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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1333918
審判番号 不服2017-1461  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-01 
確定日 2017-10-26 
事件の表示 特願2012-153821「放射線画像診断装置及び撮像方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 4日出願公開、特開2013- 22455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月9日(パリ条約による優先権主張 2011年7月15日 米国)の出願であって、平成28年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定されたのに対し、平成29年2月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
間に不感帯を設けた複数の検出区域を有する検出器であって、前記複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器と、
前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、
前記生成された投影データから逐次近似再構成法を用いて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、
を具備する放射線画像診断装置であって、
前記複数の検出区域各々は、放射線を検出する検出素子に対応し、
前記不感帯は、前記放射線検出器上の前記検出素子の配列面内における検出素子以外の領域である、
放射線画像診断装置。」(下線は補正箇所を示す。)と補正された。

2 補正事項について
上記請求項1に対する補正は、不感帯を設けた複数の検出区域ついて「前記複数の検出区域各々は、放射線を検出する検出素子に対応し、前記不感帯は、前記放射線検出器上の前記検出素子の配列面内における検出素子以外の領域である」ことに限定する補正事項を含むものであり、いわゆる限定的減縮を目的とするものといえることから、請求項1に対する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 引用刊行物の記載事項及び引用発明
(1)記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-248843号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は、下記(2)の引用発明に関連する箇所に当審において付したものである。
なお、引用例1は原査定において提示されていないが、上記補正事項である「前記不感帯は、前記放射線検出器上の前記検出素子の配列面内における検出素子以外の領域である」という限定が加えられたことにより、提示するものである。

(1ア)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を添付図面を参照しながら説明する。図2は、本発明に係る2次元アレイ型放射線検出器を搭載したX線CT装置の構成を示す斜視図である。図2において、X線CT装置10は、ガントリー11と,被検体テーブル13と,制御装置(図示せず)などから構成される。ガントリー11には、開口部16を有し回転するスキャナ12が組み込まれている。スキャナ12の開口部16の一方の側にはX線源14が、もう一方の側には1個以上の放射線検出器15が取り付けられている。スキャナ12の開口部16には被検体テーブル13に寝載された被検体17が挿入される。被検体テーブル13は、被検体17を開口部16内の異なる位置に位置決めするためにモータ駆動方式で構成されている。X線源14及び放射線検出器15は、スキャナ12の回転に伴い、開口部16に挿入された被検体17の周りを回転し、被検体17を透過したX線量の分布(被検体17により減衰されたもの)を複数の異なる角度で収集する。収集された減衰測定値に基づいて被検体17の断面の再構成画像が作成され、この画像が画像表示装置(図示せず)上に表示される。
【0011】図1に本発明の2次元アレイ型放射線検出器の一実施例の斜視図を示す。図1は、2次元アレイ型放射線検出器の一部を示したもので、完成品では検出器素子21が直交2方向,すなわち縦及び横方向に多数個配列されている。この検出器素子21は、入射する放射線を検知することにより光を生ずるシンチレータ22と、シンチレータ22の発光を受光することによりシンチレータ22が検知した放射線の線量に対応する出力電気信号を発生する光検出器23と,シンチレータ22から横方向(チャンネル方向)に漏れた光をシンチレータ22内に戻すように反射させる光反射層を持つ仕切板24と,放射線が入射してくる上面方向に漏れた光を反射する上面反射層(図示せず)と,シンチレータ22を縦方向(スライス方向)に分離するためのスライス方向分離部25とから成る。本実施例の2次元アレイ型放射線検出器15は上記のX線CT装置に使用されるものであるので、シンチレータ22は通常横方向では幅が狭く、縦方向では幅が広くなり、かつ横方向がチャンネル方向に、縦方向がスライス方向に対応している。シンチレータ22が検知した放射線の線量に対応する出力電気信号は、信号線26を通じて放射線検出器15の外部に取り出される。」

(1イ)「【0013】・・・シンチレータ22のスライス方向に設けられたスライス方向分離部25は空気層から成り、その隙間はチャンネル間の隙間と同等に設定されている。」

(1ウ)図1として以下の図面が記載されている。

(2)引用発明
上記(1)の摘記事項から、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「入射する放射線を検知することにより光を生ずるシンチレータ22と、シンチレータ22の発光を受光することによりシンチレータ22が検知した放射線の線量に対応する出力電気信号を発生する光検出器23と、光反射層を持つ仕切板24と、空気層から成るスライス方向分離部25を有する検出器素子21が、直交2方向、すなわち縦及び横方向に多数個配列されている2次元アレイ型放射線検出器を搭載し、
前記放射線検出器で、被検体17を透過したX線量の分布(被検体17により減衰されたもの)を複数の異なる角度で収集し、
収集された減衰測定値に基づいて被検体17の断面の再構成画像を作成する、
X線CT装置。」(以下「引用発明1」という。)

4 対比・判断
(1)対比
補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「入射する放射線を検知することにより光を生ずるシンチレータ22と、シンチレータ22の発光を受光することによりシンチレータ22が検知した放射線の線量に対応する出力電気信号を発生する光検出器23」の区域は、「2次元アレイ型放射線検出器」におけるもので、それらは複数あるものであるから、補正発明の「放射線を検出する検出素子に対応」する「複数の検出区域」に相当する。

イ 引用発明1の「光反射層を持つ仕切板24と、空気層から成るスライス方向分離部25」は、検出素子以外の領域であり、「直交2方向,すなわち縦及び横方向に多数個配列されている2次元アレイ型放射線検出器」におけるものであるから、補正発明の「複数の検出区域」の「間に」「設けた」、「放射線検出器上の前記検出素子の配列面内における検出素子以外の領域である」「不感帯」に相当する。

ウ そして、引用発明1の「被検体17を透過し」「入射する放射線を検知することにより光を生ずるシンチレータ22と、シンチレータ22の発光を受光することによりシンチレータ22が検知した放射線の線量に対応する出力電気信号を発生する光検出器23」を有する「2次元アレイ型放射線検出器」は、補正発明の「複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器」に相当する。

エ 引用発明1の「前記放射線検出器で」「収集された減衰測定値」は「放射線の線量に対応する出力電気信号」であり、それに「基づいて被検体17の断面の再構成画像を作成する」のであるから、出力電気信号からいわゆる投影データを生成(補正発明の「前処理部」に相当)して、その生成された投影データから被検体に関する画像を再構成しているといえる。
してみれば、引用発明1の「前記放射線検出器で」「放射線の線量に対応する出力電気信号」として「収集された減衰測定値に基づいて被検体17の断面の再構成画像が作成する」部分と、補正発明の「前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、前記生成された投影データから逐次近似再構成法を用いて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部」とは、「前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、前記生成された投影データから前記被検体に関する画像を再構成する再構成部」の点で共通しているといえる。

オ 引用発明1の「X線CT装置」は、補正発明の「放射線画像診断装置」に相当する。

カ してみれば、補正発明と引用発明1とは、
(一致点)
「間に不感帯を設けた複数の検出区域を有する検出器であって、前記複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器と、
前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、
前記生成された投影データから前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、
を具備する放射線画像診断装置であって、
前記複数の検出区域各々は、放射線を検出する検出素子に対応し、
前記不感帯は、前記放射線検出器上の前記検出素子の配列面内における検出素子以外の領域である、
放射線画像診断装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
投影データから画像を再構成する際に、補正発明では「逐次近似再構成法」を用いているのに対し、引用発明1では、その方法を用いているかどうか不明である点。

(2)相違点についての判断
X線CT装置において、逐次近似再構成法である代数的手法、又は逆投影法である解析的手法を用いて投影データから画像を再構成することは本願優先日前周知のこと(例えば、特開昭60-17568号公報、「逐次近似法を用いたCT画像再構成法の考え方と驚異」MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.23 No.1 January 2005 pp.23-29、等参照)であり、上記周知技術に鑑みれば、引用発明においても上記2つのいずれかの手法を用いて投影データから画像を再構成しているといえることから、引用発明において逐次近似再構成法を選択して投影データから画像を再構成することは当業者が容易になし得たことである。

(3)補正発明の効果について
そして、上記相違点等に基づく補正発明の効果も、当業者が予期しうる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

(3)小括
したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?32に係る発明は、平成28年7月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?32に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の検出素子間に不感帯を設けた複数の検出区域を有する検出器であって、前記複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器と、
前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、
前記生成された投影データから逐次近似再構成法を用いて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、
を具備する放射線画像診断装置。」

2 引用刊行物の記載事項及び引用発明
(1)記載事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2010-119502号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は、下記(2)の引用発明に関連する箇所に当審において付したものである。
(2ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はコンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)の構成図を示す。・・・
【0012】
X線管10は、高圧発生部13からの高電圧の印加によりX線を曝射する。絞り12は、絞り駆動装置14の駆動により絞り径が可変し、X線管10から曝射されたX線量を調節する。
X線検出器11は、X線管10から曝射され、被検体Pを透過したX線を検出し、このX線量に応じた電気信号を出力する。このX線検出器11は、複数のX線検出素子をライン状に配置し、このライン状の素子列を複数列配列して構成される。このライン状の素子列は、例えば32列乃至64列の多列に構成されている。
【0013】
X線管10とX線検出器11とは、回転駆動装置15により被検体Pの周囲に連続して回転移動する。これにより、X線管10は、例えば円の移動軌跡T上に沿って回転移動する。この場合、X線管10とX線検出器11とは、1つの円の移動軌跡T上を繰り返して連続して回転移動する。
データ収集部16は、X線検出器11の各X線検出素子から出力される各電気信号を収集してデジタル変換し、収集データとしてタ操作コンソール2に送る。
・・・
【0017】
前処理部22は、データ収集部16からの収集データを再構成可能な投影データに処理する。
・・・
【0019】
又、再構成処理部24は、リアルタイムに再構成する最初の断層画像データと最後の断層画像データとを調節可能である。
再構成処理部24は、投影データに対する間引きを行い、この間引きの行われた投影データに基づいて断層画像データをリアルタイムに再構成する。間引き処理は、例えばビュー(View)間引き、列間引き等である。」

(2イ)「【0040】
再構成処理部24は、投影データに対して例えばビュー(View)間引き、列間引き等の間引きを行い、この間引きの行われた投影データに基づいて断層画像データをリアルタイムに再構成する。この間引き処理により再構成処理部24において演算処理するデータ量を減少すること、例えば被検体Pの断層画像データの画質に応じてデータ量を2分の1、3分の1等に任意に減少できる。特に、コーンビーム再構成は、データの演算量が多いので、間引き処理を行うことで演算速度を速くできる。」

(2)引用発明
上記(1)の摘記事項から、引用例2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「X線管10から曝射され、被検体Pを透過したX線を検出し、このX線量に応じた電気信号を出力するX線検出器11であって、複数のX線検出素子をライン状に配置し、このライン状の素子列を複数列配列して構成されるX線検出器11と、
X線検出器11の各X線検出素子から出力される各電気信号を収集してデジタル変換し、収集データとして操作コンソール2に送るデータ収集部16からの収集データを再構成可能な投影データに処理する前処理部22と、
ビュー(View)間引き、列間引き等である、投影データに対する間引きを行い、この間引きの行われた投影データに基づいて断層画像データをリアルタイムに再構成する再構成処理部24と、
を具備するコンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)。」(以下「引用発明2」という。)

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「被検体Pを透過したX線を検出し、このX線量に応じた電気信号を出力するX線検出器11であって、複数のX線検出素子をライン状に配置し、このライン状の素子列を複数列配列して構成されるX線検出器11」は、本願発明の「複数の検出区域を有する検出器であって、前記複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器」に相当する。

イ 引用発明2の「X線検出器11の各X線検出素子から出力される各電気信号を収集してデジタル変換し、収集データとして操作コンソール2に送るデータ収集部16からの収集データを再構成可能な投影データに処理する前処理部22」は、本願発明の「前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部」に相当する。

ウ 引用発明2の「ビュー(View)間引き、列間引き等である、投影データに対する間引きを行い、この間引きの行われた投影データに基づいて断層画像データをリアルタイムに再構成する再構成処理部24」と、本願発明の「前記生成された投影データから逐次近似再構成法を用いて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部」とは、「前記生成された投影データから前記被検体に関する画像を再構成する再構成部」の点で共通している。

エ 引用発明2の「コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)」は、本願発明の「放射線画像診断装置」に相当する。

オ してみれば、本願発明と引用発明2とは、
(一致点)
「複数の検出区域を有する検出器であって、前記複数の検出区域の各々は、被検体を透過した放射線を検出し、前記検出された放射線に応じた電気信号を発生する放射線検出器と、
前記生成された電気信号に基づいて投影データを生成する前処理部と、
前記生成された投影データから前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、
を具備する放射線画像診断装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
放射線検出器が、本願発明では「複数の検出素子間に不感帯を設けた」ものであるのに対し、引用発明2では「不感帯」を設けたものかどうか不明である点。

(相違点2)
投影データから画像を再構成する際に、本願発明では「逐次近似再構成法」を用いているのに対し、引用発明2では、その方法を用いているかどうか不明である点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明2の「複数のX線検出素子をライン状に配置し、このライン状の素子列を複数列配列して構成されるX線検出器11」において「ビュー(View)間引き、列間引き等」の「間引き」が行われる「複数のX線検出素子」の部分は、そこにX線検出素子が存在しても、それらからの投影データは画像を再構成する際に結果的に利用されないものであるから、本願発明における「複数の検出素子間に」「設けた」「不感帯」ともいえるものである。してみれば、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
加えて、本願発明における「不感帯」を、本願明細書の「図2A、図2B、及び図2Cにおいて、単一のX線検出区域は、X線検出のために駆動される単一のX線検出素子(有効検出素子)が占有する領域である。不感帯は、X線検出器上の配列面内の有効検出素子外の領域である。例えば、不感帯は、有効検出素子間に設けられた反射材が占有する領域である。また、不感帯は、有効検出素子の前面に設けられた散乱線除去グリッドによりX線が到達しないX線検出素子の部分領域であってもよい。また、不感帯は、X線検出に利用されないX線検出素子が占有する領域であっても良い。X線検出に利用されないX線検出素子は、X線スキャン時において駆動されないX線検出素子である。」(【0021】、下線は当審において付与した。)の記載に基づいて限定解釈したとしても、引用発明2における「ビュー(View)間引き、列間引き等」の「間引き」が行われる「複数のX線検出素子」の投影データは使用されないのであるから、「ビュー(View)間引き、列間引き等」の「間引き」が行われる「複数のX線検出素子」をX線スキャン時において駆動しないものとすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
上記第2の4の(2)相違点についての判断で記載したように、X線CT装置において、逐次近似再構成法である代数的手法、又は逆投影法である解析的手法を用いて投影データから画像を再構成することが本願優先日前周知のことであり、上記周知技術に鑑みれば、引用発明2においても上記2つのいずれかの手法を用いて投影データから画像を再構成しているといえることから、引用発明2において逐次近似再構成法を選択して投影データから画像を再構成することは当業者が容易になし得たことである。

ウ 本願発明の効果について
そして、上記相違点等に基づく本願発明の効果も、当業者が予期しうる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。
なお、本願発明は、本願明細書の【0004】に記載されている「X線コンピュータ断層撮影装置は、全数のX線検出素子が密集しているために高価である。この高いコストは、実質的には、多数のX線検出素子が配列されていることに起因する。さらに、多数のX線検出素子に接続された多数の電子ユニットが必要であることも、X線コンピュータ断層撮影装置が高コストであることの一因となっている。つまり、X線検出素子が密に配列されているほど、X線コンピュータ断層撮影装置が高価になる。」という課題を解決しようとするものであるが、そもそも、本願発明の「不感帯」が上記のとおり「X線検出に利用されないX線検出素子が占有する領域」であると、本願発明の「コストを低減」させることについては十分な効果があるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2017-08-23 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-13 
出願番号 特願2012-153821(P2012-153821)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三崎 仁
発明の名称 放射線画像診断装置及び撮像方法  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  

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