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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1333751
審判番号 不服2016-6481  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2013-232905「アプリケーション共同実行端末、アプリケーション共同実行方法、及び、アプリケーション共同実行端末用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 72668〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成25年11月11日(優先権主張平成25年9月6日)の出願であって、平成27年6月4日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日に意見書が提出されたが、平成28年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月2日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、同年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月2日付けで手続補正がなされ、同年3月3日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年5月12日に意見書が提出されたものである。

2.平成29年2月2日付けでなされた手続補正の内容
平成29年2月2日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含んでおり、補正前及び補正後の請求項1の記載は以下のとおりである。

[補正前]
「【請求項1】
一以上の通信端末と通信可能に接続され、前記通信端末とアプリケーションの共同実行を行うためのアプリケーション共同実行端末であって、
前記通信端末に対して通話を発信する通話発信手段と、
前記発信した通話の着信により前記通信端末を認証する認証手段と、
前記アプリケーション共同実行端末上において起動されているアプリケーションと共同実行が可能なアプリケーションが、前記認証した通信端末において起動されていることを確認するアプリケーション起動確認手段と、
前記アプリケーション共同実行端末と、前記通信端末とにおいて、前記共同実行が可能なアプリケーションを同時に起動し、その入力及び出力を共有する共同実行を行うアプリケーション共同実行手段と、
を備えることを特徴とするアプリケーション共同実行端末。」

[補正後]
「【請求項1】
一以上の通信端末と通信可能に接続され、前記通信端末とアプリケーションの共同実行を行うためのアプリケーション共同実行端末であって、
前記通信端末に対して通話を発信する通話発信手段と、
前記発信した通話の着信により前記通信端末を認証する認証手段と、
前記アプリケーション共同実行端末上において起動されているアプリケーションと共同実行が可能なアプリケーションが、前記認証した通信端末において起動されていることを確認し、当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させるアプリケーション起動確認手段と、
前記アプリケーション共同実行端末と、前記通信端末とにおいて、前記共同実行が可能なアプリケーションを同時に起動し、その入力及び出力を共有する共同実行を行うアプリケーション共同実行手段と、
を備えることを特徴とするアプリケーション共同実行端末。」

3.平成29年3月3日付けでなされた拒絶理由通知の内容
当審において平成29年3月3日付けでなされた拒絶理由通知は、以下の拒絶の理由を含むものである。

「1.平成29年2月2日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記Aの点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



A.理由1.について
・備考
補正後の請求項1,8,9にはいずれにも、「当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させる」旨記載されている。
これに対して、請求人が補正の根拠としている本願の明細書段落【0056】には、「また、データ自体が既に両端末にある場合のみならず、他方の端末や所定のサーバからデータをダウンロードすることで、アプリケーションの実行が可能であってよい。」と記載されているのみであり、当該記載では、「データ」が「アプリケーション」自体を指すのか、「アプリケーション」で使用される「データ」を指すのかが不明であり、また、当該記載には、「アプリケーションがない場合」に「データをダウンロード」(アプリケーションを取得)することも、「当該アプリケーションを取得させる」ことが、「アプリケーション起動確認手段」、または、「共同実行が可能なアプリケーションが認証した通信端末において起動されていることを確認するステップ」において行われることも記載されていない。
したがって、本願の明細書段落【0056】には、「アプリケーション起動確認手段」、または、「共同実行が可能なアプリケーションが認証した通信端末において起動されていることを確認するステップ」において、「当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させる」ことは記載されていない。
そして他に、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」と記す。)には、「アプリケーション起動確認手段」、または、「共同実行が可能なアプリケーションが認証した通信端末において起動されていることを確認するステップ」において、「当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させる」ことを表す記載があるものとも認められない。
また、「アプリケーション起動確認手段」、または、「共同実行が可能なアプリケーションが認証した通信端末において起動されていることを確認するステップ」において、「当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させる」ことは、当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。」

4.請求人の主張
請求人は、上記3.の拒絶の理由に対し、平成29年5月12日に意見書を提出し、以下のとおり主張している。

「平成29年2月2日に提出の手続補正書の特許請求の範囲の記載に基づいて、この補正が、新規事項の追加ではないことについて説明します。
審判官殿は、「データ」が、「アプリケーション」自体を指すのか、「アプリケーション」で使用される「データ」を指すのかが不明であるとご指摘されました。
出願当初の明細書には、「選択アプリケーション共同実行開始モジュール59によって、まだ起動されていない場合には起動されるとともに、共同実行が開始される。」(段落番号0055)及び「データ自体が既に両端末にある場合のみならず、他方の端末や所定のサーバからデータをダウンロードすることで、アプリケーションの実行が可能であってよい。」(段落番号0056)が記載されております。これらの段落において、「データ」がアプリケーションを指すことは明らかであるとともに、「データ」をアプリケーションの意味以外で記載もしておりません。
したがいまして、「データ」は、「アプリケーション」自体を指すことは明確であるものと考えます。
出願当初の明細書の段落番号0056の記載において、共同実行可能なアプリケーションの説明として、「既に両端末にある場合のみならず、」との記載があります。この記載は、「アプリケーションがない場合」を前提にしていることは明らかです。そのため、「選択アプリケーション共同実行開始モジュール59」が、アプリケーションがない場合に、端末や所定のサーバからアプリケーションを取得することが記載されていることは、明らかであるものと考えます。
以上により、平成29年2月2日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとともに、発明の詳細な説明に記載されたものであるものと考えます。
これを参酌することで、本願発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすとともに、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものと考えます。」

5.当審の判断
上記3.の拒絶の理由(特許法第17条の2第3項)について
本願の当初明細書の段落【0055】?【0056】には、
「【0055】
また、発信を着信した通信端末50の表示部においても、図6と同様にアプリケーションアイコンの一覧が表示され、タップ可能であってよい。タップの結果を受け付けた通信端末50の共同実行アプリケーション選択モジュール60は、選択アプリケーション共同実行開始モジュール59によって、まだ起動されていない場合には起動されるとともに、共同実行が開始される。
【0056】
なお、ここで、共同実行可能なアプリケーションとは、両端末が同一のオペレーティングシステムで動作しており、アプリケーションに互換性がある場合のみならず、異なるオペレーティングシステムにおいて、同一のアプリケーションがそれぞれのプラットフォーム向けに提供されている場合も含まれる。また、データ自体が既に両端末にある場合のみならず、他方の端末や所定のサーバからデータをダウンロードすることで、アプリケーションの実行が可能であってよい。」と記載されているが、「アプリケーション共同実行端末上において、・・・通信端末において起動されていることを確認し、当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させるアプリケーション起動確認手段」は記載されておらず、当初明細書のその他の記載及び各図をみても、「アプリケーション共同実行端末上において、・・・通信端末において起動されていることを確認し、当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させるアプリケーション起動確認手段」は記載されていない。
また、「アプリケーション共同実行端末上において、・・・通信端末において起動されていることを確認し、当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させるアプリケーション起動確認手段」は、本願の当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
そして、たとえ、上記4.の平成29年5月12日に提出された意見書において請求人が主張するように、本願の当初明細書には、段落【0055】に「選択アプリケーション共同実行開始モジュール59によって、まだ起動されていない場合には起動されるとともに、共同実行が開始される。」及び段落【0056】に「データ自体が既に両端末にある場合のみならず、他方の端末や所定のサーバからデータをダウンロードすることで、アプリケーションの実行が可能であってよい。」と記載されており、これらの段落において、「データ」がアプリケーションを指すことは明らかであるとともに、「データ」をアプリケーションの意味以外で記載もしておらず、「データ」は、「アプリケーション」自体を指すことは明確であるものと認められ、また、本願の当初明細書の段落【0056】の記載において、共同実行可能なアプリケーションの説明として、「既に両端末にある場合のみならず、」との記載があり、「アプリケーションがない場合」を前提にしていることは明らかで、「選択アプリケーション共同実行開始モジュール59」が、アプリケーションがない場合に、端末や所定のサーバからアプリケーションを取得することが記載されていることは、明らかであるものと認められるとしても、本願の当初明細書の段落【0055】?【0056】には、「アプリケーション共同実行端末上において、・・・通信端末において起動されていることを確認し、当該アプリケーションがない場合、自身又は所定のサーバから当該アプリケーションを取得させるアプリケーション起動確認手段」が記載されているとは認められない。
したがって、本件補正は当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできず、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

6.むすび
以上のとおりであるから、上記2.の請求項1についての補正を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできず、本件補正は、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものということはできないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-07 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-05 
出願番号 特願2013-232905(P2013-232905)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 アプリケーション共同実行端末、アプリケーション共同実行方法、及び、アプリケーション共同実行端末用プログラム  
代理人 小木 智彦  

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