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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1333774 |
審判番号 | 不服2015-16349 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-04 |
確定日 | 2017-10-18 |
事件の表示 | 特願2012-243484「書込ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 33590〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年3月27日(パリ条約に基づく優先権主張 平成23年3月28日 米国(US))に出願した特願2012-71279号の一部を平成24年11月5日に新たな特許出願としたものであって、平成24年11月7日付けで手続補正がなされ、平成26年3月26日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月30日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月4日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審の平成28年6月24日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月26日付けで手続補正がなされた。 その後、当審の平成28年11月21日付け最後の拒絶理由通知に対し、請求人からは何らの応答もなされなかったものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年10月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 エアベアリング面を有する書込ヘッドであって、 第1および第2の対向する面を有する磁気書込極と、 前記磁気書込極の前記第1および第2の面の近傍に、第1および第2のギャップと、 前記第1および第2のギャップの近傍に、各々下面を有する第1および第2のサイドシールドとを備え、 前記第1および第2のサイドシールドの前記下面は、前記磁気書込極の前記エアベアリング面の10nmから70nm上方にあり、 前記第1および第2のギャップは、前記エアベアリング面から離れるにつれて次第に狭くなり、 前記磁気書込極はクロストラック方向の幅を有し、前記幅は前記エアベアリング面に向けて前記磁気書込極の前記エアベアリング面まで先細になる、書込ヘッド。」 3.引用例 3-1.引用例1 これに対して、当審の平成28年11月21日付けの拒絶の理由に引用された特開2007-294059号公報(以下、「引用例1」という。)には、「垂直記録磁気ヘッド」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「【請求項1】 トラック幅を規定する先端部を有する主磁極と、補助磁極と、前記主磁極と補助磁極で構成される磁気回路と鎖交するコイルと、前記主磁極のトレーリング側及びトラック幅方向の両側に設けられた磁性体とを有し、前記主磁極の先端部の両側面と前記磁性体との間隔が、素子高さ方向に向かって小さくなることを特徴とする垂直記録磁気ヘッド。」 (2)「【請求項4】 前記主磁極の先端部は素子高さ方向に向かってトラック幅方向の幅が広がる形状を有し、該先端部の両側面と対向する前記磁性体の側面は、トラック幅方向に平行な面に対して直交していることを特徴とする請求項1記載の垂直記録磁気ヘッド。」 (3)「【0025】 本発明の第2の実施例による垂直記録磁気ヘッドの主磁極の構造例をトレーリング側から見た平面模式図を図13に示す。主磁極以外の構成は、図3?図5に示した第1の実施例と同じである。したがって、ここでは第1の実施例との相違点について説明する。浮上面に露出する主磁極1のポールチップ1Bの幅(幾何トラック幅Pw)が絞り位置(素子高さ)P2のトラック幅方向の幅より狭くなっており、かつ、サイドギャップ長glが浮上面位置P1から素子高さP2方向に向かって小さくなっている。すなわち、gl(1)>gl(2)となる。このような構造においても、スロートハイト、サイドシールド厚さが小さい場合には、サイドギャップ長glが小さくトラック幅方向の磁界の広がりを抑制する。また、スロートハイト、サイドシールド厚さが大きい場合には、サイドギャップ長glが前者より大きくなっているため、トラック幅方向の磁界の広がりを抑制する効果が小さくなる。したがって、スロートハイト、サイドシールド厚さ依存性を小さくすることができ、磁気ヘッドの性能を維持しつつ、製造歩留まりを向上させることができる。」 ・上記引用例1に記載の「垂直記録磁気ヘッド」は、上記(1)、(3)の記載事項、図13によれば、浮上面に露出してトラック幅を規定する先端部(ポールチップ1B)を有する主磁極1と、前記主磁極1のトラック幅方向の両側に設けられた磁性体(サイドシールド)33とを有し、前記主磁極1の先端部(ポールチップ1B)の両側面と前記磁性体(サイドシールド)33との間隔(サイドギャップ長)が、素子高さ方向に向かって小さくなる、垂直記録磁気ヘッドである。 ・上記(2)、(3)の記載事項、図13によれば、主磁極の先端部(ポールチップ1B)は素子高さ方向に向かってトラック幅方向の幅が広がる形状を有するものである。 したがって、特に図13に示される第2の実施例に係るものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「浮上面を有する垂直記録磁気ヘッドであって、 前記浮上面に露出してトラック幅を規定する先端部(ポールチップ)を有する主磁極と、 前記主磁極のトラック幅方向の両側に設けられた磁性体(サイドシールド)とを有し、 前記主磁極の先端部(ポールチップ)の両側面と前記磁性体(サイドシールド)との間の間隔(サイドギャップ長)が、素子高さ方向に向かって小さくなり、 前記主磁極の先端部(ポールチップ)は、素子高さ方向に向かってトラック幅方向の幅が広がる形状を有する、垂直記録磁気ヘッド。」 3-2.引用例2 同じく当審の平成28年11月21日付けの拒絶の理由に引用された特開2009-104727号公報(以下、「引用例2」という。)には、「垂直記録磁気ヘッド」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「【請求項1】 媒体対向面を有するスライダに搭載された垂直記録磁気ヘッドであって、 前記媒体対向面に露出した先端部を有する主磁極と、 前記先端部の側面から離間した第1の距離に配置され、かつ、前記媒体対向面から後退した第2の距離に配置されたサイドシールドと、 を有することを特徴とする垂直記録磁気ヘッド。 【請求項2】 前記先端部と前記サイドシールドの間、および、前記媒体対向面と前記サイドシールドの間に非磁性材料を有すること を特徴とする請求項1記載の垂直記録磁気ヘッド。 【請求項3】 前記サイドシールドが前記先端部の側面の両側に配置されていること を特徴とする請求項2記載の垂直記録磁気ヘッド。」 (2)「【0031】 一対のサイドシールド25、27は、図4に示すように、媒体対向面Fに沿って板状に形成されている。サイドシールド25、27は、少なくともFe、Ni、Coのいずれか一つを含む磁性材料で形成されている。これら一対のサイドシールド25、27は、主磁極21の先端部23を挟み込んで側面23aの両側に配置されている。先端部23の側面23aとサイドシールド25、27とは、媒体対向面Fに沿って距離(第1の距離)d1だけ間隔を空けて離間して配置されている。側面23aとサイドシールド25、27との間に形成された隙間は、非磁性材料により埋められている。一対のサイドシールド25、27は、磁気ディスク1に情報を記録する際に、記録トラックのトラック幅方向に配列されるようになっている。 【0032】 サイドシールド25、27は、媒体対向面Fから磁気ヘッド素子部9の内側に距離(第2の距離)d2だけ後退して配置されている。このため、媒体対向面Fとサイドシールド25、27との間も非磁性材料により埋められている。ここで、サイドシールド25、27と媒体対向面Fとの距離d2は、媒体対向面Fから先端部23としぼり部21aとが接続された位置までの距離d3よりも小さくなっている。」 (3)「【0037】 図8(a)?図8(c)は、サイドシールド25、27の媒体対向面Fからの距離d2を変化させたときの先端部23における磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。図8(a)?図8(c)は、先端部23を磁気ディスク1側から見た図であり、先端部23の半分のシミュレーション結果のみを示している。線分h1?h5は、それぞれ磁界の大きさが等しい領域の境界線を現している。これら線分h1?h5は、線分h1、線分h2、線分h3、線分h4及び線分h5の順に磁界の大きさが小さくなる。 【0038】 図8(a)は、サイドシールド25、27の媒体対向面Fからの距離d2を0(ゼロ)nmとしたシミュレーション結果を示す図である。図8(a)に示すように、先端部23は、トラック幅方向及びビット長方向に磁界分布が広がってしていることがわかる。 【0039】 図8(b)は、サイドシールド25、27の媒体対向面Fからの距離d2を20nmとしたシミュレーション結果を示す図である。図8(b)に示すように、先端部23は、距離d2を0(ゼロ)nmとした場合に比べて、トラック幅方向及びビット長方向に磁界分布が狭まっていることがわかる。 【0040】 図8(c)は、サイドシールド25、27の媒体対向面Fからの距離d2を40nmとしたシミュレーション結果を示す図である。図8(c)に示すように、先端部23は、距離d2を20nmとした場合に比べて、ビット長方向に磁界分布がさらに狭まり、線分h1で示すように、磁界の大きさが最も強い領域が主磁極21の先端部23のトレーリング側端部に集中している。すなわち、サイドシールド25、27は、先端部23主磁極リーディング側エッジが磁束飽和に達したことによって外部に放出された不要な磁束のみを吸収し、ヨー角を考慮した場合のサイドイレーズ抑制が期待できる。」 上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の技術事項が記載されている。 「媒体対向面に露出した先端部を有する主磁極と、前記先端部の側面の両側に当該側面から離間した第1の距離d1に配置されたサイドシールドと、を有する垂直記録磁気ヘッドであって、 隣接トラックのイレーズを防止するために、前記サイドシールドの下面が前記媒体対向面から後退した第2の距離d2(例えば20nmや40nm)となるように配置すること。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「浮上面を有する垂直記録磁気ヘッドであって」によれば、 引用発明における「浮上面」、「垂直記録磁気ヘッド」は、それぞれ本願発明でいう「エアベアリング面」、「書込ヘッド」に相当し、 本願発明と引用発明とは、「エアベアリング面を有する書込ヘッド」である点で一致する。 (2)引用発明における「前記浮上面に露出してトラック幅を規定する先端部(ポールチップ)を有する主磁極と」によれば、 引用発明における、主磁極の「先端部(ポールチップ)」が、本願発明でいう「磁気書込極」に相当するといえ、 引用発明の「先端部(ポールチップ)」にあっても、トラック幅方向に対向する2の面(側面)を有することは当然のことであるから、 本願発明と引用発明とは、「第1および第2の対向する面を有する磁気書込極と」を備えるものである点で一致する。 (3)引用発明における「前記主磁極のトラック幅方向の両側に設けられた磁性体(サイドシールド)とを有し、前記主磁極の先端部(ポールチップ)の両側面と前記磁性体(サイドシールド)との間の間隔(サイドギャップ長)が、素子高さ方向に向かって小さくなり」によれば、 (a)引用発明における、主磁極のトラック幅方向の両側に設けられた「磁性体(サイドシールド)」、主磁極の先端部(ポールチップ)の両側面と磁性体(サイドシールド)との間の「間隔(サイドギャップ長)」は、それぞれ本願発明でいう「第1および第2のサイドシールド」、「第1および第2のギャップ」に相当し、 (b)また、引用発明の「磁性体(サイドシールド)」にあっても、各々下面を有することは当然のことである。 (c)そして、引用発明の「間隔(サイドギャップ長)」は、素子高さ方向に向かって小さくなる、すなわち、浮上面から離れるにつれて次第に狭くなるものであることから、 本願発明と引用発明とは、「前記磁気書込極の前記第1および第2の面の近傍に、第1および第2のギャップと、前記第1および第2のギャップの近傍に、各々下面を有する第1および第2のサイドシールドと」を備えるものである点で一致し、さらに、「前記第1および第2のギャップは、前記エアベアリング面から離れるにつれて次第に狭く」なるものである点でも一致する。 (4)引用発明における「前記主磁極の先端部(ポールチップ)は、素子高さ方向に向かってトラック幅方向の幅が広がる形状を有する」によれば、 引用発明の「先端部(ポールチップ)」が、素子高さ方向に向かってトラック幅方向の幅が広がる形状を有するということは、トラック幅方向(クロストラック方向)の幅は浮上面に向けて先端部(ポールチップ)の浮上面まで先細になるということができる(引用例1の図13も参照)から、 本願発明と引用発明とは、「前記磁気書込極はクロストラック方向の幅を有し、前記幅は前記エアベアリング面に向けて前記磁気書込極の前記エアベアリング面まで先細になる」ものである点で一致する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「エアベアリング面を有する書込ヘッドであって、 第1および第2の対向する面を有する磁気書込極と、 前記磁気書込極の前記第1および第2の面の近傍に、第1および第2のギャップと、 前記第1および第2のギャップの近傍に、各々下面を有する第1および第2のサイドシールドとを備え、 前記第1および第2のギャップは、前記エアベアリング面から離れるにつれて次第に狭くなり、 前記磁気書込極はクロストラック方向の幅を有し、前記幅は前記エアベアリング面に向けて前記磁気書込極の前記エアベアリング面まで先細になる、書込ヘッド。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 第1および第2のサイドシールドの下面について、本願発明では、磁気書込極のエアベアリング面の「10nmから70nm上方」にある旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 5.判断 上記相違点について検討すると、 引用例2には、媒体対向面に露出した先端部を有する主磁極と、前記先端部の側面の両側に当該側面から離間した第1の距離d1に配置されたサイドシールドと、を有する垂直記録磁気ヘッドであって、隣接トラックのイレーズを防止するために、前記サイドシールドの下面が前記媒体対向面から後退した第2の距離d2(例えば20nmや40nm)となるように配置するという技術事項が記載(上記「3-2.」を参照)されており、引用発明においても、隣接トラックのイレーズ防止は当然望まれるべき事項であるから、当該技術事項を採用し、相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。 そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-17 |
結審通知日 | 2017-05-23 |
審決日 | 2017-06-05 |
出願番号 | 特願2012-243484(P2012-243484) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 浩昌、▲吉▼澤 雅博 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
井上 信一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 書込ヘッド |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |