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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1333177
異議申立番号 異議2016-700599  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-07 
確定日 2017-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5843024号発明「表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5843024号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第5843024号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5843024号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年1月29日(優先権主張 平成26年8月22日)に特許出願され、同年11月27日に特許の設定登録がされ、その後、平成28年7月7日に特許異議申立人浜俊彦(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年9月28日付けで取消理由が通知され、同年12月5日に意見書が提出され、平成29年2月6日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月10日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、同年5月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、その本件訂正請求に対して同年6月15日に異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正請求の趣旨及び訂正内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第5843024号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正後の変更部分を示す。なお、訂正請求書において、これらをまとめて「訂正事項1」、「訂正事項2」としているが、本決定においては、個別の訂正事項毎に分けることとする。)。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?50%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており、」と記載されているのを、「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており、」に訂正し、請求項2、3も減縮する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「配設されており、前記表示装置は、」と記載されているのを、「配設されており、前記光拡散積層体による光エネルギー変換効率が53.1%であり、前記表示装置は、」に訂正し、請求項2、3も減縮する。

3 訂正事項3
明細書の段落【0083】に「実施例6?9」と記載されているのを、「実施例6、参考例7?9」に訂正する。

4 訂正事項4
明細書の段落【0083】に「実施例7」、「実施例8」、「実施例9」と記載されているのを、それぞれ「参考例7」、「参考例8」、「参考例9」に訂正する。

5 訂正事項5
明細書の段落【0085】の【表1】に「実施例7」、「実施例8」、「実施例9」と記載されているのを、それぞれ「参考例7」、「参考例8」、「参考例9」に訂正する。

6 訂正事項6
明細書の段落【0086】に「実施例3及び4?9」と記載されているのを、「実施例3及び4?6、参考例7?9」に訂正する。

第3 訂正の適否についての判断
1 訂正の目的について
訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項3?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

2 新規事項について
訂正事項1?6は、願書に添付した明細書(特に段落【0085】の【表1】)、特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1?6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

3 拡張・変更の存否について
訂正事項1は、「光拡散粒子」の「光拡散層の最表面から突出」する「該光拡散粒子の粒径」の「範囲」の発明特定事項を、訂正前の「3?50%」から「3?20%」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項2は、訂正前に「光拡散積層体による光エネルギー変換効率」について具体的数値範囲の特定がなかったのを、当該光エネルギー変換効率が「53.1%以上」であることを限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項3?6は、訂正事項1及び2に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、明細書の記載を訂正するものであるから、訂正事項1及び2と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 一群の請求項について
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1?3を訂正するものであり、訂正前の請求項2、3は請求項1を直接的又は間接的に引用するため、請求項1?3は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

5 願書に添付した明細書の訂正に係る請求項について
明細書の段落【0083】、【0085】、【0086】には請求項1に対応する実施例が記載されており、訂正事項3?6による明細書の訂正に係る請求項は請求項1である。したがって、これを含む一群の請求項、すなわち請求項1?3の全てが訂正事項3?6の対象となる。
よって、訂正事項3?6は、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

6 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の〔請求項1?3〕について訂正を認める。

第4 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
特許第5843024号の請求項1?3に係る特許は、それぞれ、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1?3に係る特許発明(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明3」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層の少なくとも片面に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する表示装置であって、
前記光拡散層は、有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子とバインダー成分とを含有するとともに、最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し、
前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており、
前記光拡散層の膜厚は、1?30μmであり、
前記光拡散層は、前記波長変換層の光源側と反対側面、又は、前記波長変換層の両面に配設されており、
前記光拡散積層体による光エネルギー変換効率が53.1%以上であり、
前記表示装置は、液晶表示装置である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
光拡散層に含まれる光拡散粒子は、70%以上が積層されず1段で存在している請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
光拡散層のバインダー成分と光拡散粒子との屈折率差が、0.02?0.15である請求項1又は2記載の表示装置。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成29年2月6日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下「取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布されたないし電気通信回路を通じて利用可能になった下記の引用例1に記載された発明及び引用例2?4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:韓国公開特許第10-2013-0123718号公報
(異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特表2014-500983号公報(同甲第2号証)
引用例3:特開2003-107214号公報(同甲第3号証)
引用例4:国際公開第2011/148823号(同甲第4号証)

3 取消理由についての判断
(1)引用例の記載事項、認定事項及び引用発明
ア 引用例1の記載事項
取消理由で通知した引用例1には、次の事項が記載されている。なお、文章は当審で翻訳した。また、下線は当審で付与した。以下同様。
(ア)「請求項1
複数の量子ドットが分散される高分子樹脂層と、
上記樹脂層の上下面に形成される保護層と、
上記保護層の外表面に形成されて光を散乱させるコーティング層と、
を含む拡散シート。」

(イ)「[0012]本発明は、前述した問題点を解決するためのもので、液晶表示装置の色再現率を向上させるために、LEDと導光板との間に個別に具備される量子レールを省略しながらも、これと同じ色再現率を有する拡散シート及びこれを含むバックライトユニットを提供することをその目的とする。
[0013]また、本発明は、多数の光学部材の一部を省略して、高輝度画像を実装して、製造コストを削減した拡散シート及びこれを含むバックライトユニットを提供することを他の目的とする。」

(ウ)「[0029]図示されたように、本発明の液晶表示装置モジュール(100)は、画像を表示する液晶パネル(110)と、液晶パネル(110)に光を提供するバックライトユニット(120)と、これを実装するガイドパネル(130)で構成されている。」

(エ)「[0037]導光板(124)は、LED(121)から入射される光を液晶パネル(110)の全領域に均一に広がるように上面方向に導く役割をする。LED(121)から放出された光は、導光板(124)の入射面から他側面まで進行し、導光板(124)の内部で反射や屈折され、上面の拡散シート(125)の背面に均一に光を提供することになる。
[0038]拡散シート(125)は、導光板(124)から出射された光が内部の通過に伴い、光を散乱させて上面のプリズムシート(126)に提供する役割をする。このような拡散シート(125)は、多層構造で構成され、中央の樹脂層と、その上下面に形成された保護層に区分される。特に、前述した樹脂層は、特定の波長帯域の光を選択的に変換する複数の量子ドットが分散されており、LED(121)が放出された青色の波長帯域を変化させ上面に提供することになる。
[0039]したがって、拡散シート(125)を通過する光は、元の波長である青色光と、変換された緑色光と赤色光が混合されて白色光となってプリズムシート(126)に入射される。このような拡散シート(125)の構造の詳細な説明は後述する。」

(オ)「[0044]図示されたように、本発明の拡散シート(125)は、量子ドットが分散された樹脂層(1251)と、これを囲む保護層(1254)とコーティング層(1277)で構成されている。また、樹脂層(1251)と保護層(1254)との間には、バリア層(1252)が介在されることができる。」(合議体注:コーティング層の符号「(1277)」は「(1257)」の誤記と認める。)」

(カ)「[0050]また、上部保護層(1254)の上面と下部保護層(1254)の下部、すなわち拡散シート(125)の外表面には、コーティング層(1257)が形成される。コーティング層(1257)は、拡散シート(125)を通過する光を散乱して出光する光が上部方向に均一分布を持つようにする役割をする。その厚さは、約5μm程度に形成することができる。」

(キ)「[0052]前述した構成に基づいて、本発明のバックライトユニットに含まれる拡散シートは、多層構造を有し、導光板から入射される青色光の一部はそのまま通過し、残りは緑色光と赤色光に変換して、最終的に白色光が液晶パネルに達することになる。特に液晶パネルに入射する光の量を波長帯域ごとに調整することができるので、高い色再現率を実現することができる。」

イ 引用例1に記載された発明
上記アの各摘示事項及び図2、図3の記載からみて、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「量子ドットが分散された樹脂層1251の上下面に、保護層1254とコーティング層1257が配設された拡散シート125を有する液晶表示装置モジュール100であって、
前記コーティング層1257の厚さは約5μm程度であり、
LED121から入射される光を拡散シート125の背面に均一に光を提供する導光板124を有する液晶表示装置モジュール100。」

ウ 引用例2の記載事項
取消理由で通知した引用例2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
屈折率が1.4?1.8である光学的に透明な材料からなる透明基板と、前記透明基板の上面に配置された、屈折率が1.4?1.7である拡散コーティングとを備える光拡散膜であって、
屈折率が1.4?1.7である拡散粒子が前記拡散コーティング中に分散され、
前記拡散粒子は互いに密接し、前記拡散粒子は、それぞれの質量パーセントでそれぞれの直径を有する以下の球状粒子:10?30質量%の直径1?10μmの球状粒子、50?80質量%の直径11?20μmの球状粒子、および0?20質量%の直径21?35μmの球状粒子からなり、
前記拡散粒子はランダムに配置され、
前記拡散コーティングは、前記拡散粒子の最大粒径の1/2?2/3の厚さを有し、
前記拡散粒子のコーティング密度は、1平方ミリメートル当たり粒子10^(3)?10^(6)個であることを特徴とする、光拡散膜。」

(イ)「【0001】
本発明はディスプレイ技術の分野に関し、特に、光拡散膜およびそれを使用した液晶ディスプレイ(LCD)バックライトに関する。」

(ウ)「【0004】
本発明は当該技術における前述の欠点に鑑みて実行され、その目的は、より強い光集束力、向上したヘイズおよび輝度を有する光拡散膜を提供すること、およびそれを使用したLCDバックライトを提供することである。」

(エ)「【0017】
実施例1
図2に示されるように、光拡散膜100は、透明なPET基板110、球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120、および球状PMMAアンチブロッキング粒子150を含むアンチブロッキングコーティング130を含む。拡散コーティング120中の異なる粒径の拡散粒子は、表1に示される比率で組み合わせられる。大きな拡散粒子140は拡散コーティング120中にともに堅固に配置され、小さな拡散粒子140は拡散コーティング120内に分散され充填される。小さな拡散粒子140と基板110と拡散コーティングとの間の屈折率の相違によって、光を拡散させることができる。拡散コーティング120の厚さは、大きな拡散粒子140の粒径の半分に厳密に制御される。すなわち、大きな拡散粒子140の半分は拡散コーティング120に埋め込まれ、残りの半分は拡散コーティング120上に露出し、それによって、下から透過される光160を集束させるような光集束効果を有するレンズ構成を形成する。粒径5μmの球状PMMAアンチブロッキング粒子150は、アンチブロッキングコーティング130中にまばらにかつランダムに配置され、そのコーティング密度は1平方ミリメートル当たり粒子100個である。アンチブロッキングコーティング130の厚さはアンチブロッキング粒子150の粒径の半分であり、アンチブロッキング粒子150のアンチブロッキングコーティング130から突出した部分によって、アンチブロッキングコーティングとモジュールの他の部材との間に薄いエア層を形成し、この光拡散膜100と他の部材との付着を防ぐことができる。」

エ 引用例2に記載された技術的事項
上記ウの各摘示事項、【表1】及び【図2】の記載からみて、引用例2には次の技術的事項(以下「引用例2技術」という。)が記載されているものと認める。
「液晶ディスプレイ(LCD)バックライトに用いる光拡散膜100であって、前記光拡散膜100は、透明なPET基板110の上面に配置された球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120を含み、前記拡散粒子140は、小さな拡散粒子140と大きな拡散粒子140を組み合わせたものであって、小さな拡散粒子140は前記拡散コーティング120内に分散され、大きな拡散粒子140の半分は前記拡散コーティング120に埋め込まれ、残りの半分は拡散コーティング120上に露出しており、前記拡散コーティング120は、前記拡散粒子140の最大粒径の1/2?2/3の厚さを有する光拡散膜100。」

オ 引用例3の記載事項
取消理由で通知した引用例3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層を透明支持体上に積層してなる光拡散性シートであって、当該光拡散性シートの全光線透過率が70.0%以上、ヘーズが80.0%以上、透過の像鮮明度が21.0%以上25.0%未満であることを特徴とする光拡散性シート。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光拡散性シートに関し、特に液晶ディスプレイのバックライト用に適する光拡散性シートに関するものである。」

(ウ)「【0015】本発明の光拡散性シート1は、バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2を透明支持体3上に積層してなる光拡散性シート1であって、当該光拡散性シート1の全光線透過率が70.0%以上、ヘーズが80.0%以上、透過の像鮮明度が21.0%以上25.0%未満であるようにすることにより、高価で傷つき易いプリズムシートなどを使用しなくとも、高光拡散性を発揮しつつ、且つ正面方向への輝度を高輝度化することができるようになったものである。」

(エ)「【0025】このような光拡散性シート1は、バインダー樹脂及び樹脂粒子を溶剤に分散又は溶解させた光拡散層用樹脂溶液を調整し、当該光拡散用樹脂溶液を透明支持体3上に従来公知の塗布方法によって塗布、乾燥、硬化などして積層することにより得ることができる。」

(オ)「【0028】このような樹脂粒子としては、形状が実質的に真球状であって、平均粒子径が20.0?50.0μm、より好ましくは25.0?45.0μmであることが望ましい。また、その粒子径分布の変動係数は、上限として50.0%未満であることが好ましく、より好ましくは45.0%以下、更に好ましくは40.0%以下であることが望ましい。更に粒子系分布の変動係数は、下限として20.0%以上であることが好ましく、より好ましくは25.0%以上、更に好ましくは30.0%以上であることが望ましい。平均粒子径が、20.0μm未満となってしまうとヘーズと透過の像鮮明度とのバランスを調整し難いものになってしまい、50.0μmを越えてしまうと光拡散層用樹脂溶液の調製や、塗布がし難くなってしまい、やはりヘーズと透過の像鮮明度とのバランスを調整し難いものになってしまう。粒子径分布の変動係数が50.0%以上若しくは20.0%未満になってしまうと、やはりヘーズと透過の像鮮明度とのバランスを調製し難いものになってしまう。」

カ 引用例3に記載された技術的事項
上記オの各摘示事項及び【図1】の記載からみて、引用例3には、次の技術的事項(以下「引用例3技術」という。)が記載されているものと認める。
「液晶ディスプレイのバックライトに用いる光拡散性シート1であって、前記光拡散性シート1は、バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2を透明支持体3上に積層してなるものであり、前記樹脂粒子は、粒子径分布の変動係数が50%未満であり、バインダー樹脂及び樹脂粒子を溶剤に分散又は溶解させた光拡散層用樹脂溶液を塗布、乾燥、硬化などをして積層する光拡散性シート1。」

キ 引用例4の記載事項
取消理由で通知した引用例4には、次の事項が記載されている。
(ア)「[請求項1]
透明樹脂フィルム上に、バインダー樹脂中に平均粒径0.2μm以上1.0μm以下の光散乱性粒子が分散された光散乱層と、バインダー樹脂と平均粒径3μm以上10μm以下の球状粒子を含有する凹凸層を有することを特徴とする光取り出しシート。」

(イ)「[0036]
〔光散乱性粒子〕
本発明の光取り出しシートは、透明樹脂フィルム上に、バインダー樹脂中に光散乱性粒子が分散された光散乱層を有する。」

(ウ)「[0053]
本発明においては、塗布液に分散した球状粒子により凹凸構造が形成されることを特徴とする。本発明の球状粒子により形成された凹凸構造とは、透明樹脂フィルム1上の凹凸層平均面から球状粒子2の一部が突出することで形成された粒子形状に起因した凹凸構造であり、球状粒子表面の1/4以上、好ましくは球状粒子表面の1/2が突出した半球形状の凹凸構造であり、例えば、図1に示すような凹凸構造であることが好ましい。さらに、球状粒子が複数個重なって形成された、例えば、図2に示すような球状粒子表面の1/2以上が突出した凹凸構造であることが好ましい。本発明に係る凹凸構造を形成する球状粒子の表面は、樹脂に覆われていてもいなくてもよいが、薄い樹脂層により表面が覆われている方が、球状粒子の離脱防止や表面強度の点で好ましい。球状粒子を覆う樹脂層の膜厚は、1μm未満であることが、球状粒子由来の曲面形状を形成するため好ましい。」

(エ)「[0158]
このように、白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また、露光光源のような1種のランプとして、液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。」

ク 引用例4に記載された技術的事項
上記キの各摘示事項及び[図3]の記載からみて、引用例4には、次の技術的事項(以下「引用例4技術」という。)が記載されているものと認める。
「液晶表示装置のバックライトに用いる光取り出しシートであって、前記光取り出しシートは、透明樹脂フィルム1上に、バインダー樹脂中に光散乱性粒子が分散された光散乱層と、バインダー樹脂と無機またはポリマーからなる球状粒子2を含有する凹凸層を有するものであり、前記球状粒子2は、凹凸層平均面からその一部が突出するものであり、球状粒子表面の1/4以上(好ましくは1/2)が突出したものである光取り出しシート。」

(2)本件特許発明1と引用発明との対比
ア 本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「液晶表示装置モジュール」は本件特許発明1の「表示装置」及び「液晶表示装置」に相当し、同様に「拡散シート125」は「光拡散積層体」に、「LED121」は「光源」に相当する。

イ 本件特許発明1の「光学的等方な半導体粒子」について検討するに、その定義として、本件特許明細書の段落【0010】に「本明細書において、上記光学的等方な粒子とは、光が照射されたときにレイリー散乱を生じる粒子を意味し、例えば、平均粒径が入射光の波長の1/10以下程度の粒子が挙げられる。」と記載されている。
一方、引用発明における「量子ドット」について検討するに、一般に量子ドットとは、ナノサイズの半導体粒子を意味するものであり、可視光線の光の波長(広くみて360nm?830nm程度)を考慮すれば、「量子ドット」も光が照射されたときにレイリー散乱を生じるものと解される。
したがって、引用発明の「量子ドット」は本件特許発明1の「光学的等方な半導体粒子」に相当するといえる。

ウ 本件特許発明1の「波長変換層」について検討するに、本件特許明細書の段落【0066】に「(波長変換積層体の作製)東レ社製ルミラーT60の片面に、以下の条件でシリカ蒸着層を形成したバリアフィルム基材を作製した。次いで、作製したバリアフィルム基材のシリカ蒸着層側の面に、下記組成の波長変換層用組成物を塗布し、乾燥させて塗膜を形成し、該塗膜上に、上記と同様にして用意した別のバリアフィルム基材のシリカ蒸着面をラミネートし、紫外線照射により上記塗膜を硬化させることで、波長変換層の積層体を作製した。」との記載があることから、当該「波長変換層」は、積層体を含む概念のものと認める。
そして、引用発明の「樹脂層1251」は、その内部に分散された「量子ドット」により光の波長を変換させるものであるから(引用例1の摘示事項エの段落[0038])、引用発明の「樹脂層1251」及び「保護層1254」は、本件特許発明1の「波長変換層」に相当するといえる。

エ 引用発明の「コーティング層1257」は、光を散乱させるものであるから(引用例1の摘示事項(カ))、本件特許発明1の「光拡散層」に相当するといえる。

エ そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する表示装置であって、
前記表示装置は、液晶表示装置である
表示装置。」

[相違点1]
「光拡散層」の配設について、本件特許発明1が「波長変換層」の「少なくとも片面」であり、「前記波長変換層の光源側と反対側面、又は、前記波長変換層の両面に配設されており、」というものであるのに対し、引用発明は「樹脂層1251」の「LED121から入射される光を拡散シート125の背面に均一に光を提供する導光板124」に面する「上下面」に配設される点。

[相違点2]
「光拡散層」の構成について、本件特許発明1が「有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子とバインダー成分とを含有するとともに、最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し、前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており、」というものであるのに対し、引用発明は当該事項を有していない点。

[相違点3]
「光拡散層の膜厚」について、本件特許発明1が「1?30μm」であるのに対し、引用発明は「約5μm程度」である点。

[相違点4]
本件特許発明1が「前記光拡散積層体による光エネルギー変換効率が53.1%以上であ」るのに対し、引用発明は当該事項の特定がない点。

(3)本件特許発明1と引用発明との相違点の判断
事案に鑑み、相違点2及び4について検討する。
ア 引用例2技術における「液晶ディスプレイ(LCD)」は本件特許発明1における「表示装置」及び「液晶表示装置」に相当し、以下同様に、「球状PMMA拡散粒子140」を含む「拡散コーティング120」は「光拡散層」に、「球状PMMA拡散粒子」は「有機材料からなる光拡散粒子」に、「拡散コーティング120」は「バインダー成分」に相当する。そして、本件特許発明1において「最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し」という事項について、全ての「光拡散粒子」が突出していることの特定がないことから、引用例2技術の「前記拡散粒子140は、小さな拡散粒子140と大きな拡散粒子140を組み合わせたものであって、小さな拡散粒子140は拡散コーティング120内に分散され、大きな拡散粒子140の半分は拡散コーティング120に埋め込まれ、残りの半分は拡散コーティング120上に露出しており」という事項も本件特許発明1と同様の事項となっているものと認める。

イ 引用例3技術における「液晶ディスプレイ」は本件特許発明1における「表示装置」及び「液晶表示装置」に相当し、以下同様に、「光拡散層2」は「光拡散層」に、「樹脂粒子」は「有機材料からなる光拡散粒子」に、「バインダー樹脂」は「バインダー成分」に相当する。
ここで、本件特許発明1における「最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し」という事項について、本件特許明細書の段落【0022】に「また、本発明の表示装置において、上記光拡散層の最表面から突出した光拡散粒子は、該突出した部分に、極僅かな、例えば、厚み数nm程度のバインダー成分の薄膜が存在していてもよい。」と記載されていることから、「光拡散粒子」が「バインダー成分」に覆われているものを排除していないものと解される。
また、上記アと同様に、全ての「光拡散粒子」が突出していることの特定がないことから、引用例3技術の「バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2を透明支持体3上に積層してなるものであり、前記樹脂粒子は、粒子径分布の変動係数が50%未満であり、バインダー樹脂及び樹脂粒子を溶剤に分散又は溶解させた光拡散層用樹脂溶液を塗布、乾燥、硬化などをして積層する」という事項も本件特許発明1の「最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し」という事項と同様となっているものと認める。

ウ 引用例4技術における「液晶表示装置」は本件特許発明1における「表示装置」及び「液晶表示装置」に相当し、以下同様に、「バインダー樹脂と球状粒子2を含有する凹凸層」は「光拡散層」に、「無機またはポリマーからなる球状粒子2」は「有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子」に、「バインダー樹脂」は「バインダー成分」に相当する。
また、引用例4技術における「前記球状粒子2は、凹凸層平均面からその一部が突出するものであり、球状粒子表面の1/4以上(好ましくは1/2)が突出した」という事項は、本件特許発明1の「最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し」という事項と同様となっているものと認める。

エ しかしながら、引用例2技術の「球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120」は、「大きな拡散粒子140の半分は前記拡散コーティング120に埋め込まれ、残りの半分は拡散コーティング120上に露出しており、前記拡散コーティング120は、前記拡散粒子140の最大粒径の1/2?2/3の厚さを有する」という事項を有するものであるから、引用発明の「コーティング層1257」に代えて、引用例2技術の「球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120」を採用したとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており」という事項を有するものとはならない。

オ さらに、引用例3技術の「バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2」の「樹脂粒子」が突出する値は明らかでないから、引用発明の「コーティング層1257」に代えて、引用例3技術の「「バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2」」を採用したとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており」という事項を有するものとはならない。

カ 加えて、引用例4技術の「バインダー樹脂と無機またはポリマーからなる球状粒子2を含有する凹凸層」は、「前記球状粒子2は、凹凸層平均面からその一部が突出するものであり、球状粒子表面の1/4以上(好ましくは1/2)が突出した」という事項を有するものであるから、引用発明の「コーティング層1257」に代えて、引用例4技術の「バインダー樹脂と無機またはポリマーからなる球状粒子2を含有する凹凸層」を採用したとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており」という事項を有するものとはならない。

キ そして、上記引用例2?4技術を採用する際に、上記相違点2に係る本件特許発明1の「前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており」という事項を有するものに変更する合理的な理由は見当たらない。

ケ また、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0006】に記載される「光エネルギー変換効率に優れた表示装置を提供すること」を解決しようとする課題としていると認められ、同【0012】に「ここで、本発明の表示装置において、光エネルギー変換効率を向上させるには、波長変換層200に光源部20より放出された青色光を何回も透過させることが必要である。本発明の表示装置では、後述する光拡散層が、波長変換層200の少なくとも片面に配設されているため、波長変換層200に上記青色光を何回も透過させることが可能となり、その結果、光エネルギー変換効率を向上させることができる。本発明者らの研究によると、上記光拡散層を配設したことによる光エネルギー変換効率の向上は、該光拡散層の最表面に形成された凹凸形状と密接な関係があることが判明し、上記光拡散層の最表面に、半球状の凹凸形状を所定の状態で設けることで、光エネルギー変換効率を優れたものにすることができた。特に、本発明の表示装置では、粒子を用いて上記光拡散層の最表面に所定の凹凸形状が形成されていることが好ましい。」と記載されるように、当該課題を解決するために本件特許発明1の「光拡散層」に係る事項を採用しているものと認められる。

コ しかしながら、引用例1には、「コーティング層1257」に着目して「樹脂層1251」の光エネルギー変換効率を向上させることの記載や示唆は見当たらず、光エネルギー変換効率の具体的な値についても記載がない。また、引用例2技術の「透明なPET基板110」は、そもそも波長変換層としての機能を有するものではなく、引用例3技術の「透明支持体3」や引用例4技術の「透明樹脂フィルム1」についても同様である。
そうすると、引用発明の「コーティング層1257」と、引用例2技術の「球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120」、引用例3技術の「バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2」、引用例4技術の「バインダー樹脂と無機またはポリマーからなる球状粒子2を含有する凹凸層」とは、光を拡散させる層という意味で共通することから、引用発明の「コーティング層1257」に代えて、引用例2技術の「球状PMMA拡散粒子140を含む拡散コーティング120」、引用例3技術の「バインダー樹脂及び樹脂粒子を含有して凹凸表面を有する光拡散層2」、引用例4技術の「バインダー樹脂と無機またはポリマーからなる球状粒子2を含有する凹凸層」を採用するという動機付けがあったとしても、上記相違点4に係る本件特許発明1の「前記光拡散積層体による光エネルギー変換効率が53.1%以上であ」るという事項を有するものとすることが容易になし得たということもできない。

サ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明及び引用例2?4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、引用発明及び引用例2?4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件特許発明2、3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)小括
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由について
(1)異議申立人は、特許異議申立書の第15ページ第14行?第17ページ第9行の「(4-6)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について」において、「本件の請求項1において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えた特許が請求されたものとなっている。」として、「請求項1及びこれを引用する請求項2,3の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」と主張しているので以下検討する。

(2)特許法第36条第6項第1号は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」というものであり、請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない旨を規定するものである。

(3)ここで、本件特許発明1が解決しようとする課題は、上記3(3)エで述べたように「光エネルギー変換効率に優れた表示装置を提供すること」にあると認められるところ、発明の詳細な説明には、具体的な態様として本件訂正請求により訂正された段落【0085】の【表1】に各実施例の記載がある。
上記【表1】をみると、本件特許発明1の要件を満たす実施例1、3、4、5、6、10、11、12、13について、光拡散粒子を有さない比較例1に対する「変換向上率」が、それぞれ110.5%、115.6%、102.1%、104.2%、108.8%、101.3%、102.9%、103.8%、103.6%であることが示されており、本件特許発明1の要件を満たすものは、光エネルギー変換効率が向上することが把握できる。
そうすると、請求項1の記載は、課題を解決するための手段が反映されていないとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

(4)なお、異議申立人は、特許異議申立書の上記箇所において、上記【表1】の「参考例1」と「実施例1」を示して、「他の何らかのメカニズムによるものであると考えるのが技術的に自然であるところ、その何らかのメカニズムが本件の請求項1に反映されていない」と主張するが、特許法第36条第6項第1号は上記(2)のとおりのものであって、特許請求の範囲に発明の原理を記載することを求めるものではなく、当該主張は採用できない。

第5 むすび
以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置は、一般に、表示画面とは反対の背面側にバックライトを備えており、表示画面の輝度向上のために、バックライトの表示画面側に、例えば、光拡散層とプリズムとを配置した構成が知られている。
また、近年、表示装置のバックライトとして、半導体粒子を用いて光の波長を変換する波長変換層を用い、様々な波長変換を経て白色光を得るものも知られている(例えば、特許文献1及び2等参照)。
【0003】
しかしながら、このような波長変換層を経て得られた白色光は、該波長変換層に用いられた半導体粒子の種類や、波長変換層の少なくとも片面に設ける光拡散層によって、適切に発光効率が向上されないことがあった。特に、光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層を備えた表示装置において、光拡散層にナノメートルオーダーの超微粒子を拡散粒子として用いた場合には、バックライト全体の光エネルギー変換効率はさほど向上できなかった。
【0004】
また、波長変換層中に拡散粒子を添加することで光エネルギー変換効率を向上させた表示装置も知られている。
しかしながら、このような拡散粒子が添加された波長変換層を備えた表示装置では、波長変換層の製造時の組成物において、バインダー成分中に分散させるべき媒質が増えてしまうため、例えば、半導体粒子、拡散粒子及びその他の各粒子、並びに、バインダー成分等のように、分散時に検討しなければならない項目が増え、所望の性能を発揮し得る波長変換層の製造が困難となる。
更に、波長変換層は、比較的膜厚が厚いため、そこに拡散粒子を満遍なく添加すると、波長変換層のヘイズが上昇してしまい、せっかく拡散粒子を添加したことで光エネルギー変換効率は上がったとしても、波長変換層の全光線透過率が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-539170号公報
【特許文献2】特表2013-544018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、光エネルギー変換効率に優れた表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層の少なくとも片面に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する表示装置であって、上記光拡散層は、有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子とバインダー成分とを含有するとともに、最表面に上記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し、上記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?50%の範囲で上記光拡散層の最表面から突出しており、上記光拡散層の膜厚は、1?30μmであり、上記光拡散層は、上記波長変換層の光源側と反対側面、又は、上記波長変換層の両面に配設されており、上記表示装置は、液晶表示装置であることを特徴とする表示装置である。
【0008】
本発明の表示装置において、上記光拡散層に含まれる光拡散粒子は、70%以上が積層されず1段で存在していることが好ましい。
また、本発明の表示装置は、上記光拡散層のバインダー成分と光拡散粒子との屈折率差が、0.02?0.15であることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「樹脂」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー等も包含する概念である。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層と光拡散層とが配設された光拡散積層体を有する表示装置において、上記光拡散層の最表面に光拡散粒子による凹凸形状が特定の状態で形成されていることで、光エネルギー変換効率を優れた表示装置とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の表示装置は、光学的等方な半導体粒子(以下、単に半導体粒子ともいう)を用いた波長変換層の少なくとも片面に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する。
上記半導体粒子は、光が照射されることにより、該半導体粒子の粒径に応じて異なる波長の光を発生する粒子であり、一般的に上記半導体粒子の粒子が小さいほど短い波長の光が発生し、上記半導体粒子の粒子が大きいほど長い波長の光を発生する。
また、本発明の表示装置において、上記半導体粒子は、光学的等方な粒子である。
本明細書において、上記光学的等方な粒子とは、光が照射されたときにレイリー散乱を生じる粒子を意味し、例えば、平均粒径が入射光の波長の1/10以下程度の粒子が挙げられる。また、このような光学的等方な粒子は、TEM又はSTEMで10万倍?30万倍(加速電圧10?30kV)で波長変換層の断面観察した際に、球形に観察できることが好ましい。
なお、従来の表示装置における波長変換層は、光学的等方な粒子と光学的異方な粒子とが混在していたが、本発明の表示装置では、上記波長変換層における半導体粒子は、光学的等方なものに特化されている。上記光学的異方な粒子としては、例えば、光が照射されたときにミー散乱を生じる粒子が挙げられる。このような光学的異方な粒子は、通常、上記光学的等方な粒子よりも大きな平均粒径を有している。
【0011】
図1は、半導体粒子を用いた波長変換層を含む本発明の表示装置におけるバックライト光源の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示したように、上記バックライト光源は、光源部20と波長変換層200とから構成されており、光源部20は、フレーム21と該フレーム21の波長変換層200側面上に設けられた凹部に青色LED22が実装されており、波長変換層200は、バインダー樹脂210中に半導体粒子(赤色半導体粒子220及び緑色半導体粒子230)が分散されている。
【0012】
光源部20の青色LED22から放出された青色光は、波長変換層200中の赤色半導体粒子220及び緑色半導体粒子230により波長変換されて赤色光及び緑色光が発光され、これらの赤色光及び緑色光と、波長変換層200を透過した青色光とが混色することで白色光に変換される。
ここで、本発明の表示装置において、光エネルギー変換効率を向上させるには、波長変換層200に光源部20より放出された青色光を何回も透過させることが必要である。本発明の表示装置では、後述する光拡散層が、波長変換層200の少なくとも片面に配設されているため、波長変換層200に上記青色光を何回も透過させることが可能となり、その結果、光エネルギー変換効率を向上させることができる。
本発明者らの研究によると、上記光拡散層を配設したことによる光エネルギー変換効率の向上は、該光拡散層の最表面に形成された凹凸形状と密接な関係があることが判明し、上記光拡散層の最表面に、半球状の凹凸形状を所定の状態で設けることで、光エネルギー変換効率を優れたものにすることができた。特に、本発明の表示装置では、粒子を用いて上記光拡散層の最表面に所定の凹凸形状が形成されていることが好ましい。このような凹凸形状を有する光拡散層は、光エネルギー変換効率の向上に加え、汎用性が向上し、内部散乱も利用できる。更に、上記光拡散層上に別のシートが貼り付くことを好適に防止することもできる。
なお、上記光拡散層については、後述する。
【0013】
上記半導体粒子とは、通常、中心体と該中心体を被覆する殻で構成され、該殻の外表面に高分子コーティングされた構成を有する。
上記半導体粒子の中心体及び殻としては特に限定されず、例えば、CdSe、CdTe、CdS、ZnO、ZnS、ZnSe、InP、PbSe等が挙げられる。
【0014】
上記半導体粒子の平均粒径としては特に限定されず、例えば、2?50nmであることが好ましい。ここで、上記半導体粒子は、粒径が小さいほど短い波長の光が発生し、粒子が大きいほど長い波長の光を発生するので、上記半導体粒子が、緑色半導体粒子230及び赤色半導体粒子220である場合、緑色半導体粒子230は、赤色半導体粒子220の粒径よりも小さく形成される。具体的には、赤色半導体粒子220のサイズとしては、例えば、7±1nmφが挙げられ、緑色半導体粒子230のサイズとしては、例えば、3±1nmφが挙げられる。
また、半導体粒子の形状としては、光学的等方であれば特に限定されず、例えば、断面形状が円形、三角形、四角形又は楕円形等任意の形状が挙げられる。なかでも断面形状が円形であることが、光学的等方であるとの見地から好ましい。
なお、上記半導体粒子の平均粒径は、上記波長変換層の断面TEM、STEM又はSEM観察にて測定された20個の半導体粒子の粒径を平均した値である。
【0015】
また、バインダー樹脂210としては特に限定されず、従来公知の材料が挙げられるが、具体的には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を単独又は任意に組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記半導体粒子を含有する波長変換層を有するバックライト光源のその他の構成としては特に限定されず、半導体粒子を用いた波長変換層を備えた従来公知のものと同様のものを用いることができる。
なお、上記波長変換層は、例えば、上述した半導体粒子及びバインダー樹脂のモノマー成分に、必要に応じて公知の溶剤及び光重合開始剤等を添加した波長変換層用組成物を調製し、該波長変換層用組成物を、公知の方法で塗布、乾燥、硬化させることで製造することができる。
【0017】
図2は、本発明の表示装置における光拡散積層体の一例を模式的に示した断面図であり、上記光拡散積層体は、波長変換層200の片面に光拡散層11が配設されている。
本発明の表示装置において、上記光拡散積層体を構成する光拡散層11は、有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子12とバインダー成分13とを含有するものである。
【0018】
本発明の表示装置において、光拡散層の膜厚は、1?30μmである。1μm未満であると、光拡散層の光拡散性能が不充分となり、その結果、光エネルギー変換効率の向上が不充分となり、30μmを超えると、上記光拡散層の透過率が低下してしまう。上記光拡散層の膜厚の好ましい下限は2μm、好ましい上限は20μmである。
なお、上記光拡散層の膜厚とは、図2に示したように、光拡散層11の波長変換層200側界面から、光拡散粒子12の突出した最先端部分までの距離H1であり、光拡散層の断面顕微鏡観察により測定された20カ所の平均値である。上記光拡散層の膜厚測定は、例えば、TEM、STEM又はSEMによる光拡散層の断面観察で行うことができる。なお、上記光拡散層のTEM又はSTEMによる断面観察時の倍率は、用いる光拡散層の粒径にもよるが、1500?2万倍(加速電圧30kV以上)であることが好ましい。また、上記拡散層のSEMによる断面観察時の倍率は、用いる光拡散層の粒径にもよるが、500?1万倍(加速電圧1?15kV)であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の表示装置において、上記光拡散層のバインダー膜厚は、0.5?20μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、光拡散層の光拡散性能が不充分となって、光エネルギー変換効率の向上が不充分となることがあり、20μmを超えると、上記光拡散層の透過率が低下してしまうことがある。上記光拡散層のバインダー膜厚のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は15μmである。
なお、上記バインダー膜厚とは、図2に示したように、光拡散層11の波長変換層200側界面から、光拡散粒子12の存在しない表面までの距離H2であり、光拡散層の断面顕微鏡観察により測定された20カ所の平均値である。ただし、バインダー膜厚の測定時には、光拡散粒子とバインダー成分とが接してメニスカス状になっている部分は除かれる。
【0020】
また、図2に示したように、本発明の表示装置において、光拡散層11は、最表面に光拡散粒子12が突出することにより形成された凹凸を有する。
光拡散粒子12は、球状であることが好ましいため、該光拡散粒子12が突出することで形成された凹凸は、半球状となり、このような形状の凹凸が最表面に形成されていることで、本発明の表示装置の光エネルギー変換効率がより優れたものとなる。
【0021】
本発明の表示装置において、光拡散粒子12は、光拡散粒子12の粒径(2R)の3?50%の範囲で光拡散層11の最表面から突出している。すなわち、図2におけるhは、光拡散粒子12の粒径(2R)に対して、3?50%の範囲にある。当該範囲は、{(h/2R)×100}により算出され、上記hが上記2Rの3%未満であると、本発明の表示装置の光エネルギー変換効率の向上が不充分となり、上記2Rの50%を超えると、光拡散粒子12の脱落が生じやすくなる。上記hの上記2Rに対する割合の好ましい下限は5%、より好ましい下限は10%、さらに好ましい下限は20%であり、上記hの上記2Rに対する割合の好ましい上限は40%であり、より好ましい上限は30%である。
なお、上記光拡散層の最表面に光拡散粒子が突出している凹凸形状を形成していることは、該光拡散層の断面を顕微鏡観察したときに、後述するバインダー膜厚から光拡散粒子の頭がバインダー膜厚よりも出ていることが観察されることで確認でき、上述した突出の割合も、上記光拡散層の断面顕微鏡観察により計測することができる。
【0022】
また、本発明の表示装置において、上記光拡散層の最表面から突出した光拡散粒子は、該突出した部分に、極僅かな、例えば、厚み数nm程度のバインダー成分の薄膜が存在していてもよい。このような極僅かなバインダー成分が存在していても、光学的に光拡散粒子の持つ屈折率による光拡散性に変化はない。上記バインダー成分の薄膜の膜厚測定は、例えば、TEM、STEM又はSEMによる光拡散層の断面観察で行うことができる。なお、上記光拡散層のTEM又はSTEMによる断面観察時の倍率は、用いる光拡散層の粒径にもよるが、1500?2万倍(加速電圧30kV以上)であることが好ましい。また、上記拡散層のSEMによる断面観察時の倍率は、用いる光拡散層の粒径にもよるが、500?1万倍(加速電圧1?15kV)であることが好ましい。
【0023】
また、上記光拡散層における光拡散粒子の含有量は特に限定されないが、光拡散層中、15?85質量%であることが好ましく、より好ましい下限は25質量%、より好ましい上限は75質量%である。15質量%未満であると、光拡散層の光拡散性能が不充分となり、その結果、光エネルギー変換効率の向上が不充分となることがあり、85質量%を超えると、上記光拡散層の透過率が下がり本発明の表示装置の輝度が低下することがある。
【0024】
また、上記光拡散粒子の間隔、すなわち、図2に示した間隔Pは、光拡散粒子の平均粒径に対して、1?10倍であることが好ましいが、1倍であることがより好ましい。上記間隔Pが10倍を超えると、光拡散層の光拡散性能が不充分となり、その結果、光エネルギー変換効率の向上が不充分となることがある。一方、上記間隔Pが1倍であると、上記光拡散粒子は、上記光拡散層に最密充填されていることとなり、光拡散層の光拡散性能が優れたものとなる。
【0025】
上記光拡散層において、上記光拡散層に含まれる光拡散粒子は、70%以上が積層されず1段で存在していることが好ましい。1段で存在している光拡散粒子が70%未満であると、本発明の表示装置の光拡散層の透過率が低下し、本発明の表示装置の輝度が低下することがある。1段で存在している上記光拡散粒子は、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0026】
また、上記光拡散層のバインダー成分と拡散粒子との屈折率差が、0.02?0.15であることが好ましい。0.02未満であると、光学的に光拡散粒子の持つ屈折率による光拡散性が得られず、本発明の表示装置の光エネルギー変換効率の向上が不充分となることがあり、0.15を超えると、上記光拡散層の透過率が低下し、本発明の表示装置の輝度が低下することがある。上記光拡散層のバインダー成分と拡散粒子との屈折率差のより好ましい下限は0.03、より好ましい上限は0.12である。
なお、上記バインダー成分の屈折率と上記光拡散粒子の屈折率とは、いずれの方が大きくてもよい。
ここで、上記光拡散層に含有させる前の光拡散粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、ベッケ法、最小偏角法、偏角解析、モード・ライン法、エリプソメトリ法等によって測定することができる。また、バインダー成分の屈折率は、光拡散層を形成する塗液から光拡散粒子を含まないものを塗布、乾燥、硬化させたバインダー成分のみの硬化膜をアッベ屈折計で測定することにより得ることができる。
また、上記光拡散層中のバインダー成分(硬化物)、光拡散粒子の屈折率の測定方法としては、作製した光拡散層中から光拡散粒子のかけら、あるいはバインダー成分のかけらをなんらかの形で取り出したものについて上述の各方法を同様に用いることができる。このほか、位相シフトレーザー干渉顕微鏡(エフケー光学研究所製の位相シフトレーザー干渉顕微鏡や溝尻光学工業所製の二光束干渉顕微鏡等)を用いてバインダー成分と光拡散粒子との屈折率差を測定することができる。
また、上記バインダー成分が、後述する(メタ)アクリレートとそれ以外の樹脂とを含有する場合、上記バインダー成分の屈折率とは、光拡散粒子を除いた含有する全ての樹脂成分による硬化物の平均屈折率をいう。
【0027】
上記光拡散粒子の平均粒径としては、例えば、1?30μmであることが好ましく、1?20μmであることがより好ましい。1μm未満であると、本発明の表示装置の光エネルギー変換効率が不充分となることがあり、充分な光拡散性を出すためには光拡散粒子の添加量を多くする必要がある。一方、30μmを超えると、光拡散性能は優れたものとなるが、上記光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
なお、上記光拡散粒子の平均粒径は、上述した半導体粒子と同様の方法で測定することができる。
【0028】
また、上記光拡散粒子の平均粒径とは、光拡散層に含有される各々の光拡散粒子が、単分散型の粒子(形状が単一な粒子)であれば、その粒径の平均を意味し、ブロードな粒度分布を持つ不定形型の粒子であれば、粒度分布測定により、最も多く存在する粒子の粒径を意味する。
また、上記光拡散粒子が球状ではなく、扁平形状等の異形である場合、上記光拡散粒子の平均粒径とは、上記拡散層の電子顕微鏡(TEM、STEM又はSEM)での断面観察において、観察される上記光拡散粒子を20個選択し、選択された上記光拡散粒子に対し最大径と最小径とを測定し、その平均を求めることで算出される値を意味する。
【0029】
上記光拡散粒子がブロードな粒度分布を持つ不定形型の粒子である場合、上記バインダー層の膜厚よりも大きい粒径である光拡散粒子は、表面拡散効果を有し、さらに、上記バインダー層の膜厚よりも小さい粒径である光拡散粒子は、内部拡散効果を有するため、相乗的に光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0030】
上記光拡散粒子が扁平形状などの異形である場合、上記光拡散層の電子顕微鏡での断面観察において、上記光拡散層中で上記光拡散粒子が層状態となっている箇所が部分的に確認され得るため、光エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の表示装置において、上記光拡散粒子は、上述した半導体粒子の平均粒径の100?2万倍であることが好ましく、100?5000倍であることがより好ましい。100倍未満であると、光拡散層に充分な光拡散性が得られないことがあり、2万倍を超えると、光拡散層の光拡散性能は優れたものとなるが、上記光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
【0032】
上記光拡散粒子の有機材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂が好適に用いられる。
また、上記光拡散粒子の無機材料としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物等が挙げられる。なかでも、シリカ及び/又はアルミナが好適に用いられる。
【0033】
上記光拡散層は、バインダー成分を含有する。
上記バインダー成分は、光重合性化合物の重合物(架橋物)を含むことが好ましい。
上記バインダー成分は、光重合性化合物の重合物(架橋物)の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
上記光重合性化合物は、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。なお、本明細書における、「光重合性官能基」とは、光照射により重合反応し得る官能基である。
このような光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。
また、上記光重合性化合物を重合する際に照射される光としては、可視光線、並びに、紫外線、X線、電子線、α線、β線及びγ線のような電離放射線が挙げられる。
【0034】
上記光重合性化合物としては、例えば、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、又は、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して用いることができる。
上記光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマー又は光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0035】
上記光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。
上記2官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
【0036】
これらの中でも硬度が高い光学層を得る観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。
【0037】
上記光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000を超え10000以下のものである。
上記光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、光重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。
上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
上記光重合性ポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万を超え8万以下が好ましく、1万を超え4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光拡散積層体の外観が悪化するおそれがある。
上記多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
上記溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、光学層を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0040】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
【0041】
上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0042】
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0043】
上記光拡散層を形成する方法としては、例えば、硬化後バインダー成分となる光重合性化合物及び光拡散粒子を含む光拡散層用組成物を用いて形成する方法等が挙げられる。
具体的には、上記波長変換層の片面に、以下の光拡散層用組成物を塗布する。
上記光拡散層用組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0044】
上記光拡散層用組成物は、少なくとも、上記光重合性化合物、上記光拡散粒子を含むものである。その他、必要に応じて、光拡散層用組成物に、上記熱可塑性樹脂、上記熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、光拡散層用組成物には、光拡散層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0045】
上記溶剤は、上記光拡散層用組成物を塗布しやすくするために粘度を調整する目的や、蒸発速度や光拡散粒子に対する分散性を調整して、所望の状態で光拡散粒子が含有された光拡散層を形成させやすくする目的で使用されうる。
このような溶剤としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0046】
上記重合開始剤は、光照射により分解されて、ラジカルを発生して光重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。
このような重合開始剤は、光照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0047】
上記重合開始剤としては、上記バインダー成分がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。
【0048】
上記光拡散層用組成物における重合開始剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能が充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
【0049】
上記光拡散層用組成物中における原料の含有割合(固形分)としては特に限定されないが、通常は5質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上60質量%以下とすることがより好ましい。
【0050】
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、光拡散層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成する光拡散層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
【0051】
上記ベナードセル構造は、光拡散層の表面の凹凸が大きくなりすぎてしまうおそれがある。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのない光拡散層が得られるだけでなく、光拡散層の表面の凹凸形状の調整も容易となる。
【0052】
上記光拡散層用組成物の調製方法としては、各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0053】
上記波長変換層の表面に、光拡散層用組成物を塗布した後、塗膜状の光拡散層用組成物を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送し、各種の公知の方法で光拡散層用組成物を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで、溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、光拡散粒子の凝集状態や分布状態を調整できる。
【0054】
また、その後、塗膜状の光拡散層用組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることにより光拡散層用組成物を硬化させて、光拡散層を形成する。
【0055】
上記光拡散層用組成物を硬化させる際の光として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190?380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0056】
なお、バインダー成分を形成する材料として、光重合性化合物と溶剤乾燥型樹脂とを用いることによっても、特異な凹凸を有する光拡散層を形成することができる。
具体的には、例えば、光重合性化合物、溶剤乾燥型樹脂、及び、光拡散粒子を含む光拡散層用組成物を用いて、上記と同様の方法により波長変換層上に光拡散層用組成物の塗膜を形成し、上記と同様に光拡散層用組成物を硬化させる。
【0057】
また、本発明の表示装置において、上記光拡散層は、上記波長変換層の少なくとも片面に配設されている。
上記光拡散層が上記波長変換層の片面に配設されている場合、より光エネルギー変換効率の向上を図れることから、上記光拡散層は、上記波長変換層の光源側の面上に配設されていることが好ましい。
また、光源部から照射された光の再帰反射により、より光エネルギー変換効率の向上を図れることから、上記光拡散層は、上記波長変換層の両面に配設されていることが好ましい。なお、波長変換層の両面に光拡散層が配設されている場合、波長変換層の片面側にのみ配設された場合と比較して、該光拡散層に含有させる光拡散粒子をより少なくすることができる。
上記波長変換層の両面に光拡散層が配設されている場合、上述した方法で、波長変換層の片面に光拡散層を形成した後、該波長変換層の反対側面上に同様の方法で光拡散層を形成すればよい。
【0058】
本発明の表示装置は、上述した波長変換層と該波長変換層の少なくとも片面に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する。このため、本発明の表示装置は、光エネルギー変換効率に優れたものとなる。
本発明の表示装置を構成する上記光拡散積層体以外の構成としては、特に限定されず従来公知の構成と同様のものが挙げられる。例えば、本発明の表示装置が液晶表示装置である場合、上記光拡散積層体の表示画面側に、公知のプリズム及び偏光フィルムが配置され、更に、偏光板、液晶セル等が配置されている。
【0059】
上記偏光板としては、所望の偏光特性を備えるものであれば特に限定されず、一般的に液晶表示装置の偏光板に用いられるものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコールフィルムが延伸されてなり、ヨウ素を含有する偏光板が好適に用いられる。
【0060】
上記液晶セルとしては特に限定されず、例えば、一般的に液晶表示装置用の液晶セルとして公知のものを用いることができる。また、液晶表示装置用の液晶セルとしては、TN、STN、VA、IPS及びOCB等の表示方式のものが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの表示方式の液晶セルであっても用いることができる。
【0061】
本発明の表示装置は、光エネルギー変換効率を優れたものとすることができるが、光エネルギー変換向上率にも優れたものとすることができる。具体的には、本発明の表示装置の光エネルギー変換向上率は、101.0?130.0%であることが好ましく、より好ましくは102.0?122.0%であり、さらに好ましくは110.0?122.0%である。上記光エネルギー変換向上率の上限が130.0%を超えると、黄色味が目立ちやすく、ホワイトバランスが調整しづらくなる。また、光拡散層に起因した正面輝度の低下が起こりやすくなる。下限が101.0%未満であると、光エネルギー変換効率が向上していないため、青味が目立ちやすく、ホワイトバランスが調整しづらくなる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の表示装置は、上述した構成を有するため、光エネルギー変換効率に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】半導体粒子を用いた波長変換層を含む本発明の表示装置におけるバックライト光源の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の表示装置における光拡散積層体の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の光エネルギー変換効率の測定における分光スペクトルを模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0065】
(実施例1)
以下のようにして作製した波長変換層の積層体(以下、波長変換積層体ともいう)の片面(光源部と反対側面)に、以下の方法にて光拡散層を配設し、波長変換積層体の光源部側の面には光拡散粒子を含有させない光学層を配置して、光拡散積層体を作製した。
【0066】
(波長変換積層体の作製)
東レ社製ルミラーT60の片面に、以下の条件でシリカ蒸着層を形成したバリアフィルム基材を作製した。
次いで、作製したバリアフィルム基材のシリカ蒸着層側の面に、下記組成の波長変換層用組成物を塗布し、乾燥させて塗膜を形成し、該塗膜上に、上記と同様にして用意した別のバリアフィルム基材のシリカ蒸着面をラミネートし、紫外線照射により上記塗膜を硬化させることで、波長変換層の積層体を作製した。なお、波長変換層における半導体粒子は、光学等方な粒子であった。
【0067】
(バリアフィルム基材の作製)
高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、東レ社製ルミラーT60の片面にターゲット物質(シリカ)からなるシリカ蒸着層(厚み50nm、屈折率1.46)を形成した。
【0068】
(波長変換層用組成物)
DIC社製ユニディックV-5500 99質量部
SIGMA-ALDRICH社製CdSe/ZnS 530 0.2質量部
SIGMA-ALDRICH社製CdSe/ZnS 610 0.2質量部
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(Irgacure(登録商標)184)
1質量部
【0069】
(光拡散層の作製)
下記組成の光拡散層用組成物(1)を、波長変換積層体の光源部と反対側面に塗布して光拡散層を形成し、波長変換層の光源部側面に、光拡散粒子を除いた以外は光拡散層用組成物(1)と同様の組成の組成物を用いて光学層を形成した。
光拡散層及び光学層の形成は、公知の方法で塗膜の形成、乾燥及び硬化を行った。
なお、図2に示した光拡散粒子の半径(R)を2.5μmとしたとき、hが1μm、Pが5μm、H^(1)が5μm、H^(2)が4μmとなる光拡散層を形成した。
形成した光拡散層中、光拡散粒子の70%以上が積層されず1段で存在していることが確認できた。また、光拡散粒子とバインダー成分との屈折率差は0.02?0.15内であった。
【0070】
(光拡散層用組成物(1))
ペンタエリスリトールトリアクリレート 99質量部
光拡散粒子(架橋アクリル樹脂ビーズ;平均粒子径5μm)(積水化成品工業株式会社製、SSX-105)
158質量部
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(Irgacure(登録商標)184)
1質量部
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1質量比) 387質量部
【0071】
得られた光拡散積層体を、青色LEDが実装された光源部上に配置し、該光源部から放出された青色光の光エネルギー変換効率を、以下の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0072】
(光エネルギー変換効率の測定)
分光放射計(トプコン社製 SR-UL2)を用いて、光拡散積層体がある状態と光拡散積層体がない状態とを測定する。それぞれで得られた分光スペクトルから青色光スペクトルの積分値、及び、緑色光スペクトルの積分値、赤色光スペクトルの積分値を算出する。光拡散積層体がある状態で測定した緑色光スペクトルの積分値と赤色光スペクトルの積分値の合算値を光拡散積層体がない状態で測定した青色光スペクトルの積分値で除し光エネルギー変換効率を測定した。後述する比較例1に係る光拡散積層体の光エネルギー変換効率を100.0%としたときの向上率を、光エネルギー変換向上率として計算した。ここで、分光放射計による測定で得られた分光スペクトルの模式図を図3に示した。図3に示されるように、上記青色光スペクトルとは波長380nmから長波長側にシフトした第一のボトムまで、緑色光スペクトルとは第一のボトムから長波長側にシフトした第二のボトムまで、赤色光スペクトルとは第二のボトムから波長780nmまでの各波長域で観察されるスペクトルをいう。
【0073】
得られた光拡散積層体を、青色LEDが実装された光源部(ピーク波長450nm)上に配置し、さらにプリズムシートBEFIII(3M社製、厚み130μm)及び偏光分離シートDBEF(3M社製、厚み400μm)を積層させ、該光源部から放出された青色光が、得られた光拡散積層体により白色光に変換されているかを、以下の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0074】
(色の評価)
得られた光拡散積層体を、青色LEDが実装された光源部上(ピーク波長450nm)に配置し、さらにプリズムシートBEFIII(3M社製、厚み130μm)及び偏光分離シートDBEF(3M社製、厚み400μm)を積層させ、暗室にて、正面方向から目視により以下の基準で色の評価を行った。
○:白色に見える
△:白色に対し、やや青みが見える
×:白色に対し、青みが見える
【0075】
(参考例1)
光拡散層を波長変換積層体の光源部側面に配設し、光学層を波長変換層積層体の光源部側と反対側面に配設した以外は、実施例1と同様にして光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0076】
(実施例3)
光学層に代えて、光拡散層を配設した以外は、実施例1と同様にして光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0077】
(比較例1)
光拡散層に光拡散粒子を含有させなかった以外は、実施例3と同様にして光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0078】
(比較例2)
下記組成の光拡散層用組成物(2)を用いて光拡散層を形成した以外は、実施例3と同様にして光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0079】
(光拡散層用組成物(2))
ペンタエリスリトールトリアクリレート 99質量部
光拡散粒子(架橋アクリル樹脂ビーズ;平均粒子径20μm)(積水化成品工業株式会社製、SSX-120)
111質量部
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(Irgacure(登録商標)184)
1質量部
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1質量比) 317質量部
【0080】
(実施例4)
光拡散層用組成物(2)の配合比率を調整し、表1に示したh、P、H1及びH2となるようにした以外は、実施例3と同様に光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0081】
(実施例5)
下記組成の光拡散層用組成物(3)を塗布して光拡散層を形成した以外は、実施例3と同様に光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0082】
(光拡散層用組成物(3))
ペンタエリスリトールトリアクリレート 99質量部
光拡散粒子(架橋アクリル樹脂ビーズ;平均粒子径10μm)(積水化成品工業株式会社製、SSX-110)
122質量部
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(Irgacure(登録商標)184)
1質量部
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1質量比) 333質量部
【0083】
(実施例6、参考例7?9)
光拡散層用組成物(1)の配合比率を調整し、図2に示した光拡散粒子の半径(R)を2.5μmとしたとき、h/2Rが10%(実施例6)、30%(参考例7)、40%(参考例8)、50%(参考例9)となるようにした以外は、実施例3と同様に光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換効率を測定し、結果を表1に示した。
【0084】
(実施例10?13)
光拡散層用組成物(3)の配合比率を調整し、図2に示した光拡散粒子の半径(R)を5μmとしたとき、Pが30μm(実施例10)、20μm(実施例11)、17μm(実施例12)、14μm(実施例13)となるようにした以外は、実施例3と同様に光拡散積層体を形成し、実施例1と同様にして青色光の光エネルギー変換率を測定し、結果を表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示したように、波長変換層の少なくとも片面に所定の凹凸が形成された光拡散層が配設された実施例に係る光拡散積層体は、光源部から照射された青色光の光エネルギー変換効率に優れていた。このため、実施例に係る光拡散積層体を備えた表示装置の光エネルギー変換効率が優れていた。
なお、実施例1及び2に係る光拡散積層体の比較により、波長変換層の片面に光拡散層が積層される場合、光源部側面に配設した方が光エネルギー変換効率に優れていた。
また、実施例1、2に係る光拡散積層体と実施例3に係る光拡散積層体との比較により、波長変換層の両面に光拡散層を配設した方が光エネルギー変換効率に優れていた。
また、実施例3及び4?6、参考例7?9に係る光拡散積層体の比較により、光拡散粒子の突出が大きいほど光エネルギー変換効率に優れていた。
また、実施例5及び10?13に係る光拡散積層体の比較により、光拡散粒子の密度(突起密度)が高い方が、光エネルギー変換効率に優れていた。
比較例1に係る光拡散積層体は、光拡散層に光拡散粒子を含まなかったため、また、比較例2に係る光拡散積層体は、光拡散粒子の光拡散層の最表面からの突出が不充分であったため、光エネルギー変換効率に劣っていた。
【0087】
また、表1に示したように、光エネルギー変換向上率が優れている実施例に係る光拡散積層体は、目視観察での色の評価においても優れていた。
【0088】
(参考例1)
上述した実施例1の光拡散層の作成において、光拡散粒子を、ブロードな粒度分布を持つ不定形型の粒子とすることもできる。
【0089】
(参考例2)
上述した実施例1の光拡散層の作成において、光拡散粒子を架橋アクリル樹脂ビーズ及び層状無機化合物とすることもできる。
層状無機化合物としては、特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト類、バーミキュライト、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、白雲母、金雲母、テトラシリリックマイカ、テニオライト、アンチゴライト、クロライト、クックアイト、ナンタイト等が挙げられる。これらの層状無機化合物は、天然物であってもよく、合成物であってもよい。また、上記層状無機化合物は、有機表面処理が施されていてもよい。
【0090】
光拡散粒子が、単分散型の粒子(形状が単一な粒子)ではない場合、大きさ及び形の異なる粒子がそれぞれ表面拡散又は内部拡散の効果を有し、光エネルギーの変換効率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の表示装置は、上述した構成からなるため、光エネルギー変換効率に優れたものとすることができる。
【符号の説明】
【0092】
11 光拡散層
12 光拡散粒子
13 バインダー成分
20 光源部
21 フレーム
22 青色LED
200 波長変換層
210 バインダー樹脂
220 赤色半導体粒子
230 緑色半導体粒子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的等方な半導体粒子を用いた波長変換層の少なくとも片面に、光拡散層が配設された光拡散積層体を有する表示装置であって、
前記光拡散層は、有機材料又は無機材料からなる光拡散粒子とバインダー成分とを含有するとともに、最表面に前記光拡散粒子が突出することにより形成された凹凸を有し、
前記光拡散粒子は、該光拡散粒子の粒径の3?20%の範囲で前記光拡散層の最表面から突出しており、
前記光拡散層の膜厚は、1?30μmであり、
前記光拡散層は、前記波長変換層の光源側と反対側面、又は、前記波長変換層の両面に配設されており、
前記光拡散積層体による光エネルギー変換効率が53.1%以上であり、
前記表示装置は、液晶表示装置である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
光拡散層に含まれる光拡散粒子は、70%以上が積層されず1段で存在している請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
光拡散層のバインダー成分と光拡散粒子との屈折率差が、0.02?0.15である請求項1又は2記載の表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-31 
出願番号 特願2015-15630(P2015-15630)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
登録日 2015-11-27 
登録番号 特許第5843024号(P5843024)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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