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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H05K 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H05K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H05K 審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 H05K |
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管理番号 | 1333217 |
異議申立番号 | 異議2016-701119 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-12-07 |
確定日 | 2017-09-08 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5940943号発明「絶縁樹脂材料及び多層基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5940943号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5940943号の請求項1ないし6、8及び9に係る特許を維持する。 特許第5940943号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5940943号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成24年9月6日に特許出願され、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、同年12月7日に特許異議申立人家田亘久(以下、「異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(以下、「異議申立1」という。)がされ、同年12月27日に特許異議申立人実川栄一郎(以下、「異議申立人2」という。)により特許異議の申立て(以下、「異議申立2」という。)がされ、平成29年3月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月2日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して同年6月29日に異議申立人1から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」を、 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.47以下であり、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」に訂正する(下線は、特許権者が付与した。以下同様。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2において、 「熱可塑性樹脂を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含まないか又は前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 前記エポキシ樹脂、前記熱可塑性樹脂及び前記難燃剤の内の少なくとも1種によって、絶縁樹脂材料にリン原子が含まれる、請求項1に記載の絶縁樹脂材料。」を、 「熱可塑性樹脂を含まないか又は含み、 前記エポキシ樹脂、前記熱可塑性樹脂及び前記難燃剤の内の少なくとも1種によって、絶縁樹脂材料にリン原子が含まれる、請求項1に記載の絶縁樹脂材料。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1?7」とあるのを、「請求項1?6」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9において、「請求項1?8」とあるのを、「請求項1?6、8」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張/変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に関連する記載として、特許第5940943号の明細書(以下、「明細書」という。)には、「具体的には、リン原子の含有量(重量%)を含有量bは1%以下であることが好ましい。」(段落【0024】)、「上記成分A100重量%中、上記難燃剤の含有量は好ましくは1重量%以上、好ましくは5重量%以下である。上記難燃剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の難燃性が効果的に高くなる。」(段落【0093】)と記載されている。 また、明細書の段落【0152】の【表1】において、実施例3ではaの値が2.47であり、更に、実施例1?3及び6では、いずれも、aの値は2.47以下であり、bの値は1以下であり、かつ、難燃剤を5重量%以下含んでいる。 そうすると、「前記硬化剤とは別に難燃剤を絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下含み、 」、及び「aの値が2.47以下であり、bの値が1以下」とした発明は、明細書に記載されているものと認められる。 そして、上記訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内において、難燃剤の含有量、aの値、及びbの値を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載されていた難燃剤にかかる限定の記載を、請求項1に記載したことから、関連する記載を削除したものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4及び5について 訂正事項4及び5は、請求項7の削除に伴って、請求項8及び請求項9の引用関係を訂正したものであり、新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これらの訂正事項1?訂正事項5は、一群の請求項に対して請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?6、8、9に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明6」、「本件発明8」、「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?6、8、9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.47以下であり、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。 【請求項2】 熱可塑性樹脂を含まないか又は含み、 前記エポキシ樹脂、前記熱可塑性樹脂及び前記難燃剤の内の少なくとも1種によって、絶縁樹脂材料にリン原子が含まれる、請求項1に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項3】 前記エポキシ樹脂が、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂を含有し、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、前記芳香族骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が10重量%以上、95重量%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項4】 前記エポキシ樹脂のエポキシ当量と前記硬化剤の当量との比が、1:0.8?1:4である、請求項1?3のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項5】 絶縁樹脂材料に含まれる前記溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が40重量%以上、99重量%以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項6】 硬化促進剤をさらに含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項8】 フィルム状に成形されたBステージフィルムである、請求項1?6のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項9】 回路基板と、 前記回路基板上に配置された絶縁層とを備え、 前記絶縁層が、請求項1?6、8のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料を硬化させることにより形成されている、多層基板。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1?9に係る特許に対して平成29年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1 本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?4、7、8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)理由2 本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1、2、4、7、8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)理由3 本件特許は、異議申立書2の51ページ5行?25行、及び52ページ24行?27行に記載の理由により、請求項1?9に係る発明の範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 異議申立人1が提出した特許異議申立書を、以下、「異議申立書1」といい、異議申立人2が提出した特許異議申立書を、以下、「異議申立書2」という。 刊行物1:特開2011-89038号公報 (異議申立書1の甲第1号証、異議申立書2の甲第1号証) 刊行物2:国際公開第2010/087526号 (異議申立書2の甲第2号証) 刊行物3:特開2011-32389号公報 (異議申立書2の甲第3号証) 刊行物4:特開2011-144361号公報 (異議申立書2の甲第4号証) 刊行物5:特開2010-248473号公報 (異議申立書2の甲第5号証) 刊行物6:「ノボラック樹脂 PHENOLITE」、DIC株式会社のホームペ ージ http://www.dic-global.com/jp/ja/products/epoxy/ phenolite.html (異議申立書1の甲第8号証、異議申立書2の甲第6号証) 刊行物7:特開2010-285594号公報 (異議申立書1の甲第2号証) 刊行物8:特開2011-256300号公報 (異議申立書1の甲第3号証) 刊行物9:特開2011-52109号公報 (異議申立書1の甲第4号証) 刊行物10:特開2007-254710号公報 (異議申立書1の甲第5号証) 刊行物11:特開2013-75948号公報 (異議申立書1の甲第6号証) 刊行物12:国際公開第2011/132408号公報 (異議申立書1の甲第7号証) 刊行物13:特開2013-64136号公報 (異議申立書1の甲第9号証) 刊行物14:特開平5-112631号公報 (異議申立書1の甲第10号証) 3 刊行物の記載 (1)刊行物1 刊行物1(特に、【請求項1】?【請求項4】、段落【0001】?【0004】、【0010】?【0012】、【0021】、【0025】、【0026】、【0028】、【0037】、【0038】、【0045】、【0052】、【0055】?【0057】、【0064】、【0066】、【0069】、【0084】、【0085】、【0088】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、実施例1として、次の発明(以下、「刊1A発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤(混合溶媒)を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤(フェナントレン型リン化合物)を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.2重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.65であり、bの値が0.50であり、(a+10×b)の値が7.65である、樹脂組成物。」 同じく、刊行物1には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例2として、次の発明(以下、「刊1B発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.91重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が1.73であり、bの値が0.56であり、(a+10×b)の値が7.33である、樹脂組成物。」 ここで、難燃剤の含有量は、次のとおりに計算したものである(特許権者提出の意見書3ページ22行?4ページ2行を参照。)。 刊1A発明(実施例1)では、 (5/(156.1-60))×100=5.20重量% 刊1B発明(実施例2)では、 (5/(204.6-120))×100=5.91重量% また、異議申立書1の31ページ?32ページの「甲第1号証の実施例」においては、窒素原子の含有量a及びリン原子の含有量bを、「縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の」値として計算しておらず、a、b及び(a+10b)の各値は誤記である(なお、異議申立書1の34ページの「甲第2号証の実施例(一部)」の表、及び36ページ?37ページの「甲第3号証の実施例(一部)」の表についても、同様に誤記である。)。 正しくは、下記に記載したとおりである。 実施例1では、 a=(0.120×21+0.257×0.1)/((30+25 +6+21+9+0.1+5)/100) =2.65 b=0.50 a+10×b=7.65 実施例2では、 a=1.73 b=0.56 a+10×b=7.33 また、異議申立書2の16ページの表Aにおいては、熱可塑性樹脂YX6954の、実施例2の値「6」は誤記で、正しくは「3」であり、熱可塑性樹脂KS-1の、実施例2の値「1」は誤記で、正しくは「1.5」であり、絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分の量の、実施例2の値「87.1」は誤記で、正しくは「84.6」である。 そして、実施例2では下記に記載したとおりである。 a=(12×12/100+0.1×25.8/100)/(84. 6/100) =1.73 b=(5×9.6/100)/(84.6/100) =0.56 a+10×b=7.33 (2)刊行物2 刊行物2(特に、段落[0001]、[0004]、[0034]、[0037]、[0038]、[0061]、[0062]、[0064]、及び[0077]を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、実施例1として、次の発明(以下、「刊2A発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.97であり、bの値が0.01であり、(a+10×b)の値が3.1である、樹脂組成物。」 同じく、刊行物2には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例2として、次の発明(以下、「刊2B発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.97であり、bの値が0.01であり、(a+10×b)の値が3.1である、樹脂組成物。」 同じく、刊行物2には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例4として、次の発明(以下、「刊2C発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が3.06であり、bの値が0.02であり、(a+10×b)の値が3.3である、樹脂組成物。」 (3)刊行物3 刊行物3(特に、段落【0079】、【0088】?【0090】、【0103】、【0104】、及び【0107】?【0111】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、比較例1として、次の発明(以下、「刊3A発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、8.6重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.66であり、bの値が0.19であり、(a+10×b)の値が4.6である、樹脂組成物。」 同じく、刊行物3には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、比較例2として、次の発明(以下、「刊3B発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分21.3重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.89であり、bの値が0.47であり、(a+10×b)の値が7.6である、樹脂組成物。」 ここで、難燃剤の含有量は、次のとおりに計算したものである。 刊3A発明(比較例1)では、 (5.3/61.2)×100=8.6重量% 刊3B発明(比較例2)では、 (15.8/74.1)×100=21.3重量% (4)刊行物4 刊行物4(特に、段落【0001】、【0005】、【0079】、【0086】、【0114】?【0118】、及び【0124】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、実施例5として、次の発明(以下、「刊4発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、8.4重量%以下含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.95であり、bの値が0.81であり、(a+10×b)の値が11.05である、樹脂組成物。」 ここで、aの値としては、「2.95」を用いた(特許権者提出の意見書の7ページ17行?8ページ6行を参照。)。 また、難燃剤の含有量は、次のとおりに計算したものである。 (5/59.2)×100=8.4重量% (5)刊行物5 刊行物5には、次の事項が記載されている。 ア 「 【0092】 ・・・(中略)・・・ エポキシマスクイミダゾール〔P200H50〕は、一般式(II)において、R_(3)及びR_(5)が水素、R_(4)及びR_(6)がフェニル基、BがC(CH_(3))_(2)である変性イミダゾールである。」 イ 請求項1には、変成イミダゾール化合部の構造式が記載されている。 (6)刊行物6 刊行物6には、ノボラック樹脂の「LA-7054」について、窒素含有量が12%であることが記載されている。 (7)刊行物7 刊行物7(特に、【請求項1】、【請求項8】、【請求項13】、【請求項18】、段落【0009】?【0011】、【0022】、【0037】、【0074】、【0078】?【0080】、【0085】?【0091】、及び【0098】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、実施例1として、次の発明(以下、「刊7発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、15重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が3.21であり、bの値が0.21であり、(a+10×b)の値が5.31である、樹脂組成物。」 ここで、難燃剤の含有量は、次のとおりに計算したものである。 9.75/(26+3+6+9.75+9+6.5+1.8+0.15 +0.12)×100 =(9.75/62.32)×100=15重量% (8)刊行物8 刊行物8(特に、【請求項1】、【請求項4】?【請求項7】、【請求項11】、段落【0011】?【0014】、【0024】、【0033】、【0043】、【0054】、【0058】?【0060】、【0065】?【0070】、【0089】、及び【0091】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「樹脂組成物」に関して、実施例1として、次の発明(以下、「刊8A発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、12重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が3.6であり、bの値が0.31であり、(a+10×b)の値が6.7である、樹脂組成物。」 ここで、実施例1のリン含有エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「TX0712-EK75」)を難燃剤とし、その含有量は、次のとおりに計算したものである。 7.5/(10+20+15+6.4+3+0.2+0.09+7.5) ×100 =(7.5/62.1)×100=12重量% 同じく、刊行物8には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、実施例3として、次の発明(以下、「刊8B発明」という。)が記載されている。 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、球形シリカとを含み、 溶剤を含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.06重量%含み、 樹脂組成物に含まれる前記球形シリカと前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.97であり、bの値が0.51であり、(a+10×b)の値が8.07である、樹脂組成物。」 ここで、難燃剤の含有量としては、「5.06重量%」を用いた(特許権者提出の意見書の9ページ23行?25行を参照。)。 (9)刊行物9 刊行物9には、次の事項が記載されている。 ア 「【0090】 ・・・(中略) ・・・ フェノライトLA-7054:(大日本インキ株式会社製商品名、銅イオンと錯形成し得るメラミン骨格を有する下記式(3)で表されるフェノール樹脂、水酸基当量125、メラミン骨格の含有量18質量%)。 ・・・(後略)」 イ 段落【0091】には、「LA-7054」の構造式が記載されている。 (10)刊行物10 刊行物10の段落【0069】には、「SN475、SN485、SN495」の構造式が記載されている。 (11)刊行物11 刊行物11には、次の事項が記載されている。 ア 「【0040】 ・・・(中略)・・・ 上記活性エステル硬化剤の具体例としては、例えば、下記式(1)で表される活性エステル化合物及び下記式(2)で表される活性エステル化合物等が挙げられる。」 イ 「【0043】 上記式(2)中、Xはベンゼン環又はナフタレン環であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.25?1.5である。 【0044】 上記活性エステル化合物の市販品としては、例えば、EXB9451、EXB9460、EXB9460S-65T ・・・(後略)」 ウ 段落【0041】、及び【0042】には、活性エステル化合物の構造式が記載されている。 (12)刊行物12 刊行物12の[0054]の[表1]には、商品名「FX289」のリン濃度が、2.2%であることが記載されている。 (13)刊行物13 刊行物13には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0032】及び【0033】には、エポキシマスクイミダゾール(P200H50)について、その構造式が記載されている。 イ 「【0092】 ・・・(中略)・・・ エポキシマスクイミダゾール〔P200H50〕は、一般式(II)において、R_(3)及びR_(5)が水素、R_(4)及びR_(6)がフェニル基、BがC(CH_(3))_(2)である変性イミダゾールである。」 (14)刊行物14 刊行物14には、次の事項が記載されている。 「【0010】 ・・・(中略)・・・ 2E4MZ-CN(四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールの商品名) ・・・(後略)」 4 判断 (1)理由1(特許法第29条1項3号)、及び理由2(特許法第29条第2項)について ア 本件発明1について (ア)刊行物1について a 刊1A発明について 本件発明1と刊1A発明とを対比する。 刊1A発明の「球形シリカ」は、本件発明1の「無機充填材」に相当する。 以下同様に、「樹脂組成物」は、「絶縁樹脂材料」に、 「溶剤を含」むことは、「溶剤を含まないか又は含」むことに、それぞれ相当する。 以上のことから、本件発明1と刊1A発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1A] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊1A発明では、aの値が、「2.65」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.2重量%」含む点。 上記相違点1Aについて判断する。 まず、新規性について判断する。 上記相違点1Aは、aの値及び難燃剤の含有量が実質的に異なり、また、上記相違点1Aに係る本件発明1の構成については、刊行物1に記載ないし記載されているに等しいとはいえないから、本件発明1と刊1A発明とは、同一とはいえない。 次に、進歩性について判断する。 刊行物1には、実施例1においてaの値を2.47以下とすることについては、記載も示唆もされていないから、難燃剤の含有量について検討するまでもなく、上記相違点1Aに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、刊1A発明、及び刊行物1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 b 刊1B発明について 本件発明1と刊1B発明との対比の関係は、前記「a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊1B発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.47以下であり、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1B] 難燃剤について、本件発明1では、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊1B発明では、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.91重量%」含む点。 上記相違点1Bについて判断する。 まず、新規性について判断する。 上記相違点1Bは、難燃剤の含有量が実質的に異なり、また、上記相違点1Bに係る本件発明1の構成については、刊行物1に記載ないし記載されているに等しいとはいえないから、本件発明1と刊1B発明とは、同一とはいえない。 次に、進歩性について判断する。 刊1B発明の難燃剤(フェナントレン型リン化合物)にはリンPが含まれているから、この難燃剤の量を増減すれば、bの値、及び(a+10×b)の値も増減する。 そうすると、刊1B発明において難燃剤の量を増減すると、上記一致点とした「(a+10×b)の値が3以上、10以下」との構成を、備えないものとなる場合がある。 ところで、刊行物1には、aの値、bの値、及び(a+10×b)の値を、それぞれ本件発明1で特定する範囲内に維持するとともに、上記難燃剤の含有量を減らして、上記相違点1Bに係る本件発明1の構成とすることについて、記載または示唆があるものではない。 一方、本件発明1は、aの値、bの値、及び(a+10×b)の値が、それぞれ本件発明1で特定する範囲内のものにおいて、上記相違点1Bに係る本件発明1の構成を備えることによりにより、「上記成分A100重量%中、上記難燃剤の含有量は好ましくは1重量%以上、好ましくは5重量%以下である。上記難燃剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の難燃性が効果的に高くなる。」(明細書の段落【0093】)との効果を奏するものである。 したがって、上記相違点1Bに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 c 小括 以上のことから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明とはいえないし、また、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (イ)刊行物2について a 刊2A発明について 本件発明1と刊2A発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊2A発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点2A] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊2A発明では、aの値が、「2.97」であり、難燃剤については、含まない点。 上記相違点2Aについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊2A発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊2A発明、及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 b 刊2B発明について 本件発明1と刊2B発明とを対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊2B発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点2B] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊2B発明では、aの値が、「2.97」であり、難燃剤については、含まない点。 上記相違点2Bについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊2B発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊2B発明、及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 c 刊2C発明について 本件発明1と刊2C発明とを対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊2C発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点2C] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊2C発明では、aの値が、「3.06」であり、難燃剤については、含まない点。 上記相違点2Cについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊2C発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊2C発明、及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 d 小括 以上のことから、本件発明1は、刊行物2に記載された発明とはいえないし、また、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (ウ)刊行物3について a 刊3A発明について 本件発明1と刊3A発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊3A発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点3A] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊3A発明では、aの値が、「2.66」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、8.6重量%」含む点。 上記相違点3Aについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊3A発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊3A発明、及び刊行物3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 b 刊3B発明について 本件発明1と刊3B発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊3B発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点3B] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊3B発明では、aの値が、「2.89」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、21.3重量%」含む点。 上記相違点3Bについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊3B発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊3B発明、及び刊行物3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 c 小括 以上のことから、本件発明1は、刊行物3に記載された発明とはいえないし、また、刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (エ)刊行物4について 本件発明1と刊4発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊4発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点4] 本件発明1では、「aの値が2.47以下であり」、「(a+10×b)の値が3以上、10以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊4発明では、「aの値が2.95であり」、「(a+10×b)の値が11.05」であり、難燃剤について、「樹脂組成物に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、8.4重量%以下」である点。 上記相違点4について判断する。 まず、新規性について判断する。 上記相違点4は、aの値、(a+10×b)の値、及び難燃剤の含有量が実質的に異なり、また、上記相違点4に係る本件発明1の構成については、刊行物4に記載ないし記載されているに等しいとはいえないから、本件発明1と刊4発明とは、同一とはいえない。 次に、進歩性について判断する。 刊行物4には、実施例5においてaの値を2.47以下とすること、及び(a+10×b)の値を10以下とすることについては、記載も示唆もされていないから、難燃剤の含有量について検討するまでもなく、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 以上のことから、本件発明1は、刊行物4に記載された発明とはいえないし、また、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (オ)刊行物7について 本件発明1と刊7発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊7発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点7] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊7発明では、aの値が、「3.21」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、15重量%」含む点。 上記相違点7について判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊7発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊7発明、及び刊行物7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (カ)刊行物8について a 刊8A発明について 本件発明1と刊8A発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊8A発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点8A] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊8A発明では、aの値が、「3.6」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、12重量%」含む点。 上記相違点8Aについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊8A発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊8A発明、及び刊行物8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 b 刊8B発明について 本件発明1と刊8B発明との対比の関係は、前記「(ア)a」に記載したものと同様である。 そして、本件発明1と刊8B発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点8B] 本件発明1では、aの値が、「2.47以下」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下」含むのに対して、 刊8B発明では、aの値が、「2.97」であり、難燃剤について、「絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5.06重量%」含む点。 上記相違点8Bについて判断すると、前記「(ア)a」に記載したのと同様の理由により、本件発明1と刊8B発明とは、同一とはいえず、また、本件発明1は、刊8B発明、及び刊行物8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 c 小括 以上のことから、本件発明1は、刊行物8に記載された発明とはいえないし、また、刊行物8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (キ)異議申立人1の主張について 異議申立人1は、刊行物1に、「[難燃剤] 本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない程度に、難燃剤を含有させることができる。」(段落【0052】)と記載されていることを根拠にして、難燃剤の含有量を5重量%以下に調整することは、当業者であれば当然に行う設計事項である旨主張している(異議申立人1提出の意見書5ページ25行?6ページ12行を参照。)。 そこで、上記主張について検討する。 刊行物1の請求項1には、難燃剤は記載されていないから、刊行物1の請求項1に記載された構成では、難燃剤を必須とはしていない。 そして、刊行物1の上記記載は、刊行物1の請求項1に記載の構成に、更に難燃剤を含有させることができることを意味すると解される。 一方、刊1B発明では、前記「(ア)b」に記載したように、難燃剤にはリンPが含まれているから、難燃剤の量を単に減少させると、上記一致点とした「(a+10×b)の値が3以上、10以下」との構成を、備えないものとなる場合がある。 そうすると、刊行物1の上記記載は、刊行物1の請求項1の記載の構成に、更に難燃剤を含有させることを示唆するに止まり、刊行物1の実施例2(刊1B発明)において、aの値、bの値、及び(a+10×b)の値を、それぞれ本件発明1の範囲に維持するとともに、難燃剤を5重量%以下含ませることを示唆するものではない。 したがって、異議申立人1の上記主張は、理由がない。 また、異議申立人1は、異議申立人1提出の意見書において、参考資料1(増補新版「ポリマーの難燃化 その化学と実際技術」西沢仁著 大成社 平成4年4月10日増補新版第3刷 64ページ及び166ページ)、及び参考資料2(http://www.fr-tech.jp/HIROBA/data2html.html )を提示するとともに、参考資料1には、リン原子とともに窒素系化合物を添加することで相乗作用により難燃化を効果的に進めることができると記載されており、難燃性を向上させるためにリン原子を含有する化合物とともに窒素化合物を含有させることも公知である旨、及び参考資料2には、リン系難燃剤の難燃助剤として窒素化合物を添加させることが記載されており、難燃性を向上させつつ、誘電特性などの物性も向上させる際、難燃剤の含有量を調整するとともに窒素原子やリン原子の含有量も調整することは当業者であれば当然に行う設計事項である旨主張している(異議申立人1提出の意見書9ページ4行?12行等を参照。)。 しかし、上記参考資料1及び2は、リンが難燃化に効果があること、リンと窒素の相互作用により難燃化に効果があること、及びリン系難燃剤の難燃助剤として窒素化合物があることを示すに止まり、aの値、bの値、及び(a+10×b)の値を、それぞれ本件発明1の範囲に維持するとともに、難燃剤を5重量%以下含ませることを示唆するものではない。 したがって、異議申立人1の上記主張は、理由がない。 (ク) まとめ 以上のことから、本件発明1は、刊行物1?4、6?8に記載された発明とはいえないし、また、刊行物1?4、6?8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ 本件発明2?6、8、及び9について 本件発明2?6、8、及び9は、本件発明1を引用し、本件発明1を更に限定した発明であるから、本件発明1と同様に、刊行物1?4、6?8に記載された発明とはいえないし、また、刊行物1?4、6?8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2)理由3(特許法第36条第6項第1号)について 取消理由3は、刊行物3の比較例1及び比較例2は、訂正前の請求項1?9に係る発明の構成要件をすべて満たすところ、刊行物3の段落【0110】及び【0111】に、比較例1及び比較例2は難燃性が不十分であることが記載されているから、訂正前の請求項1?9に係る発明は、難燃性を達成しない範囲を含んでおり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないというものである。 しかし、前記「(1)ア(ウ)」に記載したように、刊行物3の刊3A発明(比較例1)、及び刊3B発明(比較例2)は、本件発明1と同一ではないから、本件発明1?6、8、及び9の構成要件を満たすものではない。 そうすると、本件発明1?6、8、及び9は、難燃性を達成しない範囲を含んでいるとはいえない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、異議申立書1に記載した特許異議申立理由、及び異議申立書2に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?6、8、及び9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?6、8、及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項7に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項7に対して、異議申立人1がした異議申立1、及び異議申立人2がした異議申立2については、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 エポキシ樹脂と、リン原子を含まない硬化剤と、無機充填材とを含み、 溶剤を含まないか又は含み、 前記硬化剤とは別に難燃剤を絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、5重量%以下含み、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中の窒素原子の含有量(重量%)を含有量aとし、リン原子の含有量(重量%)を含有量bとしたときに、aの値が2.47以下であり、bの値が1以下であり、(a+10×b)の値が3以上、10以下である、絶縁樹脂材料。 【請求項2】 熱可塑性樹脂を含まないか又は含み、 前記エポキシ樹脂、前記熱可塑性樹脂及び前記難燃剤の内の少なくとも1種によって、絶縁樹脂材料にリン原子が含まれる、請求項1に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項3】 前記エポキシ樹脂が、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂を含有し、 絶縁樹脂材料に含まれる前記無機充填材と前記溶剤とを除く成分100重量%中、前記芳香族骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が10重量%以上、95重量%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項4】 前記エポキシ樹脂のエポキシ当量と前記硬化剤の当量との比が、1:0.8?1:4である、請求項1?3のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項5】 絶縁樹脂材料に含まれる前記溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が40重量%以上、99重量%以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項6】 硬化促進剤をさらに含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 フィルム状に成形されたBステージフィルムである、請求項1?6のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料。 【請求項9】 回路基板と、 前記回路基板上に配置された絶縁層とを備え、 前記絶縁層が、請求項1?6、8のいずれか1項に記載の絶縁樹脂材料を硬化させることにより形成されている、多層基板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-08-29 |
出願番号 | 特願2012-195885(P2012-195885) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(H05K)
P 1 651・ 121- YAA (H05K) P 1 651・ 853- YAA (H05K) P 1 651・ 537- YAA (H05K) P 1 651・ 841- YAA (H05K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 信 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 内田 博之 |
登録日 | 2016-05-27 |
登録番号 | 特許第5940943号(P5940943) |
権利者 | 積水化学工業株式会社 |
発明の名称 | 絶縁樹脂材料及び多層基板 |
代理人 | 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |
代理人 | 田口 昌浩 |
代理人 | 田口 昌浩 |