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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1333525
審判番号 不服2016-16920  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-11 
確定日 2017-10-12 
事件の表示 特願2012-158675「非水電解質二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 3日出願公開、特開2014- 22150〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月17日を出願日とする出願であって、平成28年2月4日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月24日に意見書が提出されたが、同年8月19日付けで拒絶査定がなされ、同年11月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年11月11日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成28年11月11日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1を補正して、本件補正後の請求項1とするものであり、本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1は、それぞれ、以下のとおりである。
(本件補正前)
「【請求項1】
リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備え、前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜であることを特徴とする非水電解質二次電池。」

(本件補正後)
「【請求項1】
リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備え、
前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔率が50%以上、60%未満であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの多孔質樹脂膜である
ことを特徴とする非水電解質二次電池。」

2 補正事項の整理
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」を、本件補正後の請求項1に記載された「前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔率が50%以上、60%未満であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの多孔質樹脂膜である」とするものである。
すなわち、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」「セパレータ」に対し、本件補正前に記載されていなかった事項である「空孔率が50%以上、60%未満であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの」という限定を付加するものである。

3 新規事項の追加の有無、発明の特別な技術的特徴の変更の有無、及び補正の目的の適否についての検討
(1) 新規事項の追加の有無について
以下の検討のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
ア 本願の願書の最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「当初明細書等」という。)の段落【0035】及び【0037】には、以下の記載がある。(下線は当審が付与した。「・・・」により記載の省略を示す。)
「【0035】
<セパレータ>
セパレータは、空孔が三次元規則配列構造(以下、3DOM構造と称する)を有する多孔質樹脂膜である。3DOM構造は、球状の空孔が規則的に隣り合う形で連続した孔(連通孔)を形成している多孔体である。・・・」
「【0037】
本実施形態のセパレータは、空孔率が50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上であり、好ましくは球状の空孔が3DOM構造を有し、空孔は好ましくは球状であり、連通孔により互いに連通されたものである。空孔率の上限は膜の強度がセパレータとして機能する限りどのようなものであってもよいが、通常90%程度である。空孔のサイズは、リチウムデンドライトのサイズが約1?3μm程とされていることから、これ以下となるようにすることが必要とされる。空孔サイズは、通常50?2500nm程度であることが好ましく、より好ましくは100?2000nm、さらに好ましくは150?1500nmである。・・・」
イ 上記アによると、当初明細書には、「セパレータ」が、「空孔が三次元規則配列構造」を有する「多孔質樹脂膜」であることが記載されているとともに、「セパレータ」の「空孔率」が「50%以上」であること、及び、「セパレータ」の「空孔サイズ」が好ましくは「150?1500nm」であることが記載されている。
したがって、前記2に示した本件補正により付加された事項のうち、「空孔率が50%以上」及び「空孔サイズが150?1500nm」との事項については、当初明細書に明示的に記載されているといえるから、新規事項には該当しない。
ウ 前記2に示した本件補正により付加された事項のうち、「空孔率」が「60%未満であり」との事項は、当初明細書等に明示的に記載されていない。
ここで、当初明細書の段落【0037】には、「60%」が、「空孔率」の好ましい下限値として記載されているところ、同段落には「空孔率」の下限値を「50%以上」とした上で、上限値については「膜の強度がセパレータとして機能する限りどのようなものでもあってもよいが、通常90%程度である。」とも記載されているから、その上限値を60%とすることに対し、妨げとなる特段の事情は認められない。
したがって、本件補正により付加された「空孔率」が「60%未満であり」との事項は、当初明細書に開示されている、「空孔率」が取り得る数値範囲内において、当初明細書に記載された具体的な数値である「60%」を用いて、「空孔率」の上限を特定したものであるといえるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
エ 以上検討したとおり、本件補正は、いずれも、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(2) 発明の特別な技術的特徴の変更の有無について
本件補正は、発明の特別な技術的特徴を変更するものではないと認められるから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている。

(3) 本件補正の目的について
前記2で指摘したとおり、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」「セパレータ」に対し、本件補正前に記載されていなかった事項である「空孔率が50%以上、60%未満であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの」という限定を付加するものである。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮であるとともに、本件補正前の請求項1に記載した事項を限定するものであって、補正前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4) 小括
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項及び第5項に規定する要件を満たしている。

4 独立特許要件を満たすか否かの検討
前記3(3)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件を満たすか)否かを検討する。
(1) 本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「1 本件補正の内容」において本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、再掲すると次のとおりである(以下「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備え、
前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔率が50%以上、60%未満であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの多孔質樹脂膜である
ことを特徴とする非水電解質二次電池。」

(2) 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献3について
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2011-60539号公報(以下、「引用文献3」という)には、「二次電池用セパレーターおよびこれを用いたリチウム二次電池」(発明の名称)に関し、以下の記載がある(下線は当審が付与した。「・・・」により記載の省略を示す。以下同じである。)。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔率が60%以上で、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔が連通孔により互いに連通された多孔質樹脂膜からなることを特徴とする二次電池用セパレーター。
・・・
【請求項10】
請求項1?4のいずれかに記載された二次電池用セパレーターおよびリチウム金属からなる負極を有することを特徴とするリチウム二次電池。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用セパレーターおよびそれを用いたリチウム二次電池に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0013】
したがって、本発明は、負極としてリチウム金属を用いるリチウム二次電池において従来問題となっていた電池の安全性、サイクル特性の良好なリチウム二次電池を提供することを目的とするものである。」

「【発明の効果】
【0028】
本発明においては、セパレーターとして3DOM構造を有する多孔質膜を用いることにより、イオン電流密度が均一化され、電流密度の高い充放電条件においても、リチウムの電析反応が均一に制御される。このためリチウム金属負極を用いた二次電池において、リチウムデンドライトの形成を防ぐことができ、結果として高いサイクル特性を有するとともにデンドライトによる正負極間の短絡のないリチウム二次電池が得られる。
【0029】
また、本発明のセパレーターにおける3DOM構造は、球状の孔が規則的に隣り合う形で連続した孔(連通孔)を形成している多孔体であることから、これらの均一化された空間により、リチウムイオンの拡散が制御され、高いサイクル特性を有するとともにデンドライトによる正負極間の短絡のないリチウム二次電池が得られる。リチウムイオンの電流分布を均一化する効果は、球状の孔が三次元的に、規則的に連続した構造を有する、3DOM構造によるものと考えられる。
【0030】
本発明のセパレーターにおける3DOM構造は、六方最密充填構造の規則配列した空孔を持つ多孔体であり、非常に高い理論空孔率を有しており、空孔率の大きい多孔質膜がセパレーターとして用いられることから、3DOM構造中に電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン導電性が得られる。」

「【発明を実施するための形態】
【0035】
負極としてリチウム金属を用いるリチウム二次電池は、セパレーターを挟んで負極であるリチウム金属(例えば、箔あるいは板)と正極が対峙され、セパレーターには電解液が含浸されたものが通常用いられる。本発明においては、前記セパレーターとして特定のセパレーターを用いることにより、本発明の目的、すなわちデンドライト状リチウムの形成を制御することができ、これによりデンドライトによる負極と正極の短絡が防止され、またサイクル特性の良好なリチウム二次電池が得られることから、以下、本発明のリチウム二次電池に用いられるセパレーターから説明する。
【0036】
リチウム二次電池用セパレーターの基本機能は、正極と負極を分離して短絡を防止することや、電池反応に必要な電解質を保持して高いイオン導電性を確保すること、電池反応阻害物質の通過防止、安全性確保のための電流遮断特性を有することなどが挙げられる。従来知られたセパレーターは、一般的には、空孔率が40%程度のランダムな空孔を有する微多孔性ポリマーフィルムからなっている。これにより本発明が限定されるものではないが、負極にリチウム金属を用いた場合、リチウム金属表面でSEI(Solid Electrolyte Interface)と呼ばれる表面皮膜が不均一に生成され、これにより不均一な電流分布が生じる。局所的なリチウムデンドライトの成長は、電流分布による不均一なリチウム反応層に対して、ランダムな空孔を持つセパレーターによる不均一なリチウムイオンの電流分布が反応することで生じると考えられる。すなわち、空孔がランダムであるため、リチウムの電析反応がイオン拡散律速反応となった場合、リチウムイオンの電流密度が局所的に集中してしまい、その結果としてリチウムデンドライトがセパレーターを突き破るように成長し、電極の短絡を引き起こしてしまうため、セパレーターとして機能しなくなると考えられる。
【0037】
本発明においては、セパレーターの空孔を、六方最密充填構造の規則配列した空孔を持つ三次元規則配列多孔構造(3DOM構造)とすることにより、リチウムイオンの電流分布を均一化し、リチウム金属の析出反応を均一かつ緩やかに行うことで、デンドライトを生成することなく、粒状のリチウム金属を析出させることに成功したものである。リチウムイオンの拡散が均一化され、これにより拡散律速反応の場合においても、イオン電流密度が均一化されるため、リチウムの電析反応が均一に制御され、また3DOM構造がイオン電流密度を均一化する効果によって、電流密度の高い充放電条件においても、リチウムの電析反応が均一に制御され、リチウム金属負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができたものであり、従来のセパレーターとはその構造を大きく異にするものである。また、本発明においては、多孔質膜の空孔率を従来のセパレーターの空孔率に比べ極めて大きくすることにより、3DOM構造中に電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン伝導度を有することも可能となった。
【0038】
本発明のセパレーターは、空孔率が50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上であり、好ましくは球状の空孔が3DOM構造を有し、空孔は好ましくは球状であり、連通孔により互いに連通されたものである。空孔率の上限は膜の強度がセパレーターとして機能する限りどのようなものであってもよいが、通常90%程度である。空孔のサイズは、リチウムデンドライトのサイズが約1?3μm程とされていることから、これ以下となるようにすることが必要とされる。空孔サイズは、通常50?2500nm程度であることが好ましく、より好ましくは100?2000nm、さらに好ましくは150?1500nmである。また空孔率は、鋳型として用いる球状粒子のサイズによって決定される。連通孔は、空孔サイズ(空孔最大径)より小さくボトルネック形状をしていることが好ましい。連通孔サイズは、空孔サイズによっても異なり特に限定されるものではないが、通常空孔サイズの1/2?1/100程度であることが好ましく、より好ましくは1/3?1/10、具体的数値としては、例えば20nm?1000nm程度であることが好ましく、より好ましくは30?500nm程度である。連通孔サイズが大きすぎると、デンドライトの生成という問題が起こる場合があり、また小さすぎるとイオン伝導性の低下という問題が起こる場合がある。セパレーターは電解液を保持することから、保液性に優れた材料により形成されることが好ましい。また、多孔質膜の膜厚は、特に限定されるものでないが、30?500μm程度とされる。
・・・
【0047】
さらに、3DOM構造多孔質膜を形成する樹脂としては、保液性に優れたことが知られた、従来二次電池のセパレーターとして用いられている樹脂のいずれをも用いることができる。・・・」

「【0049】
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。リチウム二次電池は、リチウムからなる負極板、本発明のセパレーター、非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液、および正極板、さらにはその他の電池構成要素であるガスケット、集電体、封口板、セルケースなどから構成される。本発明の二次電池は、負極としてリチウム金属を用い、またセパレーターとして発明の3DOM構造多孔質膜が用いられるが、電池の他の構成要素については従来公知あるいは周知のものがいずれも利用可能である。また、電池の形状も、筒型、角型、コイン型など従来知られた形状を含むどのような形状であってもよく、特に限定されるものではない。リチウム二次電池が、例えばコイン型などの電池である場合、通常、セル床板上に負極板を乗せ、その上に電解液とセパレーターを、さらに負極と対向するように正極を乗せ、ガスケット、封口板と共にかしめて二次電池とされるが、本発明のリチウムイオン電池の構造あるいは作製方法がこれに限定されるものではない。
【0050】
上記のとおり、本発明のリチウム二次電池においては、電池を構成する正極、非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液などは、従来リチウム二次電池の正極、非水電解液などとして公知あるいは周知の材料のいずれをも用いることができる。
【0051】
本発明のリチウム二次電池において正極として用いられる材料としては、特に限定されないが、リチウムイオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが好ましい。このような金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの酸化物、モリブデンの硫化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、チタンの硫化物及びこれらの複合酸化物、複合硫化物が挙げられる。このような化合物としては、例えばCr_(3)O_(8)、V_(2)O_(5)、V_(5)O_(18)、VO_(2)、Cr_(2)O_(5)、MnO_(2)、TiO_(2)、MoV_(2)O_(8)、TiS_(2)V_(2)S_(5)MoS_(2)、MoS_(3)VS_(2)、Cr_(0.25)V_(0.75)S_(2)、Cr_(0.5)V_(0.5)S_(2)などが挙げられる。また、LiMY_(2)(Mは、Co、Niなどの遷移金属、YはO、Sなどのカルコゲン化合物)、LiM_(2)Y_(4)(MはMn、YはO)、WO_(3)などの酸化物、CuS、Fe_(0.25)V_(0.75)S_(2)、Na_(0.1)CrS_(2)などの硫化物、NiPS_(8),FePS_(8)などのリン、硫黄化合物、VSe_(2),NbSe_(3)などのセレン化合物、鉄酸化物などの鉄化合物などを用いることもできる。また、マンガン酸化物、スピネル構造を有するリチウム・マンガン複合酸化物も好ましいものである。」

(イ) 上記(ア)に摘記した各記載によれば、引用文献3には、以下の技術的事項が開示されている。
a 負極としてリチウム金属を用い、セパレーターとして3DOM構造多孔質膜を用いるリチウム二次電池が記載されている(段落【0049】より)。
b 上記aに指摘したリチウム二次電池において、正極や、非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液などは、公知あるいは周知のものを用いることができる(段落【0050】より)。
c 上記aに指摘した「3DOM構造」とは、三次元規則配列多孔構造の意味である(段落【0037】より)。また、上記aに指摘した「多孔質膜」は、樹脂で形成されるから、樹脂多孔質膜であるといえる(段落【0047】より)。
d 上記aに指摘した「セパレーター」の空孔率は、50%以上であり、また、その上限は90%程度である。また、当該「セパレーター」の好ましい空孔サイズの範囲は150?1500nmである(段落【0038】より)。
e セパレーターの空孔を、三次元規則配列多孔構造とすることにより、電流密度の高い充放電条件においても、リチウムの電析反応が均一に制御され、リチウム金属負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターの空孔率を従来のセパレーターの空孔率に比べ極めて大きくすることにより、電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン伝導度を有することができる(段落【0037】より)。

(ウ) 上記(イ)を踏まえれば、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という)が記載されていると認められる。
<引用発明3>
「負極としてリチウム金属を用い、セパレーターとして三次元規則配列多孔構造を有する樹脂多孔質膜を用いるリチウム二次電池であって、
正極、及び非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液として公知あるいは周知のものを用い、
前記セパレーターの空孔率は50%以上でその上限は90%程度であり、
前記セパレーターの空孔サイズは150?1500nmである、リチウム二次電池。」

イ 引用文献1について
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2011-249261号公報(以下、「引用文献1」という)には、「非水電解質電池用電極、及び非水電解質電池」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム多孔体に活物質が充填された非水電解質電池用電極であって、
前記アルミニウム多孔体の表面の酸素量が、3.1質量%以下であり、
前記アルミニウム多孔体は、一方の面から他方の面に向かって厚さ方向に、気孔径の大きい大孔径領域とこれより気孔径の小さい小孔径領域とを有することを特徴とする非水電解質電池用電極。
・・・
【請求項5】
正極と負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質を備える非水電解質電池であって、
前記正極と負極の少なくとも一方は、請求項1?4のいずれか一項に記載の非水電解質電池用電極であり、この電極のアルミニウム多孔体の大孔径領域側の面が他方の電極に対向するように配置されていることを特徴とする非水電解質電池。」

「【0053】
以下、本発明の具体的な実施例を示す。
[試験例1]
(アルミニウム多孔体の作製)
・・・
【0057】
作製した各アルミニウム多孔体は、一方(気孔径:約200μmの樹脂体を用いた方)が気孔率:97%、気孔径:200μm、厚さ:500μmであり、他方(気孔径:約400μmの樹脂体を用いた方)が気孔率:97%、気孔径:400μm、厚さ:500μmであった。また、各アルミニウム多孔体をSEMにより観察したところ、孔が連通しており、閉気孔が確認されなかった。さらに、各アルミニウム多孔体の表面を15kVの加速電圧でEDXにより定量分析したところ、酸素のピークが観測されなかった。つまり、酸素が検出されなかった。したがって、各アルミニウム多孔体の表面の酸素量は、EDXによる検出限界以下、即ち、3.1質量%以下であった。なお、当分析に用いた装置は、EDAX社製「EDAX Phonenix 型式:HIT22 136‐2.5」である。
【0058】
さらに、上記各アルミニウム多孔体を用いて、二層構造のアルミニウム多孔体試料1と、三層構造のアルミニウム多孔体試料2とを作製した。具体的には、二層構造のアルミニウム多孔体試料1は、気孔径が200μmの多孔体と気孔径が400μmの多孔体とを、面同士を突き合わせて、スポット溶接により接合して作製した。他方、三層構造のアルミニウム多孔体試料2は、気孔径が200μmの多孔体を1つ、気孔径が400μmの多孔体を2つ用意し、気孔径が200μmの多孔体の両面に気孔径が400μmの多孔体をそれぞれ、面同士を突き合わせて、スポット溶接により接合して作製した。つまり、二層構造のアルミニウム多孔体試料1は、厚さ方向に順に大孔径領域、小孔径領域を有し、もう一方の三層構造のアルミニウム多孔体試料2は、厚さ方向に順に大孔径領域、小孔径領域、大孔径領域を有する。
【0059】
また比較として、気孔率:約97%、気孔径:約200μmで、厚さが1000μm及び1500μmの2種類の樹脂体を用意し、上記した試験例1のアルミニウム多孔体と同じ製造方法にて、厚さの異なるアルミニウム多孔体試料3及び4を作製した。なお、アルミニウム多孔体試料3及び4はそれぞれ、気孔率及び気孔径が97%及び200μmであり、いずれも表面の酸素量が3.1質量%以下であった。
【0060】
(非水電解質電池用電極の製造)
上記した各アルミニウム多孔体試料1?4に活物質を充填して、リチウム系電池用正極を製造した。
【0061】
平均粒径が10μmのLiCoO_(2)粉末(正極活物質)を用意し、このLiCoO_(2)粉末と、AB(導電助剤)と、PVDF(バインダー)とを質量%で90:5:5の割合で混合した。この混合物にN‐メチル‐2‐ピロリドン(有機溶剤)を滴下して混合し、ペースト状の正極合剤スラリーを作製した。次に、この正極合剤スラリーに各アルミニウム多孔体試料を含浸して、各アルミニウム多孔体試料に正極合剤を充填し、その後、100℃で40分間乾燥させて有機溶剤を除去した。次いで、正極合剤を充填した各アルミニウム多孔体試料を、ロールプレスにより圧縮加圧成形して、各アルミニウム多孔体試料を用いた正極材を完成させた。
【0062】
最後に、製造した各正極材から直径15mmの試料を打ち抜いた。そして、アルミニウム多孔体試料1?4を用いた正極材から打ち抜いた試料をそれぞれ正極試料1?4とした。なお、厚さが1000μmのアルミニウム多孔体試料1及び3は、厚さ500μmまで圧縮し、正極活物質の質量から求められる単位面積あたりの容量密度が10mAh/cm^(2)となるように設計した。また、厚さが1500μmのアルミニウム多孔体試料2及び4は、厚さ750μmまで圧縮し、正極活物質の質量から求められる単位面積あたりの容量密度が15mAh/cm^(2)となるように設計した。
【0063】
次に、上記した各正極試料(No.1?4)を用いたリチウム系電池を作製し、各正極試料を評価した。評価用の電池は、次のようにして作製した。
【0064】
正極試料1及び3の場合は、負極にリチウム(Li)金属箔(直径:15mm、厚さ:500μm)を用い、正極(正極試料)と負極との間にポリプロピレン製のセパレータ(厚さ:25μm)が介在するように積層した。このとき、正極試料1については、アルミニウム多孔体の気孔径が大きい側(大孔径領域側)の面が負極に対向するように配置した。そして、各電極に端子部材を取り付け、これを容器内に入れられた有機電解液中に浸漬することで、評価用の電池を作製した。有機電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合有機溶媒(体積比1:1)にLiPF_(6)を1M(mol/l)の濃度で溶解させたものを使用した。
【0065】
正極試料2及び4の場合は、負極、セパレータ及び有機電解液に上記した正極試料1及び3の場合と同じものを使用し、負極‐セパレータ‐正極(正極試料)‐セパレータ‐負極の順に積層した。このとき、正極試料2は、アルミニウム多孔体の気孔径が大きい側(大孔径領域側)の面がそれぞれ負極に対向するように配置される。そして、各電極に端子部材を取り付け、これを容器内に入れられた有機電解液中に浸漬することで、評価用の電池を作製した。
【0066】
各正極試料を用いた評価用の電池について、次のように評価した。評価は、カットオフ電圧:4.2V?3.0Vで、0.2C及び2Cの各電流密度の条件にて充放電サイクルを行い、そのときの初期放電容量を測定した。そして、測定した初期放電容量から正極活物質の単位質量あたりの放電容量を換算して求めた。各電池の放電容量を表1に示す。
【0067】
【表1】


【0068】
以上のように、アルミニウム多孔体試料1?4を集電体に用いた正極試料1?4において、電流密度の小さい低率放電では、放電容量にあまり差が見られなかった。しかし、電流密度の高い高率放電では、アルミニウム多孔体試料1、2を集電体に用いた正極試料1、2の方が、アルミニウム多孔体試料3、4を集電体に用いた正極試料3、4に比較して、放電容量が高く、電池の放電特性を改善できることが分かる。
【0069】
これには、次の理由が考えられる。(i)アルミニウム多孔体が厚さ方向に大孔径領域と小孔径領域とを有するため、有機電解液の浸透性が高く、活物質の利用率が高い。その他、各正極試料1?4は、集電体として機能するアルミニウム多孔体表面の酸素量が3.1質量%以下と非常に少ないため、多孔体と活物質との間で電子の授受が速やかに行われる。」

(イ) 上記(ア)に摘記した各記載によれば、引用文献1には、以下の技術的事項が開示されている。
a アルミニウム多孔体に活物質が充填された非水電解質電池用電極、及び、この電極を正極と負極の少なくとも一方に用いた非水電解質電池が記載されている(【請求項1】及び【請求項5】より)。
b 二層構造を有するアルミニウム多孔体試料1と、三層構造を有するアルミニウム多孔体試料2とを作製する。また比較として、一層構造であって、厚さの異なるアルミニウム多孔体試料3及び4を作成する(段落【0058】、【0059】より)。
c 正極活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極合剤スラリーを作製し、上記bで指摘したアルミニウム多孔体試料1?4に上記正極合剤スラリーを充填し、乾燥ののちに圧縮加圧成型して正極材とし、この正極材を打ち抜いて正極試料1?4を作製する(段落【0061】及び【0062】より)。
d 上記cで指摘した正極試料1?4を用いたリチウム系電池を作製する。具体的には、正極に各正極試料1?4を用い、負極にリチウム金属箔を用い、正極と負極との間にポリプロピレン製セパレータが介在するように積層し、容器内に入れられた有機電解液に浸漬することでリチウム系電池を作製する(段落【0063】?【0065】より)。
e 上記dで指摘したリチウム系電池に対し充放電サイクルを行ったところ、電流密度の高い高率放電では、アルミニウム多孔体試料1、2を集電体に用いた正極試料1、2を正極とする電池の方が、アルミニウム多孔体試料3、4を集電体に用いた正極試料3、4を正極とする電池に比較して、放電容量が高く、電池の放電特性を改善できる(段落【0066】?【0068】より)。

ウ 引用文献2について
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2011-49023号公報(以下、「引用文献2」という)には、「非水電解質二次電池用電極およびその製造方法」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔とアルミニウム多孔質焼結体とを備えるアルミニウム複合体、活物質、導電助剤および結合剤を含む非水電解質二次電池用電極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤および結合剤を含み、前記アルミニウム多孔質焼結体が、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、かつ前記金属骨格にAl-Ti化合物が分散していることを特徴とする、非水電解質二次電池用電極。
・・・
【請求項6】
アルミニウム箔と、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、かつ前記金属骨格にAl-Ti化合物が分散しているアルミニウム多孔質焼結体と、を備えるアルミニウム複合体を用いる非水電解質二次電池用電極の製造方法であって、
前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔に、活物質、導電助剤および結合剤を含むスラリーを充填し、乾燥した後、圧延をすることを特徴とする、非水電解質二次電池用電極の製造方法。
・・・
【請求項9】
請求項1?5のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。」

「【実施例】
【0078】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
〔アルミニウム多孔質焼結体の製造〕
・・・アルミニウム混合原料粉末を調製した。
・・・
【0081】
アルミニウム混合原料粉末:50質量部と、バインダー溶液:49質量部と、ヘキサン:1質量部を合計500gで混合して、粘性組成物を調製した。
【0082】
次に、この粘性組成物を、・・・のアルミニウム箔上に引き伸ばして塗布し、・・・気泡を整寸化した後、・・・乾燥させた。・・・乾燥後の粘性組成物をアルミニウム箔と共に、直径100mmの円形に切り出して、焼結前成形体を得た。
【0083】
この焼結前成形体を、・・・加熱焼成して、アルミニウム多孔質複合体1を得た。・・・
【0084】
・・・アルミニウム複合体1のアルミニウム多孔質焼結体(以下、「アルミニウム焼結体1」という)の実体顕微鏡写真から3次元空孔数、および走査型電子顕微鏡(SEM)写真から金属骨格の長さ100μm当たりの骨格内空孔の数を、それぞれ計測するとともに、同SEM写真にて液滴凝固の有無を確認し、さらには、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による面分析によってアルミニウム多孔質焼結体1の骨格表面にAl-Ti化合物の有無を確認した。・・・
【0085】
次に、アルミニウム複合体1を、圧下率20%にてロール圧延を行い、割れの有無を黙視(当審注:「目視」の誤記と認められる)にて確認をした(20%圧下試験)後に、20mm×50mmの矩形状に切り出して対向角部間の電気抵抗率を測定した。次いで、この矩形状のアルミニウム複合体1を、直径5mmの円柱体の外周に巻きつけて、割れの有無を黙示(当審注:「目視」の誤記と認められる)にて確認した。表1に、これらの結果を示す。
【0086】
平均粒子径:21μmの水素化チタン粉末を用い、アルミニウム粉末と水素化チタン粉末の質量比が、85:15となるようにした以外は、アルミニウム多孔質焼結体1と同様にして、アルミニウム複合体2を作製し、各試験を行った。表1に、これらの結果を示す。なお、得られたアルミニウム複合体2の厚さは、1.3mmであった。
【0087】
【表1】

【0088】
表1からわかるように、得られたアルミニウム複合体1、2は、アルミニウム多孔質焼結体の有孔金属焼結体の骨格長さ100μm当たりの孔数が、2?3であるとともに、アルミニウム多孔質焼結体の金属骨格間にある3次元空孔が、1インチ当たり52個、すなわち、1cm当たりに20個以上である。そして、アルミニウム複合体のアルミニウム多孔質焼結体に液滴状の塊が生じることもなく、アルミニウム複合体は、電気抵抗率も低く、巻き付け試験による割れもなかった。したがって、高出力化や高信頼性が要求される非水電解質二次電池やキャパシタの正極集電体に適している。
【0089】
〔比較例1のアルミニウム多孔質焼結体の製造〕
アルミ箔の代わりに、剥離剤が塗布されたポリエチレンシート上に、粘性組成物を塗布し、乾燥後、粘性組成物をポリエチレンシートから剥がして、焼結前成形体を作製した以外は、アルミニウム接合体1と同様にして、比較例1のアルミニウム多孔質焼結体を作製した。比較例1のアルミニウム多孔質焼結体は、表1に示されたアルミニウム複合体1と同様の特性であった。」

「【0090】
〔非水電解質二次電池用電極の製造〕
(実施例1)
活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO_(2))粉末と、導電材としてケッチェンブラック(KB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、質量比80:10:10で、合計200g混合して正極剤を調製し、この正極剤に溶剤としてN-メチル-2ピロリドン162gを混合して正極活物質スラリー1を調製した。
【0091】
次に、この正極活物質スラリー1に、作製したアルミニウム多孔質焼結体1を10分間浸漬し、取り出して乾燥させた後に、圧延して厚さ0.5mmの実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。ここで、正極活物質スラリー1に、アルミニウム複合体1をアルミニウム多孔質焼結体を下にして浸漬し、乾燥した後、圧延前に、アルミニウム複合体1表面に付着した正極活物質スラリー1を拭き取り、ほぼ全量の活物質、導電助剤および結合剤が、アルミニウム複合体1の空孔内に含まれるようにした。
【0092】
(従来例1)
従来例1の発泡アルミニウムとしては、従来技術の第2の方法であるスポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入する方法で製造した30PPIの発泡アルミニウムを用いた。
【0093】
実施例1で作製した正極活物質スラリー1に、従来例1の発泡アルミニウムを10分間浸漬し、取り出して乾燥させた後に、圧延して厚さ0.5mmの従来例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
【0094】
(実施例2?10、比較例1)
表2に示す組成で、正極活物質スラリー1と同様にして、正極活物質スラリー2、3を作製した。次に、表3に示す組合せで、実施例2?10、比較例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
〔非水電解質二次電池用電極の性能試験〕
(活物質充填密度)
実施例1?6、従来例1、2の各リチウムイオン電池の正極について、リチウムイオン電池の正極を作製するときのアルミニウム多孔質焼結体の質量変化から、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対する活物質の含有量(質量部)、および活物質充填密度を算出した。ここで、活物質、導電助剤と結合剤の比は、正極活物質スラリー作製時のままであるとして、算出した。同様にして、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対する導電助剤の含有量(質量部)を算出した。表2に、これらの結果を示す。
【0098】
(電極巻き付け試験)
次いで、直径1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mmの円柱体をそれぞれ用意して、実施例1?10および従来例1のリチウムイオン電池の正極を巻き付けて、活物質が剥離するか否かを目視観察し、剥離が認められなかった最小径を、表4に示した。
【0099】
【表4】

【0100】
(エネルギー密度)
エネルギー密度を測定するために、非水電解質二次電池の試験セルを作製した。図10に、用いた試験セルの構成の模式を示す。
【0101】
負極11として、箔状のリチウム金属(厚さ:0.5mm)を、幅:30mm、長さ:40mmに切断し、ニッケル製の負極集電タブ11aを溶接した。
【0102】
次に、上記正極を、幅:30mm、長さ:40mmに切断し、正極10とし、正極10のアルミニウム複合体のアルミニウム箔に、アルミニウム製の正極集電タブ10aを溶接した。また、セパレーター12として、ポリプロピレン微多孔膜(厚さ:20μm)のセパレーター12を幅:32mm、長さ:42mmに切断した。これらを、負極集電タブ11a、負極11、セパレーター12、正極10、正極集電タブ10aの順に重ねて、積層体を作製した。
【0103】
上記積層体が収容可能な大きさに切断された、一対のアルミニウムラミネートフィルム13a、13bの3辺の溶着部13cをヒートシールし、外装体13とした。
【0104】
不活性雰囲気中で、外装体13の開口部からに上記積層体を挿入し、外装体13内に積層体を収容するとともに、1M LiPF_(6)/EC+PC(1:1(体積比))の非水電解質を注液した後、この外装体13の開口部をヒートシールして密閉し、試験セルを作製した。
【0105】
上記試験セルを、放電レート:0.2C、放電電圧:4.2?2.8Vで放電を行った。表5に、これらの結果を示す。
【0106】
(出力特性)
上記試験セルを、放電レート:2C、放電電圧:4.2?2.8Vで放電を行った。次に、(0.2Cでの放電容量)/(2Cでの放電容量)を計算し、出力特性を評価した。表5に、これらの結果を示す。
【0107】
【表5】

【0108】
表4からわかるように、実施例1?10の正極は、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、活物質を280?710質量部、導電助剤を14?99質量部と、高密度で含有させることができた。また、電極巻き付け試験の結果から、実施例1?10の正極は、活物質が脱落しにくく、高信頼性であることもわかった。これに対して、従来例1は、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、活物質を210質量部しか含有させることができず、電極巻き付け試験でも5mmφより小さい径では活物質が脱落した。また、比較例1は、アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、活物質を280質量部、導電助剤を14質量部含有した。
【0109】
また、表5からわかるように、実施例1?10の正極は、(0.2Cでの放電容量)/(2Cでの放電容量)が、0.90?0.92と非常に高く、出力特性が顕著に優れていた。これに対して、従来例1は、(0.2Cでの放電容量)/(2Cでの放電容量)が0.77、比較例1は、0.88と実施例1?10に劣る結果であった。(当審注:上記の「(0.2Cでの放電容量)/(2Cでの放電容量)」は、「(2Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)」の誤記と認められる。)
【0110】
以上のように、本発明の非水電解質二次電池用電極により、高出力密度、高信頼性の非水電解質二次電池を製造することができる。
【0111】
以上のように、本発明の非水電解質二次電池用電極は、アルミニウム多孔質焼結体を非水電解質二次電池用電極の集電体として用いることにより、非水電解質二次電池の高出力化、高信頼性化を可能とすることがわかった。」

(イ) 上記(ア)に摘記した各記載によれば、引用文献2には、以下の技術的事項が開示されている。
a アルミニウム箔とアルミニウム多孔質焼結体とを備えるアルミニウム複合体、活物質、導電助剤および結合剤を含む非水電解質二次電池用電極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤および結合剤を含む。また、前記アルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、かつ前記金属骨格にAl-Ti化合物が分散している(【請求項1】より)。
b アルミニウム多孔質焼結体1(又は2)と、アルミニウム箔の複合体であるアルミニウム多孔質複合体1(又は2)は、非水電解質二次電池の正極集電体に適している(段落【0081】?【0084】、【0088】より)。
c 実施例1のリチウムイオン電池の正極は、活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO_(2))粉末と溶剤を含む正極活物質スラリー1を調整し、アルミニウム多孔質焼結体1の空孔に、この正極活物質スラリー1を充填し、乾燥した後圧延をすることによって作製される。実施例2?10のリチウムイオン電池の正極についても、正極活物質スラリー1?3の何れかと、アルミニウム多孔質焼結体1又は2とを組み合わせて作製される(【請求項6】、段落【0090】、【0091】、【0094】、【表2】、【表3】より)。
d 従来例1のリチウムイオン電池の正極は、スポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入する方法で製造した30PPIの発泡アルミニウムを用い、上記cで指摘した正極活物質スラリー1に上記発泡アルミニウムを浸漬し、乾燥させる工程を含んで作製される(段落【0092】、【0093】より)。
e 電極巻き付け試験において、実施例1?10の正極は、従来例1の正極に比較して、活物質が脱落しにくく、高信頼性である(段落【0108】、【表4】より)。
f 負極として箔状のリチウム金属を用い、正極として実施例1?10の正極を用い、セパレータとしてポリプロピレン微多孔膜を用いた非水電解質二次電池の試験セルを作製し、出力特性を評価したところ、(2Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)により示される出力特性が、実施例1?10の正極では非常に高く、出力特性が顕著に優れている(段落【0100】?【0109】、【表5】より)。

(3) 本願補正発明の進歩性について
ア 本願補正発明と、引用発明3との対比
(ア) 引用発明3は「非水電解液」を用いる「リチウム二次電池」であるところ、技術常識に照らすと、「非水電解液」は「非水電解質」のうちの一種であるといえるから、引用発明3の「リチウム二次電池」は、本願補正発明の「非水電解質二次電池」に相当する。
(イ) 引用発明3の「リチウム二次電池」は「正極」として「公知あるいは周知のもの」を用いるのに対し、本願補正発明は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」を「備える」ものであるから、引用発明3と本願補正発明は、「正極」を「備える」点で共通している。
(ウ) 引用発明3における「負極」としての「リチウム金属」は、本願補正発明の「リチウム金属負極」に相当する。
(エ) 引用発明3における「セパレーター」は、本願補正発明の「セパレータ」に相当する。
また、引用発明3において、「セパレーター」である「樹脂多孔質膜」が「三次元規則配列多孔構造」を「有する」ことが、本願補正発明において、「前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有」する「多孔質樹脂膜」であることに相当する。
(オ) 引用発明3において、「セパレーターの空孔率は50%以上」であることが、本願補正発明において、「セパレータ」は「空孔率が50%以上」であることに相当する。
(カ) 引用発明3において、「前記セパレーターの空孔サイズは150?1500nm」であることが、本願補正発明において、「セパレータ」は「空孔サイズが150?1500nm」であることに相当する。

イ 上記アの検討を踏まえると、本願補正発明と、引用発明3とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備え、
前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔率が50%以上であり、なおかつ、空孔サイズが150?1500nmの多孔質樹脂膜である
ことを特徴とする非水電解質二次電池。」

<相違点>
(相違点1)
「正極」に関し、本願補正発明においては「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む」のに対し、引用発明3においては「公知あるいは周知のものを用い」ることが特定されるのみである点
(相違点2)
「セパレータ」の「空孔率」に関し、本願補正発明においては「60%未満」と特定されているのに対し、引用発明3においては「上限は90%程度」とされており、上限の値が本願補正発明よりも大きな値となっている点

ウ 上記相違点1に対する検討
(ア) 本願補正発明の「正極」は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む」ものとされるが、本願補正発明は「非水電解質二次電池」という物の発明であって、完成した「非水電解質二次電池」では、溶媒は飛散しており、正極活物質が溶媒を含むスラリーの状態で多孔質アルミニウム集電体に充填されているのでないことは、技術常識から認識されるところであるし、本願の当初明細書に「多孔質アルミニウム集電体の孔中に充填された正極は、スラリー中の溶媒を飛散するために50?200℃で乾燥される。」(段落【0032】)、「スラリーを充填した多孔質アルミニウム集電体を乾燥装置内に配置し、80℃で2時間乾燥させ・・・正極試料を作製した。」(段落【0039】)という記載があることからも明らかである。
したがって、本願補正発明の「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」は、「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」を意味すると解されるから、以下、この解釈に基づいて検討を行う。
(イ) 相違点1に係る「正極」は、以下に示すとおり、周知の技術であるか、仮に周知性が認められなかったとしても公知の技術である。
a 引用文献1には、正極活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極合剤スラリーをアルミニウム多孔体試料1、2に充填して乾燥ののちに圧縮加圧成型して得られた正極試料1、2が記載されている(前記(2)イ(イ)b及びcを参照。)。
技術常識に照らすと、前記LiCoO_(2)粉末はスラリーの溶剤には溶解せず「分散」することや、当該LiCoO_(2)は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質」であることが明らかである。また、アルミニウム多孔体試料1、2は、集電体である(前記(2)イ(イ)eを参照。)から、「多孔質アルミニウム集電体」であるといえる。
したがって、引用文献1に記載の前記正極試料1、2は、相違点1に係る構成である、「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む」「正極」に相当する。
b 引用文献2には、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔との複合体が、非水電解質二次電池の正極集電体に適していることが記載されている(前記(2)ウ(イ)a及びbを参照。)。そして、引用文献2には、活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極活物質スラリーを、アルミニウム多孔質焼結体の空孔に充填し、乾燥した後圧延をすることで作製された正極が実施例1?10として記載されている(前記(2)ウ(イ)cを参照。)。
上記aで技術常識に照らして行った検討と同様に、前記LiCoO_(2)粉末は前記正極活物質スラリーの溶剤に溶解せず「分散」することや、当該LiCoO_(2)は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質」であることが明らかである。また、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔との複合体は、正極集電体に適したものであるから、「多孔質アルミニウム集電体」であるといえる。
したがって、引用文献2に実施例1?10として記載された前記正極は、相違点1に係る構成である、「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む」「正極」に相当する。
c 上記a及びbの検討より、相違点1に係る「正極」は、周知の技術であると認められるし、仮にそうでなかったとしても、少なくとも公知の技術である。
(ウ) そして、引用文献1には、相違点1に係る「正極」に相当する正極試料1、2を用いたリチウム系電池においては、電流密度の高い高率放電においても放電特性が改善できる効果が記載されている(前記(2)イ(イ)eを参照。)。また、引用文献2には、相違点1に係る「正極」に相当する実施例1?10を用いた非水電解質二次電池においては、(2Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)により示される出力特性が顕著に優れるという効果が記載されている(前記(2)ウ(イ)fを参照。)。
したがって、少なくとも引用文献1又は引用文献2に記載された正極を用いることにより、電池の放電レート特性を改善できるという効果を得られることが把握できる。
(エ) 一方、引用文献3の段落【0028】の「本発明においては、セパレーターとして3DOM構造を有する多孔質膜を用いることにより、イオン電流密度が均一化され、電流密度の高い充放電条件においても、リチウムの電析反応が均一に制御される。」との記載によれば、引用発明3の二次電池には、電流密度の高い充放電条件が適用され得るものであるから、正極として従来公知あるいは周知の材料を用いる引用発明3においても、正極の特性を改善することによって、放電レート特性を改善することが、当然に求められていると解される。
(オ) 以上の検討を踏まえると、「正極」として「公知あるいは周知のものを用い」ることが特定される引用発明3の非水電解質二次電池において、放電レート特性の改善が期待できる、周知又は公知の技術の技術である引用文献1や引用文献2に記載の正極に関する技術を適用し、上記相違点1に係る「正極」を想到することは、当業者が容易になし得たことである。

エ 上記相違点2に対する検討
(ア) 本願補正発明において、「セパレータ」の「空孔率」が「60%未満」であることの技術的意義についてまず検討する。
a 本願明細書には、以下の記載がある。
(a) 段落【0035】には「本実施形態のセパレータにおける3DOM構造は、六方最密充填構造の規則配列した空孔を持つ多孔体であり、非常に高い理論空孔率を有しており、空孔率の大きい多孔質膜がセパレータとして用いられることから、3DOM構造中に電解液を多く充填できるため従来のセパレータと比較して、高いイオン導電性が得られる。」との記載がある。
(b) 段落【0037】には「本実施形態のセパレータは、空孔率が50%以上、好ましくは60%以上、・・・空孔率の上限は膜の強度がセパレータとして機能する限りどのようなものであってもよいが、通常90%程度である。」との記載がある。
(c) 段落【0040】の記載によれば、唯一の実施例である実施例1の空孔率は70%である。
(d) 段落【0050】には「即ち、実施例1は、集電体が多孔質構造であるため、活物質の脱落劣化挙動が抑制されることから電極の抵抗が減少し、かつ、3DOMポリイミド多孔膜セパレータが高気孔率、高イオン伝導率であるため、リチウムイオンの拡散が良好であることから電池の抵抗が減少し、放電レート特性が良好になったと考えられる。」との記載がある。
b 上記aの摘記事項によれば、「空孔率」は、電解液をセパレータ内に充填できる量と関係しており、この数値が大きいほど電解液を多く充填でき、高いイオン伝導性が得られ、ひいては放電レート特性が良好になるという技術的関係が存在することが把握できる。そして、本願明細書において「空孔率」は60%以上が好ましいとされ、実施例1ではその数値は70%である。
c そうすると、本願補正発明において、「空孔率」が「60%未満」であるという事項が特定されることの技術的意義は、電解液の充填量、すなわち放電レート特性の観点からは好ましいとされる数値範囲から外れ、50%以上との許容範囲内のより小さい側の範囲を特定したという以上に出るものではないということができる。よって、この「60%未満」という数値限定によって、セパレータとして機能する膜の強度が確保される範囲内のものになったとはいえるものの、この数値限定には、これ以上の格別な技術的意義が存在しないことは明らかである。
(イ) 次に、上記(ア)に指摘した事項を踏まえた上で、当業者が、引用発明3において、相違点2に係る構成を容易に想到し得たか否かについて検討する。
相違点2に係る構成である「セパレータ」の「空孔率」について、引用発明3では「50%以上でその上限は90%程度」であるが、引用文献3の段落【0038】の「空孔率の上限は膜の強度がセパレーターとして機能する限りどのようなものであってもよいが、通常90%程度である。」との記載によれば、引用発明3における「空孔率」の上限の具体的な値は、当該段落における表現を用いれば、「膜の強度がセパレーターとして機能する限り」において、「どのようなものであってもよい」と解される。
したがって、引用発明3の「空孔率」の上限として、50%と90%の間の数値から必要とする膜の強度等を考慮して「60%未満」を特定することは、当業者が通常の創作能力を発揮して適宜なし得た設計的事項に過ぎない。そして、上記(ア)で検討したとおり、「60%未満」という数値限定に、格別な技術的意義は存在しない。
(ウ) 以上の検討を踏まえると、「セパレータ」の「空孔率」を「60%未満」として、上記相違点2に係る構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。

オ 審判請求書の主張、および、本願補正発明の効果について
(ア) 審判請求書によれば、請求人は、本願補正発明の効果に関し、以下のような主張を行っている。
「3.本願発明が特許されるべき理由
・・・
(d)本願発明と引用発明との対比
・・・
本願発明は、係る構成を備えることで、リチウムデンドライトの析出を防止しつつ、さらに、出願当初明細書に記載の実施例1のように、放電レート特性、及び充放電サイクル特性を、比較例1?3に示す従前に対し向上させることができる、という有利な効果を奏する。」
しかしながら、前記エ(ア)bに指摘したように、セパレータの「空孔率」は、電解液をセパレータ内に充填できる量と関係しており、この数値が大きいほど電解液を多く充填でき、高いイオン伝導性が得られ、ひいては放電レート特性が良好になるという技術的関係が存在することが把握できる。また、本願明細書における実施例1では、「空孔率」は70%であり、本願補正発明の「空孔率」の上限の値である「60%未満」に比較して10%以上高い値となっている。
したがって、セパレータの空孔率が70%と高い数値である実施例1において放電レート特性が良好であったとしても、空孔率の上限が「60%未満」となっている本願補正発明においては、実施例1よりもイオン伝導性が劣ると予測することが合理的である。
したがって、「放電レート特性」に関しては、本願補正発明が実施例1と同等の効果を有していると直ちに認めることはできない。実施例1を根拠とする上記の主張は、本願補正発明に基づくものではないから、採用することはできない。

(イ) 仮に、本願補正発明が、本願明細書に記載の実施例1と同等の放電レート特性、及び充放電サイクル特性を発揮するという効果を奏しているとしても、以下のとおり、その効果は引用文献1?3の記載に基づき当業者にとって予測可能なものであり、顕著な効果であるとはいえない。
a 引用文献3によれば、効果に関し、以下の事項が読み取れる。
(a) 引用文献3に記載の、三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔を三次元規則配列多孔構造とすることにより、リチウム金属負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができる(前記(2)ア(イ)eの指摘を参照。)。
(b) 引用文献3に記載の、三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔率を従来のセパレーターの空孔率に比べ極めて大きくすることにより、電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン伝導度を有することができる(前記(2)ア(イ)eの指摘を参照。)。ここで、セパレータにおいてイオン伝導度が高いほど放電レート特性が向上するという技術常識の存在を考慮すると、引用発明3の前記セパレーターは、サイクル特性向上だけでなく、放電レート特性向上にも寄与するものである。
なお、上記技術常識の根拠に関し、要すれば、例えば、特開平11-339754号公報の段落【0032】の「セパレータと電解液との界面付近の電解液のイオン伝導度が上昇し、内部抵抗が低くなり、高率充放電特性(大電流で充放電した場合の電池容量特性)が良くなる。」との記載、特開2010-277935号公報の段落【0025】の「その結果、リチウムイオンがセパレータ内でより速く拡散できるようになり、高レートにおける充放電特性が向上しうる。」との記載、及び特開2006-188770号公報の段落【0087】の「本発明の不織布をリチウムイオン二次電池用セパレータとして用いた場合には、内部抵抗が低く、イオン透過性に優れているため、ハイレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を製造することができる。」との記載を参照。
b 引用文献1によれば、引用文献1に記載の正極試料1、2を正極とし、負極をリチウム金属箔とした電池は、電流密度の高い高率放電においても放電特性が改善できる効果が記載されている(前記(2)イ(イ)d及びeの指摘を参照。)。これは、電池の放電レート特性を向上させることに相当する。
c 引用文献2によれば、引用文献2に記載の実施例1?10を正極とし、負極を箔状のリチウム金属とした電池は、出力特性が顕著に優れるという効果が記載されている(前記(2)ウ(イ)fの指摘を参照)。これも、電池の放電レート特性を向上させることに相当する。
d 上記a?cを総合すれば、引用文献3に記載された三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターと、引用文献1又は2に記載された特定の正極とを組み合わせた電池においては、引用文献3に記載の前記セパレーターによるサイクル特性の向上及び放電レート特性の向上という効果と、引用文献1又は2に記載の前記正極による放電レート特性の向上という効果とを合わせ持つ電池が得られることは当業者にとって明らかであるから、本願明細書に記載の実施例1が奏する放電レート特性、及び充放電サイクル特性の向上という効果は、当業者にとって予測し得る範囲内のものである。
e したがって、仮に、本願補正発明が、実施例1と同等の放電レート特性、及び充放電サイクル特性を発揮するという効果を奏しているとしても、当該効果は引用文献1?3の記載に基づき当業者にとって予測可能なものであるから、顕著な効果であるとは認められない。

(4) 独立特許要件についてのまとめ
よって、本願補正発明は、引用文献3に記載された発明と引用文献1又は2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 補正の却下の決定のむすび
以上の次第で、本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 以上のとおり、本件補正(平成28年11月11日に提出された手続補正書による手続補正)は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備え、前記セパレータは、空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜であることを特徴とする非水電解質二次電池。」

2 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
(1) 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1について
ア 引用文献1の記載、及び引用文献1に開示された技術的事項は、前記第2の4(2)イに記載したとおりである。

イ 特に前記第2の4(2)イ(イ)eに記載したとおり、引用文献1に記載されたリチウム系電池は充放電が行われるから二次電池であるといえることを踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「リチウム系二次電池であって、集電体であるアルミニウム多孔体に、正極活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極合剤スラリーを充填し、乾燥ののちに圧縮加圧成型して正極材とし、この正極材を打ち抜いて作製された正極試料である正極と、リチウム金属箔である負極とを備え、正極と負極との間にポリプロピレン製セパレータが介在するように積層し、容器内に入れられた有機電解液に浸漬することで作製される、リチウム系二次電池。」

(2) 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2について
ア 引用文献2の記載、及び引用文献2に開示された技術的事項は、前記第2の4(2)ウに記載したとおりである。

イ 上記アを踏まえれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「非水電解質二次電池であって、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔の複合体であるアルミニウム複合体を正極集電体とするとともに、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔に活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極活物質スラリーを充填し、乾燥した後圧延をすることによって作製された正極と、箔状のリチウム金属である負極と、ポリプロピレン微多孔膜のセパレータとを備える、非水電解質二次電池。」

(3) 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3について
引用文献3の記載、及び引用文献3に記載された技術的事項は、前記第2の4(2)アに記載したとおりである。

3 本願発明の進歩性について
(1) 引用発明1を主たる引用発明とした場合
ア 本願発明と、引用発明1との対比
(ア) 引用発明1は「有機電解液」を用いる「リチウム系二次電池」であるところ、技術常識に照らすと、「有機電解液」は「非水電解質」のうちの一種であるといえるから、引用発明1の「有機電解液」を用いる「リチウム系二次電池」は、本願発明の「非水電解質二次電池」に相当する。
(イ) 前記第2の4(3)ウ(ア)で、本願補正発明について検討したとおり、本願発明の「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」は、「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」を意味すると解される。
そして、引用発明1における「正極」は、「集電体であるアルミニウム多孔体に、正極活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極合剤スラリーを充填し、乾燥ののちに圧縮加圧成型して正極材とし、この正極材を打ち抜いて作製され」るものである。技術常識に照らすと、前記LiCoO_(2)粉末はスラリーの溶剤には溶解せず「分散」することや、当該LiCoO_(2)は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質」であることが明らかであることを踏まえると、引用発明1における「正極」は、本願発明における「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」に相当する。
(ウ) 引用発明1における「リチウム金属箔である負極」は、本願発明の「リチウム金属負極」に相当する。
(エ) 本願発明と引用発明1とは、「セパレータ」を備える点で共通する。

イ 上記アの検討を踏まえると、本願発明と、引用発明1とは、以下の点で一致し、以下の相違点3で相違する。
<一致点>
「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備える、非水電解質二次電池。」

<相違点3>
「セパレータ」に関し、本願発明においては「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」のに対し、引用発明1においてはそのような特定がなされていない点

ウ 上記相違点3に対する検討
(ア) 前記第2の4(2)ア(イ)及び(ウ)によれば、引用文献3には、負極としてリチウム金属を用い、セパレーターとして三次元規則配列多孔構造を有する樹脂多孔質膜を用い、非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液を用いるリチウム二次電池が記載されている。
(イ) また、前記第2の4(3)オ(イ)a(a)によれば、引用文献3には、引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔を三次元規則配列多孔構造とすることにより、リチウム金属負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができると記載されている。 (ウ) また、前記第2の4(3)オ(イ)a(b)によれば、引用文献3には、引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔率を従来のセパレーターの空孔率に比べ極めて大きくすることにより、電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン伝導度を有することができると記載されており、セパレータにおいてイオン伝導度が高いほど放電レート特性が向上するという技術常識の存在を考慮すると、引用文献3に記載の前記セパレーターは、サイクル特性向上だけでなく、放電レート特性向上にも寄与するものである。
(エ) 一方、二次電池においては、サイクル特性を向上させることや、放電レート特性を向上させることは共通の課題である。特に、引用文献1の段落【0068】によると、引用発明1の二次電池には、電流密度の高い高率放電の条件が適用され得るから、放電レート特性の向上が特に望まれるものと認められる。
(オ) 以上の検討を踏まえると、引用発明1において、「セパレータ」として引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有する樹脂多孔膜からなるセパレーターを適用することで、上記相違点3に係る構成である「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」「セパレータ」を想到することは、引用文献3に記載のセパレーターによるサイクル特性向上や放電レート特性向上という効果を得るために、当業者が容易になし得たことである。

エ 本願発明の効果について
(ア) 本願発明においては「空孔率」の数値や「空孔サイズ」の数値は具体的に特定されていない。
ここで、前記第2の4(3)エ(ア)bに指摘したとおり、「空孔率」は、電解液をセパレータ内に充填できる量と関係しており、この数値が大きいほど電解液を多く充填でき、高いイオン伝導性が得られ、ひいては放電レート特性が良好になるという技術的関係が存在することが把握できるから、「空孔率」の数値が放電レート特性に影響を与えることは明らかである。
また、本願明細書の段落【0037】の「連通孔サイズが大きすぎると、デンドライトの生成という問題が起こる場合があり、また小さすぎるとイオン伝導性の低下という問題が起こる場合がある。」との記載に照らすと、「空孔サイズ」の数値がサイクル特性や放電レート特性に影響を与えることは明らかである。
そうすると、「空孔率」の数値及び「空孔サイズ」の数値が特定されていない本願発明が、本願明細書に記載の実施例1と同等の放電レート特性及び充放電サイクル特性を有していると直ちに認めることはできない。
(イ) また、仮に本願発明が本願明細書に記載の実施例1と同等の効果を奏しているとしても、前記第2の4(3)オ(イ)dに指摘したとおり、引用文献3に記載された三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターと、引用文献1に記載された特定の正極とを組み合わせた電池においては、引用文献3に記載の前記セパレーターによるサイクル特性の向上及び放電レート特性の向上という効果と、引用文献1に記載の前記正極による放電レート特性の向上という効果とを合わせ持つ電池が得られることは当業者にとって明らかであるから、その効果は、当業者にとって予測し得る範囲内のものである。

オ 小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(2) 引用発明2を主たる引用発明とした場合
ア 本願発明と、引用発明2との対比
(ア) 引用発明2の「非水電解質二次電池」は、本願発明の「非水電解質二次電池」に相当する。
(イ) 前記第2の4(3)ウ(ア)で、本願補正発明について検討したとおり、本願発明の「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」は、「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」を意味すると解される。
そして、引用発明2における「正極」は、「アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔の複合体であるアルミニウム複合体を正極集電体とするとともに、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔に活物質であるLiCoO_(2)粉末と溶剤を含む正極活物質スラリーを充填し、乾燥した後圧延をすることによって作製された」ものである。技術常識に照らすと、前記LiCoO_(2)粉末はスラリーの溶剤には溶解せず「分散」することや、当該LiCoO_(2)は「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質」であることが明らかであることを踏まえると、引用発明2における「正極」は、本願発明における「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極」に相当する。
(ウ) 引用発明2における「箔状のリチウム金属である負極」は、本願発明の本願発明の「リチウム金属負極」に相当する。
(エ) 本願発明と引用発明2とは、「セパレータ」を備える点で共通する。
イ 上記アの検討を踏まえると、本願発明と、引用発明2とは、以下の点で一致し、以下の相違点4で相違する。
<一致点>
「リチウムイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質を溶媒に分散したスラリーが充填され乾燥された多孔質アルミニウム集電体を含む正極と、リチウム金属負極と、セパレータとを備える、非水電解質二次電池。」

<相違点4>
「セパレータ」に関し、本願発明においては「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」のに対し、引用発明2においてはそのような特定がなされていない点

ウ 上記相違点4に対する検討
(ア) 前記第2の4(2)ア(イ)及び(ウ)によれば、引用文献3には、負極としてリチウム金属を用い、セパレーターとして三次元規則配列多孔構造を有する樹脂多孔質膜を用い、非プロトン性有機溶媒とリチウム塩からなる非水電解液を用いるリチウム二次電池が記載されている。
(イ) また、前記第2の4(3)オ(イ)a(a)によれば、引用文献3には、引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔を三次元規則配列多孔構造とすることにより、リチウム金属負極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができると記載されている。
(ウ) また、前記第2の4(3)オ(イ)a(b)によれば、引用文献3には、引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターでは、空孔率を従来のセパレーターの空孔率に比べ極めて大きくすることにより、電解液を多く充填できるため、従来のセパレーターと比較して、高いイオン伝導度を有することができると記載されており、セパレータにおいてイオン伝導度が高いほど放電レート特性が向上するという技術常識の存在を考慮すると、引用文献3に記載の前記セパレーターは、サイクル特性向上だけでなく、放電レート特性向上にも寄与するものである。
(エ) 一方、二次電池においては、サイクル特性を向上させることや、放電レート特性を向上させることは共通の課題である。特に、引用文献2の段落【0106】?【0109】によると、引用発明2の二次電池は、(2Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)により示される出力特性が評価対象になり得るものであるから、放電レート特性の向上が特に望まれるものと認められる。
(オ) 以上の検討を踏まえると、引用発明2において、「セパレータ」として引用文献3に記載の三次元規則配列多孔構造を有する樹脂多孔膜からなるセパレーターを適用することで、上記相違点4に係る構成である「空孔が三次元規則配列構造を有する多孔質樹脂膜である」「セパレータ」を想到することは、引用文献3に記載のセパレーターによるサイクル特性向上や放電レート特性向上という効果を得るために、当業者が容易になし得たことである。

エ 本願発明の効果について
(ア) 前記(1)エで述べたとおり、「空孔率」の数値及び「空孔サイズ」の数値が特定されていない本願発明が、本願明細書に記載の実施例1と同等の放電レート特性及び充放電サイクル特性を有していると直ちに認めることはできない。
(イ) また、仮に本願発明が本願明細書に記載の実施例1と同等の効果を奏しているとしても、前記第2の4(3)オ(イ)dに指摘したとおり、引用文献3に記載された三次元規則配列多孔構造を有するセパレーターと、引用文献2に記載された特定の正極とを組み合わせた電池においては、引用文献3に記載の前記セパレーターによるサイクル特性の向上及び放電レート特性の向上という効果と、引用文献2に記載の前記正極による放電レート特性の向上という効果とを合わせ持つ電池が得られることは当業者にとって明らかであるから、その効果は、当業者にとって予測し得る範囲内のものである。

オ 小括
したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3) 本願発明の進歩性についてのまとめ
以上検討したとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献3に記載された事項に基づき、又は、引用文献2に記載された発明と引用文献3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献3に記載された事項に基づき、又は、引用文献2に記載された発明と引用文献3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-07 
結審通知日 2017-08-08 
審決日 2017-08-28 
出願番号 特願2012-158675(P2012-158675)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡部 朋也  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 ▲辻▼ 弘輔
長谷山 健
発明の名称 非水電解質二次電池  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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