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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1333782
審判番号 不服2016-12671  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-23 
確定日 2017-10-18 
事件の表示 特願2011-274407号「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源」拒絶査定不服審判事件〔平成24年7月19日出願公開、特開2012-138356号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月15日(パリ条約による優先権主張 2010年12月16日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年9月1日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年8月23日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年8月23日の手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成28年8月23日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
なお、下線部は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱し、その構成は下記を含み、
光熱源装置(101)は、燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源で構成され、
太陽光発電装置(102)は、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体をポンピングし、
電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)は、電気モータ(EM100)により駆動されるエアフローファン装置(1012)によって構成され、太陽光発電装置(102)により出力する電気エネルギーによって駆動され、光熱源装置(101)、光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)、光熱源装置(101)により形成される熱空間の三者の全部またはその中の一部を通過する気相流体を圧送し、光熱源装置(101)に協力して放熱を行うことを特徴とする自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年1月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱し、その構成は下記を含み、
光熱源装置(101)は、同一構造で光と熱が生じる装置、灯具装置のうち電気エネルギーによって駆動される発光ダイオード(LED)、アーク発光装置、ガスランプ発光装置または電熱線の電熱発光装置等であって、入力する電気エネルギーを通して、同一構造で光エネルギーと熱エネルギーが生じる灯具装置、燃焼すると同時に光と熱が生じる光熱源装置、同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源、または、通電時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる電熱器によって構成され、
太陽光発電装置(102)は、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置(1032)を駆動し、気相または液相流体をポンピングし、
電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)は、電気モータ(EM100)により駆動されるエアフローファン装置(1012)によって構成され、太陽光発電装置(102)により出力する電気エネルギーによって駆動され、光熱源装置(101)、光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)、光熱源装置(101)により形成される熱空間の三者の全部またはその中の一部を通過する気相流体を圧送し、光熱源装置(101)に協力して放熱を行うことを特徴とする自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源。」

2 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無

上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光熱源装置(101)は、同一構造で光と熱が生じる装置、灯具装置のうち電気エネルギーによって駆動される発光ダイオード(LED)、アーク発光装置、ガスランプ発光装置または電熱線の電熱発光装置等であって、入力する電気エネルギーを通して、同一構造で光エネルギーと熱エネルギーが生じる灯具装置、燃焼すると同時に光と熱が生じる光熱源装置、同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源、または、通電時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる電熱器によって構成され」ることについて、択一的な選択肢のうち「燃焼すると」「同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる」、「灯油ヒーター」又は「燃焼式光熱源」を選択して、「光熱源装置(101)は、燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源で構成され」ることに限定するものであり、かつ、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項についての上記限定は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「気相または液相流体をポンピング」について、択一的な選択肢のうち「気相流体」を選択して、「気相流体をポンピング」に限定するものであり、かつ、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項についての上記限定は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物に記載の事項及び発明

本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-172978号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
以下、摘示(1a)などともいう。
なお、下線は当審で加筆した(以下、同様である。)。
(1a)
「2.特許請求の範囲
1、底面をランプの置き台とし、上面は熱電発電モジュール(2)を受熱用金属板(3)と放熱用金属板(1)で挟んだ構造の熱電発電ブロック(第3図)とし、上面と底面の間を金属板とガラスまたは透明プラスチック板を用いて密閉した容器の構造とし、この中にランプを置き、金属板の外側の面には放熱フィンを設け、容器の上部と下部に通気孔を設けた熱電発電ランプ。」(1頁左下欄3?11行)
(1b)
「(産業上の利用分野)
本発明は、灯油その他の燃料を用いたランプの炎の熱を用いて、熱電発電により電気を発生させ、炎の光を利用すると共に、発電電力を利用しようとするものである。」(1頁左下欄13?17行)
(1c)
「なお、熱電発電ブロックの上面にも放熱フィンを設けると、放電効果をさらに増すことが出来、出力も増大する。」(2頁左下欄12?14行)
(1d)
「電気の来ない場所で、僅かな燃料で長時間連続して、ラジオ、テープ、コーダー、液晶テレビ、CDプレーヤー、トランシーバー等を動作させることが出来る。」(2頁右下欄7?10行)


上記ア(1a)、(1b)及び第1?3図から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「上面は熱電発電ブロックとし、上面と底面の間を金属板とガラスまたは透明プラスチック板を用いて密閉した容器の構造とし、この中に灯油その他の燃料を用いたランプを置き、金属板の外側の面に放熱フィンを設けた熱電発電ランプ。」


原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-87734号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0011】
本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、車両側の電力を消費せずに独立した電源を有することで送風を省電力に行うことができるとともに、内部対流による融雪性及び放熱性を向上させることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車両用灯具に係る上記目的は、ランプボディとカバーとによって区画された灯室内に、半導体発光素子を光源とする光源ユニットと送風手段とを備えた車両用灯具であって、
前記灯室内に前記送風手段を駆動させるための電力を発電する発電手段を備えることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0013】
上記構成の車両用灯具によれば、送風手段は、灯室内に配置された発電手段によって駆動されるので、車両側の電力を消費せずに自ら発電した電力で送風を行うことができる。」
(2b)
「【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明に係る車両用灯具の第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図、図2は図1の車両用灯具のI-I線断面図である。なお、説明中の前後左右は、車両の方向に順じて用いる。即ち、図2中の左方が車両の前方である。」
(2c)
「【0024】
図1及び図2に示すように、車両用灯具10は、ランプボディ14と透光カバー15とで区画された灯室16内に、第1の光源ユニット11と、第2の光源ユニット12と、第3の光源ユニット13と、送風器(送風手段)17と、光軸調整部18と、ボディ側伝熱部材19と、光発電素子(発電手段)20と、を収容している。なお、以下の説明では、第1の光源ユニット11と同一の第2の光源ユニット12の説明は省略される。」
(2d)
「【0025】
第1の光源ユニット11は、第1のLED(半導体発光素子)21を備えるとともに、第2の光源ユニット12および第3の光源ユニット13兼用のブラケット22と、光学部品であるリフレクタ23と、投影レンズ24と、を備えている。また、第2の光源ユニット12および第3の光源ユニット13兼用のブラケット側伝熱部材(放熱フィン)25を備えている。」
(2e)
「【0034】
ブラケット側伝熱部材25は、例えばアルミニウム等の熱伝導率の高い金属部材を用いて成形されており、上下方向に間隔を置いて配置された複数の横向きフィン43を有するヒートシンクであり、ブラケット22の背面側に伝熱可能に一体成形されている。
【0035】
ブラケット側伝熱部材25は、ブラケット22に伝えられた第1のLED21及び第3のLED32の発光熱を吸熱して、複数の横向きフィン43の表面から放熱する。」
(2f)
「【0036】
送風器17は、翼体を有するブロアモータであり、ブラケット側伝熱部材25側に吸い込み方向を向けてブラケット側伝熱部材25に取り付けられている。送風器17は、光発電素子20が発電した電力により駆動される。
【0037】
送風器17は、光発電素子20から与えられた電力により駆動されることで、ブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43に伝熱分配されて放熱され昇温した流体(空気)を吸い込み、ボディ側伝熱部材19側に向けて放出する。」
(2g)
「【0042】
光発電素子20は、例えば高品質酸化亜鉛等や太陽電池等の光発電素子であり、発電素子ブラケット51を介してライトベース部材35の下面に取り付けられている。この光発電素子20の前方側にはエクステンション54が配置されており、この光発電素子20は前方から直接見えないようになっている。
【0043】
光発電素子20は、配線(供給手段)52を通じて送風器17に電気的に接続されており、第1の光源ユニット11と第2の光源ユニット12とが駆動された際に、第1のLED21と、第2のLED(図1に示される。)53と、リフレクタ23と、投影レンズ24と、からの光のみを受けて外部からの外光を受けない位置に配置されている。これにより、第1のLED21と第2のLED53の発光中に与えられた光を電力に変換して、配線52を通じて送風器17を駆動させる。また、第1の光源ユニット11及び第2の光源ユニット12が駆動されないときは、光発電素子20は発電を行わず、送風器17を駆動させない。」
(2h)
「【0052】
また、送風器17は、金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されているブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43から、各LED21,32,41,53、リフレクタ23,34、投影レンズ24の熱を吸熱した流体を吸い込むとともに、この流体を灯室16内に循環させるため、内部対流により融雪性及び放熱性を向上させることができる。」
(2i)
「【0060】
本実施形態の車両用灯具60は、第1実施形態と同様の作用効果を奏するために、それらの説明は省略されるが、特に本実施形態によれば、ペルチェ素子等の熱電変換素子20を用いることで、各LED21,32,41,53から与えられた発光熱を効率良く電力に変換して送風器66を駆動させることができる。また、ボディ側伝熱部材62の縦向きフィン63によって、昇温流体をランプボディ14の後板47から天板64に向けて強制的に進路変更させることができる。また、後板47側の縦向きフィン50に加えて設けられた天板64側の縦向きフィン65によって、放熱性をさらに向上させることができる。」


上記ウ(2a)?(2h)及び図1?2から、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「車両用灯具10は、区画された灯室16内に、第1の光源ユニット11と、翼体を有するブロアモータである送風器17と、光発電素子20と、を収容し、
第1の光源ユニット11は、第1のLED21を備えるとともに、金属製のブラケット22及びブラケット側伝熱部材25を備え、
光発電素子20は、第1のLED21の発光中に与えられた光を電力に変換して、配線52を通じて、翼体を有するブロアモータである送風器17を駆動させ、
翼体を有するブロアモータである送風器17は、光発電素子20が発電した電力により駆動され、金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されている、ヒートシンクであるブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43から、第1のLED21の熱を吸熱した流体を吸い込み、ボディ側伝熱部材19側に向けて放出する、車両用灯具10。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)
引用発明1の「灯油その他の燃料を用いたランプ」は、技術常識に照らすと、「燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる」ことが明らかであるから、本願補正発明の「燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる燃焼式光熱源で構成され」る「光熱源装置」に相当する。
(イ)
引用発明1の「熱電発電ブロック」と本願補正発明の「太陽光発電装置」とは、「発電装置」の限度で共通し、引用発明1の「放熱フィン」は、本願補正発明の「放熱器」に相当するといえること、及び、上記(ア)を踏まえると、引用発明1の「熱電発電ランプ」と本願補正発明の「光熱源」とは、「光熱源装置、発電装置、放熱器を含む装置」の限度で共通するといえる。

以上より、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「光熱源装置は、燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる燃焼式光熱源で構成され、光熱源装置、発電装置及び放熱器を含む装置。」
<相違点1>
「光熱源装置、発電装置及び放熱器を含む装置」に関して、
本願補正発明は、「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源」であって、「光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱」するものであって、その構成は、
「太陽光発電装置(102)は、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体をポンピングし、
電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)は、電気モータ(EM100)により駆動されるエアフローファン装置(1012)によって構成され、太陽光発電装置(102)により出力する電気エネルギーによって駆動され、光熱源装置(101)、光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)、光熱源装置(101)により形成される熱空間の三者の全部またはその中の一部を通過する気相流体を圧送する」のに対して、
引用発明1は、そのような特定の無い「熱電発電ランプ」である点。

イ 判断
(ア)
相違点1について検討するに当たり、上記相違点1に係る本願補正発明の構成と引用発明2との対応関係を明らかにするために、まず、本願補正発明と引用発明2とを対比すると、以下のとおりとなる。
a
引用発明2の「第1のLED21」は、「同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる」ものであることは、技術常識に照らして明らかであるといえるので、光と熱の発生源、すなわち、「光熱発生源」ということができる。 そして、引用発明2の「第1の光源ユニット11」は、「光熱発生源」である「第1のLED21を備える」ものであるから、「光熱発生源を備える装置」ということができる。
他方、本願補正発明の「灯油ヒーター、燃焼式光熱源」は、「同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる」ものであるから、「光熱発生源」ということができる。
そして、本願補正発明の「光熱源装置(101)」は、「灯油ヒーター、燃焼式光熱源で構成され」ているから、「光熱発生源を備える装置」ということができる。
そうすると、引用発明2の「第1の光源ユニット11は、第1のLED21を備える」ことと、本願補正発明の「光熱源装置(101)は、燃焼すると同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源で構成され」ることとは、「光熱発生源を備える装置は、同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる光熱発生源で構成され」るという構成の限度で共通するといえる。
b
引用発明2の「光発電素子20」及び「ブロアモータ」は、それぞれ、本願補正発明の「太陽光発電装置(102)」及び「電気モータ(EM100)」に相当する。
引用発明2の「翼体を有するブロアモータである送風器17(1032)」は、本願補正発明の「電気モータにより駆動されるエアフローファン装置」及び「エアフローファン装置(1032)」に相当する。
c
上記a及びbでの対比を踏まえると、引用発明2の「光発電素子20は、第1のLED21の発光中に与えられた光を電力に変換」することと、本願補正発明の「太陽光発電装置(102)は、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換する」こととは、「太陽光発電装置は、光熱発生源を備える装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換する」ことという構成の限度で共通するといえる。
d
引用発明2の「配線52を通じて翼体を有するブロアーモータである送風器17を駆動させ」ることは、送風器17が駆動、すなわち作動するわけであるから、翼体の回転によって周囲の空気すなわち気相流体が圧送または移動されること、すなわち「気相流体がポンピングされる」ことは、明らかである。
e
上記a,c及びdでの対比を踏まえると、引用発明2の「光発電素子20は、第1のLED21の発光中に与えられた光を電力に変換して、配線52を通じて、翼体を有するブロアモータである送風器17を駆動させ」ることと、本願補正発明の「太陽光発電装置(102)は、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱源装置(101)の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体をポンピング」することとは、「太陽光発電装置は、光熱発生源を備える装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱発生源を備える装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置を駆動し、気相流体をポンピング」するという構成の限度で共通するといえる。
f
引用発明2の「光発電素子20が発電した電力」は、本願補正発明の「太陽光発電装置により出力する電気エネルギー」に相当することから、上記bでの対比を踏まえると、引用発明2の「翼体を有するブロアモータである送風器17は、光発電素子20が発電した電力により駆動され」ることは、本願補正発明の「電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)は、電気モータ(EM100)により駆動されるエアフローファン装置(1012)によって構成され、太陽光発電装置(102)により出力する電気エネルギーによって駆動され」ることに相当する。
g
引用発明2の「第1の光源ユニット11」は、「金属製のブラケット22及びブラケット側伝熱部材25を備え」るものであるから、かかる「金属製のブラケット22及びブラケット側伝熱部材25」は、「第1の光源ユニット11」に配置されているといえるし、同様に、引用発明2の「金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されている、ヒートシンクであるブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43」も、「第1の光源ユニット11」に配置されているといえる。
また、かかる「横向きフィン43」は、「金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されている」こと及び技術常識に照らし、本願補正発明の「放熱器」に相当するといえる。
そうすると、引用発明2の「第1の光源ユニット11」に配置される「金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されている、ヒートシンクであるブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43」と、本願補正発明の「光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)」とは、上記aでの対比をも踏まえると、「光熱発生源を備える装置に配置される放熱器」という構成の限度で共通するといえる。
h
引用発明2の「第1のLED21の熱を吸熱した流体を吸い込むとともに、伝熱部材19側に向けて放出する」ことは、「翼体を有するブロアモータである送風器17」が駆動され、空気すなわち気相流体が、圧送又は移動する際に、「金属製のブラケット22に伝熱可能に接続されている、ヒートシンクであるブラケット側伝熱部材25の横向きフィン43から」、吸熱した気相流体である「流体を吸い込むとともに、伝熱部材19側に向けて放出する」ことで放熱するものであるから、引用発明2の「第1のLED21の熱を吸熱した流体を吸い込むとともに、伝熱部材19側に向けて放出する」ことと、本願補正発明の「光熱源装置(101)、光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)、光熱源装置(101)により形成される熱空間の三者の全部またはその中の一部を通過する気相流体を圧送し、光熱源装置(101)に協力して放熱を行う」こととは、上記a、gでの対比をも踏まえると、「光熱発生源を備える装置に配置される放熱器を通過する気相流体を圧送し、光熱発生源を備える装置に協力して放熱を行う」という構成の限度で共通するといえる。
i
引用発明2の「車両用灯火具10」は、「区画された灯室16内」に、「第1の光源ユニット11」と、「翼体を有するブロアモータである送風器17」と、「光発電素子20」と、を収容するものである。
ここで、上記b及びdでの対比によれば、引用発明2の「翼体を有するブロアモータである送風器17」は、本願補正発明の「電気モータにより駆動されるエアフローファン装置」に相当し、当該「送風器17」は、周囲の空気すなわち気相流体を圧送又は移動させるものであるから、引用発明2の「翼体を有するブロアモータである送風器17」は、本願補正発明の「流体圧送装置」にも相当し、「気相流体を圧送」するものといえる。
そして、当該「送風機17」を駆動するためのエネルギーは、「第1の光源ユニット11」に配置された「第1のLED21」からの光エネルギーを「光発電素子20」により変換して得られる電気エネルギーであるから、上記fでの対比をも踏まえると、かかるエネルギーは、「光電エネルギー」ということができるとともに、「車両用灯火具10」自体のエネルギー、すなわち「自分のエネルギー」ということができる。
以上に加え、上記gでの対比をも踏まえると、引用発明2の「車両用灯火具10は、区画された灯室16内に、第1の光源ユニット11と、翼体を有するブロアモータである送風器17と、光発電素子20と、を収容」することと、本願補正発明の「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置(1032)を駆動し、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱」することとは、「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置を駆動し、気相流体を圧送し、光熱発生源を備える装置に協力して放熱」するという構成の限度で共通するといえる。
(イ)
以上を総合し、本願補正発明の用語等を用いて引用発明2を整理すると、以下のとおりである。
「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置を駆動し、気相流体を圧送し、光熱発生源を備える装置に協力して放熱し、
光熱発生源を備える装置は、同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる光熱発生源によって構成され、
太陽光発電装置は、光熱発生源を備える装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱発生源を備える装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置を駆動し、気相流体をポンピングし、
電気モータにより駆動されるエアフローファン装置は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置によって構成され、太陽光発電装置により出力する電気エネルギーによって駆動され、光熱発生源を備える装置に配置される放熱器を通過する気相流体を圧送し、光熱発生源を備える装置に協力して放熱を行う自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源。」
(ウ)
引用発明1の熱電発電ランプには、放熱フィンが設けられているところ、刊行物1には、「なお、熱電発電ブロックの上面にも放熱フィンを設ける」(摘示(1c))と記載されているように、放熱効果をより向上することを意識した記載が認められるから、引用発明1には、通常の放熱効果をより向上しようと試みる動機付けが存在するといえる。そして、放熱効果をより向上しようとしたときに、放熱フィンによる放熱に加えて送風器による強制放熱を採用することは設計事項にすぎない。
また、刊行物1には、灯油その他の燃料を用いたランプ(本願補正発明の「光熱源装置」に相当する。)の炎の熱を用いて発電し、ラジオ等の電気を使う機器を動作させることが記載されているから(摘示(1b)及び(1d)参照)、引用発明1の熱電発電ランプは、自分の発生するエネルギーから得られる発電電力を他の用途に利用する機能を備えているといえる。
(エ)
ここで、刊行物2には、「自ら発電した電力で送風を行うことができる」(摘示(2a))などと記載されているから、引用発明2の車両用灯具についても、自分の発生するエネルギーから得られる発電電力を他の用途に利用する機能を備えているといえる。
また、刊行物2には、「本発明の目的は、・・・放熱性を向上させることができる車両用灯具を提供することにある」(摘示(2a))、「縦向きフィン65によって、放熱性をさらに向上させることができる。」(摘示(2i))といった記載があるから、引用発明2は、放熱効果をより向上することを意識した発明であるということもできる。
(オ)
さらに、刊行物2には、発光熱を電力に変換する手段として、引用発明2の他に、熱電変換素子を用いる実施例も記載されていること、及び、燃焼式光熱源の光を電力に変換することは周知技術であるといえること(米国特許第4778378号明細書(burner 30,104、photovoltaic array 34,42,188 、Fig1-2)、特開昭49-111237号公報(炎検出素子2、太陽電池2b、1頁右下欄1?10行、2頁右上欄5?9行、第1図、第5図)、特開2000-4039号公報(光電変換体3、段落【0004】、【0013】、【0015】、図1)等参照。)をも考慮すると、引用発明1において、「灯油その他の燃料を用いたランプ」から発生する熱エネルギーと光エネルギーのうち、光エネルギーを電力に変換することは、単なる設計事項にすぎないというべきである。
(カ)
以上によれば、引用発明1には、送風器による強制放熱を採用する動機付けがあるばかりでなく、引用発明1と引用発明2とは、自分の発生するエネルギーから得られる発電電力を他の用途に利用するという機能においても、放熱効果をより向上することを意識した点でも、共通するといえるものであり、引用発明2(上記(イ)を参照)を引用発明1に適用する動機付けは充分にあるといえること、及び、燃焼式光熱源の光によって発電を行うことが設計事項であるといえることから、引用発明2を引用発明1に適用して、引用発明1において、ガラスまたは透明プラスチック板を通過する燃焼の光によって発電し、その電力を利用して、金属板の外側の面に設けた放熱フィン(本願補正発明の「放熱器」に相当する。)を通過する気相流体を圧送するように、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置を駆動することで、光熱源装置に協力して放熱を行うようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
(キ)
本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著なものということはできない。
(ク)
なお、仮に上記相違点1にかかる本願補正発明の構成の「通過する気相流体を圧送」することが、本願の図4に図示される実施例のように、通過する前に気相流体を圧送することで圧送された気相流体が通過することを意味し、エアフローファン装置(1012)の送風方向の下流側に放熱器を有する構成を想定しているとしても、かかる構成については、ファンを用いた強制放熱では周知・慣用の技術事項にすぎないから、単なる設計事項にすぎないというべきである。

(4)小括
したがって、本願補正発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物1に記載された発明(引用発明1)及び刊行物2に記載された発明(引用発明2)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとはいえない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年8月23日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成28年1月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 刊行物の記載事項及び発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、刊行物2の記載事項は、上記第2[理由]3(2)ウに示したとおりである。
また、上記刊行物2に記載された発明は、上記第2[理由]3(2)エに示した[引用発明2]のとおりである。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

本願発明は、本願補正発明において「光熱源装置(101)」が、「灯油ヒーター、燃焼式光熱源」に限定されたいたものを、「発光ダイオード(LED)」「等」の「灯具装置」をも含み得るものとされているといえる。

上記第2[理由]3(3)イ(ア)における本願補正発明と引用発明2との対比を踏まえると、上記第2[理由]3(3)イ(イ)の「光熱発生源」及び「光熱発生源を備える装置」は、それぞれ、「第1のLED21」及び「第1のLED21を備える装置」ともいえる。

以上より、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置を駆動し、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱し、その構成は下記を含み、
光熱源装置は、同一構造で光と熱が生じる装置、灯具装置のうち電気エネルギーによって駆動される発光ダイオード(LED)、アーク発光装置、ガスランプ発光装置または電熱線の電熱発光装置等であって、入力する電気エネルギーを通して、同一構造で光エネルギーと熱エネルギーが生じる灯具装置、燃焼すると同時に光と熱が生じる光熱源装置、同時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる灯油ヒーター、燃焼式光熱源、または、通電時に熱エネルギーと光エネルギーが生じる電熱器によって構成され、
太陽光発電装置は、光熱源装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電装置によって構成され、光熱源装置の光エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、電気モータを駆動してから、エアフローファン装置を駆動し、気相または液相流体をポンピングし、
電気モータにより駆動されるエアフローファン装置は、電気モータにより駆動されるエアフローファン装置によって構成され、太陽光発電装置により出力する電気エネルギーによって駆動され、気相流体を圧送し、光熱源装置に協力して放熱を行う自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源。」
<相違点2>
本願発明は、「光熱源装置(101)、光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)、光熱源装置(101)により形成される熱空間の三者の全部またはその中の一部を通過する気相流体を圧送し」ているのに対して、引用発明2は、「第1のLED21を備える装置に配置される放熱器を通過する気相流体を圧送し」ている点。

(2)判断
以下、相違点2について検討する。

上記(1)イ及び上記第2[理由]3(3)イ(ア)aを踏まえると、引用発明の「第1のLED21を備える装置」は、本願発明の「光熱源装置(101)」に相当するといえる。
したがって、引用発明2の「第1のLED21を備える装置に配置される放熱器を通過する気相流体を圧送し」ていることは、本願発明の「光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)を通過する気相流体を圧送し」ていることに相当するといえることから、上記相違点2に係る本願発明の構成の「その中の一部」が「光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)」を意味すると解すると、上記相違点2は、相違点とはいえないから、本願発明は、刊行物2に記載された発明(引用発明2)である。

仮に、上記相違点2に係る本願発明の構成の「その中の一部」が「光熱源装置(101)に配置される放熱器(1013)」に限らないとしても、冷却の範囲を広げて、他の部分まで冷却することは、当業者が適宜になし得る設計事項にすぎないといえる。
また、上記相違点2にかかる本願発明の構成の「通過する気相流体を圧送」することが、エアフローファン装置(1012)の送風方向の下流側に放熱器を有する構成を想定しているとしても、かかる構成については、上記第2[理由]3(3)イ(ク)で述べたとおり、単なる設計事項にすぎないというべきである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の優先日前に頒布された刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の優先日前に頒布された刊行物2に記載された発明(引用発明2)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-10 
結審通知日 2017-05-16 
審決日 2017-06-06 
出願番号 特願2011-274407(P2011-274407)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F21V)
P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 和幸米山 毅  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
島田 信一
発明の名称 自分の光電エネルギーによって流体圧送装置を駆動する光熱源  
代理人 服部 雅紀  

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