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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1333167
異議申立番号 異議2016-700145  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-19 
確定日 2017-08-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5766344号発明「吸水性樹脂及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5766344号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5766344号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第5766344号(設定登録時の請求項の数は5。以下、「本件特許」という。)は、平成26年10月31日にされた特願2014-223726号(優先権主張 平成26年7月11日)の出願に係るものであって、平成27年6月26日に設定登録された。
特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年2月19日(受入日:同年同月22日)に、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当合議体において、平成28年6月28日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年8月30日(受入日:同年同月31日)に訂正請求書及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年10月17日(受入日:同年同月18日)に意見書を提出した。
当合議体において、平成28年11月8日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者は、平成29年1月12日(受入日:同年同月13日)に訂正請求書及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年2月23日(受入日:同年同月24日)に意見書を提出した。
当合議体において、平成29年3月16日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年5月19日(受入日:同年同月22日)に訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年6月29日(受入日:同年同月30日)に意見書を提出した。

なお、平成28年8月30日に提出した訂正請求書による訂正請求及び平成29年1月12日に提出した訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。



第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正による訂正の内容は以下の(1)ないし(6)のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより得られる吸水性樹脂であって、」
とあるのを、
「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり、」
に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂。」
とあるのを、
「前記吸水性樹脂は、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。」
に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に
「中位粒子径が100?600μmである請求項1に記載の吸水性樹脂。」
とあるのを、
「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり、
前記内部架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.000001?0.02モルであり、前記後架橋剤の使用量は、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00001?0.01モルであり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
前記吸水性樹脂は、中位粒子径が100?600μmであり、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸収能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、
(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」
に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1又は2に記載の吸水性樹脂に、さらにアミノカルボン酸化合物を配合してなる吸水性樹脂。」
とあるのを、
「請求項1又は2に記載の吸水性樹脂に、さらにアミノカルボン酸化合物を添加する吸水性樹脂の製造方法。」
に訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項3に記載の吸水性樹脂。」
とあるのを、
「請求項3に記載の吸水性樹脂の製造方法。」
に訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1乃至4の何れかに記載の吸水性樹脂を含む吸収体を用いてなる吸収性物品。」
とあるのを、
「請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂を含む吸収体を用いて吸収性物品を製造する、吸収性物品の製造方法。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前請求項1において、「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させ、かつ後架橋剤で後架橋する」ことのみを特定していたものを、「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり」と訂正するものであるから、「アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ」「前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり」とさらに特定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2について以下に検討する。
訂正前請求項1の記載は、「・・・吸水性樹脂。」であるから、訂正前請求項1発明の対象は、「吸水性樹脂」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前請求項1には、「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより得られる」と特定されていることから、「吸水性樹脂」に関し、その「製造方法」が記載されている。
ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。
そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前請求項1の「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより得られる」との「吸水性樹脂」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれのあるものである。
そして、訂正事項2は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項1を、「吸水性樹脂の製造方法」として、「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し」と特定する訂正後請求項1に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3について以下に検討する。
訂正事項3は、請求項2において、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、請求項1の記載を引用しないものとしつつ、「前記内部架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.000001?0.02モルであり、前記後架橋剤の使用量は、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00001?0.01モルであり」とさらに特定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、当該訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4) 訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、上記訂正事項1ないし3に係る訂正に伴って、従属する請求項間の整合性を図るためのものであるから、当該訂正事項4及び5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項4及び5は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5) 訂正事項6について
訂正事項6は、上記訂正事項1ないし5に係る訂正に伴って、従属する請求項間の整合性を図りつつ、上記訂正事項2と同様に、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項5を、「吸収性物品の製造方法」として、「請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂を含む吸収体を用いて吸収性物品を製造する」と特定する訂正後請求項5に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項6は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6) 一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か
訂正事項1ないし6は、特許請求の範囲についての訂正であるが、訂正前の請求項2ないし5は、訂正前の請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項であるから、訂正事項1ないし6は一群の請求項ごとにされている。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。



第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という。)は、平成29年5月19日(受入日:同年同月22日)に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
前記吸水性樹脂は、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、
(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下
【請求項2】
水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり、
前記内部架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.000001?0.02モルであり、前記後架橋剤の使用量は、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00001?0.01モルであり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
前記吸水性樹脂は、中位粒子径が100?600μmであり、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸収能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、
(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂に、さらにアミノカルボン酸化合物を添加する吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アミノカルボン酸化合物が、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン4酢酸、エチレンジアミン4酢酸、及びそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項3に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂を含む吸収体を用いて吸収性物品を製造する、吸収性物品の製造方法。」



第4 取消理由の概要
1 平成28年11月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由A」という。)の概要
平成28年11月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)は、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものである。
刊行物1:特開2000-26510号公報(異議申立人の証拠方法である甲第13号証。以下、「甲13文献」という。)
刊行物2:特開平11-322846号公報(異議申立人の証拠方法である甲第5号証。以下、「甲5文献」という。)

2 平成29年3月16日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由B」という。)の概要
平成29年3月16日付けで通知した取消理由は、
(1) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである、
(2) 本件特許は、明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである、
というものである。



第5 当合議体の判断
当合議体は、以下述べるように、本件特許の本件訂正発明1ないし5は取消理由Aで通知した刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、取り消すべきものではないと判断する。
また、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないし、明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもないから、取り消すべきものではないと判断する。

1 取消理由Aについて
(1) 甲13文献の記載及び甲13発明
甲13文献の実施例1(段落【0044】)及び実施例6(段落【0049】)には、吸水性樹脂を製造して得ることが具体的に記載されており、表2(段落【0059】)には得られた吸水性樹脂の物性が記載されているから、これらの記載によれば、甲13文献には、当該得られた吸水性樹脂の製造方法をもとにした以下の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されているといえる。
「アクリル酸200部、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.7部、イオン交換水516部を混合して重合溶液を作成し、この重合液を5℃に冷却して断熱重合可能な重合槽に入れた後、重合液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を0.2ppmとし、この重合液(pH=2.3)にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂製;10時間半減期温度:74℃)0.4部、0.2%過酸化水素水溶液10部、0.1%L-アスコルビン酸水溶液4部、2%V-50(和光純薬工業製アゾ化合物「2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩」;10時間半減期温度:56℃)水溶液10部を添加して混合し(アクリル酸の濃度:27%)、25分後に重合開始を示す温度上昇を確認し、2.5時間後に重合率97%となし、最高温度80℃に到達させ、更にこの温度で4時間熟成して得られた含水ゲル状重合体を小型ニーダーを用いて小片に砕断した後、50%水酸化ナトリウム水溶液160部を添加して部分中和し、カルボキシル基の72モル%をナトリウム塩とし、温度95℃の中和された含水ゲル状重合物(1)をベルト式乾燥機に乗せて150℃で30分間熱風乾燥し、粉砕して、22メッシュの金網は通過するが140メッシュの金網を通過しない部分を採取して得られた不定形破砕状の吸水性樹脂(a)100部を撹拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.12部、水4.5部、ジエチレングリコール2.5部からなる溶液を添加混合し、140℃で40分間加熱反応を行なう、
生理食塩水に対する保水量が46(g/g)であり、残存モノマー量が200ppmであり、水可溶性成分量が5.3%であり、荷重下吸収量が20g/cm^(2)で34(g/g)であり、40g/cm^(2)で29(g/g)であり、60g/cm^(2)で19(g/g)であり、平均粒径は378ミクロンであり、850?100ミクロンの粒子の含有量は98.6%である吸水性樹脂(f)の製造方法。」

(2) 甲5文献の記載及び甲5発明
また、甲5文献の実施例1(段落【0110】?【0111】)、実施例22(段落【0122】?【0123】)、実施例24(段落【0123】)及び実施例31(段落【0124】)には吸水剤(吸水性樹脂)を製造して得ることが具体的に記載されており、表3(段落【0130】)には得られた吸水剤(吸水性樹脂)の物性が記載されているから、これらの記載によれば、甲5文献には、当該得られた吸水剤(吸水性樹脂)の製造方法をもとにした以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
「ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、50モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5295g(単量体濃度37重量%)に、内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.05モル%を溶解させ窒素ガスで30分脱気後、内容積10Lでシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋をつけた反応器に単量体水溶液(3)を供給し、27℃の温度に保ちながら反応系の窒素置換を続け、次いで、羽を回転させながら、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g/mol(対単量体)と/L-アスコルビン酸0.005g/molをそれぞれ水溶液として添加し重合を開始し、ピーク温度95℃を示し、さらに攪拌しながら水溶液重合を継続し、その際生成した含水ゲル状重合体を5mm?1mm以下に細粒化し、攪拌を続け、重合が開始して40分後に含水ゲル状重合体(3)を取り出し、得られた含水ゲル状重合体(3)の細粒化物を目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、150℃で2.5時間熱風乾燥し、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、更に850μmメッシュで分級し、得られた不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(28)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部/プロピレングリコール1重量部/水3重量部/イソプロパノール3重量部からなる架橋剤を添加した後、混合物を150℃で20分間加熱処理する、
生理食塩水に対する無加圧下吸水倍率が27.4(g/g)であり、加圧(50g/cm^(2))下生理食塩水吸収倍率が23.2(g/g)であり、残存モノマーが180ppmであり、着色度(YI値)が試験前で4.8であり、試験後で8.9であり、着色度の変化が4.1である、平均粒子径300μmの吸水剤(4)の製造方法。」

(3) 本件訂正発明1と甲13発明との対比
ア 本件訂正発明1と甲13発明とは、以下の相違点1ないし5で相違し、当該相違点以外の点では一致するものであると認められる。

相違点1:本件訂正発明1では、「逆相懸濁重合により重合させ」ると特定されているのに対し、甲13発明では、水溶液重合により重合させており、逆相懸濁重合により重合させていない点。

相違点2:本件訂正発明1では、「前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり」と特定されているのに対し、甲13発明では、「t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂製;10時間半減期温度:74℃)0.4部、0.2%過酸化水素水溶液10部及び2%V-50(和光純薬工業製アゾ化合物『2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩』;10時間半減期温度:56℃)水溶液10部を添加して混合し」ている点。

相違点3:本件訂正発明1では、「生理食塩水吸収能が55g/g以上」と特定されているのに対し、甲13発明では、「生理食塩水に対する保水量が46(g/g)」と特定されている点。

相違点4:本件訂正発明1では、「4.14kPa荷重下での生理食塩水吸収能が15ml/g以上」と特定されているのに対し、甲13発明では、「荷重下吸収量が20g/cm^(2)で34(g/g)、40g/cm^(2)で29(g/g)、60g/cm^(2)で19(g/g)」と特定されている点。

相違点5:本件訂正発明1では、「70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」と特定されているのに対し、甲13発明では、着色度の変化に関して特定されていない点。

イ 以下、相違点1ないし5についてまとめて検討する。
本件訂正発明1において、相違点1の特定(逆相懸濁重合の使用)と相違点2の特定(アゾ系化合物と過酸化物の使用量割合)の意義は、本件特許明細書の記載に鑑みれば、(内部架橋剤及び後架橋剤を併用するとともに)これらの特定をともに満たすことで、優れた吸収性能を有するとともに、高温高湿下に長期間保管の前後においても着色が抑制された吸水性樹脂、すなわち、相違点3ないし5の特定を含む、「(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」という5つの物性の数値範囲の全てを同時に満たすことを意味するものであると解される。
一般に、吸水性樹脂の製造方法において、重合方法や開始剤であるアゾ系化合物と過酸化物の使用量割合が相違すれば、得られる吸水性樹脂の物性は変化するものと認められるところ、甲13文献には、請求項18や段落【0020】に逆相懸濁重合が使用できることまでは記載されているものの、逆相懸濁重合を使用したことで得られる吸水性樹脂の物性がどのように変化するか、まして、本件訂正発明1で特定される、相違点1の特定(逆相懸濁重合の使用)と相違点2の特定(アゾ系化合物と過酸化物の使用量割合)とを共に満たすことで、得られる吸水性樹脂について相違点3ないし5の特定を含む上記した5つの物性を全て同時に満たすこととなることの記載あるいは示唆もない。そして、水溶液重合に代えて逆相懸濁重合を使用し、かつアゾ系化合物と過酸化物の使用量割合を特定範囲内とすれば、当該5つの物性を全て同時に満たすことが自明のことでもない。
そうすると、甲13発明において、当該5つの物性を全て同時に満足させることを目的として、水溶液重合に代えて、逆相懸濁重合を使用し、かつ、アゾ系化合物と過酸化物の使用量割合を質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1とすることは、たとえ当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲13発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) 本件訂正発明1と甲5発明とを対比する。
ア 本件訂正発明1と甲5発明とは、以下の相違点6ないし10で相違し、当該相違点以外の点では一致するものであると認められる。

相違点6:本件訂正発明1では、「逆相懸濁重合により重合させ」ると特定されているのに対し、甲5発明では、水溶液重合により重合させており、逆相懸濁重合により重合させていない点。

相違点7:本件訂正発明1では、「前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり」と特定されているのに対し、甲5発明では、「過硫酸ナトリウム0.12g/mol(対単量体)」のみが使用されており、アゾ系化合物が使用されていない点。

相違点8:本件訂正発明1では、「生理食塩水吸収能が55g/g以上」と特定されているのに対し、甲5発明では、「生理食塩水に対する無加圧下吸水倍率が27.4(g/g)」と特定されている点。

相違点9:本件訂正発明1では、「4.14kPa荷重下での生理食塩水吸収能が15ml/g以上」と特定されているのに対し、甲5発明では、「加圧(50g/cm^(2))下生理食塩水吸収倍率が23.2(g/g)」と特定されている点。

相違点10:本件訂正発明1では、「70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」と特定されているのに対し、甲5発明では、「着色度の変化が4.1」と特定されている点。

イ 以下、相違点6ないし10についてまとめて検討する。
(3)イで述べたことに加えて、甲5文献には、段落【0049】に逆相懸濁重合が使用できることまでは記載されているものの、逆相懸濁重合を使用したことで得られる吸水性樹脂の物性がどのように変化するか、まして、本件訂正発明1で特定される、相違点6の特定(逆相懸濁重合の使用)と相違点7の特定(アゾ系化合物を併用しつつそれらの使用量割合)とを共に満たすことで、得られる吸水性樹脂について相違点8ないし10の特定を含む上記した5つの物性を全て同時に満たすこととなることの記載あるいは示唆もない。
そうすると、甲5発明において、当該5つの物性を全て同時に満足させることを目的として、水溶液重合に代えて、逆相懸濁重合を使用し、かつ、アゾ系化合物を併用し、さらにアゾ系化合物と過酸化物の使用量割合を質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1とすることは、たとえ当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲5発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5) 本件訂正発明1についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲13文献又は甲5文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(6) 本件訂正発明2ないし5について
本件請求項2は、本件請求項1を引用するものではないものの、本件訂正発明2は、実質的に、本件訂正発明1をさらに内部架橋剤及び後架橋剤の使用量で限定するとともに、吸水性樹脂の中位粒子径で限定するものであるし、本件請求項3ないし5は、直接あるいは間接的に本件請求項1または本件請求項2を引用するものであるから、本件訂正発明2ないし5は、(3)で述べたのと同じ理由により、甲13文献又は甲5文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(7) 異議申立人の主張についての検討
異議申立人は、平成29年2月23日(受入日:同年同月24日)に提出した意見書において、甲1(特開2009-280668号公報。以下、「甲1文献」という。)には、アゾ系化合物と過酸化物との共存下で行う逆相懸濁重合による吸水性樹脂の製造方法が開示されているから、当業者であれば、甲1文献に基づき、甲13発明の吸水性樹脂の製造方法において、重合方法を水溶液重合に換えて逆相懸濁重合とすることは容易に想到できるものである旨主張する。
しかしながら、甲1文献には、アゾ化合物と過酸化物とを所定割合で併用して逆相懸濁重合することまでは記載されているものの、甲1文献は、吸収速度に優れた吸収性樹脂粒子を得ることができる製造方法を提供することを課題とするものであって、相違点3ないし5の特定を含む、「(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」という5つの物性の数値範囲の全てを同時に満たす吸水性樹脂を提供するという本件訂正発明1における課題とは相違するものであって、甲1文献には、逆相懸濁重合を使用したことで得られる吸水性樹脂の物性がどのように変化するか、まして、本件訂正発明1で特定される、相違点1の特定(逆相懸濁重合の使用)と相違点2の特定(アゾ系化合物と過酸化物の使用量割合)とを共に満たすことで、得られる吸水性樹脂について相違点3ないし5の特定を含む上記した5つの物性を全て同時に満たすこととなることの記載あるいは示唆もない。
そうすると、甲1文献を参酌したとしても、(3)で述べたのと同じ理由により、甲13発明において、当該5つの物性を全て同時に満足させることを目的として、水溶液重合に代えて、逆相懸濁重合を使用し、かつ、アゾ系化合物と過酸化物の使用量割合を質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1とすることは、たとえ当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用することができない。

2 取消理由Bについて
(1) 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)
サポート要件を満足するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、そして、出願時の技術常識も考慮して、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において、発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内であると判断された場合には、該請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすといえる。
これを、本件についてみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0007】)によれば、本件訂正発明1ないし5が解決しようとする課題は、「優れた吸収性能を有するとともに、高温高湿下に長期間保管の前後においても着色が抑制された吸水性樹脂及びその吸水性樹脂を用いた吸収性物品を提供すること」であると認められる。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件特許の出願時の技術常識も考慮して、本件訂正発明1ないし5が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲内のものであると言えるかについて検討する。

ア 本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、第3の請求項1に記載したとおりのものであるところ、本件訂正発明1の発明特定事項に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例及び比較例(段落【0111】ないし【0145】)として、以下のとおり記載されている。
「 <4-2.実施例及び比較例について>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、過酸化物として過硫酸ナトリウム0.041g(0.172ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01012g(0.058ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
そして、前述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、過酸化物として過硫酸ナトリウム0.058g(0.244ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
前述のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら240gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂231.4gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が380μmであった。
[実施例2]
1段目モノマー水溶液に溶解させる過酸化物を過硫酸カリウム0.058g(0.215ミリモル)とし、2段目モノマー水溶液に溶解させる過酸化物を過酸化カリウム0.081g(0.300ミリモル)としたこと以外は、実施例1と同様とした。このようにして得られた吸水性樹脂231.8gを、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が365μmであった。
[実施例3]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.037g(0.137ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01012g(0.058ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
そして、前述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.052g(0.191ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
前述のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後の含水ゲルに、40質量%のトリエチレンテトラミン6酢酸6ナトリウム水溶液2.76gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら240gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂232.3gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が395μmであった。
[実施例4]
第2段目の重合後に添加する40質量%のトリエチレンテトラミン6酢酸6ナトリウム水溶液量を0.83gに変更したこと以外は、実施例3と同様にした。このようにして得られた吸水性樹脂231.8gを、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が375μmであった。
[実施例5]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.110g(0.406ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.037g(0.137ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.014g(0.080ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
そして、上述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行った。
重合後の含水ゲルに、38質量%のエチレンジアミン4酢酸4ナトリウム水溶液1.21gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴で前記重合反応液を昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら116gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.68g(0.423ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、炭化水素分散媒と水とを蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状の吸水性樹脂95.1gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が120μmであった。
[実施例6]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.101g(0.372ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.028g(0.104ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01012g(0.058ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
そして、上述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.142g(0.524ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.039g(0.144ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
上述のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後の含水ゲルに、40質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.83gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら242gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂231.5gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が360μmであった。
[実施例7]
第2段目の重合後に添加するアミノカルボン酸化合物を40質量%のヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸3ナトリウム水溶液の3.68gに変更し、共沸蒸留により除去する水の量を237gに変更したこと以外は、実施例6と同様にした。このようにして得られた吸水性樹脂233.1gを、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が410μmであった。
[比較例1]
比較例1では、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備し、このフラスコに、n-ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.110g(0.407ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01012g(0.058ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
そして、前述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.155g(0.572ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
前述のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目の単量体水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら240gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂231.1gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が355μmであった。
[比較例2]
比較例2では、第2段目の重合後の含水ゲルに、40質量%のトリエチレンテトラミン6酢酸6ナトリウム水溶液2.76gを攪拌下で添加したこと以外は、比較例1と同様にした。このようにして得られた吸水性樹脂232.2gを、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が380μmであった。
[比較例3]
比較例3では、第2段目の重合後に添加するアミノカルボン酸化合物を40質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.83gに変更し、共沸蒸留により除去する水の量を236gに変更したこと以外は、比較例2と同様にした。このようにして得られた吸水性樹脂231.6gを、前述の各種試験方法に従って評価した。なお、得られた吸水性樹脂は、中位粒子径が365μmであった。
<4-3.評価結果について>
下記表1に、実施例1?7、比較例1?3にて得られた吸水性樹脂の評価結果を示す。表1は、無荷重および荷重下での吸水能、残存モノマー含量、黄色度の初期値及び黄色度の変化率(70℃、90%相対湿度下での着色試験)からなる望ましい物性のまとめである。
【表1】


これらの記載からすると、当該課題の優れた吸収性能を有するとともに、高温高湿下に長期間保管の前後においても着色が抑制された吸水性樹脂とは、「(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」という5つの物性の数値範囲の全てを満たすことを意味するものであると解される。
そして、本件特許明細書の実施例において、「水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との共存下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であ」るという製造条件を満たす製造方法により製造した場合において、当該5つの物性の数値範囲の全てを満たす吸水性樹脂が得られるという良好な結果が示されている。
そして、本件訂正発明1は、吸水性樹脂の製造方法に係るものであるところ、吸水性樹脂の製造方法において、当該製造方法における製造条件の内の1つあるいはそれ以上の条件の数値を次第に変化させれば、それにともない、得られる吸水性樹脂が有する各種の物性も次第に変化するものであり、斯かる変化は連続的に変化するものであることは、本件特許に係る出願時の技術常識であると認められる。
一方、本件特許明細書の比較例においては、過酸化物を使用せず、アゾ系化合物のみを使用して得られた吸水性樹脂では、「残存モノマー含量が300ppm以下」及び「70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」との物性を満足しないものであることが理解される。
すなわち、当業者であれば、本件訂正発明1で特定する上記製造条件を全て満たす製造方法により製造した場合において、上記した5つの物性の数値範囲を全て満たす吸収性樹脂が製造されるということを認識することができるといえる。
そうすると、当業者が、本件特許に係る出願時の技術常識を参酌すれば、優れた吸収性能を有するとともに、高温高湿下に長期間保管の前後においても着色が抑制された吸水性樹脂の製造方法として、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容から、請求項1に係る、製造条件の全般の範囲にまで拡張ないし一般化できるものということができるから、本件訂正発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。

イ 本件訂正発明2について
本件請求項2は、本件請求項1を引用するものではないものの、本件訂正発明2は、実質的に、本件訂正発明1をさらに内部架橋剤及び後架橋剤の使用量で限定するとともに、吸水性樹脂の中位粒子径で限定するものであるから、本件訂正発明1について述べたのと同じ理由によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。

ウ 本件訂正発明3ないし5について
本件請求項3ないし5は、直接あるいは間接的に本件請求項1または本件請求項2を引用するものであるから、本件訂正発明3ないし5は、本件訂正発明1または本件訂正発明2について述べたのと同じ理由によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。

エ まとめ
以上のとおり、本件請求項1、本件請求項2及び本件請求項1または本件請求項2を直接又は間接的に引用する本件請求項3ないし5に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(2) 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)
本件訂正発明1ないし5について、実施可能要件を満たすか(発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか)について検討する。
本件訂正発明1ないし5は、吸水性樹脂の製造方法の発明であって、「物を生産する方法」の発明に該当するところ、物を生産する方法(製造方法)の発明において、実施可能要件を満足するというためには、発明の詳細な説明の記載に、その物の生産方法(製造方法)を当業者が使用でき、かつ、その生産方法(製造方法)により生産した物を当業者が使用できる程度に記載されている必要がある。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件特許の出願時の技術常識も考慮して、本件訂正発明1ないし5が、発明の詳細な説明の記載に、その物の製造方法を当業者が使用でき、かつ、その製造方法により生産した物を当業者が使用できる程度に記載されていると言えるかについて検討する。

ア 本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、第3の請求項1に記載したとおりのものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例及び比較例として、(1)アのとおりのことが記載されている。
そして、本件訂正発明1の課題は、(1)で述べたとおりのものであって、当該課題の優れた吸収性能を有するとともに、高温高湿下に長期間保管の前後においても着色が抑制された吸水性樹脂とは、「(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下」という5つの物性の数値範囲の全てを満たすことを意味するものであると解される。
そこで、本件特許明細書の記載を検討すると、発明の詳細な説明の実施例1?7には、アクリル酸及びそのナトリウム塩を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物及び過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であるアゾ系化合物と過酸化物との共存下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂が製造できたことが具体的に示されているし、当該製造方法で製造された吸水性樹脂は、当該5つの物性の数値範囲を全て満たすものであることも示されている(表1)。そして、これらの製造条件は、本件訂正発明1で特定される製造条件を全て満足する。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本件訂正発明1の製造方法によって、当該5つの物性の数値範囲を全て満たす吸収性樹脂が製造できることを理解できる。
また、実施例1?7には、製造された吸収性樹脂についての、当該5つの物性の数値範囲についても具体的に示されており(表1)、これによれば、本件訂正発明1の吸収性樹脂の製造方法により得られた吸収性樹脂は、(A)生理食塩水吸水能や、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能、残存モノマー含量、(B)黄色度、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)の全てに優れるものであり、紙おむつ等の吸収性物品の用途に使用できることが理解できる。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本件訂正発明1の製造方法によって当該5つの物性の数値範囲を全て満たす吸収性樹脂が製造できること、及び、当該製造方法で得られた吸収性樹脂が、吸収性物品に使用できることを理解できるのであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1について、実施可能要件を満たしているといえる。

イ 本件訂正発明2について
本件請求項2は、本件請求項1を引用するものではないものの、本件訂正発明2は、実質的に、本件訂正発明1をさらに内部架橋剤及び後架橋剤の使用量で限定するとともに、吸水性樹脂の中位粒子径で限定するものであるから、本件訂正発明1について述べたのと同じ理由によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明2について、実施可能要件を満たしているといえる。

ウ 本件訂正発明3ないし5について
本件請求項3ないし5は、直接あるいは間接的に本件請求項1または本件請求項2を引用するものであるから、本件訂正発明1または本件訂正発明2について述べたのと同じ理由によって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明3ないし5について、実施可能要件を満たしているといえる。

エ まとめ
以上のとおり、本件請求項1、本件請求項2及び本件請求項1または本件請求項2を直接又は間接的に引用する本件請求項3ないし5に係る発明に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1ないし5について、実施可能要件を満たしているといえる。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(3) 異議申立人の主張についての検討
ア 異議申立人は、平成29年6月29日(受入日:同年同月30日)に提出した意見書において、本件訂正発明1及び本件訂正発明2における逆相懸濁重合の条件、並びにアゾ系化合物及び過酸化物の使用量割合の質量比範囲は、当該技術分野における一般的な製造条件を規定したにすぎず、そのような構成を採用すれば、本件訂正発明1または本件訂正発明2を達成できるとはいえないから、本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、異議申立人の上記主張は、本件訂正発明1及び本件訂正発明2における斯かる条件が一般的な製造条件を規定したにすぎないものであることについて疎明するものではないし、仮に斯かる条件を採用したとしても、当該5つの物性の数値範囲を全て満たす吸収性樹脂が製造できないことを証拠を伴って具体的に反論するものでもない。
一方、本件訂正発明1ないし5において、吸水性樹脂を製造するに際し、(内部架橋及び後架橋をともに採用することに加えて、)少なくとも「アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ」、その際、前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が8:12?19:1であ」るという条件は、一般的なものであるとまではいえないし、本件特許請求の範囲がサポート要件を満たし、本件特許明細書の記載が実施可能要件を満たすことについては、それぞれ(1)、(2)で述べたとおりである。
したがって、異議申立人の主張は採用することができない。

イ 異議申立人は、同じく意見書において、甲1文献に記載の吸水性樹脂は、本件訂正発明1に規定する重合条件全てを実質的に満たすか、または当業者に自明の方法により製造されているため、特許権者の主張に鑑みると、甲1文献に開示もしくは実質的に開示された吸水性樹脂は本件訂正発明1の全ての物性を満たす蓋然性が極めて高いとも主張する。
しかしながら、甲1文献の請求項には、アゾ化合物等の発泡剤の存在下で、水溶性ビニルモノマー並びに内部架橋剤を逆相懸濁重合して含水ゲルを得る多孔質吸収性樹脂粒子の製造方法が記載されているものの、過酸化物を使用すること、まして過酸化物とアゾ化合物との使用量の割合について記載されていないし、後架橋剤を用いて後架橋することも記載されていない。また、甲1文献の実施例1、2、7及び8には、所定割合である発泡剤(アゾ化合物)及び過酸化物の存在下で、水溶性ビニルモノマーを逆相懸濁重合して樹脂粒子を得、この樹脂粒子に表面架橋(本件訂正発明1における後架橋と同じ。)してなる多孔質吸収性樹脂粒子の製造方法が記載されているものの、内部架橋剤を使用することについて記載されていない。
そうすると、甲1文献の請求項に記載された発明、あるいは甲1文献の実施例に記載された発明が、本件訂正発明1に規定する全ての製造条件が一致するものであるとはいえないから、甲1文献の請求項に記載された発明、あるいは甲1文献の実施例に記載された発明における多孔質吸収性樹脂粒子が本件訂正発明1の全ての物性を満たす蓋然性が極めて高いとはいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用することができない。



第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が、8:12?19:1であり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
前記吸水性樹脂は、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、
(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下
【請求項2】
水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で、アゾ系化合物と過酸化物との一方の化合物のラジカル開裂によるモノマー転化率が10モル%未満であるうちにもう一方の化合物が存在している状態で行う逆相懸濁重合により重合させ、かつ後架橋剤で後架橋することにより吸水性樹脂を製造し、
前記アゾ系化合物及び前記過酸化物の使用量割合の質量比範囲(アゾ系化合物:過酸化物)が、8:12?19:1であり、
前記内部架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.000001?0.02モルであり、前記後架橋剤の使用量は、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00001?0.01モルであり、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体の70?100モル%がアクリル酸及びその塩であり、かつ、前記後架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
前記吸水性樹脂は、中位粒子径が100?600μmであり、以下の性質をすべて満たすことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
(A)生理食塩水吸水能が55g/g以上、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能が15ml/g以上、かつ残存モノマー含量が300ppm以下、
(B)黄色度が5.0以下、かつ、70℃、90%相対湿度の環境下で10日間放置した後の黄色度の変化率(ΔYI)が10以下
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂に、さらにアミノカルボン酸化合物を添加する吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アミノカルボン酸化合物が、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン4酢酸、エチレンジアミン4酢酸、及びそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項3に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法によって得られる吸水性樹脂を含む吸収体を用いて吸収性物品を製造する、吸収性物品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-04 
出願番号 特願2014-223726(P2014-223726)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 繁田 えい子  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 小野寺 務
守安 智
登録日 2015-06-26 
登録番号 特許第5766344号(P5766344)
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂及び吸収性物品  
代理人 関口 正夫  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 鎌田 久男  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 鎌田 久男  
代理人 関口 正夫  
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