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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333763
審判番号 不服2017-2068  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-13 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2015-158298号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月10日出願公開、特開2015-221339号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月5日に出願した特願2013-184030号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年8月10日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月15日)、それに対し、平成29年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年2月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正により、平成28年9月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「外部に送出する信号を中継する外部端子装置を備えた遊技機において、
前記外部端子装置は、少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能にしたプッシュターミナルと、前記プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
前記プッシュターミナルは、挿入するリード線の数に対応した導電性端子部を内部に配設したケース本体部と、前記導電性端子部に対応して配設した操作レバーと、を有し、
前記操作レバーは、前記導電性端子部に対応して設けられた操作部と、前記操作部の操作に基づき、前記ケース本体部内に挿入された前記リード線を前記導電性端子部に押圧する押圧部と、を有し、
前記操作部は、互いに隣接し、前記支持基板の上面からの高さ位置が異なるように、かつ、前記支持基板の一端部側に延出して構成され、
前記ケース本体部は、前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部を有するとともに、前記平面部に前記リード線の貫通孔を備え、
前記支持基板の、前記操作部が延出する前記支持基板の前記一端部側とは反対側の他端部側において、少なくとも前記平面部よりも高い壁部を設けたことを特徴とする遊技機。」
は、審判請求時に提出された平成29年2月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「A 外部に送出する信号を中継する外部端子装置を備えた遊技機において、
B 前記外部端子装置は、少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能にしたプッシュターミナルと、前記プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
C 前記プッシュターミナルは、挿入するリード線の数に対応した導電性端子部を内部に配設したケース本体部と、前記導電性端子部に対応して配設した操作レバーと、を有し、
D 前記操作レバーは、前記導電性端子部に対応して設けられた操作部と、前記操作部の操作に基づき、前記ケース本体部内に挿入された前記リード線を前記導電性端子部に押圧する押圧部と、を有し、
E 前記操作部は、互いに隣接し、前記支持基板の上面からの高さ位置が異なるように、かつ、前記支持基板の一端部側に延出して構成され、
F 前記ケース本体部は、前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部を有するとともに、前記平面部に前記リード線の貫通孔を備え、
G 前記支持基板は、収納部に収納されるものであり、
H 前記収納部は、底板と、複数の側板によって構成され、
I 前記複数の側板は、前記支持基板の一端部側に配置される第1の側板と、前記支持基板の他端部側に配置される第2の側板と、を含み、
J 前記第1の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成され、
K 前記第2の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも短くなるように構成されていることを特徴とする
L 遊技機。」
に補正がなされた(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、A?Lは、当審にて分説して付与した。)。

2.補正の目的
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の側板」について、支持基板の一端部側に配置される第1の側板と、支持基板の他端部側に配置される第2の側板とを含むものに特定するとともに、第1の側板の、底板側の端部から他端部までの長さを、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなると限定するとともに、第2の側板の、底板側の端部から他端部までの長さを、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも短くなると限定するものであって、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成29年2月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)先願に明細書等に記載された事項
これに対して、原出願の出願の日前の他の特許出願であって、原出願の出願後に出願公開がされた特願2013-135908号(特開2015-8865号公報)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には「遊技機」の発明に関し、以下の事項が図面とともに記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)
「【請求項1】
支持体に対して前方側に開閉可能に支持される開閉体と、該開閉体の背面側に設けられ、外部機器の配線を接続することにより遊技機に関する情報を遊技機外部に出力可能とする外部出力手段とを備えた遊技機において、・・・」

(イ)
「【0009】
以下、本発明の実施形態として、遊技機の一種であるパチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」という)を詳細に説明する。」

(ウ)
「【0079】
パチンコ機10は、図4に示すように、外枠11に対して前方側に開閉可能に支持される遊技機本体12を備え、遊技機本体12における裏パックユニット15の背面側に外部端子板ユニット203が設けられている。外部端子板ユニット203は、外部機器としての管理装置等にパチンコ機10に関する情報を出力するための装置である。」

(エ)
「【0100】
外部端子板ユニット203は、図16に示すように、複数の端子台343が搭載された外部出力基板331と、・・・を備えている。・・・
【0101】
外部出力基板331は、横長略矩形状のプリント基板341を主体とし、プリント基板341上に、入力側のコネクタ342と、複数の端子台343と、複数のフォトモスリレー344とを備えている。端子台343は、外部に出力される情報の数に対応した数分設けられ、本実施形態においては例えば13種類の情報出力が可能なように13個設けられている。
【0102】
入力側のコネクタ342は、複数の端子が一列に並んで設けられ、その端子に接続される配線を介して主制御基板に電気的に接続され、パチンコ機10に関する情報に対応した各種信号が外部出力基板331に入力される。コネクタ342に対して端子台343とフォトモスリレー344とは、外部出力基板331に入力された信号を、フォトモスリレー344を介して端子台343に内蔵される出力端子351を通じて信号出力可能に接続される。・・・」

(オ)
「【0104】
端子台343は、2つの差込部302が設けられる本体部352と、2つの操作レバー353とが一纏めに一体化された部品を一部品とし、2つの差込部302に接続される配線の導通状態がフォトモスリレー344によって各情報に対応して開閉されることにより外部機器に情報が出力される。」

(カ)
「【0106】
本体部352には、プリント基板341から離れた位置にてプリント基板341において端子台343が搭載された面と同一方向を向く天面部361と、・・・が設けられる。本体部352は、天面部361と側面部362とに囲われて中空箱状をなしている。天面部361には、外部機器の配線を差し込むために本体部352の内外を貫通するようにして差込部302が設けられている。
【0107】
本体部352により形成される内部空間には、図17(a)に示すように、金属製の出力端子351が2つの操作レバー353のそれぞれに対応して設置固定されている(固定構造は図示省略)。出力端子351は、操作レバー353の一部分が差込部302に対する内部空間側において出力端子351側に移動し、操作レバー353と出力端子351との間に配線を挟み込み可能に設けられている。また、操作レバー353を基準として出力端子351が位置する側とは反対側には付勢手段としてのコイルバネ354が圧縮状態にして設けられ、このコイルバネ354が本体部352のバネ支持部363と操作レバー353との間に挟まれた状態で配置されている。このコイルバネ354によって、操作レバー353は、出力端子351が位置する側に常には付勢され、差込部302内に挿入された配線の先端部分を操作レバー353の一部と出力端子351とで挟み込んで支持する接続状態とされている。・・・
【0108】
操作レバー353は、回動軸371から離間した位置において本体部352により形成される開口部から外方に突出し、作業者によって操作可能とされる差込操作部372を有している。
【0109】
・・・作業者がコイルバネ354の付勢力に抗して差込操作部372をプリント基板341に近づく側に押し込むことにより、操作レバー353の本体部352が出力端子351から離間し、また、差込部302の貫通穴が開放される方向側に移動して、差込部302に対しての配線の抜き差しが可能な操作状態とされる(図17(b)の状態)。・・・
【0110】
1つの端子台343に設けられる2つの差込操作部372は、プリント基板341からの距離に相当する高さ位置を異ならせて設定されている。このため、複数の差込操作部372が横方向に並んで配置される状況において隣り合う差込操作部372の間隔を、プリント基板341の向く方向において離間させることができるので、たとえ、操作レバー353の幅を狭く形成し、また、操作レバー353の間隔を狭く設定したとしても、操作レバー353の操作はし易いものにして端子台343を小型に形成することができる。
・・・」

(キ)
「【0117】
・・・プリント基板341の裏面側には、端子台343等を固定するための端子の先端部分および半田が突出し、・・・。」

(ク)
パチンコ機の背面の断面図である図14、図15(a)、図15(b)および外部端子板ユニットを上下方向に分解した斜視図である図16から、複数の差込操作部372が横方向に並んで配置され、差込操作部372の先端が、横長略矩形状のプリント基板341の下側の端部側を向いて延出している態様をみることができる。

(ケ)
外部端子板ユニットを上下方向に分解した斜視図である図16から、天面部361が四角形状の平面であり、天面部361がプリント基板341と略平行である態様をみることができる。

(コ)
パチンコ機の背面の断面図である図14、図15(a)および図15(b)より、前側上面部312の後端部から鉛直をなす壁部が下方向に向けて形成され、該壁部の下端から平面状の端子板取付部311が後側の斜め下側に向けて連続して形成され、その端子盤取付部311の下端から、前側上面部312に対して後側に一段下がった下段を形成する後側上面部313が後ろ方向に延出するように形成され、プリント基板341が、鉛直をなす壁部、端子板取付部311および後側上面部313の3者に囲まれた部分に落とし込まれ、プリント基板341の上側の端部が鉛直をなす壁部側に配置され、プリント基板341の下側の端部が後側上面部313側に配置された態様をみることができる。

(サ)
斜視図である図13、図16より、背面方向から見て左右方向でのプリント基板341の長さに亘って、前側上面部312の後端部から下方向に向けて形成された鉛直をなす壁部、該壁部の下端から後側の斜め下側に向けて連続して形成された端子板取付部311、その端子盤取付部311の下端から後ろ方向に延出するように形成され前側上面部312に対して後側に一段下がった下段を形成する後側上面部313が、それぞれ設けられた態様をみることができる。

(シ)
パチンコ機の背面の断面図である図15(a)および図15(b)より、断面視において、プリント基板341が、鉛直をなす壁部、端子板取付部311および後側上面部313の3者に囲まれた部分に落とし込まれた状態において、上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さが、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも短い態様をみることができる。
また、同図より、プリント基板341が、鉛直をなす壁部、端子板取付部311および後側上面部313の3者に囲まれた部分に落とし込まれた状態において、後側上面部313の前後方向の奥行きが、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも長い態様もみることができる。

(ス)
後方から見た裏パックユニットの右上側部分の斜視図である図12(a)(b)および図13(a)(b)、図16より、上面部312と端子板取付部311の間の鉛直をなす壁部の高さを、外部出力基板331のプリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って略同一の高さとし、後側上面部313の前後方向の奥行きを、外部出力基板331のプリント基板341の左右方向に亘って変化させる態様をみることができる。

ここで、上記(コ)?(ス)から、以下の事項が導かれる。

上記(コ)に示された、断面図である図14、図15(a)および図15(b)からみることができる、鉛直をなす壁部、端子板取付部311および後側上面部313の3者に囲まれた部分に落とし込まれ、プリント基板341の上側の端部が垂直部をなす壁部側に配置され、プリント基板341の下側の端部が後側上面部313側に配置された構成と、上記(サ)に示された、斜視図である図13、図16よりからみることができる、左右方向でのプリント基板341の長さに亘って、前側上面部312の後端部から下方向に向けて形成された鉛直をなす壁部、該壁部の下端から後側の斜め下側に向けて連続して形成された端子板取付部311、その端子盤取付部311の下端から後ろ方向に延出するように形成され、前側上面部312に対して後側に一段下がった下段を形成する後側上面部313がそれぞれ設けられた構成を合わせると、以下の(セ)?(タ)の事項が導かれる。

(セ)プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれること。

(ソ)プリント基板341が落とし込まれる部分は、前側上面部312の後端部から下方向に向けて形成された鉛直をなす壁部、該壁部の下端から後側の斜め下側に向けて連続して形成された平面状の端子板取付部311、その端子盤取付部311の下端から後ろ方向に延出するように形成され前側上面部312に対して後側に一段下がった下段を形成する後側上面部313の3者に囲まれた部分であること。

(タ)プリント基板341の上側の端部に、鉛直をなす壁部を配置し、プリント基板341の下側の端部に、後側上面部313を配置すること。

また、上記(ス)によれば、「上面部312と端子板取付部311の間」の「鉛直をなす壁部」は、外部出力基板331のプリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って略同一の高さであり、その高さを変化させていないのだから、上記(シ)における断面視での「上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さが、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも短い」との構成は、特定の断面のみにいえる構成というわけではなく、プリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って当てはまる構成ということができるから、上記(セ)と合わせて以下の(チ)の事項が導かれる。

(チ)プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態において、プリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って、上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さが、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも短い。

以上を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。(a?lは、本願補正発明のA?Lに対応させて当審にて付与した。)。

(先願発明)
「a 外部機器の配線を接続することにより遊技機に関する情報を遊技機外部に出力可能とする外部出力手段を備えた遊技機において、遊技機には、外部端子板ユニット203が設けられ、外部端子板ユニット203は外部出力基板331を備え、外部に情報出力可能なように外部出力基板331に入力された信号を信号出力可能とし(上記(ア)?(エ)参照)、
b 外部出力基板331は、横長略矩形状のプリント基板341を主体とし、プリント基板341上に複数の端子台343を固定して備え(上記(エ)、(キ)参照)、
端子台343は、2つの差込部302が設けられる本体部352と、2つの操作レバー353とが一纏めに一体化された部品を一部品とし(上記(オ)参照)、
本体部352には天面部361が設けられ、天面部361には、外部機器の配線を差し込むために差込部302が設けられ(上記(カ)参照)、
c 端子台343の本体部352により形成される内部空間には、金属製の出力端子351が設置固定され、金属製の出力端子351には2つの操作レバー353のそれぞれが対応し、操作レバー353と出力端子351との間に配線を挟み込み可能とし(上記(カ)参照)、
d コイルバネ354によって、操作レバー353は出力端子351が位置する側に常に付勢され、差込部302内に挿入された配線の先端部分を操作レバー353の一部と出力端子351とで挟み込んで支持する接続状態とし(上記(カ)参照)、
操作レバー353は作業者によって操作可能とされる差込操作部372を有し(上記(カ)参照)、
e 差込操作部372が横方向に並んで配置される状況において、2つの差込操作部372は、プリント基板341からの距離に相当する高さ位置を異ならせて設定され(上記(カ)参照)、
差込操作部372は横方向に並んで配置され、差込操作部372の先端は横長略矩形状のプリント基板341の下側の端部側を向いて延出し(上記(カ)、(ク)参照)、
f 本体部352に設けられる天面部361は、プリント基板341から離れた位置にて、プリント基板341において端子台343が搭載された面と同一方向を向き、プリント基板341と略平行をなす四角形状の平面であり(上記(カ)、(ケ)参照)、
配線を差し込むための差込部302は、天面部361に、本体部352の内外を貫通するように設け(上記(カ)参照)、
g プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれ(上記(セ)参照)、
h プリント基板341が落とし込まれる囲まれた部分は、前側上面部312の後端部から下方向に向けて形成された鉛直をなす壁部、該壁部の下端から後側の斜め下側に向けて連続して形成された平面状の端子板取付部311、その端子盤取付部311の下端から後ろ方向に延出するように形成され前側上面部312に対して後側に一段下がった下段を形成する後側上面部313の3者に囲まれた部分であり(上記(ソ)参照)、
i プリント基板341の上側の端部に、鉛直をなす壁部を配置し、プリント基板341の下側の端部に、後側上面部313を配置し(上記(タ)参照)、
j プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態において、断面視において後側上面部313の前後方向の奥行きをプリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも長くし、後側上面部313の前後方向の奥行きは外部出力基板331のプリント基板341の左右方向に亘って変化させ(上記(シ)、(ス)、(セ)参照)、
k プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態において、プリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って、上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さを、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも短くした(上記(チ)参照)、
l 遊技機(上記(ア)、(イ)参照)。」

(2)対比
本願補正発明と先願発明とを、分説に従い対比する(対比の見出しとしての(a)?(l)は先願発明の分説構成と対応させた。)。

(a)先願発明における構成aの「外部出力基板331」は、外部に情報出力可能なように、「入力された信号を信号出力可能」としているのだから、本願補正発明における「外部に送出する信号を中継する外部端子装置」に相当する。

(b)先願発明における構成bの「配線」、「プリント基板341」は、それぞれ本願補正発明の「リード線」、「支持基板」に相当する。
また、先願発明における構成bの「端子台343」は、その本体部352の天面部361に設けられた2つの差込部302に外部機器の配線を差し込んでいるのだから、本願補正発明の「少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能プッシュターミナル」と「少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能」にした「ターミナル」である点で共通する。そして、先願発明における「端子台343」が本願補正発明の「プッシュターミナル」に相当するといえるか否かについては、以下(d)にて説示をすることとする。

(c)先願発明における構成cの「金属製の出力端子351」、「操作レバー353」は、それぞれ本願補正発明の「導電性端子部」、「操作レバー」に相当する。そして、先願発明における構成bのごとく「操作レバー353と出力端子351との間に配線を挟み込み可能」としているのだから、「金属製の出力端子351」が、本願補正発明の構成Cのごとく「リード線の数に対応」した「導電性端子部」となっていることは明らかである。
また、先願発明の「本体部352」は、「内部空間」を形成していることから、本願補正発明の「ケース本体部」に相当する。

(d)先願発明における構成dの「差込操作部372」は本願補正発明の「操作部」に相当する。
また、先願発明における構成dの「操作レバー353の一部」は、出力端子351が位置する側に常に付勢され、配線の先端部分をと出力端子351とで挟み込んで支持しているのだから、当該「操作レバー353の一部」は、本願補正発明の「リード線を導電性端子部に押圧する押圧部」に相当する。
そして、先願発明の「端子台343」は、「操作レバー353の一部」で配線を「押圧」して支持しているのだから、本願補正発明の「プッシュターミナル」に相当するものといえる。

(e)先願発明における構成eの「差込操作部372が横方向に並んで配置される状況」は本願補正発明における「操作部」が「互いに隣接し」た状態に相当する。
また、先願発明における構成eの「差込操作部372」を「プリント基板341からの距離に相当する高さ位置を異ならせて設定」することは、本願補正発明の「操作部」を「支持基板の上面からの高さ位置が異なるように」構成することに相当する。
また、先願発明における構成eの「プリント基板341の下側の端部側」は本願補正発明の「一端部側」に相当する。
そして、先願発明における構成eの「差込操作部372」について「本体部352により形成される開口部から外方に突出して横方向に並んで配置され、差込操作部372の先端は横長略矩形状のプリント基板341の下側の端部側を向いて延出」させることは、本願補正発明の「操作部」を、「支持基板の一端部側に延出して構成」することに相当する。

(f)先願発明における構成fの「本体部352に設けられる天面部361」は、「プリント基板341において端子台343が搭載された面と同一方向を向き、プリント基板341と略平行をなす四角形状の平面」であることから、本願補正発明における「前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部」に相当する。
また、先願発明における構成fの「配線を差し込むための差込部302」を「天面部361に本体部352の内外を貫通するように設け」ることは、本願補正発明の「平面部」に「リード線の貫通孔を備え」ることに相当する。

(g)先願発明における構成gの「囲まれた部分」、「落とし込まれ」はそれぞれ本願補正発明の「収納部」、「収納される」に相当する。

(h)先願発明における構成hの「平面状の端子板取付部311」は本願補正発明の「底板」に相当するとともに、先願発明における「鉛直をなす壁部」および「後側上面部313」は両者で本願補正発明の「複数の側板」に相当する。

(i)先願発明の構成iにおける「鉛直をなす壁部」および「後側上面部313」は両者で本願補正発明の「複数の側板」に相当するとともに、それぞれ本願補正発明における「第2の側板」、「第1の側板」に相当するものである。
そして、先願発明の構成iにおける「プリント基板341の上側の端部」に配置される「鉛直をなす壁部」は、本願補正発明の「支持基板の他端部側に配置される第2の側板」に相当し、先願発明の構成iにおける「プリント基板341の下側の端部」に配置される「後側上面部313」は本願補正発明の「支持基板の一端部側に配置される第1の側板」に相当する。

(j)先願発明における構成jの「後側上面部313の前後方向の奥行き」は、本願補正発明の「第1の側板」の「底板側の端部から他端部までの長さ」に相当する。
また先願発明における構成jの「プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さ」は本願補正発明における「支持基板」の上面側から「四角形状の平面部」までの距離に相当する。
また、先願発明における構成jの「プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態」は、本願補正発明の「支持基板」が「収納部に収納されている状態」に相当する。

(k)先願発明における構成kの「上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さ」は、本願補正発明の「第2の側板」の「底板側の端部から他端部までの長さ」に相当する。また先願発明における構成kの「プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さ」は本願補正発明における「支持基板」の上面側から「四角形状の平面部」までの距離に相当する。
また、先願発明における構成kの「プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態」は、本願補正発明の「支持基板」が「収納部に収納されている状態」に相当する。
そうすると、先願発明における構成kの「プリント基板341は全体が、囲まれた部分に落とし込まれた状態において、プリント基板341の左右方向の長さ全体に亘って、上面部312と端子板取付部311の間の壁部における端子板取付部311の表面から上面部312までの長さを、プリント基板341の表面から天面部361までの間の長さよりも短くした」との構成は、本願補正発明の「前記第2の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも短くなるように構成されている」に相当する。

してみると、上記(a)?(k)によれば、本願補正発明と先願発明は、以下の点で一致し、また以下の点で一応の相違がみられる。

(一致点)
A 外部に送出する信号を中継する外部端子装置を備えた遊技機において、
B 前記外部端子装置は、少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能にしたプッシュターミナルと、前記プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
C 前記プッシュターミナルは、挿入するリード線の数に対応した導電性端子部を内部に配設したケース本体部と、前記導電性端子部に対応して配設した操作レバーと、を有し、
D 前記操作レバーは、前記導電性端子部に対応して設けられた操作部と、前記操作部の操作に基づき、前記ケース本体部内に挿入された前記リード線を前記導電性端子部に押圧する押圧部と、を有し、
E 前記操作部は、互いに隣接し、前記支持基板の上面からの高さ位置が異なるように、かつ、前記支持基板の一端部側に延出して構成され、
F 前記ケース本体部は、前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部を有するとともに、前記平面部に前記リード線の貫通孔を備え、
G 前記支持基板は、収納部に収納されるものであり、
H 前記収納部は、底板と、複数の側板によって構成され、
I 前記複数の側板は、前記支持基板の一端部側に配置される第1の側板と、前記支持基板の他端部側に配置される第2の側板と、を含み、
J′前記第1の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、特定の断面視においては前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成され、
K 前記第2の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも短くなるように構成されている
L 遊技機。

(一応の相違点)
本願補正発明における構成Jでは、第1の側板は、底板側の端部から他端部までの長さが、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成されているのに対し、先願発明における構成jでは、特定の断面視でみるとそのような長さ関係を達成しているものの、先願発明における「後側上面部313」(本願補正発明における第1の側板に相当)は、その前後方向の奥行きを支持基板の長さ方向に亘って変化させており、第1の側板として上記構成のようになっているか不明である点。

(3)一応の相違点についての検討
本願補正発明において、第1の側板の、底板側の端部から他端部までの長さを、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成することの技術的意義について、本願の明細書をみると、以下の記載がある。

「【0015】
本発明に係る遊技機では、支持基板を傾斜させた状態で支持することができ、支持基板上に搭載しているプッシュターミナルも傾斜した状態に配することができる。そして、本発明では、隣接する操作レバーの操作部における支持基板からの高さ位置を異ならせたことによって奏する効果を備えたまま、更にその効果を高めることができ、対応する各操作部に対して確実にしかも容易に押圧操作を行える。」
「【0177】
しかも、上方側に配設されたプッシュターミナル19b、19d、19f、19h、19jにおける操作部26a、27aは、外部操作装置18を傾斜させたことによる効果をそれほど享受できない場合があったとしても、下方側に配設されたプッシュターミナル19a、19c、19e、19g、19iにおける操作部26a、27aが、操作部26a、27aを操作する側に突出することによって奏される効果が高いので、外部操作装置18としては、操作部26a、27aに対する押圧操作の操作性を向上させることができる。」
また、平成29年2月13日付けで提出された審判請求書の「6.本願発明が特許されるべき理由」をみると、以下の記載がある。
「(2)これにより、本願請求項1の発明は、第1の側板によって操作部や貫通孔への誤操作を防止することができるのみならず、第2の側板によって操作部や貫通孔へのアクセスが妨げられない、すなわち、操作性を確保することができるという格別の効果を奏するものとなっております。」
これら明細書の記載及び審判請求人の主張を総合すると、本願補正発明の構成Jを採用する技術的意義は、支持基板を傾斜させた状態で支持して、支持基板上に搭載しているプッシュターミナルも傾斜した状態に配することで、操作部に対する押圧操作の操作性を向上させ、第1の側板によって操作部や貫通孔への誤操作を防止することにあると、一応いうことができる。

そこで上記主張をふまえて本願補正発明をみてみる。本願補正発明における構成Jは、「第1の側板」について「底板側の端部から他端部までの長さ」を定義しているものであって、「底板側の端部から他端部までの長さ」を定義するとただちに支持基板の傾斜が決まるというものでないことから、本願補正発明の構成Jが、支持基板の傾斜度を定義しているとみるべき事情はない。
また、本願補正発明における構成Jでは、支持基板から第1の側板の他端部(以下、単に「他端部」という)までの長さを定義しているわけでもなければ、操作部から他端部までの長さを定義しているわけでもない。そうすると、本願補正発明の構成Jによれば、支持基板と他端部がほとんど一致している場合や、操作部と他端部がほとんど一致している場合がある一方、支持基板や操作部から他端部まで大きな長さが設定されて、他端部が支持基板や操作部から大きく突出する場合があることも明らかである。
したがって、本願補正発明における構成Jによって審判請求人が主張するような効果を奏するものとはいいがたい。
そうすると、「第1の側板」について「底板側の端部から他端部までの長さ」を定義した本願補正発明の構成Jの「第1の側板は、前記底板側の端部から他端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成」との構成は、課題解決の具体化手段における微差というべきものであって、新たな効果を奏する構成とはいえないものである。

よって、先願発明において、先願発明における「後側上面部313」(本願補正発明における第1の側板に相当)について、底板側の端部から他端部までの長さを、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成することは、設計上の微差というべきものである。

(4)まとめ
してみると、本願補正発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

4.補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項の規定において準用する同法126条第7項の規定に適合しないものであり、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成29年2月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年9月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「A 外部に送出する信号を中継する外部端子装置を備えた遊技機において、
B 前記外部端子装置は、少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能にしたプッシュターミナルと、前記プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
C 前記プッシュターミナルは、挿入するリード線の数に対応した導電性端子部を内部に配設したケース本体部と、前記導電性端子部に対応して配設した操作レバーと、を有し、
D 前記操作レバーは、前記導電性端子部に対応して設けられた操作部と、前記操作部の操作に基づき、前記ケース本体部内に挿入された前記リード線を前記導電性端子部に押圧する押圧部と、を有し、
E 前記操作部は、互いに隣接し、前記支持基板の上面からの高さ位置が異なるように、かつ、前記支持基板の一端部側に延出して構成され、
F 前記ケース本体部は、前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部を有するとともに、前記平面部に前記リード線の貫通孔を備え、
G 前記支持基板は、収納部に収納されるものであり、
H 前記収納部は、底板と、複数の側板によって構成され、
I′前記複数の側板のうちの1つの側板は、その端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成されていることを特徴とする
L 遊技機。」
(A?I′、Lは、当審にて分説して付与した。)。

2.引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-285003号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に送出する信号を中継するプッシュターミナルを備える遊技機用外部端子板において、
前記プッシュターミナルは、
少なくとも二つのリード線挿入穴が形成されたケース本体部と、
前記リード線挿入穴に対応して前記ケース本体部に設けられた導電性の端子部と、
前記端子部に対応して、前記ケース本体部に押動自在に設けられた操作部と、
前記端子部に対応して設けられた、前記操作部の押動に連動して動き、前記リード線挿入穴に挿入されたリード線を前記端子部に押圧するための押圧部と、
前記リード線挿入穴に挿入されるリード線を前記端子部に押圧するように前記押圧部を附勢する附勢手段と、
を具備し、
前記操作部は、前記附勢手段の附勢に逆らって前記押圧部と前記端子部との間にリード線が挿入可能となるように、前記押圧部と前記端子部との間隔を広げるためのものであり、且つ隣り合う前記操作部は、前記ケース本体部の底面からの距離が異なるように形成されていることを特徴とする遊技機用外部端子板。」

(イ)
「【0005】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、プッシュターミナルの操作性を損なうことなく、小型化することができる遊技機用外部端子板を提供することを目的とするものである。」

(ウ)
「【0016】
・・・。外部端子板40は、図4及び図5に示すように、基板41上に搭載された、1個の入力側のコネクタCN1と、6個の出力側のコネクタCN2?7と、・・・とを備える。」

(エ)
「【0043】
・・・
40 外部端子板
41 外部端子板の基板」

(オ)
「【0017】
図6は本実施形態の出力側のターミナルCN2?7に使用されるプッシュターミナル100の概略正面図、・・・である。」

(カ)
「【0022】
・・・また、本実施形態の6個のプッシュターミナル100は、各プッシュターミナルの固定用突起部102と端子部の足部1221a,1221bを基板41に形成された穴に嵌め込み、足部1221a,1221bを基板41に形成された配線パターンに半田付けすることにより基板41に固定される。」

(キ)
「【0020】
・・・レバー部123は端子部122に対応して設けられ、人が押圧する部分であるケース本体部の外部に露出している操作部1231と、リード線挿入穴121に挿入されたリード線を端子部122の接触部1222に押し付けるための押圧部1232と、レバー部をケース本体部に回動自在に取り付けるための軸部1233と、・・・を備えている。」

(ク)
「【0019】
各接続端子セット120は、ケース本体部101の上部に形成されたリード線挿入穴121と、・・・を備える。」

(ケ)
「【0024】
また、本実施形態のプッシュターミナルは、図4に示すように、6個のプッシュターミナルを直列的に連結して使用する場合でも、隣り合うレバー部の操作部の高さが異なるので、各レバー部の操作部を押し下げるときに、隣り合う他のレバー部の操作部を同時に押し下げてしまうことはない。」

(コ)
図4には、プッシュターミナル100の操作部が基板の一端部側に延出した態様をみることができる。

(サ)
図11より、ケース本体部101の上面が四角形状の平面であることをみることができるとともに、当該上面にリード線挿入穴を形成した態様をみることができる。また図10より、ケース本体部101の上面と底面が略平行である態様をみることができる。

(シ)
図10?図13には、プッシュターミナル100のケース本体部101の底面から固定用突起部102と端子部の足部1221a,1221bを突出させた態様をみることができる。

そして、上記記載事項(ア)?(ケ)並びに図面に記載された事項(コ)?(シ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(a?f、lは、本願発明のA?F、Lに対応させて付与した。)。

(引用発明1)
「a 外部に送出する信号を中継する遊技機用外部端子板を備えた遊技機において(上記(ア)参照)、
b 外部端子板は、基板と、基板上に搭載されたプッシュターミナルを備え(上記(ウ)、(エ)(オ)参照)、
プッシュターミナルのケース本体部の底面から固定用突起部と端子部の足部を突出させ、固定用突起部と端子部の足部を基板に形成された穴に嵌め込み、足部を基板に形成された配線パターンに半田付けすることにより、プッシュターミナルは基板に固定され(上記(カ)、(シ)参照)、
c プッシュターミナルは、少なくとも二つのリード線挿入穴が形成されたケース本体部と、前記リード線挿入穴に対応して前記ケース本体部に設けられた導電性の端子部と、 前記端子部に対応したレバー部が設けられ、リード線挿入穴にはリード線が挿入され(上記(ア)、(キ)参照)、
d レバー部は、端子部に対応して、ケース本体部に押動自在に設けられた操作部と、リード線挿入穴に挿入されたリード線を端子部に押圧するための押圧部とを備え(上記(ア)、(キ)参照)、
e 隣り合う操作部は、ケース本体部の底面からの距離が異なるように形成され、操作部は基板の一端部側に延出し(上記(ア)、(コ)参照)、
f ケース本体部の上面は四角形状の平面であるとともに、当該上面にリード線挿入穴が形成され、ケース本体部の上面と底面は略平行である(上記(ク)、(サ)参照)、
l パチンコ遊技機(上記(ア)参照)。」

3.対比
本件発明と引用発明1とを、分説に従い対比する。

(a)引用発明1における構成aの「遊技機」、「外部端子板」は、それぞれ本願発明の「遊技機」、「外部端子装置」に相当する。

(b)引用発明1における構成bの「基板」は、「プッシュターミナル」のケース本体部の底面から固定用突起部と端子部の足部を突出させ、固定用突起部と端子部の足部を基板に形成された穴に嵌め込み、足部を基板に形成された配線パターンに半田付けすることにより、「プッシュターミナル」を基板に固定しているのだから、引用発明1の構成bの当該「基板」は、本願発明の「プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板」に相当する。

(c)引用発明1における構成cの「導電性の端子部」、「レバー部」は、それぞれ本願発明の「導電性端子部」、「操作レバー」に相当する。
そして、引用発明1における構成cによれば、「リード線挿入穴にはリード線が挿入」されるのだから、リード線の数とリード線挿入穴の数が対応していることは明らかである。さらに引用発明1の構成cによれば、「リード線挿入穴に対応」して「導電性の端子部」が設けられているのだから、リード線の数と導電性の端子部の数が対応していることもまた明らかである。

(d)引用発明1における構成dの「操作部」、「押圧部」は、それぞれ本願発明の「操作部」、「押圧部」に相当する。

(e)引用発明1における構成bによれば、
引用発明1における構成bの「基板」は、プッシュターミナルのケース本体部の底面から固定用突起部と端子部の足部を突出させ、固定用突起部と端子部の足部を基板に形成された穴に嵌め込み、足部を基板に形成された配線パターンに半田付けすることにより、ケース本体部を固定しているのだから、ケース本体部の底面が基板上面と面接触していることは明らかである。そうすると、引用発明1における構成eにおける「ケース本体部の底面からの距離が異なるように形成」された「隣り合う操作部」は、基板の上面からの高さ位置も異なることは明らかである。

(f)引用発明1における構成fの、「リード線挿入穴」は、本願発明の「リード線の貫通孔」に相当する。
また、上記(e)にて説示のとおり、引用発明1における構成bより、ケース本体部の底面が基板上面と面接触していることは明らかであることから、ケース本体部の底面と基板の上面が平行であることも明らかである。そうすると、引用発明1における構成fの、ケース本体部の上面の「四角形状の平面」は、ケース本体部の底面と平行であることから、基板の上面とも平行であることは明らかである。

(l)上記(a)にて説示のとおり、引用発明1における「遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「A 外部に送出する信号を中継する外部端子装置を備えた遊技機において、
B 前記外部端子装置は、少なくとも2つのリード線をそれぞれ挿脱可能にしたプッシュターミナルと、前記プッシュターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
C 前記プッシュターミナルは、挿入するリード線の数に対応した導電性端子部を内部に配設したケース本体部と、前記導電性端子部に対応して配設した操作レバーと、を有し、
D 前記操作レバーは、前記導電性端子部に対応して設けられた操作部と、前記操作部の操作に基づき、前記ケース本体部内に挿入された前記リード線を前記導電性端子部に押圧する押圧部と、を有し、
E 前記操作部は、互いに隣接し、前記支持基板の上面からの高さ位置が異なるように、かつ、前記支持基板の一端部側に延出して構成され、
F 前記ケース本体部は、前記支持基板の上面と平行で四角形状の平面部を有するとともに、前記平面部に前記リード線の貫通孔を備える、
L 遊技機。」

(相違点)
本願発明では、支持基板は、収納部に収納されるものであり、前記収納部は、底板と、複数の側板によって構成され、前記複数の側板のうちの1つの側板は、その端部までの長さが、前記支持基板が前記収納部に収納されている状態において、前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成されているのに対し、引用発明1では支持基板の遊技機への搭載態様が不明である点。

4.相違点に対する検討
同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-167415号公報)には、「遊技機」に関し、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。

(ア)
「【0032】
パチンコ遊技機1裏面において、上方には、各種情報をパチンコ遊技機1の外部に出力するための各端子を備えたターミナル基板160が設置されている。ターミナル基板160には、例えば、大当り遊技状態の発生を示す大当り情報等の情報出力信号(図60に示す始動口信号、図柄確定回数1信号、大当り1信号、大当り2信号、大当り3信号、時短信号、セキュリティ信号、賞球信号1、遊技機エラー状態信号)を外部出力するための情報出力端子が設けられている。」

(イ)
「【0585】
次に、遊技機が搭載するターミナル基板160の物理構成の変形例について説明する。図94および図95は、ターミナル基板160の物理構成の変形例を示す説明図である。遊技機には、例えば、主基板31や演出制御基板80、払出制御基板37などの各基板を覆って保護するためのカバー部材800が設けられているのであるが、図94および図95に示すように、このようなカバー部材800にターミナル基板160を埋め込む形式で構成してもよい。また、カバー部材800のターミナル基板160が取り付けられている部分には、ターミナル基板160を覆って保護するためのターミナル基板用カバー801が取り付けられる。ここで、図94は、カバー部材800にターミナル基板用カバー801が取り付けられている状態を示しており、図95は、カバー部材800からターミナル基板用カバー801が取り外された状態を示している。・・・
【0586】
また、図94および図95に示すように、ターミナル基板160上には、ホールコンピュータなど外部装置との間のケーブルを接続するための複数の端子96a,96b,98a,98b・・・が設けられた端子盤900が設けられている。・・・。また、端子盤900に設けられている各端子96a,96b,98a,98b・・・には、それぞれ摘み部95a,95b,99a,99b・・・が設けられており、摘み部95a,95b,99a,99b・・・を押すなどの操作を行うことにより端子96a,96b,98a,98b・・・が開放されてケーブルを接続可能となる。・・・。
【0587】
また、図94および図95に示すように、端子96a,96b,98a,98b・・・ごとに設けられた摘み部95a,95b,99a,99b・・・は、相互に互い違いになるように配置されている。そのように構成することによって、誤って隣の端子用の摘み部を操作してしまうなどの不都合を防止することができ、端子盤900にケーブルを接続する作業を行う際における作業性を向上させることができる。」

(ウ)
「【0588】
図96は、カバー部材800のターミナル基板160が取り付けられている部位の断面構造を示す説明図である。図96に示すように、ターミナル基板160は、そのターミナル基板160に設けられている端子盤900が、カバー部材800の表面(図96に示すX面)よりも内側に位置するように、十分にカバー部材800内の奥側に取り付けられる。そのように、ターミナル基板160に設けられている端子盤900が、カバー部材800の表面(図96に示すX面)よりも内側になるように構成されているので、遊技中に誤って遊技球が端子盤900に接触してしまうなどの不都合が生じる事態を防止することができる。
【0589】
また、図96に示すように、ターミナル基板用カバー801は、その側壁部801cが徐々に狭まっていくように傾きがつけられている。そのように側壁部801cに傾きがつけられていることによって、ターミナル基板用カバー801が取り付けられている状態であっても指などが入りやすく、端子盤900にケーブルを接続する作業を行う際における作業性を向上させることができる。」

(エ)
図94、図96から、ターミナル基板用カバーの側壁部801cが複数の板状体である態様をみることができるとともに、同図から、側壁部801cのいずれもにおいて、ターミナル基板160側の端部から上部側端部までの長さがターミナル基板160から端子盤900の頂面までの高さよりも長い態様をみることができる。

そして、上記記載事項(ア)?(ウ)並びに図面に記載された事項(エ)を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(a、b、d′、e′、g?i′、lは、それぞれ本願発明のA、B、D、E、G?I′、Lに対応させて付与した。)。

(引用発明2)
「a 各種の情報出力信号を外部に出力するための端子を備えたターミナル基板を設け(上記(ア)参照)、
b ターミナル基板上には、ホールコンピュータなど外部装置との間のケーブルを接続するための複数の端子が設けられた端子盤が設けられ(上記(イ)参照)、
d′端子盤に設けられている各端子には、それぞれ摘み部が設けられており、摘み部を押すなどの操作を行うことにより端子が開放されてケーブルを接続可能とし(上記(イ)参照)、
e′端子ごとに設けられた摘み部は、相互に互い違いになるように配置され(上記(イ)参照)、
g ターミナル基板はカバー部材に埋め込まれ(上記(イ)参照)、
カバー部材のターミナル基板が取り付けられている部分には、ターミナル基板を覆って保護するためのターミナル基板用カバーが取り付けられ(上記(イ)参照)、
h ターミナル基板用カバーには、複数の板状の側壁部を設け(上記(ウ)参照)、
i′ターミナル基板は、そのターミナル基板に設けられている端子盤が、カバー部材の表面よりも内側に位置するように、十分にカバー部材内の奥側に取り付けられ(上記(ウ)参照)、
側壁部が徐々に狭まっていくように傾きがつけられ、側壁部のいずれもにおいてターミナル基板側の端部から上部側端部までの長さが、ターミナル基板から端子盤の頂面までの高さよりも長い(上記(ウ)、(エ)参照)、
l 遊技機(上記(ア)参照)。」

そして引用発明2を分説に従ってみてみる。

(a)引用発明2の構成aの「端子盤」は本願発明の「外部端子装置」に相当する構成である。

(b)引用発明2の構成bの「ターミナル基板」はその上に端子盤が設けらているのだから、本願発明の「支持基板」に相当する構成である。
また、引用発明2の構成bの「複数の端子」は、本願発明の「プッシュターミナル」と「ターミナル」である点で共通する。

(d)引用発明2の構成d′の「摘み部」は、本願発明の「操作部」と操作を行う部分である点でする。

(e)引用発明2の構成e′の「摘み部」を「相互に互い違いになるように配置」することは、本願発明の「操作部」を「互いに隣接し、支持基板の上面からの高さ位置が異なる」ようにすることと、「相互に互い違いである」点で共通する。

(g)引用発明2の構成gの「カバー部材」におけるターミナル基板が埋め込まれる部分は、本願発明の「収納部」に相当するとともに、カバー部材のターミナル基板が取り付けられている部分に取り付けられた、「ターミナル基板を覆って保護するためのターミナル基板用カバー」もまた、「収納部」を画定するものということができる。

(h)引用発明2の構成hの「ターミナル基板用カバー」の「複数の板状の側壁部」は、本願発明の「複数の側板」に相当する。そして上記(g)にて説示のとおり、引用発明2における「ターミナル基板用カバー」の「複数の板状の側壁部」もまた、「収納部」を画定するものということができる。

(i)引用発明2の構成i′の「側壁部」に関する、「いずれもターミナル基板側の端部から上部側端部までの長さが、ターミナル基板から端子盤の頂面までの高さよりも長い」との構成は、本願発明の「複数の側板のうちの1つの側板は、その端部までの長さが、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなるように構成されている」との事項と、「側板は、その端部までの長さが、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側からターミナルまでの距離よりも長くなるように構成されている」点で共通している。

そうすると、引用発明2から、
A′ 外部端子装置を備えた遊技機において、
B′ 外部端子装置は、ターミナルと、ターミナルを上面に支持固定する支持基板と、を有し、
D′ 操作部を有し、
E′ 操作部は互い違いになるようにし、
F′ ターミナルは、支持基板の上面と平行な上面を有するとともに、
G 支持基板は、収納部に収納されるものであり、
H 収納部は、複数の側板によって構成され、
I′′複数の側板は、その端部までの長さが、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側からターミナルの上面部までの距離よりも長くなるように構成されている、
L 遊技機。」
が、本願の出願の日前において公知であったということができる。
また、支持基板を収納部に収納しようとする際に、収納部に底があるべきであることは、当業者にしてみれば当然のことである。

一方、引用発明1と引用発明2とは、ともに、外部に信号を送出する外部端子装置がターミナルと支持基板とを有し、互い違いになるように構成された操作部を有する遊技機である点で共通する。また、上記2.(イ)に示される引用文献1における「ターミナルの操作性」を損なわないとの課題と、上記4.(イ)に示される引用文献2における「ケーブルを接続する作業を行う際における作業性を向上」するとの課題は、実質的には同じ課題というべきものである。さらに、基板を保護しようとすることは、特段の例示をするまでもなく電子機器における普遍的課題である。
これらの点を考慮すれば、引用発明1に対し、基板41とプッシュターミナル100を含む外部端子板40を保護しつつも接続時の作業性を向上させるために、引用発明2にみられる公知の技術を適用し、支持基板を収納部に収納し、収納部を底板と複数の側板によって構成し、複数の側板の端部までの長さを、支持基板が収納部に収納されている状態において、支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなるようにし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

ここで、本願発明における
「複数の側板のうちの1つの側板は、その端部までの長さが、・・・前記支持基板の前記上面側から前記四角形状の平面部までの距離よりも長くなる」
との事項は、「複数の側板のうちの1つの側板」の長さを規定したものであって、複数の側板のうちのほかの側板の長さを何ら規定するものではないというべきである。してみれば、引用発明1に対し引用文献2にみられる公知の技術を用いた結果として、複数の側板のいずれも、端部までの長さが支持基板の上面側から四角形状の平面部までの距離よりも長くなったとしても、本願発明はやはり引用発明1および引用発明2にみられる公知の技術から、当業者が容易に想到するものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2017-08-18 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-05 
出願番号 特願2015-158298(P2015-158298)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 石井 哲
青木 洋平
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿股 俊雄  

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