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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1333636
審判番号 不服2016-1258  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-28 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2013-524182「立体カメラのためのオートフォーカス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日国際公開、WO2012/021541、平成25年10月17日国内公表、特表2013-539273、請求項の数(38)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2011年(平成23年)8月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年8月9日、米国、2011年5月23日、米国、2011年8月8日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成26年3月13日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年7月1日付けで手続補正がなされ、平成26年12月18日付けの最後の拒絶理由通知に対して、平成27年4月2日付けで手続補正がなされたが、同手続補正について、同年9月16日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成29年5月12日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年8月16日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年9月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
[理由A]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1、10、19、29の「キーポイント」との記載は明確でない。
(2)請求項1、10、19、29の「疎な深度マップ」との記載は明確でない。
(3)請求項7、16、25、36の「前記サブサンプリングの後に、前記第1の画像に高域フィルタを適用することと、前記第1の画像力を計算することと、前記第1の画像を閾値処理することを含む」との記載は明確でない。

[理由B]
本願請求項1-6、8-15、17-24、26-35、37、38に係る発明は、以下の引用文献に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A.特表2010-524279号公報
引用文献B.特開平8-9424号公報
引用文献C.国際公開第2006/075528号
引用文献D.特開2007-323615号公報
引用文献E.特開2010-128820号公報
引用文献F.特開2010-67014号公報
引用文献G.国際公開第2009/047681号
引用文献H.特開2003-304561号公報


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-38に係る発明は、以下の引用文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開平8-47001号公報
引用文献2.特開2010-41381号公報
引用文献3.特開平8-242453号公報
引用文献4.特開2010-67014号公報
引用文献5.特開平6-251127号公報
引用文献6.特開平10-142490号公報

第4 本願発明
本願請求項1-38に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明38」という。)は、平成29年8月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-38に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-38は以下のとおりの発明である。
なお、本願発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A、構成Bなどと称する。

(本願発明)
【請求項1】
(A)第1の視点に関連付けられた第1の画像を受信することと、
(B)第2の視点に関連付けられた第2の画像を受信することと、
(C)前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することと、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、
(D)前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることと、
(E)疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定することと、
(F)前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定すること
を含む、
(G)画像センサのための焦点深度を決定するための立体キャプチャ・デバイスを有する電子デバイスにおける方法。

(本願発明2)
【請求項2】
前記第2の画像に基づいて第2の複数のキーポイントを決定することをさらに含み、前記第2の複数のキーポイントは、前記第2の画像の一部を識別し、前記第2の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第2の画像の一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、請求項1に記載の方法。

(本願発明3)
【請求項3】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の複数のキーポイントからのキーポイントと相関させることを含む、請求項2に記載の方法。

(本願発明4)
【請求項4】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第2の画像における検索範囲内のピクセルを介して繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。

(本願発明5)
【請求項5】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第1の画像および前記第2の画像におけるピクセル間の平均2乗誤差を決定することを含む、請求項4に記載の方法。

(本願発明6)
【請求項6】
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することは、前記第1の画像に基づいてスケール不変特徴変換(SIFT)キーポイントを決定することを含む、請求項1に記載の方法。

(本願発明7)
【請求項7】
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することは、前記第1の画像をサブサンプリングすることと、前記サブサンプリングされた画像に高域フィルタを適用することと、前記サブサンプリングされた画像力の値を計算することと、前記サブサンプリングされた画像を閾値処理することを含む、請求項1に記載の方法。

(本願発明8)
【請求項8】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、リアルタイムで生じる、請求項1に記載の方法。

(本願発明9)
【請求項9】
前記電子デバイスは、携帯電話を含む、請求項1に記載の方法。

(本願発明10)
【請求項10】
立体キャプチャ・デバイスに動作可能に接続されたコンピュータに、
第1の視点に関連付けられた第1の画像を受信することと、
第2の視点に関連付けられた第2の画像を受信することと、
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することと、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることと、
疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定することと、
前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定すること
のステップを行わせるように構成される命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明11)
【請求項11】
前記第2の画像に基づいて第2の複数のキーポイントを決定することをさらに含み、前記第2の複数のキーポイントは、前記第2の画像の一部を識別し、前記第2の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第2の画像の一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明12)
【請求項12】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の複数のキーポイントからのキーポイントと相関させることを含む、請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明13)
【請求項13】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第2の画像における検索範囲内のピクセルを介して繰り返すことを含む、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明14)
【請求項14】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第1の画像および前記第2の画像におけるピクセル間の平均2乗誤差を決定することを含む、請求項13に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明15)
【請求項15】
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することは、前記第1の画像に基づいてスケール不変特徴変換(SIFT)キーポイントを決定することを含む、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明16)
【請求項16】
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定することは、前記第1の画像をサブサンプリングすることと、前記サブサンプリングされた画像に高域フィルタを適用することと、前記サブサンプリングされた画像力の値を計算することと、前記サブサンプリングされた画像を閾値処理することを含む、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明17)
【請求項17】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、リアルタイムで生じる、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明18)
【請求項18】
前記コンピュータは、携帯電話に位置する、請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

(本願発明19)
【請求項19】
立体キャプチャ・デバイスの焦点を合わせるためのシステムであって、前記システムは、
第1の視点に関連付けられた第1の画像を生成するように構成される第1の画像センサと、
第2の視点に関連付けられた第2の画像を生成するように構成される第2の画像センサと、
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定するように構成される特徴生成モジュールと、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させるように構成されるキーポイント相関性モジュールと、
疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定するように構成される視差決定モジュールと、
前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定するように構成される深度決定モジュール
を含む、システム。

(本願発明20)
【請求項20】
前記特徴生成モジュールは、前記第2の画像に基づいて第2の複数のキーポイントを決定するように構成され、前記第2の複数のキーポイントは、前記第2の画像の一部を識別し、前記第2の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第2の画像の一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、請求項19に記載のシステム。

(本願発明21)
【請求項21】
キーポイントを相関させるように構成される前記モジュールは、前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の複数のキーポイントからのキーポイントと相関させるように構成される、請求項20に記載のシステム。

(本願発明22)
【請求項22】
キーポイントを相関させるように構成される前記モジュールは、前記第2の画像における検索範囲内のピクセルを介して繰り返すように構成される、請求項19に記載のシステム。

(本願発明23)
【請求項23】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させることは、前記第1の画像および前記第2の画像におけるピクセル間の平均2乗誤差を決定することを含む、請求項22に記載のシステム。

(本願発明24)
【請求項24】
前記特徴生成モジュールは、前記第1の画像に基づいてスケール不変特徴変換(SIFT)キーポイントを決定するように構成される、請求項19に記載のシステム。

(本願発明25)
【請求項25】
前記特徴生成モジュールは、前記第1の画像をサブサンプリングし、前記サブサンプリングされた画像に高域フィルタを適用し、前記サブサンプリングされた画像力の値を計算し、前記サブサンプリングされた画像を閾値処理するように構成される、請求項19に記載のシステム。

(本願発明26)
【請求項26】
キーポイントを相関させるように構成される前記モジュールは、前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントをリアルタイムで前記第2の画像における位置と相関させる、請求項19に記載のシステム。

(本願発明27)
【請求項27】
前記立体キャプチャ・デバイスは、携帯電話に位置する、請求項19に記載のシステム。

(本願発明28)
【請求項28】
焦点深度を決定するように構成される前記モジュールは、視差ヒストグラムを含む、請求項19に記載のシステム。

(本願発明29)
【請求項29】
立体キャプチャ・デバイスの焦点を合わせるためのシステムであって、前記システムは、
第1の視点に関連付けられた第1の画像を受信するための手段と、
第2の視点に関連付けられた第2の画像を受信するための手段と、
前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定するための手段と、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させるための手段と、
疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定するための手段と、
前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定するための手段
を含む、システム。

(本願発明30)
【請求項30】
第1の画像を受信するための前記手段は、第1のセンサを含み、第2の画像を受信するための前記手段は、第2のセンサを含み、第1の複数のキーポイントを決定するための前記手段は、特徴生成モジュールを含み、相関させるための前記手段は、キーポイント相関性モジュールを含み、複数の視差を決定するための前記手段は、視差決定モジュールを含み、焦点深度を決定するための前記手段は、深度決定モジュールを含む、請求項29に記載のシステム。

(本願発明31)
【請求項31】
第1の複数のキーポイントを決定するための前記手段は、前記第2の画像に基づいて第2の複数のキーポイントを決定するように構成され、前記第2の複数のキーポイントは、前記第2の画像の一部を識別し、前記第2の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第2の画像の一部に含まれるピクセルの数よりも少ない、請求項29に記載のシステム。

(本願発明32)
【請求項32】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させるための前記手段は、前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の複数のキーポイントからのキーポイントと相関させるように構成される、請求項31に記載のシステム。

(本願発明33)
【請求項33】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させるための前記手段は、前記第2の画像における検索範囲内のピクセルを介して繰り返すように構成される、請求項29に記載のシステム。

(本願発明34)
【請求項34】
前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させるための前記手段は、前記第1の画像および前記第2の画像におけるピクセル間の平均2乗誤差を決定するように構成される、請求項33に記載のシステム。

(本願発明35)
【請求項35】
第1の複数のキーポイントを決定するための前記手段は、前記第1の画像に基づいてスケール不変特徴変換(SIFT)キーポイントを決定するように構成される、請求項29に記載のシステム。

(本願発明36)
【請求項36】
第1の複数のキーポイントを決定するための前記手段は、前記第1の画像をサブサンプリングし、前記サブサンプリングされた画像に高域フィルタを適用し、前記サブサンプリングされた画像力の値を計算し、前記サブサンプリングされた画像を閾値処理するように構成される、請求項29に記載のシステム。

(本願発明37)
【請求項37】
キーポイントを相関させるための前記手段は、前記第1の複数のキーポイントからの前記キーポイントをリアルタイムで前記第2の画像における位置と相関させる、請求項29に記載のシステム。

(本願発明38)
【請求項38】
前記立体キャプチャ・デバイスは、携帯電話に位置する、請求項29に記載のシステム。

第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1の記載、引用発明
平成29年5月12日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、「立体テレビカメラ」(発明の名称)として、図面とともに次の事項が記載されている(下線は強調のため当審で付与した。)。
(1)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、2台のカメラで被写体を撮影する立体テレビカメラに関するものである。」

(2)「【0016】【実施例】図1に本発明の立体テレビカメラと表示装置を組み合わせた第1の実施例の構成を示す。立体テレビカメラ1は左右に1対のカメラ11L、11Rを備えている。左カメラ11Lは撮影レンズ12Lと受光センサー13Lとから成り、撮影レンズ12Lを透過して入射した光は受光センサー13L上に結像する。右カメラ11Rも同様に撮影レンズ12Rと受光センサー13Rから成る。これらの受光センサー13L、13Rとしては光を電気信号に変換するCCDセンサーを用いる。カメラ1の左右中央には光学式ファインダー19が設置されており、撮影者はファインダー19によって被写体を捉え、カメラ1を被写体に向ける。
【0017】左右受光センサー13L、13Rに接続して距離検出部16が設けられている。距離検出部16では、左右受光センサー13L、13Rからの信号を比較して、カメラ1から被写体までの距離を検出する。検出された被写体距離は、輻輳、ピント調節部17に送られる。輻輳、ピント調節部17は、距離検出部16からの距離情報に基づいて左右カメラ11L、11Rの輻輳とピントを調節する。これにより、立体テレビカメラ1は被写体距離に応じた適切な輻輳設定とピント設定がなされることになる。」

以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成a、構成bと称する。

(a)左カメラの受光センサーからの信号と、右カメラの受光センサーからの信号とを距離検出部で比較して、カメラから被写体までの距離を検出し、
(b)検出した被写体までの距離に基づいてピントを調節する立体テレビカメラのピント調節方法

2.引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている
(1)「【0015】<一の実施形態の構成>
図1は、一の実施形態における電子カメラの構成例を示すブロック図である。この一の実施形態の電子カメラは、撮影モードの1つとしてステレオ画像撮影モードを有している。ステレオ画像撮影モードでの電子カメラは、撮像光学系の光軸に対して垂直方向にレンズをシフトさせて、視差を有する一対の画像を撮像する。
【0016】一の実施形態の電子カメラは、撮像光学系11と、第1レンズ駆動部12と、第2レンズ駆動部13と、ブレ検出部14と、第3レンズ駆動部15と、撮像素子16と、撮像素子シフト部17と、AFE18と、CPU19と、第1メモリ20および第2メモリ21と、記録I/F22と、外部I/F23と、無線通信モジュール24と、モニタ25と、操作部26とを有している。なお、第1レンズ駆動部12、第2レンズ駆動部13、ブレ検出部14、第3レンズ駆動部15、撮像素子シフト部17、AFE18、第1メモリ20、第2メモリ21、記録I/F22、外部I/F23、無線通信モジュール24、モニタ25および操作部26は、それぞれCPU19と接続されている。」

(2)「【0050】ステップS109:CPU19は、第3レンズ駆動部15および撮像素子シフト部17を動作させて、ブレ補正レンズ11cおよび撮像素子16の位置がそれぞれ中央よりも左寄りとなるように水平にシフトさせる。このとき、CPU19は、ブレ補正レンズ11cの光軸のシフト量と同じだけ撮像素子16を左にシフトさせる。なお、一の実施形態でのブレ補正レンズ11cおよび撮像素子16の移動方向は、電子カメラの構え方(正位置での撮影、縦位置での撮影など)に応じてCPU19が設定する。
【0051】ステップS110:CPU19は、ブレ検出部14から検出される角速度の積分値を初期化するとともに、角速度の積分動作を開始する。なお、このS110でのCPU19の処理は、後述のS111の撮像動作とほぼ同時に行われる。
【0052】ステップS111:CPU19は、撮像素子16を駆動させて1フレーム目の画像(第1画像)を撮像する(図4、図5(a)参照)。S111で撮像された第1画像のデータは、画像処理部28で所定の画像処理が施された後に第1メモリ20にバッファリングされる。
【0053】ステップS112:CPU19は、第3レンズ駆動部15および撮像素子シフト部17を動作させて、ブレ補正レンズ11cおよび撮像素子16の位置がそれぞれ中央よりも右寄りとなるように水平にシフトさせる。このとき、CPU19は、ブレ補正レンズ11cの光軸のシフト量と同じだけ撮像素子16を右にシフトさせる。
【0054】ステップS113:CPU19は、撮像素子16を駆動させて2フレーム目の画像(第2画像)を撮像する(図4、図5(b)参照)。S113で撮像された第2画像のデータは、画像処理部28で所定の画像処理が施された後に第1メモリ20にバッファリングされる。」

(3)「【0061】ステップS118:被写体距離演算部27および画像処理部28は、CPU19の指示に応じて、一対の画像(S111、S113)を用いてステレオペア用の投影画像を生成する。一の実施形態では、投影画像はステレオペアの右目用の画像となる。そして、ステレオペアの左目用の画像には第1画像がそのまま用いられるものとする。
【0062】 具体的には、S118での被写体距離演算部27および画像処理部28は、以下の(イ)から(ニ)の処理をそれぞれ実行する。
【0063】(イ)画像処理部28は、第1画像および第2画像に対して、それぞれ特徴点の抽出処理を行う。一例として、画像処理部28は、第1画像および第2画像に対して公知のエッジ抽出処理を施すとともに、各画像におけるエッジの交点(コーナー)を特徴点とする。
【0064】(ロ)画像処理部28は、それぞれ上記(イ)で抽出した第1画像の特徴点と第2画像の特徴点との対応付けを行う。例えば、画像処理部28は、各特徴点についてそれぞれ特徴量を求めるとともに、画像間で特徴量が近似する特徴点を対応付けする。なお、特徴点の特徴量としては、一例として特徴点の近傍画素の情報(輝度や色差のヒストグラムなど)を用いることができる。
【0065】(ハ)被写体距離演算部27は、上記(ロ)で対応付けした各特徴点での被写体距離をそれぞれ求める。ここで、第1画像および第2画像での特徴点の位置のズレ量は被写体距離が小さければ大きくなる。そのため、被写体距離演算部27は、第1画像および第2画像でのブレ補正レンズ11cおよび撮像素子16のシフト量(レンズの光軸間距離)と、第1画像および第2画像での特徴点の位置のズレ量とから、その特徴点に対応する被写体距離を幾何学的に求める。
【0066】なお、図6に示すように、第1画像および第2画像を取得する間に撮像光学系11の光軸に角度変化があると、上記の角度変化のない場合と比べて第2画像での特徴点の位置にズレが生じるので、被写体距離の演算精度が低下してしまう。そのため、被写体距離演算部27は、上記(ハ)での被写体距離の演算のときに、上記の角度変化を加味して各特徴点の位置のズレ量を補正する。
【0067】(ニ)画像処理部28は、各々の特徴点の被写体距離に基づいて、第1画像からステレオペア用の投影画像を生成する。一例として、まず、画像処理部28は、上記(イ)で抽出したエッジによって第1画像を複数の領域に分割する。次に、画像処理部28は、上記(ハ)で求めた特徴点の被写体距離を用いて各分割領域の被写体距離を決定する。」

以上より、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「視点の位置を相違させて撮像した第1の画像と第2の画像について、画像処理部により、エッジ抽出処理を用いて、それぞれ特徴点を抽出して、両画像における特徴点の対応付けを行い、被写体距離演算部により、両画像における対応する特徴点のズレ量を算出し、特徴点のズレ量と視点間距離とにより、各特徴点における被写体距離を算出する技術。」

3.引用文献3について
引用文献3(段落【0034】等)には、「一方の画像における特徴点が、他方の画像のどの位置に対応するかを、ピクセル間の平均二乗誤差に基づいて探索する技術」が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
引用文献4(段落【0059】-【0062】等)には、「SIFTにより特徴点を検出する技術」が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
引用文献5(段落【0060】-【0063】等)には、「特徴点の抽出に際し、画像をサブサンプリングし、平滑化処理を行い、べき乗計算し、閾値処理を行う技術」が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
引用文献6(段落【0098】、【0119】-【0123】等)には、「焦点調節に用いる被写体距離の分布を把握するために、ヒストグラムを用いる技術」が記載されていると認められる。

7.その他の文献(原査定の拒絶の理由Bにおいて引用された文献)について
(1)引用文献Aについて
引用文献A(段落【0037】、【0044】等)には、「2個の撮像部を用いて、光景内諸点までの距離を調べ、その結果から距離マップを生成する技術」が記載されていると認められる。

(2)引用文献Bについて
引用文献B(段落【0008】-【0015】等)には、「立体画像撮像システムにおいて、領域ごとに視差量を算出し、被写体距離の分布から度数の高い距離に焦点制御を行う技術」が記載されていると認められる。

(3)引用文献C、Dについて
引用文献C(段落【0035】、【0036】)及びD(段落【0027】)には、「2つの画像を撮影する三次元計測装置において、画像中の特徴点を選定し、2つの画像中の特徴点同士でマッチング処理を行う技術」が記載されていると認められる。

(4)引用文献E、Fについて
引用文献E(段落【0059】)及びF(段落【0059】-【0062】)には、「SIFTにより特徴点を検出する技術」が記載されていると認められる。

(5)引用文献G、Hについて
引用文献G(第1頁第22行-第27行等)及びH(段落【0045】、【0046】)には、「解像度の低い画像を用いて距離情報を生成する技術」が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)本願発明1の構成A、Bと、引用発明の構成aとの対比
引用発明における「左カメラ」と「右カメラ」は、互いに異なる視点を有することは自明であり、それぞれのカメラが撮像する画像は、それぞれの視点に関連付けられたものといえる。また、「受光センサーからの信号」は、カメラで撮像した画像の情報であるといえる。
してみれば、引用発明の「左カメラの受光センサーからの信号」及び「右カメラの受光センサーからの信号」は、本願発明1の「第1の視点に関連付けられた第1の画像」及び「第1の視点に関連付けられた第2の画像」に相当するといえる。
また、引用発明において、「左カメラの受光センサーからの信号と、右カメラの受光センサーからの信号とを距離検出部で比較」するに際し、距離検出部が、両信号を受信することは自明であるといえる。
よって、引用発明の構成aは、本願発明1の構成A「第1の視点に関連付けられた第1の画像を受信すること」及び構成B「第2の視点に関連付けられた第2の画像を受信すること」を含んでいるといえる。

(2)本願発明1の構成CないしFと、引用発明の構成aとの対比
引用発明の構成aの「被写体までの距離」は、後述する構成bにおいて、ピント調節に用いられる距離であるから、本願発明1の構成Fでいう「焦点深度」に対応する。
また、上記(1)で検討したように、「左(右)カメラの受光センサーからの信号」は、「第1(第2)の視点に関連付けられた第1(第2)の画像」に相当するから、引用発明の構成aは、第1の画像と第2の画像とに基づいて焦点深度を決定する点で、本願発明1の構成CないしFと共通するといえる。
ただし、「焦点深度を決定する」ための手順として、本願発明1は、「前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定すること、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない」と、「前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させること」と、「疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定すること」と、「前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定すること」とからなる手順を備えるのに対し、引用発明は、これらの手順を備えているかどうか不明な点で相違する。

(3)本願発明1の構成Gと、引用発明の構成bとの対比
引用発明における「受光センサー」、「立体テレビカメラ」は、本願発明1における「画像センサ」、「立体キャプチャ・デバイスを有する電子デバイス」に相当する。
引用発明における「被写体までの距離に基づいてピントを調節する立体カメラのピント調節方法」は、画像センサを備える立体カメラの焦点深度を調節する方法であるから、本願発明1における「画像センサのための焦点深度を決定するための立体キャプチャ・デバイスを有する電子デバイスにおける方法」に相当するといえる。
してみれば、引用発明の構成bは、本願発明1の構成Gに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
第1の視点に関連付けられた第1の画像を受信することと、
第2の視点に関連付けられた第2の画像を受信することと、
第1の画像と第2の画像とに基づいて、焦点深度を決定することと、
を含む、画像センサのための焦点深度を決定するための立体キャプチャ・デバイスを有する電子デバイスにおける方法。

(相違点)
「第1の画像と第2の画像とに基づいて、焦点深度を決定する」ための手順として、本願発明1は、「前記第1の画像に基づいて第1の複数のキーポイントを決定すること、ここで、前記第1の複数のキーポイントは、前記第1の画像の固有な一部を識別し、前記第1の複数のキーポイントの数は、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない」と、「前記第1の複数のキーポイントからのキーポイントを前記第2の画像における位置と相関させること」と、「疎な深度マップを形成するために、前記識別された前記第1の画像の固有な一部に含まれるピクセルの数よりも少ない前記第1の複数のキーポイントの各々に関連付けられた複数の視差を決定すること」と、「前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定すること」とからなる手順を備えるのに対し、引用発明は、これらの手順を備えているかどうか不明な点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記第5の2.で検討したとおり、視点の位置を相違させて撮像した第1の画像と第2の画像について、画像処理部により、エッジ抽出処理を用いて、それぞれ特徴点(本願でいう「キーポイント」に相当する。)を抽出して、両画像における特徴点の対応付けを行い、被写体距離演算部により、両画像における対応する特徴点のズレ量を算出し、特徴点のズレ量と視点間距離とにより、各特徴点における被写体距離を算出することが記載されていると認められる。
しかしながら、上記相違点に係る「前記複数の視差の平均、前記第1の視点の位置、および前記第2の視点の位置に基づいて焦点深度を決定すること」は、記載も示唆もされていない。
また、上記相違点に係る構成は、引用文献3ないし6、及び、原査定の拒絶の理由Bにおいて引用された引用文献AないしHにも記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び各引用文献に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

2.本願発明2-38について
本願発明2-9は、直接又は間接的に請求項1を引用しており、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明10-18のコンピュータ可読記憶媒体、及び、本願発明19-38のシステムも 上記相違点に係る構成を備えているから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明及び各引用文献に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年8月16日付け手続補正により補正された補正後の本願発明1-38が備える、上記相違点に係る構成は、上記第6において検討したとおり、原査定の拒絶の理由Bにおいて引用された引用文献AないしHに記載も示唆もされておらず、また、本願出願前における周知技術であるともいえないから、本願発明1-38は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献AないしHに基づいて容易に発明できたものではない。
また、原査定の拒絶の理由Aに係る記載不備は、特許請求の範囲についての補正ならびに意見書における請求人の釈明により解消されている。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-19 
出願番号 特願2013-524182(P2013-524182)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 祐一郎菅 和幸  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 篠原 功一
渡辺 努
発明の名称 立体カメラのためのオートフォーカス  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 奥村 元宏  

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