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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1333512
審判番号 不服2017-2324  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-17 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2013-517890「電子部品実装方法、電子部品搭載装置および電子部品実装システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/164957、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、2012年6月1日(優先権主張 2011年6月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月28日に意見書が提出されたが、同年11月18日付け(発送日:11月22日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)され、これに対し、平成29年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-13に係る発明は、下記の刊行物1及び周知技術(刊行物2-9)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物一覧
1.特開2010-212655号公報
2.特開昭61-177738号公報
3.米国特許第6978540号明細書
4.特表2005-502187号公報
5.国際公開第03/044848号
6.米国特許第7213739号明細書
7.国際公開第03/044849号
8.米国特許第5686226号明細書
9.特開平8-266980号公報

第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた搭載領域を有する基板に実装する、電子部品実装方法であって、
前記第1電子部品を準備する工程と、
前記基板を準備する工程と、
前記複数のバンプにフラックスを塗布する工程と、
前記搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に隣接する前記第1電極に、フラックスを塗布する工程と、
前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程と、
前記フラックスが塗布された複数のバンプが、それぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる工程と、
前記第1電子部品を搭載した前記基板を加熱して、前記バンプを溶融させるとともに、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、放冷することにより、前記第1電子部品を前記基板に接合する工程と、を含む電子部品実装方法。」

本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明9-10は、以下のとおりの発明である。

「【請求項9】
複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた搭載領域を有する基板に搭載する、電子部品搭載装置であって、
前記第1電子部品を供給する第1部品供給部と、
前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、
フラックスの塗膜を供給する転写ユニットと、
前記供給された第1電子部品を前記基板に搭載する移動可能な搭載ヘッドと、
前記基板の前記搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に、熱硬化性樹脂を塗布する移動可能な塗布ヘッドと、
前記搭載ヘッドと前記塗布ヘッドの移動および動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部の指令により、
前記搭載ヘッドは、
(i)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記第1電子部品の前記複数のバンプに前記フラックスを転写し、
(ii)前記フラックスが転写された複数のバンプを、それぞれ対応する前記第1電極に着地させることにより、前記フラックスを前記第1電極に転写し、
(iii)前記フラックスの前記第1電極への転写後、前記第1電子部品を前記基板から退避させ、
前記第1電子部品の前記基板からの退避後、
前記塗布ヘッドは、
(iv)前記補強位置に前記熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆い、
前記補強位置への前記熱硬化性樹脂の塗布後、
前記搭載ヘッドは、
(v)前記複数のバンプがそれぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記退避させた第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる、電子部品搭載装置。
【請求項10】
複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた搭載領域を有する基板に搭載する、電子部品搭載装置であって、
前記第1電子部品を供給する第1部品供給部と、
前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、
フラックスの塗膜を供給する転写ユニットと、
前記供給された第1電子部品を前記基板に搭載する移動可能な搭載ヘッドと、
前記基板の前記搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に、熱硬化性樹脂を塗布する移動可能な塗布ヘッドと、
前記補強位置に隣接する前記第1電極に対応する転写面を有する転写ツールと、
前記搭載ヘッドと前記塗布ヘッドの移動および動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部の指令により、
前記搭載ヘッドは、
(i)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記転写ツールの前記転写面に前記フラックスを転写し、
(ii)前記転写ツールの前記フラックスが転写された転写面を、前記対応する第1電極に着地させることにより、前記フラックスを前記第1電極に転写し、
(iii)前記フラックスの前記第1電極への転写後、前記転写ツールを前記基板から退避させ、
前記転写ツールの前記基板からの退避後、
前記塗布ヘッドは、
(iv)前記補強位置に前記熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆い、
前記補強位置への前記熱硬化性樹脂の塗布後、
前記搭載ヘッドは、
(v)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記第1電子部品の前記複数のバンプに前記フラックスを転写し、
(vi)前記フラックスが転写された複数のバンプがそれぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる、電子部品搭載装置。」

本願発明11は、本願発明9または本願発明10を減縮した発明である。

本願発明12-13は、以下のとおりの発明である。
「【請求項12】
複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品および接続用端子を有する第2電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた第1搭載領域および前記接続用端子に対応する第2電極が設けられた第2搭載領域を有する基板に実装する電子部品実装システムであって、
前記基板を供給する基板供給装置と、
前記基板供給装置から搬出された前記基板の前記第2電極にスクリーン印刷により金属粒子を含むペーストを塗布するスクリーン印刷装置と、
前記スクリーン印刷装置から搬出された前記基板の前記第1搭載領域に前記第1電子部品を搭載するとともに、前記第2搭載領域に第2電子部品を搭載する電子部品搭載装置と、
前記電子部品搭載装置から搬出された前記基板を加熱して、前記バンプおよび金属粒子を溶融させるとともに、前記熱硬化性樹脂を硬化させるリフロー装置と、を具備し、
前記電子部品搭載装置が、
前記第1電子部品を供給する第1部品供給部と、
前記第2電子部品を供給する第2部品供給部と、
前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、
フラックスの塗膜を供給する転写ユニットと、
前記供給された第1電子部品および第2電子部品を前記基板に搭載する移動可能な搭載ヘッドと、
前記基板の前記第1搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に、熱硬化性樹脂を塗布する移動可能な塗布ヘッドと、
前記搭載ヘッドと前記塗布ヘッドの移動および動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部の指令により、
前記搭載ヘッドは、
前記接続用端子が前記金属粒子を含むペーストを介して前記第2電極に着地するように、前記第2電子部品を前記基板に搭載し、かつ、
前記搭載ヘッドは、
(i)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記第1電子部品の前記複数のバンプに前記フラックスを転写し、
(ii)前記フラックスが転写された複数のバンプを、それぞれ対応する前記第1電極に着地させることにより、前記フラックスを前記第1電極に転写し、
(iii)前記フラックスの前記第1電極への転写後、前記第1電子部品を前記基板から退避させ、
前記第1電子部品の前記基板からの退避後、
前記塗布ヘッドは、
(iv)前記補強位置に前記熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆い、
前記補強位置への前記熱硬化性樹脂の塗布後、
前記搭載ヘッドは、
(v)前記複数のバンプがそれぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記退避させた第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる、電子部品実装システム。
【請求項13】
複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品および接続用端子を有する第2電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた第1搭載領域および前記接続用端子に対応する第2電極が設けられた第2搭載領域を有する基板に実装する電子部品実装システムであって、
前記基板を供給する基板供給装置と、
前記基板供給装置から搬出された前記基板の前記第2電極にスクリーン印刷により金属粒子を含むペーストを塗布するスクリーン印刷装置と、
前記スクリーン印刷装置から搬出された前記基板の前記第1搭載領域に前記第1電子部品を搭載するとともに、前記第2搭載領域に第2電子部品を搭載する電子部品搭載装置と、
前記電子部品搭載装置から搬出された前記基板を加熱して、前記バンプおよび金属粒子を溶融させるとともに、前記熱硬化性樹脂を硬化させるリフロー装置と、を具備し、
前記電子部品搭載装置が、
前記第1電子部品を供給する第1部品供給部と、
前記第2電子部品を供給する第2部品供給部と、
前記基板を保持して位置決めする基板保持部と、
フラックスの塗膜を供給する転写ユニットと、
前記供給された第1電子部品および第2電子部品を前記基板に搭載する移動可能な搭載ヘッドと、
前記基板の前記第1搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に、熱硬化性樹脂を塗布する移動可能な塗布ヘッドと、
前記補強位置に隣接する前記第1電極に対応する転写面を有する転写ツールと、
前記搭載ヘッドと前記塗布ヘッドの移動および動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部の指令により、
前記搭載ヘッドは、
前記接続用端子が前記金属粒子を含むペーストを介して前記第2電極に着地するように、前記第2電子部品を前記基板に搭載し、かつ、
前記搭載ヘッドは、
(i)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記転写ツールの前記転写面に前記フラックスを転写し、
(ii)前記転写ツールの前記フラックスが転写された転写面を、前記対応する第1電極に着地させることにより、前記フラックスを前記第1電極に転写し、
(iii)前記フラックスの前記第1電極への転写後、前記転写ツールを前記基板から退避させ、
前記転写ツールの前記基板からの退避後、
前記塗布ヘッドは、
(iv)前記補強位置に前記熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆い、
前記補強位置への前記熱硬化性樹脂の塗布後、
前記搭載ヘッドは、
(v)前記転写ユニットで供給される前記フラックスの塗膜から、前記第1電子部品の前記複数のバンプに前記フラックスを転写し、
(vi)前記フラックスが転写された複数のバンプがそれぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる、電子部品実装システム。」

第4 刊行物、引用発明等
1 刊行物1について
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開2010-212655号公報)には、図面(特に【図3】参照。)とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0006】
図3における(a)から(d)は、特許文献1及び特許文献2に記載された実装方法について示した図であり、フラックス作用を有する樹脂3を用いた実装方法について記載されている。
【0007】
この実装方法では、フラックス作用を有する樹脂3を、図3(a)に示す電極8を有する電子回路基板7に、ディスペンス、またはスクリーン印刷などの手段によって塗布することで、フラックス作用を有する樹脂3によって図3(b)にように、被覆される。フラックス作用を有する樹脂3は、フラックス剤および硬化剤を含むように処方されている。その後、図3(c)に示すように、バンプ付き電子部品、つまり、Ball Grid ArrayであるBGA11が搭載された後、リフロー炉を通すことにより、BGA11のはんだバンプ12と、電子回路基板7の電極8との接合として、フラックス作用を有する樹脂3の硬化が開始し、最終的に図3(d)のように接合が完成する、すなわち電子デバイスが製造される。このように製造された電子デバイスにおいて、BGA11と電子回路基板7との間に生じる間隔に充填されたこととなったフラックス作用を有する樹脂3は、接着性樹脂と硬化剤を含有しており、接着性接着剤として封止する機能を有する。」

(2)「【0009】
図3の(a)から(d)に示している電子部品(BGA11)の実装方法では、電子回路基板7の電極8にフラックス作用を有する樹脂3を塗布後、電子部品(BGA11)を搭載する方法が採用されている。この方法では、電子回路基板7にフラックス作用を有する樹脂3が、電極8を有する電子回路基板7上にディスペンス、またはスクリーン印刷などの手段によって塗布された後、電子部品(BGA11)を搭載し、熱エネルギーを加えることで電子回路基板と電子部品の間の接合と封止を完了する。」

(3)「【0012】
(2)フラックス作用を有する樹脂3の量が少ない時は、フラックス作用が働かなく、電子部品の突起電極表面の酸化膜がとれなくなり、部分的にしか、はんだ接合部を補強することができなくなり、電子回路基板7と電子部品であるBGA11の間に、熱硬化性接着剤、いわゆるアンダーフィル剤を注入する必要があり、別工程が必要となってしまう。」

(4)上記記載事項(1)の「バンプ付き電子部品、つまり、Ball Grid ArrayであるBGA11が搭載された後、リフロー炉を通すことにより、BGA11のはんだバンプ12と、電子回路基板7の電極8との接合として、」との記載及び上記記載事項(2)の「電子部品(BGA11)の実装方法では、電子回路基板7の電極8にフラックス作用を有する樹脂3を塗布後、電子部品(BGA11)を搭載する方法が採用されている。」との記載並びに【図3】の図示内容から、バンプ付き電子部品11を実装する電子回路基板7は、複数のはんだバンプ12に対応する複数の電極8が設けられた搭載領域を有すると認められる。

(5)上記記載事項(2)の「電子部品(BGA11)の実装方法では、電子回路基板7の電極8にフラックス作用を有する樹脂3を塗布後、電子部品(BGA11)を搭載する方法が採用されている。」との記載に照らせば、【図3】からは、バンプ付き電子部品11を搭載する際、フラックス作用をする樹脂3はバンプ付き電子部品11に接触する様子が見て取れる。

(6)上記記載事項(1)の「バンプ付き電子部品、つまり、Ball Grid ArrayであるBGA11が搭載された後、リフロー炉を通すことにより、BGA11のはんだバンプ12と、電子回路基板7の電極8との接合として、」との記載から、リフロー炉を通す際、はんだバンプ12は溶融すると認められる。

上記記載事項、認定事項及び【図3】の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数のはんだバンプ12が設けられた下面を有するバンプ付き電子部品11を、前記複数のはんだバンプ12に対応する複数の電極8が設けられた搭載領域を有する電子回路基板7に実装する、バンプ付き電子部品11の実装方法であって、
前記バンプ付き電子部品11を準備する工程と、
前記電子回路基板7を準備する工程と、
電極8をフラックス作用をする樹脂3で覆う工程と、
複数のはんだバンプ12が、それぞれ対応する前記電極8に接合できるように、前記バンプ付き電子部品11を前記電子回路基板7に搭載するとともに、前記フラックス作用をする樹脂3を前記バンプ付き電子部品11に接触させる工程と、
前記はんだバンプ12を搭載した前記電子回路基板7を加熱して、前記はんだバンプ12を溶融させるとともに、前記フラックス作用をする樹脂3を硬化させ、放冷することにより、前記はんだバンプ12を前記電子回路基板7に接合する工程と、を含むバンプ付き電子部品11の実装方法。」

2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物2(特開昭61-177738号公報)には、図面(特に第1-2図参照。)とともに次の事項が記載されている。
「第1図および第2図は、基板12に取付けた装置10の一実施例を示すもので、端子13の外側の列は、誘電材料30に囲まれて埋込まれ、中央部50には誘電材料30がない。」(第5ページ右上欄第10-13行)

3 刊行物3
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物3(米国特許第6978540号明細書)の図3A-3Bからは、リフローの際にアンダーフィルフィルムが流動してCSPと基板の隙間を埋める様子が見て取れる。

4 刊行物4
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物4(特表2005-502187号公報)には、図面(特にFig.2参照)とともに、次の事項が記載されている。
「【0020】
アンダーフィル材が取り付け材料を自身の上に有するコンポーネントの表面を実質的に覆うように、アンダーフィル材は電子コンポーネントに塗布されることが可能である。さらに、多くの利点がアンダーフィル材の多様な形態で認識される。例えば、図2においては、アンダーフィル50はパケージ40の外周まわりに配置される。この例においては、アンダーフィル50は、パケージ40の外周まわりに配置された半田ボール60を実質的に覆う。アンダーフィル材50の粘性は、所望の場所に合致するアンダーフィル材の分配を提供する。パッケージの内側領域に配置された半田ボール60は、実質的にアンダーフィル50により覆われないで残される。覆われていない(露出されている)半田ボール60は、基板上の対応するコンポーネントとのパッケージ40のセルフアライメント(自己整列)を容易にする。パッケージおよび基板の組立体が加熱され、半田がリフローするとき、露出されている半田の表面張力は、コンポーネントの所望の位置内への整列を容易にする。」

5 刊行物5
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物5(国際公開第03/044848号)のFIG.6からは、チップの複数のバンプにエポキシフラックスを塗布する工程と、基板の電極を熱硬化性のアンダーフィルで覆う工程と、前記エポキシフラックスが塗布された複数のバンプが、それぞれ対応する前記電極に着地するように、チップを前記基板に搭載するとともに、塗布された前記熱硬化性のアンダーフィルを前記チップ部品に接触させる工程と、前記チップ部品を搭載した前記基板をリフロー加熱して、前記バンプを溶融させるとともに、前記熱硬化性のアンダーフィルを硬化させ、放冷することにより、前記チップを前記基板に接合する工程とが見て取れる。

6 刊行物6
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物6(米国特許第7213739号明細書)には、以下の事項が記載されている。
「Thus, the flux must be applied to the bumps before the underfill or the underfill must contain flux or have inherent properties that facilitate solder joint formation. 」(第2欄第39-42行)
「このように、フラックスはアンダーフィルの工程の前に付加される必要があるか、アンダーフィルはフラックスを含む必要があるか、あるいは、アンダーフィルは半田接合形成を容易にする固有の特性を持つ必要がある。」(当審仮訳)

7 刊行物7
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物5(国際公開第03/044849号)のFIG.4からは、チップ401の複数の半田バンプ402にエポキシフラックス403を塗布する工程と、前記エポキシフラックス403が塗布された複数の半田バンプ402が、それぞれ対応する前記接続パッド405に着地するように、チップ401を基板407に搭載する工程と、アンダーフィル材料408を供給する工程と、前記チップ401を搭載した前記基板407をリフロー加熱して、前記半田バンプ402を溶融させるとともに、アンダーフィル材料408を硬化させ、放冷することにより、前記チップ401を前記基板407に接合する工程とが見て取れる。

8 刊行物8,9
原査定の拒絶の理由に周知技術の例として引用された刊行物8(米国特許第5686226号明細書)のFIG.5-7及び刊行物9(特開平8-266980号公報)の【図5】-【図7】からは、電子部品の複数のバンプにフラックスを塗布する工程が見て取れる。

第5 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「はんだバンプ12」は本願発明1の「バンプ」に相当し、以下同様に、「下面」は「主面」に、「バンプ付き電子部品11」は「第1電子部品」に、「電極8」は「第1電極」に、「電子回路基板7」は「基板」に、「バンプ付き電子部品11の実装方法」は「電子部品実装方法」に、「接合できるように」することは「着地するように」することに、それぞれ相当する。

そして、上記第4 1(1)の「リフロー炉を通すことにより、(省略)、フラックス作用を有する樹脂3の硬化が開始し、」(段落【0007】)との記載から、引用発明の「フラックス作用を有する樹脂3」は、本願発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「複数のバンプが設けられた主面を有する第1電子部品を、前記複数のバンプに対応する複数の第1電極が設けられた搭載領域を有する基板に実装する、電子部品実装方法であって、
前記第1電子部品を準備する工程と、
前記基板を準備する工程と、
第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程と、
複数のバンプが、それぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品に接触させる工程と、
前記第1電子部品を搭載した前記基板を加熱して、前記バンプを溶融させるとともに、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、放冷することにより、前記第1電子部品を前記基板に接合する工程と、を含む電子部品実装方法。」
の点で共通し、次の相違点で相違する。

[相違点]
本願発明1は、
「前記複数のバンプにフラックスを塗布する工程と、
前記搭載領域の周縁部に設定された少なくとも1つの補強位置に隣接する前記第1電極に、フラックスを塗布する工程と、
前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程と、
前記フラックスが塗布された複数のバンプが、それぞれ対応する前記第1電極に着地するように、前記第1電子部品を前記基板に搭載するとともに、前記補強位置に塗布された前記熱硬化性樹脂を前記第1電子部品の周縁部に接触させる工程と、」
を有するのに対し、引用発明は、このような工程を有しない点。

(2)相違点についての判断
上記刊行物2-9のいずれにも、「前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」に相当する工程は記載されていない。このため、「前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」が周知技術であったとは認められない。

また、引用発明の「フラックス作用をする樹脂3」は、「フラックス」と「熱硬化性樹脂」の機能を兼ね備えており、「フラックス作用をする樹脂3」を「フラックス」と「熱硬化性樹脂」に分離する合理性はないから、仮に「前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」が周知技術であったとしても、この周知技術を引用発明に適用することは、当業者といえども容易に想到し得ない。

そうすると、引用発明及び周知技術を組み合わせることによって、
「前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1の「前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」を備えるものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-8は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明9-13について
本願発明9-13は、いずれも本願発明1の「前記補強位置に熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆う工程」に対応する「(iv)前記補強位置に前記熱硬化性樹脂を塗布するとともに、前記補強位置に隣接する前記フラックスが塗布された第1電極の少なくとも一部を前記熱硬化性樹脂で覆い」という構成を有するものである。したがって、本願発明1と同様の理由により、本願発明9-13は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-13は、当業者が引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2013-517890(P2013-517890)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 電子部品実装方法、電子部品搭載装置および電子部品実装システム  
代理人 河崎 眞一  

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