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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1333111
審判番号 不服2016-13332  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-06 
確定日 2017-10-05 
事件の表示 特願2012-169464号「食品品質保持剤用粉末組成物、並びに食品品質保持剤及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開、特開2014- 27889号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月31日の出願であって、平成27年12月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成28年2月9日付けで手続補正がなされたが、同年6月16日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は、同月21日に請求人に送達された。これに対して同年9月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年9月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月6日にされた手続補正(以下、単に「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
鉄粉と、エタノールをシリカに担持させた粉体と、塩類と、水と、アルデヒド担持体とを含み、
前記鉄粉に対する前記エタノールの質量比率が、20質量%以下であり、
前記鉄粉に対する前記水の質量比率が、25質量%以下であり、
前記エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量が、8質量%であり、
安息角が、35°?50°であることを特徴とする食品品質保持剤用粉末組成物。」

2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「エタノールをシリカに担持させた粉体」について、「前記エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量が、8質量%であり、」と限定するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、単に「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1 に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された文献である、特開2011-10573号公報(平成23年1月20日出願公開。以下、単に「引用文献1」という。)には、次の記載がある。

A「【請求項1】少なくとも、鉄粉、酸化促進剤、水、エタノール蒸散体及びエチレン尿素を配合してなる食品保存剤であって、前記水が前記鉄粉の質量の5.5質量%以上15質量%以下の質量を有する食品保存剤。」

B「【請求項4】前記水に前記エチレン尿素を溶解させてなるエチレン尿素水溶液が、前記担持体に担持されて配合されている、請求項2記載の食品保存剤。」

C「【0001】本発明は食品保存剤に関する。更に詳しくは、酸素を吸収し、且つ食品に適した濃度のエタノールを蒸散する食品保存剤およびその包装体に関するものである。」

D「【0011】本発明の目的は、従来技術における上記の課題を解決し、実用上充分なアルデヒド吸収能力及び酸素吸収能力を具備し、かつ保存する食品に適したエタノールを蒸散させられる食品保存剤およびその包装体を提供することにある。」

E「【0019】本発明の食品保存剤は、その成分が、鉄粉、酸化促進剤、水、エタノール蒸散体及びエチレン尿素を必須成分とする食品保存剤である。また、本発明の食品保存剤包装体は、該食品保存剤を通気性包装材料で収容した食品保存剤包装体である。」

F「【0022】本発明の食品保存剤に配合される酸化促進剤とは、鉄粉の酸化を促進する作用を有する水、エタノール、エチレン尿素及び担体以外の物質を意味し、ハロゲン化金属塩のような電解質が例示できる。・・・」

G「【0023】電解質は粉末または粒状のものを用い、鉄粉と混合して配合しても良いが、電解質の水溶液を用いて鉄粉表面に電解質を分散させた後に、水分を除去した被膜鉄粉(コーティング鉄粉)として使用することが好ましい。電解質を鉄粉と混合して使用する場合は、鉄粉に対して0.1?10質量%の範囲で配合することが好ましいが、被膜鉄粉とすることによってその配合量を減らすことができる。・・・」

H「【0025】本発明の食品保存剤には水が配合されるが、その質量は、鉄粉の質量の5.5質量%以上、15.0質量%以下とすることが好ましく、6.0質量%以上12.0質量%以下とすることがより好ましい。水の質量が鉄粉の質量の5.5質量%未満となると、脱酸素時間が遅延するため好ましくなく、15.0質量%を上回ると、組成中に含まれる水分量が多くなるため、それに伴いエタノール保有量が減少するため好ましくない。」

I「【0026】本発明の食品保存剤に配合されるエタノール蒸散体とは、エタノールを担体に担持させてなる担持体を意味する。エタノールを担持する担体は特に制限無く使用することができるが、粒状物である担体が好ましく用いられる。具体的には合成シリカ、クレイ、ゼオライト、珪藻土、活性炭等の粉末または粒状物が挙げられ、中でも合成シリカや珪藻土が特に好ましい。また、担体は必要に応じて一種または二種以上の併用で用いることができる。」

J「【0029】配合するエタノールの質量は、食品保存剤の質量の0.5質量%以上60質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以上50質量%以下とすることがより好ましい。配合するエタノールの質量が、食品保存剤の質量の0.5質量%を下回ると、エタノール発生能力が不充分となるため好ましくなく、60質量%を上回ると、副生成物として発生するアセトアルデヒドが過剰に発生するため、好ましくない。」

K「【0030】エタノール蒸散体に担持されるエタノールの担持量に制限はないが、担体の単位質量あたり0.30g/g以上、2.00g/g以下であることが好ましく、0.40g/g以上、1.50g/g以下とすることがより好ましい。エタノールの担持量が、0.30g/gを下回ると、担持体あたりのエタノール発生能力が不充分となり、これを補うために多量のエタノール蒸散体を配合する必要が生じるため好ましくなく、2.00g/gを上回ると、エタノール蒸散体の流動性を確保することが困難となるため、好ましくない。」

L「【0032】本発明の食品保存剤においては、エチレン尿素(2-イミダゾリジノン)を配合して、アルデヒドの発生を抑制する。配合するエチレン尿素の質量は、食品保存剤の質量の0.05質量%以上15質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上12質量%以下とすることがより好ましい。エチレン尿素の配合量が、0.05質量%を下回るとアセトアルデヒド吸収能力が不充分となるため好ましくなく、15質量%を上回ると、組成中に含まれる水分量を多く必要とするため、それに伴いエタノール保有量が減少するため好ましくない。」

M「【0033】また、本発明の食品保存剤には、流動性の向上、副生成物の除去等を目的として、さらにフィラーを添加しても良い。」

N「【0041】(実施例1)鉄粉100gに塩化カルシウム2g、活性炭0.5gを乳鉢で混合し酸素吸収剤Aとした。また、合成シリカ(富士シリシア化学(株)製 商品名「シリカゲル IDタイプ」)100gに99.5%エタノールを68.0g、水27.3g、エチレン尿素(東京化成工業(株)製)14.6gが溶解した水溶液を含浸させてエタノール蒸散剤B1とした。酸素吸収剤Aを0.8gとエタノール蒸散剤B1を0.6gを各々計量し、両者を混合して得られた食品保存剤Aを、4cm×4cmの有孔ポリエチレンフィルムをラミネートした紙袋に充填し、食品保存剤包装体Aとした。なお該食品保存剤Aに含まれる水の質量は、鉄粉の質量の10.0質量%相当であった。」

O「【0045】(実施例3)実施例1にて得られた酸素吸収剤Aを3.0gとエタノール蒸散剤B1を1.5gを各々計量し、両者を混合して得られた食品保存剤Cを、6cm×6cmの有孔ポリエチレンフィルムをラミネートした紙袋に充填し、食品保存剤包装体Cとした。なお該食品保存剤Cに含まれる水の質量は、鉄粉質量の6.5質量%相当であった。」

以上の摘記事項A?Oから、引用文献1には、次の発明(以下、単に「引用発明1」という。)が記載されている。
「少なくとも、鉄粉、酸化促進剤、水、エタノール蒸散体及びエチレン尿素を配合してなり、前記水が前記鉄粉の質量の5.5質量%以上15質量%以下の質量を有する食品保存剤であって、
酸化促進剤は、ハロゲン化金属塩のような電解質の粉末であり、
エタノール蒸散体は、エタノールを合成シリカの粉末に担持させた担持体であり、
エチレン尿素は、水に前記エチレン尿素を溶解させてなるエチレン尿素水溶液が前記担持体に担持されて配合されている、食品保存剤。」

イ 引用文献2
同じく原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された本願の出願日前に頒布された文献である、特開2008-264665号公報(平成20年11月6日出願公開。以下、単に「引用文献2」という。)には、次の技術事項が記載されている。

P「【0007】・・・本発明は、さらに、見掛け密度を増加させ、かつ、流動性の向上を図ることにより、より小型の袋へのより高速での自動包装を可能とする固形の脱酸素剤組成物を得ることを課題とする。」

Q「【0027】製造した粒状品100gに、滑沢剤として疎水性シリカ(商品名:アエロジルR972、日本アエロジル(株)製)を添加混合して、本発明の固形脱酸素剤組成物を得た。得られた混合品に関して、見掛け密度と安息角を測定した結果を下記表1に示した。疎水性シリカを加えることで、安息角が低下し流動性があがる。このため充填性が上がり見掛け密度が向上することがわかる。・・・」

R【0028】、【0034】ないし【0037】には、疎水性シリカを添加混合することで、安息角が35°ないし38°とした脱酸素剤組成物の試験例が記載されている。

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「合成シリカ」が本件補正発明の「シリカ」に相当し、以下同様に、「エタノールを合成シリカの粉末に担持させた担持体」が「エタノールをシリカに担持させた粉体」に、「ハロゲン化金属塩」が「塩類」に相当する。
また、引用発明1の「エチレン尿素」は、アルデヒドを吸収するものであるから本件補正発明の「アルデヒド担持体」に相当する。
さらに、引用発明1の「食品保存剤」は、鉄粉、酸化促進剤、エタノール蒸散体がいずれも粉末であることを踏まえると、本件補正発明の「食品品質保持剤用粉末組成物」に相当する。
また、引用発明1の鉄粉に対する水の質量比率は、水が前記鉄粉の質量の5.5質量%以上15質量%以下の質量を有するのであるから、本件補正発明の「25質量%以下」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「鉄粉と、エタノールをシリカに担持させた粉体と、塩類と、水と、アルデヒド担持体とを含み、
前記鉄粉に対する前記水の質量比率が、25質量%以下である、
食品品質保持剤用粉末組成物。」

(相違点1)
本件補正発明では、「前記鉄粉に対する前記エタノールの質量比率が、20質量%以下」であるのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
本件補正発明では、「前記エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量が、8質量%」であるのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

(相違点3)
本件補正発明では、「安息角が、35°?50°」であるのに対して、引用発明1では、そのような構成がない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の摘記事項N、Oから、酸素吸収剤Aにおける鉄粉の質量比率は、100g/102.5g=97.6%であり、エタノール蒸散剤B1におけるエタノールの質量比率は、68.0g/209.9g=32.4%となる。そして、引用文献1の実施例3は、酸素吸収剤Aを3.0gとエタノール蒸散剤B1を1.5g混合したものであるから、実施例3における鉄粉に対するエタノールの質量比率は、(1.5g×32.4%)/(3.0g×97.6%)=16.6%と計算できる。そして、当該数値は、相違点1の数値範囲である20質量%以下に含まれることを勘案すると、当業者が引用発明1における鉄粉に対するエタノールの質量比率を20質量%以下とする程度のことは、食品品質保持に必要なエタノール量に応じて、適宜に設定し得た程度の設計的事項というべきである。

イ 相違点2について
引用発明1において、合成シリカは、エタノールを担持する担持体であるから、食品保存剤における合成シリカの含有量(質量比率)は、所望量のエタノールを担持できる範囲で適宜設定できるものと認められる。

そして、摘記事項J、Kを参照すれば、引用発明1において、配合するエタノールの質量を食品保存剤の質量の0.5%以上60%以下、担持体におけるエタノールの担持量を担体の単位質量あたり0.30g/g以上、2.00g/g以下、とすることが好ましいとされている。そして、本件補正発明のように合成シリカの含有量を食品保存剤の質量に対して8%とした場合、合成シリカに担持されるエタノールの担持量は、食品保存剤の質量に対して2.4%?16%となるから、引用発明1におけるエタノールの好ましい質量比率に含まれている。してみると、食品保存剤における合成シリカの含有量を8%とすることは、引用発明1においても想定される範囲内といえる。
また、引用文献1の摘記事項H、J?L及び技術常識を参酌すると、引用発明1において、エタノールを合成シリカに担持させた担持体における合成シリカの食品保存剤における含有量は、所望されるエタノールの量、合成シリカによるエタノールの担持量に加えて、エチレン尿素の分量などにも応じて適宜設定可能な数値である。
そして本件補正発明が、エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量を8質量%とすることに、格別の技術上の意義は見いだせない。なお、本願明細書に記載された試験例1と試験例4は、シリカゲルの含有量が異なり、流動不良による滞留の評価も異なっているが、安息角も異なっているから、シリカの含有量を8質量%とすることの技術上の意義を示すものとはいえない。

してみると、相違点2に係る本件補正発明の構成は、当業者が引用発明1において、所望のエタノール量、シリカによるエタノールの担持量、アルデヒド担持体の配合量等に応じて適宜設定し得た設計的事項であって、容易に想到し得たものといえる。

ウ 相違点3について
引用文献2にも示されるように、流動性の向上を安息角の低下で評価できることは技術常識であるとともに、引用文献2には、組成物の流動性を増すために、組成物の安息角が35°ないし38°とした脱酸素剤組成物が例示されている。
そして、引用文献1には、流動性を向上すべき旨の記載がある(摘記事項K、M)ことから、引用発明1の食品保存剤の流動性を向上しようとする動機付けがあったいうことができる。その際、流動性の指標として安息角に着目して、その範囲を35°?50°とすることは、上記引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
してみると、相違点3に係る本件補正発明の構成は、当業者が引用発明1及び引用文献2に記載の技術事項に基いて容易に想到し得たものといえる。

エ 請求人は、平成29年2月13日付け上申書において、「本願発明の食品品質保持剤用粉末組成物は、前記必須の構成の全てを備えることにより、アルコール臭が弱く、アセトアルデヒドの生成を低減し、アルデヒド臭が食品に移ることを低減することができ、かつ、食品の水分を保つことができ、また、ホッパー内での流動不良による滞留が生じたり、包装体に高速充填したときに粉立ちが生じ、包装体のシール部に粉立ちが生じたりするという問題を低減することができます(明細書の段落〔0008〕、〔0030〕、試験例など)。・・・この点に関し、上記しましたように、本願発明の効果は、「エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量が、8質量%であり」という構成のみで得られているのではなく、上記した必須の構成の全てを備えることにより得られるものです。」(【上申の内容】1.(2)を参照。)と主張する。
しかしながら、本願明細書の【表3】を参酌すると、本件補正発明に含まれる試験例3は、全ての条件を備えていても「アルデヒド臭」が「△」評価となっている一方、本件補正発明に含まれない試験例4は、【表3】において「アルデヒド臭」も「食品の食感」も「○」評価となっており、【表2】において「流動不良による滞留」が「△」評価ではあるが、「充填による粉かみ」が「○」評価となっており、本件補正発明の全ての条件を満たしていたとしても、請求人が主張するような顕著な効果を奏するものとは認められない。

そして、相違点1?3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

カ 請求人は、平成29年2月13日付け上申書において、「なお、出願人は、上記説明により拒絶理由が解消しない場合には、以下の〔補正案〕に記載の補正を行う用意があります。以下の補正は、請求項1における「前記鉄粉に対する前記エタノールの質量比率が、20質量%以下であり、」という構成を、明細書の段落〔0018〕などに記載された事項に基づき、「前記鉄粉に対する前記エタノールの質量比率が、4質量%?18質量%であり、」と補正するものです。」とあるので、当該補正案について検討する。
上記(4)アで述べたとおり、引用文献1の実施例3における鉄粉に対するエタノールの質量比率は、16.6%であって、上記補正案の範囲内に含まれるものである。してみると、補正案を勘案しても、当該補正案に記載の発明と引用発明1とでは、相違点1?3以外の新たな相違点はない。そして、相違点1?3については、上記のとおり、当業者が容易に想到し得たものである以上、請求人の補正案を検討しても、やはり結論が変わることはない。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下に決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年9月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年2月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
鉄粉と、エタノールをシリカに担持させた粉体と、塩類と、水と、アルデヒド担持体とを含み、
前記鉄粉に対する前記エタノールの質量比率が、20質量%以下であり、
前記鉄粉に対する前記水の質量比率が、25質量%以下であり、
安息角が、35°?50°であることを特徴とする食品品質保持剤用粉末組成物。」

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記エタノールをシリカに担持させた粉体におけるシリカの食品品質保持剤用粉末組成物における含有量が、8質量%であり」なる発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-03 
結審通知日 2017-08-08 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2012-169464(P2012-169464)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 肇田中 耕一郎  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 間中 耕治
井上 哲男
発明の名称 食品品質保持剤用粉末組成物、並びに食品品質保持剤及びその製造方法  
代理人 廣田 浩一  
代理人 流 良広  
代理人 松田 奈緒子  

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