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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F16J 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F16J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F16J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F16J |
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管理番号 | 1333256 |
異議申立番号 | 異議2017-700225 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-06 |
確定日 | 2017-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5989371号発明「配管シール用フッ素樹脂製ガスケット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5989371号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5989371号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年3月24日に特許出願され、平成28年8月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年3月6日に、本件特許について、特許異議申立人三田翔(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年5月18日付けで取消理由が通知され、同年7月20日に意見書が提出されたものである。 第2 本件発明 特許5989371号の請求項1及び2に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 配管同士の接続部をシールするために用いられるガスケットであって、フッ素樹脂および充填材として中空無機粒子を含有するガスケット形成用樹脂組成物のプリフォームからなり、破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように当該プリフォームに含まれている中空無機粒子が破砕されてなる配管シール用フッ素樹脂製ガスケット。 【請求項2】 配管同士の接続部をシールするために用いられるガスケットを製造する方法であって、フッ素樹脂および充填材として中空無機粒子を含有するガスケット形成用樹脂組成物をシート状に成形し、成形されたプリフォームを圧延することにより、破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように当該プリフォームに含まれている中空無機粒子を破砕することを特徴とする配管シール用フッ素樹脂製ガスケットの製造方法。」 第3 取消理由の概要 当審において、請求項1及び2に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、つぎのとおりである。 1 理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について 請求項1及び2に係る発明は、刊行物(英国特許出願公開第2265627号明細書)に記載された発明と同一であるか、又は刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるか、又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 理由3(特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号)について 発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、また、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件に違反してされたものである。 第4 刊行物の記載 刊行物(英国特許出願公開第2265627号明細書)には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(特に、1ページ6行?12行、3ページ4行?9行、3ページ17行?4ページ16行、5ページ13行?6ページ26行及び9ページ2行?9行を参照。)。 「配管をシールするガスケットであって、PTFE樹脂粉末及び中空微小ガラス球を含有するガスケット形成用樹脂組成物のシート状物からなり、破砕された中空微小ガラス球の割合が43.7?52.1%となるように当該シート状物に含まれている中空微小ガラス球が破砕されてなる配管シール用フッ素樹脂製ガスケット。」 第5 判断 1 理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について (1)請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「配管をシールする」ことは、請求項1に係る発明の「配管同士の接続部をシールするために用いられる」ことに相当する。 以下同様に、「PTFE樹脂」は、「フッ素樹脂」に、 「中空微小ガラス球」は、「中空無機粒子」に、 「シート状物」は、「プリフォーム」に、 「PTFE樹脂粉末及び中空微小ガラス球を含有するガスケット形成用樹脂組成物のシート状物」は、「フッ素樹脂および充填材として中空無機粒子を含有するガスケット形成用樹脂組成物のプリフォーム」に、 「配管シール用フッ素樹脂製ガスケット」は、「配管シール用フッ素樹脂製ガスケット」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「破砕された中空微小ガラス球の割合が43.7?52.1%となるように当該シート状物に含まれている」ことと、請求項1に係る発明の「破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように当該プリフォームに含まれている」こととは、「破砕された中空無機粒子が当該プリフォームに含まれている」という限りで共通する。 以上のことから、請求項1に係る発明と引用発明とは次の点で一致する。 [一致点] 「配管同士の接続部をシールするために用いられるガスケットであって、フッ素樹脂および充填材として中空無機粒子を含有するガスケット形成用樹脂組成物のプリフォームからなり、破砕された中空無機粒子が当該プリフォームに含まれている中空無機粒子が破砕されてなる配管シール用フッ素樹脂製ガスケット。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点] 請求項1に係る発明では、「破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように」当該プリフォームに含まれるのに対して、 引用発明では、「破砕された中空微小ガラス球の割合が43.7?52.1%」である点。 上記相違点について判断する。 上記相違点に係る請求項1に係る発明の構成の「破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となる」とは、中空無機粒子が完全に破砕されたものではなく(本件特許の明細書の段落【0033】を参照。)、破砕された中空無機粒子の体積が、破砕前の中空無機粒子の体積に対して、25?60体積%となることを意味している。 一方、引用発明の「破砕された中空微小ガラス球の割合が43.7?52.1%」は、刊行物の6ページの「Table 2」の下から3?2行の「Estimated proportion of crushed microspheres」(当審訳「破砕された微小球体の見積もられた割合」)との記載を参酌すれば、破砕された中空微小ガラス球が、43.7?52.1%の割合であることを意味している。 そうすると、上記相違点は、請求項1に係る発明では、破砕された中空無機粒子の体積についてであるのに対して、引用発明では、破砕された中空微小ガラス球の割合についてである点で、実質的に異なる。 そして、引用発明の上記「破砕された中空微小ガラス球の割合」を「破砕された中空無機粒子の体積」とすることについて、刊行物に記載ないし記載されているに等しいとはいえないし、また、刊行物に示唆されているものでもない。 しかも、上記相違点に係る請求項1に係る発明の構成は、当業者が容易に想到することができたともいえない。 そうすると、請求項1に係る発明は、引用発明と同一ということはできないし、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に対応する方法の発明であり、請求項1に係る発明の「破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように当該プリフォームに含まれている」との事項を備えるものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、引用発明と同一ということはできないし、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 2 理由3(特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号)について 請求項1及び2に係る発明では、「破砕された中空無機粒子の体積が破砕前の中空無機粒子の体積の25?60体積%となるように当該プリフォームに含まれている」との事項を特定しており、当該事項は、「破砕された中空無機粒子の体積」の「破砕前の中空無機粒子の体積」に対する割合を特定している。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、実施例1?6として、その製造方法及び「ビーズ内の空隙の割合」が具体的に記載されている(段落【0041】?【0057】を参照。)。 そうすると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものといえる。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-09-07 |
出願番号 | 特願2012-68504(P2012-68504) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
Y
(F16J)
P 1 651・ 537- Y (F16J) P 1 651・ 121- Y (F16J) P 1 651・ 113- Y (F16J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐々木 佳祐、本庄 亮太郎 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 小関 峰夫 |
登録日 | 2016-08-19 |
登録番号 | 特許第5989371号(P5989371) |
権利者 | 日本バルカー工業株式会社 |
発明の名称 | 配管シール用フッ素樹脂製ガスケット |
代理人 | 赤松 善弘 |