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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1334135
審判番号 不服2014-24389  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-01 
確定日 2017-10-30 
事件の表示 特願2013- 13482号「固体照明デバイス用の適合性のある拡散反射体のための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 84625号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年3月7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年3月16日 米国(US))を国際出願日とする特願2009-553588号の一部を平成25年1月28日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月5日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において、平成27年10月9日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年10月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月28日付けで最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年5月17日に意見書が提出されたものである。

第2 当審拒絶理由について
当審拒絶理由の概要は、平成28年10月27日になされた手続補正は、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を併せて「当初明細書等」という。)又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

第3 当審の判断
1 補正の内容
平成28年10月27日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「【請求項1】
固体照明タイルであって、該固体照明タイルは
基板と、
前記基板の表面上に取り付けられた、第1の厚さを有する固体照明素子と、
前記基板の前記表面上の、第2の厚さを有し、前記固体照明タイル上の突出した形へ適合するように構成されている反射シートと
を含み、前記第2の厚さが前記第1の厚さに比べて小さく、
前記反射シートは前記固体照明素子に近接して位置決めされるように構成された開口部を有し、前記反射シートは前記固体照明素子と接触しない
ことを特徴とする固体照明タイル。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
固体照明タイルであって、該固体照明タイルは
基板と、
前記基板の表面上に取り付けられた、第1の厚さを有する固体照明素子と、
前記基板の前記表面上の、第2の厚さを有し、前記固体照明タイル上の突出した形へ適合し、前記突出した形に接触するように構成されている反射シートと
を含み、前記第2の厚さが前記第1の厚さに比べて小さく、
前記反射シートは前記固体照明素子に近接して位置決めされるように構成された開口部を有し、前記反射シートは前記固体照明素子と接触しない
ことを特徴とする固体照明タイル。」

2 請求人の主張
本件補正は、上記「1」のとおり、補正前の「前記固体照明タイル上の突出した形へ適合するように構成されている反射シート」との事項を、「前記固体照明タイル上の突出した形へ適合し、前記突出した形に接触するように構成されている反射シート」(以下「補正事項A」という。)と補正するものであるところ、かかる補正について、請求人は、概ね以下のとおり主張している。
(1)平成28年10月27日に提出された意見書(「補正とその根拠について」の欄)
「この補正は、出願当初の明細書の段落0030の記載や、図3、図4などの内容を根拠としています。また、同段落の記載には、・・・このような構成とすることの特徴的効果も示されています。」

(2)平成29年5月17日に提出された意見書(「(2)」の欄)
ア「ここで、本願明細書段落[0007]をみると、・・・と記載されております。すなわち、ある実施形態(「実施形態1」とします。)では、反射シートは、『タイル上の突出したフィーチャの形に適合する』ように構成されることが明記され、別の実施形態(「実施形態2」とします。)においては、反射シートは、『固体照明素子に近接して位置決めされるように構成された開口部を含むことが可能であり、その場合、反射シートは固体照明素子と接触しない。』という構成を有することが明記されています。しかもこれらの記載は同一の段落内において行われており、実施形態1と実施形態2の対比が明確に示されているということができます。そして具体的な記載の内容を見ると、実施形態2については『反射シートが固体照明素子と接触しない』ことが明記されている一方で、実施形態1については『タイル上の突出したフィーチャの形に適合する』とのみ記載され、反射シートと固体照明素子との相対的な関係については明記されておりません。しかしながら、上記のとおり、実施形態1と実施形態2は、それらの対比が強調される態様で当該段落に記載されており、これを見た当業者は、実施形態1について反射シートが固体照明素子と接触することがあることが十分に理解できるものと思料します。」
イ「上記の指摘は、本願明細書段落[0011]についても同様です。すなわち、段落[0011]には、・・・と記載され、ある実施形態(「実施形態3」とします。)では、反射シートは『固体照明素子と接触しない。』と明記され、別の実施形態(「実施形態4」とします。)については、『基板の表面上の突出したフィーチャの形に適合するように構成される。』とだけ記載されて、反射シートと固体照明素子との相対的な関係について明記はされていないものの、同一の段落内で対比を強調して記載することにより、実施形態3と実施形態4の態様が対照的であることが示され、したがって、これを見た当業者は、実施形態4について反射シートが固体照明素子と接触することがあることが十分に理解できるものと思料します。」

3 当初明細書等の記載
請求人が上記「2」で補正の根拠と主張する当初明細書等の記載は次のとおりである(下線は、当審で付した。)。
(1)「【0007】
更に他の実施形態の反射シートは、タイル上の突出したフィーチャの形に適合するように構成することができる。更に他の実施形態では、反射シートは、固体照明素子に近接して位置決めされるように構成された開口部を含むことが可能であり、その場合、反射シートは固体照明素子と接触しない。」
(2)「【0011】
幾つかの実施形態では、反射シートを位置決めするステップは、反射シートを基板の表面に化学的に結合するステップ、及び/又は反射シートを基板の表面に機械的に取り付けるステップを含むことができる。幾つかの実施形態では、反射シートは、固体照明素子の上に位置決めされるように構成された開口部を含むことが可能であり、その場合、反射シートは固体照明素子と接触しない。更に他の実施形態では、反射シートは熱成形可能であり、基板の表面上の突出したフィーチャの形に適合するように構成される。」
(3)「【0030】
固体照明バー30は、例えば絶縁プラグ16に近接するように位置決めすることが可能な、1つ又は複数の大型ワイヤ相互接続18(LWI)を含むこともできる。LWI18は、基板の表面上に存在することができる表面突起の一例にすぎない。突起として示しているが、幾つかの実施形態では、LWI18をタイル12の表面と同じ高さにすることが可能であり、その場合、起伏14Bを不要にすることができる。基板13Bの表面上に、固体エミッタ20を取り付けることができる。固体エミッタ20は、1つ又は複数の波長を有する光を放出するように構成することが可能な、複数のLEDエミッタチップ22を含むことができる。」
(4)図3及び図4には、以下の図が示されている。



4 検討
請求人は上記「2」のとおり主張するので、本件補正に係る上記補正事項Aが、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否か〔参考判決:知財高裁 平成20年5月30日特別部判決 平成18年(行ケ)第10563号〕について、以下検討する。
(1)請求人は、上記「2(1)」のとおり、上記補正事項Aは、当初明細書等の段落【0030】、図3及び図4に記載されている旨主張するので、かかる記載について検討する。
ア 当初明細書の段落【0030】には上記「3(3)」のとおり記載されており、「固体照明タイル上の突出した形」に関連した構成について、
(ア)「固体照明バー30は、・・・1つ又は複数の大型ワイヤ相互接続18(LWI)を含むこともできる」 こと
(イ)「LWI18は、基板の表面上に存在することができる表面突起の一例にすぎない」こと、及び、
(ウ)「突起として示しているが、幾つかの実施形態では、LWI18をタイル12の表面と同じ高さにすることが可能であり、その場合、起伏14Bを不要にすることができる」こと、が記載されている。
ここで、上記(ア)及び(イ)の記載は、「固体照明タイル上の突出した形」が、例えば大型ワイヤ相互接続18(LWI)のような表面突起を含むことを説明するだけであり、それは、「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を設けることを記載ないし示唆するものではない。
また、上記(ウ)の記載は、突起として示されているLWI18をタイル12の表面と同じ高さにすることが可能とあることを説明するものであるが、LWI18をそのようにタイル12の表面と同じ高さで構成すると、LWI18は、もはや突起とはいえなくなるから、この態様は、請求項1で特定する「固体照明タイル上の突出した形」と解釈することはできず、したがって、上記(ウ)の記載も「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を記載ないし示唆するものではない。
よって、当初明細書の段落【0030】の記載は、上記補正事項Aの補正の根拠となり得るものではない。
イ 当初明細書等の図3及び図4には、上記「3(4)」のとおりの図が示されており、図3及び図4には、確かに、「固体照明タイル上の突出した形」としての「LWI18」と、「反射シート14、24」が示されている。
そして、図3には、反射シート14の陥凹部14BとLWI18とが離間した状態(接触していない状態)のものが示されており、また、図4にも、反射シート24の下面とLWI18とが離間した状態(接触していない状態)のものが示されているが、「固体照明タイル上の突出した形(LWI18)」に「接触するように構成されている」「反射シート24」は記載されていない。
したがって、当初明細書等の図3及び図4の記載は、上記補正事項Aの補正の根拠となり得るものではない。
ウ 以上のとおりであるから、請求人の上記「2(1)」の主張は採用できない。

(2)請求人は、上記「2(2)」のとおり、上記補正事項Aは、当初明細書等の段落【0007】及び段落【0011】に記載されている旨主張するので、かかる記載について検討する。
ア 当初明細書の段落【0007】には上記「3(1)」のとおり記載されており、「反射シート」の実施形態について、
(ア)「更に他の実施形態の反射シートは、タイル上の突出したフィーチャの形に適合するように構成することができる」こと、
(イ)「更に他の実施形態では、反射シートは、固体照明素子に近接して位置決めされるように構成された開口部を含むことが可能であり、その場合、反射シートは固体照明素子と接触しない」こと、が記載されている。
ここで、上記(ア)の記載は、「反射シート」が「タイル上の突出したフィーチャの形」に適合するように構成し得ることを説明するだけであり、それは、「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を設けることを記載ないし示唆するものではない。
また、上記(イ)の記載は、「反射シート」が「固体照明素子」と接触しないことを説明するものではあるが、「反射シート」と「タイル上の突出したフィーチャの形」との関係については何ら説明するものではないから、それは、「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を設けることを記載ないし示唆するものではない。
したがって、当初明細書の段落【0007】の記載は、上記補正事項Aの補正の根拠となり得るものではない。
請求人は、上記(ア)の実施形態1と上記(イ)の実施形態2は、それらの対比が強調される態様で当該段落に記載されており、これを見た当業者は、実施形態1について反射シートが固体照明素子と接触することがあることが十分に理解できる旨主張するが、そもそも、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「前記反射シートは前記固体照明素子と接触しない」として特定されるものであるから、上記実施形態1において、仮に、反射シートが固体照明素子と接触することがあることが理解できたとしても、そのような実施形態1は、本願発明の実施形態ということはできないし、また、本願発明において、「タイル上の突出したフィーチャ」と「固体照明素子」とは、それぞれ異なる構成要素であるから、「反射シート」が「固体照明素子」と接触するものであるとしても、それを根拠として、「反射シート」が「タイル上の突出したフィーチャ(突出した形)」と接触するものと解すべき合理性はない。
イ 当初明細書の段落【0011】には上記「3(2)」のとおり記載されており、「反射シート」の実施形態について、
(ア)「幾つかの実施形態では、反射シートは、固体照明素子の上に位置決めされるように構成された開口部を含むことが可能であり、その場合、反射シートは固体照明素子と接触しない」こと、
(イ)「更に他の実施形態では、反射シートは熱成形可能であり、基板の表面上の突出したフィーチャの形に適合するように構成される」こと、が記載されている。
ここで、上記(ア)の記載は、「反射シート」が「固体照明素子」と接触しないことを説明するものではあるが、「反射シート」と「タイル上の突出したフィーチャの形」との関係については何ら説明するものではないから、それは、「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を設けることを記載ないし示唆するものではない。
また、上記(イ)の記載は、「反射シート」が「タイル上の突出したフィーチャの形」に適合するように構成し得ることを説明するだけであり、それは、「固体照明タイル上の突出した形」に「接触するように構成されている」「反射シート」を設けることを記載ないし示唆するものではない。
したがって、当初明細書の段落【0011】の記載は、上記補正事項Aの補正の根拠となり得るものではない。
請求人は、上記(ア)の実施形態3と上記(イ)の実施形態4は、同一の段落内で対比を強調して記載することにより、実施形態3と実施形態4の態様が対照的であることが示され、したがって、これを見た当業者は、実施形態4について反射シートが固体照明素子と接触することがあることが十分に理解できる旨主張するが、上記アの説示と同様に、上記実施形態4において、仮に、反射シートが固体照明素子と接触することがあることが理解できたとしても、そのような実施形態4は、本願発明の実施形態ということはできないし、「反射シート」が「固体照明素子」と接触するものであることを根拠として、「反射シート」が「タイル上の突出したフィーチャ(突出した形)」と接触するものと解すべき合理性はない。
ウ したがって、当初明細書の段落【0007】及び段落【0011】の記載は、上記補正事項Aの補正の根拠となり得るものではないから、請求人の上記「2(2)」の主張は採用できない。

(3)また、当初明細書の段落【0028】には、「反射シート14は、LWI18などの表面突起に対する起伏を形成するように構成された陥凹部14Bを含むことができる。陥凹部14Bは、反射シート14の中に型成形すること、及び/又は製造プロセスの1つのステップとして反射シートから材料を除去することによって生成することができる。陥凹部14Bがない場合、反射シート14をLWIに押し付けることはできるが、それによってLWIが破損する、又は基板13から離れる恐れがある。」との記載がある。
かかる記載によれば、本願発明において、「反射シート14」を「固体照明タイル上の突出した形」に「適合」した形態で配設することの意義は、「固体照明タイル上の突出した形(LWI18)」の破損を防止することと理解することもでき、それは、「反射シート」を「突出した形」に「接触するように構成」するのではなく、図3及び図4に示されるように「反射シート24」を「突出した形(LWI18)」に「接触しないように構成」するものと解するのが自然である。
本件明細書等には、「反射シート24」を「突出した形(LWI18)」に「接触しないように構成」することは記載ないし示唆されているが、「固体照明タイル上の突出した形(LWI18)」に「接触するように構成されている」「反射シート24」が記載されているとする根拠は一切ない。

(4)まとめ
したがって、上記補正事項Aは、本願の当初明細書等に記載がなされているということはできず、また、上記補正事項Aが、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできない。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、平成28年10月27日になされた手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-08 
結審通知日 2017-06-09 
審決日 2017-06-20 
出願番号 特願2013-13482(P2013-13482)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
和田 雄二
発明の名称 固体照明デバイス用の適合性のある拡散反射体のための装置及び方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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