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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L |
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管理番号 | 1333246 |
異議申立番号 | 異議2017-700290 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-21 |
確定日 | 2017-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5995935号発明「殻付茹で卵」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5995935号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5995935号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 番場大円 より請求項1及び2に対して特許異議の申立てがされ、平成29年5月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年7月12日付けの意見書が提出され、その後、特許異議申立人より平成29年8月10付けの上申書が提出されたものである。 第2 本件の発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1及び2に係る発明をそれぞれ順に「特許発明1」及び「特許発明2」という。)。 「【請求項1】 生卵を、以下の(1)?(3)の温度及び時間のいずれかの条件で加熱してなり、卵白が凝固して殻が剥きやすく、卵黄の全体が液状であり、 γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる殻付き茹で卵の作製方法。 (1)100℃以上110℃未満の温度で5分以上7分未満 (2)110℃以上120℃未満の温度で4分以上5分未満 (3)120℃の温度で3分以上4分未満 【請求項2】 さらに、55℃?75℃の温度で、120分?10分保持する殺菌工程で殺菌することを特徴とする請求項1記載の殻付き茹で卵の作製方法。」 第3 当審の判断 1 平成29年5月16日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである(なお、上記取消理由通知は本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。)。 理由(1) 特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由(2) 特許発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由(3) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 理由(4) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 記 ア 証拠方法 甲第1号証:涼風mama,「とろとろ玉子♪《ゆで卵》」,クックパッド レシピID:1702064,平成24年2月10日,[平成29年3月17日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/1702064> 甲第2号証:matsuri,「圧力鍋でゆで卵」,クックパッド レシピID:348883,平成19年3月25日,[平成29年3月17日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/348883> 甲第3号証:小原哲二郎,細谷憲政監修,「簡明食辞林第二版」,株式会社樹村房,平成9年4月25日,p.45,右欄13?18行 甲第4号証:「沸騰するってどういうことか?」,国立大学法人大阪教育大学のホームページ,[平成29年3月17日検索],インターネット<URL:https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~(当審注:「~」は半角の「?」)masako/exp/netuworld/jikken/huttou2.html> 甲第5号証:特開2001-245635号公報 イ 理由(1)及び(2)(29条1項3号、29条2項)について (ア) 特許発明1について 特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ) 特許発明2について 特許発明2は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 理由(3)(36条6項1号)について 特許発明1について、請求項1に特定された温度と時間の制御手段は所望の茹で卵が必ずしも製造できない態様も含んでいる。また、特許発明2について、出願時の技術常識に照らしても、請求項2に特定された殺菌工程の温度と時間の範囲で所望の茹で卵を製造できることの具体例が発明の詳細な説明に記載されていない。よって、特許発明1及び2は発明の詳細な説明に記載されたものではない。 エ 理由(4)(36条4項1号)について 請求項1及び請求項1を引用する請求項2に特定された温度と時間の制御手段では所望の茹で卵が必ずしも製造できないところ、それ以外の制御手段が発明の詳細な説明に記載されていないから、特許発明1及び2を当業者が必ずしも実施できるとはいえず、過度な試行錯誤が必要となるので、発明の詳細な説明は、明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 2 特許異議申立書の甲各号証の記載事項等 (1) 甲第1号証には以下の事項が記載されている。 (1-1) 「とろとろ玉子♪《ゆで卵》」(写真上) (1-2) 「白身は柔らか黄身はトロっとろ♪ 材料 卵 3?5個」(写真右) (1-3) 「1 鍋に卵がかぶるくらいのお湯を沸かす 2 5分30秒タイマーをセットしておく 3 沸騰した鍋に卵を入れタイマーstart!ぐるぐる4、5回箸でお湯をかきまわす 4 時間になったらお湯を捨て冷たい水で一気に冷やし殻が冷えたら剥いて出来上がり コツ・ポイント 簡単《味たまご》ガラスのグラスにめんつゆと卵を入れる3時間?6時間浸けておく このレシピの生い立ち 家でラーメンを食べるときに作るトロッと黄身が出てくるゆで卵。白身は固まるので味付け卵にも♪」(写真下) (1-4) 上左側に写真が掲載されている。 (1-5) 生卵を加熱してゆで卵を製造することは一般常識といえるし、上記(1-3)の「殻が冷えたら剥いて出来上がり」の記載からすると、殻を剥く前は「殻付きゆで卵」といえるから、これらの事項を総合すると、甲第1号証には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。 「生卵3?5個を材料とし、鍋に卵がかぶるくらいのお湯を沸かして沸騰した鍋に卵を入れ5分30秒間、4?5回箸でお湯をかきまわしながらゆでた後、お湯を捨てて冷たい水で一気に冷やす、白身が固まり黄身がトロッと出てくる殻付ゆで卵の製造方法。」 (2) 甲第2号証には以下の事項が記載されている。 (2-1) 「圧力鍋でゆで卵」(写真上) (2-2) 「圧力鍋で、中がとろとろの半熟ゆで卵を作ることができます。 カレーなどに! 材料 卵Lサイズ 数個 水 200ml ■圧力鍋 ■万能蒸し器」(写真右) (2-3) 「1 圧力鍋に万能蒸し器を入れ、水200mlを入れます。 卵を蒸し器に並べます。 2 ふたをして2分加圧、自然冷却。 安全ピンがおちたらふたをあけて卵を取り出し水で冷やします。 3 殻をむき、完成。 コツ・ポイント 中がほとんど生の超半熟ゆで卵です。 古い卵は使わない方がいいかも知れないです。 このレシピの生い立ち 圧力鍋でもゆで卵が作れると聞き、試行錯誤した結果できたものです。 スープカレー用に考えたので超半熟です。 スープの中で割ると中から幸せがとろけ出てきます。」(写真下) (2-4) 上左側に写真が掲載され、卵白が凝固していることがみてとれる。 (2-5) 生卵を加熱してゆで卵を製造することは一般常識といえるし、上記(2-3)の「殻をむき、完成」の記載からすると、殻をむく前は「殻付きゆで卵」といえるから、これらの事項を総合すると、甲第2号証には、以下の「甲2発明」が記載されていると認められる。 「生卵Lサイズを材料とし、圧力鍋に万能蒸し器を入れ、さらに水200mlを入れた後に卵を蒸し器に並べ、ふたをして2分加圧した後に自然冷却し、安全ピンがおちたらふたをあけて卵を冷やす、卵白が凝固し卵黄がほとんど生の超半熟殻付ゆで卵の製造方法。」 (3) 甲第3号証には以下の事項が記載されている。 (3-1) 「あつりょくなべ【圧力鍋】[pressure pan]高圧高温で加熱できる特殊構造鍋。家庭用の鍋の内圧は常圧+0.6?1.2kgfで,沸点は110?123℃くらいまで上昇するため,煮えにくい玄米,豆,硬い肉,魚の骨などが比較的短時間で煮える。」(45ページ右欄13?18行) (4) 甲第4号証には以下の事項が記載されている。 (4-1) 「水は1気圧(760.0mmHg)の状況下において100℃以下では蒸気圧が外気圧よりも小さいために沸とうすることができません。水が内部から気化しようとするのを外気圧がおさえているのです。しかし、100℃に達すると外気圧と蒸気圧が等しくなって、内部でも蒸発が起こるのです。これが沸とうという現象なのです。」(水の蒸気圧の表の下) (5) 甲第5号証には以下の事項が記載されている。 (5-1) 「【0031】加熱時間は、対象の細菌を殺菌する(陰性とする)のに充分な時間であって、殺菌対象物の形状や容積によって適宜選択される。また、加熱により殺菌対象物の基質(特にタンパク質)が実質的に変性しないように加熱時間を選択する。殻付生鶏卵の場合は、減圧飽和水蒸気の環境下60℃以下の温度で加熱することが好ましい。55?60℃の温度で当該加熱温度に対応して120?30分間加熱することが更に好ましい。更に更に好ましくは57?60℃の温度で当該加熱温度に対応して50?30分間加熱する。更に更に更に好ましくはほぼ60℃の温度ほぼ30分間加熱する。このように加熱温度が60℃以下であり、更に、短時間の処理であるため、得られる加熱処理卵の卵白と卵黄は、生卵と同様の流動性を有し、卵黄膜の脆弱化、卵黄のだれ、濃厚卵白の白濁及び水様化は生じにくい。」 3 理由(3)(36条6項1号)についての判断 本件の取消理由に鑑み、まず理由(3)から判断する。 本件特許の請求項1が所望の茹で卵としての「卵白が凝固して殻が剥きやすく、卵黄の全体が液状であり、γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」ことを発明を特定する事項としていることからすると、仮に請求項1に特定された温度と時間の加熱条件によっては必ずしも所望の茹で卵が製造できないことがあるとしても、特許発明1は、所望の茹で卵が製造できない殻付き茹で卵の作製方法を除外しているといえるから、所望の茹で卵が製造できない態様を含んでいるということはできず、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。 また、本件特許の請求項2に特定された殺菌工程の温度と時間の範囲で所望の茹で卵を製造できることの具体例が発明の詳細な説明に記載されていないとしても、甲第5号証に記載された事項を含め、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると、請求項2に特定された殺菌工程の温度と時間の範囲は茹で卵の殺菌において一般的といえる範囲のものであって、茹で卵を殺菌できることは確かである。加えて、請求項2は請求項1を引用する形式の記載であって、先に述べたとおり請求項1が所望の茹で卵としての「卵白が凝固して殻が剥きやすく、卵黄の全体が液状であり、γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」ことを発明を特定する事項としていることからすると、仮に請求項2に特定された範囲の殺菌工程の温度と時間によっては所望の茹で卵を作成できないことがあるとしても、特許発明2は、所望の茹で卵が製造できない殻付き茹で卵の作製方法を除外しているといえるから、所望の茹で卵が製造できない態様を含んでいるということはできないし、特許発明2に係る該殺菌工程は、例えば特許明細書の【0013】に記載されているから、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。 よって、本件特許の請求項1及び2の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 4 理由(1)及び(2)(29条1項3号、29条2項)についての判断 (1) 特許発明1について ア 特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、特許発明1では、「以下の(1)?(3)の温度及び時間のいずれかの条件で加熱してなり、」「(1)100℃以上110℃未満の温度で5分以上7分未満 (2)110℃以上120℃未満の温度で4分以上5分未満 (3)120℃の温度で3分以上4分未満」であって、「卵黄の全体が液状であり、γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」のに対し、甲1発明では、「鍋に卵がかぶるくらいのお湯を沸かして沸騰した鍋に卵を入れ5分30秒間、4?5回箸でお湯をかきまわしながらゆでた後、お湯を捨てて冷たい水で一気に冷やす、黄身がトロッと出てくる」ものであって、「γ-リベチンの含有量」が不明である点、で相違する。 上記相違点について検討する。 甲1発明の「鍋に卵がかぶるくらいのお湯を沸かして沸騰した鍋に卵を入れ5分30秒間、4?5回箸でお湯をかきまわしながらゆでた後、お湯を捨てて冷たい水で一気に冷やす」ことは、甲第4号証に記載された事項を考慮し、仮に1気圧の状況下において沸騰した鍋であるとすると、特許発明1の「(1)」「の温度及び時間の」「条件で加熱してな」ることと重複するとも解せるが、甲1発明は「黄身がトロッと出てくる」ものの「卵黄の全体が液状であ」るとまではいえない。実際、甲1の写真から、液状とはいえない固まった黄身が白身に付着している様子がみてとれる。そうであれば、卵黄の状態は「一部が液状」であって、「γ-リベチンは、熱に弱く加熱により急激に変性してしまう」(本件特許明細書【0003】)ことからすると、甲第1ないし5号証を参酌しても、甲1発明の「γ-リベチンの含有量」について「生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」と必ずしもいえない。そして、これらの点は実質的な相違点というべきである。 また、甲第1号証には「γ-リベチン」に関する記載がなく、甲1発明は「γ-リベチンの含有量」を考慮しているといえないから、甲1発明をして「γ-リベチンの含有量」について試行錯誤することの動機付けは見当たらない。したがって、甲1発明をして特許発明1の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、特許発明1は、甲1発明であるといえないし、また、甲1発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものともいえない。 イ 特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも、特許発明1では、「以下の(1)?(3)の温度及び時間のいずれかの条件で加熱してなり、」「(1)100℃以上110℃未満の温度で5分以上7分未満 (2)110℃以上120℃未満の温度で4分以上5分未満 (3)120℃の温度で3分以上4分未満」であって、「卵黄の全体が液状であり、γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」のに対し、甲2発明では、「圧力鍋に万能蒸し器を入れ、さらに水200mLを入れた後に卵を蒸し器に並べ、ふたをして2分加圧した後に自然冷却し、安全ピンがおちたらふたを開けて卵を冷やす、卵黄がほとんど生」であって、「γ-リベチンの含有量」が不明な点、で相違している。 上記相違点について検討する。 甲2発明の「圧力鍋に万能蒸し器を入れ、さらに水200mLを入れた後に卵を蒸し器に並べ、ふたをして2分加圧した後に自然冷却し、安全ピンがおちたらふたを開けて卵を冷やす」ことは、圧力鍋に係る甲第3号証に記載された事項を考慮しても、特許発明1の「(1)100℃以上110℃未満の温度で5分以上7分未満 (2)110℃以上120℃未満の温度で4分以上5分未満 (3)120℃の温度で3分以上4分未満」の所定の温度及び時間の条件で加熱することと重複するか否か不明である上に、甲2発明は「卵黄がほとんど生」であるものの卵黄がどの程度加熱されているか不明であるし、また、「卵黄の全体が液状であ」るとまでは必ずしもいえない。加えて、「γ-リベチンは、熱に弱く加熱により急激に変性してしまう」(本件特許明細書【0003】)ことからすると、甲第1ないし5号証を参酌しても、甲2発明の「γ-リベチンの含有量」について「γ-リベチンの含有量が生卵のγ-リベチンの含有量に対して、80重量%以上含有してなる」とは必ずしもいえない。そして、これらの点は実質的な相違点であって、甲第2号証には「γ-リベチン」に関する記載がなく、甲2発明は「γ-リベチンの含有量」を考慮しているといえないから、甲2発明をして「γ-リベチンの含有量」について試行錯誤することの動機付けは見当たらない。したがって、甲2発明をして特許発明1の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、特許発明1は、甲2発明に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものといえない。 (2) 特許発明2について 特許発明2は、特許発明1をさらに限定したものであるから、特許発明1と同様の理由により、甲1発明又は甲2発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3) 小括 よって、特許発明1は特許法29条1項3号に該当するとはいえず、特許発明1及び2は同法29条2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 5 理由(4)(36条4項1号)についての判断 既に「3 理由(3)(36条6項1号)についての判断」にて述べたように、本件特許の請求項1及び2に特定された温度と時間の制御手段で所望の茹で卵を製造でき、仮にその制御手段で所望の茹で卵を作成できないことがあるとしても、特許発明1及び2は、所望の茹で卵が製造できない殻付き茹で卵の作製方法を除外しているといえる。したがって、特許発明1及び2の殻付茹で卵の作成方法により所望の茹で卵が製造できるので、それ以外の制御手段が発明の詳細な説明に記載されていないとしても、特許発明1及び2を当業者が必ずしも実施できないとはいえないから、発明の詳細な説明は、明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、特許発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。 さらに、他に特許発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-09-29 |
出願番号 | 特願2014-207782(P2014-207782) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L) P 1 651・ 536- Y (A23L) P 1 651・ 121- Y (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 福間 信子 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
田村 嘉章 佐々木 正章 |
登録日 | 2016-09-02 |
登録番号 | 特許第5995935号(P5995935) |
権利者 | 三州食品株式会社 |
発明の名称 | 殻付茹で卵 |
代理人 | ▲高▼荒 新一 |
代理人 | 江口 基 |