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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333761
審判番号 不服2017-2027  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-13 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2011-178694号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 39258号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年8月18日に出願したものであって,平成27年7月23日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出され,平成28年3月8日付けで拒絶理由(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)が通知され,これに対し同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月8日付けで同年5月16日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,それに対して,平成29年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成29年2月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年2月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?2の記載を含む補正であり,平成27年9月28日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

(補正前:平成27年9月28日付けの手続補正)
「【請求項1】
所定の契機に基づき抽選を行い,当該抽選により当選結果が得られた場合には遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機であって,
少なくとも1つの発光手段と,
少なくとも1つの音発生手段と,
所定条件の成立に基づき,前記発光手段を減光又は消灯した節電状態とする節電手段と,
前記節電手段による節電レベルを切換え可能かつ前記音発生手段の音量レベルを切換え可能な切換操作手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である:平成29年2月13日付け手続補正)
「【請求項1】
所定の契機に基づき抽選を行い,当該抽選により当選結果が得られた場合には遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機であって,
少なくとも1つの発光手段と,
少なくとも1つの音発生手段と,
所定条件の成立に基づき,前記発光手段を減光又は消灯した節電状態とする節電手段と,
複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能な切換操作手段とを備え,
前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されていることを特徴とする遊技機。」


2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1について,以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「切換操作手段」に関して,「前記節電手段による節電レベルを切換え可能かつ前記音発生手段の音量レベルを切換え可能」という記載を,「複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能」という記載にする補正。

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「節電手段」に関して,「前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されている」という記載を追加する補正。

(2)補正の目的等についての検討
ア 補正事項アは,「切換操作手段」における「節電レベル」及び「音量レベル」を切換えることについて,「複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベル」に切換「指定」可能と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イは,「節電手段」について「前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されている」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は,本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)の段落【0106】?【0111】,【0325】?【0345】,図11,35,36の記載に基づくものであるから,新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,上記「1.本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Gは,本願補正発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】
A 所定の契機に基づき抽選を行い,当該抽選により当選結果が得られた場合には遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機であって,
B 少なくとも1つの発光手段と,
C 少なくとも1つの音発生手段と,
D 所定条件の成立に基づき,前記発光手段を減光又は消灯した節電状態とする節電手段と,
E 複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能な切換操作手段とを備え,
F 前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されていること
G を特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の平成28年3月8日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-247543号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0060】
サブ制御装置としての演出制御装置40は,制御装置としてのCPU40a,ROM40b,RAM40c,入出力インタフェースや,変動表示装置41の液晶表示装置41aにおける表示を制御する画像用メモリとしてのRAMや,画像や映像データが記憶されたCGROM40dなどを含むビデオ回路,グラフィックプロセッサとしてのVDP40e(video display processor)を備えている。また,遊技盤1や該遊技盤1の前方を覆うクリア部材保持枠に設けられた装飾用の各種LED43などを駆動するドライバ40f,音の出力を制御する音源LSI40gを備えている。
・・・
【0062】
さらに,入出力インタフェースには,CPU40aから出力される各種の制御信号が入力され,これら制御信号は,該入出力インタフェースにより中継されて,図示しない出力ポート及びドライバ40fを介して各種LED43,可動演出装置の可動モータ44,情報表示装置160などに出力される。なお,CPU40aから出力される制御信号のうち,画像の制御に関する制御信号は,CPU40aからVDP40eに出力され,VDP40eから該制御信号に基づく画像データが液晶表示装置41aに出力される。また,音声の制御に関する制御信号は,CPU40aから音源LSI40gに出力され,音源LSI40gから該制御信号に基づく音声データがスピーカ145,157に出力される。」

(イ)「【0065】
また,普通変動入賞装置7に備えられた始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図の大当たり判定用乱数値を抽出してROM31cに記憶されている判定値と比較し,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理を行う。・・・
【0066】
そして,遊技制御装置30の遊技用マイクロコンピュータ31は,特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合は,特図表示器9に特別の結果態様を表示するとともに,特別遊技状態を発生させる処理を行う。この特別遊技状態を発生させる処理においては,例えば,大入賞口SOL10bにより特別変動入賞装置10の開閉扉10aを開放し,大入賞口内への遊技球の流入を可能とする制御を行う。」

(ウ)「【0081】
図7に示すように,省エネモード時処理では,まず,枠装飾装置141や遊技盤1に設けられた装飾用の各種LED43を消灯する処理(ステップS40)を行い,遊技の演出に対応した各種LED43の点灯を不能とする。その後,スピーカ145,157のボリュームを最小にする処理(ステップS41)を行い,変動表示コマンドがあるか否かの判定(ステップS42)を行う。すなわち,電気的装置をなす各種LED43,スピーカ145,157の状態を,消費電力を低減する状態とする。
・・・
【0088】
・・・また,特定のリーチ態様であるか否かの判定(ステップS45)において,特定のリーチ態様である場合(ステップS45;Yes)は,枠装飾装置141や遊技盤1に設けられた装飾用の各種LED43を点灯する処理(ステップS46)を行い,遊技の演出に対応した各種LED43の点灯を可能とする。その後,スピーカ145,157のボリュームを最大にする処理(ステップS47)を行い,変動表示ゲームが終了したか否かの判定(ステップS48)を行う。すなわち,電気的装置をなす各種LED43,スピーカ145,157の状態を,消費電力の低減を行わない通常モードと同等の状態とする。・・・
・・・
【0090】
終了した変動表示ゲームの結果が大当たりであるか否かの判定(ステップS49)において,大当たりでない場合(ステップS49;No)は,枠装飾装置141や遊技盤1に設けられた装飾用の各種LED43を消灯する処理(ステップS50)を行い,スピーカ145,157のボリュームを最小にする処理(ステップS51)を行った後,省エネモード時処理を終了する。すなわち,特定のリーチ状態の発生に伴い,一時的に通常モードと同等の状態としていた電気的装置をなす各種LED43,スピーカ145,157の状態を,再び消費電力を低減する省エネモードの状態に戻すようになっている。・・・
・・・
【0092】
以上のことから,演出制御装置40が,遊技中の電力状態を,電気的装置の消費電力の低減を行わない通常モード(通常電力状態)と,該通常電力状態よりも電気的装置の消費電力を低減する省エネモード(省電力状態)と,の何れかの電力状態で制御を行う電力制御手段をなす。」

(エ)「【0122】
次に,上述した実施形態の遊技機の第二変形例について図15,16を参照して説明する。なお,基本的には上述の実施形態の遊技機100と同様の構成を有しており,同様の構成や処理には同じ符号を付して詳細な説明を省略し,主に異なる部分について説明する。本変形例の遊技機は,省エネモード(省電力状態)において,消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択可能とされている。」

(オ)「【0123】
本変形例の遊技機は,遊技者が操作可能な箇所に選択SW147を備えており,この選択SW147の操作に基づく信号が,図15に示すように,演出制御装置40に入力されるようになっている。選択SW147は,例えば,選択ボタンと決定ボタンとを備え,変動表示装置41に表示される選択画面を用いて遊技者の選択操作を可能とするものである。すなわち,選択SW147が,遊技者が操作可能な選択操作手段をなす。
【0124】
このような遊技機においては,図16に示すように,演出制御装置40において消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する省エネ対象選択処理を行うようになっている。この省エネ対象選択処理では,まず,選択SW147がオンであるか否かの判定(ステップS90)を行う。この選択SW147がオンであるか否かの判定(ステップS90)では,選択SW147が操作されたかが判定される。選択SW147がオンであるか否かの判定(ステップS90)において,選択SW147がオンでない場合(ステップS90)は,省エネ対象選択処理を終了する。また,選択SW147がオンであるか否かの判定(ステップS90)において,選択SW147がオンである場合(ステップS90;Yes)は,枠LED43aの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS91)を行う。
【0125】
枠LED43aの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS91)では,選択SW147の操作により,クリア部材保持枠140に設けられた枠装飾装置141のLEDである枠LED43aの消灯が選択されたかを判定する。枠LED43aの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS91)において,枠LED43aの消灯が選択された場合(ステップS91;Yes)は,枠LED43aを消灯する処理(ステップS92)を行い,盤LED43bの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS93)を行う。また,枠LED43aの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS91)において,枠LED43aの消灯が選択されていない場合(ステップS91;No)は,盤LED43bの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS93)を行う。
【0126】
盤LED43bの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS93)では,選択SW147の操作により,遊技盤1に設けられた装飾用のLEDである盤LED43bの消灯が選択されたかを判定する。盤LED43bの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS93)において,盤LED43bの消灯が選択された場合(ステップS93;Yes)は,盤LED43bを消灯する処理(ステップS94)を行い,スピーカ音の低減が選択されたか否かの判定(ステップS95)を行う。また,盤LED43bの消灯が選択されたか否かの判定(ステップS93)において,盤LED43bの消灯が選択されていない場合(ステップS93;No)は,スピーカ音の低減が選択されたか否かの判定(ステップS95)を行う。
【0127】
スピーカ音の低減が選択されたか否かの判定(ステップS95)では,選択SW147の操作により,スピーカ音の低減が選択されたかを判定する。このスピーカ音の低減が選択されたか否かの判定(ステップS95)において,スピーカ音の低減が選択された場合(ステップS95;Yes)は,スピーカ145,157のボリュームを最小にする処理(ステップS96)を行い,省エネ対象選択処理を終了する。また,スピーカ音の低減が選択されたか否かの判定(ステップS95)において,スピーカ音の低減が選択されていない場合(ステップS95;No)は,省エネ対象選択処理を終了する。」

(カ)「【0129】
なお,各電気的装置の状態を通常モードと同等とするか,省エネモードと同等とするかの二段階に選択できるようにしたが,複数段階に調節できるようにして,より遊技者の好みに応じた省エネモードを実現できるようにしても良い。」

(キ)「【0130】
以上のことから,遊技者が操作可能な選択操作手段(選択SW147)を備え,電力制御手段(演出制御装置40)は,選択操作手段の操作に基づき,省電力状態において消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する選択手段(演出制御装置40)を備えたこととなる。」

上記記載事項(ア)?(キ)より,以下の事項が導かれる。
なお,(a)?(g)は本願補正発明の構成A?Gに対応した事項を示している。

(a)上記段落【0065】には「始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図の大当たり判定用乱数値を抽出してROM31cに記憶されている判定値と比較し,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理を行う。」と記載され,上記段落【0066】には「特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合は,・・・特別遊技状態を発生させる処理を行う」と記載され,上記段落【0122】には「遊技機100」と記載されているから,刊行物1には,始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図の大当たり判定用乱数値を抽出して,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理を行い,特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合は,特別遊技状態を発生させる処理を行う遊技機100が記載されているといえる。

(b)上記段落【0060】には「遊技盤1や該遊技盤1の前方を覆うクリア部材保持枠に設けられた装飾用の各種LED43」と記載され,上記段落【0125】には「クリア部材保持枠140に設けられた枠装飾装置141のLEDである枠LED43a」と記載され,上記段落【0126】には「遊技盤1に設けられた装飾用のLEDである盤LED43b」と記載されているから,刊行物1には,枠LED43a及び盤LED43bを含む各種LED43が記載されているといえる。

(c)上記段落【0062】には「スピーカ145,147」と記載されている。

(d)上記段落【0090】には「終了した変動表示ゲームの結果が大当たりであるか否かの判定(ステップS49)において,大当たりでない場合(ステップS49;No)は,枠装飾装置141や遊技盤1に設けられた装飾用の各種LED43を消灯する処理(ステップS50)を行い,スピーカ145,157のボリュームを最小にする処理(ステップS51)を行った後,省エネモード時処理を終了する。すなわち,特定のリーチ状態の発生に伴い,一時的に通常モードと同等の状態としていた電気的装置をなす各種LED43,スピーカ145,157の状態を,再び消費電力を低減する省エネモードの状態に戻すようになっている。」と記載され,上記段落【0092】には「演出制御装置40が,遊技中の電力状態を,電気的装置の消費電力の低減を行わない通常モード(通常電力状態)と,該通常電力状態よりも電気的装置の消費電力を低減する省エネモード(省電力状態)と,の何れかの電力状態で制御を行う電力制御手段をなす。」と記載され,上記段落【0129】には「各電気的装置の状態を通常モードと同等とするか,省エネモードと同等とするかの二段階に選択できるようにしたが,複数段階に調節できるようにして,より遊技者の好みに応じた省エネモードを実現できるようにしても良い。」と記載されているから,刊行物1には,各電気的装置(各種LED43,スピーカ145,157)の状態を複数段階に調節できるようにした省エネモードを実現する演出制御装置40であって,変動表示ゲームの結果が大当たりでない場合に各種LED43を消灯する処理を行って省エネモードの状態に戻す演出制御装置40が記載されているといえる。

(e)上記段落【0123】には「本変形例の遊技機は,遊技者が操作可能な箇所に選択SW147を備えており」と記載され,上記段落【0124】には「演出制御装置40において消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する省エネ対象選択処理を行う」と記載され,上記段落【0125】には「枠LED43aの消灯が選択された場合(ステップS91;Yes)は,枠LED43aを消灯する処理(ステップS92)を行い」と記載され,上記段落【0126】には「盤LED43bの消灯が選択された場合(ステップS93;Yes)は,盤LED43bを消灯する処理(ステップS94)を行い」と記載され,上記段落【0127】には「スピーカ音の低減が選択された場合(ステップS95;Yes)は,スピーカ145,157のボリュームを最小にする処理(ステップS96)を行い」と記載されているから,刊行物1には,省エネ対象選択処理のために,枠LED43aの消灯,盤LED43bの消灯及びスピーカ音の低減をそれぞれ選択する選択SW147が記載されているといえる。

(f)上記段落【0090】には「各種LED43,スピーカ145,157」と記載され,上記段落【0124】には「演出制御装置40において消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する省エネ対象選択処理を行う」と記載され,上記段落【0130】には「遊技者が操作可能な選択操作手段(選択SW147)を備え,電力制御手段(演出制御装置40)は,選択操作手段の操作に基づき,省電力状態において消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する選択手段(演出制御装置40)を備えた。」と記載されているから,刊行物1には,演出制御装置40は,選択SW147の操作に基づき,消費電力の低減の対象とする電気的装置(各種LED43,スピーカ145,157)を選択する省エネ対象選択処理を行うことが記載されているといえる。

(g)上記段落【0122】には「遊技機100」と記載されているから,刊行物1には,遊技機100が記載されているといえる。

上記記載事項(ア)?(キ)及び上記の認定事項(a)?(g)から,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「a 始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図の大当たり判定用乱数値を抽出して,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理を行い,特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合は,特別遊技状態を発生させる処理を行う遊技機100であって,
b 枠LED43a及び盤LED43bを含む各種LED43と,
c スピーカ145,147と,
d’各電気的装置(各種LED43,スピーカ145,157)の状態を複数段階に調節できるようにした省エネモードを実現する演出制御装置40であって,変動表示ゲームの結果が大当たりでない場合に各種LED43を消灯する処理を行って省エネモードの状態に戻す演出制御装置40と,
e 省エネ対象選択処理のために,枠LED43aの消灯,盤LED43bの消灯及びスピーカ音の低減をそれぞれ選択する選択SW147と,
f 演出制御装置40は,選択SW147の操作に基づき,消費電力の低減の対象とする電気的装置(各種LED43,スピーカ145,157)を選択する省エネ対象選択処理を行う
g 遊技機100」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(a)引用発明1の「始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力」,「特図の大当たり判定用乱数値を抽出して,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理」,「特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合」及び「特別遊技状態」は,それぞれ,本願補正発明の「所定の契機」,「抽選」,「当該抽選により当選結果が得られた場合」及び「遊技者にとって有利な特別遊技状態」に相当する。
したがって,引用発明1の「始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図の大当たり判定用乱数値を抽出して,特図変動表示ゲームの当たり外れを判定する処理を行い,特図変動表示ゲームの結果が大当たりの場合は,特別遊技状態を発生させる処理を行う遊技機100」は,本願補正発明の「所定の契機に基づき抽選を行い,当該抽選により当選結果が得られた場合には遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機」に相当する。

(b)引用発明1の「枠LED43a及び盤LED43bを含む各種LED43」は,本願補正発明の「少なくとも1つの発光手段」に相当する。

(c)引用発明1の「スピーカ145,147」は,本願補正発明の「少なくとも1つの音発生手段」に相当する。

(d’)引用発明1の「変動表示ゲームの結果が大当たりでない場合」及び「省エネモードの状態」は,それぞれ,本願補正発明の「所定条件の成立」及び「節電状態」に相当する。
しかしながら,引用発明1の「演出制御装置40」については,各種LED43を消灯することにより省エネモードの状態に戻すものではあるが,各種LED43を減光するか否かは不明である。
これらのことから,引用発明1の「各電気的装置の状態を複数段階に調節できるようにした省エネモードを実現する演出制御装置40であって,変動表示ゲームの結果が大当たりでない場合に各種LED43を消灯する処理を行って省エネモードの状態に戻す演出制御装置40」と本願補正発明の「所定条件の成立に基づき,前記発光手段を減光又は消灯した節電状態とする節電手段」とは,「所定条件の成立に基づき,前記発光手段を」「消灯した節電状態とする節電手段」である点で共通するといえる。

(e)引用発明1の「枠LED43aの消灯,盤LED43bの消灯及びスピーカ音の低減をそれぞれ選択する選択SW147」は,枠LED43aの消灯の選択(以下,「選択1」という。)及び盤LED43bの消灯の選択(以下,「選択2」という。)を行うことができるので,この選択1及び選択2によって,省エネモードにおける消費電力の低減の程度(節電レベル)が指定可能ということができる。
同様に,引用発明1の「選択SW147」は,スピーカ音の低減の選択(以下,「選択3」という。)を行うことができるので,この選択によりスピーカ音の音量の程度(音量レベル)が指定可能ということができる。
そして,引用発明1の選択SW147について,選択1,2,3のいずれかを行うことが他の選択を制限しないことは明らかであるので,選択SW147は,選択1,2,3のそれぞれを選択する,しないの全ての組み合わせの中から選択を行うことにより,結果として省エネモードにおける消費電力の低減の程度(節電レベル)及び省エネモードにおけるスピーカ音の音量の程度(音量レベル)を任意に指定可能であるといえる。
したがって,引用発明1の「省エネ対象選択処理のために,枠LED43aの消灯,盤LED43bの消灯及びスピーカ音の低減をそれぞれ選択する選択SW147」は,本願補正発明の「複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能な切換操作手段」に相当する。

(f)引用発明1の「演出制御装置40は,選択SW147の操作に基づき,消費電力の低減の対象とする電気的装置を選択する省エネ対象選択処理を行う」ことは,本願補正発明の「前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されている」ことに相当する。

(g)引用発明1の「遊技機100」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(g)から,本願補正発明と引用発明1とは,
[一致点]
「A 所定の契機に基づき抽選を行い,当該抽選により当選結果が得られた場合には遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させる遊技機であって,
B 少なくとも1つの発光手段と,
C 少なくとも1つの音発生手段と,
D’ 所定条件の成立に基づき,前記発光手段を消灯した節電状態とする節電手段と,
E 複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能な切換操作手段とを備え,
F 前記節電手段は,前記切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能に構成されている
G 遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
「節電手段」が「所定条件の成立に基づき,前記発光手段を」制御する「節電状態」に関して,
本願補正発明は「減光又は消灯した」状態であるのに対して,
引用発明1は消灯した状態であるが減光した状態が含まれるか不明である点。

(4)判断
ア 相違点について
上記段落【0129】に記載されるように,引用発明1の演出制御装置40は,各電気的装置(各種LED43,スピーカ145,157)の状態を複数段階に調節できるようにした省エネモードを実現するものである。
そして,本願出願時の遊技機の技術分野において,電気的装置である発光手段について,消費電力の低減の程度を複数段階に調節するため,減光(光量を低下)させることは,一例として,特開2010-268936号公報(【0110】・上記第1実施形態において複数段階の省電力モードを設けてもよい。具体的に言うと,省電力設定値が互いに異なる複数の省電力電源生成用抵抗を設け,選択された省電力電源生成用抵抗に応じて,枠用ランプ16a?16cの光量,スピーカ17a?17cの音量,及び,図柄表示装置61のバックライトの輝度が低下する度合いを異ならせてもよい。)に記載されているように周知(以下,「周知技術」という。)である。
引用発明1における電気的装置の状態を複数段階に調節するため,上記周知技術を適用し,省エネモードの状態において,枠LED43a又は盤LED43bを減光又は消灯させるようにして,上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書の「4.本願発明と引用文献に記載された発明の対比」において「(2)これに対し,本願発明1,2に係る切換操作手段は,「複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成されると共に,当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作によって前記節電手段による節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能」な構成を有するものである。
(3)これにより,本願発明1,2によれば,1つの切換操作手段を用いて,複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せのうちの1つの組合せを指定するといった一回の操作を行うだけで,節電手段による節電レベル及び音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能となる。結果として,作業性及び利便性を著しく向上させることができる。
例えば本願の図11に示す音量節電切換スイッチSWのように,切換操作手段が目盛「01」を指し,音量レベルが「0」かつ節電レベルが「1」に設定されている状態から,音量レベルが「0」の状態は維持したままで,節電レベルのみを「3」に切換えたい場合には,切換操作手段が目盛「03」を指すように操作するだけでよい。
つまり,本願発明1,2は,節電手段による発光手段の節電レベルを個別に切換え可能な操作手段と,音発生手段の音量レベルを個別に切換え可能な操作手段とが1つの切換操作手段として一体化された構成となっている。 」と主張している。

しかしながら,本願補正発明の「当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作」が一回の操作であることや,本願補正発明の「切換操作手段」が節電手段による発光手段の節電レベルを個別に切換え可能な操作手段と,音発生手段の音量レベルを個別に切換え可能な操作手段とが1つの切換操作手段として一体化されていることは,本件補正後の請求項1の記載からは把握できない。

よって,請求人の主張は,本件補正後の請求項1の記載に基づくものではないので,採用することはできない。

仮に,本願補正発明の「当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作」が一回の操作を行うだけで,節電手段による節電レベル及び音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能なものであったとしても,その程度のことは当業者が容易になし得る程度のことにすぎない。

(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?2に係る発明は,平成27年9月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。

1 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明1の認定については,上記「第2[理由]3(2)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]1」で検討した本願補正発明から,実質的な変更とならない特定事項を除き,「切換操作手段」に関し「複数の節電レベルと複数の音量レベルの全ての組合せを切換え指定可能に構成される」という限定及び「当該全ての組合せのうちの1つの組合せを指定する操作」によって「節電レベル及び前記音発生手段の音量レベルをそれぞれ複数レベルのうちの任意のレベルに切換え指定可能」という記載を省くとともに,「節電手段」に関し「前記節電手段は,切換操作手段により指定された節電レベルへの切換え処理を実行可能」という記載を省いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明1とは,上記「第2[理由]3(3)」に示した[相違点]のみで相違し,それについては,上記「第2[理由]3(4)」に示したのと同様の理由により,引用発明1及び周知技術から当業者が容易に発明をすることのできたものである。

3 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-15 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-06 
出願番号 特願2011-178694(P2011-178694)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 覚士有賀 綾子  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 長井 真一
後藤 順也
発明の名称 遊技機  
代理人 川口 光男  

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