの材料移りを阻止し、
前記カーボンブッシングは、前記複合パッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁パッキン内で前記弁ステムまたは弁シャフトを中心に維持する、流体弁。」

3.引用例の記載事項

(1)引用例1
(1-1)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-285366号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
(ア)「【請求項1】 流体弁内のパッキング装置を作動のため貫いて移動する摺動弁軸を確実にシールするパッキング装置において、前記流体弁内のパッキング箱と、このパッキング箱の中に前記摺動弁軸を摺動可能に支持するパッキング従動部取付装置と、前記パッキング箱からの流体の漏洩を防止するため前記摺動弁軸の周りに流体シールを生ずるよう前記パッキング箱内の前記摺動弁軸の周りに取付けられた複数個のパッキングリングを有するパッキング組立体と、前記流体シールを維持するため前記パッキング組立体に弾発的な負荷を加える活負荷装置とを具え、前記複数個のパッキングリングには、少なくとも1個の可撓性グラハイトリング(a)と、前記摺動弁軸に沿い前記可撓性グラハイトリングに隣接し前記パッキング組立体の端部に設けた少なくとも1個のグラハイト複合パッキング端リング(b)と、前記摺動弁軸に沿い前記グラハイト複合パッキング端リングに隣接し前記パッキング組立体の端部に設けた少なくとも1個のカーボンブッシュリング(c)と、少なくとも前記パッキング組立体の中の前記可撓性グラハイトリング(a)と前記グラハイト複合パッキング端リング(b)との間に取付けられPTFEパッキング材料から成るPTFE円板リング(d)とを設け、前記PTFE円板リングがそのPTFEパッキング材料を前記摺動弁軸に部分的に押出して、前記パッキング組立体を貫通して摺動する前記摺動弁軸を潤滑するよう前記活負荷装置によって前記パッキング組立体に十分な弾発的負荷を維持することを特徴とするパッキング装置。
【請求項2】 前記パッキング組立体には、間にPTFE円板リングを有する1対の前記可撓性グラハイトリングと、間に前記PTFE円板リングを有する1対の前記可撓性グラハイトリングの一端の1対の前記グラハイト複合パッキング端リングとを設けた請求項1に記載のパッキング装置。
【請求項3】 更に前記パッキング組立体には、前記グラハイト複合パッキング端リングと前記パッキング組立体の一端の隣接する前記カーボンブッシュリングとの間のPTFE円板リングを設けた請求項2に記載のパッキング装置。」
(イ)「【0021】
【実施例】上述したように、本発明の原理は、摺動弁軸又は回転弁軸を有する弁、往復ポンプ軸ユニットに適用することができる。図1及び図2は、本発明を適用した摺動弁軸を有する弁を示し、図3及び図4は、本発明を適用した回転弁軸を有する弁を示す。図1及び図2の摺動弁軸を有する流体弁10は、弁ボンネット12を有する弁本体を具え、摺動弁軸14として示した作動弁部材を弁ボンネット12に貫通する。パッキングナット16をパッキングスタッド18に螺着し、弁ボンネット12内にあって摺動弁軸14の周りのパッキングに加わる負荷を調整する。」
(ウ)「【0022】弁ボンネット12内のパッキング孔によって形成したパッキング箱内に、後に詳述するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)円板を有する改良したグラハイトパッキングを収容する。この改良したグラハイトパッキングは1対の可撓性グラハイトリング22を有する。このグラハイトリング22は、ダイスで形成したリボン状の可撓性グラハイトから成る通常のパッキングリングである。この可撓性グラハイトリング22は、比較的軟らかい材料から成り、それぞれ半径方向に作用して弁軸をシールする。
【0023】可撓性グラハイトリング22の各両側には、グラハイト複合パッキング端リング24を設ける。
図面に示すように、このパッキングの一端又は頂端には、2個の複合パッキング端リング24を設け、このパッキングの他端又は底端には1個の複合パッキング端リング24を設ける。このグラハイト複合パッキング端リング24は、米国ペンシルバニア州、オークモントのアルゴパッキングコンパニー社から入手でき、上述のユニオンカーバイトコーポレイション社の米国特許第4826181号に開示された方法で製造することができる。
【0024】複合パッキング端リング24は、可撓性グラハイトリング22より若干硬い材料から成り、弁軸14の周りの若干軟らかい可撓性グラハイト材料がはみ出るのを防止する押出し防止部材として作用する。このように、複合リング24は可撓性グラハイトリング22より僅かに硬いから、複合リング24は、作動中の摺動弁軸を擦る傾向があり、可撓性グラハイト材料が摺動弁軸の方に移るのを防止する。
【0025】このパッキングの両端に通常のカーボンブッシュ26を設ける。このカーボンブッシュ26は複合リング24より若干硬いから、押出し防止リングとして作用し、更に弁軸14をこのパッキン箱内の中心に維持して、複合リング24と可撓性グラハイトリング22内の一層軟らかいパッキング材料の変形と破壊とを防止する。図面の下部に示すように、このパッキングの底の一端に、若干大きいカーボンブッシュスペーサリング28を取付け、このパッキング箱内の空間の残りを埋めるとともに、摺動弁軸14のための支えになるようにする。」
(エ)「【0026】約0.381mm(約0.015インチ)の複数個のPTFE円板を設ける。本発明の好適な実施例では、5個のPTFE円板を使用する。図面に示すように、各グラハイトリング22の間及びこのパッキングシステムの頂部のブッシュ26とグラハイト複合パッキングリング24との間に、それぞれのPTFE円板を挿入する。PTFE円板は弁軸に向け内方に部分的に押し出ようとするから、PTFE材料はこのパッキング内に摺動しようとする弁軸を潤滑する。従って、PTFE円板は、このパッキングシステム内の潤滑剤として役立つとともに、シール部材としてグラハイトパッキングリングのシール機能を助ける。」
記載事項(エ)を併せてみれば、図2から以下の事項が看取できる。
(オ)パッキングシステムの頂部のカーボンブッシュ26とグラハイト複合パッキングリング24との間にはPTFE円板30が挿入される一方、頂部とは反対側のグラハイト複合パッキング端リング24とカーボンブッシュ26との間にはPTFE円板30が挿入されない。
そして、記載事項(ア)及び(オ)からみて、引用例1には、グラハイト複合パッキング端リング24とカーボンブッシュ26との間のPTFE円板リングを設けるものと設けないものの双方が開示されているといえるから、記載事項(ウ)並びに図1及び2の記載も併せて考慮すれば、引用例1には以下の事項も開示されている
(カ)パッキング組立体の両端に設けられたカーボンブッシュ26は、可撓性グラハイトリング22の各両側に設けられたグラハイト複合パッキング端リング24に隣接している。
(1-2)そうすると、これらの事項からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「弁ボンネット12を有する弁本体を具え、
弁ボンネット12内のパッキング孔によって形成したパッキング箱内にパッキング組立体を収容し、
パッキング組立体は、1対の可撓性グラハイトリング22を有し、
可撓性グラハイトリング22の各両側には、グラハイト複合パッキング端リング24を設け、
パッキング組立体の両端にカーボンブッシュ26を設け、カーボンブッシュ26は、可撓性グラハイトリング22の各両側に設けられたグラハイト複合パッキング端リング24に隣接しており、
摺動弁軸14を弁ボンネット12に貫通し、
複合パッキング端リング24は、可撓性グラハイトリング22より若干硬い材料から成り、可撓性グラハイト材料が摺動弁軸の方に移るのを防止し、
カーボンブッシュ26は、複合リング24より若干硬いから、弁軸14をこのパッキン箱内の中心に維持する、
流体弁。」
(2)引用例2
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-232014号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(キ)「【0003】
シールリップ部材の回転軸との摺接部は、発熱、磨耗により耐久性が低下し易い。
本発明は、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングの回転軸貫通部を密封する軸封装置とを備え、軸封装置は回転軸に摺接するシールリップ部材を有する圧縮機であって、シールリップ部材の回転軸との摺接部の、発熱、磨耗による耐久性低下が抑制された圧縮機を提供することを目的とする。」
(ク)「【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングの回転軸貫通部を密封する軸封装置とを備え、軸封装置は回転軸に摺接するフッ素樹脂製のシールリップ部材を有し、回転軸のシールリップ部材との摺接部がフッ素樹脂で被覆されていることを特徴とする圧縮機を提供する。
本発明に係る圧縮機においては、回転軸に摺接するシールリップ部材がフッ素樹脂製であり、回転軸のシールリップ部材との摺接部がフッ素樹脂で被覆されているので、シールリップ部材の回転軸との摺接部の摩擦が顕著に低減し、該部の発熱、磨耗が顕著に抑制され、軸封装置の耐久性低下が顕著に抑制される。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、フッ素樹脂被膜の下地粗さはRa0.2?6.3である。
フッ素樹脂被膜の下地粗さが過度に小さいと、フッ素樹脂被膜が回転軸表面に定着せず、前記表面から剥離し易くなる。他方フッ素樹脂被膜の下地粗さが過度に大きいと、下地の凸部ではフッ素樹脂被膜の膜厚が小さく、下地の凹部ではフッ素樹脂被膜の膜厚が大きくなって、膜厚分布が不均一になる。この結果、膜厚の小さな部位の磨耗による早期消滅や、膜厚の大きな部位の被膜表面部分の剥離等の不都合な事態の発生を招く。フッ素樹脂被膜の下地粗さをRa0.2?6.3に調整することにより、フッ素樹脂被膜の回転軸表面からの剥離を抑制しつつ、膜厚分布の均一なフッ素樹脂被膜を形成することができる。」
(ケ)「【0009】
本発明においては、回転軸と、回転軸により駆動される圧縮機構と、回転軸と圧縮機構とを収容するハウジングと、ハウジングの回転軸貫通部を密封する軸封装置とを備え、軸封装置は回転軸に摺接するフッ素樹脂製のシールリップ部材を有し、回転軸のシールリップ部材との摺接部がグラファイトで被覆されている圧縮機を提供する。
本発明に係る圧縮機においては、回転軸に摺接するシールリップ部材がフッ素樹脂製であり、回転軸のシールリップ部材との摺接部がグラファイトで被覆されているので、シールリップ部材の回転軸との摺接部の摩擦が顕著に低減し、該部の発熱、磨耗が顕著に抑制され、軸封装置の耐久性低下が顕著に抑制される。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、グラファイト被膜の下地粗さはRa0.2?8.0である。
グラファイト被膜の下地粗さをRa0.2?8.0とすることにより、グラファイト被膜の回転軸表面からの剥離を抑制しつつ、膜厚分布の均一なグラファイト被膜を形成することができる。」
(コ)「【0015】
フロントハウジング18の回転軸10貫通部を密封する軸封装置19が配設されている。
図2に示すように、軸封装置19は、クランク室17に近接する高圧側に配設され、内周角部が回転軸10外周面に接触するゴム弾性体製の第1シールリップ部材19aと、第1シールリップ部材19aよりも、クランク室17から離隔する低圧側に配設され、内周縁が高圧側へ湾曲して回転軸10外周面に接触するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の第2シールリップ部材19bと、シールリップ部材19a、19bを保持固定する保持金具19c、19d、19e、19fとを備えている。
回転軸10周表面の、軸封装置19に対峙する部位が、シールリップ部材19a、19bとの摺接部を含めて所定長さ領域Lに亙って、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で被覆されている。
フッ素樹脂被膜の下地粗さ、即ちフッ素樹脂被膜に接する回転軸10周表面の粗さは、Ra0.2?6.3に調整されている。
フッ素樹脂被膜の膜厚は、2.0?50.0μmに調整されている。
フッ素樹脂被膜の表面粗さは、Ra0.01?2.0に調整されている。
・・・(中略)・・・
【0019】
可変容量型斜板式圧縮機Aにおいては、回転軸10周表面の軸封装置19のシールリップ部材19a、19bとの摺接部が、固体潤滑剤であるフッ素樹脂で被覆されることにより、回転軸10周表面と軸封装置19のシールリップ部材19a、19bとの摺接部の摩擦が低減し、該部の発熱、磨耗が抑制され、該部の耐久性低下が抑制されている。
シールリップ部材19bがフッ素樹脂製であり、回転軸10周表面のシールリップ部材19bとの摺接部がフッ素樹脂で被覆されることにより、回転軸10周表面とシールリップ部材19bとの摺接部の摩擦が顕著に低減し、該部の発熱、磨耗が顕著に抑制され、軸封装置の耐久性低下が顕著に抑制されている。
フッ素樹脂被膜の下地粗さが過度に小さいと、フッ素樹脂被膜が回転軸10表面に定着せず、前記表面から剥離し易くなる。他方フッ素樹脂被膜の下地粗さが過度に大きいと、下地の凸部ではフッ素樹脂被膜の膜厚が小さく、下地の凹部ではフッ素樹脂被膜の膜厚が大きくなって、膜厚分布が不均一になる。この結果、膜厚の小さな部位の磨耗による早期消滅や、膜厚の大きな部位の被膜表面部分の剥離等の不都合な事態の発生を招く。フッ素樹脂被膜の下地粗さがRa0.2?6.3に調整されることにより、フッ素樹脂被膜の回転軸10表面からの剥離が抑制されつつ、膜厚分布の均一なフッ素樹脂被膜が形成されている。
フッ素樹脂被膜の膜厚は、過少であると磨耗による早期消滅の可能性を生じ、過大であると表面部分の剥離の可能性を生ずる。フッ素樹脂被膜の膜厚が2.0?50.0μmに調整されることにより、上記の不都合な事態の発生が防止されている。
フッ素樹脂被膜の表面粗さが過大であると表面部分が剥離し易くなる。従ってフッ素樹脂被膜の表面粗さを小さくするのが望ましいが、過度に微小化することは、表面仕上げ加工の工数増加を招く。フッ素樹脂被膜の表面粗さがRa0.01?2.0に調整されることにより、表面仕上加工の工数増加を招かない範囲で、被膜表面の剥離が防止されている。」
(サ)「【0020】
回転軸10周表面の、軸封装置19に対峙する部位を、シールリップ部材19a、19bとの摺接部を含めて所定長さ領域Lに亙って、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のようなグラファイト(C-C)で被覆しても良い。回転軸10周表面を固体潤滑剤であるグラファイトで被覆することにより、回転軸10周表面と軸封装置19のシールリップ部材19a、19bとの摺接部の摩擦が低減し、該部の発熱、磨耗が抑制され、該部の耐久性低下が抑制される。
特にフッ素樹脂製のシールリップ部材19bとグラファイトで被覆された回転軸10周表面との摺接部の摩擦が顕著に低減し、該部の発熱、磨耗が顕著に抑制され、軸封装置の耐久性低下が顕著に抑制される。
グラファイト被膜の下地粗さをRa0.2?8.0とすることにより、グラファイト被膜の回転軸10周表面からの剥離を抑制しつつ、膜厚分布の均一なグラファイト被膜を形成することができる。
グラファイトの膜厚は、過少であると磨耗による早期消滅の可能性を生じ、過大であると表面部分の剥離の可能性を生ずる。従って、グラファイト被膜の膜厚を0.1?5.0μmにするのが好ましい。」
(3)引用例3
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-177772号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(シ)「【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、ポンプを構成する部材の少なくとも一つの摺動面にダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜を形成したものである。
・・・(中略)・・・
【0017】
【作用】本発明によれば、ポンプを構成する部材の摺動面が、高硬度、自己潤滑性、環境安定性の優れたダイヤモンド膜または非晶質硬質炭素膜からなるため、他部材との間の摺動性を高くできる。そのため、摺動時の摩擦抵抗を小さくできるとともに、摺動部材自体、及び摺動相手部材の摩耗量を少なくできる。」
(ス)「【実施例】以下本発明をベーンポンプを例にして説明する。
【0020】ベーンポンプの構造を図1に示すように、ハウジング1のシリンダー1a内周面に円筒状をしたロータ2の外周面2aを接触させて配置し、またハウジング1に備えた溝1bに弾性材4を介在させてベーン3を配置し、このベーン3の先端はロータ2の外周面2aに圧接するようになっている。さらに、上記ロータ2の外周面2aにはダイヤモンド膜または非晶質硬質炭素膜からなる被膜2bを備えている。」
(セ)「【0027】次に、被膜2bを成すダイヤモンド膜で形成する場合について詳述する。
【0028】ここで、ダイヤモンド膜は、ビッカース硬度が60?110GPaと高硬度であるため、極めて耐摩耗性に優れたものである。
【0029】被膜2をダイヤモンド膜で形成する場合は、母材であるロータ2を、表1に示すようにビッカース硬度10GPa以上のアルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等のセラミックスで形成することが好ましい。また、これらのセラミックスの中でも炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムを用いれば熱膨張係数がダイヤモンドに近いため密着強度にも優れており、この点からは窒化珪素が最適である。
・・・(中略)・・・
【0031】そして、これらのセラミックスの表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)を0.03?0.6μmとする。これは表面粗さ(Ra)が0.03μm未満では被膜2bの密着力が低くなり、一方0.6μmを超えると摺動相手材の摩耗を促進してしまうためである。」
(ソ)「【0033】一方被膜2bを非晶質硬質炭素膜で形成する場合について詳述する。
【0034】ここで、非晶質硬質炭素膜とは、合成疑似ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンドライクカーボン、DLC、i-カーボン等とも呼ばれており、元素で言えばダイヤモンド等と共に炭素(C)として包括され、比重的には黒鉛や無定形炭素に近く、硬度等の物性的にはダイヤモンドに近似しているという特徴と持つものである。
・・・(中略)・・・
【0037】また、被膜2bを非晶質硬質炭素膜で形成する場合、母材となるロータ2としては、ビッカース硬度12GPa以上のアルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスで形成することが好ましい。これらのセラミックスはダイヤモンドと熱膨張係数が近いため密着強度にも優れている。
【0038】そして、これらのセラミックスの表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)を0.05?0.6μmとする。これは表面粗さ(Ra)が0.05μm未満では被膜2bの密着力が低くなり、一方0.6μmを超えると摺動相手材の摩耗を促進してしまうためである。」
(タ)「【0041】さらに、図3に示すプランジャーポンプは、シリンダー31内でシール材33を介してプランジャー32を往復動させるものであるが、上記プランジャー32の表面にダイヤモンドまたは非晶質硬質炭素膜からなる被膜32aを形成してある。」
(4)引用例4
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平3-72481号(実開平5-19339号)のCD-ROM(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(チ)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
テフロン系プラスチック材の特徴はプラスチック間の方が金属面間より摩擦が小さくなる点であり、テフロンが相手表面に移動すれば摩擦特性は良くなる。
一方、往復動軸1のコーティング材は高硬度でありながら表面粗度を小さくすることの他、次の2つの設計要点がある。
一つは熱伝導率が大きく、線膨張係数は小さくし局部的な摩擦熱による変形を小さくすること。もう一つはテフロン材を移着し易くすることである。
前者の代表的材料はWC(タングステンカーバイト)材で後者はCr_(2)O_(3)(酸化クロム)材である。」
(ツ)「【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は前記従来の課題を解決したもので、テフロンを主成分としたプラスチック系材料より成る部材と面圧を保持しながら互いに摺動する部材の表面に、熱伝導率が高く、線膨張係数の小さい材質をコーティング施工した後、コーティング材表面にピットを加工した摺動材である。
【0009】
即ち、プラスチック系材料より成る部材の摺動安定性を保ち、摩耗も小さくする摺動材を提供しようとするものである。」
(テ)「【0010】
【実施例】
本考案の一実施例を図1に示す。
図1は図4と同様往復動ポンプ軸封装置の縦断面である。ケーシング6内で機内Xの流体はグランドパッキン2と往復動軸1の摺動面Sにボルト5と抑え金具3およびバネ4で面圧を与え、機外Yへの流体のリークを防いでいる。
【0011】
材質はグランドパッキン2をテフロンを主成分としたプラスチック系材料より成る部材とし、グランドパッキン2と面圧を保持しながら互に摺動する往復動軸1の表面に熱伝導率が高く、線膨張係数の小さいWC材をコーティングした。
WCコーティング材表面は図2に示すように、ピット7を成形した(単位はmm)。
その形状は図3に示す実測したCr_(2)O_(3)の表面状況を模擬させたものである。
【0012】
即ち、精密仕上げした摺動表面に表面粗度が変化しない範囲でピットを形成させ、この形状がCr_(2)O_(3)コーティング面仕上げ後に発生するピットと同形状になるよう加工する。
ピットの形状は精密仕上げしたCr_(2)O_(3)コーティング面に発生する最大深さが5μm、孔径が最大20μmで、全表面に0.1?0.3mmピッチで加工する。
なお、摺動表面の加工は一般的にはシヨットピーニングやブラスト処理等がある。
【0013】
本実施例の作用を説明すれば、コーティング材がWC系のものであれば材質的に熱伝導率が大きく、線膨張係数が小さいため、摺動材として特性が良いことに加え、テフロンの移着性も向上するため、低摩擦で耐焼付性に優れ、少ない摩耗量で摺動機能を果すべく作用する。
【0014】
【考案の効果】
本考案は前記のように構成されているので、グランドパッキンのテフロン材が摺動材である往復動軸に移着し易く、また、往復動軸が摺動材としての機械的特性の優れた材料であるため、万一パッキンの過大締付けが生じても、コーティング層の破損に至らない。
すなわち、WCコーティングとCr_(2)O_(3)コーティング材の摺動材の長所のみ取り入れた摺動材を実現できる。
このためパッキンを低摩耗とし、シール機能を安定させ、長寿命で増締間隔も長く、省力化も図れる摺動材が得られる。」

4.対比・判断

(1)対比
本願発明と引用発明を比較すると、引用発明の「弁ボンネット12」、「可撓性グラハイトリング22」、「グラハイト複合パッキング端リング24」、「カーボンブッシュ26」、「パッキング組立体」及び「摺動弁軸14」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「ボンネット」、「グラファイトパッキンリング」、「複合パッキンリング」、「カーボンブッシング」、「弁パッキン」及び「弁ステム又は弁シャフト」に相当する。
引用発明のグラハイト複合パッキング端リング24は、可撓性グラハイトリング22の各両側に設けられているから、該グラハイト複合パッキング端リング24が一対設けられていることは、明らかである。同様に、カーボンブッシュ26は、パッキング組立体の両端に設けられているから、一対設けられていることも明らかである。そうすると、引用発明の「弁ボンネット12を有する弁本体を具え、弁ボンネット12内のパッキング孔によって形成したパッキング箱内にパッキング組立体を収容し、パッキング組立体は、1対の可撓性グラハイトリング22を有し、可撓性グラハイトリング22の各両側には、グラハイト複合パッキング端リング24を設け、パッキング組立体の両端にカーボンブッシュ26を設け、カーボンブッシュ26は、可撓性グラハイトリング22の各両側に設けられたグラハイト複合パッキング端リング24に隣接して」いることは、本願発明の「前記流体弁のボンネット内に配置されたグラファイトパッキンリングと、該グラファイトパッキンリングの両側に位置付けられた一対の複合パッキンリングと、該複合パッキンリングの各々に隣接して位置付けられた一対のカーボンブッシングとを有する弁パッキン」に相当する。
引用発明は、摺動弁軸14を弁ボンネット12に貫通しているから、摺動弁軸14が弁ボンネット12内に配置された表面を有することは明らかである。そうすると、引用発明の「摺動弁軸14を弁ボンネット12に貫通」していることは、本願発明の「前記ボンネット内に配置された表面を有」する「弁ステムまたは弁シャフト」に相当する。
そして、引用発明の「複合パッキング端リング24は、可撓性グラハイトリング22より若干硬い材料から成り、可撓性グラハイト材料が摺動弁軸の方に移るのを防止」すること及び「カーボンブッシュ26は、複合リング24より若干硬いから、弁軸14をこのパッキン箱内の中心に維持する」ことは、それぞれ、本願発明の「前記複合パッキンリングは、前記グラファイトパッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁ステムまたは弁シャフトへの前記グラファイトパッキンリングの材料移りを阻止」すること及び「前記カーボンブッシングは、前記複合パッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁パッキン内で前記弁ステムまたは弁シャフトを中心に維持する」ことに相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
【一致点】
流体弁であって、
前記流体弁のボンネット内に配置されたグラファイトパッキンリングと、該グラファイトパッキンリングの両側に位置付けられた一対の複合パッキンリングと、該複合パッキンリングの各々に隣接して位置付けられた一対のカーボンブッシングとを有する弁パッキンと、
前記ボンネット内に配置された表面を有する弁ステムまたは弁シャフトと、
前記複合パッキンリングは、前記グラファイトパッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁ステムまたは弁シャフトへの前記グラファイトパッキンリングの材料移りを阻止し、
前記カーボンブッシングは、前記複合パッキンリングの硬度よりも高い硬度を有して、前記弁パッキン内で前記弁ステムまたは弁シャフトを中心に維持する、流体弁。
【相違点】
本願発明は、弁ステム又は弁シャフトのボンネット内に配置された表面が凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを含み、該窪みが調整された寸法、形状および/またはサイズを有し、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記窪み内に配置されて前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面に保持された潤滑材料であって、前記流体弁の動作中、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面が前記潤滑材料を前記グラファイトパッキンリングに移して前記グラファイトパッキンリングに接触させる、潤滑材料を備えるのに対し、
引用発明は、摺動弁軸14の弁ボンネット12内に配置された表面がくぼみを有するか否か、また該表面が潤滑材料を保持しているか否か特定していない点。
(2)判断
前記相違点について検討する。
シールに摺接する部材の表面に凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを形成し、当該窪みに潤滑材料を保持させることにより、シールと該シールに摺接する部材との間の摩擦特性を向上させることは、当審拒絶理由においても指摘したとおり、例えば引用例2?4に記載されているように周知の技術的事項である。さらに、該窪みの寸法、形状/またはサイズを潤滑材料の保持性能に鑑みて調整することもまた、例えば引用例2?4に記載されているように周知の技術的事項である。
引用発明において、複合パッキンリング(グラハイト複合パッキング端リング24)が弁ステムまたは弁シャフト(摺動弁軸14)へのグラファイトパッキンリング(可撓性グラハイトリング22)の材料移りを阻止するために設けられていることからみて、引用発明は、グラファイトパッキンリングの摩耗低減という課題を有している。そうすると、引用発明に前記周知の技術的事項を適用し、引用発明において、弁ステム又は弁シャフトのボンネット内に配置された表面が凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを含み、該窪みが調整された寸法、形状および/またはサイズを有し、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記窪み内に配置されて前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面に保持された潤滑材料を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、一対の部材を互いに摺接させた場合、部材の表面は摩耗し、一方の部材の表面から他方の部材の表面にまた他方の部材の表面から一方の部材の表面に材料が移動することとなる。そうすると、引用発明に前記周知の技術的事項を適用し、弁ステム又は弁シャフトのボンネット内に配置された表面が凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを含み、該窪みが調整された寸法、形状および/またはサイズを有し、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記窪み内に配置されて前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面に保持された潤滑材料を備えるようにしたものにおいても、前記弁ステムまたは弁シャフトの前記窪み内に配置されて前記弁ステムまたは弁シャフトの前記表面に保持された潤滑材料の一部は、該材料と摺接するグラファイトパッキンリングに移動し該グラファイトパッキンリングに接触することとなる。
したがって、引用発明において相違点に係る本願発明を特定する事項のようにすることは、前記周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、本願発明が奏する効果に、引用発明及び前記周知の技術的事項が奏する作用効果に基いて当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせない。
よって、本願発明は、引用発明及び前記周知の技術的事項に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、意見書において、「(3)本願発明
補正後の請求項1から明らかなように、本願発明は、流体弁の弁ステム又は弁シャフトの表面に凹部や空洞及び/又はポケットからなる複数の窪みを含み、該窪みが調整された寸法、形状及/又はサイズを有し、前記窪みが潤滑材料を保持することに特徴付けられる。
・・・(中略)・・・
(4)本願発明と引用文献との対比
引用文献1?4(当審注:それぞれ、本審決における引用例1?4)の何れも、上述した本願発明の特徴を開示又は示唆しておらず、それ故、引用文献1に引用文献2?4の何れを組み合わせたとしても本願発明の特徴を開示又は示唆するものとはならない。
・・・(中略)・・・
引用文献2に関し、引用文献2はグラファイトで覆われた回転軸10を開示するのみで、本願発明の前記表面を有する回転軸10を開示又は示唆するものでもない。
引用文献3に関し、引用文献3は、ダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜からなる被膜2bを有するロータ2を開示又は示唆するのみで、被膜2bはロータ2の粗い外周面を覆っている。しかしながら、引用文献3は、ロータ2の外周面が本願発明のような前記表面を有することを開示又は示唆するものでもない。
引用文献4に関し、引用文献4は、本願発明のような前記表面を有する往復動軸1を開示又は示唆するものでもない。むしろ、引用文献4は、WCの摺動材で被覆された往復動軸1と、該往復動軸1ではなく摺動材に配置されたピット7を開示する。引用文献4の場合、本願発明のようにピット7が往復動軸1に形成され、ピット7内に摺動材が配置されるのではなく、引用文献4のピット7は、往復動軸1に摺動材が配置された後、該摺動材7に形成されている。」旨主張している。
引用例2には、審判請求人が主張するとおり、グラファイトで覆われた回転軸10が開示されている。グラファイトが被覆される回転軸10周表面はRa0.2?8.0の表面粗さとされているから(記載事項(ケ)参照)、該表面が複数の窪みを含み、かつ該窪み内にグラファイトが配置されていることは明らかである。さらに、回転軸10周表面の表面粗さの大きさはグラファイト被膜の剥離を抑制するために選定されているから、回転軸10周表面が含む前記窪みは調整された寸法、形状および/またはサイズを有しているといえる。引用例2に同じく開示されている、フッ素樹脂で覆われた回転軸10についても同様である(記載事項(ク)参照)。
引用例3には、審判請求人が主張するとおり、ダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜からなる被膜2bを有するロータ2が開示又は示唆されている。ダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜が形成されるロータ2の外周面2aはRa0.03?0.6μm又は0.05?0.6μmの表面粗さとされているから(記載事項(シ),(ス)参照)、該表面が複数の窪みを含み、かつ該窪み内に又は非晶質炭素が配置されていることは明らかである。さらに、ロータ2の外周面2aの表面粗さの大きさはダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜の密着力等を考慮して選定されているから、ロータ2の外周面が含む前記窪みは調整された寸法、形状および/またはサイズを有しているといえる。さらに、引用例3には、シール材33に対して摺動するプランジャ32の表面にダイヤモンド膜又は非晶質硬質炭素膜からなる被膜を備えることも開示されている(記載事項(セ)参照)。
引用例4に、往復動軸1の表面にWCのコーティング材を配置し、該コーティング材にピット7を形成するものが開示されていることは、審判請求人が主張するとおりである。しかしながら、引用例4に開示された技術は、最終的にコーティング材の表面がグランドパッキン2に対する往復動軸1の摺動面を構成するのであり、該コーティング材の表面にグランドパッキン2の主成分であるテフロンが移着する。そして、ピット7は、テフロンの移着性を向上させるために形成されているから、その形状がテフロンの移着性を考慮して選定されていることは明らかであって、調整された寸法、形状および/またはサイズを有しているといえる。
そして、引用例2に開示された回転軸10、引用例3に開示されたプランジャ32及び引用例4に開示された往復動軸1は、いずれもシールに対して摺接する部材であるから、引用例2?4には、シールに摺接する部材の表面に凹部や空洞および/またはポケットからなる複数の窪みを形成し、該窪みが調整された寸法、形状/またはサイズを有し、当該窪みに潤滑材料を保持させることにより、シールと該シールに摺接する部材との間の摩擦特性を向上させる技術が開示されているといえる。そして、当該技術が周知の技術的事項であって、当該技術を引用発明に適用することが当業者にとって容易であることは、先に検討したとおりである。
以上のとおりであるから、審判請求人の前記主張は、採用することができない。

5.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-01 
結審通知日 2017-05-10 
審決日 2017-05-25 
出願番号 特願2013-510124(P2013-510124)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 達朗関 義彦  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 遠藤 尊志
久保 竜一
発明の名称 調整潤滑表面を有する弁ステム  
代理人 岡島 伸行  

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