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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1334103 |
審判番号 | 不服2016-5551 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-14 |
確定日 | 2017-11-02 |
事件の表示 | 特願2014-168708「コンテンツ暗号化をアップグレードするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開,特開2015- 46878〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,2010年3月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月25日,2009年5月26日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-502146号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成26年8月21日に新たな特許出願としたものであって, 平成26年9月22日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,同日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年8月21日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年11月17日付けで意見書が提出されたが,平成27年12月8日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年12月14日),これに対して平成28年4月14日付けで審判請求がなされものである。 第2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成26年9月22日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。 「ビデオコンテンツ受信機装置において, 所定の暗号化方法を使用して暗号化された複数の暗号化部分を含むように選択的に暗号化されたデジタルビデオコンテンツのストリームを受信するステップと, 前記デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成すプロセッサがアクセスできるメモリに記憶するステップと, 前記メモリに記憶された前記デジタルビデオコンテンツのストリームのうちの前記暗号化部分をスマートカードインターフェイスを介してスマートカードへ送信するステップと, を含み, 前記スマートカードにおいて, 前記暗号化部分を受信し,該暗号化部分を暗号解読して暗号解読部分を生成するステップと, 前記暗号解読部分を,前記ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成す前記プロセッサへ前記スマートカードインターフェイスを介して返送するステップと, を含み, 前記ビデオコンテンツ受信機装置において, 前記暗号解読部分を前記メモリに記憶し,前記デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記メモリに記憶された,前記暗号化部分に取って代わる前記暗号解読部分で,暗号化されていないデジタルビデオコンテンツのストリームとして再構築するステップと,を含む, ことを特徴とする暗号解読方法。」 第3.引用刊行物に記載の事項 1.原審における平成27年8月21日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特開2006-128907号公報(2006年5月18日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【0002】 近年,衛星や地上波及びケーブルによるデジタル放送が開始され,本格化し始めている。デジタル放送システムでは,例えば,MPEG2方式で圧縮された映像や音声,番組情報等をトランスポートストリーム(以下,TSという)というビットストリームで多重化し伝送している。 【0003】 図6は,TSのフォーマットを示している。図に示されるように,TSは,複数のTSパケットから構成されている。TSパケットは,188バイトの固定長パケットであり,4バイトのヘッダ部301と184バイトのデータ部302を有している。ヘッダ部301には,1バイトの同期バイト311,3ビットのフラグ312,PID(Packet Identification)313,1バイトのフラグ314が格納される。フラグ314は,このTSパケットで伝送される伝送データのスクランブルの有無を示すスクランブル制御フラグを含んでいる。データ部302には,例えば,MPEG2方式で圧縮され必要に応じてスクランブルされた映像や音声等の伝送データが格納される。この伝送データをPES(Packetized Elementarty Stream)といい,複数のTSパケットに含まれるPESを連結することで,1つの映像データ等となる。」(下線は,当審にて,説明の都合上,付加したものである。以下,同じ。) B.「【0006】 図7のブロック図は,従来の受信装置の構成を示しており,例えば,特許文献1に記載されているものである。この従来の受信装置700は,受信したTSをTSパケットに分離してメモリに格納し,必要に応じてHSDを介して外部の装置へ出力する。 【0007】 従来の受信装置700は,図に示されるように,TS Demux(TS分離装置)71,外部メモリ72,外部CPU73を備えている。TS分離装置71は,TSパケット受信ブロック(以下,受信ブロックとする)711,TS Demux 内部CPU(以下,内部CPUとする)712,デスクランブラ713,DMA(Direct Memory Access)制御部714,内部メモリ716,ホストインタフェース710を備えている。」 C.「【0009】 内部メモリ716は,バッファ領域716aとプログラム領域716bを有している。バッファ領域716aには,受信したTSパケットが格納され,プログラム領域716bには,内部CPU712で実行されるファームウェア(プログラム)が格納される。内部メモリ716には,その他,TS分離装置71内の各ブロックが動作するために必要な設定データ等が格納されている。 【0010】 バッファ領域716aには,図8に示すように,4つのTSパケットバッファの領域が設けられている。従来のTS分離装置71では,後述の算出例(式(8))に示すように,1つのTSパケットの処理に4つのTSパケットバッファが必要なため,4つのTSパケットバッファの領域が設けられている。TSパケットバッファとは,TSパケットを一時的に格納しておくための一時格納領域である。761?764は,それぞれTSパケットバッファ#1の領域?TSパケットバッファ#4の領域である。各TSパケットバッファは,ステータスが格納されるステータス部801,TSパケットが格納されるTSパケット部802が設けられている。 【0011】 次に,図9及び図10を用いて,従来のTS分離装置71の動作について説明する。図9は,従来のTS分離装置71の動作を示すフローチャート,図10は,n=1としたときの従来のTS分離装置71の動作を示すタイミングチャートである。この処理は,スクランブルされたデータを含むTSパケットを受信し,HSD76及び外部メモリ72へ出力する場合の処理である。HSD76へは,デジタルAV機器等でデスクランブルすることが前提であるため,TSパケットをスクランブルされた状態のまま転送する。外部メモリ72へは,例えば,受信装置700に接続される表示装置(不図示)等で映像の表示等を行うため,デスクランブルしたデータを出力する。 【0012】 まず,受信ブロック711が,TSパケット#nをバッファに書き込む(S11)。処理S11は,TSパケット#nを受信したときに実行開始し,期間(o)(TSパケットの入力時間)の後,すなわち図10のタイミングt11において実行終了する。受信ブロック711は,TSパケット#nを受信すると,TSパケットバッファ#1(761)を取得し,TSパケットバッファ#1(761)にTSパケット#nを書き込む。受信ブロック711は,TSパケット#nの書き込みが完了すると,内部CPU712に内部バス717を介して割込みを出力する。さらに,受信ブロック711は,TSパケット#n+1を受信すると,TSパケットバッファ#2(762)にTSパケット#n+1の書き込みを開始する。 【0013】 次いで,内部CPU712が,TSパケット#nのヘッダを解析する(S12)。処理S12は,図10のタイミングt12において実行開始し,期間(t)(1つ目のTSパケットのヘッダ解析処理時間)の後,実行終了する。内部CPU712は,受信ブロック711から書き込み完了の割込みを受けると,書き込まれたTSパケット#nに対してヘッダ部301の解析処理を行う。内部CPU712は,ヘッダ部301に含まれるフラグ314のスクランブル制御フラグに基づいて,スクランブルの有無を決定する。また,内部CPU712は,外部CPU73から設定された設定データ等に基づいて,HSD76への出力の有無を決定する。HSD76へ出力する場合,内部CPU712は,DMA制御部714に対しTSパケット#nをHSD76へ出力する指示を出す。」 D.「【0017】 次いで,デスクランブラ713が,TSパケット#nをデスクランブルする(S16)。処理S16は,図10のタイミングt16において実行開始し,期間(q)(デスクランブル処理時間)の後,実行終了する。デスクランブラ713は,内部CPU712の指示を受け,TSパケット#nをTSパケットバッファ#1(761)から読み出し,データ部302に対しデスクランブルを行う。デスクランブルされたデータ部302は,TSパケットバッファ#1(761)に上書きされる。デスクランブルが終了するとデスクランブラ713は,内部バス717を介して内部CPU712に対してデスクランブル終了の割込みを出力する。」 E.「【0021】 次いで,内部CPU712が,TSパケット#nのデータを解析し,DMA制御部714が,外部メモリへ出力する(S20)。処理S20は,図10のタイミングt20において実行開始し,期間(r)(TSパケットのデータ解析処理時間)と期間(s)(外部メモリへの出力時間)の後,実行終了する。内部CPU712は,デスクランブラ713からTSパケット#nのデスクランブル終了の割込みを受けると,TSパケット#nのデータ部302の解析を行う。解析の結果,データ部302を出力する場合,内部CPU712は,DMA制御部714に対しデータ部302を外部メモリ72へ出力するよう指示を行う。DMA制御部714は,外部メモリ72へデータ部302を出力し,この出力が終了したとき,内部バス717を介して内部CPU712に転送終了の割込みを出力する。処理S20は,内部CPU712により処理が行われ,処理S19はデスクランブラ713により処理が行われるため,2つの処理は並列に実行される。」 2.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特表2007-516665号公報(公表日;2007年6月21日,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 F.「【0020】 図2は,通常そのようなケーブルカードで使用される従来のケーブルカードの構造を示す。ケーブルカード10の実現例では,インタフェース50を介してホスト機器14に接続される。従来のケーブルカードは,入力データストリームを復号するMPEGストリーム復号ブロックにおいて帯域内データを受信する。データがホスト機器14に戻されると,そのデータは,MPEGストリーム暗号化器58において再暗号化される。ケーブルカード10は,さらに,ケーブルカード10内,例えば,CPU66において処理する特定のコンテンツをデータストリームから分配するために,デマルチプレクサ62を内蔵してもよい。帯域外データはブロック70において処理される。 【0021】 本発明のある実施形態によると,ケーブルカードモジュールは,ケーブルカード内で,例えば,パッセージの選択的暗号化システムの復号の様々な形態を実施するためのメカニズムに備えられている。上記特許出願は,本発明のある実施形態のPID再マッピング機能を使用する選択的暗号化システムのある実施形態の詳細について参照することができる。特に,復号及び/又はPID再マッピング機能は,汎用ホストSTB又は他の受信機にパッセージ互換性又は他の選択的暗号化又はPID再マッピング機能との互換性を与えるためにケーブルカード内で実行される。本教示を考察すれば,他の選択的暗号化システム,完全暗号化システム,及びPIDマッピング及び再マッピングを利用する他のシステムが,ケーブルカード内でこれらの機能を得て,汎用的ホストシステムがケーブルカードの機能性によりその「個性」を得ることを可能にすることから利益を得ることができるため本発明がソニー株式会社のパッセージ選択的暗号化システムとの互換性を有するシステムだけに限定されるものではないことは,当業者にとって明らかである。」 3.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,特表2004-516729号公報(公表日;2004年6月3日,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 G.「【0028】 制御信号Cに応答して,MUX37は装置35からのトランスポート・ストリームを選択するか,または再生モードで,蓄積インタフェース95を介して蓄積装置90から取り出されるデータ・ストリームを選択する。通常の,非再生動作において,利用者が視聴するために選択した番組を含むデータ・パケットは,選択装置45によって,そのパケットのPID(Packet Identifier:パケット識別子)によって識別される。もし,パケットが暗号化されていることを,選択された番組パケットのヘッダ・データ内の暗号化指標が示すならば,選択装置45はそのパケットを解読装置50に供給する。もしそうでなければ,選択装置45は暗号化されてないパケットをトランスポート・デコーダ55に供給する。同様に,ユーザが蓄積するために選択した番組を含むデータ・パケットは,選択装置47によって,そのパケットのパケット識別子により識別される。選択装置47は,パケット・ヘッダの暗号化指標に基づき,暗号化されたパケットを解読装置50に供給するか,または暗号化されてないパケットをMUX110に供給する。 【0029】 解読装置40と50の機能は,NRSS標準に適合する単独の取外し可能なスマートカードで実行される。すべてのセキュリティ関連の機能は取外し可能な装置内に収められ,この装置は,サービス・プロバイダが暗号化技術を変更することに決めれば容易に取り替えられ,またはセキュリティ・システムを容易に変更することができるようにし,例えば,別のサービスをデスクランブル(descramble)することができるようにする。」 H.「【0031】 選択装置45と47から解読装置50に供給されるパケットは,商務省の技術情報サービスにより提供された連邦情報標準公報(Federal Information Standards Publication:FIPS)46,74,81において規定されるデータ暗号化標準(Data Encryption Standard:DES)のような暗号化技術を使用して暗号化される。解読装置50は暗号化されたパケットを,選択された暗号化アルゴリズムに適合する解読技術を使用し,装置45と47から供給される暗号化キーを使用して,暗号化されたパケットを解読する。解読装置50からの解読されたパケット,および表示用の番組を含んでいる装置45からの暗号化されてないパケットはデコーダ55に供給される。解読装置50からの解読されたパケット,および蓄積用の番組を含んでいる選択装置47からの暗号化されてないパケットはMUX110に供給される。」 第4.引用刊行物に記載の発明 1.上記Aの「デジタル放送システムでは,例えば,MPEG2方式で圧縮された映像や音声,番組情報等をトランスポートストリーム(以下,TSという)というビットストリームで多重化し伝送している」という記載,同じく,上記Aの「TSは,複数のTSパケットから構成されている」という記載,及び,同じく,上記Aの「TSパケットで伝送される伝送データのスクランブルの有無を示すスクランブル制御フラグを含んでいる。データ部302には,例えば,MPEG2方式で圧縮され必要に応じてスクランブルされた映像や音声等の伝送データが格納される」という記載,上記Bの「従来の受信装置700は,受信したTSをTSパケットに分離してメモリに格納し,必要に応じてHSDを介して外部の装置へ出力する」という記載から,引用刊行物1には,“映像や音声等の伝送データである複数のTSパケットから構成されているトランスポートストリームを受信する受信装置”が記載されていることが読み取れる。 2.上記1.において引用した,上記Aの「トランスポートストリーム(以下,TSという)というビットストリームで多重化し伝送している」という記載と,同じく,1.おいて引用した,上記Bの「従来の受信装置700は,受信したTS」という記載と,上記Cの「スクランブルされたデータを含むTSパケットを受信し,HSD76及び外部メモリ72へ出力する場合の処理である。HSD76へは,デジタルAV機器等でデスクランブルすることが前提であるため,TSパケットをスクランブルされた状態のまま転送する」という記載から,引用刊行物1には, “複数のTSパケットから構成されているスクランブルされたデータを含むトランスポートストリームを受信する段階” が存在していることが読み取れる。 3.上記Bの「受信装置700は,図に示されるように,TS Demux(TS分離装置)71,外部メモリ72,外部CPU73を備えている。TS分離装置71は,TSパケット受信ブロック(以下,受信ブロックとする)711,TS Demux 内部CPU(以下,内部CPUとする)712,デスクランブラ713,DMA(Direct Memory Access)制御部714,内部メモリ716,ホストインタフェース710を備えている」という記載,上記Cの「内部メモリ716は,バッファ領域716aとプログラム領域716bを有している。バッファ領域716aには,受信したTSパケットが格納され」という記載,同じく,上記Cの「バッファ領域716aには,図8に示すように,4つのTSパケットバッファの領域が設けられている」という記載,同じく,上記Cの「受信ブロック711が,TSパケット#nをバッファに書き込む(S11)」という記載,同じく,上記Cの「受信ブロック711は,TSパケット#nの書き込みが完了すると,内部CPU712に内部バス717を介して割込みを出力する」という記載,及び,同じく,上記Cの「次いで,内部CPU712が,TSパケット#nのヘッダを解析する」という記載から,引用刊行物1における「内部メモリ716」は,「内部プロセッサ712」からアクセス可能であり,前記「内部メモリ716」には,「TSパケット」が書き込まれるものであることが読み取れるので,上記引用の記載から,引用刊行物1には, “スクランブルされたデータを含むTSパケットを,受信装置700に含まれる内部プロセッサが,アクセス可能な,内部メモリに書き込む段階” が存在していることが読み取れる。 4.上記Cの「内部CPU712は,受信ブロック711から書き込み完了の割込みを受けると,書き込まれたTSパケット#nに対してヘッダ部301の解析処理を行う。内部CPU712は,ヘッダ部301に含まれるフラグ314のスクランブル制御フラグに基づいて,スクランブルの有無を決定する」という記載と,上記Dの「次いで,デスクランブラ713が,TSパケット#nをデスクランブルする(S16)」という記載,及び,同じく,上記Dの「デスクランブラ713は,内部CPU712の指示を受け,TSパケット#nをTSパケットバッファ#1(761)から読み出し」という記載から,引用刊行物1には, “内部CPUは,TSパケット#nのヘッダ部の解析を行い,前記TSパケット#nのスクランブルの有無を決定し,前記TSパケット#nが,スクランブルされている場合は,前記TSパケット#nの読み出しを,デスクランブラに指示する段階” が存在していることが読み取れる。 5.上記4.において引用した,上記Dの「デスクランブラ713が,TSパケット#nをデスクランブルする」という記載と,同じく上記4.において引用した,上記Dの「デスクランブラ713は,内部CPU712の指示を受け,TSパケット#nをTSパケットバッファ#1(761)から読み出し」という記載から,引用刊行物1には, “デスクランブラが,スクランブルされたTSパケット#nを読み出し,前記TSパケット#nをデスクランブルする段階” が存在していることが読み取れる。 6.上記Dの「デスクランブルされたデータ部302は,TSパケットバッファ#1(761)に上書きされる」という記載と,上記4.において検討した事項から,引用刊行物1には, “デスクランブルされたTSパケット#nを,内部メモリに上書きする段階” が存在していることが読み取れる。 7.上記6.において検討した事項と,上記Eの「内部CPU712は,デスクランブラ713からTSパケット#nのデスクランブル終了の割込みを受けると,TSパケット#nのデータ部302の解析を行う。解析の結果,データ部302を出力する場合,内部CPU712は,DMA制御部714に対しデータ部302を外部メモリ72へ出力するよう指示を行う」という記載から,引用刊行物1において, “スクランブルされていないデータも,内部CPU712により解析を受けた結果,外部メモリに送信される場合が存在する”ことは明らかであるから,上記Aの「伝送データをPES(Packetized Elementarty Stream)といい,複数のTSパケットに含まれるPESを連結することで,1つの映像データ等となる」という記載,上記Cの「外部メモリ72へは,例えば,受信装置700に接続される表示装置(不図示)等で映像の表示等を行うため,デスクランブルしたデータを出力する」という記載と,上記6.において検討した事項から,引用刊行物1には, “受信装置において,デスクランブルされたTSパケット#nを,内部メモリに上書きし,前記上書きしたTSパケットと,スクランブルされていないTSパケットとを,映像の表示等を行うために,1つの映像データ等となるよう,外部メモリへ出力する段階”が存在することが読み取れる。 8.そして,上記1.?7.において検討した事項から,引用刊行物1には,「受信装置700」における“デスクランブル方法”が記載されていることは,明らかであるから,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 「映像や音声等の伝送データである複数のTSパケットから構成されているトランスポートストリームを受信する受信装置において, 複数のTSパケットから構成されているスクランブルされたデータを含むトランスポートストリームを受信する段階と, スクランブルされたデータを含むTSパケットを,前記受信装置に含まれる内部プロセッサが,アクセス可能な,内部メモリに書き込む段階と, 前記内部CPUは,TSパケット#nのヘッダ部の解析を行い,前記TSパケット#nのスクランブルの有無を決定し,前記TSパケット#nが,スクランブルされている場合は,前記TSパケット#nの読み出しを,デスクランブラに指示する段階と, 前記デスクランブラが,前記スクランブルされたTSパケット#nを読み出し,前記TSパケット#nをデスクランブルする段階と, デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きする段階と, 前記受信装置において,前記デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きし,前記上書きしたTSパケットと,スクランブルされていないTSパケットとを,映像の表示等を行うために,1つの映像データ等となるよう,外部メモリへ出力する段階, とからなるデスクランブル方法。」 第5.本願発明と引用発明との対比 1.引用発明における「映像や音声等の伝送データ」が,伝送される「ビデオコンテンツ」を含むものであることは,明らかであるから, 引用発明における「映像や音声等の伝送データである複数のTSパケットから構成されているトランスポートストリームを受信する受信装置」が, 本願発明における「ビデオコンテンツ受信機装置」に相当する。 2.引用発明における「スクランブル」とは,「TSパケット」を,所定の方法で暗号化することに他ならず,引用発明においては,「TSパケット」の一部が,「スクランブル」,即ち,“所定の方法で暗号化されている”ものであるから, 引用発明における「複数のTSパケットから構成されているスクランブルされたデータを含むトランスポートストリーム」が, 本願発明における「所定の暗号化方法を使用して暗号化された複数の暗号化部分を含むように選択的に暗号化されたデジタルビデオコンテンツのストリーム」に相当するので, 引用発明における「複数のTSパケットから構成されているスクランブルされたデータを含むトランスポートストリームを受信する段階」が, 本願発明における「所定の暗号化方法を使用して暗号化された複数の暗号化部分を含むように選択的に暗号化されたデジタルビデオコンテンツのストリームを受信するステップ」に相当する。 3.引用発明における「受信装置に含まれる内部プロセッサ」,「内部メモリ」が, 本願発明における「ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成すプロセッサ」,「メモリ」に相当するので, 引用発明における「スクランブルされたデータを含むTSパケットを,前記受信装置に含まれる内部プロセッサが,アクセス可能な,内部メモリに書き込む段階」が, 本願発明における「デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成すプロセッサがアクセスできるメモリに記憶するステップ」に相当する。 4.引用発明においては,「TSパケット」のうち「スクランブル」されているものがあれば,当該「スクランブル」されている「TSパケット」を,「メモリ」から読み出すよう「スクランブラ」に指示しているが,そのことによって,当該「TSパケット」が,「デスクランブラ」に,送られるようにしていることは,明らかである。そして, 引用発明における「デスクランブラ」は,“スクランブルされているTSパケットを元に戻す”,即ち,“スクランブルされているTSパケットを復号する復号部”であるから 引用発明における「内部CPUは,TSパケット#nのヘッダ部の解析を行い,前記TSパケット#nのスクランブルの有無を決定し,前記TSパケット#nが,スクランブルされている場合は,前記TSパケット#nの読み出しを,デスクランブラに指示する段階」と, 本願発明における「メモリに記憶された前記デジタルビデオコンテンツのストリームのうちの前記暗号化部分をスマートカードインターフェイスを介してスマートカードへ送信するステップ」とは, “メモリに記憶されたデジタルビデオコンテンツのストリームのうちの暗号化部分を,復号部へ送るようにするステップ”である点で共通する。 5.引用発明において,「デスクランブラが,前記スクランブルされたTSパケット#nを読み出」すことは,“デスクランブラが,スクランブルされたTSパケット#nのヘッダ部パケット#nを受け取る”ことであり, 引用発明において,“デスクランブラが,スクランブルされたTSパケット#nをデスクランブルする”ことは,“TSパケット#nを復号すること”であるから, 引用発明における「デスクランブラが,前記スクランブルされたTSパケット#nを読み出し,前記TSパケット#nをデスクランブルする段階」と, 本願発明における「スマートカードにおいて,暗号化部分を受信し,該暗号化部分を暗号解読して暗号解読部分を生成するステップ」とは, “復号部において,暗号化部分を受信し,該暗号化部分の暗号を解読して暗号解読部分を生成するステップ”である点で共通する。 6.引用発明において,「デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きする」とは,「デスクランブルされたTSパケット#n」を,「内部メモリ」に返送することに他ならない。そして, 本願発明において,「返送」された「暗号解読部分」は,「メモリに記憶される」ことを踏まえれば, 引用発明における「デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きする段階」と, 本願発明における「暗号解読部分を,前記ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成す前記プロセッサへ前記スマートカードインターフェイスを介して返送するステップ」とは, “暗号解読部分を,返送するステップ”である点で共通する。 7.引用発明において,「スクランブルされていないTSパケット」と,「デスクランブルされたTSパケット#n」とで,「1つの映像データ等」になるよう処理を行っていることは,明らかであるから, 引用発明における「受信装置において,前記デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きし,前記上書きしたTSパケットと,スクランブルされていないTSパケットとを,映像の表示等を行うために,1つの映像データ等となるよう,外部メモリへ出力する段階」が, 本願発明における「暗号解読部分を前記メモリに記憶し,前記デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記メモリに記憶された,前記暗号化部分に取って代わる前記暗号解読部分で,暗号化されていないデジタルビデオコンテンツのストリームとして再構築するステップ」に相当する。 8.以上,1.?7.において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] ビデオコンテンツ受信機装置において, 所定の暗号化方法を使用して暗号化された複数の暗号化部分を含むように選択的に暗号化されたデジタルビデオコンテンツのストリームを受信するステップと, 前記デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記ビデオコンテンツ受信機装置の一部を成すプロセッサがアクセスできるメモリに記憶するステップと, 前記メモリに記憶された前記デジタルビデオコンテンツのストリームのうちの暗号化部分を,復号部へ送るようにするステップと, 復号部において, 暗号化部分を受信し,該暗号化部分の暗号を解読して暗号解読部分を生成するステップと, 前記暗号解読部分を,返送するステップと, を含み, 前記ビデオコンテンツ受信機装置において, 前記暗号解読部分を前記メモリに記憶し,前記デジタルビデオコンテンツのストリームを,前記メモリに記憶された,前記暗号化部分に取って代わる前記暗号解読部分で,暗号化されていないデジタルビデオコンテンツのストリームとして再構築するステップと, を含む,暗号解読方法。 [相違点1] “復号部”に関して 本願発明においては,「スマートカード」であるのに対して, 引用発明においては,「デスクランブラ」である点。 [相違点2] “復号部へ送るようにするステップ”に関して, 本願発明においては,「暗号化部分をスマートカードインターフェイスを介してスマートカードへ送信する」ものであるのに対して, 引用発明においては,「デスクランブラが,前記スクランブルされたTSパケット#nを読み出」すものであって,「スマートカードインターフェイス」については,言及されていない点。 [相違点3] “返送するステップ”に関して 本願発明においては,「プロセッサへ前記スマートカードインターフェイスを介して返送する」ものであるのに対して, 引用発明においては,「デスクランブルされたTSパケット#nを,前記内部メモリに上書きする」ものである点。 第6.相違点についての当審の判断 1.[相違点1]について 原審拒絶理由に引用された引用刊行物2の,上記Fに引用した記載内容,或いは,同じく原審拒絶理由に引用された引用刊行物3の,上記G,Hに引用した記載内容にもあるとおり,データ・ストリームを復号,或いは,デスクランブルするためのカード,或いは,スマートカードを設けることは,本願の原出願の第1国出願前に,当業者には広く知られた技術事項であり,引用発明においても,デスクランブラを,スマートカードにより構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,[相違点1]は,格別のものではない。 2.[相違点2],及び,[相違点3]について 引用刊行物2,或いは,引用刊行物3には,スマートカードが,インタフェースを介して接続されていることが記載され,データ・ストリームは,当該インタフェースを介して,スマートカードに送信されることは,明らかであるから, 引用発明において,デスクランブラとして,デスクランブラ機能を有するスマートカードを採用した場合に,デスクランブラが,メモリにデータを読みに行くことに代えて,CPUが,インタフェースを介して,スマートカードへデータを送信し,処理後のデータを,当該インタフェースを介して,CPUに送信するよう構成することは,当業者が,適宜なし得る程度のものである。 よって,[相違点2],及び,[相違点3]は,格別のものではない。 3.上記で検討したごとく,[相違点1]?[相違点3]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-05 |
結審通知日 | 2017-06-07 |
審決日 | 2017-06-23 |
出願番号 | 特願2014-168708(P2014-168708) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 辻本 泰隆 |
発明の名称 | コンテンツ暗号化をアップグレードするための方法 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 谷口 信行 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 谷口 信行 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 辻居 幸一 |