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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1333144
審判番号 不服2015-22590  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-24 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2013-514809号「フィッティングルーム用の表示及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日国際公開、WO2011/158143、平成25年7月11日国内公表、特表2013-528919号、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)5月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年6月17日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月18日に手続補正書が提出され、平成27年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年5月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。
その後、当審において、平成28年9月5日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年12月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月23日付けで拒絶理由<最後>(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1?15」という。)は、平成29年7月31日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
表示ユニット、センサシステム、制御ユニット、及び、照明システムを含む、表示及び照明装置であって:
前記センサシステムは、所定の場所で人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し;
前記照明システムは、正面光を前記人に供給する第1光源と、前記所定の場所でトップ光を前記人に供給する、第2光源とを含み;
前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、そして、前記人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし;前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、前記制御ユニットは、前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記照明システムをコントロールし、そして、
前記表示ユニットは、前記所定の場所に位置する前記人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示する、
表示及び照明装置。
【請求項2】
前記表示ユニットは鏡である、請求項1記載の表示及び照明装置。
【請求項3】
前記表示ユニットは表示デバイスを含む、請求項1記載の表示及び照明装置。
【請求項4】
前記センサシステムは、前記人を感知するカメラを含む、請求項1乃至3の何れか1つに記載の表示及び照明装置。
【請求項5】
前記表示ユニットは、所定の又はユーザ定義の遅延を有して、前記人の前記イメージを表示する、請求項3又は4に記載の表示及び照明装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは前記第1光源の光と、前記第2光源の光とを、次の群から選択される1つ又は複数の人の特徴の関数として、コントロールし、当該群は、肌の色だけでなく、しわの存在、肌の不規則性、髪の色、衣料品の色、顔の表情、前記所定の場所の範囲内での前記人の動き、前記所定の場所の範囲内での前記人の位置、前記人の身長、年齢、性別を含み、そして、前記制御ユニットは、次の群から選択される、1つ又は複数の特徴をコントロールし、当該群は、光の強度、色温度、色、彩度、色相、ビーム方向、及び、前記第1光源と前記第2光源のうちの1つ又は複数のビーム方向、ビーム角度を含む、請求項1乃至5のうち何れか1つに記載の表示及び照明装置。
【請求項7】
前記センサシステムは肌の色を測定するセンサを含む、請求項1乃至6のうち何れか1つに記載の表示及び照明装置。
【請求項8】
調整可能な光ビームを備えた第3光源を更に含み、前記制御ユニットは、更に、前記人の特徴に基づいて、前記第3光源の光をコントロールする、請求項1乃至7のうち何れか1つに記載の表示及び照明装置。
【請求項9】
表示及び照明装置を含むスペースであり、前記表示及び照明装置は、表示ユニットと、センサシステムと、制御ユニットと、照明システムとを含み:
前記センサシステムは、所定の場所で人を検知し、対応するセンサシステム信号を生成し;
前記照明システムは、正面光を前記人に供給する第1光源と、前記所定の場所でトップ光を前記人に供給する、第2光源とを含み;
前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、その人の特徴に基づいて、前記第1光源の前記光と、前記第2光源の前記光とをコントロールし;前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、前記制御ユニットは、前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記照明システムをコントロー
ルし、そして、
前記表示ユニットは、前記所定の場所に位置する前記人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示する、
スペース。
【請求項10】
前記スペースは、前記表示及び照明装置を有するフィッティングルームである、請求項9記載のスペース。
【請求項11】
前記スペースは、前記表示及び照明装置を有するホスピタリティエリアである、請求項9記載のスペース。
【請求項12】
変化する色を有する対象物を更に含み、変化する色を有する前記対象物は、前記表示ユニットに対して、前記所定の場所の下流に配置され、前記制御ユニットは、変化する色を有する前記対象物の色を前記人の特徴に基づいてコントロールし、別のデバイスは、変化する色の壁のような、変化する色を有する対象物を有する、請求項9乃至11のうち何れか1つに記載のスペース。
【請求項13】
請求項1乃至8のうち何れか1つに記載の表示及び照明装置の中に使用される、照明装置であって、当該照明装置は、センサシステム、制御ユニット、及び、照明システムを含み:
前記センサシステムは、人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し;
前記照明システムは、第1光源と第2光源とを有し;そして、
前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、前記人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし、前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、前記制御ユニットは、前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記照明システムをコントロールする、
照明装置。
【請求項14】
ポーズをとる人に与えられる光を制御ユニットによりコントロールする方法であって、該方法は:
所定の場所で前記人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成するステップと;
前記センサシステム信号から人の特徴を導き出すステップと;
前記人の特徴に基づいて、前記所定の場所で前記人に正面光を供給する第1光源の光をコントロールし、そして、前記所定の場所でトップ光を前記人に供給する、第2光源の光をコントロールするステップであって;前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記第1光源及び前記第2光源をコントロールするステップと、
所定の場所に位置する前記人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示するステップと、
を有する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、表示及び照明装置が適応され、当該表示及び照明装置は、表示ユニット、センサシステム、制御ユニット、及び、照明システムを含み:
前記センサシステムは、所定の場所で人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し;
前記照明システムは、正面光を前記人に供給する第1光源と、所定の場所でトップ光を前記人に供給する第2光源とを含み;
前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、そして、前記人の特徴に基づいて、前記第1光源の前記光と前記第2光源の前記光とをコントロールし
;そして、
前記表示ユニットは、所定の場所に位置する前記人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示する、
方法。」

第3 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)当審拒絶理由1(進歩性)
この出願の請求項1?15に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特開2005-302500号公報(以下、「刊行物1」という。)
特開2008-281239号公報(以下、「刊行物2」という。)
特開2001-275891号公報(以下、「刊行物3」という。)
特開2010-123534号公報(以下、「刊行物4」という。)
特開2010-55801号公報(以下、「刊行物5」という。)
特開2008-123859号公報(以下、「刊行物6」という。)
特開2002-207802号公報(以下、「刊行物7」という。)

なお、上記刊行物2?7は、当審拒絶理由1において、複数の周知技術の例示として用いたものであり、各周知技術毎に例示したものであるところ、後述する「当審拒絶理由についての判断」において、平成29年7月31日の手続補正を踏まえた上で示す必要があるため、便宜上、上記の順に並べたものである。

(2)当審拒絶理由2の理由1(新規事項)
平成28年12月6日にした手続補正は、以下の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
請求項1、9、13及び14に記載の「前記正面光又は前記トップ光のうちの少なくとも一方の光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光の増加」という発明特定事項、及び、「導き出された肌のトーンの明るさを増加させるように」という発明特定事項は、いずれも、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないし、これらの記載から自明な事項ともいえない。

(3)当審拒絶理由2の理由2(記載不備)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1、9、13及び14に記載の「導き出された肌のトーンの明るさを増加させるように」という発明特定事項は、構成を特定することができないから、明確でない。

2 当審拒絶理由についての判断
2-1 当審拒絶理由1(進歩性)について
(1)刊行物に記載された事項及び発明
(1-1)刊行物1について
ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、図とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が加筆した。以下、同様である。)
(1a)
「【0001】
本発明は、主に加齢に伴う視覚機能の変化を補正するための照明システムに関するものである。」
(1b)
「【0009】
さらに、本発明の彩度低下防止用照明システムには、上記スポット照明とサラウンド照明の強度および/または配光を連動させて制御する制御手段を設け、これらの設定を一度に、且つ目的に応じた適切な照明条件になるように調節することも可能である。
また、上記制御手段を、スポット照明とサラウンド照明の強度および/または配光の調節に加えて、可変色ウォールの明度の調節も連動して行うものとするとより望ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成からなる本発明の照明システムおよび照明方法を用いることにより、例えば、高齢者が若年齢者の見ている色により近い彩度の色を見ることが可能となり、高齢者が享受する色彩印象や色彩品質を向上させることができると共に、作業時における色の誤認を防止することができる。また、上記照明の強度および/または配光、並びに可変色ウォールの色を適宜調節することで、通常の照明条件と、高齢者に適した照明条件とを切り替えることができ、若年齢者から高齢者まで幅広い年齢層に対応した照明環境を提供することができる。なお、上記のような高齢者に適した照明条件下で、若年齢者が観察対象物を見た場合にも、副次的に心理効果としてより一層好ましい色彩印象が与えられ得る。」
(1c)
「【0012】
[実施例1]
本実施例は、本発明の彩度低下防止用照明システムおよび照明方法を工業製品や商品、美術品等の展示ブースに適用したものであり、図1に示すように、例えば、高さhが215cm、幅wが238cm、奥行きdが205cmの展示ブース100内に、スポット照明101、サラウンド照明102、および可変色ウォール103を設置したものである。スポット照明101としてはルーバー104付き照明器具を天井中央に配置し、観察対象物105を照明するように配光を調節した。サラウンド照明102は、ルーバーなしの照明器具を両側の側面壁107,108および観察者106に対する背面壁109を照明するように、照明側を壁面に向けて、天井の壁面付近3カ所に設置した。スポット照明101には相関色温度6700Kと3500Kの各32WHf蛍光灯を一灯ずつ設け、これらの合成で約5000Kの相関色温度を実現した。また、各サラウンド照明102にも同様に、相関色温度6700Kと3500Kの各32WHf蛍光灯を一灯ずつ設け、約5000Kの相関色温度を実現した。さらに観察対象物105の背後(観察者に対する正面壁面110)に可変色ウォール103(裏/表が白/黒のブラインド)を配置し、照明条件に連動させて裏表を反転させることにより、色の切替を行った。それ以外の3面の壁面は白色である。図2に通常照明と高齢者照明の設定条件を示す。表中の%は蛍光灯ランプセンターでの表面輝度の相対値で、100%はフル点灯時を表す(ただし、見て感じる「明るさ感」は、この%の通りではない)。」
(1d)
「【0017】
[実施例2]
本実施例は、本発明の彩度低下防止用照明システムおよび照明方法をフィッティング・ルーム(試着室)に適用したものである。
本実施例のフィッティング・ルームの模式図を図6に示す。フィッティング・ルーム600の大きさと内装、照明器具の設置位置および仕様は、上記実施例1の展示ブースと同様である。ただし、フィッティング・ルーム600では、観察対象は観察者106自身が試着している衣服となるため、スポット照明101が観察者106の衣服に当たるようにルーバー104を調節し、観察者の前面に鏡601、背面に可変色ウォール103を配置した。」
(1e)
「【0018】
上記実施例1と同様に、白内障疑似体験ゴーグルを用いて、本実施例の彩度低下防止用フィッティング・ルーム600の効果を検証した。
図7に示すように、色彩輝度計402は、床からの高さ155cm,鏡から104cm離れた位置に鏡601と対向させて設置した。さらに、その26cm下(床から119cm)の高さに、垂直方向から約20°傾けた色票401(約6cmの正方形)を同じく鏡601と対向させて配置し、鏡越しに計測を行った。測色には上記実施例1と同じ8種類の色票401を使用し、通常照明下ゴーグルなし、通常照明下ゴーグルあり、高齢者照明下ゴーグルありの3種類の条件で行った。
【0019】
図8に上記測色試験の結果を示す。上記実施例1と同様に、通常条件下で高齢者の見る色彩(図8の●)の彩度は低く、高齢者照明にすると(図8の▲)、若年齢者の見る色彩(図8の◇)の付近にまで彩度が回復していることがわかる。
【0020】
さらに、実際に観察者が上記の色彩輝度計の位置から色票を観察し、そのときに見えた色の名前を白、黒、灰、赤、青、緑、黄、桃、橙、紫、茶、紺、オリーブ、ベージュの14色の内から答える「カテゴリカル・カラーネーミング」を行った。上述の測色試験に用いた色票以外にも様々な彩度、色相、明度を持ったマンセル色票、および服地で一般に用いられる色の布地サンプルに対して、4名の観察者(26歳男性、34歳女性、53歳男性、53歳男性)が各10回ずつの判定を行った。」

イ 刊行物1に記載された発明
(ア)
摘記(1a)?(1e)を参照すると、実施例2(図6、フィッティング・ルーム600)は、「照明器具の設置位置および仕様は、上記実施例1の展示ブースと同様であ」り(摘記(1d))、また、実施例2(図6)においても、「高齢者照明にする」ために(摘記(1e))、制御手段が設けられ、スポット照明101及びサラウンド照明102の強度および配光を調節しているもの(摘記(1b))と認められる。
(イ)
フィッティング・ルーム600に配置された鏡601が、フィッティング・ルーム600に位置する観察者である人のイメージを、前記フィッティング・ルーム600の前記観察者である人に表示することは、自明な事項である。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)、並びに、摘記(1a)?(1e)及び図6の図示内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
[引用発明]
「鏡601、制御手段、及び、照明器具を含む、彩度低下防止用照明システムであって、
前記照明器具は、フィッティング・ルーム600で光を供給する、スポット照明101及びサラウンド照明102であり、
前記制御手段は、前記スポット照明101及びサラウンド照明102の強度および配光を調節して高齢者照明にし、
前記鏡601は、前記フィッティング・ルーム600に位置する人のイメージを、前記フィッティング・ルーム600の前記人に表示する、
彩度低下防止用照明システム。」

(1-2)刊行物2について
刊行物2には、図とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0040】
図2に示すように、領域2内において、エリア(1)および(2)の中央にエアコンA1が配置され、エリア(3)および(4)の中央にエアコンA2が配置され、エリア(5)および(6)の中央にエアコンA3が配置されている。各エアコンA1、A2、A3はそれぞれのエリアの天井に取り付けられている。また、エリア(1)、(2)の天井にはLED照明L1が、エリア(3)、(4)の天井にはLED照明L2が、エリア(5)、(6)の天井にはLED照明L3が、それぞれ設けられている。ここでは、各LED照明L1、L2、L3は、たとえば、それぞれ赤(R)、緑(G)および青(B)の3色からなるマルチチップの照明灯を多数配列したものが用いられている。」
(2b)
「【0058】
なお、この場合において、エリア内の設定人数を4名にした場合には、エリア(3)および(4)内の人数も設定人数より少なくなるため、法則iii)にしたがって、LED照明L2の輝度は低めに設定されるが、このとき、エリア(3)および(4)内の3人の人の各ID情報に優先順位が付けられている場合には、上記iii)の法則よりも優先して、当該優先順位にしたがって、LED照明L2の駆動制御が行われる。たとえば、優先順位が付けられているID情報が個人の年齢である場合、或る一定年齢以上の人が含まれているときには、離れている文字がよく見えるように、輝度が高めに設定される。」

(1-3)刊行物3について
刊行物3には、図とともに以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0037】ステップS06では個人認識センサー26によって個人識別が行われ、その出力に基づいて、個人個人にあった出力方式が選定される。出力方式AであるS08では第1図の照明装置10、11、12を全て駆動し、出力方式BであるS09では第1図の照明装置10、11のみを駆動する。例えば識別したトイレ使用者が高齢者の場合には足元の照明12を照らし、トイレ使用者がその他の場合には足元の照明12は照らさずに節電することが可能であり、使用者は個人に適して快適に使用することができる。さらに上記した聡明装置の出力有無のみに関わらず、照明の強度や照明の光軸などを識別した個人で設定するとさらに快適な空間とすることができる。
【0038】第5図に本発明の照明装置の出力シーケンスの1実施例を示す。照明装置を制御する制御部4はCPU出力を内臓するため、シーケンス的な動作も簡単に実施可能である。図中の出力A、B、Cはそれぞれ第1図の照明装置11、10、12の出力を表わす。」

(1-4)刊行物4について
刊行物4には、図とともに以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0001】
本発明は、室内における人の存否および顔の向きを検知し、検知結果に基づいて、タスク用照明器具およびダウン用照明器具の点灯制御を行う照明システムに関する。」
(4b)
「【0028】
顔認識センサ42は、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ等の撮像装置から構成され、人検知センサ41と一体化して設置し、人検知センサ41によって検知した人の顔や視線の向きを認識するものである。なお、この顔認識センサ42は、人検知センサ41に撮像装置を用いることにより共用が可能である。」
(4c)
「【0031】
図3における照明システムは、室内R1の天井に取り付けられ、エリアSにおける人の存否および顔の向きを検知する人検知部40と、天井に設置され、人検知部40によってエリアSに人が検知された場合に、エリアSを照明するタスク用照明のシーリングライト11と、壁面に設置され、人検知部40によって検知される顔の向きに応じて壁面と天井の一部を照明するベース用照明のブラケット21、22、スポットライト23、24、及び建築化照明としてのコーニス照明25を備えている。」


(1-5)刊行物5について
刊行物5には、図とともに以下の事項が記載されている。
(5a)
「【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御部は、少なくとも照明器具が点灯している状態において、前記画像センサにより取得した画像データを基に肌色検出を行い、肌色が検出された場合には、前記エリアに人が存在すると判断するものである。」
(5b)
「【0015】
判断部41は、人が存在すると判断されるとき、照明器具2が消灯している場合には、送信部44からPWM信号を送信して照明器具2を点灯させる。このとき、判断部41は、人が存在すると判断してから、予め設定される点灯保持時間経過するまで照明器具2を点灯させる。判断部41は、人が存在すると判断されるとき、照明器具2が点灯しているとき場合には、照明器具2を点灯させる時間を延長させるようにする。また、判断部41は、照明器具2が点灯している状態において、取得した画像データを基に肌色検出を行い、肌色が検出された場合、設置エリアに人が存在すると判断して上記同様に照明器具2の点灯時間を延長させる。」

(1-6)刊行物6について
刊行物6には、図とともに以下の事項が記載されている。
(6a)
「【0021】
ここで、面光源5の設置場所について説明する。面光源5の設置場所としては、天井(図示せず)、鏡4の上方、鏡4の両側方が考えられる。このうち、天井に設置すると人(試着者)20の鏡4から鉛直方向の照度である鉛直面照度を得にくいので、鏡4の上方に設置した場合と、鏡4の両側方に設置した場合とで比較する。図3には、同じ供給電力あたりの面光源5の設置場所による鉛直面照度を示している。図3によると、フィッティングルーム3の床面からの高さが少なくとも1.2mまでは、鏡4の両側方に面光源5を設置した場合(図3の●)のほうが、鏡4の上方に設置した場合(図3の▲)より大きな鉛直面照度を得ることができる。」

(1-7)刊行物7について
刊行物7には、図とともに以下の事項が記載されている。
(7a)
「【0058】来店した顧客18は、試着室12でアパレル製品11の試着を行う。図1では、説明の便宜上、カーテン13は開いているけれども、実際の試着は、カーテン13を閉じた試着室12内部で行う。試着状態は、試着室12を閉じるカーテン13を背景とし、照明機器14で一定の条件で照明しながら、撮影機器15で撮影し、処理機器16で記憶し、画像処理を施して、表示機器17に表示させることができる。複数回の試着を行っても、撮影環境が一定であるので、同1条件で画像として比較することができ、適切な選択を行うことができる。処理機器16で画像処理を行うことによって、実際に試着しない状態の比較なども行うことができ、店員19などは、表示機器17の画像を見ながら適切なアドバイスを顧客18に与えることができるので、アパレル製品11の販売に結びつく有効な販売支援を行うことができる。」

(2)対比・判断
(2-1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)
引用発明の「鏡601」及び「制御手段」は、それぞれ、本願発明1の「表示ユニット」及び「制御ユニット」に相当する。
(イ)
本願発明1の「照明システム」は、「少なくとも1つの光源を含む」ものであり「複数の光源を含むシステムについて言及し」ていること(本願明細書の段落【0036】)、及び、引用発明の「照明器具」は、「スポット照明101及びサラウンド照明102であ」り、これらの照明はいずれも、光源であり制御手段により調節されるものであることから、引用発明の「照明器具」は、本願発明1の「照明システム」に相当する。
(ウ)
引用発明の「彩度低下防止用照明システム」は、「鏡601」「を含む」から、本願発明1の「表示及び照明装置」に相当する。
(エ)
引用発明の「フィッティング・ルーム600」は、本願発明1の「所定の場所」に相当する。
(オ)
上記(イ)及び(エ)を踏まえると、引用発明の「前記照明器具は、フィッティング・ルーム600で光を供給する、スポット照明101及びサラウンド照明102であ」る構成と、本願発明1の「前記照明システムは、正面光を前記人に供給する第1光源と、前記所定の場所でトップ光を前記人に供給する、第2光源とを含」む構成とは、「前記照明システムは、光を供給する第1光源と、所定の場所で光を供給する、第2光源とを含」む構成の限りで共通する。
(カ)
引用発明の「高齢」は、本願発明1の「人の特徴」に相当する。
(キ)
引用発明の「光の強度及び配光を調節」することは、本願発明1の「光」「をコントロール」することに相当する。
(ク)
引用発明の「高齢者照明にし」ていることは、高齢者(または、ゴーグルを用いて高齢者のような状態となった人)を対象とするものであり(摘記(1e))、高齢すなわち人の特徴(上記(カ))に基づくものといえること、及び、上記(キ)を踏まえると、引用発明の「前記制御手段は、前記スポット照明101及びサラウンド照明102の強度および配光を調節して高齢者照明にし」ている構成と、本願発明1の「前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、そして、前記人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし」ている構成とは、「前記制御ユニットは、人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし」ている構成の限りで共通する。
(ケ)
上記(ア)及び(エ)を踏まえると、引用発明の「前記鏡601は、前記フィッティング・ルーム600に位置する人のイメージを、前記フィッティング・ルーム600の前記人に表示する」構成は、本願発明1の「前記表示ユニットは、前記所定の場所に位置する人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示する」構成に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「表示ユニット、制御ユニット、及び照明システムを含む、表示及び照明装置であって:
前記照明システムは、光を供給する第1光源と、所定の場所で光を供給する、第2光源とを含み;
前記制御ユニットは、人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし;そして、
前記表示ユニットは、前記所定の場所に位置する人のイメージを、前記所定の場所の前記人に表示する、
表示及び照明装置。」
<相違点1>
「照明システム」に関して、本願発明1は、「前記照明システムは、正面光を前記人に供給する第1光源と、前記所定の場所でトップ光を前記人に供給する、第2光源とを含」むのに対して、引用発明は、「前記照明器具は、フィッティング・ルーム600で光を供給する、スポット照明101及びサラウンド照明102であ」る点。
<相違点2>
本願発明1は、「センサシステム」「を含む」「照明装置であって」、「前記センサシステムは、所定の場所で人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し」、「前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し、そして、前記人の特徴に基づいて、前記第1光源の光と、前記第2光源の光とをコントロールし;前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、前記制御ユニットは、前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記照明システムをコントロールし」ているの対して、引用発明は、センサシステムについては特定されておらず、「前記制御手段は、前記スポット照明101及びサラウンド照明102の強度および配光を調節して高齢者照明にし」ている点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)
センサシステムを設け、センサシステムが、所定の場所で人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し、制御ユニットが、前記センサシステム信号から人の特徴(高齢)を導き出し、前記人の特徴(高齢)に基づいて、光源の光をコントロールすることは、例えば、刊行物2の段落【0058】(摘記(2b))及び図2、並びに、刊行物3の段落【0037】(摘記(3a))及び図1に示されるように、周知技術であるといえる。
(イ)
照明用のセンサとして、カメラを用いることは、例えば、刊行物4の段落【0001】、【0028】及び【0031】(摘記(4a)?(4c))に示すように、周知技術であり、また、照明用のセンサとして、画像データを基に人の特徴である肌色検出を行うセンサも、刊行物5の段落【0007】及び【0015】(摘記(5a)及び(5b))に示すように知られている。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明に上記(ア)の周知技術を適用し、引用発明において、センサシステムを設け、センサシステムが、所定の場所で人を感知し、対応するセンサシステム信号を生成し、制御ユニットが、前記センサシステム信号から人の特徴(高齢)を導き出し、前記人の特徴(高齢)に基づいて、光源の光をコントロールすることまでは、当業者にとって格別に困難ことではないといえる。
(エ)
しかしながら、上記相違点2に係る本願発明1の構成が備えている、「前記制御ユニットは、前記センサシステム信号から人の特徴を導き出し」、「前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、」「前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、前記照明システムをコントロールし」ていること(以下、「発明特定事項A」という。)は、刊行物2ないし7には記載されていないし(摘記(2a)?(7a)等参照)、示唆もされていない。
(オ)
そうすると、引用発明に、刊行物2ないし7に記載された技術事項を適用しても、発明特定事項Aを備えている上記相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。
(カ)
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び刊行物2ないし7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2-2)本願発明9及び14について
本願発明9は「スペ-ス」の発明であり、本願発明14は「方法」の発明であるが、いずれも、実質的に発明特定事項Aを含むものであるから(本願発明14の「前記第1光源及び第2光源をコントロールする」ことは、実質的には「前記照明システムをコントロールする」ことである。)、本願発明9及び14は、上記(2-1)イと同様に、引用発明及び刊行物2ないし7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2-3)本願発明2?8、10?13及び15について
本願発明2?8及び13は、本願発明1をさらに限定したものであって本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、本願発明10?12は、本願発明9をさらに限定したものであって本願発明9の発明特定事項を全て備えるものであり、本願発明15は、本願発明14をさらに限定したものであって本願発明14の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明2?8、10?13及び15は、上記(2-1)イないし上記(2-2)と同様に、引用発明及び刊行物2ないし7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)小括
以上から、本願発明1?15は、引用発明及び刊行物2ないし7に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
したがって、当審拒絶理由1は解消した。

2-2 当審拒絶理由2の理由1(新規事項)及び理由2(記載不備)について
請求項1、9、13及び14において、「前記人の特徴は前記人の肌の色を含み、」「前記正面光における赤い光又は黄色の光のうちの少なくとも一方の光を加えることにより、導き出された肌の色の表現が調整されるように、前記導き出された肌の色に基づいて、」「コントロール」すると補正されたから、明細書に記載した事項の範囲内に補正され、構成を明確に特定することができるようになり、本願発明1、9、13及び14は明確になった。
また、請求項1における上記補正に対応して、請求項6及び7において、「肌の色」と補正された。
これにより、本願発明1の発明特定事項を全て備える本願発明2?8、本願発明9の発明特定事項を全て備える本願発明10?12、及び、本願発明14の発明特定事項を全て備える本願発明15も、明細書に記載した事項の範囲内となり、明確となった。
したがって、当審拒絶理由2の理由1及び理由2は解消した。

2-3 当審拒絶理由についてのまとめ
以上から、当審拒絶理由は全て解消した。

第4 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の請求項1?15に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特開2008-123859号公報(以下、「刊行物A」という。)
特開2010-123534号公報(以下、「刊行物B」という。)
特開2008-17146号公報(以下、「刊行物C」という。)
特開2010-55801号公報(以下、「刊行物D」という。)
特開2005-302500号公報(以下、「刊行物E」という。)

2 原査定の理由についての判断
刊行物A、B,D及びE(刊行物Aは上記刊行物6であり、刊行物Bは上記刊行物4であり、刊行物Dは上記刊行物5であり、刊行物Eは上記刊行物1であり、いずれも、当審拒絶理由において引用した刊行物である。)並びに刊行物C(段落【0008】等)には、上記相違点2に係る本願発明1の構成が備えている発明特定事項Aは、記載も示唆もされておらず、第3 2 2-1(2)(2-1)?(2-3)と同様に、本願発明1?15は、刊行物AないしEに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
したがって、原査定の理由も解消した。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の理由及び当審の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-04 
出願番号 特願2013-514809(P2013-514809)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 55- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲桑▼原 恭雄山崎 晶柿崎 拓大谷 謙仁  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
出口 昌哉
発明の名称 フィッティングルーム用の表示及び照明装置  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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