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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1334150
審判番号 不服2017-396  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-11 
確定日 2017-11-28 
事件の表示 特願2012-190862「RFIDタグスライド装置、RFIDシステム、ならびにRFIDタグデータの読み取りおよび書き込み方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開、特開2014- 48861、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月31日の出願であって、平成28年2月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月22日付けで手続補正がされ、同年7月5日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月5日付けで手続補正がされ、同年10月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年1月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年7月26日付けで当審からの拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年9月28日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2010/119909号
2.特許第4968226号公報
3.米国特許出願公開第2008/0007410号明細書
4.特開2009-282662号公報
5.特開2006-42268号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由A(特許法第36条第6項第2号)について
本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由B(特許法第29条第2項)について
本願請求項1-8に係る発明は、引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献1-5は、原査定の引用文献1-5と同一である。)

第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年9月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
リーダライタに接続されるアンテナが設置された筐体であって、前記筐体の側面の中央に前記アンテナが設置された前記筐体と、
前記筐体の内部に設置され、前記アンテナの導体パターンが存在する面に対してRFIDタグに含まれるループアンテナのアンテナパターンが存在する面を任意の方向に向けて、前記RFIDタグが貼付された貼付対象物を収容する収容部と、
前記収容部を前記筐体の側面に沿ってスライドさせるスライド部であって、前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域、および各方向に向けられた前記RFIDタグの受信電力が最大となる領域を通過するように前記収容部をスライドさせるスライド部とを含み、
前記貼付対象物は円柱形状であり、前記RFIDタグに含まれるループアンテナが前記貼付対象物の曲面に貼付された
RFIDタグスライド装置。」

本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1に対応する、「RFIDシステム」の発明である。
本願発明8は、本願発明1に対応する、「RFIDタグデータの読み取りおよび書き込み方法」の発明である。

第5 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の理由B(特許法第29条第2項)について
(1) 引用文献、引用発明等
ア.引用文献1、引用発明について
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(ア) 段落[0002]-[0004]
「背景技術
[0002]
現在、RF-ID(Radio Frequency Identification)タグ、いわゆる無線タグには、用途に応じて、13.56MHz帯、2.45GHz帯、及びUHF帯(950MHz帯)といった製品が用意されており、それぞれの周波数帯のRF-IDは、利用目的に応じて各々使い分けられている。
[0003]
これらの無線タグを試験管や真空採血管等の容器に取り付ける際、従来はシールによる貼付もしくは容器を構成する素材そのものに埋設する提案がなされている(例えば特許文献1参照)。
[0004]
また、複数密集して並べられた物品の無線タグを、無線電波により全て読み取る技術が提案されている(例えば特許文献2,3、非特許文献1参照)。この読み取り方法としては、無線電波もしくは磁場もしくはそれらを併用(電磁波)することで行っているニア・フィールド(近接領域読み取り)技術と呼ばれている。従来、無線タグはいかにして長距離から読み取ることができるか、という課題を解決するために研究されてきた。これをファー・フィールド(長距離領域読み取り)技術と言う。しかし、スーパーのレジなど、複数の商品が狭い空間内に多く存在し、さらに背面に水分が含まれる容器も存在するような場合、従来技術ではそれらを一括して読み取ることは極めて困難であった。」

(イ) 段落[0024]-[0028]
「[0024]
ラックと無線タグ読み取りアンテナとの位置関係を変化させる理由は、ラック中に貼付された無線タグの読み取り精度を向上させることにある。一般的に無線タグは、導体である無線タグのアンテナが電界もしくは磁界中を移動することで、アンテナに誘導起電力を発生させ、それを電源として無線タグを駆動させて機能を実行する。そのため、無線タグ読み取りアンテナと無線タグとの位置を連続的に変化させることで、無線タグのアンテナに発生する誘導起電力を増強し、読み取り精度を向上させることができる。さらに、無線タグ読み取りアンテナより照射する電磁波を、間欠的に照射する方法も併用することで、複数密集した無線タグ同士に均等に電磁波が照射されないために発生する「パワーシェアリング」という現象を回避でき、より高い精度で無線タグを読み取ることが可能となる。
[0025]
なお、パワーシェアリングとは、近接する複数個の無線タグがある場合、特定の1個が照射電磁波を全て吸収してしまうことにより、他のタグチップへ十分な出力の電磁波が供給されないことで生じる読み取り欠損を指す。
[0026]
電波もしくは磁場もしくはその併用を用いて、複数配列してラックに収容された容器の無線タグを読み取る場合、容器が多数密集していること、及び容器中に電磁波を吸収する水分が含まれる場合があることから、電波に加え磁場による読み取りを併用する。これはニア・フィールド(近接領域読み取り)技術と呼ばれている技術であり、広く実用化されている。ニア・フィールド対応のタグを使用することで、無線タグそのものに特殊な加工を講じなくても、複数密集し水分を含んだ容器の無線タグを、確実に読み取ることが可能となる。
[0027]
ただし、無線タグそのものが破損していた場合、従来の装置では、複数密集して配置された容器の中から破損した無線タグが貼付された容器を発見することが極めて困難であった。また、複数密集してラック内に格納した容器に貼付された無線タグのアンテナは、様々な方向を向いているため、中には無線タグ読み取りアンテナから照射される電磁波に反応しにくいものも出てくる可能性があった。さらに、容器を複数配列したラック中に格納される容器の総数が、常に一定では無い場合、電磁波的手法により読み取った数と、実際の容器の数とを照合するためには、ラック毎に容器の数を目視で計数し、電磁波的手法で読み取った個数と照合しなくてはならず、運用面で多大な工数が発生し現実的では無い
[0028]
そこで、本発明では、物理的もしくは光学的もしくは超音波等の音響的手法を併用した方法で、容器の個数を計上することで、電磁波的に読み取った無線タグの個数と、実際の容器の個数とを瞬時に照合させると共に、もし両者の数値に不一致がある場合には、破損もしくは読みとれなかった無線タグが付いているという警告を発し、当該容器の場所を特定する機能を有している。」

(ウ) 段落[0057]-[0060]
「[0057]
図1Aは、本発明に係る容器キャップ11への無線タグ印刷例を示す上面図及び側面図、図1Bは上記容器キャップ11を容器本体12に装着した状態を示す側面図である。本発明を血液検査等で用いられている真空採血管に使用する場合、容器キャップ11の上面に、その周囲に沿って、馬蹄型のループアンテナ131とこのアンテナ131に接続される無線タグチップ132を印刷することで、容器キャップ11の上面に無線タグ13を形成する。これにより、容器キャップ11には、上面に無線タグを印刷形成する場合でも、採血時の針の貫通口を確保することが可能となる。
[0058]
図2は、本発明の容器本体12へのアンテナ151及び無線タグチップ152を備える無線タグ15の印刷例を示す。無線タグ15は、図2に示すように容器本体12に対して縦方向に印刷する場合に限らず、横方向に印刷するようにしてもよい。無線タグ15のアンテナ151の長さは、容器本体12への印刷方法により、使用する無線タグの照射電磁波の波長λより計算して決定する。」

・・・(中略)・・・

[0060]
図4A,図4Bに、それぞれ上記無線タグ付容器22を格納配列する容器格納ラック21と容器検出装置23の配置構成を示す。容器格納ラック21は、予め決められた行×列の配置をしており、容器検出装置23も容器格納ラック21と同様の構造を持つ。容器格納ラック21の下部に容器検出装置23を配置することで、実際にラック21に入っている容器22を検出し、計数することが可能となる。」

(エ) 段落[0073]-[0076]
「[0073]
図15は、本発明に係るラック21に収容された容器22の無線タグ一括読み取り装置の一例を示す。本発明の無線タグ一括読み取り装置の読み取り対象は、前述の印刷無線タグの他に、通常の無線タグ、容器埋込型無線タグおよび容器貼付型無線タグにも適用される。
[0074]
図15では、読み取り装置31は箱状となっており、容器ラック21を出し入れする扉32が設けられているが、この扉32にも無線タグ読み取りアンテナ45が設置されている。読み取り装置31の内部には、格納ラック21の左右前後と上部に、無線タグ読み取りアンテナ41?45が設置されている。また、格納ラック21の下部には、前述した容器検出装置23が搭載されている。容器21(当審注:「容器22」の誤記と認める。)を読み取り装置31の内部に設置すると、容器検出装置23が直ちにラック21に格納された容器の本数を計数する。無線タグの読み取り方法は4通りある。一つはモータ等の駆動装置を用いて、無線タグ読み取りアンテナをラック21の辺に沿って移動させる方式で、ラック21の端から端までアンテナが移動することで、容器22の無線タグを一括して読み取る。
[0075]
もう一つは、アンテナは固定しておき、格納ラック21をモータ等の駆動装置を用いてアンテナの前を通過するように移動させることで、容器22の無線タグを一括して読み取る方法である。もう一つは、複数の無線タグ読み取りアンテナを固定しておき、ラック21をモータ等の駆動装置を用いてターンテーブル上で回転させる方法である。もう一つはラック21を台上に固定しておき、ラック21の周囲を囲んだ複数の無線タグ読み取りアンテナより同時もしくは順番に電磁波の照射を行い、一括読み取りを実施する方法である。
[0076]
読み取り装置31には、電磁波により読み取った無線タグの本数と、容器検出装置23によって計数した容器の本数とが読み取り結果表示部35に表示されると同時に、ラック21中の容器22の配置図も表示される。もし双方の値を照合して不一致が出た場合には、警告を発すると共に、異常を知らせる表示を行い、ランプ34を点灯する。照合の結果が一致した場合には、正常終了を知られる表示を行い、ランプ33を点灯し、無線タグに格納されているID等のデータを装置制御装置51からネットワーク経由で上位サーバへ送信する。ラック21に格納された容器22の無線タグが正常に読み取られたら、扉32を開けてラック21を取り出し、次のラックを格納する」

上記下線部の記載を、関連図面(特に、図2、図15)と技術常識に照らせば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電波もしくは磁場もしくはその併用を用いて、複数配列してラックに収容された容器の無線タグを読み取る場合、容器が多数密集していること、及び容器中に電磁波を吸収する水分が含まれる場合があることから、電波に加え磁場による読み取りを併用し、これはニア・フィールド(近接領域読み取り)技術と呼ばれている技術であり、広く実用化されており、ニア・フィールド対応のタグを使用することで、無線タグそのものに特殊な加工を講じなくても、複数密集し水分を含んだ容器の無線タグを、確実に読み取ることが可能となり、
複数密集してラック内に格納した容器に貼付された無線タグのアンテナは、様々な方向を向いており、
血液検査等で用いられている真空採血管に使用する場合、容器キャップ11の上面に、その周囲に沿って、馬蹄型のループアンテナ131とこのアンテナ131に接続される無線タグチップ132を印刷することで、容器キャップ11の上面に無線タグ13を形成し、
無線タグ15は、容器本体12に対して縦方向に印刷する場合に限らず、横方向に印刷するようにしてもよく、
無線タグ付容器22を格納配列する容器格納ラック21と容器検出装置23の配置構成において、
容器格納ラック21は、予め決められた行×列の配置をしており、
容器検出装置23も容器格納ラック21と同様の構造を持ち、容器格納ラック21の下部に容器検出装置23を配置することで、実際にラック21に入っている容器22を検出し、計数することが可能となり、
ラック21に収容された容器22の無線タグ一括読み取り装置であって、
無線タグ一括読み取り装置の読み取り対象は、印刷無線タグの他に、容器貼付型無線タグにも適用され、
読み取り装置31は箱状となっており、容器ラック21を出し入れする扉32が設けられているが、この扉32にも無線タグ読み取りアンテナ45が設置され、
読み取り装置31の内部には、格納ラック21の左右前後と上部に、無線タグ読み取りアンテナ41?45が設置され、
格納ラック21の下部には、前述した容器検出装置23が搭載され、
容器22を読み取り装置31の内部に設置すると、容器検出装置23が直ちにラック21に格納された容器の本数を計数し、
無線タグの読み取り方法は、アンテナは固定しておき、格納ラック21をモータ等の駆動装置を用いてアンテナの前を通過するように移動させることで、容器22の無線タグを一括して読み取る方法であり、
読み取り装置31には、電磁波により読み取った無線タグの本数と、容器検出装置23によって計数した容器の本数とが読み取り結果表示部35に表示されると同時に、ラック21中の容器22の配置図も表示され、
もし双方の値を照合して不一致が出た場合には、警告を発すると共に、異常を知らせる表示を行い、ランプ34を点灯し、
ここで、警告は、破損もしくは読みとれなかった無線タグが付いているという警告であり、
照合の結果が一致した場合には、正常終了を知られる表示を行い、ランプ33を点灯し、無線タグに格納されているID等のデータを装置制御装置51からネットワーク経由で上位サーバへ送信する、
無線タグ一括読み取り装置。」

イ.引用文献2について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献2の段落【0037】、図3の記載から、アンテナの導電パターンとして、スパイラル形状を含むマイクロストリップラインは周知技術であると認められる。

ウ.引用文献3について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献3の段落【0034】、 図3A?3Cの記載から、アンテナ周辺に、遮蔽用の板を設けることは、周知技術であると認められる。

エ.引用文献4について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献4の段落【0044】の記載から、アンテナとして、「パッチアンテナ」は、周知技術であると認められる。

オ.引用文献5について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献5の段落【0026】、図10の記載から、アンテナとして、「逆Fアンテナ」は、周知技術であると認められる。

(2) 対比・判断
ア.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア) 引用発明の「読み取り装置31」は、設置された「無線タグ読み取りアンテナ41?45」で「無線タグに格納されているID等のデータを」読み取るからリーダ/ライタを備えていることは明らかであるから、本願発明1の「リーダライタ」に相当する構成を備えているといえる。
また、引用発明の「無線タグ読み取りアンテナ41?45」は、本願発明1の「リーダライタに接続されるアンテナ」に相当する。
引用発明の「読み取り装置31」は、「箱状となっており、容器ラック21を出し入れする扉32が設けられているが、この扉32にも無線タグ読み取りアンテナ45が設置され、読み取り装置31の内部には、格納ラック21の左右前後と上部に、無線タグ読み取りアンテナ41?45が設置され」ており、引用発明の「読み取り装置31」の箱状となっている部分は、「読み取り装置31」の筐体といえるから、本願発明1の「リーダライタに接続されるアンテナが設置された筐体であって、前記筐体の側面の中央に前記アンテナが設置された前記筐体」と、「リーダライタに接続されるアンテナが設置された筐体」である点で共通するといえる。

(イ) 引用発明の「無線タグ」は、本願発明1の「RFIDタグ」に相当する。
引用発明の「無線タグのアンテナ」は、本願発明1の「RFIDタグに含まれるループアンテナ」と、「RFIDタグに含まれるアンテナ」である点で共通するといえる。
引用発明の「無線タグ付き容器22」は、本願発明1の「RFIDタグが貼付された貼付対象物」と、「RFIDタグが設置された設置対象物」である点で共通するといえる。
引用発明の「無線タグ付容器22を格納配列する容器格納ラック21」は、本願発明1の「前記RFIDタグが貼付された貼付対象物を収容する収容部」と、「前記RFIDタグが設置された設置対象物を収容する収容部」である点で共通するといえる。
さらに、引用発明では、「複数密集してラック内に格納した容器に貼付された無線タグのアンテナは、様々な方向を向いており」、特に「格納ラック21の左右」の2つのアンテナ(引用文献1の「図15」における「アンテナ41」と「アンテナ44」)に着目する場合、ラック内の容器の方向は明らかに任意であることを考慮すると、引用発明の「無線タグ付容器22を格納配列する容器格納ラック21」は、本願発明1の「前記筐体の内部に設置され、前記アンテナの導体パターンが存在する面に対してRFIDタグに含まれるループアンテナのアンテナパターンが存在する面を任意の方向に向けて、前記RFIDタグが貼付された貼付対象物を収容する収容部」と、「前記筐体の内部に設置され、前記アンテナの導体パターンが存在する面に対してRFIDタグに含まれるアンテナのアンテナパターンが存在する面を任意の方向に向けて、前記RFIDタグが設置された設置対象物を収容する収容部」である点で共通するといえる。

(ウ) 引用発明の「アンテナは固定しておき、格納ラック21をモータ等の駆動装置を用いてアンテナの前を通過するように移動させることで、容器22の無線タグを一括して読み取る方法」における「モータ等の駆動装置」は、本願発明1の「前記収容部を前記筐体の側面に沿ってスライドさせるスライド部」に相当する。
一般に、アンテナに対してRFIDタグを動かせば、受信電力の大きさも変化することから、「各方向に向けられた前記RFIDタグの受信電力が最大となる領域」をスライドしているといえる。
よって、引用発明の「モータ等の駆動装置」は、本願発明1の「前記収容部を前記筐体の側面に沿ってスライドさせるスライド部であって、前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域、および各方向に向けられた前記RFIDタグの受信電力が最大となる領域を通過するように前記収容部をスライドさせるスライド部」と、「前記収容部を前記筐体の側面に沿ってスライドさせるスライド部であって、各方向に向けられた前記RFIDタグの受信電力が最大となる領域を通過するように前記収容部をスライドさせるスライド部」である点で共通するといえる。

(エ) 引用発明の「容器」は、「円柱形状」である「真空採血管」等の容器であって、「無線タグ15は、容器本体12に対して縦方向に印刷する場合に限らず、横方向に印刷するようにしてもよ」いから(引用文献1の図2参照。)、本願発明1の「前記貼付対象物は円柱形状であり、前記RFIDタグに含まれるループアンテナが前記貼付対象物の曲面に貼付された」ものと、「前記設置対象物は円柱形状であり、前記RFIDタグに含まれるアンテナが前記設置対象物の曲面に設置された」ものである点で共通するといえる。

(オ) 引用発明の「モータ等の駆動装置」を備えた「無線タグ一括読み取り装置」は、本願発明1の「RFIDタグスライド装置」に相当する。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「リーダライタに接続されるアンテナが設置された筐体と、
前記筐体の内部に設置され、前記アンテナの導体パターンが存在する面に対してRFIDタグに含まれるアンテナのアンテナパターンが存在する面を任意の方向に向けて、前記RFIDタグが設置された設置対象物を収容する収容部と、
前記収容部を前記筐体の側面に沿ってスライドさせるスライド部であって、各方向に向けられた前記RFIDタグの受信電力が最大となる領域を通過するように前記収容部をスライドさせるスライド部とを含み、
前記設置対象物は円柱形状であり、前記RFIDタグに含まれるアンテナが前記設置対象物の曲面に設置された
RFIDタグスライド装置。」

[相違点1]
本願発明1では、「筐体」(引用発明の「読み取り装置31」が対応する。)が、「前記筐体の側面の中央に前記アンテナが設置された前記筐体」であるのに対して、引用発明では、「読み取り装置31」が、容器格納ラック21の左右前後と上部に、5つのアンテナ41?45が設置されたものであって、特に「格納ラック21の左右」の2つのアンテナ(引用文献1の「図15」における「アンテナ41」と「アンテナ44」)に着目すると、「筐体の側面」に設置されているとはいえるものの、「前記筐体の側面の中央に」設置されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、RFIDタグのアンテナが「ループアンテナ」であって、収容部がRFIDタグが「貼付」された「貼付」対象物を収容するのに対して、引用発明では、「無線タグのアンテナ」が「ループアンテナ」であって、収容部がRFIDタグが「貼付」された「貼付」対象物を収容することが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1では、「前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域」を通過するように収容部をスライドさせるのに対して、引用発明は、このような領域を通過するようにスライドさせることは特定がされていない点。

[相違点4]
本願発明1では、「前記貼付対象物は円柱形状であり、前記RFIDタグに含まれるループアンテナが前記貼付対象物の曲面に貼付された」ものであるのに対して、引用発明では、「無線タグ15は、容器本体12に対して縦方向に印刷する場合に限らず、横方向に印刷するようにしてもよ」いもの、すなわち、「アンテナ」を含む「無線タグ」を、容器(「貼付対象物」)の曲面に「印刷」するものであって、「ループアンテナ」を容器の曲面に「貼付」するものではない点。

(カ) 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記[相違点3]について先に検討する。
上記[相違点3]記載のとおり、引用発明では、上記[相違点3]に係る構成は特定がされていない。
そもそも、引用発明は、「複数密集してラック内に格納した容器に貼付された無線タグのアンテナは、様々な方向を向いているため、中には無線タグ読み取りアンテナから照射される電磁波に反応しにくいものも出てくる可能性があった。」(引用文献1、段落[0027])ために、「そこで、本発明では、物理的もしくは光学的もしくは超音波等の音響的手法で、容器の個数を計上することで、電磁波的に読み取った無線タグの個数と、実際の容器の個数とを瞬時に照合させると共に、もし両者の数値に不一致がある場合には、破損もしくは読み取れなかった無線タグが付いている警告を発し、当該容器の場所を特定する機能を有している」(引用文献1、段落[0028])ものである。すなわち、引用発明は、無線タグのアンテナが様々な方向を向いているため、読み取れない無線タグが発生することが前提であって、その対処として「読みとれなかった無線タグが付いているという警告」のための「ランプ34」などの構成を設けた発明であるといえる。
また、「(1) 引用文献、引用発明等」の「イ.引用文献2」-「オ.引用文献5について」に記載のとおり、引用文献2には、アンテナの導電パターンとして、スパイラル形状を含むマイクロストリップラインを用いる周知技術が記載され、引用文献3には、アンテナ周辺に、遮蔽用の板を設ける周知技術が記載され、引用文献4には、アンテナとして、「パッチアンテナ」を用いる周知技術が記載され、引用文献5には、アンテナとして、「逆Fアンテナ」を用いる周知技術が記載されているが、上記[相違点3]に係る本願発明1の「前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域」を通過するように収容部をスライドさせるという構成は、上記引用文献1-5には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

イ.本願発明2-8について
本願発明2-8も、「前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域」を通過するように収容部をスライドさせるという、本願発明1の上記[相違点3]に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.当審拒絶理由の理由A(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1の「いずれかの方向に向けられた前記RFIDタグが駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られない領域」を通過するように収容部をスライドさせるとの記載が技術的に理解できないため、記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年9月28日付けの補正において、上記記載を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第6 原査定についての判断
平成29年9月28日付けの補正により、補正後の請求項1-8は、「前記RFIDタグと前記アンテナとの距離が、前記RFIDタグと前記アンテナとの通信に使用される電磁波の所望周波数に対応する波長をλとした場合にλ/(2π)以下となる領域であって前記ループアンテナのアンテナパターンが存在する面がいずれの方向に向けられた前記RFIDタグであっても駆動に必要な電力を前記アンテナから電磁誘導により得られる領域」を通過するように収容部をスライドさせるという技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1-5には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-8は、当業者であっても、原査定における引用文献1-5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-13 
出願番号 特願2012-190862(P2012-190862)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
P 1 8・ 537- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 RFIDタグスライド装置、RFIDシステム、ならびにRFIDタグデータの読み取りおよび書き込み方法  
代理人 大菅 義之  
代理人 ▲徳▼永 民雄  
代理人 大菅 義之  
代理人 ▲徳▼永 民雄  
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