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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333921
審判番号 不服2017-2743  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-27 
確定日 2017-10-26 
事件の表示 特願2015-183679号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 60536号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年9月17日の出願であって,平成28年9月8日付けで拒絶理由が通知され,同年11月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成29年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成29年2月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年2月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり,平成28年11月10日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正を示す。)。

(補正前:平成28年11月10日付けの手続補正)
「【請求項1】
遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じたコマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段と
を備える遊技機であって,
前記表示制御手段は,前記表示手段の表示画像として,客待ち中における操作手段の所定の操作を契機として出現させる所定の動画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記主制御手段が生成したコマンドであるか否かに関わらず所定コマンドである場合,前記表示手段における前記動画像の表示を維持することを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正:平成29年2月27日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じたコマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段と
を備える遊技機であって,
前記表示制御手段は,前記表示手段の表示画像として,客待ち中における操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像であって,遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記主制御手段が生成したコマンドであるか否かに関わらず所定コマンドである場合,前記表示手段における前記遊技方法説明動画像の表示を維持することを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「動画像」に関して,「客待ち中における操作手段の所定の操作を契機として出現させる所定の動画像を表示させているとき」及び「表示手段における前記動画像の表示を維持する」という記載を,「客待ち中における操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像であって,遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像を表示させているとき」及び「表示手段における前記遊技方法説明動画像の表示を維持する」という記載に補正するものである。

(2)補正の目的等についての検討
上記補正事項は,「所定の動画像」,「動画像」を,それぞれ「遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像」,「遊技方法説明動画像」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は,段落【0550】及び【図122】,【図133】,【図136】,【図139】の記載に基づくものであるから,新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,上記「1 本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Fは,本願補正発明を分説するために当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じたコマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
B 少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
C 前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
D 前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段と
を備える遊技機であって,
E 前記表示制御手段は,前記表示手段の表示画像として,客待ち中における操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像であって,遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記主制御手段が生成したコマンドであるか否かに関わらず所定コマンドである場合,前記表示手段における前記遊技方法説明動画像の表示を維持すること
F を特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の平成28年9月8日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2015-12976号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0041】
パチンコ遊技機1には,例えば図2に示すような主基板11,演出制御基板12,音声制御基板13,ランプ制御基板14,払出制御基板19といった,各種の制御基板が搭載されている。また,パチンコ遊技機1には,主基板11と演出制御基板12との間で伝送される各種の制御信号を中継するための中継基板15なども搭載されている。その他にも,パチンコ遊技機1における遊技盤などの背面には,例えば情報端子基板,発射制御基板,インタフェース基板,タッチセンサ基板などといった,各種の基板が配置されている。また,パチンコ遊技機1は,各種スイッチ,異常検出用センサ群90?92,各種ソレノイド,各種表示装置,表示装置駆動部52など,図2に示す各種部材なども備える。」

(イ)「【0042】
主基板11は,メイン側の制御基板であり,パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための各種回路が搭載されている。主基板11は,主として,特図ゲームにおいて用いる乱数の設定機能,所定位置に配設されたスイッチ等からの信号を受け取る機能,演出制御基板12,払出制御基板19などからなるサブ側の制御基板に宛てて,指令情報の一例となる制御コマンド(後述の演出制御コマンドなど)を制御信号として出力して送信する機能,ホールの管理コンピュータに対して各種情報を出力する機能などを備えている。また,主基板11は,第1特別図柄表示装置4Aと第2特別図柄表示装置4Bを構成する各LED(例えばセグメントLED)などの点灯/消灯制御を行って第1特図や第2特図の可変表示を制御することや,普通図柄表示器20の点灯/消灯/発色制御などを行って普通図柄表示器20による普通図柄の可変表示を制御することといった,所定の表示図柄の可変表示を制御する機能も備えている。また,主基板11は,第1保留表示器25A,第2保留表示器25B,普図保留表示器25Cなどを制御して,各種保留記憶数を表示する機能も備えている。」

(ウ)「【0044】
演出制御基板12は,主基板11とは独立したサブ側の制御基板であり,中継基板15を介して主基板11から伝送された制御信号などを受信して,画像表示装置5や副画像表示装置51,スピーカ8L,8R及び遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった演出用の電気部品による演出動作を制御するための各種回路が搭載されている。すなわち,演出制御基板12は,画像表示装置5や副画像表示装置51における表示動作や,スピーカ8L,8Rからの音声出力動作の全部または一部,遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける点灯/消灯動作の全部または一部といった,演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させる機能を備えている。なお,この実施の形態では,パチンコ遊技機1において異常が発生した場合に,前記演出動作の1つとして,異常を報知する異常報知が行われる。
【0045】
音声制御基板13は,演出制御基板12とは別個に設けられた音声出力制御用の制御基板であり,演出制御基板12からの信号(効果音信号)に基づき,スピーカ8L,8Rから音声(効果音信号が指定する音声)を出力させるための音声信号処理を実行する処理回路などが搭載されている。なお,音声とは,音のみからなるものも含む。ランプ制御基板14は,演出制御基板12とは別個に設けられたランプ出力制御用の制御基板であり,演出制御基板12からの信号(電飾信号)に基づき,遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける点灯/消灯駆動(電飾信号が示す駆動内容による点灯/消灯)を行うランプドライバ回路などが搭載されている。払出制御基板19は,賞球の払出を制御する基板であり,払出制御用マイクロコンピュータが搭載されている。払出制御基板19は,賞球個数を示すデータが設定された賞球個数コマンドの受信(主基板11から制御信号として伝送される。)に応じて,球払出装置(図示せず)などから構成される払出機構(賞球を払い出す機構)を駆動して,賞球の払い出しを実行する。また,払出制御基板19は,異常検出用センサ群93からの信号を受信する。払出制御基板19は,受信した信号などに基づいてパチンコ遊技機1についての異常の有無及び異常終了の有無が発生したかを判定し,異常がある場合(異常が発生している場合)や異常終了がある場合には,異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドを制御信号として主基板11に送信する機能も有する。発生している異常又は終了する異常が複数種類の場合には,その種類ごとに異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドが送信される。異常検出用センサ群93などについては,後で詳述する。異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドは,主基板11から演出制御基板12に伝送される異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンド(詳しくは後述する。)と同じコマンドでよい。主基板11は,払出制御基板19からの異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドを演出制御基板12に伝送する。異常の有無及び異常終了の有無が発生したかの判定や異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドの送信設定は,後述のメイン側エラー処理と同様の処理を実行することで実現すればよい。送信設定されたコマンドは,後述のコマンド制御処理と同様にして主基板11に送信されればよい。」

(エ)「【0061】
演出制御基板12に搭載された表示制御部123は,演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき(例えば,この指令によって,表示制御部123は,演出制御用CPU120に制御される。),画像表示装置5や副画像表示装置51における表示動作の制御内容を決定して実行する。例えば,表示制御部123は,画像表示装置5や副画像表示装置51の表示画面内に表示させる演出画像の切換タイミングを決定して表示制御部123に指令することなどにより,飾り図柄の可変表示や各種の演出表示,異常の報知表示などを画像表示装置5や副画像表示装置51に実行させるための制御を行う。一例として,表示制御部123には,VDP(Video Display Processor),CGROM(Character Generator ROM),VRAM(Video RAM),LCD駆動回路などが搭載されていればよい。なお,VDPは,GPU(Graphics Processing Unit),GCL(Graphics Controller LSI),あるいは,より一般的にDSP(Digital Signal Processor)と称される画像処理用のマイクロプロセッサであってもよい。CGROMは,例えば書換不能な半導体メモリであってもよいし,フラッシュメモリなどの書換可能な半導体メモリであってもよく,あるいは,磁気メモリ,光学メモリといった,不揮発性記録媒体のいずれかを用いて構成されたものであればよい。」

(オ)「【0098】
主基板11では,所定の電源基板からの電力供給が開始されると,遊技制御用マイクロコンピュータ100が起動し,CPU103によって遊技制御メイン処理となる所定の処理が実行される。遊技制御メイン処理を開始すると,CPU103は,割込み禁止に設定した後,必要な初期設定を行う。この初期設定では,例えばRAM101がクリアされる。RAM102のクリアは,例えば,電源投入時に,パチンコ遊技機1に設けられた図示しないクリアスイッチなどの初期化用操作手段が操作されたことなどによって行われる。この操作は,例えば,遊技店の営業時間外に行われる。また,遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)のレジスタ設定を行う。これにより,以後,所定時間(例えば,2ミリ秒)ごとにCTCから割込み要求信号がCPU103へ送出され,CPU103は定期的にタイマ割込み処理を実行することができる。初期設定が終了すると,割込みを許可した後,ループ処理に入る。なお,遊技制御メイン処理では,パチンコ遊技機1の内部状態を前回の電力供給停止時(停電などによる電断時)における状態に復帰させるための処理を実行してから,ループ処理に入るようにしてもよい(例えば,クリアスイッチが押されずに電源が投入(オン)された時にRAM101に所定のデータが記憶されるなどしている状態のとき(例えば電断のときなど))。
【0100】
図3は,遊技制御用タイマ割込処理の一例のフローチャートである。CPU103は,遊技制御用タイマ割込処理において,例えば,スイッチ処理を行い(ステップS11),メイン側エラー処理を行い(ステップS12),情報出力処理を行い(ステップS13),その後,遊技用乱数更新処理(ステップS14),特別図柄プロセス処理(ステップS15),普通図柄プロセス処理(ステップS16),コマンド制御処理(ステップS17)といった,パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するための処理が含まれている。なお,遊技制御用タイマ割込処理の終了時には,割込み許可状態に設定される。これによって,遊技制御用タイマ割込み処理は,タイマ割り込みが発生するごと,つまり,割込み要求信号の供給間隔である所定時間(例えば,2ミリ秒)ごとに実行されることになる。」

(カ)「【0116】
ここで,コマンド制御処理により主基板11から演出制御基板12,主基板11から払出制御基板19,払出制御基板19から主基板11に送信される主な制御コマンドについて図5を参照して説明する。なお,「(H)」は16進数であることを示す。なお,図5の制御コマンドのうち,賞球個数コマンドは,払出制御基板19に対して伝送され,異常検出指定コマンドや異常終了指定コマンドは,払出制御基板19から主基板11に対して伝送されたり,主基板11から演出制御基板12に対して伝送されたりし,他の制御コマンドは,主基板11から演出制御基板12に伝送される。
【0117】
コマンド8001(H)は,第1特別図柄の可変表示(変動)を開始することを指定する演出制御コマンド(第1変動開始指定コマンド)である。コマンド8002(H)は,第2特別図柄の可変表示(変動)を開始することを指定する演出制御コマンド(第2変動開始指定コマンド)である。第1変動開始指定コマンドと第2変動開始指定コマンドとを変動開始指定コマンドと総称することがある。なお,第1特別図柄の可変表示を開始するのか第2特別図柄の可変表示を開始するのかを示す情報を,後述の変動パターン指定コマンドに含めるようにしてもよい。第1変動開始指定コマンド又は第2変動開始指定コマンドは,変動パターン指定コマンドなどとともに,変動パターンの設定時に実行される後述のステップS111にて送信設定される。」

(キ)「【0155】
ステップS235にて第1特図を用いた特図ゲームの保留記憶数が「0」である場合には(ステップS235;Yes),所定のデモ表示設定を行ってから(ステップS248),特別図柄通常処理を終了する。このデモ表示設定では,例えば画像表示装置5において所定の演出画像を表示することなどによるデモンストレーション表示(デモ画面表示)を指定する演出制御コマンド(客待ちデモ指定コマンド)が,主基板11から演出制御基板12に対して送信済みであるか否かを判定する。このとき,送信済みであれば,そのままデモ表示設定を終了する。これに対して,未送信であれば,客待ちデモ指定コマンドを送信設定してから,デモ表示設定を終了する。演出制御基板12では,客待ちデモ指定コマンドが送信されると,デモ画面表示を行う。」

(ク)「【0182】
演出制御基板12では,電源基板等から電源電圧の供給を受けると,演出制御用CPU120が起動して,所定の演出制御メイン処理を実行する。図17は,演出制御メイン処理の一例のフローチャートである。演出制御メイン処理を開始すると,演出制御用CPU120は,まず,所定の初期化処理(ステップS71)を実行して,RAM122のクリアや各種初期値の設定,また演出制御基板12に搭載されたCTC(カウンタ/タイマ回路)のレジスタ設定等を行う。その後,RAM122の所定領域(例えば演出制御フラグ設定部)に設けられたタイマ割込みフラグがオンとなっているか否かの判定を行う(ステップS72)。タイマ割込みフラグは,例えばCTCのレジスタ設定に基づき,所定時間(例えば2ミリ秒)が経過するごとにオン状態にセットされる。このとき,タイマ割込みフラグがオフであれば,待機する(ステップS72;No)。」

(ケ)「【0211】
ステップS703のあと,演出制御用CPU120は,例えば表示制御部123のVDP等に対して所定の表示制御指令を伝送するなどして,画像表示装置5の表示領域のうちの異常表示領域に,前記新たな異常(ステップS703でオン状態にした演出側異常フラグに対応する異常)に対応する異常報知画像を表示させる制御を表示制御部123に開始させる(ステップS704)。異常報知画像は,前記新たな異常を報知する画像であり,異常の種類に応じた態様の画像である。異常表示領域は,例えば,異常の種類に応じて予め設定されている。異常表示領域は,画像表示装置5の表示領域(画像表示装置5において画像を表示可能な領域)のうちの,第1位置に位置する副画像表示装置51に重ならない(覆われない)領域内に設けられる。異常表示領域は,例えば,飾り図柄の可変表示の邪魔にならない比較的小さな領域であったり(図23など),飾り図柄の可変表示の代わりとなる比較的大きな領域であったりする(図24など)。つまり,異常報知画像は,異常の種類に応じて,大きく表示されたり,小さく表示されたりする。なお,前記の小さな領域の位置(画像表示装置5の表示領域における位置)は,例えば,異常の種類に応じて異なる。このため,異常報知画像は,異常の種類によって異なる位置に表示される。それぞれの表示位置は,例えば,予め設定されていればよい。異常報知画像を大きく表示する場合(異常表示領域が大きい場合)には,画像表示装置5の表示領域には他の画像(他の異常報知画像も含む。)が表示されない。なお,ここでは,異常表示領域が大きい場合には,異常表示領域は固定であるが,例えば,当該異常表示領域も,異常表示領域が小さい場合と同様に,異常の種類に応じて位置が異なってもよい。
【0212】
異常報知画像は,画像表示装置5に表示される演出画像(例えば,可変表示中演出の画像やデモ画像)などに重畳して表示される。例えば,異常報知画像のレイヤー(画像表示装置5の表示領域と同じ大きさのレイヤー)が,演出画像のレイヤー(画像表示装置5の表示領域と同じ大きさのレイヤー)の前面(遊技者側)に位置するように,両者は重畳して表示される。このため,演出画像の表示の制御と異常報知画像の表示の制御とが,実際に画像が表示されるかとは別に,並行して実行される。前記の小さな領域に表示される異常報知画像のレイヤーは,異常報知画像以外の部分を透明にする(異常報知画像の表示位置は異常の種類に応じて異なるので,透明部分の形状などは異常の種類に応じて異なる。)。これによって,演出画像の少なくとも一部が視認可能になる。なお,例えば,前記の小さな領域の位置は,異常の種類に応じて異なるので,レイヤーにおける異常表示領域の位置(画像表示装置5の表示領域における異常表示領域の位置)も,異常の種類に応じて異なる。前記の大きな領域に表示される異常報知画像のレイヤーは,異常報知画像以外の部分を不透明(例えば,真っ黒)にする。これによって,演出画像は視認できなくなる。」

(コ)「【0249】
磁気センサ感知とは,磁気異常(磁石がパチンコ遊技機1の近傍にあるという異常,この場合,不正行為がある可能性がある。)を検出したときに行われる異常の報知である。磁石によって遊技媒体を移動させ,入賞口に入賞させたり,遊技媒体を入賞口に誘導するため所定領域を遊技媒体で詰まらせたりする不正行為がある。磁気センサ感知によって,このような行為を報知することで,このような行為が行われることを未然に防止する。例えば,異常検出用センサ群90の1つのセンサとして,磁気を検出するための磁気センサを設ける。CPU103は,ステップS21の異常判定処理において,当該磁気センサからの信号が所定の閾値以上の磁力を示すものであるかを判定することで,磁気異常の有無を判定する(磁力を示す→磁気異常有り)。なお,タイマ割り込みの発生ごとに実行されるステップS21において,所定期間にわたって,当該磁気センサからの信号が所定の閾値以上の磁力を示す場合に,異常が発生したと判定するようにしてもよい。磁気異常が検出された場合,当該異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドが主基板11から演出制御基板12に伝送され,ステップS77にて,磁気異常を報知する処理が行われ,磁気センサ感知の報知が行われる。
【0250】
磁気センサ感知の終了条件(報知の終了条件)は,報知期間5分の経過時である。つまり,磁気異常が発生すると,異常終了の有無に係わらず所定期間だけ報知が行われる。このため,例えば,ステップS704などにおいて,演出制御用CPU120は,当該5分に応じたタイマ初期値をRAM122に設けられた上記の所定のタイマ(磁気異常に対応するタイマ)に設定し,ステップS707でタイマ値を1減じる。磁気センサ感知では,異常報知画像として,例えば,「磁気エラー」の画像が第1異常表示領域に表示される。このときは,例えば,図23のように,可変表示中演出の演出画像などが表示された状態で,異常報知画像が表示される(例えば,「異常1発生」や「異常2発生」の画像の位置などに表示される。)。また,磁気センサ感知では,異常報知音として,例えば,「エラー音1」が再生出力される。磁気センサ感知の実行中,可変表示中演出の実行は継続されるようにする(演出音についてはボリュームを0にするなど)。」

上記記載事項(ア)?(コ)より,以下の事項が導かれる。
なお,(a)?(f)は,本願補正発明の構成A?Fに対応した事項を示している。

(a)上記段落【0042】には「主基板11は,・・・パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための各種回路が搭載されている。・・・演出制御基板12,払出制御基板19などからなるサブ側の制御基板に宛てて,指令情報の一例となる制御コマンド(後述の演出制御コマンドなど)を制御信号として出力して送信する」と記載され,上記段落【0100】には「CPU103は,遊技制御用タイマ割込処理において,・・・コマンド制御処理(ステップS17)といった,パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するための処理が含まれている」と記載され,上記段落【0098】には「主基板11では・・・CPU103は定期的にタイマ割込み処理を実行する」と記載され,上記段落【0116】,【0117】には「コマンド制御処理により主基板11から演出制御基板12,・・・に送信される主な制御コマンドに・・・異常検出指定コマンド・・・他の制御コマンドは,主基板11から演出制御基板12に伝送される。・・・変動開始指定コマンド・・・変動パターン指定コマンド」と記載され,上記段落【0249】には「磁気異常が検出された場合,当該異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドが主基板11から演出制御基板12に伝送され」と記載されているから,刊行物1には,パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御し,主基板11から演出制御基板12に伝送される,磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド,変動開始指定コマンド,変動パターン指定コマンドを含む制御コマンドを制御信号として出力して送信する主基板11が記載されているといえる。

(b)(c)上記段落【0044】には「演出制御基板12は,・・・主基板11から伝送された制御信号などを受信して,画像表示装置5や・・・スピーカ8L,8R・・・といった演出用の電気部品による演出動作を制御する」と記載されているから,刊行物1には,(b)画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品,及び,(c)主基板11から伝送された制御信号などを受信して,画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品による演出動作を制御する演出制御基板12が記載されているといえる。

(d)上記段落【0061】には「表示制御部123は,演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき・・・画像表示装置5・・・における表示動作の制御内容を決定して実行する。」と記載されているから,刊行物1には,演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき,画像表示装置5における表示動作の制御内容を決定して実行する表示制御部123が記載されているといえる。

(e)上記【0061】には「演出制御基板12に搭載された表示制御部123は,演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき・・・画像表示装置5・・・における表示動作の制御内容を決定して実行する。」と記載され,上記【0155】には「画像表示装置5において所定の演出画像を表示することなどによるデモンストレーション表示(デモ画面表示)を指定する演出制御コマンド(客待ちデモ指定コマンド)が,主基板11から演出制御基板12に対して送信・・・演出制御基板12では,客待ちデモ指定コマンドが送信されると,デモ画面表示を行う。」と記載されているから,刊行物1には,表示制御部123は,主基板11から客待ちデモ指定コマンドが送信されると,画像表示装置5に所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像表示を行う点が記載されているといえる。

次に,上記段落【0249】,【0250】には「・・・磁気異常が検出された場合,当該異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドが主基板11から演出制御基板12に伝送され,・・・演出制御用CPU120は,・・・異常報知画像として,例えば,「磁気エラー」の画像が第1異常表示領域に表示される。このときは,例えば,図23のように,可変表示中演出の演出画像などが表示された状態で,異常報知画像が表示される」と記載され,上記段落【0211】,【0212】には「演出制御用CPU120は,・・・表示制御部123のVDP等に対して所定の表示制御指令を伝送するなどして,画像表示装置5の表示領域のうちの異常表示領域に・・・異常報知画像を表示させる・・・異常表示領域は・・・表示の邪魔にならない・・・小さな領域・・・異常報知画像は,画像表示装置5に表示される演出画像(例えば,可変表示中演出の画像やデモ画像)などに重畳して表示される。・・・異常報知画像のレイヤー(画像表示装置5の表示領域と同じ大きさのレイヤー)が,演出画像のレイヤー(画像表示装置5の表示領域と同じ大きさのレイヤー)の前面・・・に・・・重畳して表示される・・・異常報知画像のレイヤーは,異常報知画像以外の部分を透明にする」と記載され,上記段落【0211】,【0212】には,異常報知画像を表示させるときの演出画像は,「例えば,可変表示中演出の画像やデモ画像」と記載されているように,「可変表示中演出の画像」でなく,「デモ画像」でもいいといえる。
また,段落【0098】には「主基板11では,・・・CPU103によって遊技制御メイン処理となる所定の処理が実行される。」と記載され,段落【0249】には「CPU103は,・・・磁気センサからの信号が所定の閾値以上の磁力を示すものであるかを判定することで,磁気異常の有無を判定する(磁力を示す→磁気異常有り)。」と記載されているから,主基板11のCPUが磁気異常を判定しているといえる。
これらのことから,刊行物1には,デモ画像表示において,演出制御基板12に伝送されたコマンドが,主基板11から演出制御基板12に伝送された,主基板11のCPU103が判定した磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドであると,異常報知画像以外の部分を透明にした異常報知画像のレイヤーを前面に重畳して表示することにより,画像表示装置5の表示の邪魔にならない小さな異常表示領域に異常報知画像として「磁気エラー」の画像がデモ画像と重畳して表示される点が記載されているといえる。

以上のことから,刊行物1には,表示制御部123は,主基板11から客待ちデモ指定コマンドが送信されると,画像表示装置5に所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像表示を行い,デモ画像表示において,演出制御基板12に伝送されたコマンドが,主基板11から演出制御基板12に伝送された,主基板11のCPU103が判定した磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドであると,異常報知画像以外の部分を透明にした異常報知画像のレイヤーを前面に重畳して表示することにより,画像表示装置5の表示の邪魔にならない小さな異常表示領域に異常報知画像として「磁気エラー」の画像がデモ画像と重畳して表示される点が記載されているといえる。

(f)上記段落【0041】には「パチンコ遊技機1には,・・・主基板11,演出制御基板12,・・・払出制御基板19といった,各種の制御基板が搭載されている。」と記載されているから,刊行物1には,主基板11,演出制御基板12,払出制御基板19といった各種の制御基板が搭載されたパチンコ遊技機1が記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(コ)及び上記の認定事項(a)?(f)から,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「a パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御し,主基板11から演出制御基板12に伝送される,磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド,変動開始指定コマンド,変動パターン指定コマンドを含む制御コマンドを制御信号として出力して送信する主基板11と,
b 画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品と,
c 主基板11から伝送された制御信号などを受信して,画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品による演出動作を制御する演出制御基板12と,
d 演出制御基板12の演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき,画像表示装置5における表示動作の制御内容を決定して実行する表示制御部123,を備えたパチンコ遊技機1であって,
e’ 表示制御部123は,主基板11から客待ちデモ指定コマンドが送信されると,画像表示装置5に所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像表示を行い,デモ画像表示において,演出制御基板12に伝送されたコマンドが,主基板11から演出制御基板12に伝送された,主基板11のCPU103が判定した磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドであると,異常報知画像以外の部分を透明にした異常報知画像のレイヤーを前面に重畳して表示することにより,画像表示装置5の表示の邪魔にならない小さな異常表示領域に異常報知画像として「磁気エラー」の画像がデモ画像と重畳して表示される,
f パチンコ遊技機1」

(2-2)刊行物2
本願の出願前に頒布された特開2009-72395号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0007】
また,デモ表示の実行回数を前記カウンタでカウントし,デモ表示の実行回数に応じて,デモ表示の演出時間や演出内容を変えたり,デモ表示のインターバル時間を変更したりすることで呼び込み効果を高めることが可能になる。
さらに,通常のデモ表示が複数回実行される毎に特別のデモ表示として,信頼度を数値で表示した擬似スーパーリーチ演出』や『遊技方法を解説した動画映像』などを液晶画面に表示すれば,更に呼込み効果を高めることができる。」

(イ)「【0023】
図1は,この発明をパチンコ遊技機に適用した実施例を示す斜視図である。
パチンコ遊技機は,本体を構成する遊技盤保持枠1を遊技場内の島に固定される木製の矩形外枠2のよって包囲される空間部に収容し,前記遊技盤保持枠1を外枠2の側辺部材の上下に取付けたヒンジ金具3,3により,開閉可能に支持している。前記遊技盤保持枠1の前面には,垂直面に対し略直角に立設した外レール4および内レール5によって包囲された円形の遊技盤面6aを有する遊技盤6が着脱可能に取付けられているとともに,遊技盤6の前面には遊技に関連する画像情報を表示するための液晶画面7,始動入賞口8,スルーゲート9,大入賞口10,普通入賞口11のほか,図示なき障害釘等が多数植設されている。一方,前記遊技盤6の前方には,前記遊技盤6の円形遊技盤面6aの領域とほぼ等しい大きさを有し,かつ,2枚構成の透明ガラス板12を保持させた丸窓13を有する前扉14が配置され,この前扉14が前記遊技盤保持枠1の左端上下に設けたヒンジ15,15によって遊技盤保持枠1に対し開閉可能に取付けられている。」

(ウ)「【0076】
図14は本発明にかかる遊技機の演出用サブ制御基板60の制御プログラムにおける前記デモ画面表示処理ST33の第4の実施形態であって,特にデモ表示として遊技機の一連の遊技方法についての映像情報が含まれる場合を例示したものである。なお,上記第4の実施形態においては,第1図に示す遊技機の上皿16の前面に設けた操作スイッチSを遊技者が操作することで,非遊技中における特別デモ表示途中であっても,冒頭から実行可能とした点が特徴である。なお,操作スイッチSは図3に示すように,演出用サブ基板60に接続され直接信号が入力される。」

(エ)「【0078】
次に,前記ステップST605では予めセットされているタイマの設定時間が経過しているかを判定し,設定時間が経過している場合は,判定結果がYESとなってステップST606に進む。次に,ステップ606では,今回実施されたデモ表示の回数が予め設定された規定回数,例えば10の倍数であるかが判定され,10の倍数でない場合は判定がNOとなってステップST607に進み通常デモ表示(例えば,演出時間30秒)を実行するが,10の倍数に該当する場合には,判定がYESとなってステップST610に進む。ステップST610では,前記ステップST607で実行される通常デモ表示に比べて長い演出,例えば,遊技機の遊技方法説明ビデオ映像などを含む演出時間60秒の特別なデモ表示が演出用サブ制御基板60のROMに記憶されている演出表示データに基づいて実行される。」

(オ)「【0082】
しかも,非遊技中に遊技者が遊技機前面の操作スイッチSを操作したとステップST603にて判定した場合は,通常デモ表示や特別デモ表示を行っている途中であるか否かに拘らず,ステップST610の特別デモ表示の開始要求がなされ,特別デモ表示が始まり部分から実行されるので,遊技機が非遊技状態であれば何時でも操作スイッチを操作すれば,詳しい遊技説明を最初の映像から見ることができる。すなわち,遊技者が非遊技状態において遊技機の前面の操作スイッチSを操作すると,遊技説明を含む特別デモ表示が冒頭から実行する点が前記他の実施形態とは異なる。また,非遊技中は通常デモ表示にまじって,規定回数毎に遊技説明が遊技機の液晶ユニットから流れるので台選び中の遊技者に対する呼込み効果を高めることが出来る。」

そして,「フレーム」とは,「フィルムや動画の一齣こま。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味する用語であるし,刊行物2に記載された遊技機の表示装置として,液晶画面7(段落【0023】)が用いられてることからみても,上記「遊技方法説明ビデオ映像」が連続する一齣の画像によって形成される,すなわち一連のフレーム画像からなるものであることは,当業者にとって自明な事項である。

したがって,上記の記載事項(ア)?(オ)から,刊行物2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「e’通常デモ表示を行っている途中に,遊技者が遊技機前面の操作スイッチSを操作したと判定した場合には,一連のフレーム画像からなる遊技機の遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)を表示させる演出用サブ制御基板60」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(a)引用発明1の「制御コマンド」,「主制御基板11」は,それぞれ,本願補正発明の「コマンド」,「主制御手段」に相当する。
また,引用発明1の「主制御基板11」は「パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御」するから,引用発明1の「主基板11から演出制御基板12に伝送される,磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド,変動開始指定コマンド,変動パターン指定コマンド」は,遊技の進行に応じて生成されることは明らかである。
したがって,引用発明1の「パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御し,主基板11から演出制御基板12に伝送される,磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド,変動開始指定コマンド,変動パターン指定コマンドを含む制御コマンドを制御信号として出力して送信する主基板11」は,本願補正発明の「遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じたコマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段」に相当する。

(b)引用発明1の「演出用の電気部品」は,本願補正発明の「演出手段」に相当する。
このことから,引用発明1の「画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品」は,本願補正発明の「少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段」に相当する。

(c)引用発明1の「演出制御基板12」は,本願補正発明の「演出制御手段」に相当する。
このことから,引用発明1の「主基板11から伝送された制御信号などを受信して,画像表示装置5やスピーカ8L,8Rといった演出用の電気部品による演出動作を制御する演出制御基板12」は,本願補正発明の「前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段」に相当する。

(d)引用発明1の「画像表示装置5」及び「表示制御部123」は,それぞれ,本願補正発明の「表示手段」及び「表示制御手段」に相当する。
したがって,引用発明1の「演出制御基板12の演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき,画像表示装置5における表示動作の制御内容を決定して実行する表示制御部123」は,本願補正発明の「前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段」に相当する。

(e)引用発明1の「デモ画像表示」は,「主基板11から客待ちデモ指定コマンドが送信され」ることにより表示されるから,客待ち中における所定の画像の表示であるといえる。
また,引用発明1の「磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド」は「主基板11から演出制御基板12に伝送された,主基板11のCPU103が判定した磁気異常が発生したことを指定する」コマンドであるから,主基板11が生成したコマンドであるといえるので,本願補正発明の「所定コマンド」に相当する。
しかしながら,引用発明1の「磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンド」は,主基板11以外によって生成されないから,主基板11が生成したか否かに関わらないものではない。
そして,引用発明1の異常報知領域は表示の邪魔にならない小さなものであり,異常報知画像以外の部分を透明にした異常報知画像のレイヤーをデモ画像の前面に重畳して表示したものであるから,デモ画像の表示は,異常報知画像によって邪魔されず,維持されているといえる。
しかしながら,引用発明1のデモ画像は,操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像であって,遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像であるとまではいえない。
したがって,引用発明1の「表示制御部123は,主基板11から客待ちデモ指定コマンドが送信されると,画像表示装置5に所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像表示を行い,デモ画像表示において,演出制御基板12に伝送されたコマンドが,主基板11から演出制御基板12に伝送された,主基板11のCPU103が判定した磁気異常が発生したことを指定する異常検出指定コマンドであると,異常報知画像以外の部分を透明にした異常報知画像のレイヤーを前面に重畳して表示することにより,画像表示装置5の表示の邪魔にならない小さな異常表示領域に異常報知画像として「磁気エラー」の画像がデモ画像と重畳して表示され」ることは,本願補正発明と「前記表示制御手段は,前記表示手段の表示画像として,客待ち中における」「所定の」「画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記主制御手段が生成したコマンドである」「所定コマンドである場合,前記表示手段における前記」「画像の表示を維持すること」である点で共通する。

(f)引用発明1の「パチンコ遊技機1」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(f)から,本願補正発明と引用発明1とは,
[一致点]
「A 遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じたコマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
B 少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
C 前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
D 前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段と
を備える遊技機であって,
E’ 前記表示制御手段は,前記表示手段の表示画像として,客待ち中における所定の画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記主制御手段が生成したコマンドである所定コマンドである場合,前記表示手段における前記画像の表示を維持すること
F を特徴とする遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1](構成E)
客待ち中に表示される所定の画像に関して,
本願補正発明は,「操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像であって,遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像」であるのに対して,
引用発明1は,所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像である点。

[相違点2](構成E)
演出制御手段が受信した所定コマンドに関して,
本願補正発明は,「主制御手段が生成したコマンドであるか否かに関わら」ないのに対して,
引用発明1は,主制御手段が生成したコマンドである点。

(4)判断
ア 相違点1について
上記(2)(2-2)に記載された引用発明2は,「通常デモ表示を行っている途中に,遊技者が遊技機前面の操作スイッチSを操作したと判定された場合には,一連のフレーム画像からなる遊技機の遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)を表示させる」発明である。
引用発明1と引用発明2は共に,遊技機において,デモ画像表示(通常デモ表示)をする技術に関する発明であり,技術分野が共通している。
したがって,引用発明1に,引用発明2を適用して,客待ちデモのデモ画像が表示されている際に,操作スイッチを操作したと判定された場合には,操作手段の所定の操作を契機として,一連のフレーム画像からなる遊技機の遊技方法説明ビデオ映像を表示させるとともに,遊技方法説明ビデオ映像を表示させている時に,異常検出指定コマンドを受信しても,異常報知画像が遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)と重畳して表示されることにより,遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)の表示を維持するようにして,上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
遊技機の技術分野において,遊技機の検査,試験を能率良く且つ短時間で実行するため,遊技制御手段以外の制御手段である試験装置から,演出制御手段に対し,遊技制御手段に替わって任意のタイミングで各種コマンドを送信し得るようにすることは,本願出願前に周知である(例えば,特開2000-51490号公報の段落【0027】,【0033】?【0049】,【図2】,【図4】や,登録実用新案第3056464号公報の段落【0012】?【0022】,【図2】,【図4】を参照のこと。以下「周知技術1」という。)。
また,遊技機の技術分野において,通常遊技時には,遊技機の主制御手段から演出制御手段にコマンドを送信すると共に,遊技機の検査,試験時には,試験装置から遊技機の演出制御手段に通常遊技時に送信されるコマンドと同じコマンドを送信することは,当業者における技術常識であって当業者に広く知られている事項である。したがって,このことを踏まえると,引用発明1は,遊技機の検査,試験を行う際,検査,試験を能率良く且つ短時間で実行するという自明の課題を内在するものである。
したがって,引用発明1に上記周知技術1を適用して,電源復旧コマンドを主制御手段により生成すると共に,試験を行う際に,試験装置によっても同じコマンドを生成可能とし,上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

また,本願補正発明の作用効果も,引用発明1,引用発明2及び周知技術1から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用発明1,引用発明2及び周知技術1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書第4頁第3行?第12行において,
「引用文献2には,遊技者が操作スイッチを操作したとき,強制的に特別なデモ表示を冒頭から実行させる手段を有していると共に,前記特別なデモ表示として,少なくとも遊技機の遊技方法説明を含んでいるとの記載がある。この遊技方法説明は,「遊技方法を解説した動画映像」(段落0007),「遊技機の遊技方法説明ビデオ映像などを含む演出時間60秒の特別なデモ表示」(段落0078)との記載があり,上記(構成b)の「一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明動画像」とは異なる。しかしながら,一応は少なくとも上記(構成b)の一部には相当する構成である。したがって,引用文献2に記載の発明は,本願発明の上記特徴点のうち,(構成a)に相当する構成を有していないが,(構成b)の一部に相当する構成を有している。」
と主張している。

しかしながら,上記(3)において既に検討したように,「フレーム」とは,「フィルムや動画の一齣(こま)。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味する用語であるし,刊行物2に記載された遊技機の表示装置として,液晶画面7(段落【0023】)が用いられてることからみても,上記「遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)」が連続する一齣の画像によって形成される,すなわち一連のフレーム画像からなるものであることは,当業者にとって自明な事項である。

したがって,請求人の主張を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明は,平成28年11月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

1 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明1の認定については,上記「第2[理由]3(2)(2-1)」に記載したとおりである。

2 対比
本願発明は,上記「第2[理由]1」で検討した本願補正発明から,実質的な変更とならない特定事項を除き,「動画像」について,「遊技機の遊技方法を説明する一連のフレーム画像からなる所定の遊技方法説明」動画像であるとの限定を削除したものである。
そうすると,本願発明と引用発明1の相違点は,上記「第2[理由]2(3)」の[相違点1]の構成を,以下の[相違点1’]の構成に変更したものと,上記「第2[理由]2(3)」の[相違点2]である。

[相違点1’](構成E)
客待ち中に表示される所定の画像に関して,
本願発明は,「操作手段の所定の操作を契機として出現させる動画像」であるのに対して,
引用発明1は,所定の演出画像を表示することなどによるデモ画像である点。

3 判断
ア 相違点1について
上記相違点1’について検討すると,
遊技機の技術分野において,客待ち中のデモ演出において,遊技者の操作に基づいて所定の動画像を表示することは,刊行物2(上記「第2[理由]3(2)(2-2)」で検討したとおり,通常デモ表示を行っている途中に,遊技者が遊技機前面の操作スイッチSを操作したと判定した場合には,一連のフレーム画像からなる遊技機の遊技方法説明ビデオ映像(遊技方法を解説した動画映像)を表示させる演出用サブ制御基板60が記載されている。)や特開2014-345号公報(拒絶査定時の引用文献3。段落【0491】には,「・・・客待ち表示制御中(即ち,客待ちデモ演出中)である限り,「停止図柄表示状態」(客待ちA)と「ムービー再生によるデモ表示状態」(客待ちB)とが,それぞれ所定の客待ちデモ実行時間だけ交互に実行される。・・・演出ボタン9を押すことで,・・・客待ちBの表示を見たい時・・・に利用できるようにしてもよい。・・・」と記載されているから,客待ちデモ演出中において,演出ボタン9を押すことで,ムービー再生によるデモ表示状態(客待ちB)を実行する遊技機が記載されている。)に記載されているように,周知(以下,「周知技術2」という。)である。
したがって,引用発明1において,周知技術2を採用し,客待ち中のデモ演出において,遊技者の操作に基づいて所定の動画像を表示させるとともに,所定の動画像を表示させている時に,異常検出指定コマンドを受信しても,所定の動画像の表示を維持するようにして,上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
上記相違点2については,上記「第2[理由]2(4)イ]において既に検討しているように,引用発明1に上記周知技術1を適用して,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明1,周知技術1?2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用発明1,周知技術1?2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-23 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2015-183679(P2015-183679)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
服部 和男
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所  

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