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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1333232
異議申立番号 異議2016-700658  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-01 
確定日 2017-09-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5851166号発明「粘着剤組成物及び粘着フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5851166号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第5851166号の請求項1、3ないし8に係る特許を維持する。 特許第5851166号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯等

1 本件特許異議の申立てに係る特許

本件特許異議の申立てに係る特許第5851166号は、特許権者である藤森工業株式会社より、平成23年9月20日、特願2011-204147号として出願され、平成27年12月11日、発明の名称を「粘着剤組成物及び粘着フィルム」、請求項の数を「8」として特許権の設定登録を受けたものである。

2 手続の経緯

本件特許に対して、平成28年8月1日、特許異議申立人である有馬照夫(以下、「異議申立人」という)より特許異議の申立てがなされ、同年10月21日付けで取消理由が通知され、同年12月14日付けで特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、これに対し、平成29年1月26日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年3月8日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月11日付けで特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、これに対し、同年6月22日付けで異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否

上記平成29年5月11日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、一群の請求項を構成する請求項1ないし8について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
なお、平成28年12月14日付けでなされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50?95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
からなる重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物。」とあるのを、
「白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50?95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物。」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項3?8も同様に訂正されることとなる。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1または2に記載の粘着剤組成物。」とあるのを、
「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物。」と訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に「基材の片面上に、請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。」とあるのを、
「基材の片面上に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。」と訂正する。
(請求項4を引用する請求項5?7も同様に訂正されることとなる。)

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項8に「光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」とあるのを、
「光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」と訂正する。

(6)訂正事項6

本件特許明細書の段落【0012】に「前記課題を解決するため、本発明は、(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と・・・(略)・・・(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、からなる重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、(D)架橋剤が0.01?5重量部、を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物を提供する。」とあるのを、
「前記課題を解決するため、本発明は、白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と・・・(略)・・・(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物を提供する。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

上記訂正事項1は、本件明細書の段落【0011】の「本発明の目的は、粘着剤層を厚塗りされた粘着フィルムを、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置しても白濁することのない、白濁防止性能を有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムを提供することである。」との記載等、及び、特許請求の範囲の請求項2の「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である」との記載等に基づいて、粘着剤組成物を、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」、及び「(前記)粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物」に限定し、また、同段落【0025】の「本発明に用いられる共重合体は、架橋剤と反応する官能基モノマーとして、前記(C)の水酸基含有ビニルモノマーを含むことから、カルボキシル基含有ビニルモノマーを含まないものとすることができる。」との記載等に基づいて、重量平均分子量が20万?200万の共重合体に関し、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させたものであることを限定するものである。
また、上述したように、上記訂正事項1は、「粘着剤組成物」及び「重量平均分子量が20万?200万の共重合体」をそれぞれ限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しない。さらに、上記訂正事項1により、「(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」、「(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」及び「(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種」から共重合体が形成されていることを意味する「・・・からなる」との特定が、訂正前の請求項1に係る発明から削除されているが、訂正後の「(A)・・・、(B)・・・、(C)・・・をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた」との特定でも、上記(A)?(C)の各モノマー以外のモノマーが重合成分として含まれることになるとはいえないから、訂正前の請求項1に係る発明の「・・・からなる」との特定が、削除されたことは、請求項1に係る発明を拡張し又は変更するものではない。

したがって、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。

(2)訂正事項2について

上記訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかであるから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。

(3)訂正事項3?5について

上記訂正事項3?5は、上記(1)で述べたように、本件明細書の段落【0011】の記載等に基づいて、粘着剤組成物を、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすると共に、請求項3、4、8それぞれにおいて、引用する請求項から、上記訂正事項2により削除された請求項2を削除し、引用請求項を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項3?5が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかであるから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。

(4)訂正事項6について

上記訂正事項6は、上記訂正事項1に係る訂正に起因する特許請求の範囲(請求項1)の記載内容と明細書の記載内容との不一致を整合するように明細書の記載内容を正すものである。また、上記訂正事項6は、請求項1?8からなる一群の請求項の全てについて行うものである。
そうすると、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。

3 小括

上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし8〕について訂正することを求めるものであり、それらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に係る特許を「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50?95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物。

【請求項2】(削除)

【請求項3】
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物。

【請求項4】
基材の片面上に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。

【請求項5】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルム。

【請求項6】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用フィルム。

【請求項7】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、有機EL用フィルム。

【請求項8】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」

第4 平成29年3月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)、及びこの取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由の概要

1 取消理由(決定の予告)の概要

請求項1ないし8(請求項1ないし8に係る特許)(当審注:取り下げられたものと見なされた平成28年12月14日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲に記載された請求項。以下、「第2」と区別して「先の請求項」という。)に対して平成29年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

先の請求項1ないし8に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2ないし5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、先の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由」という。)。



刊行物1:特開2010-66755号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開2003-329838号公報(異議申立人が特許異議申立書中で引用した文献)
刊行物3:特開2010-285548号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)
刊行物4:特開2011-28069号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)
刊行物5:特開2011-99078号公報(異議申立人が提出した甲第4号証)

2 平成29年3月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立理由の概要

本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由」という。特許異議申立書第17頁第20行?第18頁第3行参照。)

第5 当審の判断

1 取消理由(決定の予告)について

ア 刊行物に記載の事項

(ア)刊行物1(特開2010-66755号公報)

(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き光学フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)(A-1)下式(I)
【化1】

(式中、R_(1)は水素原子またはメチル基を表し、R_(2)は炭素数1?10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1?14のアルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステル80?96重量%、
(A-2)分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体3?15重量%、および、
(A-3)極性官能基を有する不飽和単量体0.1?5重量%
を含む単量体混合物から得られる共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が100万?200万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布が3?7であるアクリル樹脂100重量部、
(B)有機カチオンを有し、融点が80℃以下であるイオン性化合物0.2?8重量部、並びに
(C)架橋剤0.01?5重量部
を含有する粘着剤組成物から形成されており、該接着剤層は70?99重量%のゲル分率を有することを特徴とする粘着剤付き光学フィルム。」

(ア-2)
「【0008】
本発明の課題は、高い帯電防止性が付与されるとともに、その帯電防止性が経時によって変化しにくく、大型化しても白ヌケ抑制に優れる粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供することにある。本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アクリル酸エステルを主要な成分とし、分子内に芳香環を含有させた不飽和単量体に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、および、特定のイオン性化合物を配合し、この組成物を光学フィルムの表面に粘着剤層として設けることにより、白ヌケ防止性、帯電防止性および耐久性に優れた粘着剤付き光学フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。」

(ア-3)
「【0031】
極性官能基を有する不飽和単量体(A-3)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレートの如き、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-または3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き、水酸基を有する不飽和単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5-ジヒドロフランの如き、複素環基を有する不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、複素環とは異なるアミノ基を有する不飽和単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基を有する不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを用いてもよい。
【0032】
これらのなかでも、不飽和単量体(A-3)の極性官能基は、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基またはエポキシ環であることが好ましい。とりわけ水酸基を有する不飽和単量体を、アクリル樹脂(A)を構成する極性官能基含有不飽和単量体(A-3)の一つとして用いるのが好ましい。また、水酸基を有する不飽和単量体に加えて、他の極性官能基を有する不飽和単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体を併用するのも有効である。」

(ア-4)
「【0056】
[架橋剤(C)]
以上のようなアクリル樹脂(A)およびイオン性化合物(B)に、さらに架橋剤(C)を配合して、粘着剤組成物とする。架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)中の特に極性官能基含有不飽和単量体に由来する構造単位と架橋し得る官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などが例示される。」

(ア-5)
「【0084】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm以下であるのが好ましく、また10μm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは15?25μmである。粘着剤層の厚みが30μm以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm以上であると、そこに貼合されている光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μmが標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。」

(ア-6)
「【0108】
[重合例9]
単量体組成を、(A-1)としてアクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、(A-2)としてアクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、(A-3)としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部に変更し、それ以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であった。これをアクリル樹脂Iとする。アクリル樹脂I中の水酸基含有不飽和単量体であるアクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する構造単位は1%であり、またカルボキシル基含有不飽和単量体であるアクリル酸に由来する構造単位は0.6%である。」

(ア-7)
「【0110】
重合例1?10の単量体組成、重量平均分子量、Mw/Mnの一覧を表1に示す。表中、BAはアクリル酸ブチルを、MEAはアクリル酸2-メトキシエチルを、PEAはアクリル酸2-フェノキシエチルを、HEAはアクリル酸2-ヒドロキシエチルを、AAはアクリル酸を、それぞれ意味する。
【0111】
【表1】



(ア-8)
「【0124】
[実施例1?8および比較例1?6]
(a)粘着剤の製造
重合例1?10で得たアクリル樹脂A?Jの固形分それぞれ100部に対し、表2に示すそれぞれの量のイオン性化合物、0.5部のシラン系化合物(KBM-403)、および、表2に示すそれぞれの量の架橋剤(コロネートL)を混合し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物とした。架橋剤(コロネートL)は、上述のとおり固形分濃度75%の酢酸エチル溶液であるが、表2に示す添加量は、その固形分量である。
【0125】
(b)粘着剤付き光学フィルムの作製
上の各粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)から入手、セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、90℃で1分間乾燥させ、シート状の粘着剤を得た。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光子の両面をトリアセチルセルロースからなる保護フィルムで挟んだ3層構造の偏光板の片面に、上で得たシート状粘着剤のセパレーターと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光板を得た。」

(ア-9)
「【0129】
また、温度80℃の乾燥条件下で300時間保管する耐熱試験を行った場合(表2では「耐熱」と表記)と、温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合(表2では「耐湿熱」と表記)と、70℃に加熱した状態から-30℃に降温し、次いで70℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)として、これを100サイクル繰り返す耐ヒートショック試験を行った場合(表2では「耐HS」と表記)のそれぞれについて、試験後の光学積層体を目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表2にまとめた。
【0130】
〈熱、湿熱およびヒートショックに対する耐久性(表2ではそれぞれ、「耐熱」、「耐湿熱」および「耐HS」と記す)の評価基準〉
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。」

(ア-10)
「【0133】
【表2】



(イ)刊行物2(特開2003-329838号公報)

(イ-1)
「【請求項1】
光学フィルムの一方の面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、粘着剤層が、(A)アルキル(メタ)アクリレート、(B)N-置換(メタ)アクリルアミド及び/又はN,N-置換(メタ)アクリルアミド1?12重量%、(C)水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.01?3重量%を重合成分として含有してなるカルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを含有する組成物の架橋物により形成されていることを特徴とする粘着型光学フィルム。」

(イ-2)
「【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光学フィルムを液晶パネル等のガラス基板に貼着するための粘着剤層が設けられた粘着型光学フィルムであって、リワーク性、耐久性の両者に優れ、さらにパネル面に糊残りが生じにくいものを提供することを目的とする。また当該粘着型光学フィルムに用いる光学フィルム用粘着剤組成物を提供すること、さらには当該粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」

(イ-3)
「【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層は、(A)アルキル(メタ)アクリレート、(B)N-置換(メタ)アクリルアミド及び/又はN,N-置換(メタ)アクリルアミド1?12重量%、(C)水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.01?3重量%を重合成分として含有してなるカルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを含有する組成物の架橋物により形成される。なお、アクリル系ポリマーはカルボキシル基含有モノマー成分を含有しない。アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー成分を含有すると、接着力が強くなり、リワーク性が悪くなる。また、糊残りが発生しやすくなる。」

(ウ)刊行物3(特開2010-285548号公報)

(ウ-1)
「【請求項1】
トルエン放散量が10μg/g以下であり、ホルムアルデヒド放散量が3μg/g以下であることを特徴とする光学部材用粘着テープ。」

(ウ-2)
「【0005】
従って、本発明の目的は、臭気やVOCの発生が極めて少ない光学部材用粘着テープを提供することにある。」

(ウ-3)
「【0065】
本発明の光学部材用粘着テープは光学部材に対して用いられ、特に限定はされないが、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)、光学部材の表面に本発明の粘着テープを貼付することにより得られる粘着型光学部材を製造する用途等に好適に用いられる。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、カラーフィルター、ハードコートフィルム、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態をも含むものとし、例えば、「偏光板」は「偏光フィルム」、「偏光シート」も含むものとする。
【0066】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。」

(エ)刊行物4(特開2011-28069号公報)

(エ-1)
「【請求項1】
粘着型光学フィルムの製造方法であって、光学補償フィルム単体よりなる光学フィルムの表面、或いは表面に光学補償フィルム層または光学補償膜層を有する積層型の光学フィルムにおける光学補償フィルム層または光学補償膜層の表面に、粘着性ロール接触処理またはラビング処理を行った後、粘着性ロール接触処理またはラビング処理を行った光学補償フィルム面または光学補償膜面に粘着剤を施して粘着剤層を形成することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。」

(エ-2)
「【0007】
本発明の目的は、コロナ放電処理やプラズマ処理のような、高価で、しかも高電圧を伴う装置を使用せずに、安全に、しかも簡単に、光学補償フィルム単体の表面に、或いは積層型の光学フィルムの表面における光学補償フィルム層または光学補償膜層の上に、粘着剤層が高接着力で接着積層していて、粘着剤層が液晶パネルなどに糊残りすることのない、粘着型光学フィルムを製造する方法を提供することである。」

(エ-3)
「【0017】
本発明で用いる光学補償フィルム単体の種類、或いは積層型の光学フィルムの表面における光学補償フィルム層または光学補償膜層を構成する光学補償フィルムまたは光学補償膜の種類は特に制限されず、液晶表示装置(LCD)、有機EL、電子ペーパー、タッチパネルなどにおいて、その視野角の向上、コントラストの向上、色補償などのような光学補償機能を付与する目的で従来から用いられている位相差フィルムや位相差膜、視野角向上フィルム、視野角向上膜、色補償フィルム、色補償膜、輝度向上フィルム、輝度向上膜などの光学補償フィルムまたは光学補償膜からなっていることができる。」

(オ)刊行物5(特開2011-99078号公報)

(オ-1)
「【請求項1】
ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が-10℃以上であるモノマーを必須のモノマー成分として形成されたポリマーを含有する粘着剤層を有し、60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上であることを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
前記ポリマーがアクリル系ポリマーであり、前記粘着剤層がアクリル系粘着剤層である請求項1に記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.0%以下である請求項1又は2に記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.5%以下である請求項1?3のいずれかの項に記載の光学用粘着シート。」

(オ-2)
「【0006】
従って、本発明の目的は、加湿により白濁化することなく視認性や外観の保持性に優れ、なおかつ、高温での接着信頼性にも優れた光学用粘着シートを提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、耐腐食性にも優れた光学用粘着シートを提供することにある。」

(オ-3)
「【0087】
本発明の粘着シートは、高温での粘着力に優れ、高温での被着体からの浮きや剥がれが防止又は抑止され、加湿による白濁化が起こらない。このため、光学部材を貼り合わせる用途や、光学製品の製造用途に用いられる光学用粘着シートとして使用できる。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)や入力装置等の光学製品を構成する部材又はこれらの機器(光学製品)に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、たとえば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」も含むものとする。また、「機能性フィルム」は「機能性板」、「機能性シート」を含むものとする。
【0088】
上記表示装置(画像表示装置)としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。」

(オ-4)
「【0095】
上記粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF75」)上に最終的な厚み(粘着剤層厚み)が175μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。次いで、上記塗布層上に、PETセパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)を設け、塗布層を被覆して酸素を遮断した。その後、このMRF75/塗布層/MRF38の積層体の上面(MRF38側)からブラックライト(東芝製)にて、照度5mW/cm^(2)の紫外線を300秒間照射した。さらに130℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、アクリル系粘着剤層を形成し、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。」

(オ-5)
「【0103】
【表1】

【0104】
表1中の略語は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
2MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
BA:アクリル酸n-ブチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
コロネートHL:イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)(日本ポリウレタン工業(株)製)
【0105】
(評価)
上記の実施例および比較例で得られた両面粘着シート(アクリル系粘着剤層)について、表2(当審注:表2の記載を省略する。)に示す評価を行った。ヘーズ及び全光線透過率、外観、引き剥がし粘着力の評価、耐腐食性試験は以下の通りに実施した。また、水分率は、前述の「粘着シートの水分率の測定方法」に従い、60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の水分率、23℃、50%RHの環境下に72時間保存後の水分率、23℃、95%RHの環境下に120時間保存後の水分率を測定した。上記水分率の測定結果はそれぞれ表2の、「60℃95%RH120時間後水分率」、「23℃50%RH水分率」、「23℃95%RH120時間後水分率」の欄に示した。
・・(略)・・
【0107】
(2)外観(60℃、95%RHの環境下に120時間保存後)
上記(1)の測定で用いた、60℃、95%RHの環境下に120時間保存し、23℃、50%RHの環境下に取り出した直後(0時間後)の試験片(「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する)の外観を目視で確認した。目視で白濁が認められなかった場合を○(外観保持性良好)、白濁が認められた場合を×(外観保持性不良)として評価を行った。なお、評価結果は、表2の「60℃95%RH120時間保存後の外観」の欄に示した。」

イ 刊行物1に記載の発明

刊行物1の上記(ア-1)の【請求項1】には、「光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き光学フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)(A-1)下式(I)(当審注:構造及びその構造に関する定義の記載を省略する。)で示される(メタ)アクリル酸エステル80?96重量%、
(A-2)分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体3?15重量%、および、
(A-3)極性官能基を有する不飽和単量体0.1?5重量%
を含む単量体混合物から得られる共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が100万?200万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布が3?7であるアクリル樹脂100重量部、
(B)有機カチオンを有し、融点が80℃以下であるイオン性化合物0.2?8重量部、並びに
(C)架橋剤0.01?5重量部
を含有する粘着剤組成物から形成されており、該接着剤層は70?99重量%のゲル分率を有することを特徴とする粘着剤付き光学フィルム。」が記載されているところ、
上記「粘着剤組成物」の上記「アクリル樹脂」の具体例として、上記(ア-6)及び(ア-7)の[重合例9]に関する記載によれば、単量体組成が、上記(A-1)としてアクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、上記(A-2)としてアクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、上記(A-3)としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であるアクリル樹脂」が記載されているといえる。
そして、この「アクリル樹脂」を含有する上記「粘着剤組成物」に関し、上記(ア-8)及び上記(ア-10)の【表2】によれば、上記[重合例9]によるアクリル樹脂(【表2】の「実施例8」におけるアクリル樹脂I)の固形分100部に対し、イオン性化合物2.0部、架橋剤0.4部を混合することが記載されているといえる。

そうすると、刊行物1には、「粘着剤組成物」として
「(A-1)アクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、
(A-2)アクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、および、
(A-3)アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部
からなる単量体混合物から得られる共重合体であって、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であるアクリル樹脂100部、
イオン性化合物2.0部、
シラン系化合物0.5部、並びに
架橋剤0.4部を含有する粘着剤組成物。」(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。

ウ 対比・判断

(ア)本件発明1について

本件発明1と刊行物発明を対比すると、刊行物発明の「アクリル酸ブチル」、「アクリル酸2-フェノキシエチル」、「アクリル酸2-メトキシエチル」、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」、「アクリル樹脂」、「GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw」及び(含有量を表す)「部」は、それぞれ、本件発明1の「アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(A-1)」という。)、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(A-2)」という。)、「アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(B)」という。)、「官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種」(以下、「モノマー(C)」という。)、「共重合体」、「重量平均分子量」及び「重量部」に相当する。

また、刊行物発明は、アクリル樹脂を100部としているところ、本件発明1は、前記(A)(「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計」)と前記(B)(「モノマー(B))の合計を100重量部としているから、本件発明1のこれらのモノマーに対応する刊行物発明の「アクリル酸ブチル」(78.4部)、「アクリル酸2-フェノキシエチル」(10.0部)、「アクリル酸2-メトキシエチル」(10.0部)の合計を100部として、刊行物発明の「「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計」(78.4部+10.0部)、「アクリル酸2-メトキシエチル」(10.0部)、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」(1.0部)、「架橋剤」(0.4部)の重量割合を換算すると、「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計は、「89.8部」((78.4+10.0)×100/(78.4+10.0+10.0)、当審注:他の成分に関する計算式は省略する。)、「アクリル酸2-メトキシエチル」は、「10.2部」、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」は、「1.02部」、「架橋剤」は、「0.407部」となる。
そうすると、アクリル樹脂の各モノマーの含有量及び架橋剤の含有量に関し、刊行物発明の「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計の含有量、「アクリル酸2-メトキシエチル」の含有量、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」の含有量、及び「架橋剤」の含有量は、それぞれ、本件発明1の「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計の含有量、「モノマー(B)」の含有量、「モノマー(C)」の含有量、及び「架橋剤」の含有量と、「89.8重量部」、「10.2重量部」、「1.02重量部」、及び「0.407重量部」で一致する。

また、刊行物発明の重量平均分子量は、本件発明1の重量平均分子量と、「1,540,000」で一致する。

さらに、刊行物発明の「(A-1)アクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、(A-2)アクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、および、(A-3)アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部からなる単量体混合物から得られる共重合体」は、本件発明1の「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)・・・モノマー(B)・・・モノマー(C)・・・をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた共重合体」と、「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)、モノマー(B)及びモノマー(C)のモノマー混合物を共重合させた共重合体」である点で共通している。

そうすると、本件発明1と刊行物発明は、「「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計が89.8重量部、
「モノマー(B)」が10.2重量部、
「モノマー(C)」が1.02重量部、
のモノマー混合物を共重合させた重量平均分子量が1,540,000の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.407重量部、
を、前記「モノマー(A-1)」、「モノマー(A-2)」及び「モノマー(B)」との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物。」という点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

(相違点1)
粘着剤組成物について、本件発明1は、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって」、「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する」粘着剤組成物であるのに対し、刊行物発明の粘着剤組成物にこの様な白濁防止性能があるのか明らかでない点。

(相違点2)
共重合体について、本件発明1では、「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)、モノマー(B)、モノマー(C)をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた共重合体」であるのに対し、刊行物発明では、「アクリル酸ブチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルの他に、「アクリル酸」を含有するモノマー混合物を共重合させた共重合体である点。

上記(相違点1)について、以下、検討する。
本件発明1の上記相違点1に係る「白濁防止性能」とは、本件明細書の段落【0010】の「光学用粘着剤フィルムに対して、近年求められている要求事項は、粘着剤層を厚塗りした時においても、高い透明性を確保し、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置した後、室温環境に取り出しても白濁しないことである。
しかし、粘着剤層の厚みを厚塗りにした際の、高い透明性は達成することができても、高温・高湿時の白濁防止性能はなかなか達成できないことが多かった。また、白濁防止性能を改良するために、水酸基含有モノマーの添加量を増やすなどの試みは成され、白濁防止性能は改善されてきたが、その代わりに、耐久性などの性能を保持できないなどの欠点が多かった。これらの欠点を、同時に克服できる粘着剤が必要とされている。」との記載によれば、粘着剤層を「厚塗り」した際にも、高温・高湿度の雰囲気に長期間放置した後室温環境に取り出しても白濁しないことであるといえ、具体的には、本件発明1で特定されるように、「塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の特性を有することであるといえる。
そして、この性能は、「粘着剤層」として発揮されるものである。

一方、刊行物発明の発明の課題は、上記(ア-2)の記載によれば、「高い帯電防止性が付与されるとともに、その帯電防止性が経時によって変化しにくく、大型化しても白ヌケ抑制に優れる粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供する」ことであり、刊行物1には、本件発明1の「白濁防止性能」に関する記載はない。ここで、上記(ア-10)の【表2】に記載される実施例では、上記(ア-9)の段落【0129】、【0130】に記載される「温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合(表2では「耐湿熱」と表記)」の評価基準を、
「◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。」とする評価を行っているが、ここで評価している外観変化は、「浮き、剥れ、発泡」等とされ、粘着層の「白濁」が認識されているとはいえない。
また、上述したように、白濁防止性能は、「粘着剤層」として発揮されるものであるところ、刊行物発明の粘着剤組成物には、刊行物発明の発明の課題を解決するための必須の成分として、本件発明1の粘着剤組成物には必須成分としては含まれない、高い帯電防止性を得るための「イオン性化合物」が含まれると共に、「アクリル樹脂」には、単量体成分として、本件発明1では、共重合体に含有させないとする「アクリル酸」も含まれ、刊行物発明の粘着剤組成物は、本件発明1の粘着剤組成物に成分が一致しておらず、これらの成分が存在することによる白濁防止性能に対する影響は不明であるから、粘着剤組成物の成分の類似性を理由として、刊行物発明の粘着剤組成物も、本件発明1の粘着剤組成物と同様に、白濁防止性能、すなわち上記相違点1に係る特性を有しているとまでいうことはできない。

さらに、上記(ア-8)の段落【0125】の記載によれば、この評価に供される粘着剤付き光学フィルムの粘着剤層の厚みは、「20μm」であるところ、上記(ア-5)の「粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm以下であるのが好ましく、また10μm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは15?25μmである。粘着剤層の厚みが30μm以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく・・・従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μmが標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。」との記載によれば、刊行物発明が、本件発明での粘着剤層のような「厚塗り」を意識していないこともあって、刊行物1では、「厚塗り」である「塗工厚み250μmの粘着剤層」において「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」であるという「白濁防止性能」が意図されているとはいえない。
そうすると、当業者であっても、刊行物1の記載をもとに、刊行物発明の粘着剤組成物を、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすることは、容易に想到し得ることであるとはいえない。

しかも、他の刊行物を見ても、刊行物5には、加湿により白濁化することなく視認性や外観の保持性に優れる光学用粘着シートを得るために(上記(オ-2)及び(オ-3))、上記(オ-5)の【表1】の実施例1?5の粘着剤組成物について、厚みが175μmの粘着剤層での(上記(オ-4))、60℃、95%RHの環境下に120時間保存し、23℃、50%RHの環境下に取り出した直後(0時間後)の試験片(「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する)の外観を目視で確認し、白濁の有無の評価を行っている(上記(オ-5)の段落【0107】)。
しかしながら、実施例1?5の粘着剤組成物のアクリル系ポリマーのモノマー、及びその割合を見ても、本件発明1の共重合体における必須成分の「フェノキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー」が含まれていない点、及び本件発明1の共重合体における必須成分の(C)(0.43?4.0重量部)に対応する「HEA」(アクリル酸2-ヒドロキシエチル)のモノマー割合が、本件発明1の範囲に含まれない点で、刊行物5に記載される粘着剤組成物のアクリル系ポリマーは、本件発明1の粘着剤組成物の共重合体と相違していること、及び、刊行物5での白濁の有無の評価は、本件発明1での塗工厚み250μmより薄い175μmの厚み(最終的な厚み)で行っていることから、刊行物5は、刊行物発明の粘着剤組成物が、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」であることを示唆するものではないし、また、刊行物発明の粘着剤組成物を、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすることを動機付けるものでもない。
また、刊行物2?4には、本件発明1の「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」に関連する記載もない。
そうすると、上記刊行物2?5の記載を考慮したとしても、上記相違点1に係る構成を、当業者が容易に想到し得るものとすることはできない。

そして、本件発明1は、上述したように刊行物発明の粘着剤組成物からは、容易に想到することができないとした、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する」という点で格別の効果を奏するものであるといえる。

よって、上記相違点2を検討するまでもなく、上記相違点1を、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできないから、本件発明1は、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2?5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえず、本件特許1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(イ)本件発明3?8について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるし、本件発明4?8は、その発明の中に本件発明1の内容を含むものであるから、本件発明3?8は、本件発明1と同様に、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2?5に記載さた事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえず、本件特許3?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

エ 取消理由に関するまとめ

上記「ウ」で述べたように、本件発明1、3?8は、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2?5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件特許1、3?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

2 申立理由について

本件発明1、3?8に対して申し立てられた申立理由は、以下のものである。
『本件特許発明1は、文言上、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーが必須成分であると読める。しかし、本件の特許明細書段落0036の表1等に記載されている実施例1?4,6は、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含んでいない。したがって、本件特許発明1においてフェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーが必須成分であるのか否かが不明確である。
また、本件の特許明細書段落0036の表1等に記載されている実施例7は、本件特許発明1で必須成分とされている架橋剤を含んでいないにも関わらず実施例とされている。
以上のように、本件特許発明1と本件特許明細書の発明の詳細な説明は矛盾しており、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。』

本件発明1の記載を見れば、本件発明1において、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー」が必須成分であることは明らかである。一方、本件明細書段落【0036】の表1等に記載されている実施例1?4、6は、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー」を含むものではなく、実施例とは記載されるものの、本件発明1の「態様」に含まれないことは明らかである。
また、本件発明1の粘着剤組成物には、「架橋剤」が必須成分として含まれるところ、同実施例7は、「架橋剤」を含むものではなく、実施例とは記載されるものの、本件発明1の「態様」に含まれないことは明らかである。
なお、同実施例5は、本件発明1の「態様」に含まれるものである。

そうすると、本件発明1と本件明細書の発明の詳細な説明の記載が矛盾しているということはないし、本件明細書段落【0036】の表1等には本件発明1の態様に含まれる実施例も記載されているのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないということはできない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があるとはいえないから、本件特許1、3?8は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第6 むすび

上記「第5」で検討したとおり、本件特許1、3?8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由、及び上記申立理由によっては、本件特許1、3?8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、3?8を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許2は、本件訂正請求により削除されたので、本件特許2に対する特許異議の申立てを却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粘着剤組成物及び粘着フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を厚塗りされた粘着フィルムを、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置しても白濁することのない、白濁防止性能を有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムに関する。さらに詳細には、水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有する粘着剤組成物に関し、粘着剤層の厚みを厚塗りにした際にも透明性を損なわず、さらには高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置した後の、白濁防止性能にも優れた粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイにおいては、ディスプレイ前面に各種光学フィルムや保護板が貼り付けられている。
例えば、PDPにおいては、電磁波のシールドフィルム以外に、近赤外線の波長領域を使用している各種のリモコンスイッチの誤作動を防ぐための近赤外線吸収フィルム、その近赤外線吸収フィルムに使用されている近赤外線吸収剤の経時劣化を防ぐための紫外線吸収フィルム、さらには可視光領域の色調調整のためのネオン光カットフィルム、光学フィルターの表面に外光が映り込むのを防ぐための反射防止フィルム等が、ディスプレイ前面に貼り付けられている。これらのフィルムを、ディスプレイ用光学フィルターとして用いることにより、画像の映り具合の改善が図られている。
【0003】
また、液晶パネルが、表示ディスプレイとして使用されている携帯電話では、液晶パネルの前面に衝撃吸収用の保護板が、液晶パネルの割れ防止のために空気層を介して取り付けられている。しかし、最近では、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、携帯電話の液晶パネルの前面に空気層を設けないで、粘着剤層を用いて直接に薄い保護板を貼り合せることが行なわれている。
また、PDPでも、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、PDPパネルに直接、光学フィルター用のフィルムを貼合することが、ダイレクトカラーフィルター方式として検討されている。
【0004】
上記の光学フィルムや保護板は、粘着剤層を使用してディスプレイの前面に貼り合せられているが、粘着剤層を使用して各種の光学フィルムをディスプレイに貼り合せる時に、気泡を巻き込んでしまい粘着剤層に微小気泡が生じるという問題があった。
また、ディスプレイ表示装置の、出荷前に行なわれるディスプレイの性能試験では、オーブンを使用して行われる高温・高湿度での環境条件下における耐久試験に合格する必要がある。しかし、白濁防止性能が改善されていない粘着剤層を用いた光学フィルムの場合、オーブンから取り出した後、粘着剤層が白濁してしまい、ディスプレイの商品価値を損なうという問題があった。
【0005】
このように、粘着テープを使用して、光学フィルムをディスプレイに貼り合せた時に、粘着剤層に微小気泡が生じるという問題や、また、ディスプレイを、オーブンを使用して高温・高湿度の環境条件下で耐久性試験を行った時、およびオーブンから取り出した後に、粘着剤層に白濁が生じるという問題を解決するために、従来から様々な取り組みが行なわれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、粘着剤層の表面に窪みが生じた場合の修復性能を改善して気泡の巻き込みを防止する、粘着剤層を用いた粘着型光学フィルムが開示されている。
具体的には、アルキル基の炭素数が7?18のアルキル(メタ)アクリレートと、水酸基含有モノマーとの重量比率が100:0.01?5で含有するポリマー、及び水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物、を含有する組成物の架橋物により形成された粘着剤層である。この粘着剤層(厚さ20μm)を用いた光学フィルムをガラスに貼り合せた後、50℃×0.05MPa雰囲気下に5分間放置し、粘着剤層での微小気泡の発生の有無を目視にて確認する方法により気泡の有無を検査しているが、微小気泡の発生が防止できているとしている。
【0007】
また、特許文献2には、画像表示装置等の保護に必要な衝撃吸収のための、アクリル酸系誘導体、アクリル酸系誘導体ポリマー、及び高分子量架橋剤を含有した樹脂組成物が開示されている。画像表示用パネルの割れ防止あるいは応力及び衝撃の緩和に有用で、透明性に優れているとしている。
吸湿試験として、深さ0.5mmの枠で成形した樹脂シートを60℃、90%RHの高温・高湿試験槽に50時間入れることで行い、目視観察で評価を行なう方法で確認した結果、この樹脂組成物であれば発泡が少なく透明性に優れているとしている。
【0008】
また、特許文献3には、優れた耐湿熱性を有する電子ディスプレイ用粘着剤層が開示されている。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体および/または混合物を含む電子ディスプレイ用粘着剤組成物であって、さらに、アルキレンオキシ基を有するモノマー、および、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことを特徴とする電子ディスプレイ用粘着剤組成物である。
吸湿試験として、樹脂フィルムに積層した粘着剤層(厚さ200μm)を介してガラス板に貼り合せた積層体を、60℃、90%RHの環境下に120時間放置した後、常温(25℃)下で30分間放置した後、ヘイズ値を測定して積層体の透明性を判定している。この粘着剤組成物によれば、高温・高湿下で放置された後でも、発泡が少なくて高い透明性を維持できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-262729号公報
【特許文献2】特開2008-248221号公報
【特許文献3】特開2008-001739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光学用粘着剤フィルムに対して、近年求められている要求事項は、粘着剤層を厚塗りした時においても、高い透明性を確保し、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置した後、室温環境に取り出しても白濁しないことである。
しかし、粘着剤層の厚みを厚塗りにした際の、高い透明性は達成することができても、高温・高湿時の白濁防止性能はなかなか達成できないことが多かった。また、白濁防止性能を改良するために、水酸基含有モノマーの添加量を増やすなどの試みは成され、白濁防止性能は改善されてきたが、その代わりに、耐久性などの性能を保持できないなどの欠点が多かった。これらの欠点を、同時に克服できる粘着剤が必要とされている。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、粘着剤層を厚塗りされた粘着フィルムを、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置しても白濁することのない、白濁防止性能を有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50?95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物を提供する。
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下であることが好ましい。
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましい。
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、有機EL用フィルムを提供する。
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粘着剤層の厚みが250μm以上の厚塗り時において、透明性に優れていることは勿論のこと、高温・高湿時の白濁防止性能を改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1及び比較例1について、高温・高湿度の環境から取り出した直後からの、ヘイズ値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、(B)窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとを含む。
【0016】
本発明に用いる粘着剤ポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましく、特に、(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合組成物が好ましい。
【0017】
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの一部に代えて、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを併用することもできる。
【0018】
(B)のうち、窒素含有ビニルモノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルモルホリンなどの環状窒素ビニル化合物;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(B)の窒素含有ビニルモノマーとしては、水酸基を含有しないものが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。このようなモノマーとしては、上に例示したモノマー、例えば、N,N-ジアルキル置換アミノ基やN,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドンなどのN-ビニル置換ラクタム類;N-(メタ)アクリロイルモルホリンやN-(メタ)アクリロイルピロリジンなどのN-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0019】
(B)のうち、アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート、4-プロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-イソプロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-ブトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらのアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の原子がアルコキシ基で置換された構造を有する。
【0020】
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
なお、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類は窒素を含有するが、本発明においては、(B)群ではなく、(C)群に属するものとする。
【0021】
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0022】
上記(A)、(B)および(C)のモノマーは、アクリル系共重合体として、粘着剤の主剤となる粘着剤ポリマーを構成する。共重合体の重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
粘着剤ポリマーの平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば重量平均分子量20万?200万の範囲内が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる粘着剤ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはフェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が50?95重量部、(B)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種が0.5?10重量部、からなる共重合体であることが好ましい。ここで、(A)?(C)の重量部は、(A)と(B)との合計が100重量部となるように規定する。
【0024】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に粘着剤ポリマーを架橋することが好ましい。架橋をするため、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでも良く、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物、2官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、0.01?5重量部が挙げられる。
【0025】
(D)架橋剤としては、前記(C)のモノマーに含まれる水酸基と反応してアクリル系共重合体を架橋し得るものが好ましい。このような架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などのポリイソシアネート化合物などが挙げられる。また紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。
なお、本発明に用いられる共重合体は、架橋剤と反応する官能基モノマーとして、前記(C)の水酸基含有ビニルモノマーを含むことから、カルボキシル基含有ビニルモノマーを含まないものとすることができる。
【0026】
本発明の粘着剤組成物は、(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはフェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が50?95重量部、(B)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種が0.5?10重量部、からなる重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、(D)架橋剤が0.01?5重量部、を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有することが好ましい。
【0027】
本発明の粘着剤組成物は、さらに、その他成分としてシランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0028】
本発明の粘着剤組成物によれば、粘着剤層の厚みを厚塗りとした時の、優れた透明性は勿論のこと、高温・高湿時の白濁防止性能を改善することが可能になる。前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましい。また、前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が4.0%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの片面上に、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたものである。本発明の粘着フィルムは、タッチパネル用、電子ペーパー用、有機EL用、光学部材用、表面保護用等の各種用途に用いることができる。粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、100?2000μmである。粘着剤層の厚みが薄すぎると、衝撃吸収性能が悪くなるが、粘着剤層の厚みが厚過ぎるとコストが上昇する点で不利である。特に、粘着剤層の厚みが、250μm以上の厚塗りであると、本発明の効果が高いため、好ましい。
【0030】
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
偏光板用の表面保護フィルムなどの、光学用の表面保護フィルムの場合は、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
また、粘着剤層を介して、各種フィルムを積層した積層フィルムに用いることができる。このようなフィルムとしては、タッチパネル用フィルム、電子ペーパー用フィルム、有機EL用フィルム、光学用フィルム等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の粘着剤組成物は、光学フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層が積層されてなる、粘着剤付き光学フィルムに利用することもできる。
粘着剤付き光学フィルムにおいては、基材フィルムとして、偏光板フィルム、位相差板フィルム、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板フィルム、レンズフィルム兼用の偏光板フィルム等の光学フィルムを用いることができる。
粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの片面または両面に粘着剤層を積層してなるものであって、画像表示装置のガラス板等との貼り合わせに用いることができる。これらの粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤層を介してガラス基板等と貼り合わされて、画像表示装置等に組み込むことができる。粘着剤付き偏光板などの粘着剤付き光学フィルムに用いられる粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
また、基材フィルムとして使用する偏光板は、一般的に、ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、トリアセチルセルロース系保護フィルムで挟まれた3層構造を有している。
保護フィルムの表面に、ディスコティック液晶がコートされている偏光板、もしくは、トリアセチルセルロース系フィルムの替わりに、延伸トリアセチルセルロース系フィルム、延伸ポリシクロオレフィン系フィルム、または延伸セルロースアセテートプロピオネートフィルム等で貼り合わされた構造となっている。更に、これらの偏光板フィルムは、液晶表示用パネルの表面基材であるガラス基板に、粘着剤層を介して貼り合わされる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【0033】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート95重量部、N-ビニル-2-ピロリドン5重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0重量部とともに、溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量80万の、実施例1のアクリル共重合体溶液1を得た。
[実施例2?7及び比較例1?2]
単量体の組成を、各々、表1の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2?7及び比較例1?2に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0034】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した、アクリル共重合体溶液1(そのうち(A)群+(B)群が100重量部)に対して、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)0.5重量部を加えて撹拌混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが250μmである粘着フィルムを得た。
その後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに粘着シートを転写させ、「PETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2?7及び比較例1?2]
架橋剤の組成を、各々、表1の(D)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2?7及び比較例1?2の粘着フィルムを得た。
【0035】
表1において、各成分の配合比は、(A)群+(B)群の合計を100重量部として求めた、重量部の数値を括弧で囲んで示す。表1のMwは、重量平均分子量を意味する。
また、表1に用いた、各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。また、表2の(D)群において、HDIは、ヘキサメチレンジイソシアネートを、XDIは、キシリレンジイソシアネートを意味する。
なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同L-45は、日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A?100は、旭化成ケミカルズ株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-110Nは、三井化学株式会社の商品名である。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
<試験方法及び評価>
実施例1?7及び比較例1?2の粘着フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、全光線透過率の測定試料とした。
また、実施例1?7及び比較例1?2の粘着フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)で粘着剤層の両面を覆ったままのものを、ヘイズ値の測定試料とした。
また、実施例1?7及び比較例1?2の粘着フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、オーブンによる60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後にオーブンから室温環境(23℃、50%RH)に取り出した後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)で粘着剤層の両面を覆ったままのものを、湿熱後ヘイズ値の測定試料とした。
また、粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して無アルカリガラス板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。
また、粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して無アルカリガラス板の表面に貼り合わせ、耐久性の測定試料とした。
【0039】
<全光線透過率>
上記で得られた、全光線透過率の測定試料について、ヘイズメータ(製造者:日本電色株式会社、型式:Haze Meter、NDH2000)を用いて、JISK7105に準じて、粘着剤層の全光線透過率を測定した。
【0040】
<ヘイズ値及び湿熱後ヘイズ値>
上記で得られた、ヘイズ値及び湿熱後ヘイズ値の測定試料について、ヘイズメータ(製造者:日本電色株式会社、型式:Haze Meter、NDH2000)を用いて、粘着剤層のヘイズ値を測定した。
なお、上記の測定試料では、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)で粘着剤層の両面を覆ったままのものを、ヘイズ値及び湿熱後ヘイズ値の測定試料としたが、剥離フィルム自体のヘイズ値は、無視できる程度に小さいことを確認した。
【0041】
<ガラス板に対する粘着力>
上記で得られた、粘着力の測定試料(25mm幅の粘着フィルムを、無アルカリガラス板の表面に貼り合わせたもの)を、180°方向に引張試験機を用いて0.3m/minの引張速度において剥がして、測定した剥離強度を粘着力とした。
【0042】
<耐久性>
上記で得られた、耐久性の測定試料を、80℃(Dry)の雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、被着体からの剥がれ、発泡等を目視にて確認した。評価基準は、剥がれ・発泡が全く確認されない場合を「○」、剥がれ・発泡が僅かに確認された場合を「△」、剥がれ・発泡が明確に確認された場合を「×」と評価した。
【0043】
表3に、測定結果及び評価結果を示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例1?7の粘着フィルムは、粘着剤層が厚塗り(250μm)時の透明性(全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下)は勿論のこと、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置しても白濁の小さい、白濁防止性能(60℃、90%RH、240時間放置後のヘイズ値が4.0%以下)を有し、白濁防止性能を改善することができた。さらに、高温の雰囲気下に長期間放置しても、剥がれや発泡することがなかった。
比較例1?2の粘着フィルムは、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置すると、ヘイズ値の増大が見られ、白濁防止性能に問題があるものとなった。また、高温の雰囲気下に長期間放置すると、剥がれや発泡が見られ、耐久性に問題があるものとなった。さらに、比較例1では、高温・高湿度の雰囲気下に放置する前から、透明性(全光線透過率・ヘイズ値)の測定結果が悪いものとなった。
【0046】
<高温・高湿度の環境から取り出した後のヘイズ値の変化>
また、実施例1及び比較例1の粘着フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、オーブンによる60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後に、オーブンから室温環境(23℃、50%RH)に取り出し、取り出した直後から60分経過までヘイズ値を測定した。得られた、高温・高湿度の環境から取り出した後のヘイズ値の変化を、図1に示す。
図1において、本発明に係わる実施例1は、オーブンから取り出した直後から1分程度で、ヘイズ値が最大値(3.5%)に達するが、オーブンから取り出して1時間経過しても、ヘイズ値が4.0%を超えることはなく、優れた白濁防止性能を有することが分かる。一方、比較例1においては、オーブンから取り出した直後から数分でヘイズ値が最大値として約25%に上昇した後、放置時間の経過と共に、徐々にヘイズ値が低下する傾向を示すが、白濁の著しい状態が60分以上も継続することが分かる。
なお、実施例1及び比較例1のいずれの場合も、高温・高湿度の環境において発生した、上記の白濁は、室温において数時間放置することにより、徐々に消滅して、最終的に粘着フィルムは透明(ヘイズ値が1.0%以下)となった。
本評価は、粘着剤層の両面が、剥離フィルムの間で覆われている状態で実施した場合に起こる変化であり、白濁が消滅するまでの時間が比較的短いが、ガス透過性の悪いガラス同士やアクリル板とガラスなどと貼り合わせたサンプルの場合は、白濁するタイミングは同じであるが、白濁が消滅するまでの時間が、数日かかることもある。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1?C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50?95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5?50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43?4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万?200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01?5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物。
【請求項4】
基材の片面上に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルム。
【請求項6】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用フィルム。
【請求項7】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、有機EL用フィルム。
【請求項8】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-01 
出願番号 特願2011-204147(P2011-204147)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 天野 宏樹
原 賢一
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5851166号(P5851166)
権利者 藤森工業株式会社
発明の名称 粘着剤組成物及び粘着フィルム  
代理人 大浪 一徳  
代理人 貞廣 知行  
代理人 志賀 正武  
代理人 大浪 一徳  
代理人 志賀 正武  
代理人 貞廣 知行  

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