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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1333567
審判番号 不服2016-7926  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2011-151956「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開、特開2012- 19218、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月8日(パリ条約による優先権主張2010年7月9日、韓国、2010年7月14日、韓国、2010年8月10日、韓国)の出願であって、平成27年4月1日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月1日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月4日に提出された手続補正書による補正が平成28年2月1日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
それに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年12月8日に提出された上申書において、同年8月1日付けの前置報告書に対する意見が述べられた。
その後、当審において、平成29年6月19日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成29年9月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの本願発明1は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
n型半導体層と、
p型半導体層と、
前記n型半導体層と前記p型半導体層との間に活性層と、を含み、
前記活性層は、前記p型半導体層に隣接した第1活性層と前記n型半導体層に隣接した第2活性層、及び、前記第1活性層と前記第2活性層との間にゲート量子壁を含み、
前記第1活性層は、量子井戸及び量子壁を含む多重量子井戸構造の形態を備え、
前記第1活性層は、2個または3個の量子井戸層、及び、前記2個または3個の量子井戸層のいずれか2つの間に第1量子壁を含み、
前記第1活性層の多重量子井戸構造は、超格子構造ではなく、
前記第2活性層は、超格子の形態を備えた量子井戸構造であり、前記超格子は、電子または正孔が薄い量子壁を量子力学的トンネル効果によって通過して前記超格子全体に広げて特定のミニエネルギーバンドを形成するものであり、
前記第2活性層は、複数の量子井戸層、及び、前記複数の量子井戸層のいずれか2つの間に第2量子壁を含み、
前記第1量子壁の厚さは、前記第2量子壁の厚さよりも厚く、
前記第1量子壁の厚さは、0.2nm?7nmであり、
前記ゲート量子壁の厚さは、前記第1量子壁及び前記第2量子壁の各々の厚さよりも厚く、
前記ゲート量子壁の厚さは、3nm?15nmであり、
前記p型半導体層から前記第1活性層の多重量子井戸構造に注入される正孔は、前記p型半導体層に隣接する前記第1活性層の第1の量子井戸層の量子化エネルギー順位を全て満たしてから、残りの正孔が、前記第1量子壁を通り過ぎて、前記ゲート量子壁と前記第1量子壁との間の前記第1活性層の第2の量子井戸層に注入される、発光素子。」

なお、本願発明2?5は、本願発明1を引用する形式で、本願発明1を減縮した発明である。

第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

「・理由1(サポート要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・理由2(明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(サポート要件)について
・請求項1?5
請求項1?5では、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層について、第1導電型と第2導電型の導電型は特定されていない。
…(略)…本願発明の【発明が解決しようとする課題】を解決するためには、請求項1において、「第1導電型半導体層」が「n型半導体層」で、「第2導電型半導体層」が「p型半導体層」であることを特定することが必須と認められる。

しかしながら、請求項1においては、「第1導電型半導体層」が「n型半導体層」で、「第2導電型半導体層」が「p型半導体層」であることは特定されておらず、請求項1において、上記発明の課題を解決するための課題が反映されていないものと認められる。
したがって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっている。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

●理由2(明確性)について
・請求項1?5
(1)ア 請求項1には、「前記第1活性層の多重量子井戸構造は、超格子構造ではなく」、「前記第2活性層は、超格子構造の形態を備えた量子井戸構造であり」と記載されている。
…(略)…請求項1に記載の「超格子構造」の用語が、ミニバンドが形成される狭義の超格子を意味するのか、そうではなく、超薄膜積層構造を総称する超格子を意味するのか明らかでないから、以下、検討する。
…(略)…
上記のように、明細書において、「超格子構造」について、「ミニエネルギーバンドを形成することができる」と記載されており、裏返せば、ミニエネルギーバンドを形成しないものも含まれるといえるから、上記の明細書の記載を出願時の技術常識を持って考慮しても、請求項1に記載の「超格子構造」が、「『ミニバンドが形成される』、狭義の超格子構造」を意味するのか、あるいは、「『超薄膜積層構造』を総称する超格子構造」を意味するのか明確でない。

(2)請求項1には、「第1活性層の多重量子井戸構造は、超格子構造ではなく」と記載されているものの、上記(1)で指摘したように、請求項1に記載の「超格子構造」の定義が明確でない。
…(略)…
したがって、請求項1に記載の「第1活性層の多重量子井戸構造」は、「ミニバンドが形成される」ものと、段落【0112】に記載のように、「注入される正孔は、最初に第1活性層121内の第1量子井戸121aの量子化エネルギー順位を満ちて、残りの正孔は第1活性層内の量子壁121cを通り過ぎて第2量子井戸121bに注入された後電子と結合して発光する」ものの、いずれであるかが明確でない。」

第4 当審の判断
1 本願発明1について
(1)平成29年9月12日に提出された手続補正書により、請求項1に記載の「第1導電型半導体層」、「第2導電型半導体層」は、それぞれ「n型半導体層」、「p型半導体層」と補正された結果、上記理由1は解消した。

(2)平成29年9月12日に提出された手続補正書により、請求項1に記載の「前記第2活性層は、超格子構造の形態を備えた量子井戸構造であり」は、「前記第2活性層は、超格子の形態を備えた量子井戸構造であり、前記超格子は、電子または正孔が薄い量子壁を量子力学的トンネル効果によって通過して前記超格子全体に広げて特定のミニエネルギーバンドを形成するものであり」と補正された。
その結果、請求項1に記載の「超格子」は、「『ミニエネルギーバンドが形成される』、狭義の超格子」を意味することが明確とされたので、上記理由2(1)は解消した。

(3)平成29年9月12日に提出された手続補正書により、請求項1において、「前記p型半導体層から前記第1活性層の多重量子井戸構造に注入される正孔は、前記p型半導体層に隣接する前記第1活性層の第1の量子井戸層の量子化エネルギー順位を全て満たしてから、残りの正孔が、前記第1量子壁を通り過ぎて、前記ゲート量子壁と前記第1量子壁との間の前記第1活性層の第2の量子井戸層に注入される」との構成が追加されて限定する補正がされた。
その結果、「第1活性層の多重量子井戸構造」は、「注入される正孔は、最初に第1活性層121内の第1量子井戸121aの量子化エネルギー順位を満ちて、残りの正孔は第1活性層内の量子壁121cを通り過ぎて第2量子井戸121bに注入された後電子と結合して発光する」ものであることが明確とされたので、上記理由2(2)は解消した。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1を引用する形式の発明であるから、上記1で検討したように、請求項1の記載が補正されたことにより、本願発明1についての上記理由1及び理由2(1)、(2)が解消したのと同じ理由により、本願発明2?5についての上記理由2(1)及び理由2(1)、(2)は解消した。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
(1)原査定(平成28年2月1日付け拒絶査定)の拒絶の理由の根拠とされた理由(平成27年9月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由)の概要は、次のとおりである。

「1.(新規事項) 平成27年7月7日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規事項)について
・請求項:1-9
・備考:
1.平成27年7月7日付けでした手続補正において、請求項1に「第1活性層の量子壁の厚さは第2活性層の量子壁の厚さよりも厚く」という発明特定事項を追加する補正がなされた。
しかしながら、請求項1に係る発明に対応する第2実施形態([0108]-[0125]及び図8)には、第1活性層の量子壁の厚みは「0.2?7nm」であること([0115])、第2活性層の量子壁の厚みも「0.2?7nm」であること([0123])が記載されているのみであって、第1活性層の量子壁の厚みと第2活性層の量子壁の厚みと対比した記載はない。(たまたま図8がそうなっているように見えるが、図面の比率は正確な物ではない。)
…(略)…
2.請求項3には、「第2活性層は、第1活性層に比べて量子力学的に量子化された状態密度がより大きい」と記載されている。
…(略)…
よって、請求項1(第2実施形態)に従属する請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、請求項5,9に係る発明の発明特定事項も同様に、請求項1に対応する第2実施形態が有する構成ではない。すなわち、請求項1に係る発明を第2実施形態に限定することで、請求項5,9に係る発明特定事項を従属させることはできない。
…(略)…

●理由2(サポート要件)について
・請求項:1-9
・備考:
1.請求項1には、「第1活性層は量子井戸及び量子壁を含む多重量子井戸構造の形態を備え、第2活性層は超格子構造の形態を備えた量子井戸構造を含み」と記載されている。ここで、請求項1に対応する発明の詳細な説明([0080]、[0108]-[0125]及び図8)を参照すると、「第2活性層122」は量子準位を有する「多重量子井戸構造」である。
してみれば、請求項1に記載された発明は、第1活性層及び第2活性層が共に多重量子井戸構造である活性層からなっている。ここで、本願の図1,2で説明されているように、活性層が多重量子井戸構造では高電流密度で内部量子効率が低下する。
よって、本願請求項1に記載された発明は、高電流密度で発光に寄与するのは結局多重量子井戸であるから、高電流密度における内部量子効率を改善するという課題を解決するための手段を反映しているとは言えない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項1に従属する請求項2-9についても同様である。

2.請求項1には、「ゲート量子壁の厚さは、第1活性層の量子壁及び第2活性層の量子壁の各々の厚さよりも厚い」と記載されているが、具体的な厚さが記載されていない。よって、低電流領域においては正孔を第1活性層に閉じ込めるという機能を反映する構造となっていない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項1に従属する請求項2-9についても同様である。

3.請求項2には、ゲート量子壁のエネルギーバンドギャップの大きさは、「第2導電型半導体層のエネルギーバンドギャップの大きさより小さい」と記載されている。しかしながら、「ゲート量子壁」が低電流領域において正孔を第1活性層に閉じ込める機能を有する構造であることが把握できない。
よって、ゲート量子壁のエネルギーバンドギャップの大きさを十分小さくするようなもの、すなわち、低電流領域においても正孔を通しやすくするような量子壁構造も含まれるが、そのような構造は発明の詳細な説明の記載に反する。
したがって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

●理由3(実施可能要件)について
・請求項:1-9
・備考:
請求項1に係る発明において、発明の構成を第2実施形態に限定する補正がなされた。しかしながら、発明の詳細な説明([0108]-[0125]及び図8)に記載されている第2実施形態においては、第1活性層121及び第2活性層122がともに多重量子井戸構造である。
したがって、発明の詳細な説明の記載(第2実施形態)の活性層はともに、図2に記載されている高電流密度領域で内部量子効率が低下するものであるから、依然として低電流密度および高電流密度の両方において、内部量子効率を改善することができない構造となっている。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1-9に係る発明を実施できる程度に十分かつ明確に記載したものでない。」

(2)原査定についての判断は、次のとおりである。
ア 理由1(新規事項)について
(ア)「1.」について
a 請求項1には、(a)「前記第1活性層は、量子井戸及び量子壁を含む多重量子井戸構造の形態を備え」、(b)「前記第1活性層の多重量子井戸構造は、超格子構造ではなく」、(c)「前記第2活性層は、超格子の形態を備えた量子井戸構造であり、前記超格子は、電子または正孔が薄い量子壁を量子力学的トンネル効果によって通過して前記超格子全体に広げて特定のミニエネルギーバンドを形成するものであり」、(d)「前記p型半導体層から前記第1活性層の多重量子井戸構造に注入される正孔は、前記p型半導体層に隣接する前記第1活性層の第1の量子井戸層の量子化エネルギー順位を全て満たしてから、残りの正孔が、前記第1量子壁を通り過ぎて、前記ゲート量子壁と前記第1量子壁との間の前記第1活性層の第2の量子井戸層に注入される」と記載されている((a)?(d)は当審で付加した。)。
したがって、第1活性層は上記(a)、(b)、(d)の構成を備えるから、「超格子構造ではなく」、第2活性層は上記(c)の構成を備える。

b また、本願発明1に対応する第2実施形態に関連して、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)には、次のように記載されている。
「【0080】
前記第2活性層122は、超格子構造を備える発光層である。第2活性層122の多重量子井戸構造で量子壁の厚さが十分に薄く形成されると量子壁はその以上の量子束縛効果を表すことができず、量子井戸の内に束縛されていた電子もしくは正孔は薄い量子壁を量子力学的トンネル効果によって通過して超格子全体に広げて特定のミニエネルギーバンドを形成することができる。」
「【0108】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態による二重活性層を備える発光素子(構造例1)の活性層に対するエネルギーバンドギャップの概略図である。第2実施形態においては、第2活性層が超格子構造の形態を備えて、第1活性層は、2個の量子井戸層を備える多重量子井戸構造を備えている。第2実施形態は前記第1実施形態の技術的な特徴を採用することができる。」「【0112】
一方、中間領域の電流注入のとき、正孔注入層から注入される正孔は、最初に第1活性層121内の第1量子井戸121aの量子化エネルギー順位を満ちて、残りの正孔は第1活性層内の量子壁121cを通り過ぎて第2量子井戸121bに注入された後電子と結合して発光することができる。」

c 上記aにおける検討を踏まえると、本願発明1において、第1活性層は、超格子構造ではなく、上記(d)の構成並びに多重量子井戸構造の形態を備え、第2活性層は、上記(c)の構成を備えるから、第1実施形態の第2活性層についての上記段落【0080】の説明、及び第2実施形態の第1活性層についての上記段落【0108】、【0112】の説明、並びに段落【0038】?【0041】の記載も併せて参照すると、当初明細書等には、第1活性層の量子壁の厚さは、第2活性層の量子壁の厚さよりも厚いことが示唆されているといえる。
すなわち、仮に、第1活性層の量子壁の厚さが、第2活性層の量子壁の厚さよりも薄いならば、本願発明1において、第2活性層の超格子構造はミニエネルギーバンドを形成するものであるから、第1活性層もミニネルギーバンドを形成するものとなり、第1活性層の量子井戸内の正孔はトンネリングすることとなり、段落【0112】に記載のように、「正孔注入層から注入される正孔は、最初に第1活性層121内の第1量子井戸121aの量子化エネルギー順位を満ちて、残りの正孔は第1活性層内の量子壁121cを通り過ぎて第2量子井戸121bに注入された後電子と結合して発光する」のではなく、第1量子井戸121aの量子化エネルギー準位が満ちる前に第2量子井戸121bにトンネリングするはずだからである。

したがって、請求項1に記載の「第1活性層の量子壁の厚さは第2活性層の量子壁の厚さよりも厚く」との構成は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、請求項1に当該構成を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)「2.」について
「第2活性層は、第1活性層に比べて量子力学的に量子化された状態密度がより大きい」と記載された請求項3、5、9は、平成29年9月12日付け手続補正書に記載された請求項1?4において、削除されているので、理由1の「2.」は解消した。

イ 理由2(サポート要件)について
(ア)「1.」について
本願発明1は、第2活性層が、上記ア(ア)aの(c)の構成を備える。
本願の明細書の段落【0034】?【0041】及び【0080】を参照すると、本願発明1は、高電流注入のとき、第2活性層を主として作動させ、第2活性層はミニエネルギーバンドを形成することができる超格子構造とし、相対的に大量のキャリアを受容することができる構造とすることで、優れた発光効率特性を具現することができるものである。
したがって、本願発明1は、高電流密度における内部量子効率を改善するという課題を解決するための手段が反映されている。
よって、理由2の「1.」は解消した。

(イ)「2.」について
請求項1には、「前記第1量子壁の厚さは、0.2nm?7nmであり、前記ゲート量子壁の厚さは、前記第1量子壁及び前記第2量子壁の各々の厚さよりも厚く、前記ゲート量子壁の厚さは、3nm?15nmであり」と記載されている。
本願の明細書の段落【0034】?【0041】及び【0086】等を参照すると、本願発明1は、ゲート量子壁を利用することで、低電流注入のとき、第1活性層を主として作動させ、第1活性層内の量子井戸中に正孔を効果的に束縛することができる。
したがって、請求項1の上記記載は、低電流領域においては正孔を第1活性層に閉じ込めるという機能を反映する構造となっている。
よって、理由2の「2.」は解消した。

(ウ)「3.」について
「前記ゲート量子壁のエネルギーバンドギャップの大きさ」は、「第2導電型半導体層のエネルギーバンドギャップの大きさより小さい」と記載された請求項2は、平成29年9月12日付け手続補正書に記載された請求項1?4において、削除されているので、理由2の「3.」は解消した。

ウ 理由3(実施可能要件)について
上記ア(ア)aで検討したように、本願発明1は、第1活性層が(a)、(b)、(d)の構成を備え、「超格子構造ではなく」、第2活性層が(c)の構成を備える。
本願の明細書の段落【0034】?【0041】、【0080】及び【0108】?【0125】、図8等を参照すると、本願発明1は、高電流注入のとき、第2活性層を主として作動させ、第2活性層はミニエネルギーバンドを形成することができる超格子構造とし、相対的に大量のキャリアを受容することができる構造とすることで、優れた発光効率特性を具現することができるものである。
したがって、本願発明1は、高電流密度領域で内部量子効率が低下するものではなく、低電流密度および高電流密度の両方において、内部量子効率を改善することができる構造となっている。
よって、理由3は解消した。

エ 原査定についての判断のまとめ
以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2011-151956(P2011-151956)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 恩田 春香
近藤 幸浩
発明の名称 発光素子  
代理人 小野 誠  
代理人 重森 一輝  
代理人 市川 英彦  
代理人 金山 賢教  
代理人 岩瀬 吉和  

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