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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1333835 |
審判番号 | 不服2016-8607 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-09 |
確定日 | 2017-11-14 |
事件の表示 | 特願2014-533527「顔認識に基づくコンピューティング・デバイスへのログイン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日国際公開,WO2013/048621,平成26年12月25日国内公表,特表2014-535090,請求項の数(26)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2012年8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月28日 米国)を国際出願日とする出願であって, 平成26年5月27日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成27年8月5日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,さらに平成27年8月27日付けで手続補正がなされ,平成27年9月14日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年12月24日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成28年2月5日付けで審査官により拒絶査定(原査定)がなされ,これに対して平成28年6月9日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年6月30日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成29年5月30日付けで当審により拒絶理由が通知され,平成29年9月26日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1-26に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明26」という。)は,平成29年9月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-26に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 第1のユーザをコンピューティング・デバイスにログインさせる方法であって, 前記コンピューティング・デバイスに動作可能に結合されたカメラを介して前記第1のユーザの第1の画像を受信すること, 前記受信した第1の画像に基づいて前記第1のユーザの身元を判別すること, 前記第1のユーザの前記判別された身元が第1の所定の身元と一致する場合に,少なくとも前記第1のユーザの前記身元が前記第1の所定の身元と一致することに基づいて,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせること, 前記コンピューティング・デバイスに動作可能に結合されたカメラを介して第2のユーザの顔の第2の画像を受信すること, 前記受信した第2の画像に基づいて前記第2のユーザの身元を判別すること, 前記第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合に,前記第1のユーザ及び前記第2のユーザに対して,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせることを確認する指示を発行すること,を含み, 前記指示は,さらに,前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせるための条件として前記第2のユーザに英数字情報を提供するよう指示することなく,当該第2のユーザにジェスチュアを提供するよう指示し, 前記指示に応じて,前記コンピューティング・デバイスのタッチ・センシティブ・エリア内で所定のジェスチュアと一致するジェスチュアを受信すること,及び, 受信した前記ジェスチュアに応じて,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせること, を含む,方法。」 なお,本願発明2-26の概要は以下のとおりである。 本願発明2-11は,本願発明1を減縮した発明である。 本願発明12-17は,それぞれ本願発明1,3-5,7,8に対応するコンピュータプログラムの発明である。 本願発明18-26は,それぞれ本願発明1,2,7,15,4-6,8,9に対応するコンピューティング・デバイスの発明である。 第3 引用例,引用発明等 1.引用例1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1(特開平11-25040号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。) 「【0015】 【発明の実施の形態】以下に本発明をマルチユーザ情報処理端末に適用した場合の実施形態を添付図にもとづき説明する。図1は,本発明によるマルチユーザ端末装置の実施形態の一例の概要を示すブロック図である。図2は,図1に示されるマルチユーザ端末装置をネットワーク・コンピュータを含めたコンピュータに適用した例におけるワープロソフトを利用した場合のフローチャートを示すものである。 【0016】まず,入力部1を通してワープロソフトがユーザAのプルアップメニュー(図3(A)参照)より選択される(ステップS1)と,システム側はそのアクションがユーザAによってなされたものであると理解して,ログイン・ユーザ格納部12に格納されている現在のログイン・ユーザが既にユーザAとなっているかどうかをユーザチェック部2で確認する(ステップS2)。ここで,既にユーザAがログイン・ユーザ格納部12に格納されていた場合は,現在の画面を変更することなく,つまり既に開いている他のアプリケーションのウインドウを閉じることなく,アプリケーション起動部5より新たにアプリケーションデータベース15より取り出したワープロソフトを起動し,ワープロソフトのウインドウを開く(ステップS12)。 【0017】しかし,現在のログイン・ユーザがユーザAでなかった場合,例えば,ユーザBであった場合に,ユーザAのワープロソフトを起動するためには,ユーザAをログイン・ユーザにする必要があるので,ユーザAのログイン画面を呼び出し表示する(ステップS3)。このユーザAのログイン画面を伴う処理は,ユーザAがログイン画面でパスワードを入力した時に(ステップS4),ユーザAのパスワード,アクセス権等の情報が格納されているユーザ情報登録部13を利用してパスワード照合部3が行うログイン処理で,ここでは,あらかじめ設定された回数N回以内にユーザAのパスワードが正しく入力されると,パスワードを有効と判断する(ステップS3?S5)。 【0018】ログインしようとするユーザがユーザAであると判断されると,データ待避処理部4Tによってそれまで開いていた,ユーザBの作業過程にある未保存のアプリケーションのデータが有るかを検出し(ステップS6),有る場合に,未保存のアプリケーションのデータを,ユーザBの保存領域14の仮保存領域14tに待避させる仮保存処理を行う(ステップS7)。この仮保存処理は,仮保存領域14tとして確保されているメモリ容量に依存するところが大きいため,ユーザの設定,またはシステムによって限定することができるものとすると良い。そして,このデータの待避処理(ステップS7)と共にそれまでログインしていたユーザBは強制的にログアウトされる(ステップS8)。 【0019】この後,今度はユーザAがログイン・ユーザとしてシステム内に設定される(ステップS9)。」 したがって,上記引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ユーザAをマルチユーザ端末装置にログインさせる方法であって, 入力部を通してワープロソフトがユーザAのプルアップメニューより選択されると,システム側はそのアクションがユーザAによってなされたものであると理解し,ユーザチェック部で,ログイン・ユーザ格納部に格納されている現在のログイン・ユーザがユーザAとなっているかを確認し, 現在のログイン・ユーザがユーザBであった場合に,ユーザAのログイン画面を呼び出し表示し,ユーザAからログイン画面にパスワードが入力されると,パスワード照合部は,ユーザ情報登録部を利用してユーザAから入力されたパスワードが有効であるかを判断し, パスワード照合部によって,ログインしようとするユーザがユーザAであると判断されると,それまでログインしていたユーザBを強制的にログアウトし,この後,ユーザAをログイン・ユーザとしてシステム内に設定する,方法。」 2.引用例2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(特開2003-67339号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0015】 【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1であるログイン個人認証装置を示す構成図である。図において,(中略)18は認証手段で,例えば認証回路,19は照合データである顔特長データを格納する顔特長データベース,20はユーザの顔画像を撮影する撮影手段で,例えばシステムの付属カメラである。(中略)また,カメラ20は,例えば人口網膜チップや超小型CCDカメラによる可視,赤外線撮像装置などであり,ユーザがログインを行う端末機に目立たないように取り付けられている。 【0016】次に,実施の形態1における動作について説明する。システムへのログインを操作しているユーザの顔画像をカメラ20で撮影する。この撮影した顔画像情報を画像取得回路11によってコンピュータで処理可能なディジタル電気信号に変換する。その後,マッピング回路12でマッピング処理を行い,(中略)二次元顔画像を作成する。」 「【0021】次に,照合リスト作成回路15によって,(中略),今システムへのログインを操作しようとしているユーザに関する照合パラメータリストを作成する。図7(a)は照合パラメータリストの一例を示す説明図である。(中略) 【0022】照合回路16は,照合リスト作成回路15で作成された照合パラメータリストの照合パラメータ(照合データ群)を顔特長データベース19に格納されている顔特長データの照合用パラメータリストと比較照合する。顔特長データベース19に予め格納されている照合用パラメータリストの一例を図7(b)に示す。(中略)認証許可されるユ-ザの氏名とそのユーザの予め設定した特長点Point xa,xb・・xnで構成され,各pointの数値は,その特長点のx軸又はy軸における相対距離を示している。照合回路16は,図7(a)と図7(b)の各特長点Point xa,xb・・xnの数値をそれぞれ比較し,一致している数値が多いユーザの氏名と合致point数を図7(a)の照合パラメータリストにユーザ候補データとして設定する。認証回路18はこの照合用パラメータリストの合致point数に応じて,システムへのログインを操作しているユーザのログイン許可又は拒否を認証する。」 「【0025】この実施の形態では,目立たないように設置されたカメラ20でログインを操作しているユーザを撮影してログイン許可又はログイン拒否を行なうため,ユーザはログイン認証に対する入力動作をする必要がない。(中略)また,特に,ログインしようとしているユーザの顔画像をユーザの注意を促すことなく撮影して認証情報としている。」 したがって,上記引用例2には,システムの付属カメラを介してユーザの画像を受信し,受信した画像に基づいてログインしようとしているユーザの照合パラメータリストを作成し,作成された照合パラメータリストが,認証許可されるユ-ザの照合パラメータリストと一致する場合にログイン許可を行う,という技術的事項が記載されていると認められる。 3.引用例3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例3(特開2007-133845号公報)には(特に,段落【0030】-【0034】,図3-4を参照),携帯電話から特定のWebページにログインする際,ユーザがユーザ名とパスワードを入力し,正当なユーザであると判定されるとログイン確認用画面が表示され,ユーザが「YES」枠をクリックすると当該Webページが表示される,という技術的事項が記載されていると認められる。 4.引用例4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例4(特開2007-58357号公報)には(特に,段落【0024】,【0028】を参照),ログアウトのボタンの押下があった場合,利用者に対して,ログアウトさせることを確認する確認画面を送信し,確認画面の確認ボタンの押下に応じて利用者をログアウトさせる,という技術的事項が記載されていると認められる。 5.引用例5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例5(特開2007-114931号公報)には(特に,段落【0039】-【0040】,【0046】-【0048】を参照),認証対象者の2枚の顔画像は,2台のカメラを用いて,認証対象者の顔に対して異なる視点から撮られており,受信した顔画像のステレオ視の画像から顔の特徴点の3次元位置を算出し,これに基づいて認証対象者の認証を行う,という技術的事項が記載されていると認められる。 6.引用例6について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例6(特開2003-233816号公報)には(特に,段落【0012】-【0025】,図4,6,9を参照),カメラが撮像した連続する顔画像から,表情データの時系列である表情データ列を定義し,当該表情データ列に基づいて表情変化パタンの認証を行い,表情データ列と登録表情データ列との関係が,所定の認証条件に一致する場合にアクセスを許可する,という技術的事項が記載されていると認められる。 7.引用例7について 原査定の拒絶の理由に引用された引用例7(特開2006-340346号公報)には(特に,段落【0020】,【0029】-【0039】を参照),カメラなどを含むホームエンタテインメントシステムと統合された電話ターミナルは,ユーザーからバイオメトリックデータを受信し,当該バイオメトリックデータに基づいてユーザーの身元を確認する,という技術的事項が記載されていると認められる。 8.引用例8について 原査定の拒絶査定に引用された引用例8(特開2007-48218号公報)には(特に,段落【0005】-【0006】を参照),顔画像による認証方式では,意図し得ない認証が生じうる,という技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア.引用発明の「ユーザB」,「マルチユーザ端末装置」,「ユーザA」は,それぞれ,本願発明1の「第1のユーザ」,「コンピューティング・デバイス」,「第2のユーザ」に相当する。 イ.引用発明の,「入力部を通してワープロソフトがユーザAのプルアップメニューより選択されると,システム側はそのアクションがユーザAによってなされたものであると理解」することは,本願発明1の,「第2のユーザの身元を判別すること」に対応する。 ウ.引用発明の,「ユーザAのログイン画面を呼び出し表示し,ユーザAからログイン画面にパスワードが入力されると,パスワード照合部は,ユーザ情報登録部を利用してユーザAから入力されたパスワードが有効であるかを判断し」,「ログインしようとするユーザがユーザAであると判断されると,それまでログインしていたユーザBを強制的にログアウトし,この後,ユーザAをログイン・ユーザとしてシステム内に設定する」ことは,本願発明1の,「第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合に」,「前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせること」に対応する。 エ.引用発明において「現在のログイン・ユーザがユーザBで」ある場合,ユーザBのログインに際しては,ユーザAと同様に,ユーザBがプルアップメニューよりソフトウェアを選択すると,システム側は,そのアクションがユーザBによってなされたものであると理解して,ログイン画面でパスワードを入力させ,パスワード照合部が,パスワードが有効と判断すれば,ユーザBはログイン・ユーザとしてシステム内に設定されることは明らかであるから,本願発明1の「第1のユーザの身元を判別すること」及び「第1のユーザの前記判別された身元が第1の所定の身元と一致する場合に,少なくとも前記第1のユーザの前記身元が前記第1の所定の身元と一致することに基づいて,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせる」ことに対応する。 オ.以上より,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 <一致点> 「第1のユーザをコンピューティング・デバイスにログインさせる方法であって, 前記第1のユーザの身元を判別すること, 前記第1のユーザの前記判別された身元が第1の所定の身元と一致する場合に,少なくとも前記第1のユーザの前記身元が前記第1の所定の身元と一致することに基づいて,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせること, 第2のユーザの身元を判別すること, 第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合に, 前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせること, を含む,方法。」 <相違点1> ユーザの身元を判別することに関し,本願発明1は,「コンピューティング・デバイスに動作可能に結合されたカメラを介して」第1,第2のユーザの第1,第2の画像を受信し,受信した第1,第2の画像に基づいて,それぞれ第1,第2のユーザの身元を判別するのに対して,引用発明は,カメラを用いること,またカメラを介して受信したユーザの画像に基づいてユーザの身元を判別することは特定されていない点。 <相違点2> コンピューティング・デバイスから第1のユーザをログアウトさせ,第2のユーザをログインさせる場合として,本願発明1は,「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」とするのに対して,引用発明は,「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在」するかについて何ら特定されていない点。 <相違点3> コンピューティング・デバイスから第1のユーザをログアウトさせ,第2のユーザをログインさせることに関し,本願発明1は,「第1のユーザ及び前記第2のユーザに対して,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせることを確認する指示を発行」するのに対して,引用発明は,そのような構成を備えていない点。 <相違点4> 本願発明1は,「指示は,さらに,前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせるための条件として前記第2のユーザに英数字情報を提供するよう指示することなく,当該第2のユーザにジェスチュアを提供するよう指示」することであって,「指示に応じて,前記コンピューティング・デバイスのタッチ・センシティブ・エリア内で所定のジェスチュアと一致するジェスチュアを受信する」と,「受信した前記ジェスチュアに応じて,前記第1のユーザを前記コンピューティング・デバイスからログアウトさせ及び前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせる」のに対して,引用発明では,「指示」や「ジェスチュア」に関する構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 まず上記相違点2について検討する。 相違点2に係る本願発明1の「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」というのは,カメラの検出エリア内に第1及び第2のユーザが存在している場合と解されるところ,引用発明は,ユーザがカメラの検出エリア内に存在しているか否かを判断するものでなく,その動機付けもない。また,引用例2-8には,カメラが,複数のユーザを同時に検出する場合について何ら記載されていない。 よって,引用発明において,引用例2-8に記載の技術を適用することにより,上記相違点2の構成を想到することは容易とはいえない。 したがって,上記相違点1,3,4について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-11について 本願発明2-11も,本願発明1の「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明12-26について 本願発明12,18は,本願発明1に対応するプログラム,物の発明であり,本願発明1の「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 また,本願発明13-17,19-26は,それぞれ,本願発明12,18を減縮した発明であって,本願発明1の「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1-4,7-14,16-20,22,25,26について上記引用例1-8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,平成29年9月26日付け手続補正により補正された請求項1-26は,「第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に,前記第2のユーザの前記判別された身元が第2の所定の身元と一致する場合」に対応する構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1-26は,上記引用例1に記載された発明及び上記引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について ア.当審では,請求項1の「第1のユーザのログイン中」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年9月26日付けの手続補正により,「前記第1のユーザが前記カメラの検出エリア内に存在し,前記第1のユーザのログイン中に」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 イ.当審では,請求項1の「前記第1のユーザ及び前記第2のユーザに対して,・・・を確認する指示を発行すること,前記指示に応じて前記第1のユーザ又は前記第2のユーザから有効な確認を受信すること」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年9月26日付けの手続補正により,「前記指示は,さらに,前記第2のユーザを前記コンピューティング・デバイスにログインさせるための条件として前記第2のユーザに英数字情報を提供するよう指示することなく,当該第2のユーザにジェスチュアを提供するよう指示し,前記指示に応じて,前記コンピューティング・デバイスのタッチ・センシティブ・エリア内で所定のジェスチュアと一致するジェスチュアを受信すること」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 ウ.当審では,請求項11の「第1のユーザの前記身元に一致する前記第2の所定の身元」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年9月26日付けの手続補正により,「第1のユーザの前記身元に一致する前記第1の所定の身元」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 エ.当審では,請求項1-26の「ログイン」と「ログオン」が特定する事項,及び「ログオフ」と「ログアウト」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年9月26日付けの手続補正により,それぞれ「ログイン」,「ログアウト」へ表現が統一された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1-26は,当業者が引用発明及び引用例2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-30 |
出願番号 | 特願2014-533527(P2014-533527) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
佐久 聖子 須田 勝巳 |
発明の名称 | 顔認識に基づくコンピューティング・デバイスへのログイン |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |