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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
管理番号 1333219
異議申立番号 異議2016-701144  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-14 
確定日 2017-09-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5933939号発明「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5933939号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。 特許第5933939号の請求項1?10、12?15に係る特許を維持する。 特許第5933939号の請求項11に係る特許についての申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5933939号の請求項1?15に係る特許についての出願は、平成22年12月24日(優先権主張 平成21年12月25日、日本国)を国際出願日とする出願である特願2010-550770号の一部を平成23年 7月 1日に新たな特許出願としたものであって、平成28年 5月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社クラレ (以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年 3月 3日付けで取消理由が通知され、平成29年 4月25日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その後、平成29年 6月7日付けで特許異議申立人から意見書の提出があったものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が20モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、5.6モル%以下である、合わせガラス用中間膜。」
とあるのを、

「自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも30重量部以上多く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が20モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、1モル%以上5.6モル%以下である、合わせガラス用中間膜。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12において「請求項10又は11」とあるのを、「請求項10」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13において「請求項10?12のいずれか1項」とあるのを、「請求項10又は12」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14において「請求項10?13」とあるのを、「請求項10、12、13」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15において「請求項1?14」とあるのを、「請求項1?10、12?14」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1の「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多く」を、「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも30重量部以上多く」に、及び「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、5.6モル%以下である」を、「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、1モル%以上5.6モル%以下である」にそれぞれ特定するものであり、数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件明細書【0044】、【0095】にそれぞれ記載された事項であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3?6について
訂正事項3?6は、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項
上記訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?15は、請求項2?15が、直接又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、上記訂正事項1?6は、一群の請求項である請求項1?15について請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。


第3 取消理由について
1 本件発明
本件特許の請求項1?10、12?15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明10」、「本件発明12」?「本件発明15」という。)は、本件訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1?10、12?15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち本件発明1は、次のとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。

【請求項1】
自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも30重量部以上多く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が20モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、1モル%以上5.6モル%以下である、合わせガラス用中間膜。

2 取消理由
訂正前の請求項1?15に係る特許に対して、平成29年 3月 3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、特許異議申立ての申立理由の全てを含む次のとおりのものである。

(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、取消理由2(特許法第29条第2項)

ア 本件特許の請求項1、2、5、6、9、10、12、13、15に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、また、仮にそうでないにしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
イ 本件特許の請求項1、2、5?8、10、13、15に係る発明は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、また、仮にそうでないにしても、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

ウ 本件特許の請求項1、10、13、15に係る発明は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、また、仮にそうでないにしても、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

エ 本件特許の請求項8、14に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

オ 本件特許の請求項14に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

カ 本件特許の請求項3、4、8、11、14に係る発明は、甲3、5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

キ 本件特許の請求項1、3、4、8?15に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(2)取消理由3(特許法第36条第6項第2号)
本件特許の請求項11において、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の差を「8.5モル%を超え、9.2モル%以下」とする特定事項があるところ、請求項11が間接的に引用する請求項1は、当該水酸基の含有率の差を「5.6モル%以下」と特定しているから、両記載は整合せず、本件特許の請求項11及びこれを直接又は間接的に引用する請求項12?15は明確でない。
したがって、請求項11?15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。


甲1:特開2001-48600号公報
甲2:特開2001-206742号公報
甲3:特開平7-206483号公報
甲4:特表2008-532817号公報
甲5:特開2007-331964号公報

3 当審の判断
(1)取消理由1、2について
ア 甲1?5の記載事項
(ア)甲1の記載事項
甲1には、次に事項が記載されている。
1a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合わせガラス用中間膜及びその中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール樹脂のような透明で柔軟性に富む樹脂を製膜してなる合わせガラス用中間膜で少なくとも一対のガラス板を接着して得られる合わせガラスは、破損時に破片が飛散せず安全性に優れているため、例えば自動車等の交通車輌の窓ガラス用や建築物の窓ガラス用等として広く用いられている。」

1b「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、低温から高温までの広い温度範囲において優れた遮音性能を長期にわたって安定的に発揮し、且つ、透明性、耐候性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、ガラスと中間膜との適正な接着力等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得るに適する合わせガラス用中間膜、及び、その中間膜を用いた合わせガラスを提供することにある。」

1c 「【0047】上記ポリビニルアセタール樹脂は、特に限定されるものではないが、平均アセタール化度が40?75モル%のものが好ましい。・・・」

1d「【0055】前記ポリビニルアセタール樹脂に対する上記可塑剤の添加量は、特に限定されるものではないが、中間膜の外層となる樹脂層、即ちガラスと接着する樹脂層では、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対し、可塑剤20?60重量部であることが好ましく、より好ましくは30?50重量部である。」

1e「【0074】(実施例1)
【0075】(1)樹脂層(A)の作製
ポリビニルアセタール樹脂(a)としてポリビニルブチラール樹脂・・・100部に対し、可塑剤(a)・・・40部を添加し、・・・樹脂層(A)を作製した。
【0076】(2)樹脂層(B)の作製
ポリビニルアセタール樹脂(b)としてポリビニルブチラール樹脂{PVB-b(ブチラール化度:57.3モル%、アセチル基量:13.0モル%)}100部に対し、可塑剤(b)として3GH65部を添加し、ミキシングロールで十分に混練した後、混練物をプレス成形機を用いて、150℃で30分間プレス成形し、膜厚0.4mmの樹脂層(B)を作製した。
・・・
【0078】(4)中間膜及び合わせガラスの作製
上記で得られた樹脂層(A)及び樹脂層(B)を用い、積層構成が樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)となるように積層して、三層中間膜を得た。・・・」

1f「【0082】(実施例2)ポリビニルアセタール樹脂(a)としてポリビニルブチラール樹脂{PVB-c(ブチラール化度:68.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)}100部に対し、可塑剤(a)としてトリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート(3GO)39部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.2mmの樹脂層(A)を作製した。・・・」

1g「【0085】(実施例5)ポリビニルアセタール樹脂(a)として実施例2で用いたPVB-c100部に対し、可塑剤(a)として3GH40部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.2mmの樹脂層(A)を作製した。又、ポリビニルアセタール樹脂(b)として実施例1で用いたPVB-b100部に対し、可塑剤(b)として3GH70部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂層(B)を作製した。」

1h「【0091】実施例2、3、5及び比較例1?4で作製した各樹脂層(A)及び各樹脂層(B)を用い、実施例1の場合と同様にして、三層中間膜及び合わせガラスを作製した。・・・
【0092】実施例2?5及び比較例1?4で得られた合わせガラスの遮音性能を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表1に示すとおりであった。」

1i「【0093】
【表1】



1j「【0097】又、上記中間膜を用いた本発明の合わせガラスは、低温から高温までの広い温度範囲において優れた遮音性能を長期にわたって安定的に発揮すると共に、合わせガラスとして必要な上記基本性能にも優れるので、特に高い遮音性能が要求される建築物や交通車両等の窓ガラス用遮音性合わせガラスとして好適に用いられる。」

(イ)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
2a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば車両や建築物の窓ガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、優れた遮音性能を発揮する合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合わせガラスは、一対のガラス板間に樹脂膜をサンドイッチした構造を有する。破損時に破片が飛散せず、安全性に優れているため、合わせガラスは、例えば自動車用などの交通車両の窓板ガラスや建築物の窓板ガラスに広く用いられている。」

2b「【0017】本発明の目的は、透明性、耐候性、衝撃エネルギー吸収性、及びガラスとの接着性等の合わせガラス用中間膜として必要な基本的性能を損なうことなく、かつ中間膜の成形性及び取扱性も損なうことなく、コインシデンス効果の緩和によりTL値の低下を防ぎ、かつ広い温度領域にわたり優れた遮音性能を長期間安定に発揮し得る、合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラス並びに該合わせガラスの製造方法を提供することにある。」

2c「【0038】上記可塑剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上併用されても良い。上記ポリビニルアセタール樹脂に対する可塑剤の添加量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対し、可塑剤30?70重量部の範囲とすることが望ましい。」

2d「【0049】(実施例1)下記の2種類の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜X,Yを作製し、これらを用いて合わせガラス用中間膜を作製した。
【0050】(樹脂膜Xの作製)ポリビニルブチラール樹脂(以下、PVBと略す。平均重合度1700、ブチラール化度65.9モル%、アセチル基量0.9モル%)100重量部に、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(3GH)を40重量部添加した。これらの混合物をミキシングロールで十分に混練し、混練物の所定量をプレス成形機で150℃で30分間保持し、厚み0.2mmのポリビニルブチラール樹脂膜Xを作製した。
【0051】(樹脂膜Yの作製)予め、平均重合度=2800のポリビニルアルコール(以下、PVA)100重量部に対し、平均重合度=500のPVAを5重量部混合した。このPVA混合物から、ブチラール化度60.2モル%、アセチル基量11.9モル%のPVB樹脂を合成した。得られたPVB樹脂100重量部に、可塑剤として3GHを60重量部添加した。この混合物をミキシングロールで十分に混練し、混練物の所定量をプレス成形機で150℃で30分間保持し、厚み0.4mmのポリビニルブチラール樹脂膜Yを作製した。
【0052】(積層膜及び合わせガラスの作製)上記のように得られたポリビニルブチラール樹脂膜X,Yを、図1に示すように積層構成がポリビニルブチラール樹脂膜X/ポリビニルブチラール樹脂膜Y/ポリビニルブチラール樹脂膜Xとなるように積層し、3層構造の合わせガラス用中間膜1を得た。」

2e「【0069】
【表1】




(ウ)甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
3a「【特許請求の範囲】
【請求項1】 二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜A及びBからなる少なくとも二層の積層樹脂膜であって、樹脂膜Aは、ポリビニルアルコールを炭素数4?6のアルデヒドでアセタール化して得られ、ビニルアセテート成分が5?8モル%のポリビニルアセタール樹脂(a) 100重量部と可塑剤55?70重量部とからなり、樹脂膜Bは、ポリビニルアルコールを炭素数3又は4のアルデヒドでアセタール化して得られ、ビニルアセテート成分が4モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(b) 100重量部と可塑剤25?55未満重量部とからなることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】 二枚の透明なガラス板が、請求項1記載の合わせガラス用中間膜を介して接着されていることを特徴とする合わせガラス。」

3b「【0002】
【従来の技術】二枚の透明なガラス板の間に、可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜を接着させた合わせガラスは、例えば、自動車や建築物の窓ガラスに広く使用されている。」

3c「【0011】この発明は、上記の問題を解決するもので、その目的とするところは、破損時にガラス破片が飛散しなくて安全性に優れ、しかもコインシデンス効果による遮音性の低下を防止し、遮音性能を長期にわたって発揮することができる合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することにある。」

3d「【0034】そして、ポリビニルアセタール樹脂(a)に配合される可塑剤量は、ポリビニルアセタール樹脂(a)100重量部に対して55?70重量部とされる。この可塑剤量が55重量部未満であると遮音性が充分に得られず、逆に可塑剤量が70重量部を超えると可塑剤がブリードして、合わせガラスの透明性やガラス板との接着性が損なわれる。特に、この可塑剤量は55?65重量部が好ましい。
【0035】また、ポリビニルアセタール樹脂(b)に配合される可塑剤量は、ポリビニルアセタール樹脂(b)100重量部に対して25?55未満重量部とされる。この可塑剤量は、通常の可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜に用いられている可塑剤量と同程度である。この可塑剤量が25重量部未満であると耐貫通性が低下し、逆にこの可塑剤量が55重量部以上では、可塑剤がブリードして合わせガラスの透明性やガラス板との接着性が損なわれる。特に、この可塑剤量は30?45重量部が好ましい。」

3e「【0051】
【実施例】以下、この発明の実施例及び比較例を示す。
実施例1
樹脂(a) 及び樹脂膜Aの調製
・・・
【0052】・・・白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂(a) を得た。この樹脂(a) のブチラール化度は63.0モル%、ビニルアセテート成分は7.2モル%であった。
【0053】上記樹脂(a) 100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート60重量部と・・・とを混合し、これをミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、厚さ0.20mmの樹脂膜Aを得た。
【0054】樹脂(b) 及び樹脂膜Bの調製
・・・
【0055】・・・白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂(b) を得た。この樹脂(b) のブチラール化度は65.5モル%、ビニルアセテート成分は0.9モル%であった。
【0056】上記樹脂(b) 100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部と・・・とを混合し、これをミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、厚さ0.20mmの樹脂膜Bを得た。
【0057】中間膜及び合わせガラスの作製
上記樹脂膜AとBを用い、これを樹脂膜B/樹脂膜A/樹脂膜Bの順に重ね合わせ、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ3mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したまま90℃のオーブンに移し、さらに90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。
【0058】このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で圧力12 kg/cm^(2)、温度135℃の条件で20分間本接着を行い、中間膜の作製と合わせガラスの作製とを同時に行った。
【0059】この合わせガラスについて、遮音性及び接着性を、次の方法で評価した。その結果をまとめて表2に示す。」

3f「【0064】実施例2?4及び比較例1?4
ポリビニルアルコール、アルデヒド、可塑剤量及び膜厚を変えたこと以外は実施例1と同様な方法で、表2(実施例)及び表3(比較例)に示すような樹脂膜A及び樹脂膜Bを調製した。この樹脂膜A及び樹脂膜Bを用い、表2及び表3に示すような積層構成としたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果をまとめて表2及び表3に示す。」

3g「【0065】
【表2】



(エ)甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
4a「【請求項1】
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第1ポリマーシート;および
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第2ポリマーシートを含み、前記第2ポリマーシートの前記可塑化された熱可塑性ポリマーにおける可塑剤の量は、前記第1ポリマーシートの前記可塑化された熱可塑性ポリマーにおける可塑剤の量より、100部当たり少なくとも10部多く、前記第1ポリマーシートおよび前記第2ポリマーシートは、それぞれ5mol%未満の残留アセテート含有量を有する、ポリマー中間層。」

4b「【0001】
本発明は、ポリマー中間層およびポリマー中間層を備えた多層ガラスパネルの分野に存在し、より詳しくは、本発明は多重熱可塑性シートを含むポリマー中間層の分野に存在する。」

4c「【0005】
発明の要旨
本発明は、パネルを貫通して透過される音の量を低減するために、多層ガラスパネルタイプの用途において使用することのできる、多層中間層を提供する。この効果は、一緒に単一の多層中間層にされている、2つ以上のポリマーシートにおいて可塑剤濃度の差異を維持することによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
詳細な説明
本発明によれば、多層中間層(この中間層は、異なる可塑剤濃度を有する2つのポリマーシートを有する。)を、パネル中に組み込むことによって、驚くべきことに、多層ガラスパネルに優れた音響抑制特性が付与できることがわかった。本明細書全体を通して詳細に記述されているように、異なる可塑剤濃度を安定的に含有するように、ポリマーシートを配合することによって、多層ガラスパネルを貫通する音響透過が、例えば、関心のある周波数または周波数領域において2デシベルを超えて低減できることが発見された。さらに、3つのポリマーシート層を有する実施形態は、取り扱いが容易で、従来法における従来の中間層の直接の代替品として使用されるように配合できるので、本発明の中間層は、適用分野において使用されている製造方法にいかなる変更も加えることなく、多くの適用分野において有用であるはずである。例えば、自動車のフロントガラス分野では、完成したフロントガラスを形成するために使用される積層工程を変更することなく、本発明の中間層によって代替できる、従来のポリマー中間層を使用することを含み得る。
【0007】
本明細書において使用される「中間層」は、フロントガラスおよび建築用窓ガラスにおける安全ガラスなどの、多層ガラス分野において使用できるあらゆる熱可塑性構造体であり、「多層」中間層は、通常積層工程を通じて、2つ以上の個々の層を一緒にして単一中間層にすることによって形成されるあらゆる中間層である。」

4d「【0009】
本明細書において使用される「可塑剤含有量」は、重量当たりの重量を基準として、樹脂100部当たり(phr)の部として測定できる。例えば、可塑剤の30gがポリマー樹脂の100gに添加された場合は、得られた可塑化ポリマーの可塑剤含有量は、30phrであることになる。本明細書全体を通して、ポリマーシートの可塑剤含有量が与えられた場合、この特定のシートの可塑剤含有量は、この特定のシートを製造するために使用された溶融物中の可塑剤のphrを参照して規定される。
・・・
【0011】
本発明の様々な実施形態において、2つのポリマーシートの可塑剤含有量は少なくとも8phr、10phr、12phr、15phr、18phr、20phr、または25phrだけ、異なる。それぞれのシートは、例えば、30から100phr、40から90phr、または50から80phrを有することができる。」

4e「【0012】
・・・本明細書において使用される残留ヒドロキシル含有量(ビニルヒドロキシル含有量またはポリ(ビニルアルコール)(PVOH)含有量として)は、加工処理が完了した後に、ポリマー鎖に側基として残留しているヒドロキシル基の量を指す。 ・・・ したがって、いかなる完成されたポリ(ビニルブチラール)においても、通常、残留酢酸基(酢酸ビニル基として)および残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)が、ポリマー鎖の側基として存在することになる。 本明細書において使用される残留ヒドロキシル含有量は、ASTM1396に従って重量パーセントに基づいて測定される。
【0013】
本発明の様々な実施形態において、2つの隣接するポリマーシートの残留ヒドロキシル含有量は、少なくとも1.8%、2.0%、2.2%、2.5%、3.0%、4.0%、5.0%、7.5%だけまたは少なくとも10%だけ異なることができる。この差は、より少ない残留ヒドロキシル含有量を有するシートの残留ヒドロキシル含有量を、より多い残留ヒドロキシル含有量を有するシートの残留ヒドロキシル含有量から引き算することによって、計算される。例えば、第1ポリマーシートが20重量%の残留ヒドロキシル含有量を有し、第2ポリマーシートが17重量%の残留ヒドロキシル含有量を有する場合は、2つのシートの残留ヒドロキシル含有量は、3重量%だけ異なる。
【0014】
可塑剤の所与の種類に関して、ポリ(ビニルブチラール)におけるこの可塑剤の相溶性は、ヒドロキシル含有量によって主に求められる。通常、ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量が多い程、可塑剤の相溶性または収容力がより低減される。同様に、より少ない残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)は、可塑剤の相溶性または収容力を増大させることになる。これらの特性を用いて、それぞれのポリ(ビニルブチラール)ポリマーのヒドロキシル含有量を選択し、適切な可塑剤の充填ができるように、およびポリマーシート間の可塑剤含有量の差を安定的に維持するように、ポリマーシートのそれぞれを配合することができる。
【0015】
・・・様々な実施形態において、2つのシートの残留ヒドロキシル含有量は以下の通りである:25%未満の第1シートと23%未満の第2シート;23%未満の第1シートと21%未満の第2シート;21%未満の第1シートと19%未満の第2シート;20%未満の第1シートと17%未満の第2シート;18%未満の第1シートと15%未満の第2シート;15%未満の第1シートと12%未満の第2シート。これらの実施形態のいずれに
おいても、2つの層の間のヒドロキシル含有量の差に関して、前のパラグラフにおいて与えられた数値のいずれでも、使用することができる。」

4f「【0066】
実施例
3GEH(トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート))の様々な量を配合した、記録された残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)シートおよびこれらのシートの厚さを表1に列挙する。これらのシートは、本発明の中間層を構成するために使用するか、または参照パネルを製造するための従来の中間層として使用する。すべてのシートにおいて、残留アセテート含有量は無視することができ、1mol%未満である。」

4g「【0067】
【表1】

従来の中間層および本発明の中間層の実施例を表2に示す。」

4h「【0068】
【表2】





(オ)甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
5a「【請求項1】
遮音層と、前記遮音層を狭持する2層の保護層とからなる合わせガラス用中間膜であって、
前記遮音層は、アセチル化度が7モル%以下、ブチラール化度が68?82モル%のポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤を45?75重量部含有し、
前記保護層は、アセチル化度が4モル%以下、ブチラール化度が60?75モル%かつ前記遮音層に含有されるポリビニルブチラールのブチラール化度以下であるポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤を20?45重量部含有する
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。」

5b「【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、水に濡れても白化することがなく、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することを目的とする。」

5c「【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、アセチル化度とブチラール化度とをそれぞれ一定の範囲とした遮音層と保護層とを用いてなる合わせガラス用中間膜は、水に濡れても白化することがなく、優れた遮音性を有するということを見出し、本発明を完成させるに至った。
・・・ 」

イ 甲1?甲4に記載された発明
(ア)甲1に記載された発明
記載事項1e?1gによれば、実施例5において、ポリビニルブチラール樹脂{PBV-b(ブチラール化度57.3モル%、アセチル基量13.0モル%)}100部に対し、可塑剤を70部添加して、樹脂層(B)を作製し、ポリビニルブチラール樹脂{PVB-c(ブチラール化度68.9モル%、アセチル基量0.9モル%)}100部に対し、可塑剤40部を添加して、樹脂層(A)を作製し、樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)となるように積層して、三層中間膜を得ている。
そうすると、樹脂層(B)中のポリビニルブチラール樹脂100部に対する可塑剤の含有量は、樹脂層(A)中のポリビニルブチラール樹脂100部に対する可塑剤の含有量よりも30部(70-40=30)多い。
また、樹脂層(B)中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、29.7モル%[100-(57.3+13.0)=29.7]であり、樹脂層(A)中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、30.2モル%[100-(68.9+0.9)=30.2]であるから、樹脂層(B)中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、樹脂層(A)中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、これらの含有率の差は、0.5モル%(30.2-29.7=0.5)である。

以上のことから、記載事項1a?1jによれば、甲1には、
「 自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなる樹脂層(B)と、
前記樹脂層(B)に積層され、かつポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなる樹脂層(A)とを備え、
前記樹脂層(B)中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量が70部であり、
前記樹脂層(B)中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量が、前記樹脂層(A)中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量よりも30部多く、
前記樹脂層(B)中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が、前記樹脂層(A)中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記樹脂層(B)中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル基量が13.0モル%であり、
前記樹脂層(B)中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記樹脂層(A)中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率との差が、0.5モル%である、合わせガラス用中間膜。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)甲2に記載された発明
記載事項2dによれば、実施例1において、ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度65.9モル%、アセチル基量0.9モル%)100重量部に、可塑剤を40重量部添加して、ポリビニルブチラール樹脂膜Xを作製し、 ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度60.2モル%、アセチル基量11.9モル%)100重量部に、可塑剤を60重量部添加して、ポリビニルブチラール樹脂膜Yを作製し、ポリビニルブチラール樹脂膜X/ポリビニルブチラール樹脂膜Y/ポリビニルブチラール樹脂膜Xとなるように積層して、合わせガラス用中間膜を得ている。
そうすると、ポリビニルブチラール樹脂膜Y中のポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は、ポリビニルブチラール樹脂膜X中のポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも、20重量部(60-40=20)多い。
また、ポリビニルブチラール樹脂膜Y中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、27.9モル%[100-(60.2+11.9)=27.9]であり、ポリビニルブチラール樹脂膜X中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、33.2モル%[100-(68.9+0.9)=33.2]であるから、ポリビニルブチラール樹脂膜Y中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率は、ポリビニルブチラール樹脂膜X中のポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、これらの含有率の差は、5.3モル%(33.2-27.9=5.3)である。

以上のことから、記載事項2a?2eによれば、甲2には、
「 自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなるポリビニルブチラール樹脂膜Yと、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Yに積層され、かつポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなるポリビニルブチラール樹脂膜Xとを備え、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Y中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が60重量部であり、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Y中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記ポリビニルブチラール樹脂膜X中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも20重量部多く、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Y中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が、ポリビニルブチラール樹脂膜X中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Y中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル基量が11.9モル%であり、
前記ポリビニルブチラール樹脂膜Y中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記ポリビニルブチラール樹脂膜X中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率との差が、5.3モル%である、合わせガラス用中間膜。」
の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(ウ)甲3に記載された発明
記載事項3a、3e?3gによれば、実施例4において、ポリビニルブチラール樹脂(a)(ブチラール化度63.0モル%、ビニルアセテート成分7.2モル%)100重量部に、可塑剤を65重量部添加し、樹脂膜Aを得て、 ポリビニルブチラール樹脂(b)(ブチラール化度65.5モル%、ビニルアセテート成分0.9モル%)100重量部に、可塑剤を40重量部添加し、樹脂膜Bを得て、樹脂膜B/樹脂膜A/樹脂膜Bとなるように積層して、合わせガラス用中間膜を得ている。
そうすると、樹脂膜A中のポリビニルブチラール樹脂(a)100重量部に対する可塑剤の含有量は、樹脂膜B中のポリビニルブチラール樹脂(b)100重量部に対する可塑剤の含有量よりも、25重量部(65-40=25)多い。
また、樹脂膜A中のポリビニルブチラール樹脂(a)の水酸基の含有率は、29.8モル%[100-(63.0+7.2)=29.8]であり、樹脂膜B中のポリビニルブチラール樹脂(b)の水酸基の含有率は、33.6モル%[100-(65.5+0.9)=33.6]であるから、樹脂膜A中のポリビニルブチラール樹脂(a)の水酸基の含有率は、樹脂膜B中のポリビニルブチラール樹脂(b)の水酸基の含有率よりも低く、これらの含有率の差は、3.8モル%(33.6-29.8=3.8)である。

以上のことから、記載事項3a?3gによれば、甲3には、
「 自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなる樹脂膜Aと、
前記樹脂膜Aに積層され、かつポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とからなる樹脂膜Bとを備え、
前記樹脂膜A中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量が65重量部であり、
前記樹脂膜A中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量が、前記樹脂膜B中の前記ポリビニルブチラール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量よりも25部多く、
前記樹脂膜A中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が、前記樹脂膜B中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記樹脂膜A中の前記ポリビニルブチラール樹脂のビニルアセテート成分量が7.2モル%であり、
前記樹脂膜A中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記樹脂膜B中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率との差が、3.8モル%である、合わせガラス用中間膜。」
の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(エ)甲4に記載された発明
記載事項4a、4f?4hによれば、中間層番号4において、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5(残留ヒドロキシル含有量18.5%、可塑剤含有量38phr)、及びポリ(ビニルブチラール)シートPVB7(残留ヒドロキシル含有量15.7%、可塑剤含有量52phr)とを用いて、PVB5/PVB7/PVB5となるように積層して、合わせガラス用中間膜を得ている。
記載事項4dによれば、可塑剤含有量phrは、樹脂100部当たりの量を意味するから、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中のポリ(ビニルブチラール)100部に対する可塑剤含有量は、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5中のポリ(ビニルブチラール)100部に対する可塑剤含有量よりも、14部(52-38=14)多い。
また、記載事項4eによれば、上記残留ヒドロキシ含有量(%)は、重量%に基づくものであるから、記載事項4gによれば、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中のポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量は、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5中のポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量よりも低く、これらの含有量の差は、2.8重量%(18.5-15.7=2.8)である。

以上のことから、記載事項4a?4hによれば、甲4には、
「 自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリ(ビニルブチラール)と可塑剤とからなるポリ(ビニルブチラール)シートPVB7と、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7に積層され、かつポリ(ビニルブチラール)と可塑剤とからなるポリ(ビニルブチラール)シートPVB5とを備え、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中の前記ポリ(ビニルブチラール)100部に対する前記可塑剤の含有量が52部であり、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中の前記ポリ(ビニルブチラール)100部に対する前記可塑剤の含有量が、前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5中の前記ポリビニルアセタール樹脂100部に対する前記可塑剤の含有量よりも14部多く、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中の前記ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量が、前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5中の前記ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量よりも低く、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中の前記ポリ(ビニルブチラール)の残留アセテート含有量が1モル%未満であり、
前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7中の前記ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量と前記ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5中の前記ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量との差が、2.8重量%である、合わせガラス用中間膜。」
の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

(オ)甲5の記載事項
甲5には、水に濡れても白化することがなく、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜を提供することを目的とするものであり、遮音層と、前記遮音層を挟持する2層の保護層からなる合わせガラス用中間膜であって、アセチル化度とブチラール化度とをそれぞれ一定の範囲とした遮音層と保護層とを用いてなる合わせガラス用中間膜について記載されている。

ウ 発明の対比・判断
(ア)本件発明1について
(i) 本件発明1と甲1発明との対比判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリビニルブチラール樹脂」、「アセチル基量」、「樹脂層(B)」及び「樹脂層(A)」は、本件発明1の「ポリビニルアセタール樹脂」、「アセチル化度」、「第1の層」及び「第2の層」にそれぞれ相当するから、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、1モル%以上5.6モル%以下であるのに対し、甲1発明は、これらの差が0.5モル%である点。

したがって、本件発明1と甲1発明とは実質的な相違点があるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

次に、甲1の記載から、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項を導出できるかどうかについて検討する。

本件発明1は、本件明細書【0010】、【0011】によれば、発泡の発生及び成長を抑制でき、遮音性に優れた合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とし、本件明細書【0044】、【0095】によれば、各ポリビニルアセタール樹脂の可塑剤の含有量の差と水酸基の含有率の差を設定したものであると認められる。
しかし、甲1では、ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度(記載事項1c)、及び中間膜の外層となる樹脂層における可塑剤の添加量(記載事項1d)の好ましい範囲がそれぞれ記載されているが、本件発明1のように、可塑剤の含有量と水酸基の含有率とを関連づけて特定する記載はないから、第1の層の可塑剤の含有量を、第2の層の可塑剤の含有量よりも30重量部以上多くに設定すると共に、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差の0.5モル%を1モル%以上5.6モル%以下の範囲に設定することが示唆されているとはいえない。

したがって、甲1の記載から上記相違点1に係る本件発明1の上記特定事項を導出することはできない。

(ii) 本件発明1と甲2発明との対比判断
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ポリビニルブチラール樹脂」、「アセチル基量」、「ポリビニルブチラール樹脂膜Y」及び「ポリビニルブチラール樹脂膜X」は、本件発明1の「ポリビニルアセタール樹脂」、「アセチル化度」、「第1の層」及び「第2の層」にそれぞれ相当するから、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。

相違点2: 本件発明1は、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が、第2の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも30重量部以上多いものであるのに対し、甲2発明は、これらの含有量の差が20重量部である点。

したがって、本件発明1と甲2発明とは実質的な相違点があるから、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

次に、甲2の記載から、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項を導出できるかどうかについて検討する。

甲2には、ポリビニルアセタール樹脂に対する可塑剤の望ましい添加量(記載事項2c)が記載されているが、本件発明1のように、可塑剤の含有量と水酸基の含有率とを関連づけて特定する記載はないから、第1の層と第2の層のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の差の5.3モル%を1モル%以上5.6モル%以下に設定すると共に、第1の層と第2の層の可塑剤の含有量の差の20重量部を30重量部以上に設定することは、示唆されているとはいえない。

したがって、甲2の記載から上記相違点2に係る本件発明1の上記特定事項を導出することはできない。

(iii) 本件発明1と甲3発明との対比判断
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「ポリビニルブチラール樹脂」、「ビニルアセテート成分量」、「樹脂膜A」及び「樹脂膜B」は、本件発明1の「ポリビニルアセタール樹脂」、「アセチル化度」、「第1の層」及び「第2の層」にそれぞれ相当するから、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で相違する。

相違点3: 本件発明1は、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が、第2の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも30重量部以上多いものであるのに対し、甲2発明は、これらの含有量の差が25重量部である点。

したがって、本件発明1と甲3発明とは実質的な相違点があるから、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。

次に、甲3の記載から、上記相違点3に係る本件発明1の特定事項を導出できるかどうかについて検討する。

甲3には、ポリビニルアセタール樹脂(a)、及びポリビニルアセタール樹脂(b)に配合される可塑剤量(記載事項3a、3d)が記載されているが、本件発明1のように、可塑剤の含有量と水酸基の含有率とを関連づけて特定する記載はないから、第1の層と第2の層のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の差の3.8モル%を1モル%以上5.6モル%以下に設定すると共に、第1の層と第2の層の可塑剤の含有量の差の25重量部を30重量部以上に設定することは、示唆されているとはいえない。

したがって、甲3の記載から上記相違点3に係る本件発明1の上記特定事項を導出することはできない。

(iv) 本件発明1と甲4発明との対比判断
本件発明1と甲4発明とを対比する。
記載事項4fによれば、ポリ(ビニルブチラール)の残留アセテート含有量は1mol%未満であるから、ポリ(ビニルブチラール)の残留アセテート含有量を0mol%、又は1mol%と仮定して、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7及びポリ(ビニルブチラール)シートPVB5の各ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシ含有量(モル%)を換算すると、それぞれ23.11?23.16モル%、26.81?26.87モル%となる。
そうすると、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5のポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量(モル%)と、ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7のポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量との差は、3.65モル%(26.81-23.16=3.65)?3.76モル%(26.87-23.11=3.76)である。
そして、甲4発明の「ポリ(ビニルブチラール)」、「残留アセテート含有量」、「残留ヒドロキシル含有量」、「ポリ(ビニルブチラール)シートPVB7」及び「ポリ(ビニルブチラール)シートPVB5」は、本件発明1の「ポリビニルアセタール樹脂」、「アセチル化度」、「水酸基の含有率」、「第1の層」及び「第2の層」にそれぞれ相当するから、本件発明1と甲4発明とは、以下の点で相違する。

相違点4: 本件発明1は、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が、第2の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも30重量部以上多いものであるのに対し、甲4発明は、これらの含有量の差が14重量部である点。

上記相違点4に係る本件発明1の特定事項を導出できるかどうかについて検討する。

甲4には、2つのポリマーシートの可塑剤含有量の差を30phr(部)以上とすること(記載事項4d)が記載され、記載事項4hで、可塑剤含有量差が30phrより大きな中間層番号6?9の多重シートが具体的に記載されている。
しかし、これらの各シートの水酸基量の差は、5重量%又は6.7重量%であって、これらをモル%に換算すると、本件発明1の水酸基の含有率の差の上限5.6%よりも大きくなるから、本件発明1のように、第1の層と第2の層のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の差を1モル%以上5.6モル%以下に設定すると共に、第1の層と第2の層の可塑剤の含有量の差の14重量部を30重量部以上に設定することが示唆されているとはいえない。

したがって、甲4の記載から上記相違点4に係る本件発明1の上記特定事項を導出することはできない。

(v)甲5について
なお、甲5は、取消理由2の上記カにおいて引用されたものであって、甲5の記載事項をみても、本件発明1のように、2層の可塑剤の含有量と水酸基の含有率の差を関連づけて特定する記載はなく、また、合わせガラスの発泡に関する記載もない。

(vi)本件発明1の効果について
本件発明1は、特に発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とするものであって、実施例17に、本件発明1の特定事項を充足する合わせガラス中間膜が具体的に記載されており、この合わせガラス用中間膜は、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できるという効果を奏するものであり、一方、甲1?甲5には、合わせガラスの発泡の発生に関する記載はないから、本件発明1は、甲1?5から当業者が予測し得ない効果を奏するものであるといえる。

(vii)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、平成29年 6月 7日付けの意見書において、甲1の樹脂層(B)と樹脂層(A)とのポリビニルアセタール樹脂中の水酸基含有率の差が0.5モル%であるから、本件明細書の記載をふまえると、本件発明1は、甲1発明と比較して有利な効果は存在せず、上記水酸基の含有率の差を1モル%以上に限定することによる進歩性は有しないと主張している。
しかし、上記(vi)に記載したとおり、本件発明1は、甲1から予測し得ない効果を奏するものであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(viii)小括
したがって、甲1?甲4、さらには甲5を検討しても、本件発明1は、取消理由1又は取消理由2によって取り消すことはできない。

(イ)本件発明2?10、12?15
本件発明2?10、12?15は、本件発明1の特定事項の全てを含むものである。
そうすると、上記(ア)と同様に、甲1?甲4、さらには甲5を検討しても、本件発明2?10、12?15は、本件発明1と同様に、取消理由1又は取消理由2によって取り消すことはできない。

(2)取消理由3について
本件訂正請求により、請求項1と整合しない記載があった請求項11は削除され、請求項12?15は、請求項11を直接又は間接的に引用しないものとなったから、当該取消理由は解消した。

第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?10、12?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?10、12?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項11に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項11に対する特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に使用される合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも30重量部以上多く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が20モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、1モル%以上5.6モル%以下である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、アセタール化度が68モル%以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%未満、アセタール化度が68モル%以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が20モル%未満である、請求項2に記載の合せガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が52.5モル%以上である、請求項2又は5に記載の合せガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が28モル%以下である、請求項2、5又は6に記載の合せガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が1700を超え、3000以下であるポリビニルアルコールのアセタール化物である、請求項1?7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以下である、請求項1?8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下かつ水酸基の含有率が29モル%以下である、請求項1?9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】(削除)
【請求項12】
前記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以下である、請求項10に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項10又は12に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第1?第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、
前記第1?第3の層に含まれている前記可塑剤としてそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含む、請求項10、12、13のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
自動車に使用される合わせガラスであって、
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1?10、12?14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-31 
出願番号 特願2011-147481(P2011-147481)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 中澤 登
後藤 政博
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5933939号(P5933939)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
代理人 梶田 真理奈  
代理人 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 森住 憲一  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 田口 昌浩  

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