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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1333963
審判番号 不服2016-19298  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-24 
確定日 2017-10-25 
事件の表示 特願2014- 85990「フォーム状の内側コアおよび熱硬化性の外側コア層を具備するゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-213204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月18日(パリ条約による優先権主張2013年4月29日、米国)の出願であって、平成26年10月28日付け、及び平成28年4月1日付けで手続補正がなされ、同年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。


第2 平成28年12月24日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成28年4月1日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「ゴルフボール用のコア組立体であって、
(i)フォーム状ポリウレタン組成物を有する内側コア層であって、0.254cmから2.794cm(0.100インチから1.100インチ)の範囲の径と、比重(SG_(inner))と、外側表面硬度(H_(inner) _(core) _(surface))および中心硬度(H_(inner) _(core) _(center))とを伴い、H_(inner) _(core) _(surface)がH_(inner) _(core) _(center)より大きく正の硬度勾配を実現する上記内側コア層と、
(ii)熱硬化性材料を有する外側コア層であって、上記内側コアの周りに配され、0.254cmから1.905cm(0.100インチから0.750インチ)の範囲の厚さと、比重(SG_(outer))と、外側表面硬度(H_(outer) _(surface) _(of) _(OC))および内側表面硬度(H_(inner) _(surface) _(of) _(OC))とを伴い、H_(outer) _(surface) _(of) _(OC)がH_(inner) _(surface) _(of) _(OC)より大きく正の硬度勾配を実現する上記外側コア層とを有し、
SG_(outer)はSG_(inner)より大きいことを特徴とするゴルフボール用のコア組立体。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「ゴルフボール用のコア組立体であって、
(i)非フォーム状ポリウレタンの外側スキンが形成された、フォーム状ポリウレタン組成物を有する内側コア層であって、0.254cmから2.794cm(0.100インチから1.100インチ)の範囲の径と、比重(SG_(inner))と、外側表面硬度(H_(inner) _(core) _(surface))および中心硬度(H_(inner) _(core) _(center))とを伴い、H_(inner) _(core) _(surface)がH_(inner) _(core) _(center)より大きく正の硬度勾配を実現する上記内側コア層と、
(ii)熱硬化性材料を有する外側コア層であって、上記内側コアの周りに配され、0.254cmから1.905cm(0.100インチから0.750インチ)の範囲の厚さと、比重(SG_(outer))と、外側表面硬度(H_(outer) _(surface) _(of) _(OC))および内側表面硬度(H_(inner) _(surface) _(of) _(OC))とを伴い、H_(outer) _(surface) _(of) _(OC)がH_(inner) _(surface) _(of) _(OC)より大きく正の硬度勾配を実現する上記外側コア層とを有し、
SG_(outer)はSG_(inner)より大きいことを特徴とするゴルフボール用のコア組立体。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

2 補正目的について
本件補正により、本件補正前の請求項1の「内側コア層」に関して、「非フォーム状ポリウレタンの外側スキンが形成された」と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「ゴルフボール用のコア組立体」における「内側コア層」に関して、「非フォーム状ポリウレタンの外側スキンが形成された」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

3 独立特許要件について
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成28年12月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物
ア 本願の優先日前の平成21年1月8日に頒布された特開2009-520号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
圧縮が50未満であり、ショアC硬度が80未満の内側コア層と、
ショアC硬度が80以上であり比重が1.11以上である外側コア層と、
カバーとを有し、
上記内側コア層の硬度が上記外側コア層の硬度より小さく、かつ上記外側コア層の比重が上記内側コア層の比重より大きいか、等しいゴルフボール。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的にはゴルフボールに関し、より具体的には、比較的柔らかく、圧縮が小さな内側コアを少なくとも1つの比較的堅固な外側コアにより包囲させた二重および多層コアを具備するゴルフボールに関する。

【0010】
この業界において、所望のスピンプロフィールを伴うゴルフボールへの要望が依然としてある。この発明は、二重および多層コアと比較的柔らかいカバーとを含む新規なゴルフボール設計を通じて、そのようなゴルフボールを実現する。」
(ウ)「【0018】
1実施例において、内側コアの直径は約1.4インチから約1.5インチであり、外側コアの厚さは約0.05インチから約0.1インチであり、内側コアおよび外側コアの全体としての組み合わせコア直径は約1.58インチより大きく、好ましくは約1.60インチより大きい。他の実施例において、内側コアの直径は下限が約0.50インチ、または約0.70インチ、または約0.80インチ、または約0.90インチ、または約1.00インチで上限が約1.10インチ、または約1.20インチ、または約1.25インチ、または約1.30インチの範囲内であり、あるいは、約1.00インチであり;外側コアの厚さは、下限が約0.10インチ、または約0.20インチ、または約0.27インチで、上限が約0.29インチ、または約0.30インチ、または約0.35インチ、または約0.40インチ、または約0.57インチである範囲内であり;かつ、内側コアおよび外側コアの組み合わせた全体としての直径が約1.50インチから約1.60インチ、好ましくは、約1.54インチから約1.59インチ、より好ましくは、約1.55インチから約1.58インチ、さらに好ましくは約1.55インチ、または約1.58インチである。」
(エ)「【0028】
ゴルフボールの一部または複数の部分に添加するフィラーは、典型的には、レオロジー特性および混合特性に影響を与える処理助剤または化合物、密度調整用フィラー、引き裂き強度修正剤、強化用フィラー等を含む。フィラーは一般に無機物であり、適切なフィラーは多数の金属または金属酸化物を含み、例えば酸化亜鉛および酸化スズ、ならびに硫酸バリウム、バライト、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、クレイ、タングステン、炭化タングステン、シリカのアレイ、および、これらの混合物を含む。フィラーは種々の発泡剤またはブローイング剤を含むこともでき、当業者はこれらを直ちに選択することができる。フィラーはポリマー、セラミック、金属、およびガラスのソリッド、または中空の、充填した、または充填していない微小粒子を含んでよい。フィラーは典型的にはゴルフボールの一部または複数の部分に添加されてその密度を調整し、均一なゴルフボール標準に適合させる。好ましくは、内側コア11はフィラーとして酸化亜鉛を含む。フィラーは、内側コア11において、所望の比重が得られるに足る量だけ存在する。1実施例では、内側コア11は、非充填または発泡性の密度減少材料を含んで、内側コア11の比重を小さくして、ゴルフボール10の慣性モーメントを大きくしてよい。他の実施例では、内側コア11は、比重増大性のフィラー、フレーク、または微粒子を含んで、内側コア11の比重を大きくして、ゴルフボール10の慣性モーメントを小さくしてよい。」
(オ)「【0034】
外側コア13は内側コア11を包囲し、内側コア11より堅固となるように構築される。1実施例において、外側コア13は、ベースゴム、架橋剤、開始剤、1または複数のフィラー、および、代替的には、硬化剤を含む。適切なベースゴム、架橋剤、開始剤およびフィラーは内側コア11のそれらと同様である。1実施例において、ベースゴムは熱硬化性ポリブタジエンである。ベースゴムは約100pphの量だけ存在する。亜鉛ジアクリレートは好ましい架橋剤である。1実施例において、架橋剤は35pphより多い量だけ存在する。他の実施例において、架橋剤の量は約40より多い。さらに他の実施例において、架橋剤は約53pphの量だけ存在する。好ましくは、開始剤は有機過酸化物である。1実施例において、有機過酸化物は約0.66pphの量だけ存在する。好ましいフィラーは酸化亜鉛である。他の実施例において、フィラーはバライトを含む。フィラーは、所望の重量および物理特性、例えば比重を付与するのに十分な量だけ外側コア13に付加される。1実施例において、フィラーは約5pphの量だけ存在してよい。」
(カ)「【0071】
ここに開示される任意の実施例の内側および外側コア層は、硬度勾配、すなわち、内側コアのセンタから内側コアの表面までの硬度の差、同様の外側コア層の最も内側の表面から外側コア層の表面までの硬度の差を伴ってよい。勾配は、正(増加)、負(減少)、または中間的であってよい。正の勾配を採用するときには、内側コアのセンタが最も柔らかいポイントであり、好ましくは約40から約75ショアCの硬度を有し;内側コアの表面は好ましくは約45から約78ショアCの硬度を有し;外側コア層は好ましくは80ショアC以上、または約80から約95ショアCの硬度を有する。勾配の大きさは、外側コア層表面の硬度から内側コアのセンタの硬度を引いて計算され、これは約5から約45ショアC、または約20から約45ショアC、または約25から約45ショアCであり、好ましくは約8から約40ショアC、または約15から約35ショアC、または約18から約30ショアCである。コアの表面硬度は極ごとに1回測定される。2つの測定値は平均される。センタの硬度を測定するために、コアを、当該コアよりおよそ0.010-0.020インチ小さい空洞に押し込み、コアが空洞内においてその底に着き、しっかりとフィットするようになす。露出している半体を、帯ノコまたは他の適切な切断ツールを用いて、若干中心から外して大まかに切断する。測定表面を仕上げて表面グラインダで平滑面として、この面がコアのセンタを通り、かつ空洞のベースと平行するようになす。センタが芯出し定規で位置決めされて印付けされ、空洞内に残っているコアについて硬度測定を行う。オプションとして、他の点を位置決めして測定をなし、勾配プロフィールを作成してよい。硬度差は、平均表面硬度-中心硬度で計算される。」
(キ)上記(ウ)より、内側コアの直径は下限が約0.50インチ、または約0.70インチ、または約0.80インチ、または約0.90インチ、または約1.00インチで上限が約1.10インチ、または約1.20インチ、または約1.25インチ、または約1.30インチの範囲内であるから、内側コア層は、0.500インチから1.100インチの範囲の径であるといえ、外側コアの厚さは、下限が約0.10インチ、または約0.20インチ、または約0.27インチで、上限が約0.29インチ、または約0.30インチ、または約0.35インチ、または約0.40インチ、または約0.57インチである範囲内であるから、外側コア層の厚さは、0.100インチから0.570インチの範囲の厚さであるといえる。
(ク)上記(ア)乃至(カ)より、「内側コア」と、「内側コア層」とは、同義であるから、「内側コア」は、「内側コア層」といえ、「外側コア」と、「外側コア層」とは、同義であるから、「外側コア」は、「外側コア層」といえる。

そうすると、上記(ア)乃至(ク)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「圧縮が50未満であり、ショアC硬度が80未満の内側コア層と、
ショアC硬度が80以上であり比重が1.11以上である外側コア層と、
カバーとを有し、
上記内側コア層の硬度が上記外側コア層の硬度より小さく、かつ上記外側コア層の比重が上記内側コア層の比重より大きいゴルフボールであって、
内側コア層は、0.500インチから1.100インチの範囲の径であり、
外側コア層の厚さは、0.100インチから0.570インチの範囲の厚さであり、
内側コア層は、非充填または発泡性の密度減少材料を含み、
外側コア層は、ベースゴムを含み、ベースゴムは熱硬化性ポリブタジエンであり、
内側および外側コア層は、硬度勾配、すなわち、内側コア層のセンタから内側コア層の表面までの硬度の差、同様の外側コア層の最も内側の表面から外側コア層の表面までの硬度の差を伴い、勾配は、正(増加)である、ゴルフボール。」

イ 本願の優先日前の平成14年11月19日に頒布された特開2002-331047号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴルフボールに関連し、またより詳しく言えば、本発明は、ゴルフボールスピン速度調節の改良及び該ゴルフボールスピン速度を変える方法に関するものである。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、制御された慣性モーメントを持つゴルフボールを提供することにある。本発明は、また制御されたスピン速度を持つゴルフボールを提供することにある。本発明は、更に制御されたスピン速度、柔和な圧縮性及び高いレジリエンシーをもつゴルフボールを提供することにある。」
(イ)「【0027】本発明のボールは、少なくとも1層の低比重層を含むことができる。例えば、図1に示すようなボール10は、場合により、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.8未満の比重を持つ、第一及び第二の低比重層14及び16を含むことができる。ボール10が、1層以上の低比重層を持つ場合、該層の一つは、糸巻き層であり得る。かくして、ボール10は低比重層14及び16を含むので、層16は糸巻き層であり得る。あるいはまた、層14が低比重層であり得、一方層16は比重の低下されていない層である。他方、層14が比重の低下されていない層であり得、一方層16が低比重層である。更に、これら層の一方14又は16は、反応射出成型(RIM)ポリマー又は流し込み成型ポリマーから作ることができる。同様に、低比重層24及び/又はカバー18、26は、RIM又は流し込み成型ポリマーから作ることができる。
【0028】該低比重層は、このものが耐久性に富み、かつ該ゴルフボールに望ましからぬ特性を付与しない限りにおいて、多くの適当な材料から作ることができる。好ましくは、この低比重層は、該ゴルフボールの柔和な圧縮率及び弾性に寄与する。該低比重層は、エポキシ、ウレタン、ポリエステル又は任意の適当な熱硬化性バインダを含む、ポリマーマトリックス中に、中空球フィラー又は微小球を含む、熱硬化性シンタクチックフォームから作ることができる。ここで、該硬化された組成物は、0.9未満、好ましくは0.8未満の比重を持つ。適当な材料は、ポリウレタンフォーム、又はポリウレタン製の中実スキンを、同一組成の発泡された支持体上に形成する、保全性のスキン形成されたフォームを含むこともできる。あるいはまた、適当な材料は、核形成された反応射出成型ポリウレタン又はポリウレアを含むこともでき、ここではガス、典型的には窒素が、閉じられた金型内に成分を注入する前に、該ポリウレタンの少なくとも一つの成分、典型的にはプレポリマー中に、本質的に吹込まれる。この金型内で、全反応が起こり、低下された比重を持つ、硬化されたポリマーを与える。」
(ウ)「【0031】該カバー層は、弾性で比重の低下されていない層である。その適当な材料は、ボールの圧縮率、復元係数、スピン速度等の要件を満たすことを可能とする、任意の材料を含み、米国特許第6,149,535号、同第6,152,834号、同第5,919,100号及び同第5,885,172号並びにWO 00/23519に記載されている。イオノマー、イオノマーブレンド、熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタン、メタロセンが好ましい材料である。該カバーは、流し込み成型法、反応射出成型、射出又は圧縮成型法、噴霧又は浸漬法によって製造できる。本発明のもう一つの局面では、ボール30は高慣性モーメント、低初期スピン速度ボールであり、コア32、薄い高密度層34及びカバー36を含む。好ましくは、該薄い高密度層34は、外部カバー36の近傍に位置し、また好ましくは、層34はできる限り薄く作られる。この層34は、約0.025?約1.27 mm (約0.001?約0.05 インチ)、より好ましくは約0.127?約0.76 mm (約0.005?約0.030 インチ)及び最も好ましくは約0.25?約0.5 mm (約0.010?約0.020 インチ)なる範囲内の厚みを持つことができる。
【0032】該薄い高密度層34は、好ましくは1.2を越える、より好ましくは1.5を越える、より一層好ましくは1.8を越える及び最も好ましくは2.0を越える比重を持つ。好ましくは、この薄い高密度層34は、できる限り該ボール30の外部表面、即ちカバー36のディンプルを持たない表面又は平坦表面に近接して配置される。約0.76 mm(0.030 インチ)のカバー厚みを持つゴルフボールに対して、該薄い高密度層は、上で論じた該重心半径の十分に外側の、該薄い高密度層の厚みを含む該平坦表面から、約0.79 mm?1.78 mm (0.031?0.070 インチ)離れた位置に配置されるであろう。約2.8 mm (0.110 インチ)なるカバー厚み(同一又は異なる材料製の1以上の層)を持つゴルフボールに対しては、該薄い高密度層は、同様に該重心半径の外側の、該平坦表面から、約2.82 mm?3.84 mm (0.111?0.151 インチ)離れた位置に配置されるであろう。該薄い高密度層を、できる限り動径方向外側に配置する利点は、上に詳細に論じた。しかし、該薄い高密度層を、該重心半径の外側に配置することが必要である。
【0033】慣性モーメントを除き、この薄い高密度層の存在は、好ましくは全体的な該ボールの特性、例えば感触、圧縮率、復元係数及びカバーの硬さに、大きな影響を与えることはない。しかし、該内部コア34を含む、該重心半径内側の該ボールの質量は、該ボールを該USGA規格の質量に維持するために、減じられなければならない。この薄い高密度層に対して適した材料は、上記の比重並びに厚みに関する条件を満足する、任意の材料を含む。この薄い高密度層は、好ましくは液状溶液、分散物、ラッカー、ペースト等、例えば増量した又は充填した天然又は合成のゴムラテックス、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、ポリエステル、任意の反応性又は非-反応性の被覆又は注型材料として、該内部コア32に適用され、次いで硬化され、平衡な固体となるまで乾燥又は蒸発される。この薄い高密度層は、また圧縮又は射出成型、RIM、流し込み、噴霧、浸漬、粉末被覆、又は該内部コア上に材料を堆積するための任意の手段によって、製造することができる。この薄い高密度層は、また比重増加フィラー、繊維、フレーク又は粒状物質で増量した、熱可塑性ポリマーであっても良く、結果的に薄い被膜として適用でき、また上で論じた好ましい比重レベルを満足する。圧縮成型法を利用して、タングステン粉末を含む軟質ポリブタジエンから製造した、薄い高密度層の特別な例の一つは、約0.53 mm?約0.64 mm (0.021-0.025 インチ)なる厚み及び比重1.31並びにショアC硬さ約72を有する」
(エ)「【0036】ボール30の内部コア32は、上記コア材料を含む多くの材料から製造できるが、該ボール30がUSGA規格の質量範囲内に入るように、該材料の比重が、該薄い高密度層の該高い比重を釣り合わせるものである必要がある。内部コア32は、好ましくは中実で単一の、又は中実でマルチピース型のコアであり、また糸巻き層、液体、ゲル、及び中空又は発泡層を含むことができる。このコアは、また1又は複数のポリウレタン層中に収容された、1層以上のポリブタジエン層を含むこともできる。液状の該薄い高密度の層34を、糸巻き層の次に堆積した場合、該液状材料は、該糸巻き層内に侵入することができる。米国特許第5,947,843号は、予備加硫されたラテックス材料が、約1.27 mm (0.050 インチ)の深さまで浸透可能であることを予想した。しかし、この浸透の深さは、様々なファクタ、例えば該液体の粘度及び温度、並びに該糸巻き層の間隔及び他の表面現象に依存する。
【0037】該内部コア32が、中実又は非-糸巻き型コアである場合、液体状態にある該薄い高密度の層は、厚み約0.0254 mm (0.001 インチ)以上を持つフィルムを残すことができる。この液体材料は、紫外光によって、あるいは加熱乾燥又は周囲条件下で乾燥することにより、硬化することができる。この液体を加熱乾燥した場合、該内部コア材料は、好ましくは該コアの熱軟化を回避するために、熱硬化性材料で作られる。好ましいラテックスは、MA、フォールリバーのヘバテックス社(Heveatex Corporation)によって製造されている、予備加硫されたヘバテックス(Heveatex)モデルNo. 1704である。また、他のラテックス被覆コアは、米国特許第5,989,136号及び同第6,030,296号に記載されている。米国特許第5,993,968号は、熱可塑性材料を該コア上に射出成型する前に、ウレタン分散物(充填物なし)で含浸した、糸巻きコアを開示している。」
(オ)「【0039】
(アッチ又はPGA圧縮率) = (160 - リール圧縮率)
従って、リール圧縮率100は、アッチ又はPGA圧縮率60と等しいはずである。本発明のもう一つの局面によれば、ボール30との関連で記載したように、該薄い高密度層は、比重が減じられた最も内側のコアを有する、多層ボール中に組み込むことができる。図5に示すように、ボール40は最も内側のコア42を有し、これは上で論じたように、減じられた比重をもつ材料から作られる。好ましくは、最も内側のコア42は、発泡された材料又は内部に配合された、中空微小球等の低比重フィラーを含む材料から作られる。好ましくは、該最も内側のコア42の比重は、0.9未満であり、より好ましくは0.8未満である。該最も内側のコア42の、実際の比重は、該ボール残部の質量分布に依存する。ボール40は、最も内側のコア42内に収容された、もう一つの比重の減じられた層44を持つことができる。好ましくは、この層44の比重は、0.9未満であり、より好ましくは0.8未満である。この層44の比重は、該最内部のコア42の比重とは違っていても良い。この層44は、外部コア46及びカバー48によって包まれている。
【0040】外部コア46は、好ましくはそこに組み込まれた薄い高密度の層を持つ。あるいはまた、図5に示すように、別の薄い高密度の層50が、層42と44との間に、あるいは層44とカバー48との間に配置される。最も好ましくは、ボール40は、ただ一つの薄い高密度の層を持つ。しかし、1層以上の薄い高密度の層を持つことが可能であり、また幾つかの例においては望ましいことである。当分野において公知であり、また米国特許第5,823,889号に記載されているように、発泡材料中にエアーポケットを有するコアは、糸巻きコアの望ましいソフトな感触作用を与えるが、これは該糸巻きコア中に取り込まれたエアーポケットの圧縮性によるものである。薄い高密度の層50との組み合わせで、ボール40は、所定のソフトな感触作用並びに所定のスピン速度を持つことができる。具体的には、該薄い高密度の層が、該ボールの中心と該重心半径との間に位置する場合、ボール40は、高いスピン速度を持つ。

【0042】あるいはまた、該内部コア42、中間層44及び外部コア46は、比重が減じられた材料で作ることができる。該内部コア42は、その上に追加の層を適用するための支持体又はプレフォームとして機能し得る。あるいはまた、層44は、比重が減じられた層ではなく、あるいは該部コア46自体が、比重の減じられた層であり得る。薄い高密度の層を使用する場合、糸巻きの最外部コア層を設けて、この薄い高密度の層を収容することができる。例えば、薄い高密度の層50が、コア42、44を包む場合、外部コア46は、糸巻き層であり得る。本発明のもう一つの局面によれば、層42、44及び46の比重は、外側に向かって増大する値を持つ、比重勾配を生成することができ、即ちコア42の比重は層44の比重よりも小さく、後者の比重は更に層46の比重よりも小さい。この比重勾配は、また逆の方向を持つことも可能である。即ち、コア42の比重は層44の比重よりも大きく、後者の比重は更に層46の比重よりも大きい。」
(カ)上記(オ)及び図5より、層44を収容した内側のコア42と、外部コア46との間、すなわち、内側のコア42の外側に形成された薄い高密度層50が看取できる。
(キ)上記(オ)【0039】より、内側のコア42の外側に形成された「薄い高密度層50」は、上記(イ)及び(ウ)に記載の「薄い高密度層34」と共通するものである。ここで、上記(イ)及び(ウ)より、「薄い高密度層34」は、「ポリウレタン」を材料として、内部コア32に適用され、「被覆又は注型次いで硬化され、平衡な固体となるまで乾燥又は蒸発される」ことにより、「内部コア32は、発泡層を含むことができ、ポリウレタン層中に収容され」ることとなる。そして、「薄い高密度層34」は、「液体材料」を、「紫外光によって、あるいは加熱乾燥又は周囲条件下で乾燥することにより、硬化」し、「厚み約0.0254 mm (0.001 インチ)以上を持つフィルム」状態となったものであるから、「非フォーム状」といえる。そうすると、内側のコア42の外側には、非フォーム状ポリウレタンの薄い高密度層50が形成される、といえる。
(ク)上記(オ)【0042】の「層42」、「層44」、及び「層46」は、それぞれ、「内部コア42」、「中間層44」、及び「外部コア46」に対応することは明らかである。

そうすると、上記(ア)乃至(ク)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「ボール40は最も内側のコア42を有し、
最も内側のコア42は、発泡された材料から作られ、
中間層44を収容した内側のコア42と、外部コア46との間、すなわち、内側のコア42の外側には、非フォーム状ポリウレタンの薄い高密度層50が形成され、
内部コア42、中間層44、及び外部コア46の比重は、外側に向かって増大する値を持つ、比重勾配を生成する、ボール40。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「ゴルフボール」、「内側コア層」、及び「外側コア層」は、それぞれ、前者の「ゴルフボール」、「内側コア層」、及び「外側コア層」に相当する。
イ 後者の「内側コア層」は、「0.500インチから1.100インチの範囲の径」であるから、前者の「内側コア層」の「0.254cmから2.794cm(0.100インチから1.100インチ)の範囲の径」に包含される。
ウ 後者の「内側コア層」は、非充填または発泡性の密度減少材料を含むものであるから、前者の「内側コア層」とは、「フォーム状組成物を有する内側コア層」との概念で共通する。
エ 後者の「内側および外側コア層」は、「硬度勾配、すなわち、内側コアのセンタから内側コアの表面までの硬度の差、同様の外側コア層の最も内側の表面から外側コア層の表面までの硬度の差を伴い、勾配は、正(増加)である」から、「外側表面硬度(H_(inner) _(core) _(surface))が中心硬度(H_(inner) _(core) _(center))より大きく正の硬度勾配を実現する内側コア層」、及び「外側表面硬度(H_(outer) _(surface) _(of) _(OC))が内側表面硬度(H_(inner) _(surface) _(of) _(OC))より大きく正の硬度勾配を実現する外側コア層」を有するといえる。
オ 後者の「外側コア層」は、「ベースゴムを含み、むベースゴムは熱硬化性ポリブタジエン」であるから、「熱硬化性材料を有する外側コア層」といえ、「内側コアの周りに配され」ていることは明らかである。
カ 後者の「外側コア層の厚さ」は、「0.100インチから0.570インチの範囲の厚さ」であるから、前者の「外側コア層」の「0.254cmから1.905cm(0.100インチから0.750インチ)の範囲の厚さ」に包含される。
キ 後者の「ゴルフボール」は、「外側コア層の比重が内側コア層の比重より大きい」ものであるから、「比重(SG_(outer))は比重(SG_(inner))より大きい」といえる。
ク 本願補正発明の「ゴルフボール用のコア組立体」とは、「ゴルフボール」における「内側コア層」と「外側コア層」とからなる部分を指しているから、「内側コア層」、及び「外側コア層」を有する後者の「ゴルフボール」は、実質的に「ゴルフボール用のコア組立体」を有するといえる。

したがって、両者は、
「ゴルフボール用のコア組立体であって、
(i)フォーム状組成物を有する内側コア層であって、0.500インチから1.100インチの範囲の径と、比重(SG_(inner))と、外側表面硬度(H_(inner) _(core) _(surface))および中心硬度(H_(inner) _(core) _(center))とを伴い、H_(inner) _(core) _(surface)がH_(inner) _(core) _(center)より大きく正の硬度勾配を実現する上記内側コア層と、
(ii)熱硬化性材料を有する外側コア層であって、上記内側コアの周りに配され、0.100インチから0.570インチの範囲の厚さと、比重(SG_(outer))と、外側表面硬度(H_(outer) _(surface) _(of) _(OC))および内側表面硬度(H_(inner) _(surface) _(of) _(OC))とを伴い、H_(outer) _(surface) _(of) _(OC)がH_(inner) _(surface) _(of) _(OC)より大きく正の硬度勾配を実現する上記外側コア層とを有し、
SG_(outer)はSG_(inner)より大きいゴルフボール用のコア組立体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「非フォーム状ポリウレタンの外側スキンが形成された」内側コア層を有するのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。

[相違点2]
本願補正発明は、フォーム状「ポリウレタン」組成物を有する内側コア層を有するのに対し、引用発明1では、その点につき明らかでない点。

(4)判断
上記相違点1及び相違点2について以下検討する。
ア [相違点1]について
引用発明2の「ボール40」、「最も内側のコア42」、及び「外部コア46」は、それぞれ、本願補正発明の「ゴルフボール」、「内側コア層」、及び「外側コア層」に相当する。
引用発明2の「非フォーム状ポリウレタンの薄い高密度層50」は、「中間層44を収容した内側のコア42と、外部コア46との間、すなわち、内側のコア42の外側」に形成されたものであるから、本願補正発明の「非フォーム状ポリウレタンの外側スキン」に相当する。
引用発明2の「最も内側のコア42」は、「発泡された材料から作られ」ているものであるから、本願補正発明の「内側コア層」と、「フォーム状組成物を有する」との概念で共通する。
引用発明2の「ボール40」は、「内部コア42、中間層44、及び外部コア46の比重は、外側に向かって増大する値を持つ、比重勾配を生成する」ものであるから、「比重(SG_(outer))は比重(SG_(inner))より大きい」といえる。
そうすると、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明2に記載されている。
そして、引用発明1も引用発明2も、ゴルフボールである点で技術分野が共通する。
また、引用発明1も引用発明2も、所望のスピン特性を有するゴルフボールを提供するという点で課題が共通する。
そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ [相違点2]について
上記「(2) イ (エ)【0036】」に「内部コア32は、好ましくは中実で単一の、又は中実でマルチピース型のコアであり、また糸巻き層、液体、ゲル、及び中空又は発泡層を含むことができる。このコアは、また1又は複数のポリウレタン層中に収容された、1層以上のポリブタジエン層を含むこともできる。」と示されているように、内部コア(本願補正発明の「内側コア層」に相当。)をポリウレタン中に収容することは、ゴルフボールの技術分野において、技術常識といえる事項である。(以下「技術常識」という。)
そして、上記技術常識をかんがみれば、フォーム状組成物を有する内部コア層の材料として、内部コア層自体を直接覆っている材料であるポリウレタンを採用することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、引用発明1において、上記技術常識を適用することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、及び上記技術常識から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明

本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年4月1日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「ゴルフボール用のコア組立体であって、
(i)フォーム状ポリウレタン組成物を有する内側コア層であって、0.254cmから2.794cm(0.100インチから1.100インチ)の範囲の径と、比重(SG_(inner))と、外側表面硬度(H_(inner) _(core) _(surface))および中心硬度(H_(inner) _(core) _(center))とを伴い、H_(inner) _(core) _(surface)がH_(inner) _(core) _(center)より大きく正の硬度勾配を実現する上記内側コア層と、
(ii)熱硬化性材料を有する外側コア層であって、上記内側コアの周りに配され、0.254cmから1.905cm(0.100インチから0.750インチ)の範囲の厚さと、比重(SG_(outer))と、外側表面硬度(H_(outer) _(surface) _(of) _(OC))および内側表面硬度(H_(inner) _(surface) _(of) _(OC))とを伴い、H_(outer) _(surface) _(of) _(OC)がH_(inner) _(surface) _(of) _(OC)より大きく正の硬度勾配を実現する上記外側コア層とを有し、
SG_(outer)はSG_(inner)より大きいことを特徴とするゴルフボール用のコア組立体。」(以下「本願発明」という。)

2 引用刊行物
平成27年11月16日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物 ア」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、実質的に、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「非フォーム状ポリウレタンの外側スキンが形成された」」との限定を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点2となる。
そして、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、及び上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、及び上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-29 
結審通知日 2017-05-30 
審決日 2017-06-12 
出願番号 特願2014-85990(P2014-85990)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 フォーム状の内側コアおよび熱硬化性の外側コア層を具備するゴルフボール  
代理人 澤田 俊夫  

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