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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1333598 |
審判番号 | 不服2017-1949 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-09 |
確定日 | 2017-10-31 |
事件の表示 | 特願2012-285232「測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 7日出願公開、特開2014-126522、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月27日の出願であって、平成28年8月18日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月21日付けで手続補正がなされたが、平成29年1月4日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成29年2月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次の通りである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、引用文献1-3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-78282号公報 2.特開2006-38799号公報 3.特開2010-8062号公報 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 オートレンジ機能を有し、レンジ変更先の直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行うように構成された測定装置において、 前記測定装置は電力測定装置であり、 前記電力測定装置は、 一定時間毎の電流量と電力量の少なくともいずれかの累積値を積算して表示する積算機能と、 あらかじめ測定された全レンジの直流オフセット値を格納するメモリと、 このメモリに格納された全レンジの直流オフセット値に基づき各レンジにおける直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能と、 前記メモリに格納される直流オフセット値が所定範囲内にあるか否かを監視する直流オフセット監視機能と、 オートレンジ機能により設定されたレンジが現時点の入力信号を測定して前記累積値を積算するのに適正なレンジか否かを判断する設定レンジ判断機能を備え、 現時点で設定されているレンジが適正レンジと判断されると、そのままのレンジ設定で前記入力信号を測定更新することを特徴とする測定装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 a 「【請求項1】 入力される電圧と電流をデジタル信号に変換して出力する複数系統の入力部と、 これら入力部から変換出力されるデジタル信号に基づき電圧値と電流値と電力値を演算して格納する演算部と、 前記入力部の複数系統について、個別に直流オフセット補償を行う直流オフセット補償手段を有するCPU部、 とで構成されたことを特徴とする電力測定装置。 【請求項2】 前記直流オフセット補償手段は、 前記各入力系統の電圧オフセット値を格納する電圧オフセット格納部と、 前記各入力系統の電流オフセット値を格納する電流オフセット格納部と、 これら電圧オフセット値および電流オフセット値に基づき前記電圧測定値および電流測定値の直流オフセット補償演算処理を行うオフセット処理部、 を含むことを特徴とする請求項1記載の電力測定装置。」 b 「【0001】 本発明は、電力測定装置に関し、詳しくは、直流オフセット補償の改良に関する。」 c 「【0004】 そこで、これら分圧器や分流器に固有の直流オフセット成分に起因する測定誤差を補正するために、外部に接続された分圧器や分流器の入力端子を短絡して直流オフセット値を測定し、測定した直流オフセット値を用いて電圧や電流の測定値に含まれる分圧器や分流器に固有の直流オフセット成分を補正することが行われている。」 上記a?cより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。 「外部に接続された分圧器や分流器の入力端子を短絡して直流オフセット値を測定し、測定した直流オフセット値を用いて電圧や電流の測定値に含まれる分圧器や分流器に固有の直流オフセット成分を補正する電力測定装置において(【0001】、【0004】)、 入力される電圧と電流をデジタル信号に変換して出力する複数系統の入力部と、 これら入力部から変換出力されるデジタル信号に基づき電圧値と電流値と電力値を演算して格納する演算部と、 前記入力部の複数系統について、個別に直流オフセット補償を行う直流オフセット補償手段を有するCPU部、 とで構成され(【請求項1】)、 前記直流オフセット補償手段は、 前記各入力系統の電圧オフセット値を格納する電圧オフセット格納部と、 前記各入力系統の電流オフセット値を格納する電流オフセット格納部と、 これら電圧オフセット値および電流オフセット値に基づき前記電圧測定値および電流測定値の直流オフセット補償演算処理を行うオフセット処理部(【請求項2】)、 を含む電力測定装置。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0020】 [実施形態2] 本実施形態による電流検出器を図3に示す。なお、本実施形態では、先に説明した図1の電流検出器と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けてその説明を省略する。この電流検出器は、図1のスイッチ回路3による測定レンジの手動切り換えと共に、測定レンジの自動切り換えを可能にする。このために、図3の電流検出器では、AD(Analog-Digital)コンバータ11が設けられている。ADコンバータ11は、増幅回路6Dの検出信号を、デジタルの検出信号に変換し、変換した信号を、データバス1Aを経由してCPU1に送る。 【0021】 CPU1は、測定レンジの自動切り換えのとき、たとえば、10[A]用の設定データであるデータグループ4Aを読み出すための選択信号を、最初にEEPROM4に送る。データグループ4Aのゲインとオフセットとの値により調整された状態で電流センサ6が電流検出を行うと、検出信号を出力する。CPU1は、ADコンバータ11から検出信号を受け取ると、この信号のレベルを検出し、検出したレベルが所定範囲内であるかどうかを調べる。そして、検出信号のレベルが所定範囲より高い場合、CPU1は、20[A]用の設定データであるデータグループ4Bを読み出すための選択信号をEEPROM4に送る。 【0022】 ADコンバータ11からの検出信号が所定範囲内に入ると、CPU1は、この状態を保持して被測定電流を検出する。この後、例えば被測定電流が少なくなり、ADコンバータ11からの検出信号のレベルが低下し、このレベルが所定範囲より低くなると、CPU1は、10[A]用の設定データであるデータグループ4Aを読み出すための選択信号をEEPROM4に送る。逆に、検出信号のレベルが高い場合、CPU1は、30[A]用の設定データであるデータグループ4Cを読み出すための選択信号をEEPROM4に送る。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、測定区間それぞれで被測定対象の電圧信号、電流信号それぞれのデジタルデータを所定のサンプリング周波数で取得し、複数の測定区間を含む測定時間全体の積算電力値を求める電力計に関し、詳しくは、j回目の測定区間と(j+1)回目の測定区間との間にデッドタイムが存在しても積算電力値を精度よく求めることができる電力計に関するものである。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明は「測定した直流オフセット値を用いて電圧や電流の測定値に含まれる分圧器や分流器に固有の直流オフセット成分を補正する電力測定装置」であるから、その「電圧オフセット値」及び「電流オフセット値」は、「直流オフセット値」であるといえるので、 引用発明の「電圧オフセット値および電流オフセット値に基づき前記電圧測定値および電流測定値の直流オフセット補償演算処理を行う」「電力測定装置」と、本願発明の「オートレンジ機能を有し、レンジ変更先の直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行うように構成された測定装置において、前記測定装置は電力測定装置であり」とは、「直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行うように構成された測定装置において、前記測定装置は電力測定装置」である点で共通する。 (2)引用発明において、「直流オフセット値を測定」した値が「格納」されていることは明らかであるので、引用発明の「電圧オフセット値を格納する電圧オフセット格納部」及び「電流オフセット値を格納する電流オフセット格納部」と、本願発明の「あらかじめ測定された全レンジの直流オフセット値を格納するメモリ」とは、「あらかじめ測定された直流オフセット値を格納するメモリ」である点で共通する。 (3)上記(2)を踏まえると、引用発明の「オフセット処理部」の、「これら電圧オフセット値および電流オフセット値に基づき前記電圧測定値および電流測定値の直流オフセット補償演算処理を行う」機能は、本願発明の「このメモリに格納された全レンジの直流オフセット値に基づき各レンジにおける直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能」とは、「このメモリに格納された直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能」である点で共通する。 すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行うように構成された測定装置において、 前記測定装置は電力測定装置であり、 前記電力測定装置は、 あらかじめ測定された直流オフセット値を格納するメモリと、 このメモリに格納された直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能とを備える測定装置。」 (相違点1) 本願発明は、「オートレンジ機能」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点2) 直流オフセット補償演算処理が、本願発明は、「レンジ変更先」の直流オフセット値に基づき行われるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点3) 本願発明は、「一定時間毎の電流量と電力量の少なくともいずれかの累積値を積算して表示する積算機能」を備えるが、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点4) 直流オフセット値を格納するメモリが、本願発明は、「全レンジ」の直流オフセット値を格納するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点5) メモリに格納された直流オフセット値に基づき直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能が、本願発明は、「全レンジ」の直流オフセット値に基づき「各レンジ」における直流オフセット補償演算処理を行うのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点6) 本願発明は、「前記メモリに格納される直流オフセット値が所定範囲内にあるか否かを監視する直流オフセット監視機能」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点7) 本願発明は、「オートレンジ機能により設定されたレンジが現時点の入力信号を測定して前記累積値を積算するのに適正なレンジか否かを判断する設定レンジ判断機能を備え、現時点で設定されているレンジが適正レンジと判断されると、そのままのレンジ設定で前記入力信号を測定更新する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 2 判断 事案に鑑みて、上記相違点5、7についてまとめて検討する。 引用発明は、「オートレンジ機能」及び「積算機能」を有していない。 一方、引用文献2には、「この電流検出器は、図1のスイッチ回路3による測定レンジの手動切り換えと共に、測定レンジの自動切り換えを可能にする。」(上記「第4 2」)と、「オートレンジ機能」を備える電流検出器が記載されているが、「積算機能」を備えていない。 また、引用文献3には、「積算機能」を備える電力計が記載されているが記載されているが(上記「第4 3」)、「オートレンジ機能」は記載されていない。 してみると、引用文献2及び3には、上記相違点7に係る「オートレンジ機能により設定されたレンジが現時点の入力信号を測定して前記累積値を積算するのに適正なレンジか否かを判断する設定レンジ判断機能」は記載されいない。 そして、本願発明は「累積値を積算するのに適正なレンジか否かを判断する設定レンジ判断機能」と、「メモリに格納された全レンジの直流オフセット値に基づき各レンジにおける直流オフセット補償演算処理を行う」ことが相まって、積算中のレンジ変更による誤差を軽減することができるので(段落【0056】)、 上記相違点5、7に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明は、上記相違点5、7に係る、メモリに格納された「全レンジ」の直流オフセット値に基づき「各レンジ」における直流オフセット補償演算処理を行う直流オフセット補償演算処理機能、及び、「オートレンジ機能により設定されたレンジが現時点の入力信号を測定して前記累積値を積算するのに適正なレンジか否かを判断する設定レンジ判断機能」という構成を有するものとなっており、 本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-18 |
出願番号 | 特願2012-285232(P2012-285232) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 續山 浩二 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 関根 洋之 |
発明の名称 | 測定装置 |
代理人 | 横河電機株式会社 |