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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333764
審判番号 不服2017-2564  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-22 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2015-174919号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開、特開2017- 47098号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月4日の出願であって、平成28年5月20日付けで拒絶理由が通知され、平成28年7月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成28年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成29年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?2の記載を含む補正であり、平成28年7月19日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、本件補正箇所を示す。)。

(補正前:平成28年7月19日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能である、
ことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年2月22日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始し、
前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を再開することが可能である、
ことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「演出実行手段」について、補正前の「前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能である」なる記載を「前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始し、前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を再開することが可能である」なる記載に限定する補正を行うものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同様第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Gは本件補正発明を分説するため当審で付した。)。

「A 始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
B 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
C 前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
D 前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始し、
E 前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
F 前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を再開することが可能である、
G ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-040235号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0037】
演出表示装置9は、第1特別図柄表示器8aによる第1特別図柄の可変表示時間中、および第2特別図柄表示器8bによる第2特別図柄の可変表示時間中に、装飾用(演出用)の図柄としての演出図柄の可変表示を行う。第1特別図柄表示器8aにおける第1特別図柄の可変表示と、演出表示装置9における演出図柄の可変表示とは同期している。また、第2特別図柄表示器8bにおける第2特別図柄の可変表示と、演出表示装置9における演出図柄の可変表示とは同期している。また、第1特別図柄表示器8aにおいて大当り図柄が停止表示されるときと、第2特別図柄表示器8bにおいて大当り図柄が停止表示されるときには、演出表示装置9において大当りを想起させるような演出図柄の組み合わせが停止表示される。」

(イ)「【0045】
遊技機には、遊技者が打球操作ハンドル5を操作することに応じて駆動モータを駆動し、駆動モータの回転力を利用して遊技球を遊技領域7に発射する打球発射装置(図示せず)が設けられている。打球発射装置から発射された遊技球は、遊技領域7を囲むように円形状に形成された打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、第1特別図柄の可変表示を開始できる状態であれば(例えば、特別図柄の可変表示が終了し、第1の開始条件が成立したこと)、第1特別図柄表示器8aにおいて第1特別図柄の可変表示(変動)が開始されるとともに、第1飾り図柄表示器9aにおいて第1飾り図柄の可変表示が開始され、演出表示装置9において演出図柄の可変表示が開始される。すなわち、第1特別図柄、第1飾り図柄および演出図柄の可変表示は、第1始動入賞口13への入賞に対応する。第1特別図柄の可変表示を開始できる状態でなければ、第1保留記憶数が上限値に達していないことを条件として、第1保留記憶数を1増やす。」

(ウ)「【0061】
この実施の形態では、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、飾り図柄を可変表示する第1飾り図柄表示器9aおよび第2飾り図柄表示器9bと、演出図柄を可変表示する演出表示装置9との表示制御を行う。
【0062】
また、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段が、ランプドライバ基板35を介して、遊技盤に設けられている装飾LED25、および枠側に設けられている枠LED28の表示制御を行うとともに、音声出力基板70を介してスピーカ27からの音出力の制御を行う。」

(エ)「【0075】
また、この実施の形態では、演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する。ただし、演出図柄の変動においてリーチが成立すると、リーチ演出によって大当りの期待を煽るために特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)を出力する。
【0076】
また、この実施の形態では、大当り遊技中においてもスピーカ27から特別な楽曲を出力し、大当り遊技の実行期間内において特別な楽曲の演奏が終了しなかった場合で、かつ大当り遊技の終了後に確変状態に制御される場合(確変モードに制御される場合)は、大当り遊技の終了後の変動中においても継続して特別な楽曲を出力する。また、確変モードの制御中において特別な楽曲の演奏が終了した場合は、特別な楽曲とは異なる楽曲を出力する。
【0077】
また、この実施の形態では、確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときにリーチが成立し、そのリーチがハズレとなった場合(リーチハズレ図柄が停止された場合)は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力する。また、確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときに変動表示が途切れた場合も、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力する。さらに、確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときに電源断等が発生して遊技機への電力供給が停止した場合も、電力供給が開始されて変動を再開したときに特別な楽曲を最初から出力する。」

(オ)「【0422】
また、上記の実施の形態では、変動が途切れた場合(変動が非連続の場合)は楽曲を消音(停止)するようにしていたが、楽曲を消音しないようにしてもよい。また、楽曲を消音した時間が短い時間(例えば数秒)である場合に、楽曲を消音せずに継続させるようにしてもよい。」

(カ)【図8】には、「変動パターン」が「PA2-1」の場合、「特図変動時間(ms)」が「4000」であり、「内容」が「短縮なし(高ベース中)→非リーチ(ハズレ)」であることが図示されており、同じく、
「変動パターン」が「PA2-2」の場合、「特図変動時間(ms)」が「1500」であり、「内容」が「保留5?8個短縮(高ベース中)→非リーチ(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA2-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「16000」であり、「内容」が「滑り→非リーチ(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA3-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「43000」であり、「内容」が「スーパーリーチα(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA3-4」の場合、「特図変動時間(ms)」が「47000」であり、「内容」が「滑り→スーパーリーチα(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA3-5」の場合、「特図変動時間(ms)」が「53000」であり、「内容」が「スーパーリーチβ(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA3-6」の場合、「特図変動時間(ms)」が「57000」であり、「内容」が「滑り→スーパーリーチβ(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA4-1」の場合、「特図変動時間(ms)」が「10000」であり、「内容」が「擬似連(1回)→非リーチ(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA4-2」の場合、「特図変動時間(ms)」が「33000」であり、「内容」が「擬似連(2回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA4-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「45000」であり、「内容」が「擬似連(3回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」、
「変動パターン」が「PA4-4」の場合、「特図変動時間(ms)」が「53000」であり、「内容」が「擬似連(4回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」であることが図示されている。

(キ)【図13】の(c)には、「ハズレ変動パターン種別決定テーブル(確変状態)」が図示されており、「変動パターン種別」が、「CA1-4」、「CA1-5」、「CA2-2」、「CA3-1」であることが図示されている。

(ク)【図14】の(A)には、「ハズレ変動パターン決定テーブル」が図示されており、「変動パターン種別」の「CA1-4」、「CA1-5」、「CA2-2」、「CA3-1」に対応する「変動パターン」が、「PA2-1」、「PA2-2」、「PA2-3」、「PA3-3」、「PA3-4」、「PA3-5」、「PA3-6」、「PA4-1」、「PA4-2」、「PA4-3」、「PA4-4」であることが図示されている。

上記(ア)?(オ)の記載事項および上記(カ)?(ク)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(g)は、本件補正発明の構成A?Gに対応した事項を示している。

(a)上記(イ)の【0045】には「遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、第1特別図柄の可変表示を開始できる状態であれば(例えば、特別図柄の可変表示が終了し、第1の開始条件が成立したこと)、第1特別図柄表示器8aにおいて第1特別図柄の可変表示(変動)が開始されるとともに、第1飾り図柄表示器9aにおいて第1飾り図柄の可変表示が開始され、演出表示装置9において演出図柄の可変表示が開始される」と記載され、上記(ア)の【0037】には「第1特別図柄表示器8aにおける第1特別図柄の可変表示と、演出表示装置9における演出図柄の可変表示とは同期している」、「第1特別図柄表示器8aにおいて大当り図柄が停止表示されるときと、第2特別図柄表示器8bにおいて大当り図柄が停止表示されるときには、演出表示装置9において大当りを想起させるような演出図柄の組み合わせが停止表示される」と記載されている。
また、上記(ウ)の【0061】には「演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、飾り図柄を可変表示する第1飾り図柄表示器9aおよび第2飾り図柄表示器9bと、演出図柄を可変表示する演出表示装置9との表示制御を行う」と記載されている。
したがって、刊行物には、遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、演出表示装置9において、演出図柄の可変表示を開始して停止表示する表示制御を行う演出制御手段が記載されているといえる。

(b)上記(ウ)の【0062】には「演出制御手段が、ランプドライバ基板35を介して、遊技盤に設けられている装飾LED25、および枠側に設けられている枠LED28の表示制御を行うとともに、音声出力基板70を介してスピーカ27からの音出力の制御を行う」と記載されている。
したがって、刊行物には、スピーカ27からの音出力の制御を行う演出制御手段が記載されているといえる。

(c)上記(ウ)の【0062】には「演出制御手段が、ランプドライバ基板35を介して、遊技盤に設けられている装飾LED25、および枠側に設けられている枠LED28の表示制御を行うとともに、音声出力基板70を介してスピーカ27からの音出力の制御を行う」と記載されている。
また、上記(エ)の【0075】には「演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する」と記載されている。
したがって、刊行物には、演出制御手段は、演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力することが記載されているといえる。

(d)上記(キ)で言及したように、【図13】の(c)には、「ハズレ変動パターン種別決定テーブル(確変状態)」が図示されており、「変動パターン種別」が、「CA1-4」、「CA1-5」、「CA2-2」、「CA3-1」であることが図示され、上記(ク)で言及したように、【図14】の(A)には、「ハズレ変動パターン決定テーブル」が図示されており、「変動パターン種別」の「CA1-4」、「CA1-5」、「CA2-2」、「CA3-1」に対応する「変動パターン」が、「PA2-1」、「PA2-2」、「PA2-3」、「PA3-3」、「PA3-4」、「PA3-5」、「PA3-6」、「PA4-1」、「PA4-2」、「PA4-3」、「PA4-4」であることが図示されていることから、「確変状態」に対応する「変動パターン」は、「PA2-1」、「PA2-2」、「PA2-3」、「PA3-3」、「PA3-4」、「PA3-5」、「PA3-6」、「PA4-1」、「PA4-2」、「PA4-3」、「PA4-4」のいずれかであり、上記(キ)で言及したように、【図8】には、「変動パターン」が「PA2-1」の場合、「特図変動時間(ms)」が「4000」であり、「内容」が「短縮なし(高ベース中)→非リーチ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA2-2」の場合、「特図変動時間(ms)」が「1500」であり、「内容」が「保留5?8個短縮(高ベース中)→非リーチ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA2-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「16000」であり、「内容」が「滑り→非リーチ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA3-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「43000」であり、「内容」が「スーパーリーチα(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA3-4」の場合、「特図変動時間(ms)」が「47000」であり、「内容」が「滑り→スーパーリーチα(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA3-5」の場合、「特図変動時間(ms)」が「53000」であり、「内容」が「スーパーリーチβ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA3-6」の場合、「特図変動時間(ms)」が「57000」であり、「内容」が「滑り→スーパーリーチβ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA4-1」の場合、「特図変動時間(ms)」が「10000」であり、「内容」が「擬似連(1回)→非リーチ(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA4-2」の場合、「特図変動時間(ms)」が「33000」であり、「内容」が「擬似連(2回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA4-3」の場合、「特図変動時間(ms)」が「45000」であり、「内容」が「擬似連(3回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」、「変動パターン」が「PA4-4」の場合、「特図変動時間(ms)」が「53000」であり、「内容」が「擬似連(4回)→スーパーリーチAorB(ハズレ)」であることが図示されていることから、「確変状態」における「内容」には、「非リーチ」である変動と「リーチ」を含む変動とがあり、「非リーチ」である変動は「特図変動時間(ms)」が「4000」、「1600」、「16000」、「10000」のいずれかであり、「リーチ」を含む変動は「特図変動時間(ms)」が「43000」、「47000」、「53000」、「57000」、「33000」、「45000」、「53000」のいずれかである。そうすると、「リーチ」を含む変動の特図変動時間はすべて、「非リーチ」である変動の特図変動時間より長い特図変動時間であることから、確変状態における変動として「リーチ」を含む変動の特図変動時間は、「非リーチ」である変動の特図変動時間とは異なる変動時間であるといえる。
ここで、上記(ア)の【0037】には「第1特別図柄表示器8aにおける第1特別図柄の可変表示と、演出表示装置9における演出図柄の可変表示とは同期している」と記載されているから、確変状態における変動として「リーチ」を含む変動の演出図柄の変動時間は、「非リーチ」である変動の演出図柄の変動時間とは異なる変動時間であるともいえる。
また、上記(エ)の【0075】には「演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する。ただし、演出図柄の変動においてリーチが成立すると、リーチ演出によって大当りの期待を煽るために特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)を出力する」と記載されていることから、演出モードが確変モードに制御されているときに、変動が「非リーチ」の場合には「特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力」し、変動が「リーチ」を含む場合には「リーチが成立すると、リーチ演出によって大当りの期待を煽るために特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)を出力する」といえる。なお、上記(キ)の「確変状態」と上記(エ)の「演出モードが確変モードに制御されているとき」とは同義であることは明らかである。
したがって、刊行物には、演出モードが確変モードに制御されているときに、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動では、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動の演出図柄の変動時間とは異なる変動時間である「リーチ」を含む変動では、リーチが成立すると特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声を出力することが記載されているといえる。

(e)上記(エ)の【0075】には「演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する」と記載されている。ここで、上記(d)で言及したように上記「複数の変動」の「変動」とは、「リーチが成立」しない「演出図柄の変動」であるといえる。
また、上記(エ)の【0077】には「確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときに変動表示が途切れた場合も、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力する」と記載され、上記(オ)の【0422】には「変動が途切れた場合(変動が非連続の場合)は楽曲を消音(停止)するようにしていたが、楽曲を消音しないようにしてもよい」と記載されている。
したがって、刊行物には、複数のリーチが成立しない演出図柄の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにすることが記載されているといえる。

(f)上記(エ)の【0075】には「演出図柄の変動においてリーチが成立すると、リーチ演出によって大当りの期待を煽るために特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)を出力する」と記載されている。
また、上記(エ)の【0077】には「確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときにリーチが成立し、そのリーチがハズレとなった場合(リーチハズレ図柄が停止された場合)は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力する」と記載され、上記(オ)の【0422】には「変動が途切れた場合(変動が非連続の場合)は楽曲を消音(停止)するようにしていたが、楽曲を消音しないようにしてもよい」と記載されている。
したがって、刊行物には、特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動で、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにすることが記載されているといえる。

(g)上記(イ)の【0045】には「遊技機」と記載されている。
したがって、刊行物には、遊技機が記載されている。

したがって、上記(ア)?(オ)の記載事項、上記(カ)?(ク)の図示内容および上記(a)?(g)の認定事項を総合すれば、刊行物には、次の発明が記載されている(以下、「刊行物発明1」という。a?gは刊行物発明1を分説するため当審で付した。)。

「a 遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、演出表示装置9において、演出図柄の可変表示を開始して停止表示する表示制御を行う演出制御手段と、
b スピーカ27からの音出力の制御を行う演出制御手段と、
を有し、
c 演出制御手段は、演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、
d 演出モードが確変モードに制御されているときに、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動では、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動の演出図柄の変動時間とは異なる変動時間である「リーチ」を含む変動では、リーチが成立すると特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声を出力し、
e 複数のリーチが成立しない演出図柄の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにするとともに、
f 特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動で、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする、
g 遊技機。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明1とを対比する。対比の見出しとしての(a)?(g)は刊行物発明1の分説構成と対応させた。

(a)刊行物発明1は、「遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出される」ことにより、演出図柄の可変表示を開始するから、刊行物発明1の「遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出される」ことは、本件補正発明の「始動条件の成立」に相当する。
また、刊行物発明1の「演出表示装置9」、「演出制御手段」は、それぞれ、本件補正発明の「所定の図柄表示手段」、「図柄表示制御手段」に相当する。
したがって、刊行物発明1の「遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、演出表示装置9において、演出図柄の可変表示を開始して停止表示する表示制御を行う演出制御手段」は、本件補正発明の「始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段」に相当する。

(b)刊行物発明1の「スピーカ27からの音出力の制御を行う」ことは、本件補正発明の「所定の演出を実行する」ことに相当するから、刊行物発明1の「演出制御手段」は、本件補正発明の「演出実行手段」に相当する。
したがって、刊行物発明1の「スピーカ27からの音出力の制御を行う演出制御手段」は、本件補正発明の「所定の演出を実行する演出実行手段」に相当する。

(c)刊行物発明1の「演出モードが確変モードに制御されているとき」は、本件補正発明の「所定条件の成立」に相当する。
また、刊行物発明1の「特別な楽曲」は、本件補正発明の「特定の音声データ」に相当する。
そして、刊行物発明1の「特別な楽曲を継続して出力」することとは、特別な楽曲を継続して出力することを実行可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であ」ることに相当する。
また、上記(b)で言及したように刊行物発明1の「演出制御手段」は、本件補正発明の「演出実行手段」に相当する。
したがって、刊行物発明1の「演出制御手段は、演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力」することは、本件補正発明の「前記演出実行手段は、所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であ」ることに相当する。

(d)刊行物発明1の「「リーチ」を含む変動」は、本件補正発明の「第1の変動時間による前記図柄の変動表示」に相当するから、刊行物発明1の「演出モードが確変モードに制御されているときに、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動では、特別な楽曲を継続して出力」することは、本件補正発明の「前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する」ことに相当する。
また、刊行物発明1の「「非リーチ」である変動」、「リーチ演出に応じた音声」は、それぞれ、本件補正発明の「前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示」、「前記特定の音声データとは異なる特殊音声データ」に相当するから、刊行物発明1の「演出モードが確変モードに制御されているときに、特別な楽曲を継続して出力し、」「「非リーチ」である変動の演出図柄の変動時間とは異なる変動時間である「リーチ」を含む変動では、リーチが成立すると特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声を出力」することは、本件補正発明の「前記特定の音声データを再生しているときに、」「前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始」することに相当する。
したがって、刊行物発明1の「演出モードが確変モードに制御されているときに、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動では、特別な楽曲を継続して出力し、「非リーチ」である変動の演出図柄の変動時間とは異なる変動時間である「リーチ」を含む変動では、リーチが成立すると特別な楽曲の出力を中断し、リーチ演出に応じた音声を出力」することは、本件補正発明の「前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始」することに相当する。

(e)刊行物発明1は「複数のリーチが成立しない演出図柄の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力」することは、「リーチが成立しない演出図柄の変動」の図柄停止表示後に「特別な楽曲を継続して出力」するといえることから、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立しても」「前記特定の音声データの再生を継続すること」に相当する。
また、刊行物発明1は「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立」「しなくても、前記特定の音声データの再生を継続すること」に相当する。
そして、刊行物発明1の「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」こととは、特別な楽曲を継続して出力することが可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を継続することが可能であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明1の「複数のリーチが成立しない演出図柄の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であ」ることに相当する。

(f)本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立しても」「前記特定の音声データの再生を再開すること」について検討すると、本願明細書の【0185】の「演出実行部1003は、楽曲演出を実行しているときに、スーパーリーチの演出を行う場合には、楽曲データの再生を停止して、スーパーリーチ専用の音声データの再生を開始する。そして、スーパーリーチの変動がハズレとなる場合、演出実行部1003は、スーパーリーチの変動が終了すると、待機状態となるか否か(次の変動表示が開始されるか)にかかわらず、スーパーリーチ専用の音声データの再生を停止し、スーパーリーチの変動後に、楽曲データの再生を新たに開始する」なる記載を参酌すると、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を再開すること」とは、楽曲データの再生を新たに開始することを意味する内容であるといえる。
そうすると、刊行物発明1の「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力」することは、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立しても」「前記特定の音声データの再生を再開すること」に相当する。
また、刊行物発明1の「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合は、」「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、リーチハズレ図柄が停止することでリーチ演出は終了するから、それに応じてリーチ演出に応じた音声は停止することは明らかであり、リーチハズレ図柄が停止された場合で変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにするということは、何らかの楽曲の再生を新たに開始することといえるので、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立」「しなくても、」「音声データの再生を再開すること」に相当する。
そして、刊行物発明1の「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」こととは、楽曲を再開して出力することが可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「音声データの再生を再開することが可能であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明1の「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立しても」「前記特定の音声データの再生を再開することが可能で」、「前記始動条件が成立」「しなくても、」「音声データの再生を再開することが可能である」点で共通する。

(g)刊行物発明1の「遊技機」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(g)の検討より、本件補正発明と刊行物発明1とは、

「A 始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
B 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
C 前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
D 前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始し、
E 前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
F’ 前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立しても前記特定の音声データの再生を再開し、前記始動条件が成立しなくても、音声データの再生を再開することが可能である、
G 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、「前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立」「しなくても、前記特定の音声データの再生を再開することが可能である」のに対して、刊行物発明1は、そのような特定がなされていない点。

(4)判断
(ア上記[相違点]について検討する。
刊行物発明1は、「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合」に、「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ものの、この消音しないようにする「楽曲」とは、「特別な楽曲」であるのか、【0075】に記載されるように「リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)」の「楽曲」であるのか、それとも、これら以外の「楽曲」であるのか明確ではない。しかし、「リーチが成立する演出図柄の変動」により中断されている楽曲が「特別な楽曲」であること、刊行物発明1の「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力」すること、および、「リーチハズレ図柄が停止された場合」に、「変動表示が途切れた場合」は既に「リーチ演出」の状態ではないことは明らかであるので「リーチ演出に応じた音声(効果音や楽曲など)」の「楽曲」を消音しないようにするのは演出として不自然になることから、上記消音しないようにする「楽曲」を「特別な楽曲」とすることは、当業者が適宜選択し得た事項である。

(イ)まとめ
そうすると、刊行物発明1において上記相違点に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物発明1から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)審判請求人の主張について
平成29年2月22日付け審判請求書において請求人は
「審判請求人は、請求項1について、
特定音声演出(例えば、確変モードにおける楽曲データの継続再生)において、スーパーリーチが行われる場合には特定の音声データ(楽曲データ)の再生を中断してスーパーリーチ用の音声データを再生し、スーパーリーチ後に特定の音声データを再開する、という内容に補正しました。
具体的には、特定音声演出において、
第1の変動時間(ノーマルハズレ)の変動表示が行われる場合には特定の音声データの再生を継続し、図柄の変動停止後には、始動条件の成否にかかわらず、特定の音声データの再生を継続し、第2の変動時間(スーパーリーチ)の変動表示が行われる場合には特定の音声データの再生を中断して特殊音声データ(スーパーリーチ専用の音声データ)を再生し、図柄の変動停止後に、始動条件の成否にかかわらず、特定の音声データを再開する、
という内容に補正しました(段落番号[0093]、[0167]、[0185]、[0220]?[0224]、図面の[図5-2]、[図15])。
補正後の請求項1によれば、第1の変動時間によるハズレの変動演出や信頼度の低い変動演出における音声制御を簡素化することができるとともに、図柄変動の信頼度に応じて、遊技者を期待させる演出を行うことができる、という作用効果を得ることができます(段落番号[0233]、[0234])。
これに対して、引用文献1,2には、補正後の請求項1の内容(特定音声演出において、スーパーリーチが行われる場合には特定の音声データの再生を中断してスーパーリーチ用の音声データを再生し、スーパーリーチ後に特定の音声データを再開する、という内容)について何ら開示されておりません。
これにより、引用文献1,2を組み合わせたとしても、補正後の請求項1にかかる発明の作用効果を得ることはできません。
このため、引用文献1に記載の内容と、補正後の請求項1にかかる発明とは同一ではなく、また、引用文献1,2に記載の内容に基づいて、補正後の請求項1にかかる発明を当業者が容易に想到することはできないものと思量します」
と主張している。

請求人の上記主張について検討すると、【請求項1】には「始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、所定の演出を実行する演出実行手段と、を有し、前記演出実行手段は、所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、前記特定の音声データを再生しているときに、第1の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を継続する一方、前記第1の変動時間とは異なる第2の変動時間による前記図柄の変動表示が行われる場合には、前記特定の音声データの再生を中断して、前記特定の音声データとは異なる特殊音声データの再生を開始し、前記特定の音声データの再生を継続した前記第1の変動時間による前記図柄の停止表示後において前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、前記特定の音声データの再生を中断した前記第2の変動時間による前記図柄の停止表示後において、前記始動条件が成立してもしなくても、前記特定の音声データの再生を再開することが可能である、ことを特徴とする遊技機。」と記載されており、「スーパーリーチ」および「スーパーリーチ用の音声データ」については記載されておらず、該主張は請求項1の記載に基づくものではないため採用できない。
また、上記(3)のとおり、刊行物発明1には「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合は、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力」することが記載されており、上記(4)(ア)のとおり、刊行物発明1において、「特別な楽曲の出力を中断してリーチ演出に応じた音声を出力しているリーチが成立する演出図柄の変動では、リーチハズレ図柄が停止された場合」に、変動表示が途切れた場合も特別な楽曲を消音しないようにすることは、当業者が適宜選択し得た事項であることから、該主張は採用できない。

(6)小括
本願補正発明は、刊行物発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正発明は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成28年7月11日付けの手続補正書により補正された、上記「第2 1.」の本件補正の概要において示した次のとおりものである(A?Fは本願発明を分説するため当審で付した。)。

「A 始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
B 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
C 前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
D 前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
E 前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能である、
F ことを特徴とする遊技機。」

1.刊行物
原査定の拒絶理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「第2 3.(2)(ア)?(オ)」の記載事項から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(f)は、本願発明の構成A?Fに対応した事項を示している。ここで、上記「第2 3.(2)」において示した(a)?(c)については共通するため(a)?(c)については省略する。

(a)?(c)省略。

(d)上記「第2 3.(2)(エ)」の【0075】には「演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する」と記載されている。
したがって、刊行物には、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力することが記載されているといえる。

(e)上記「第2 3.(2)(エ)」の【0075】には「演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲(例えば演奏時間が10分の楽曲)を継続して出力する」と記載されている。
また、上記「第2 3.(2)(エ)」の【0077】には「確変モードの制御中において特別な楽曲を出力しているときに変動表示が途切れた場合も、次の変動を開始するときに特別な楽曲を最初から出力する」と記載され、上記「第2 3.(2)(オ)」の【0422】には「変動が途切れた場合(変動が非連続の場合)は楽曲を消音(停止)するようにしていたが、楽曲を消音しないようにしてもよい」と記載されている。
したがって、刊行物には、複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにすることが記載されているといえる。

(f)上記「第2 3.(2)(イ)」の【0045】には「遊技機」と記載されている。
したがって、刊行物には、遊技機が記載されている。

したがって、上記「第2 3.(2)(ア)?(オ)」の記載事項および上記(a)?(f)の認定事項を総合すれば、刊行物には、次の発明が記載されている(以下、「刊行物発明2」という。a?fは刊行物発明2を分説するため当審で付した。)。

「a 遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、演出表示装置9において、演出図柄の可変表示を開始して停止表示する表示制御を行う演出制御手段と、
b スピーカ27からの音出力の制御を行う演出制御手段と、
を有し、
c 演出制御手段は、演出モードが確変モードに制御されているときに、大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、
d 大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、
e 複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする、
f 遊技機。」

2.対比・判断
本願発明と刊行物発明2との対比でも、上記「第2 3.(3)」において示した(a)?(c)の検討については共通するため、(a)?(c)の検討については省略し、(d)?(f)の検討をする。

(a)?(c)省略。

(d)刊行物発明2は「複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力」することから、特別な楽曲を継続して出力しているときに、「複数の変動」の各「変動」の始動条件が成立しても特別な楽曲を継続して出力していることは明らかであるので、刊行物発明2の「大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力」することは、本願発明の「前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続すること」に相当する。
また、刊行物発明2の「特別な楽曲を継続して出力」することは、特別な楽曲を継続して出力することが可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「前記特定の音声データの再生を継続することが可能であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明2の「大当りの期待感を煽るためにスピーカ27から複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力」することは、本願発明の「前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であ」ることに相当する。

(e)刊行物発明2は「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことから、特別な楽曲を継続して出力しているときに、「変動表示が途切れた場合も」特別な楽曲を継続して出力していることは明らかであるので、刊行物発明2の「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、本願発明の「前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続すること」に相当する。
また、刊行物発明2の「変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」こととは、特別な楽曲を継続して出力することが可能であることを含んでいることは明らかであるから、本願発明の「前記特定の音声データの再生を継続することが可能であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明2の「複数の変動に亘って演奏時間の長い特別な楽曲を継続して出力し、変動表示が途切れた場合も楽曲を消音しないようにする」ことは、本願発明の「前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能である」ことに相当する。

(f)刊行物発明2の「遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

以上(a)?(f)の検討より、本願発明と刊行物発明2とは、
「A 始動条件の成立により、所定の図柄表示手段に図柄を変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
B 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を有し、
C 前記演出実行手段は、
所定条件の成立により、特定の音声データの再生を開始する特定音声演出を実行可能であり、
D 前記特定音声演出を実行しているときに前記始動条件が成立しても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能であり、
E 前記特定音声演出を実行しているときに前記図柄の停止表示後に前記始動条件が成立しなくても、前記特定の音声データの再生を継続することが可能である、
F 遊技機。」
の点で一致し、相違点はない。

したがって、本願発明は刊行物発明2と同一であり、刊行物に記載された発明であるということができる。仮に相違点があったとしても、本願発明は、刊行物発明2から当業者が容易に発明できたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。または、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-21 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-05 
出願番号 特願2015-174919(P2015-174919)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 洋平
発明の名称 遊技機  
代理人 酒井 昭徳  

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