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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1333203
異議申立番号 異議2016-701210  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-28 
確定日 2017-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5940169号発明「吸水性ポリマーの連続的な製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5940169号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5940169号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5940169号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2012年12月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、同年1月12日、欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年12月28日に特許異議申立人、株式会社日本触媒(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月20日付けで取消理由通知が通知され、その指定期間内である同年5月16日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、申立人に対して同年5月24日付けで本件訂正請求があった旨の通知がされたところ、指定期間内に申立人から意見書が提出されなかったものである。


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

特許請求の範囲の請求項1に
「前記ベルト材料は、前記ポリマーゲル粒子との接触前に冷却されている」
とあるのを、
「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却する」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項は、ベルト材料の冷却が冷却液の吹きつけによって行われる旨の具体的な冷却方法を限定することにより、特許請求の範囲における明瞭でない記載を明確にし、かつ、特許請求の範囲を減縮しようとするものでもあるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして当該訂正事項は、願書に最初に添付された明細書の段落【0068】に記載があるので、新規事項の追加に該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし10は、請求項1の記載を、請求項2ないし10が直接又は間接的に引用しており、訂正事項によって連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし10は一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項1ないし10は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。


第3 本件発明について
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。)は、平成29年5月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程と、
(ii)必要に応じて、吸水性ポリマーの微粒子を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(iv)前記モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程と、
(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程と、
(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程と、
(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程と、
(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程と、
(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程と、
(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程と、
(xi)粉砕及び分級した前記吸水性ポリマー粒子の表面を処理する工程と、
を含み、
前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L_(0)に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥させ、前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記位置L_(0)における前記ベルト材料の表面は、前記ポリマーゲル粒子との接触前に160℃未満に冷却されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置L_(0)における前記ベルト材料の表面は、前記ポリマーゲル粒子との接触前に140℃未満に冷却されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水又は添加剤水溶液を前記ベルト材料に噴霧することによって前記ベルト材料の表面を冷却する、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
添加剤がポリアルキレングリコールである前記添加剤水溶液を前記ベルト材料に噴霧することによって前記ベルト材料の表面を冷却する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤水溶液における前記添加剤の濃度は、前記添加剤水溶液の重量に対して0.01?20重量%である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーゲル中のカルボン酸基は70モル%未満が中和されている、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(viii)において、スイベルベルトによって前記ポリマーゲルを前記ベルト材料の表面に供給する、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベルト乾燥機上において乾燥させる前記ポリマー粒子の層の厚みは2?20cmである、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ベルト乾燥機のベルト速度は0.005?0.05m/秒である、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。 」


第4 取消理由の概要
1.特許第5940169号の請求項1ないし3、7ないし10に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2.特許第5940169号の請求項1ないし3、7、9、10に係る発明は、甲第8号証及び甲第9号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3.特許第5940169号の請求項1ないし3、7ないし10に係る発明は、甲第8号証及び甲第9号証のいずれかに記載された発明、並びに甲第6号証及び甲第7号証に記載の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献
甲第1号証:特開2002-121291号公報
甲第2号証:特開2005-162834号公報
甲第3号証:特開平4-227705号公報
甲第4号証:羽生直之、「21バンド乾燥機」、化学装置、第40巻第4号、株式会社工業調査会、1998年4月1日発行、第98及び99ページ
甲第5号証:特開平8-134134号公報
甲第6号証:特表2003-528715号公報
甲第7号証:特表2008-534707号公報
甲第8号証:国際公開第2010/114058号
甲第9号証:国際公開第2011/90129号
甲第10号証:特開2007-71415号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲10」と略していう。)


第5 上記取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
取消理由は、訂正前の請求項1の「ベルト材料は・・・冷却されている」との記載について、ベルト材料を「冷却する」行為を指すのか、それともベルト材料が「冷却されている」状態を指すのか明らかではなく、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないとの内容であった。
しかしながら、上記記載を「ベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却すること」と訂正したことにより、ベルト材料を「冷却する」行為を意味することが明確になった。
したがって、本件特許発明1ないし3、7ないし10の特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4項に該当せず、それらの特許を取り消すべきものではない。
よって、取消理由1には理由がない。

2 取消理由2および3(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について
(1) 甲6ないし甲9に記載された事項及び甲8ないし9に記載された発明
ア 甲8に記載された事項及び甲8発明
(ア)甲8には、以下のとおりの記載がある。

a 「[0040] また、重合体の繰り返し単位として、酸基含有単量体、更にはアクリル酸を使用する場合、酸基は一価塩、好ましくはアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩、より好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩が用いられる。酸基の中和率は、重合前又は重合後に0?100モル%、好ましくは20?100モル%、さらにより好ましくは30?99モル%、さらにより好ましくは50?99モル%、さらにより好ましくは55?95モル%、特に好ましくは60?90モル%の範囲で中和される。」
b 「[0046] また、界面活性剤、ポリアクリル酸(塩)やその架橋体(吸水性樹脂)、澱粉、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、各種キレート剤、各種添加剤等(他の成分)を、必要に応じて、前記不飽和単量体に添加してもよい。これらのうち、本発明の方法は、キレート剤を添加する工程をさらに含むことが好ましい。キレート剤を使用することにより、本発明の吸水性樹脂の、色安定性(粒子状吸水剤を、高温高湿条件下で、長期間保存する場合の色安定性)の向上や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を達成することができる。」
c 「[0054] 上記の重合は、空気雰囲気下でも実施してもよいが、好ましくは窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気下、例えば、酸素濃度が1容積%以下の雰囲気下で、重合が行われる。また、単量体成分は、その溶解酸素が不活性気体で十分に置換されて、溶存酸素濃度が1[mg/L]未満となった後に、重合に用いられることが好ましい。」
d 「[0056] 本発明は、実験室スケールよりも実機スケール、中でも巨大スケールでの製造や粉砕における粒度制御で効果を発揮する。即ち、不飽和単量体水溶液を重合させて粒子状吸水性樹脂を得る場合、その生産能力として、1ラインないし装置あたり、1t/hr以上のスケールで粒子状吸水性樹脂の重合または粉砕が行われるのが好ましく、2t/hr以上がより好ましく、5t/hr以上が更に好ましく、10t/hr以上が特に好ましい(なお、「ton」、「t」は、Metiric tonであり、すなわち1000kgが1tonである)。かような巨大スケールで連続重合及び連続粉砕する場合において、本発明は好ましく適用することができる。なお、本発明における生産能力の上限値は、特に制限されないが、例えば、1ラインないし装置あたり、100t/hrである。」
e 「[0069] 乾燥温度は、通常100?250℃、好ましくは100?220℃、より好ましくは120?200℃、さらにより好ましくは135?195℃、特に150?190℃の温度範囲(熱風温度)で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、及び乾燥機の種類、風量に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。例えば、乾燥時間は、1分?1時間の範囲内で適宜選択すればよい。このような乾燥温度や乾燥時間であれば、得られる粒子状吸水性樹脂は、吸水倍率(CRC)に優れ、可溶分(Extractables)が少なく、かつ白色度の低下を抑制・防止できる。」
f 「[0125] (2-8)微粉リサイクル工程
粉砕工程または分級工程で発生する、粒子径が150μm未満の粒子を主成分(特に70重量%以上、さらには90重量%以上)に含む微粉は、吸水性樹脂の物性を低下させ、また、安全衛生上問題となるため、分級して取り除かれることが好ましい。
[0126] この微粉は適宜回収され、再度粒状に成形、または単量体水溶液や重合ゲルに回収(リサイクル)される。微粉のリサイクル方法は、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程など、吸水性樹脂の製造工程に微粉を添加すればよく、前記特許文献22?26などに示されている。」
g 「[0128] (2-9)表面架橋工程
本発明において、上記の(2-7)分級工程で得られた吸水性樹脂は、従来から知られている表面架橋工程を経て、より衛生材料向けに好適な吸水性樹脂とすることができる。表面架橋とは、吸水性樹脂の表面層(表面近傍、吸水性樹脂表面から通常は数10μm前後)にさらに架橋密度の高い部分を設けることであり、表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により形成することができる。」
h 「[0210] 〔製造例4〕
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を13.3g、アクリル酸を45.5g、工業純水を19.8gの割合で混合した中和液を連続的に作製した。
[0211] 上記中和液を78.6g/秒、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を23.3g/秒、20重量%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)を0.232g/秒の流量になるように設定して連続的にミキサーに供給することによって、単量体水溶液を調整した。このとき、単量体水溶液の温度は90?95℃であった。
[0212] この調製された単量体水溶液に、さらに、46重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液(流量0.0278g/秒)、4.0重量%過硫酸ナトリウム水溶液を流量0.635g/秒で加えた後、7m/分の速度で走行するエンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給した。ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液は速やかに重合を開始し、帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)が得られた。
[0213] この含水ゲルシートを直径12mmのスクリーンを有するカッターミル(商品名:「RC450」、吉工製)を用いて連続的に細粒化し、約1?4mmの大きさの粒子状含水ゲル(h)を得た。このとき粒子状含水ゲル(h)の含水率は29重量%であった。また、乾式法により粒子状含水ゲル(h)の粒子径分布を測定したところ、重量平均粒子径(D50)は3.0mm、粒子状含水ゲル(h)の全重量に対して、3mm以上の粒子径をもつゲル粒子は49.1重量%、850μm未満の粒子径をもつゲル粒子は3.2重量%であった。
[0214] 〔実施例23〕
以下では、図12に示されるように、冷却室付きの連続通気バンド乾燥機を用いて、粉砕物を得た。すなわち、上記製造例4で得られた粒子状含水ゲル(h)を連続的に、連続通気バンド乾燥機で24分間、通気バンド乾燥した。この乾燥機は同じ大きさの2室で構成されており、1室目はベルトの上方から線速1.0m/s、110?120℃の熱風を、2室目はベルトの上方から線速1.0m/s、160℃の熱風を当てて乾かした。この乾燥により得られた乾燥物(i)を隣接した冷却機により、1.0m/s、常温の風で8分間、流し、乾燥物の温度を87℃にまで冷却した。冷却機出口で採取した乾燥物(i)の含水率は10.0重量%、重量平均粒子径(D50)は2.9mmであった。また、この乾燥物(i)は、3mm以上の粒子径をもつゲル粒子を、乾燥物(i)の全重量に対して、43.2重量%含んでいた。
[0215] この乾燥物(i)をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して、目開き6mmの篩を通過しない粗大な乾燥物を連続的に分離した。このときの粒子径が6mm以上の粗大な乾燥物は、乾燥物の粒子が凝集したものであり、全乾燥物の18重量%を占めていた。この粗大な乾燥物をすぐにフラッシュミル(不二パウダル社製)で粗解砕を行い、粗解砕物(j)を得た。このときの粗解砕物(j)の重量平均粒子径(D50)は2.3mm、850μm未満の粒子径をもつ粒子は6.4重量%であった。一方、粗大な乾燥物をフラッシュミルで粗解砕している間、目開きが6mmの篩を通過した乾燥物(k)(重量平均粒子径(D50)は2.7mm、850μm未満の粒子径をもつ粒子は3.2重量%)を保温材で保温されたホッパーXの中で貯蔵した。さらに上記粗解砕物(j)と乾燥物(k)を再統合して、内壁を80℃に調節したホッパーYの中で0分間置いた。この乾燥物をロールミル(商品名:RM-16 株式会社浅野鉄工所製)に投入し、250kg/hrの処理速度で粉砕を行った。ロールのクリアランスは0.35mmであった。また、ロールミルでの乾燥物は、80℃で投入後速やかに(5秒以内)粉砕され、ロールミルから取り出され、ロールミル粉砕物(D1)を得た。ここで、接触温度計により測定した粉砕に供される、粗解砕物(j)と目開きが6mm篩を通過した乾燥物(k)の統合品の温度は80℃であった。この実施例における乾燥物保持時間は、乾燥物が冷却機の中にある時間(T1=8分)、分級、粗解砕、装置間の運搬(輸送)に要した時間(T2=3分)、およびホッパーYで保持した時間(T3=0分)の和で表される。
[0216] このようにして得られた粉砕物(D1)を、目開き850μmと150μmの篩で分級し、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合(重量%)を測定した。乾燥物保持時間(11分;T1+T2+T3=8分+3分+0分)と、ロールミル粉砕物(D1)の150μm以上850μm未満の粒子径をもつ粒子の割合(重量%)との関係を下記表5および図6に示す。」

(イ)そして、上記[0210]ないし[0216]の製造例4、実施例23には、「粒子状吸水性樹脂」の製造方法が記載されていると解される。

(ウ)してみると、上記の記載、特に、[0210]ないし[0216]の製造例4、実施例23の記載によれば、甲8には、次の発明が記載されていると認める。

「水酸化ナトリウム水溶液、アクリル酸、工業純水を混合した中和液を連続的に作製し、ポリエチレングリコールジアクリレートを供給することで単量体水溶液を調整し、
このとき、単量体水溶液の温度は90?95℃であり、
さらに、過硫酸ナトリウム水溶液を加えた後、
エンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給し、
ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液を速やかに重合を開始し、
帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)を得た後、カッターミルを用いて連続的に細粒化し、粒子状含水ゲルを得て、
粒子状含水ゲルを連続的に、連続通気バンド乾燥機で通気バンド乾燥し、
この乾燥機は同じ大きさの2室で構成されており、1室目はベルトの上方から110?120℃の熱風を、2室目はベルトの上方から160℃の熱風を当てて乾かし、
得られた乾燥物を、ロールミルで粉砕し、篩で分級する、
粒子状吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲8発明」という。)

イ 甲9に記載された事項及び甲9発明
(ア)甲9には、以下のとおりの記載がある。

i 「[0050] 上記中和の中和率は、特に制限されないが、酸基に対して10?100モル%が好ましく、30?95モル%がより好ましく、50?90モル%が更に好ましく、60?80モル%が特に好ましい。中和率が10モル%未満の場合、特に、CRC(無加圧下吸水倍率)や吸水速度が低下するおそれがある。」
j 「[0058] (h)単量体水溶液中のその他の成分
本発明で得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、任意成分として、上記単量体水溶液に、以下の物質を添加することができる。即ち、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂或いは吸水性樹脂を、単量体に対して、例えば0?50重量%、好ましくは0?20重量%、より好ましくは0?10重量%、更に好ましくは0?3重量%添加することができる。更に、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、各種キレート剤、ヒドロキシカルボン酸や還元性無機塩等の添加剤を、単量体に対して、例えば0?5重量%、好ましくは0?1重量%添加することができる。」
k 「[0065] 又、これらの重合は、空気雰囲気下でも実施可能であるが、着色防止の観点から窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気(例えば、酸素濃度1容積%以下)下で実施することが好ましい。又、単量体又は単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素濃度;1[mg/L]未満)した後に、重合することが好ましい。又、減圧、常圧、加圧の何れの圧力下でも実施することができる。重合後の含水ゲルは、重合機から排出した後に、残存モノマーの低減や連続生産でのリサイクルタイムの調整等で、必要により貯蔵(熟成)することもできる。」
l 「[0079] 通気ベルト式乾燥機を用いる場合、落下飛散率を低く制御するためにも、通気ベルト上での粒子状含水ゲルの移送速度は、ベルト幅、ベルト長、生産量、乾燥時間により適宜調整すればよいが、ベルト駆動装置の負荷、耐久性等の観点から、好ましくは0.3?5[m/分]、より好ましくは0.5?2.5[m/分]、更に好ましくは0.5?2[m/分]、特に好ましくは0.7?1.5[m/分]である。速度が早過ぎると装置の耐久性が低下するうえに、装置の振動も激しくなり落下飛散率が高くなってしまう。」
m 「[0093] 又、通気ベルト上又は通気プレート上に積載される含水ゲルの厚みの平均値は、通常1?30cmであり、好ましくは2?20cmであり、より好ましくは5?15cmであり、更に好ましくは7?13cmである。又、通気ベルト上又は通気プレート上に積載される含水ゲルの厚みは、通常0?30cmであり、好ましくは5?20cmであり、より好ましくは8?15cmであり、更に好ましくは9?11cmである。特に通気ベルト式乾燥機を用いる場合は含水ゲルの厚みの平均値及び含水ゲルの厚みを上記範囲内に制御することによって、乾燥効率や吸水性樹脂の諸物性を向上させることができ、特に、吸水性樹脂の嵩比重を高く制御することができる。」
n 「[0162] 本工程は、必要であれば、上記粉砕工程、分級工程で得られた吸水性樹脂の表面近傍を、吸水性能向上のために、表面架橋剤を用いて架橋(表面架橋反応)する工程である。本表面架橋処理によって、着色の少ない白色度の高い吸水性樹脂が得られ、特に高温表面架橋での吸水性樹脂に好ましく適用される。更に、本発明で得られる吸水性樹脂を衛生用品(特に紙オムツ)の原材料として使用する場合、本表面架橋処理によって、AAP(加圧下吸水倍率)を、好ましくは20[g/g]以上に高めればよい。」
o 「[0169] (2-6)微粉リサイクル工程
本工程は、乾燥工程及び必要により粉砕工程、分級工程で発生する微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を分離した後、そのままの状態で、或いは水和して重合工程や乾燥工程にリサイクルする工程をいい、米国特許出願公開第2006/247351号や米国特許第6228930号に記載された方法を適用することができる。微粉をリサイクルすることで、吸水性樹脂の粒度を制御することができるとともに、微粉の添加によって、高固形分濃度を容易に達成することができ、更に、乾燥後の吸水性樹脂を乾燥機の通気ベルト又は通気プレート(特に通気ベルト)から容易に剥離することができるので好ましい。
p 「[0203] 即ち、アクリル酸139.5g(単量体)、ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量478)0.09g(0.0097モル%、対単量体;内部架橋剤)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン0.02g(光分解型重合開始剤)を混合した溶液(A)、48.5重量%NaOH水溶液95.8g(中和用塩基性物質)をイオン交換水61.2gで希釈し、更にジエチレントリアミン5酢酸・五ナトリウム0.02g(キレート剤)を加えたNaOH水溶液(B)をそれぞれ調製し、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。上記NaOH水溶液(B)をマグネチックスターラーで攪拌しながら、上記溶液(A)を開放系で一度に加え混合し、単量体水溶液を得た。混合初期に析出物が見られるがすぐに溶解し、中和熱と溶解熱で液温が約90℃まで上昇した。得られた単量体水溶液の単量体濃度は55重量%、中和率は60モル%であった。」
q 「[0214] [比較例2]
内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)を0.03モル%(対単量体)を含む、中和率70モル%のアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液(単量体濃度53重量%)に、過硫酸ナトリウム0.04g(対単量体1モル;熱分解性重合開始剤)、及びジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム100ppm(キレート剤;対固形分濃度)をラインミキシングで連続混合した後、ベルト重合機に供給して、水溶液重合を行った。
[0215] 上記水溶液重合で得られた含水ゲル状架橋重合体を50℃で竪型解砕機(形式VM27-S (株)オリエント社製 スクリーン12mm)で解砕して、固形分濃度が70重量%である流動性のある粒子状の含水ゲル状架橋重合体(2)を得た。得られた粒子状含水ゲル状架橋重合体(2)のCRCは25[g/g]、水可溶分は2.3重量%、残存モノマーは600ppm、重量平均粒子径(D50)は2.6mmであった。
[0216] 得られた粒子状含水ゲル状架橋重合体(2)を、トラバースフィーダーを用いて、通気ベルト式乾燥機に導入して乾燥を行い、比較乾燥物(2)を得た。該乾燥は、トラバースフィーダーのシーケンス制御によって、上記粒子状含水ゲル状架橋重合体(2)を連続可動している通気ベルト(パンチングメタル)上に連続的に積層させた。又、乾燥時間は35分間であった。尚、乾燥機及びその他の乾燥条件は、下記(a)?(c)に設定した。
[0217] (a)通気ベルト式乾燥機
通気ベルト式乾燥機として、互いに独立して温度制御できる、同じ容積の乾燥室を合計6室有する乾燥機を使用した。各乾燥室の通過時間は約5.8分間(通気ベルト上で35分間/6室)であった
(b)熱風の温度と風速
各乾燥室に導入した熱風は、温度180℃、露点10℃、風速1.6[m/秒]に設定した。尚、熱風の風向は、第1室については乾燥機下部から上方に、第2室から第6室までは乾燥機上部から下方とした。
[0218] (c)通気ベルト
通気ベルトとして、材質がSUS304のステンレス製ベルトであり、孔の幅が1.2mm、長さが15mmの長丸孔千鳥型、開孔率が27%であるパンチングメタルを使用した。
[0219] 稼働した後、乾燥機室内から回収された含水ゲルの固形分量は、この期間内にフィードされた含水ゲルの固形分量に対して1.3重量%であった。
[0220] 上記比較乾燥物(2)の全量を3段ロールミル(ロールギャップ;上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した後、目開き850μmの金属篩網を有する篩い分け装置で分級し、重量平均粒子径(D50)が460μmの比較吸水性樹脂(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂(2)のCRC等の諸物性を表1に示す。
[0221] [実施例4]
凝集処理として、通気ベルト式乾燥機の第1室に、水蒸気を混合することにより露点を制御した温度140℃、露点75℃の熱風を風速1.6[m/秒]で、乾燥機下部から上方に流した以外は、比較例2と同様の操作を行い、乾燥物(4)を得た。
[0222] 1ヶ月間連続稼働した後、乾燥機室内から回収された含水ゲルの固形分量は、この期間内にフィードされた含水ゲルの固形分量に対して0.5重量%であった。
[0223] 上記乾燥物(4)の全量を、比較例2と同様の粉砕、分級を行い、重量平均粒子径(D50)が450μmの吸水性樹脂(4)を得た。尚、粉砕後のロールミル表面に、未乾燥物由来の付着物は確認されなかった。得られた吸水性樹脂(4)の諸物性を表1に示す。」

(イ) そして、上記[0214]ないし[0223]の比較例2、実施例4には、「吸水性樹脂」の製造方法が記載されていると解される。

(ウ) してみると、上記の記載、特に、[0214]ないし[0223]の比較例2、実施例4の記載によれば、甲9には、次の発明が記載されていると認める。

「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含む、中和率70モル%のアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液に、
過硫酸ナトリウムを連続混合した後、
ベルト重合機に供給して、水溶液重合を行い、
上記水溶液重合で得られた含水ゲル状架橋重合体を竪型解砕機で解砕して粒子状含水ゲル状架橋重合体を得て、
通気ベルト式乾燥機に導入して乾燥を行い乾燥物を得て、
3段ロールミルで粉砕した後、篩い分け装置で分級する、
吸水性樹脂の製造方法であり、
上記乾燥機の乾燥条件は、
通気ベルト式乾燥機として、互いに独立して温度制御できる、同じ容積の乾燥室を合計6室有する乾燥機を使用し、
各乾燥室に導入した熱風は、温度180℃に設定し、
ただし第1室に温度140℃の熱風を流す、
吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲9発明」という。)

ウ 甲6に記載された事項
甲6には、以下のとおりの記載がある。

r 「【請求項1】 脱水されたスラッジケーキとアルカリ性添加物とを混合し、次にアルカリとの発熱反応からの熱を用いて殺菌条件下で乾燥させ、発熱反応により混合物から蒸発された水分を抽出することにより乾燥を行う汚水スラッジ等の有機スラッジの処理方法において、
前記殺菌条件は、少なくとも12のpHで、10時間以下の時間をかけて殺菌温度を維持することからなり、混合物のpHは1日以内は12以上に維持することを特徴とする処理方法。
s 「【0035】
乾燥は、50?65%好ましくは55?60%の乾燥固形物含量となるまで製品を乾燥させるべく行われる。乾燥製品は、傾斜ベルトコンベア14、反転ベルトコンベア16、スクリューフィーダ排出機18および循環ベルトコンベア20により支持された乾燥ホッパ10に2回以上通される。乾燥は、排出ファン(図示せず)により発生される空気流により補助される。空気流は、ホッパ10の断面および長さに亘って分散される。」
t 「【図1】



エ 甲7に記載された事項
甲7には、以下のとおりの記載がある。

u 「【請求項1】
モノマー溶液を重合させ、得られたヒドロゲルを暖めたガス流を使用して乾燥することによる低い乾燥特性指数を有する吸水性ポリマーの製造方法において、
乾燥を少なくとも2個の温度帯域中で実施し、その際ガス導入温度は、T_(n)がT_(n+a)に等しくない条件を満たし、その際指数nおよびaはそれぞれ0より大きい整数である
および/または
ガス流を、ヒドロゲルに対してベルト乾燥機の前方部分で下からおよびベルト乾燥機の後方部分で上から流し、その際ヒドロゲルの含水量15?45質量%で流れの逆転を行う
および/または
ヒドロゲル層に対してベルト乾燥機中で少なくとも部分的に下から流し、その際ガス速度が、ベルトからヒドロゲルが離れるために必要なガス速度の5?30%である
ことを特徴とする、吸水性ポリマーの製造方法。」
v 「【請求項20】
ベルト速度が0.005?0.05m/sである請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。」


(2) 甲8に基く特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について
ア 本件特許発明1
(ア)本件特許発明1と甲8発明との対比
甲8発明の「粒子状吸水性樹脂の製造方法」は、本件特許発明1の「吸水性ポリマー粒子の製造方法」に相当する。
甲8発明の「水酸化ナトリウム水溶液、アクリル酸、工業純水を混合した中和液を連続的に作製し、ポリエチレングリコールジアクリレートを供給することで単量体水溶液を調整」する工程は、水酸化ナトリウムにより少なくともアクリル酸が部分的に中和されており、ポリエチレングリコールジアクリレートは架橋剤の1種であると認められることから、本件特許発明1の「(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程」に相当する。
甲8発明の「過硫酸ナトリウム水溶液を加え」る工程は、本件特許発明1の「(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程」に相当する。
甲8発明の「単量体水溶液の温度は90?95℃」であることは、単量体水溶液が加熱され脱気が進み、酸素含有量は減少すると解されることから、本件特許発明1の「(iv)前記モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程」に相当する。
甲8発明の「エンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給」、「ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液は速やかに重合を開始」することは、エンドレスベルト上で重合反応が進行し、エンドレスベルトは重合反応器と解されることから、それぞれ、本件特許発明1の「(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程」、「(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程」に相当する。
甲8発明の「帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)を得て、カッターミルを用いて連続的に細粒化し、粒子状含水ゲルを得」ることは、本件特許発明1の「(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程」に相当する。
甲8発明の「粒子状含水ゲルを連続的に、連続通気バンド乾燥機で通気バンド乾燥」することは、ベルト材料の表面に対して含水ゲルを配置して乾燥を行い、その位置は乾燥工程に供される箇所、つまりL0と解されることから、本件特許発明1の「(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程」、「前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L0に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥」することに相当する。
甲8発明の「ロールミルで粉砕」及び「篩で分級」することは、それぞれ本件訂正特許発明1の「(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程」、及び「(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲8発明は、
「吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程と、
(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(iv)前記モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程と、
(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程と、
(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程と、
(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程と、
(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程と、
(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程と、
(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程と、
を含み、
前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L0に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥されている方法。」である点で一致し、次の相違点1において一応相違し、相違点2において相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は「(xi)粉砕及び分級した前記吸水性ポリマー粒子の表面を処理する工程」を含むのに対して、甲8発明は、当該工程を含むことが特定されていない点。

<相違点2>
本件特許発明1は「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却する」と特定するのに対して、甲8発明は、このような特定事項がなされていない点。

(イ)判断
まず、相違点1について検討する。
甲8には、ポリマー粒子の表面処理方法として、分級工程で得られた吸水性樹脂に対して「従来から知られている表面架橋工程」を設けることが記載され、これにより「より衛生材料向けに好適な吸水性樹脂とすることができる」ことが示されている(記載事項g)。してみると、甲8発明における「粒子状吸水性樹脂」の製造方法の好ましい態様として、甲8には本件特許発明1の「表面を処理する工程」を含む態様が記載されているといえる。
よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
次に相違点2について検討する。
相違点2に係る「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却する」との特定事項について、甲8には記載も示唆もないから、本件特許発明1は、甲8発明とは相違するものである。
また、相違点2に係る特定事項は、甲8にも、また、甲6ないし7のいずれにも記載ないし示唆がなく、本件特許の優先日当時の技術常識からみて周知事項であったとの特段の事情もないから、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点2に係る事項を備えることで、ベルト材料へのポリマーゲル粒子の付着を防止することができ、乾燥されたポリマーゲル粒子をベルト材料の表面から容易に放出し得るとともに、得られる乾燥ゲルの不利な着色を最小化することができるとの格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点2に係る特定事項は、甲8発明において実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲8に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明1は、甲8発明及び甲6ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

イ 本件特許発明2、3、7ないし10
本件特許発明2、3、7ないし10は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定をしたものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明2、3、7、9、10は、甲8に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明2、3、7ないし10は、甲8発明および甲6ないし7に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

ウ 小括
したがって、本件特許発明1ないし3、7、9、10は、甲8に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
また、本件特許発明1ないし3、7ないし10は、甲8に記載された発明及び甲6ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
よって、甲8に基く取消理由2ないし3には理由がない。

(3) 甲9に基く特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
ア 本件特許発明1
(ア)本件特許発明1と甲9発明との対比
甲9発明の「吸水性樹脂の製造方法」は、本件特許発明1の「吸水性ポリマー粒子の製造方法」に相当する。
甲9発明の「内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレートを含む、中和率70モル%のアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液」を用いることは、本件特許発明1の「(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程」に相当する。
甲9発明の「過硫酸ナトリウムを連続混合」することは、本件特許発明1の「(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程」に相当する。
甲9発明の「ベルト重合機に供給」、「水溶液重合」することは、それぞれ、本件特許発明1の「(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程」、「(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程」に相当する。
甲9発明の「水溶液重合で得られた含水ゲル状架橋重合体を竪型解砕機で解砕して粒子状含水ゲル状架橋重合体を得」る工程は、本件特許発明1の「(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程」に相当する。
甲9発明の「通気ベルト式乾燥機に導入して乾燥」することは、ベルト材料の表面に対して含水ゲルを配置して乾燥を行い、その位置は乾燥工程に供される箇所、つまりL0と解されることから、本件特許発明1の「(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程」、「前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L0に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥」することに相当する。
甲9発明の「3段ロールミルで粉砕」及び「篩い分け装置で分級」することは、それぞれ本件特許発明1の「(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程」及び「(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程」に相当する。

したがって、本件発明1と甲9発明は、
吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程と、
(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程と、
(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程と、
(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程と、
(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程と、
(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程と、
(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程と、
を含み、
前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L0に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥されている方法。」である点で一致し、次の相違点4、6において一応相違し、相違点5において相違する。

<相違点4>
本件特許発明1は「(xi)粉砕及び分級した前記吸水性ポリマー粒子の表面を処理する工程」を含むのに対して、甲9発明は、当該工程を含むことが特定されていない点。

<相違点5>
本件特許発明1は「前記ベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却する」と特定するのに対して、甲9発明では、対応する事項が特定されていない点。

<相違点6>
本件特許発明1は「(iv)前記モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程」を含むのに対して、甲9発明は、当該工程を含むことが特定されていない点。

(イ)判断
まず、相違点4について検討する。
甲9には、ポリマー粒子の表面処理方法として、「表面架橋剤を用いて架橋(表面架橋反応)する工程」が記載され、これにより「吸水性能向上」が示されている(記載事項n)。してみると、甲9発明における「吸水性樹脂」の製造方法の好ましい態様として、甲9には本件特許発明1の「表面を処理する工程」を含む態様が記載されているといえる。
よって、上記相違点4は実質的な相違点ではない。
次に相違点6について検討する。
甲9には、モノマー水溶液の酸素含有量について、「単量体又は単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素濃度;1[mg/L]未満)した後に、重合することが好ましい」ことが記載されている(記載事項k)。してみると、甲9発明における「吸水性樹脂」の製造方法の好ましい態様として、甲9には本件特許発明1の「モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程」を含む態様が記載されているといえる。
よって、上記相違点6も実質的な相違点ではない。
最後に、相違点5について検討する。
相違点5に係る特定事項は、甲9にも、また、甲6ないし7のいずれにも記載ないし示唆がなく、本件特許の優先日当時の技術常識からみて周知事項であったとの特段の事情もないから、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点5に係る事項を備えることで、ベルト材料へのポリマーゲル粒子の付着を防止することができ、乾燥されたポリマーゲル粒子をベルト材料の表面から容易に放出し得るとともに、得られる乾燥ゲルの不利な着色を最小化することができるとの格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点5に係る特定事項は、甲9発明において実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲9に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明1は、甲9発明及び甲6ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

イ 本件特許発明2、3、7ないし10
本件特許発明2、3、7ないし10は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定をしたものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明2、3、7ないし10は、甲9発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明2及び3、7ないし10は、甲9発明及び甲6ないし7に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

ウ 小括
したがって、本件特許発明1ないし3、7、9、10は、甲9に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないので、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
また、本件特許発明1ないし3、7ないし10は、甲9に記載された発明及び甲6ないし7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
よって、甲9に基く取消理由2ないし3には理由がない。


第6 取消理由において採用しなかった特許異議の申立理由について
1 甲1に基く特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について
(1) 申立人の主張
申立人は、本件特許発明1ないし3、7、9、10は、甲1に記載された発明と同一である旨を主張し、また、本件特許発明1ないし10は、甲1及び甲2ないし7に記載された発明並びに本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができ、その効果も甲1ないし7及び甲10の記載から当業者が予測することができたものである旨も主張する。

(2) 判断
ア 本件特許発明1
甲1には、架橋剤を含む単量体水溶液を重合してなる含水ゲル状化共重合体を加熱乾燥した後に粉砕する吸水性樹脂粉末の製造方法が記載されている(請求項1)。そして、製造例5には、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレート及び脱イオン水を含む単量体水溶液に、窒素ガスを吹き込んで酸素濃度を0.5ppm以下にし、開始剤水溶液を順次添加した後、スチール製のエンドレスベルト重合機に連続供給して重合反応を行い、得られた重合体をベルト重合機の末端から排出して、連続裁断機で裁断した後、ミートチョッパーで粉砕することにより、粒子状ゲル状架橋重合体が得られ(【0078】)、また、該粒子状含水ゲル状架橋共重合体を、パンチングメタル上に積載し、ベルト式乾燥機で連続的熱風乾燥(180℃の熱風(露点60℃)で上下方向に20分間)を行い、粒子状の乾燥重合体からなるブロック状物(材料温度180℃)が得られること記載されている(【0079】)。さらに、実施例18には、製造例5で得られた粒子状の乾燥重合体のブロック状物(180℃)に対して、室温の冷風を上下方向に連続供給し、粒子状の乾燥重合体のブロック状物を60℃に強制冷却し、ロール粉砕機に連続供給して、連続重合・連続乾燥・連続粉砕を行い(【0092】、【0093】)、実施例19では、実施例18で強制冷却工程を経て得られた吸水性樹脂粉末に、表面架橋剤水溶液をスプレーで噴霧し、195℃で40分間再加熱処理を行うことで、表面架橋された吸水性樹脂粉末を得ることが記載されている(【0093】)。
しかしながら、甲1には、本件特許発明1の「前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L_(0)に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥させ」るに際し、「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却する」との事項については記載されていない。
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。
また、甲2ないし7及び甲10にも上記事項について、記載ないし示唆はない。そして、当該事項について、本件特許の優先日当時の技術常識から当業者にとって明らかな事項であるとする特段の事情もない。
そうであれば、本件特許発明1は、甲1ないし7及び甲10に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2ないし10
本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に判断され、本件特許発明2、3、7、9、10は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、本件特許発明2ないし10は、甲1ないし7及び甲10に記載された発明並びに本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、その効果も甲1ないし7及び甲10の記載から当業者が予測することができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、甲1に基く申立人の主張は採用できない。

(3) 小括
よって、本件特許発明1ないし3、7、9、10は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
また、本件特許発明1ないし10は、甲1に記載された発明、甲2ないし7及び甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
甲1に基く申立理由には理由がない。

2 特許法第36条第6項第1号について
(1) 申立人の主張
申立人は、本件特許発明1ないし10の解決すべき課題は、ゲル粒子のコンベヤベルトへの付着やゲル粒子の色の変化を抑制して吸水性ポリマー粒子を製造することであり、それを解決するためには、ベルト材料が高温ではない温度まで冷却されていることが必要であるところ、本件特許発明1、4ないし10においては、冷却後の温度の特定がなく、また、本件特許明細書においては、具体的な実施例や比較例が示されていないので、本件特許発明1、4ないし10は、発明の課題が解決できない範囲を含んでいることは明らかである旨の主張をしている。
また、申立人は、本件特許発明2及び3は、ベルトの表面温度がそれぞれ160℃未満及び140℃未満に限定されているが、それぞれの温度を選択することの技術的意義が本件特許明細書中に示されておらず、サポート要件違反であることも主張している。

(2) 判断
本件特許発明1は、「前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L_(0)に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥させ」るに際し、「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却すること」が特定された。そして、本件特許明細書の【0006】の記載から、ベルト乾燥機の上流部位のベルト材料は180℃よりもかなり高い温度に加熱される状況にあることが窺えるところ、本件特許発明1は、上記の特定の構成を備えることで、ベルト表面が「冷却液」により冷却されて高温ではない温度となり、ベルト材料へのゲル粒子の強固な付着を防止し、乾燥ゲルの不利な着色が最小化されて、課題が解決されることが理解できる(【0066】、【0068】)。そうであれば、本件特許発明1は、冷却後の温度の特定がなく、また、本件特許明細書には具体的な実施例や比較例がないものではあるが、上記「前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却すること」との特定により、本件特許発明1において発明の課題が解決できるといえるから、申立人の、本件特許発明1、4ないし10は、発明の課題が解決できない範囲を含んでいる旨の主張は採用できない。
次に本件特許発明2及び3におけるベルト表面の冷却温度の特定について検討する。
申立人からは、本件特許発明2及び3におけるベルトの表面の設定温度では課題を解決できないとする具体的な理由の主張がないところ、本件特許明細書の【0006】の記載から、ベルト材料は180℃よりもかなり高い温度に加熱される状況にあることが窺え、これを踏まえれば、ベルト材料の表面温度を160℃未満あるいは140℃未満に冷却すると特定することは十分な技術的意義がある。
そうであるから、本件特許発明2、3に係る申立人の主張も採用できない。

(3) 小括
よって、本件特許発明1ないし10の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許に対してされたものではないから、それらの特許は同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
特許法第36条第6項第1号に係る申立理由には理由がない。

3 甲8発明又は甲9発明を主引用発明とし、甲2ないし5及び甲10に記載された事項に基いた特許法第29条第2項について
(1) 申立人の主張
申立人は、本件特許発明1ないし10は、甲8発明又は甲9発明を主引用発明とし、取消理由で用いなかった他の証拠(甲2ないし5及び甲10)の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の主張もしている。

(2) 判断
本件特許発明1と甲8発明を比較すると、第5 2(2)ア(イ)で検討したとおり、相違点2が存在し、また、本件特許発明1と甲9発明の比較においては、第5 2(3)ア(イ)で検討したとおり、相違点5が存在する。
そして、相違点2又は相違点5は、第6 1(2)アにおいて、本件特許発明1と甲1に記載された発明との比較において指摘した相違点でもあるところ、当該相違点については、第6 1(2)アで述べたように、甲2ないし5及び甲10に記載ないし示唆はなく、また、本件特許の優先日当時の技術常識から当業者にとって明らかな事項でもない。
そうであるから、本件特許発明1は、甲8発明又は甲9発明を主引用発明とし、甲2ないし5及び甲10に記載された事項に基いたとしても当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した本件特許発明2ないし9についても同様であり、上記申立人の主張は採用できない。

(3) 小括
本件特許発明1ないし10は、甲8に記載された発明、甲2ないし5及び甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲9に記載された発明、甲2ないし5及び甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
甲8発明又は甲9発明を主引用発明とし、他の証拠(甲2ないし5及び甲10)に基く申立理由には理由がない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に中和されたモノエチレン性不飽和カルボン酸基含有モノマー(α1)と、少なくとも1種の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液を調製する工程と、
(ii)必要に応じて、吸水性ポリマーの微粒子を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(iii)重合開始剤又は2種以上の成分を含む重合開始剤系の少なくとも1種の成分を前記モノマー水溶液に添加する工程と、
(iv)前記モノマー水溶液の酸素含有量を減少させる工程と、
(v)前記モノマー水溶液を重合反応器に仕込む工程と、
(vi)前記モノマー水溶液中のモノマーを前記重合反応器内で重合させる工程と、
(vii)前記重合反応器からポリマーゲルストランドを排出し、必要に応じて前記ポリマーゲルを粉砕してポリマーゲル粒子を得る工程と、
(viii)前記ポリマーゲル粒子を乾燥させる工程と、
(ix)乾燥させた前記ポリマーゲル粒子を粉砕して吸水性ポリマー粒子を得る工程と、
(x)粉砕した前記吸水性ポリマー粒子の分級を行う工程と、
(xi)粉砕及び分級した前記吸水性ポリマー粒子の表面を処理する工程と、
を含み、
前記工程(viii)において、前記工程(vii)で得られた前記ポリマーゲル粒子をベルト乾燥機のベルト材料の表面の位置L_(0)に配置して前記ベルト乾燥機によって乾燥させ、前記ベルト材料の表面を、前記ポリマーゲル粒子との接触前にベルト材料に冷却液を吹き付けることによって冷却することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記位置L_(0)における前記ベルト材料の表面は、前記ポリマーゲル粒子との接触前に160℃未満に冷却されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置L_(0)における前記ベルト材料の表面は、前記ポリマーゲル粒子との接触前に140℃未満に冷却されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水又は添加剤水溶液を前記ベルト材料に噴霧することによって前記ベルト材料の表面を冷却する、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
添加剤がポリアルキレングリコールである前記添加剤水溶液を前記ベルト材料に噴霧することによって前記ベルト材料の表面を冷却する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤水溶液における前記添加剤の濃度は、前記添加剤水溶液の重量に対して0.01?20重量%である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーゲル中のカルボン酸基は70モル%未満が中和されている、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(viii)において、スイベルベルトによって前記ポリマーゲルを前記ベルト材料の表面に供給する、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベルト乾燥機上において乾燥させる前記ポリマー粒子の層の厚みは2?20cmである、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ベルト乾燥機のベルト速度は0.005?0.05m/秒である、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-21 
出願番号 特願2014-551548(P2014-551548)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井津 健太郎  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 福井 美穂
守安 智
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5940169号(P5940169)
権利者 エボニック デグサ ゲーエムベーハー
発明の名称 吸水性ポリマーの連続的な製造方法  
代理人 特許業務法人あしたば国際特許事務所  
代理人 赤塚 賢次  
代理人 赤塚 賢次  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人あしたば国際特許事務所  
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