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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333917
審判番号 不服2017-693  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-18 
確定日 2017-10-26 
事件の表示 特願2014-161988「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日出願公開、特開2014-230900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年8月26日に出願された特願2009-195596号の一部を平成26年8月8日に新たに特許出願したものであって、平成27年7月28日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して同年9月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月18日付けで最後の拒絶理由通知がされ、これに対して同年5月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月4日付け(発送日:同年11月15日)で同年5月9日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年1月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年1月18日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年1月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正前の平成27年9月25日付けの手続補正書における請求項1の記載と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ、次のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。

(補正前:平成27年9月25日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口と、
遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口と、
前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機であって、
前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものであることを特徴とするパチンコ遊技機。」

(補正後:平成29年1月18日付け手続補正)
「【請求項1】
A 遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口と、
B 遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口と、
C 前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機であって、
D 前記図柄表示装置は、遊技領域形成部材であるレールの外側に配置されるとともに、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、当たり価値の異なる複数の種別をそれぞれ異なる組み合わせ態様で表示可能な前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものであることを特徴とするパチンコ遊技機。」
(下線部は補正箇所を示す。A?Dは本願補正発明を分説するために当審で付した。)。

2.補正の適否

(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の記載について、以下の補正事項を含むものである。

本件補正前の請求項1における「前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである」という記載を、本件補正後の請求項1において「前記図柄表示装置は、遊技領域形成部材であるレールの外側に配置されるとともに、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、当たり価値の異なる複数の種別をそれぞれ異なる組み合わせ態様で表示可能な前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである」とする補正。

(2)補正の目的等についての検討
上記補正事項は、「図柄表示装置」について、「遊技領域形成部材であるレールの外側に配置される」ものに限定し、それに配置される「その他の遊技関連情報の表示部」を「LEDの単体を列状に配置した」ものに限定し、それが表示する「前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄」を「当たり価値の異なる複数の種別をそれぞれ異なる組み合わせ態様で表示可能な」ものに限定する補正であり、かつ、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記「1.本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項

(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由(平成28年3月18日付け拒絶理由通知)に引用文献2として引用された特開2008-212355号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1-ア)「【0027】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る遊技機であるパチンコ機(遊技機)10の前面部には、主として、外枠12と、内枠14と、前面枠16と、上皿部18と、下皿部20と、施錠装置22と、発射ハンドル24などが設けられている。」

(1-イ)「【0034】
また、内枠14には、遊技領域28(図3参照)の形状に合致した開口部(図示省略)が形成されている。この内枠14の内側面には、遊技盤26(図3参照)が取り付けられる。これにより、遊技者は、遊技盤26の遊技領域28を内枠14の開口部及び前面枠16の開口部30を通して視認することができる。」

(1-ウ)「【0039】
ここで、本実施形態のパチンコ機10では、例えば、大当りとして2種類のものが予め設定されている。具体的には、「7、7、7」などの同一の奇数数字の擬似特別図柄が3桁揃うことにより成立する確変大当りがある。また、「8、8、8」などの同一の偶数数字の擬似特別図柄が3桁揃うことにより成立する通常大当りがある。」

(1-エ)「【0063】
また、図3に示すように、遊技領域28上であってセンター役物54の下方には、始動入賞装置60が配置されている。始動入賞装置60には、ベース部材60Dに2つの始動口60A、60Bが一体的に設けられた構成となっている。一方の始動口60Aは、ベース部材60Dの上部に設けられており、常時開口した箱状に形成されている。他方の始動口60Bは、ベース部材60Dの下部に設けられており、箱状に形成されているが、一対の翼片部60Cが開閉可能に設けられたチューリップ式の構成、すなわち普通電動役物となっている。各始動口60A、60Bの内部には、遊技球の通過を検知する始動口スイッチ212(図4参照)が設けられている。また、一方の始動口60Bの内部には、翼片部60Cを作動させるための普通電動役物ソレノイド222(図4参照)が設けられている。この一対の翼片部60Cが左右に開くと始動口60Bの開放面積が大きくなって遊技球の入球可能性が大きくなる開放状態となり、一対の翼片部60Cが閉じその離間距離が小さくなると始動口60Bの開放面積が小さくなって遊技球の入球の可能性が小さくなる通常状態となる。なお、遊技球が各始動口60A、60Bのいずれか一方に入賞すると、特別図柄(大当り)の抽選処理が開始されるとともに、特別図柄表示LED148及び演出図柄表示装置56において特別図柄の変動表示が開始される(特別図柄遊技の開始)。」

(1-オ)「【0067】
また、遊技領域28上であってセンター役物54の左下方側には、主制御基板202からの制御信号に基づいて本図柄(特別図柄の本図柄及び普通図柄の本図柄を意味する)を表示制御するLED表示基板(図柄表示装置)66が配置されている。このLED表示基板66は、特別図柄の本図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、複数の普通図柄保留表示LED150と、複数の特別図柄保留表示LED152と、普通図柄の本図柄を表示する2個の普通図柄表示LED154と、を備えている。
【0068】
各普通図柄保留表示LED150及び各特別図柄保留表示LED152は、丸形の赤色LEDで構成されており、特別図柄表示LED148に近接して配置されている。普通図柄保留表示LED150は、普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を普通図柄の保留とし、通過ごとに順次点灯しシフト表示するものである。また、特別図柄保留表示LED152は、始動口60A、60Bに入球した遊技球の数も特別図柄の保留とし、入球ごとに順次点灯しシフト表示するものである。特別図柄表示LED148の変動表示が開始するたびに、未始動回数が消化され、1個の特別図柄保留表示LED152は消灯される。また、普通図柄も普通図柄表示LED154の変動表示が開始するたびに、未始動回数が消化され、1個の普通図柄保留表示LED150が消灯される。そして、特別図柄表示LED148に予め定められた大当り図柄が停止表示されると大当りが発生し、後述の大入賞口156が開放状態となる。また、2個の普通図柄表示LED154が予め定められた表示態様(当り図柄)で停止表示されると、普通図柄遊技の当りが発生し、始動入賞装置60の一方の始動口60Bが開放状態となる。このとき、始動入賞装置の他方の始動口60Aは、構造上、常時開放した状態となっている。なお、特別図柄表示LED148にて表示される特別図柄の本図柄と、演出図柄表示装置56にて表示される特別図柄の擬似図柄とは、同一の遊技結果(抽選結果)を示すものである。」

(1-カ)上記(1-オ)の段落【0067】には、「複数の特別図柄表示LED148・・・複数の普通図柄保留表示LED150・・・複数の特別図柄保留表示LED152」と記載されているから、図3において符号「148」、「150」及び「152」で示された箇所には、それぞれ、複数の特別図柄表示LED148、複数の普通図柄保留表示LED150及び複数の特別図柄保留表示LED152が図示されており、図3の図示内容から、符号「148」、「150」及び「152」で示された箇所のそれぞれにおいては、複数の「○」で記載された部材が、列状に配置されていることがみてとれる。
よって、図3には、複数の特別図柄表示LED148、普通図柄保留表示LED150及び特別図柄保留表示LED152が、それぞれ列状に配置されていることが図示されているといえる。

上記(1-ア)?(1-オ)の記載事項、上記(1-カ)で認定される図示内容により、以下の事項が導かれる。

(1-キ)上記(1-エ)の段落【0063】には、「遊技球が各始動口60A、60Bのいずれか一方に入賞すると、特別図柄・・・の抽選処理が開始されるとともに、特別図柄表示LED148・・・において特別図柄の変動表示が開始される」と記載され、上記(1-オ)の段落【0068】には、「特別図柄表示LED148にて表示される特別図柄・・・は、・・・抽選結果・・・を示すものである。」と記載されているから、始動口60Aへの遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始され、始動口60Bへの遊技球の入賞により、抽選処理及び抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始されるといえる。
また、上記(1-エ)の段落【0063】には、「遊技領域28上・・・には、始動入賞装置60が配置されている。始動入賞装置60には、・・・始動口60A、60Bが・・・設けられた構成となっている。」と記載されているから、始動口60A及び始動口60Bは、遊技領域28上に設けられているということができる。
そして、上記(1-イ)の【0034】の「内枠14・・・には、遊技盤26・・・が取り付けられる。・・・遊技盤26の遊技領域28」という記載により、遊技領域28は、遊技盤26の取り付けられた内枠14に設けられているということができ、上記(1-ア)の段落【0027】の「パチンコ機(遊技機)10・・・には、・・・内枠14・・・が設けられている。」という記載により、内枠14は、パチンコ機10に設けられているといえるから、遊技領域28がパチンコ機10に設けられていることは明らかである。
したがって、始動口60A及び始動口Bは、パチンコ機10に設けられているといえる。
よって、刊行物1には、
パチンコ機10が、
遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60Aと、
遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60Bと、を有することについて記載されているといえる。

(1-ク)上記(1-エ)の段落【0063】には、「遊技球が各始動口60A、60Bのいずれか一方に入賞すると、特別図柄・・・の抽選処理が開始される」と記載され、上記(1-オ)の段落【0068】には、「特別図柄表示LED148にて表示される特別図柄・・・は、・・・抽選結果・・・を示すものである。」と記載されているから、特別図柄表示LED148は、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄を表示するものであるといえる。
また、上記(1-オ)の段落【0067】には、「遊技領域28上・・・には、・・・LED表示基板(図柄表示装置)66が配置されている。このLED表示基板66は、特別図柄・・・を表示する・・・特別図柄表示LED148・・・を備えている。」と記載されているから、図柄表示装置である特別図柄表示LED148は、遊技領域28上に配置されたLED表示基板66に配置されているといえる。
したがって、遊技領域28上に配置された図柄表示装置であるLED表示基板66は、特別図柄表示LED148に、始動口60Aへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄と、始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄とを表示するといえる。
そして、上記(1-イ)の段落【0034】の「内枠14・・・には、遊技盤26・・・が取り付けられる。・・・遊技盤26の遊技領域28」という記載により、遊技領域28は、遊技盤26の取り付けられた内枠14に設けられているということができ、また、上記(1-ア)の段落【0027】の「パチンコ機(遊技機)10・・・には、・・・内枠14・・・が設けられている。」という記載により、内枠14はパチンコ機10に設けられているといえるから、遊技領域28がパチンコ機10に設けられていることは明らかである。
したがって、遊技領域28上に配置されたLED表示基板66は、パチンコ機10に設けられているといえる。
よって、刊行物1には、パチンコ機10が、始動口60Aへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄と、始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄とを特別図柄表示LED148に表示する図柄表示装置であるLED表示基板66を有することについて記載されているといえる。

(1-ケ)上記(1-オ)の段落【0067】には、「LED表示基板66は、特別図柄・・・を表示する複数の特別図柄表示LED148と、複数の普通図柄保留表示LED150と、複数の特別図柄保留表示LED152・・・を備えている。」と記載され、上記(1-オ)の段落【0068】には、「各普通図柄保留表示LED150及び各特別図柄保留表示LED152は、・・・特別図柄表示LED148に近接して配置されている。普通図柄保留表示LED150は、普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を・・・表示するものである。また、特別図柄保留表示LED152は、始動口60A、60Bに入球した遊技球の数も・・・表示するものである。」と記載されている。
また、上記(1-カ)により図3には、複数の特別図柄表示LED148、普通図柄保留表示LED150及び特別図柄保留表示LED152が、それぞれ列状に配置されていることが図示されている。
したがって、LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置した図柄表示装置であるといえる。
また、上記(1-エ)の段落【0063】には、「特別図柄(大当り)の抽選」と記載され、上記(1-オ)の段落【0068】には、「特別図柄表示LED148に・・・大当り図柄が停止表示されると大当りが発生し・・・特別図柄表示LED148にて表示される特別図柄・・・は、・・・抽選結果・・・を示すものである。」と記載され、上記(1-ウ)の【0039】には、「大当りとして2種類のものが・・・設定されている。具体的には、・・・確変大当りがある。また、・・・通常大当りがある。」と記載されているから、特別図柄表示LED148は、大当りの抽選結果として、確変大当りと通常大当りとの2種類を大当り図柄で停止表示するものであるといえる。
そして、上記認定事項(1-キ)により、特別図柄は、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示すものであるといえる。
よって、刊行物1には、LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置したものであり、複数の特別図柄表示LED148により表示される特別図柄により、確変大当りと通常大当りとの2種類の大当りの抽選結果を大当り図柄で停止表示し、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示すことについて記載されているといえる。

上記(1-ア)?(1-オ)の記載事項、上記(1-カ)で認定された図示内容、及び(1-キ)?(1-ケ)の認定事項により、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物1発明」という。)。
「a 遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60Aと(上記(1-キ))、
b 遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60Bと(上記(1-キ))、
c 始動口60Aへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄と、始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄とを特別図柄表示LED148に表示する図柄表示装置であるLED表示基板66を有するパチンコ機10であって(上記(1-ク))、
d LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置したものであり、複数の特別図柄表示LED148により表示される特別図柄により、確変大当りと通常大当りとの2種類の大当りの抽選結果を大当り図柄で停止表示し、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す、パチンコ機10(上記(1-ケ))。」

(2-2)刊行物2
平成28年11月4日付け補正の却下の決定に引用文献4として引用された特開2008-148731号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(2-ア)「【0010】
以下、本発明の実施形態を示す一実施例について図面を用いて説明する。本発明の遊技機をパチンコ遊技機(以下、単に遊技機という)に適用した実施例を図1?図18に示す。
【0011】
図1は、本実施例の遊技機1の正面図である。図1に示すように、遊技機1の前面部は、本体枠2、中枠3、前面枠4、上皿部5、下皿部6、施錠装置9、遊技盤20等を備えている。なお、図1では遊技盤20の詳細な図示を省略している。また、中枠3は前面枠4等が前面側に配置されているため、図1においては明示されていない。」

(2-イ)「【0019】
図2に示すように、遊技盤20には、遊技盤20の表面に設けられた外レール22と内レール23とにより略円形状の遊技領域21が形成されている。遊技領域21内には、中央装置24、普通図柄作動ゲート27、始動口28、図柄表示装置28、大入賞装置(特別電動役物)33、左入賞口34、35、右入賞口36、37、第1装飾部材50、第2装飾部材60等の遊技装置が配設されている。なお、図示を省略しているが、遊技領域21には各遊技装置との位置バランスを考慮して多数の障害釘が配設されている。
【0020】
中央装置24は遊技領域21の略中央部に配置され、図柄表示装置25が設けられている。大入賞装置33は遊技領域21における中央装置24の下方に配置されている。第1装飾部材50は遊技領域21における大入賞装置33の左側に配置され、第2装飾部材60は遊技領域21における大入賞装置33の右側に配置されており、装飾部材50、60はいわゆるサイド飾りを構成している。また、第1装飾部材50には、普通図柄表示装置56(図3(a)参照)と左入賞口34、35がユニット化されており、第2装飾部材60には、2つの特別図柄表示装置61、62(図3(b)参照)と右入賞口36、37がユニット化されている。」

(2-ウ)「【0033】
第1特別図柄表示部61と第2特別図柄表示部62は、それぞれ7個のLEDから構成されており、これらのLEDにより第1本図柄と第2本図柄が表示される。これらの特別図柄表示部61、62を構成する各LEDは、点灯および消灯が可能となっており、これら各LEDの点灯および消灯の組合せにより本図柄の複数の表示態様を表示できる。そして、7個のLEDで表示される本図柄の組合わせのうち、特定の組合せが当り特別図柄(大当り図柄)の組合せとして設定されており、当り特別図柄以外の組合せが外れ特別図柄(外れ図柄)と設定されている。本実施例では、本図柄の変動表示を各LEDが点灯と消灯を繰り返す点滅表示で行うものとしている。
【0034】
図4は、特別図柄表示部61、62による特別図柄(本図柄)の表示態様を示しており、(a)は外れ図柄の組合せを示し、(b)、(c)は当り図柄の組合せを示している。図4(b)、(c)に示す当り図柄の組合せには、通常大当りを発生させる通常大当り図柄(図4(b))と、確変大当りを発生させる確変大当り図柄(図4(c))がある。」

(2-エ)図4(b)及び図4(c)から、図4(b)の通常大当たり図柄と、図4(c)の確変大当り図柄とで、特別図柄表示部のパターンが異なることがみてとれる。
また、上記(2-ウ)の段落【0033】には、「第1特別図柄表示部61と第2特別図柄表示部62は・・・7個のLEDから構成されており、これらのLEDにより第1本図柄と第2本図柄が表示される。・・・特別図柄表示部61、62を構成する各LEDは、点灯および消灯が可能となっており、これら各LEDの点灯および消灯の組合せにより本図柄の複数の表示態様を表示できる。」と記載され、上記(2-ウ)の段落【0034】には、「図4は、特別図柄表示部61、62による特別図柄(本図柄)の表示態様を示しており、・・・図4(b)、(c)に示す当り図柄の組合せには、通常大当りを発生させる通常大当り図柄(図4(b))と、確変大当りを発生させる確変大当り図柄(図4(c))がある。」と記載されている。
したがって、図4(b)及び図4(c)に示された特別図柄表示部のパターンは、第1特別図柄表示部61と第2特別図柄表示部62を構成する複数のLEDにより、通常大当り及び確変大当りを、それぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせで表示した、通常大当り図柄及び確変大当り図柄であるといえる。
よって、図4(b)及び図4(c)には、第1特別図柄表示部61及び第2特別図柄表示部62が、複数のLEDから構成され、通常大当り及び確変大当りを、各LEDのそれぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせによる、通常大当り図柄及び確変大当り図柄で表示することが図示されているといえる。

上記(2-ア)?(2-ウ)の記載事項及び上記(2-エ)で認定される図示内容より、以下の事項が導かれる。

(2-オ)上記(2-イ)の段落【0020】には「第2装飾部材60には、2つの特別図柄表示装置61、62・・・ユニット化されている。」と記載されているから、特別図柄表示装置61、62は、第2装飾部材60に設けられているといえる。
そして、上記(2-ア)の段落【0011】には、「遊技機1・・・は、・・・遊技盤20・・・を備えている。」と記載され、上記(2-イ)の段落【0019】には、「遊技領域21内には、・・・第2装飾部材60・・・が配設されている。」と記載されているから、第2装飾部材60は遊技機1の備える遊技盤に設けられているといえる。
したがって、遊技機1が特別図柄表示装置61、62を有するといえる。
そして、上記(2-ア)の段落【0010】には「パチンコ遊技機(以下、単に遊技機という)」と記載されているから、段落【0011】の記載における「遊技機」は「パチンコ遊技機」のことであるといえる。
よって、刊行物2には、特別図柄表示装置61、62がパチンコ機に設けられていることについて記載されているといえる。

(2-カ)上記(2-エ)により、第1特別図柄表示部61及び第2特別図柄表示部62は、複数のLEDから構成され、通常大当り及び確変大当りを、各LEDのそれぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせによる、通常大当り図柄及び確変大当り図柄で表示するものである。
また、上記認定事項(2-オ)により、特別図柄表示装置61、62はパチンコ機に設けられているといえる。
よって、刊行物2には、パチンコ機に設けられた第1特別図柄表示部61及び第2特別図柄表示部62は、複数のLEDから構成され、通常大当り及び確変大当りを、各LEDのそれぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせによる、通常大当り図柄及び確変大当り図柄で表示するものであることが記載されているといえる。

上記(2-ア)?(2-ウ)の記載事項及び上記(2-エ)で認定される図示内容、及び上記認定事項(2-オ)、(2-カ)により、刊行物2には、以下の発明(以下、「刊行物2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「複数のLEDから構成され、通常大当り及び確変大当りを、各LEDのそれぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせによる、通常大当り図柄及び確変大当り図柄で表示する、第1特別図柄表示部61及び第2特別図柄表示部62を有する、パチンコ機。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。なお、刊行物1発明の構成a?dに対応して見出し(a)?(d)を付した。

(a)刊行物1発明の、「始動口60A」への「遊技球の入賞により」「変動表示が開始される」「特別図柄」は、本願補正発明の「第1特別図柄」に相当する。
よって、刊行物1発明の「遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60A」は、本願補正発明の「遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口」に相当する。

(b)刊行物1発明の、「始動口60B」への「遊技球の入賞により」「変動表示が開始される」「特別図柄」は、本願補正発明の「第2特別図柄」に相当する。
よって、刊行物1発明の「遊技球の入賞により、抽選処理及び当該抽選処理の抽選結果を示す特別図柄の変動表示が開始される始動口60B」は、本願補正発明の「遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口」に相当する。

(c)上記(a)で検討したように、刊行物1発明の「始動口60A」は、本願補正発明の「第1始動口」に相当する。また、上記(b)で検討したように、刊行物1の「始動口60B」は、本願補正発明の「第2始動口」に相当する。
そして、刊行物1発明の「始動口60Aへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄」、「始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄」、「図柄表示装置であるLED表示基板66」及び「パチンコ機10」は、それぞれ、本願補正発明の「前記第1特別図柄」、「前記第2特別図柄」、「図柄表示装置」及び「パチンコ遊技機」に相当する。
よって、刊行物1発明の「始動口60Aへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄と、始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す特別図柄とを特別図柄表示LED148に表示する図柄表示装置であるLED表示基板66を有するパチンコ機10」は、本願補正発明の「前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機」に相当する。

(d)刊行物1発明の「特別図柄表示LED148」は、その1つが、本願補正発明の「LEDの単体」に相当するから、刊行物1発明の「特別図柄表示LED148」を「列状に配置」することは、本願補正発明の「LEDの単体を列状に配置」することに相当する。
したがって、刊行物1発明の「列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148」は、本願補正発明の「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部」に相当する。
また、刊行物1発明の「普通図柄保留表示LED150」または「特別図柄保留表示LED152」は、その1つが本願補正発明の「LEDの単体」に相当するから、刊行物1発明の「普通図柄保留表示LED150」または「特別図柄保留表示LED152」を「列状に配置」することは、本願補正発明の「LEDの単体を列状に配置」することに相当し、刊行物1発明の「普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数」及び「始動口60A、60Bに入球した遊技球の数」は、遊技に関連した特別図柄とは異なる情報であることは明らかであるから、本願補正発明の「その他の遊技関連情報」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152」は、本願補正発明の「LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部」に相当する。
また、刊行物1発明の「複数の特別図柄表示LED148と」、「複数の普通図柄保留表示LED150と、」「複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置」したことは、本願補正発明の「特別図柄の表示部と、」「その他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置した」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明の「LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置したものであ」ることは、本願補正発明と、「前記図柄表示装置は、」「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであ」る点で共通する。

また、刊行物1発明の「複数の特別図柄表示LED148」は「特別図柄」を「表示」するから、本願補正発明の「前記特別図柄の表示部を構成するランプ」に相当し、また、確変大当りと通常大当りの当りの価値が異なることは、パチンコ機の技術分野における技術常識であるから、刊行物1発明の「確変大当りと通常大当りとの2種類」は、本願補正発明の「当たり価値の異なる複数の種別」の「当たり」に相当する。
そして、刊行物1発明の「大当り図柄」は、本願補正発明の所定の「態様」に相当し、刊行物1発明の「始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す」「特別図柄」は、本願補正発明の「前記第1特別図柄と前記第2特別図柄」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「複数の特別図柄表示LED148により表示される特別図柄により、確変大当りと通常大当りとの2種類の大当りの抽選結果を大当り図柄で停止表示し、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す」ことは、本願補正発明と、「前記特別図柄の表示部を構成するランプの」「表示態様により、当たり価値の異なる複数の種別を」、所定の「態様で表示可能な前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示する」点で共通する。

また、上記(c)で検討したように、刊行物1発明の「パチンコ機10」は、本願補正発明の「パチンコ遊技機」に相当する。

よって、刊行物1発明の「LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置したものであり、複数の特別図柄表示LED148により表示される特別図柄により、確変大当りと通常大当りとの2種類の大当りの抽選結果を大当り図柄で停止表示し、始動口60Aまたは始動口60Bへの遊技球の入賞により開始される抽選処理の抽選結果を示す、パチンコ機10」は、本願補正発明と、「前記図柄表示装置は、」「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、」「前記特別図柄の表示部を構成するランプの」「表示態様により」、「当たり価値の異なる複数の種別を」所定の「態様で表示可能な前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである」「パチンコ遊技機」である点で共通する。
以上のことから、本願補正発明と刊行物1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「A 遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口と、
B 遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口と、
C 前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機であって、
D’ 前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの表示態様により、当たり価値の異なる複数の種別を、所定の態様で表示可能な前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである、パチンコ遊技機。」

[相違点]
(相違点1)(構成Dに関して)
「図柄表示装置」に関して、本願補正発明は、「遊技領域形成部材であるレールの外側に配置される」のに対して、刊行物1発明は、そのような構成を有しない点。

(相違点2)(構成Dに関して)
「図柄表示装置」「で表示可能な」「当たり価値の異なる複数の種別」の「態様」に関して、本願補正発明は、「それぞれ異なる組み合わせ態様で表示可能」であるのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を有するかが不明である点。

(4)判断
ア 相違点1についての判断
上記相違点1について検討する。パチンコ機の技術分野において、特別図柄が表示される図柄表示装置を、遊技領域形成部材であるレールの外側に配置することは、周知技術である(例えば、特開2006-330号公報の段落【0006】及び図1に記載された、特別図柄用可変表示装置110が遊技盤面103aより上方(レールの外側)に配置されている点、特開2008-228867号公報の段落【0264】、【0274】?【0275】、【0279】?【0280】及び図115、117に記載された、上特別図柄表示器1480及び下特別図柄表示器1490が、アウト口誘導通路1200aの外側の非遊技領域に設けられた機能表示飾り枠251cの機能表示ユニット1225に配置されている点、「MEGA SELECTION 潜確7セグ&ランプ判別攻略」,パチンコ攻略マガジン10.11号,株式会社双葉社,2008年9月12日(特許庁受入日),p.84-86における、p.84中央に図示された、「CRぱちんこ必殺仕事人III 桜バージョン」という機種における抽選結果を表示する「ヘソ入賞対応セグ」及び「電チュー入賞対応セグ」が、遊技領域を形成するレールの外側に配置されている点、同文献のp.85中央に図示された、「CRぱちんこアバンギャルド」という機種のパチンコ機における「ヘソ入賞対応セグ」及び「電チュー入賞対応セグ」が、レールの外側に配置されている点、同文献のp.86上部に図示された、「CRぱちんこ冬のソナタ2」という機種のパチンコ機における「ヘソ入賞対応セグ」及び「電チュー入賞対応セグ」が、レールの外側に配置されている点について参照されたい。)。
そして、刊行物1発明において、LED表示基板66をいずれの位置に配置するかは、当業者が適宜選択し得ることである。
よって、刊行物1発明における特別図柄の図柄表示装置であるLED表示基板66を、上記周知技術に基づいて遊技領域形成部材であるレールの外側に配置することによって、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点2についての判断
上記相違点2について検討する。上記(2)(2-2)で検討したように、刊行物2には、「複数のLEDから構成され、通常大当り及び確変大当りを、各LEDのそれぞれ異なる点灯及び消灯の組み合わせによる、通常大当り図柄及び確変大当り図柄で表示する、第1特別図柄表示部61及び第2特別図柄表示部62を有する、パチンコ機」について記載されている。
そして、刊行物1発明と刊行物2に記載された技術的事項とは、共に、パチンコ機において、複数のLEDを有する特別図柄の表示部により、確変大当り及び通常大当りといった、当たり価値の異なる複数の種別の当たりを表示する技術分野に属するものである。
よって、刊行物1発明のLED表示基板66による、確変大当り及び通常大当りの表示態様として、刊行物2に記載された技術的事項を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術的事項、及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術的事項、及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書第5頁第4行?第6頁第6行において、
「拒絶理由通知書において提示された引用文献1、2の何れにも、本願の「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、LEDの単体を列状に配置したその他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置」した「図柄表示装置」を「遊技領域形成部材であるレールの外側に配置」する構成に言及する記述はない。・・・引用文献3が示唆するのは、液晶表示器と「ひとつながり」となる位置に特別図柄表示器を配置するのであれば必ずしも遊技領域内でなくてもよいという意味であり、遊技領域を画成するレールの外側に、しかも液晶表示器から孤立して特別図柄表示器を配置するという意味にまで拡張して解釈すべきではない。
また、引用文献3の発明の目的は、遊技者の目を液晶表示器が表示する演出情報よりもむしろ図柄表示器が表示する特別図柄にも注視させることであり(段落〔0003〕、〔0005〕、〔0052〕参照)、本願発明が目的とする遊技者の視線を図柄表示装置から遠ざけ、それにより当たり判別をより困難にするという上記効果(A)(B)(C)とは明確に対立する。」
と主張している。
しかしながら、請求人の主張する「図柄表示装置」が「当たり価値の異なる複数の種別をそれぞれ異なる組み合わせ態様で表示」する構成については、上記(2)(2-2)で検討したように、上記刊行物2(特開2008-148731号公報、補正の却下の決定で引用された引用文献4)に記載された事項であり、請求人の主張する「図柄表示装置」を「遊技領域形成部材であるレールの外側に配置」することは、上記(4)アで検討したように、パチンコ機の技術分野における周知技術である。
したがって、請求人の上記主張における引用文献1については検討するまでもなく、上記(4)で検討したように、本願補正発明は刊行物1発明(刊行物1は請求人の上記主張における引用文献2に相当)に対して刊行物2に記載された技術的事項及び上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年9月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(A?D”は、本願発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】
A 遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口と、
B 遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口と、
C 前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機であって、
D” 前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものであることを特徴とするパチンコ遊技機。」

2.刊行物に記載された事項

(1)刊行物3
原査定の拒絶の理由(平成28年3月18日付け拒絶理由通知)に引用文献1として引用された特開2007-29242号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(3-ア)「【0042】
手段8:「遊技領域内に配置され遊技媒体が常時入賞可能な第一始動口と、
前記遊技領域内に配置され開放した場合に遊技媒体が入賞可能となる第二始動口と、
前記第一始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第一入賞状態検出手段と、
前記第二始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第二入賞状態検出手段と、
第一特別図柄が表示される第一特別図柄表示器と、
第二特別図柄が表示される第二特別図柄表示器と、
前記第一入賞状態検出手段による前記遊技媒体の検出に基づいて第一大当り判定用乱数を抽出し抽選を行う第一抽選手段と、
前記第一入賞状態検出手段によって検出された入賞状態に基づいて、第一大当り図柄用乱数を抽出し、前記第一抽選手段の抽選結果に対応した前記第一特別図柄の停止図柄を決定する第一表示態様決定手段と、
特定の遊技状態か否かを判定する遊技状態判定手段と、
該遊技状態判定手段によって前記特定の遊技状態になったことが判定されると、前記第二始動口を前記遊技媒体の入賞が可能な状態へと変化させ得る入賞率変更手段と、
前記第二入賞状態検出手段による前記遊技媒体の検出に基づいて第二大当り判定用乱数を抽出し抽選を行う第二抽選手段と、
前記第一入賞状態検出手段によって検出された入賞状態に基づいて、第一大当り図柄用乱数を抽出し、前記第二抽選手段の抽選結果に対応した前記第二特別図柄の停止図柄を決定する第二表示態様決定手段と、
前記第一入賞状態検出手段及び前記第二入賞状態検出手段による前記遊技媒体の検出順に従って前記第一特別図柄または前記第二特別図柄を変動させるとともに、前記第一表示態様決定手段または前記第二表示態様決定手段によって決定された停止図柄で前記第一特別図柄または前記第二特別図柄の変動を停止させる特別図柄変動制御手段と、
抽出された、前記第一大当り判定用乱数、前記第二大当り判定用乱数、前記第一大当り図柄用乱数、及び前記第二大当り図柄用乱数を記憶させることが可能な乱数記憶手段であって、第一始動記憶数と第二始動記憶数との合計である合計始動記憶数(「1」?「m」)の値に夫々対応付けられた、m個の記憶領域からなる乱数記憶手段と、
前記第一特別図柄または前記第二特別図柄の前記変動中に、前記第一入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合、一定回数を上限として前記第一始動記憶数を記憶するとともに、前記第一特別図柄の変動表示を、記憶された前記第一始動記憶数分だけ行わせる第一保留消化手段と、
前記第一特別図柄または前記第二特別図柄の前記変動中に、前記第二入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合、一定回数を上限として前記第二始動記憶数を記憶するとともに、前記第二特別図柄の変動表示を、記憶された前記第二始動記憶数分だけ行わせる第二保留消化手段と、
・・・」

(3-イ)「【0064】
手段14:手段1?手段13のいずれか一つの構成において、「前記遊技機は、パチンコ機である」ことを特徴とする。パチンコ機とは、遊技者が遊技機に投入する媒体である投入媒体と、遊技者が行う実質的な遊技に用いられる媒体である遊技媒体とを同一のものとした遊技機であり、投入された例えば遊技球等の媒体を用いて遊技が行われるタイプの遊技機の一種である。具体的には、「操作ハンドルの操作に対応して遊技球を発射する発射装置と、多数の障害釘、センター役物、表示手段等の適宜の機器が組み込まれたり、始動入賞口、大入賞口、通過口、到達口等の遊技球が入球する適宜の入球口が設けられた遊技領域と、発射装置から遊技領域に遊技球を導くレールと、遊技領域に導かれた遊技球の入球口への入球に応じたり、複数の入球口への遊技球の入球態様に応じて、所定数の遊技球を賞球として払い出す払出手段とを具備するもの」である。」

(3-ウ)「【0073】
以下、本発明の一実施形態であるパチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)を、図面に基づいて詳細に説明する。
[パチンコ機の全体構成について] 図1に基づき説明する。
図1はパチンコ機の外枠の一側に本体枠が開かれその本体枠の一側に前面枠が開かれた状態を示す斜視図である。なお、図1においては遊技領域における装飾部材が省略された図を示している。
パチンコ機1は、外枠2、本体枠3、前面枠4、及び遊技盤5等を備えて構成されている。外枠2は、上下左右の木製の枠材によって縦長四角形の枠状に形成され、同外枠2の前側下部には、本体枠3の下面を受ける下受板6を有している。外枠2の前面の片側には、ヒンジ機構7によって本体枠3が前方に開閉可能に装着されている。なお、外枠2は、樹脂やアルミニウム等の軽金属によって形成されていてもよい。」

(3-エ)「【0086】
また、センター役物91の下縁部には、第一特別図柄表示器(詳細は後述する)として機能する四つのLED110aと、第二特別図柄表示器として機能する四つのLED110bと、第一大当り抽選の保留状態を示す四つのLED(保留球ランプ)111aと、第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111bとが設けられている。さらに、センタ役物91の下縁部には、通過ゲート62への遊技球の通過による抽選結果(すなわち、普通抽選における抽選結果)を表示する普通図柄表示器を表示する普通図柄表示器428も設けられている。ここで、夫々の保留球ランプ111a,111bは、「第一大当り抽選」及び「第二大当り抽選」において、保留球数分(最大4回)だけ点灯するようになっている。」

(3-オ)「【0109】
[特別図柄表示器の構成について] 図3に基づき説明する。
本実施形態では、センター役物91の下縁部のうち、左右に夫々4つのLED110a,110bが配列されており、これらLED110a,110bの配列が第一特別図柄表示器332a(図31参照)及び第二特別図柄表示器332b(図32参照)として機能している。また、夫々の下側にある4つのLED111a,111bの配列が、第一大当り抽選用の保留球ランプ、及び第二大当り抽選用の保留数ランプ(始動記憶数ランプ)となっている。
【0110】
例えば、第一特別図柄表示器332aの機能はLED110aの点灯・消灯によって実現することができる。具体的には、始動入賞を契機として4つのLED110aをいろいろなパターンで点滅させることにより、第一大当り抽選における特別図柄の変動状態を表示する。そして、一定の変動時間が終了すると、4つのLED110aの点灯・消灯表示パターンによって特別図柄の確定した停止状態を表示する。これにより、抽選が行われると、その結果情報がLED110aの点灯・消灯によって報知される。なおLED110aの点灯・消灯による第一特別図柄の変動表示および停止表示の制御は、主制御基板131により行われる。
【0111】
さらに詳細に説明すると、個々のLED110aは1色(例えば赤色)の発光タイプであり、各LED110aは「消灯」、及び「点灯」の2通りに表示パターンを切り替えることができる。したがって、4つのLED110aを配列した場合の点灯・消灯表示パターンは、全部で16通り(24=16)のものを用意することができる。なお、ここでは説明の便宜のために1色だけとしているが、LED110aの点灯色は2色以上であってもよい。また、LED110aの配置は1箇所にまとまっている必要はなく、ばらばらに配置されていてもよいし、特に盤面上に配置されている必要もない。あるいは、特別図柄を5つ以上のLEDによって表示してもよいし、7セグメントLEDを用いて表示してもよい。なお、第二特別図柄表示器332bの機能は、第一特別図柄表示器332aと同様、LED110bの点灯・消灯によって実現することができる。」

(3-カ)図3により、「110a」及び「110b」で示された部材が、それぞれ列状に配置されていることがみてとれる。
そして、上記(3-オ)の段落【0109】には、「左右に夫々4つのLED110a,110bが配列されており、」と記載されているから、図3に記載された「110a」及び「110b」で示された部材は、夫々4つのLED110a,110bであるといえる。
よって、図3には、4つのLED110a及び4つのLED110bが列状に配置されていることが図示されているといえる。

上記(3-ア)?(3-オ)の記載事項及び上記(3-カ)により認定される図示内容により、以下の事項が導かれる。

(3-キ)上記(3-ア)の段落【0042】には、「前記第一始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第一入賞状態検出手段・・・前記第二始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第二入賞状態検出手段・・・第一特別図柄が表示される第一特別図柄表示器・・・第二特別図柄が表示される第二特別図柄表示器・・・前記第一入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合、・・・前記第一特別図柄の変動表示を、・・・行わせる・・・前記第二入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合、・・・前記第二特別図柄の変動表示を、・・・行わせる」と記載されているから、第一始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第一入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合に第一特別図柄の変動表示が行われ、第二始動口に前記遊技媒体が入賞したことを検出する第二入賞状態検出手段によって前記遊技媒体が検出された場合に前記第二特別図柄の変動表示が行われること、すなわち、第一始動口への遊技媒体の入賞により第一特別図柄の変動表示が行われ、第二始動口への遊技媒体の入賞により第二特別図柄の変動表示が行われることは明らかである。
よって、刊行物3には、遊技媒体の入賞により、第一特別図柄の変動表示が行われる第一始動口と、遊技媒体の入賞により、第二特別図柄の変動表示が行われる第二始動口について記載されているといえる。

(3-ク)上記(3-オ)の段落【0109】には「第一特別図柄表示器332a・・・及び第二特別図柄表示器332b」と記載され、上記(3-ア)の段落【0042】には、「第一特別図柄が表示される第一特別図柄表示器と、第二特別図柄が表示される第二特別図柄表示器」と記載されているから、第一特別図柄表示器332aは第一特別図柄が表示されるものであり、第一特別図柄表示器332bは第二特別図柄が表示されるものであるといえる。
また、上記(3-エ)の段落【0086】には、「第一大当り抽選の保留状態を示す四つのLED・・・111aと、第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111bとが設けられている。」と記載されている。
よって、刊行物3には、第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bについて記載されているといえる。

(3-ケ)上記(3-オ)の段落【0109】には、「LED110a,110bの配列が第一特別図柄表示器332a・・・及び第二特別図柄表示器332b・・・として機能している。」と記載され、上記(3-オ)の段落【0110】には、「第一特別図柄表示器332aの機能はLED110aの点灯・消灯によって実現することができる。・・・4つのLED110aの点灯・消灯表示パターンによって特別図柄・・・を表示する。」と記載され、上記(3-オ)の段落【0111】には、「第二特別図柄表示器332bの機能は、第一特別図柄表示器332aと同様、LED110bの点灯・消灯によって実現することができる。」と記載されているから、第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bは、4つのLED110a及び4つのLED110bを配列して、LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって特別図柄を表示するものであるといえる。
また、上記(3-ク)により、第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bは、第一特別図柄及び第二特別図柄を表示するものであるといえる。
そして、上記(3-カ)により、4つのLED110a及び4つのLED110bは列状に配置されているといえる。
したがって、第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bは、4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示するものであり、LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって第一特別図柄及び第二特別図柄を表示するものであることについて記載されているといえる。
また、上記(3-エ)の段落【0086】には、「センター役物91の下縁部には、・・・四つのLED110aと、・・・四つのLED110bと、第一大当り抽選の保留状態を示す四つのLED・・・111aと、第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111bとが設けられている。」と記載されているから、四つのLED110aと、四つのLED110bと、第一大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111bがセンター役物91の下縁部に設けられているといえる。
よって、刊行物3には、4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示する第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bとが、センター役物91の下縁部に設けられ、LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって第一特別図柄及び第二特別図柄を表示することについて記載されているといえる。

上記(3-ア)?(3-オ)の記載事項、上記(3-カ)で認定された図示内容、及び(3-キ)?(3-ケ)の認定事項により、刊行物3には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物3発明」という。)。

「a 遊技媒体の入賞により、第一特別図柄の変動表示が行われる第一始動口と(上記(3-キ))、
b 遊技媒体の入賞により、第二特別図柄の変動表示が行われる第二始動口と(上記(3-キ))、
c 第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bと、を有するパチンコ機であって(上記(3-ウ)、(3-ク))、
d 4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示する第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bとが、センター役物91の下縁部に設けられ、LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって第一特別図柄及び第二特別図柄を表示する、パチンコ機(上記(3-ウ)、(3-ケ))。」

3.対比
本願発明と刊行物3発明とを対比する。なお、刊行物3発明の構成a?dに対応して見出し(a)?(d)を付した。

(a)刊行物3発明の「遊技媒体」及び「第一特別図柄」は、それぞれ、本願発明の「遊技球」及び「第1特別図柄」に相当する。
また、刊行物3発明の「遊技媒体の入賞により、第一特別図柄の変動表示が行われる」ことは、「遊技媒体の入賞により」、「第一特別図柄の変動表示」を開始させる権利を発生させることを意味するから、本願発明の「遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる」ことに相当する。
よって、刊行物3発明の「遊技媒体の入賞により、第一特別図柄の変動表示が行われる第一始動口」は、本願発明の「遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口」に相当する。

(b)刊行物3発明の「第二特別図柄」は、本願発明の「第2特別図柄」に相当する。
また、刊行物3発明の「遊技媒体の入賞により、第二特別図柄の変動表示が行われる」ことは、「遊技媒体の入賞により」、「第二特別図柄の変動表示」を開始させる権利を発生させることを意味するから、本願発明の「遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる」ことに相当する。
よって、刊行物3発明の「遊技媒体の入賞により、第二特別図柄の変動表示が行われる第二始動口」は、本願発明の「遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口」に相当する。

(c)上記(a)で検討したように、刊行物3発明の「第一特別図柄」は本願発明の「前記第1特別図柄」に相当し、上記(b)で検討したように、刊行物3発明の「第二特別図柄」は本願発明の「前記第2特別図柄」に相当するから、刊行物3発明の「第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332b」は、本願発明の「前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される」機能を有する。
また、本願発明の構成D”により、本願発明の「図柄表示装置」は、「特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部と」からなるものであるといえる。
そして、刊行物3発明の「第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111b」は、遊技に関連した特別図柄とは異なる情報を表示するものであることは明らかであるから、本願発明の「図柄表示装置」の有する「その他の遊技関連情報の表示部」に相当する。
したがって、刊行物3発明の「第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111b」は、本願発明の「前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置」に相当する。
また、刊行物3発明の「パチンコ機」は、本願発明の「パチンコ遊技機」に相当する。
よって、刊行物3発明の「第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bと、を有するパチンコ機」は、本願発明の「前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機」に相当する。

(d)上記(c)で検討したように、刊行物3発明の「第一特別図柄及び第二特別図柄が表示される第一特別図柄表示器332a及び第二特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111b」は、本願発明の「図柄表示装置」に相当する。
また、刊行物3発明の「LED110a」または「LED110b」の1つは、本願発明の「LEDの単体」に相当するので、刊行物3発明の「4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示する第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332b」は、本願発明の「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部」に相当する。
また、上記(c)で検討したように、刊行物3発明の「第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111b」は、本願発明の「他の遊技関連情報の表示部」に相当する。
したがって、刊行物3発明の「4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示する第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bとが、センター役物91の下縁部に設けられ」ていることは、本願発明と、「前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを、」「配置した」点で共通する。

また、刊行物3発明の「LED110a」及び「LED110b」は、「特別図柄を表示する」から本願発明の「前記特別図柄の表示部を構成するランプ」に相当し、刊行物3発明の「点灯・消灯表示パターン」は、本願発明の「点灯および消灯の組合せによる表示態様」に相当する。
したがって、刊行物3発明の「LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって第一特別図柄及び第二特別図柄を表示する」ことは、本願発明の「前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示する」ことに相当する。
また、刊行物3発明の「パチンコ機」は、本願発明の「パチンコ遊技機」に相当する。

よって、刊行物3発明の「4つのLED110a及び4つのLED110bを列状に配置して特別図柄を表示する第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332bと、第一大当り抽選及び第二大当り抽選の保留状態を示す四つのLED111a及び四つのLED111bとが、センター役物91の下縁部に設けられ、LED110a及びLED110bの点灯・消灯表示パターンによって第一特別図柄及び第二特別図柄を表示する、パチンコ機」は、本願発明の構成D”’と、「前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを」「配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである」、「パチンコ遊技機」であるという点で共通する。

以上のことから、本願発明と刊行物3発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「A 遊技球の入賞により、第1特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第1始動口と、
B 遊技球の入賞により、第2特別図柄の変動表示を開始させる権利を発生させる第2始動口と、
C 前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄が表示される図柄表示装置を有するパチンコ遊技機であって、
D”’前記図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを配置したものであり、前記特別図柄の表示部を構成するランプの点灯および消灯の組合せによる表示態様により、前記第1特別図柄及び前記第2特別図柄を表示するものである、
パチンコ遊技機。」

[相違点](構成D”に関して)
「LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部」と、「その他の遊技関連情報の表示部」とが配置される「図柄表示装置」に関して、本願発明は「図柄表示装置」に「集約配置した」ものであるのに対して、刊行物3発明はそのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
上記第2の3.(2)(2-1)に示した刊行物1発明は、「LED表示基板66は、列状に配置されて特別図柄を表示する複数の特別図柄表示LED148と、列状に配置されて普通図柄作動ゲート64を通過した遊技球の数を表示する複数の普通図柄保留表示LED150と、列状に配置されて始動口60A、60Bに入球した遊技球の数を表示する複数の特別図柄保留表示LED152とを、近接して配置したものであ」る構成を有する。この構成は、上記第2の3.(3)で検討したように、「図柄表示装置は、LEDの単体を列状に配置した特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを、集約配置したものであ」る構成に相当する。
そして、刊行物1、3発明はともに特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部とを配置した図柄表示装置を有するパチンコ機の技術分野に属するものであり、刊行物3発明の図柄表示装置において、特別図柄の表示部と、その他の遊技関連情報の表示部との配置をいかなるものとするかは、当業者が適宜選択し得る程度のことである。
よって、刊行物3発明の図柄表示装置に配置される特別図柄の表示部(第一特別図柄表示器332a及び第一特別図柄表示器332b)と、その他の遊技関連情報の表示部(四つのLED111a、111b)とを、刊行物1発明に基づいて、集約配置することとし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物1発明、刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に予測できる範囲のものである。

よって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2017-08-28 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-12 
出願番号 特願2014-161988(P2014-161988)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 藤田 年彦
金田 理香
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 山本 文夫  

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