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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1334197
審判番号 不服2016-11828  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-05 
確定日 2017-11-08 
事件の表示 特願2014- 7132「周波数分割多重化を利用する通信システムのパイロット送信およびチャネル推定」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日出願公開,特開2014-116966〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年3月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年3月7日 米国,2005年7月5日 米国)を国際出願日とする出願である特願2008-500883号の一部を,平成24年1月13日に新たな特許出願とした特願2012-4948号の一部を,平成26年1月17日に更に新たな特許出願としたものであって,平成26年12月10日付けで拒絶理由が通知され,平成27年6月16日付けで手続補正がされ,同年10月16日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成28年1月20日付けで手続補正がされたが,同年3月28日付けで補正の却下の決定がされ,同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月5日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定
[結論]
平成28年8月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
平成28年8月5日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成27年6月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「パイロット送信に使用される選択された組の周波数サブバンドに関する多相系列と,巡回語頭とを具備する,シングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)シンボルを受信して,前記受信されたSC-FDMAシンボルを処理して受信されたパイロットシンボルを取得するように動作可能な復調器と,前記SC-FDMAシンボルは,前記多相系列に基づいて形成された第1の系列のパイロットシンボルを前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換することによって生成される,
通信チャネルに対するチャネル推定を取得するために,前記受信されたパイロットシンボルを処理するように動作するプロセッサと,
を具備し,
ここで,前記プロセッサは,前記受信されたパイロットシンボルに基づいて,前記通信チャネルのための周波数応答推定を引き出すように動作する,装置。」
という発明(以下,「補正前の発明」という。)を,
「パイロット送信に使用される選択された組の周波数サブバンドに関する多相系列と,巡回語頭とを具備する,シングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)に基づくSC-FDMAシンボルを受信して,前記受信されたSC-FDMAシンボルを処理して受信されたパイロットシンボルを取得するように動作可能であって,前記SC-FDMAは,(1)全K個のサブバンド全体に均一に間隔をあけられているサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信するインタリーブFDMA(IFDMA),または(2)通常全K個のサブバンド間の隣接するサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信する局所FDMA(LFDMA)を含む復調器と,前記LFDMAに基づくシンボルは,前記多相系列に基づいて形成された第1の系列のパイロットシンボルを前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換することによって生成される,
通信チャネルに対するチャネル推定を取得するために,前記受信されたパイロットシンボルを処理するように動作するプロセッサと,
を具備し,
ここで,前記プロセッサは,前記受信されたパイロットシンボルに基づいて,前記通信チャネルのための周波数応答推定を引き出すように動作する,装置。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)


2 補正の適否
事案に鑑み,まず,補正の目的について検討する。
本願明細書の【0007】には,「SC-FDMAは,(1)全K個のサブバンド全体に均一に間隔をあけられているサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信するインタリーブFDMA(IFDMA)と,(2)通常全K個のサブバンド間の隣接するサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信する局所FDMA(LFDMA)とを含んでいる」ことが記載され,IFDMAについては,【0016】?【0025】,【0050】,【0119】,【0121】,【0122】,図1,2,7A,11A,12A,12Bに,LFDMAについては,【0026】?【0028】,【0051】,【0120】,【0123】,【0124】,図3,4,7B,11B,13A,13Bに,それぞれ開示されている。
そして,当該開示によれば,「パイロットシンボルを前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換する」のは,SC-FDMAシンボルのうちLFDMAシンボルのみである。そして,本願明細書に開示されているIFDMAシンボルは,(多相系列に基づいて形成された)オリジナル系列を複数回複製し,位相ランプを適用するものであって,「前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換する」ものではない。
また,図12A,12B,13A,13Bのとおり,IFDMAパイロット用復調器とLFDMAパイロット用復調器とは,その構成が全く異なるものである。
してみると,補正前の発明の「SC-FDMAシンボル」は,LFDMAシンボルのみを指し,IFDMAシンボルは含まれないと認められる。すなわち,補正前の発明の「復調器」は,専らLFDMAシンボルを処理するものであって,IFDMAシンボルを処理する復調器は含まれないと認められる。
これは,補正前の発明の「前記SC-FDMAシンボルは,・・・周波数サブバンドにマッピングし,」が,補正後の発明では「前記LFDMAに基づくシンボルは,・・・マッピングし,」に補正されていることにも整合するものである。
一方,補正後の発明は,「・・・前記SC-FDMAは,(1)全K個のサブバンド全体に均一に間隔をあけられているサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信するインタリーブFDMA(IFDMA),または(2)通常全K個のサブバンド間の隣接するサブバンドでデータおよび/またはパイロットを送信する局所FDMA(LFDMA)を含む復調器」のとおり,「SC-FDMAシンボル」はIFDMAシンボル又はLFDMAシンボルであり,「復調器」はLFDMAシンボル又はIFDMAシンボルを処理するものと認められる。
したがって,本件補正は,補正前の発明には存在しなかったIFDMAシンボルを処理する復調器を新たに追加するものであるから,本件補正の目的は,特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項にも該当しない。


3 結語
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,他の要件について判断するまでもなく,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年8月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正の却下の決定」の項の「1 補正の概要」の項の「補正前の発明」のとおりのものと認める。

ここで,本願発明は,サブバンドへのマッピング前にFFTにより周波数ドメインに変換することが明らかにされていないが,生成されるものが「SC-FDMA」であることに鑑みれば,当然にFFTによる周波数ドメインへの変換がなされていると解釈でき,サブバンドにマッピングされる「前記多相系列に基づいて形成された第1の系列のパイロットシンボル」は,図4のオリジナル系列に対応する多相系列をNポイントFFTにより周波数ドメインに変換した「周波数ドメイン系列」を意味するものと認める。


2 優先権について
本願発明(補正前の発明)は,上記「第2」の項の「2 補正の適否」にて述べたように,LFDMAに関する発明と認められるところ,2005年3月7日を優先日とする優先権主張に係る米国特許出願60/659,526には,LFDMAに関する事項は存在せず,IFDMAに関する事項が記載されるのみである。そして,LFDMAに関する事項は,2005年7月5日を優先日とする優先権主張に係る米国特許出願11/175607に存在するから,本願の各請求項に係る発明が優先権主張の効果を享受することができる優先日は2005年7月5日と認める。


3 引用発明及び周知技術
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用されたSamsung,Uplink Transmission and Multiplexing for EUTRA([当審仮訳]:EUTRAのためのアップリンク送信及び多重化), [online],3GPP TSG RAN WG1 Ad Hoc on LTE R1-050605,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_June-05/Docs/R1-050605.zip>,2005年6月16日(利用可能となった日付)(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「1 Introduction
An orthogonal access in the uplink promises increased spectral efficiency by eliminating intra-cell interference [1]. Another important consideration for the EUTRA uplink is the peak-to-average-power ratio (PAPR) due to limited UE transmit power and its impact on coverage. Single-carrier based FDMA (Frequency Division Multiple Access) approach with FFT-precoding and cyclic prefix to support efficient frequency-domain equalization at the receiver can potentially meet the above objectives. Both localized and distributed FDMA transmission schemes are considered in order to provide the frequency-domain scheduling and frequency-diversity transmissions based on the user channel conditions and other criteria.
In this contribution, we provide details on multiplexing of physical layer control and data channels and some PAPR results. 」(1ページ)
([当審仮訳]:
1 はじめに
アップリンクにおける直交アクセスは,セル間干渉を除去することにより,スペクトル効率が増大することを約束する [1]。EUTRAアップリンクのための他の重要な考察は,制限されたUE送信電力によるピーク対平均電力比(PAPR)及びそのカバレージへの影響である。受信器における有効な周波数ドメイン等化をサポートするFFTプリコーディング及びサイクリックプリフィクスを伴うシングルキャリアベースのFDMA(周波数分割多重アクセス)アプローチは,潜在的に上述の目的に適う。ユーザチャネル状況及び他の尺度に基づく周波数ドメインスケジューリング及び周波数ダイバーシチ伝送を提供するために,局在化されたFDMA伝送スキーム及び分散化されたFDMA伝送スキームの双方が考慮される。
本寄書では,物理層制御チャネル及びデータチャネルの多重の詳細及びいくつかのPAPR結果を提供する。)

(2)「2 Multiplexing of Localized and Distributed FDMA
In both Localized and Distributed FDMA, for low PAPR, transmitted signals are FFT precoded prior to IFFT operation. The subcarriers carrying the target data is decided by mapping from FFT to IFFT. In LFDMA (Localized FDMA), the target data is transmitted on contiguous subcarriers (Frequency domain scheduling) while in DFDMA (Distributed FDMA), the target data is transmitted on evenly scattered subcarriers (Frequency diversity).
The switching between LFDMA and DFDMA can be dynamically controlled based on Node B scheduling decision. The DFDMA transmission is mainly useful for high mobility users requiring frequency-diversity because fast frequency-domain scheduling cannot be performed due to inability to track the fast-varying channel. On the other hand, LFDMA transmission is used for obtaining frequency domain scheduling (FDS) gain for low-to-medium mobility users. However, the trade-off between the FDS gain and the UL pilot overhead for CQI estimation needs to be carefully investigated. 」(1ページ)
([当審仮訳]:
2 局在化されたFDMAと分散化されたFDMAの多重化
局在化されたFDMAと分散化されたFDMAの双方において,低PAPRのために,送信される信号はIFFT演算の前にFFTプリコードされる。対象データを運ぶサブキャリアは,FFTからIFFTへのマッピングにより決定される。LFDMA(局在化されたFDMA)では,対象データは連続するサブキャリア(周波数ドメインスケジューリング)で送信されるが,一方,DFDMA(分散化されたFDMA)では,対象データは均等に散在するサブキャリア(周波数ダイバーシチ)で送信される。)
LFDMAとDFDMAとの間の切替は,ノードBスケジューリング決定に基づいて動的に制御され得る。高速で変化するチャネルを追跡することができないことから高速周波数ドメインスケジューリングが実行できないため,DFDMA伝送は,主に,周波数ダイバーシチを必要とする高移動性のユーザにとって有益である。他方,LFDMA伝送は,低-中移動性のユーザが周波数ドメインスケジューリング(FDS)利得を獲得するのに使用される。しかしながら,FDSゲインとCQI推定のためのULパイロットオーバーヘッドとの間のトレードオフを慎重に調査する必要がある。)

(3)「3 Multiplexing of Data and Physical Layer Signalling
The physical layer signalling for the uplink can be divided into two broad categories:
・Data dependent signalling : (中略)
・Data Independent signaling : (中略)
The data dependent signaling information (e.g. HARQ and AMC information) can be multiplexed at the input of FFT along with data symbols as shown in Figure 1. The multiplexing at the FFT input results in low PAPR and low H/W complexity.
(中略)


The multiplexing of different uplink physical channels is shown in Figure 2. The HARQ and AMC information for the uplink data is multiplexed at the FFT input along with data symbols. The uplink pilot is time-multiplexed with data at the FFT input. Typically, a single OFDM symbol worth of pilot is needed. However, under high mobility situations, pilot overhead could increase by transmitting more TDM pilots by the Node B’s decision. The periodic pilot transmission for measurement of uplink channel quality for the frequency domain scheduling mode can also be considered. However, trade-off between the pilot overhead and FDS performance benefit needs to be investigated.
(中略)

」(2?3ページ)
([当審仮訳]:
3 データと物理層シグナリングの多重化
アップリンクの物理層シグナリングは2つの大きなカテゴリに分けることができる。
・データに依存するシグナリング:(中略)
・データに依存しないシグナリング:(中略)
図1に示すように,データに依存するシグナリング情報(例えば,HARQ及びAMC情報)は,データシンボルと共に,FFT入力で多重化されることができる。FFT入力での多重化は,低PAPRと低H/W複雑性をもたらす。
(中略)
(図1は省略)
異なるアップリンク物理チャネルの多重化が図2に示される。アップリンクデータのためのHARQ及びAMC情報は,データシンボルと共に,FFT入力で多重化される。アップリンクパイロットはFFT入力でデータと時間多重化される。典型的には,パイロットに値する単一OFDMシンボルが必要とされる。しかしながら,高移動性状況下では,ノードBの決定によるより多くのTDMパイロットの伝送により,パイロットオーバーヘッドが増大する。周波数ドメインスケジューリングのためのアップリンクチャネル品質を測定するための周期的なパイロット伝送もまた考慮され得る。しかしながら,パイロットオーバーヘッドとFDS性能利益との間のトレードオフは調査する必要がある。
(中略)
(図2は省略) )

上記(1)?(3)の記載及び図1,2並びに当業者の技術常識を考慮すると,
上記(1),(2)の記載によれば,低ピーク対平均電力比(PAPR)のために,サイクリックプリフィクスを伴い,IFFT演算の前に送信される信号がFFTプリコードされる,シングルキャリアベースのFDMA(周波数分割多重アクセス)アプローチは,対象データが連続するサブキャリアで送信される局在化されたFDMA(LFDMA)と,対象データが均等に散在するサブキャリアで送信される分散化されたFDMA(DFDMA)とを含むといえる。
そして,図1によれば,UEが,データストリーム等をFFTし,所定のサブキャリアにマッピングし,IFFTした信号を送信し,ノードBが当該信号を受信し,FFT,デマッピング,IFFTして,データストリーム等を取得することが見てとれる。そして,ノードBが,FFT,デマッピング,IFFTするための手段,すなわち,復調のための手段を備えることは,当業者にとって自明である。また,上記(3)の記載及び図2をあわせてみれば,上述の「データストリーム等」にはパイロットも含まれることは明らかである。
ここで,上述のとおり,シングルキャリアベースのFDMAアプローチはサイクリックプリフィクスを伴うから,ノードBが受信する信号は,サイクリックプリフィクスを具備しているといえる。また,上記(2)のとおり,LFDMAとDFDMAとの間の切替はノードBスケジューリング決定に基づいて動的に制御され得ることにも鑑みれば,マッピングされる「所定のサブキャリア」は,データストリームやパイロットの送信に使用される「選択された組のサブキャリア」といえる。
また,上記(2),(3)の記載によれば,パイロットは,アップリンクチャネル品質を測定する(CQI推定)ためのものであり,ノードBが,アップリンクチャネル品質を測定する(CQI推定)ための手段を備えることは,当業者にとって自明である。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「パイロットの送信に使用される選択された組のサブキャリアに関するパイロットと,サイクリックプリフィクスとを具備する,シングルキャリアベースのFDMA(周波数分割多重アクセス)の信号を受信して,前記受信されたシングルキャリアベースのFDMAの信号を処理して受信されたパイロットを取得する,復調のための手段と,前記シングルキャリアベースのFDMAの信号は,前記パイロットを前記選択された組のサブキャリアにマッピングし,マッピングされたパイロットをIFFTすることによって生成される,
アップリンクチャネル品質を測定する手段と,
を具備する,ノードB。」


[周知技術]
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-253899号公報(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(4)「【請求項5】
前記第1のパイロット信号が,CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号から構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の送信機。」(2ページ)

(5)「【0013】
なお,図10に示すシミュレーションにおいては,SC-FDEによる受信を行う場合,そのフレーム構成は,図3(a)に示すように,パイロット信号となるUW(Unique Word :以下,ユニークワードとする)とデータとから構成すると共に,ユニークワードは64チップのCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号とし,ユニークワード部分とデータ部のそれぞれの先頭には16チップのCP(Cyclic Prefix :以下,サイクリックプリフィックスとする)を挿入する構成とした。また,Rake受信を行う場合,そのフレーム構成は,図3(b)に示すように,パイロット信号とデータとから構成すると共に,パイロット信号は96チップすべてをデータ「1」のBPSK信号とした。 」(5?6ページ)

(6)「【0042】
ここで,ユニークワードには,例えば,CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号が使用される。代表的なCAZAC系列の信号には,Chu系列やFrank-Zadoff系列の信号があり,これらの信号は,周波数領域において振幅スペクトルが一定であるという性質を持っている。 」(10ページ)

(7)「【0069】
(FDE)
次に,上述の移動機において用いられるFDE24の詳細について,図面を参照して説明する。図5は,上述の移動機に備えられたFDEの構成を示すブロック図であって,一例として周波数等化法にMMSEC周波数等化を用いた場合を示す。なお,FDEでは,フーリエ変換後のユニークワードの振幅スペクトルが全周波数にわたって一定である特性を利用した伝送路推定が行われる。
【0070】
まず最初に,FDEの原理から説明すると,フーリエ変換後の送信ユニークワードシンボルをUt,受信ユニークワードシンボルをUr,ユニークワードの長さをNUとすると,下記(3)式より周波数領域での伝送路推定値をHestが算出される。
【数3】

但し,(3)式において,Ut*はUtの複素共役信号を表す。
次に,得られた伝送路推定値Hestは,雑音が付加された伝送路推定値であるので,雑音の影響を取り除く必要がある。
【0071】
以下に,等平均強度2パスレイリー環境下で,遅延時間τsが2チップ,ユニークワードの長さが64チップ,サイクリックプリフィックスが16チップの場合を例として雑音除去処理の過程を,図面を参照して詳細に述べる。図6は,雑音除去処理の過程を示す図であって,図6(a)には,横軸を周波数(Frequency ),縦軸を振幅スペクトラム(Amplitude Spectrum)として,伝送路推定値Hestと雑音除去後の伝送路推定値Hest’を示す。一方,図6(b)には,横軸に時間(Time),縦軸に振幅(Amplitude )として,伝送路推定値Hestを逆フーリエ変換したhestと,雑音除去後の伝送路推定値Hest’を逆フーリエ変換したhest’,及び雑音除去に利用するフィルタの係数(Filter Coefficient)を示す。
【0072】
まず,図6(a)に示すように,伝送路推定値Hestには,多くの雑音成分が含まれていることがわかる。伝送路推定値Hestを逆フーリエ変換して得られるhestは,推定した受信信号の遅延プロファイルを示しており,図6(b)に示すように,等平均強度2パスレイリー環境下の遅延プロファイルhestは,主波となる先行波の成分(Component of preceding wave)と遅延波の成分(Component of delayed wave)とを含むと共に,雑音成分が時間領域に広がっていることがわかる。
【0073】
これに対して,一般にサイクリックプリフィックスの長さ(Size of CP)は伝送路の最大遅延時間より大きく設定されるので,サイクリックプリフィックスより大きい時間領域での成分はすべて雑音成分であるとみなすことができる。従って,時間軸上の処理により,サイクリックプリフィックス内の成分のみ取り出すフィルタhFilterを遅延プロファイルhestに乗じることにより,伝送路推定値Hestの雑音成分を除去することができる。具体的には,雑音除去後の伝送路推定値Hest’は,下記(4)式により求められる。
【数4】

但し,(4)式において,F{α}はαのフーリエ変換を行うことを示す。
【0074】
図6に示すように,図6(b)に示すフィルタhFilterによるフィルタリングを行った後の信号hesthFilterをフーリエ変換して得られる,図6(a)に示す雑音除去後の伝送路推定値Hest’は,処理前の伝送路推定値Hestに比べて雑音の影響が軽減されていることがわかる。
【0075】
次に,伝送路推定値Hest’を用いてデータ部分の波形等化を行う場合,データ部分がユニークワード部分より大きい時には,データ部分のデータ数と伝送路推定値のデータ数とを合わせるため,伝送路推定値Hest’の補間が必要となる。図7に,伝送路推定値Hest’の補間処理について示す。なお,図7は,簡単のためにユニークワード及びデータの長さが,それぞれ64及び128チップの場合を例として示す。
【0076】
まず,図7(a)に示すように,上述の雑音除去処理において,雑音が除去された長さ64チップの遅延プロファイルhest’が得られたとすると,次に,遅延プロファイルhest’の64チップから128チップまでの領域には,128チップのデータに対応するデータが存在しないため,図7(b)に示すように,遅延プロファイルhest’の補間領域(64チップから128チップまで)を,データ「0」でパディング(Padding with zeros)することにより補間して信号hest”を求める。
【0077】
そして,図7(c)に示すように,得られたhest”をフーリエ変換(FFT )することで,補間後の伝送路推定値Hest”を得る。なお,図7(a)及び図7(b)は,横軸を時間(Time),縦軸を振幅(Amplitude )とし,図7(c)は,横軸を周波数(Frequency ),縦軸を振幅スペクトラム(Amplitude Spectrum)とする。
【0078】
次に,求められた伝送路推定値Hest”を用いてMMSEC周波数等化を行う。MMSEC周波数等化では,まず伝送路推定値Hest”の雑音電力密度を求める必要がある。ここで,フーリエ変換後の送信ユニークワードチップをUt(f),受信ユニークワードチップをUr(f),ユニークワードの長さをNU,周波数領域での伝送路推定値をHest(f)”とすると,周波数領域での雑音電力密度Σ2は下記(5)式により求められる。
【数5】

但し,(5)式において,fは周波数とし,0≦f<NUとする。
【0079】
また,伝送路推定値Hest”は,サイクリックプリフィックスより大きい時間領域の雑音成分のみ除去した伝送路推定値であるので,推定された雑音電力密度は,サイクリックプリフィックス内の雑音成分だけ小さくなっている。従って,補正後の雑音電力密度(Σ’)2は,サイクリックプリフィックスの長さをNCPとすると,下記(6)式により求められる。
【数6】

【0080】
従って,伝送路が補償された受信データチップDr’は,受信されたフーリエ変換後のデータチップDrを用いて,下記(7)式により求められる。
【数7】

但し,(7)式において,(Hest”)*は,(Hest”)の複素共役信号を表す。
そして,最後に伝送路が補償された受信データチップDr’を逆フーリエ変換することにより,周波数等化された受信データチップを得ることができる。
【0081】
以上がFDEの原理であって,具体的には,図5において,受信信号がFDEに入力されると,まず受信信号のユニークワード部分は,フーリエ変換処理部(FFT )201においてフーリエ変換された後,演算器202において,上述の(3)式に示された複素共役信号Ut*との演算が行われ,伝送路推定値Hestが算出される。次に,演算器202が出力する伝送路推定値Hestは,逆フーリエ変換処理部(Inverse FFT )203により逆フーリエ変換されて,遅延プロファイル(Delay profile )hestが算出される。なお,算出された遅延プロファイルhestは,受信信号の品質を示す情報として利用される。
【0082】
一方,遅延プロファイルhestは,CPフィルタ204に入力され,上述の(4)式に基づく時間軸上の処理により,サイクリックプリフィックス内の成分のみ取り出すフィルタhFilterによるフィルタリングが行われ,雑音が除去された遅延プロファイルhest’を得ると共に,これを補間器(Zero padding)205へ入力し,上述のように遅延プロファイルhest’の補間領域を,データ「0」でパディングすることにより補間して信号hest”を求める。そして,フーリエ変換処理部(FFT )206により,得られたhest”をフーリエ変換することで,補間後の伝送路推定値Hest”を得る。
【0083】
また,補間後の伝送路推定値Hest”は,雑音電力密度算出器(Noize power density computation)207とMMSEC等価器(MMSEC Equalization)208へ入力される。
雑音電力密度算出器207では,MMSEC周波数等化を行うために,上述の(5)式,及び(6)式に基づいて,伝送路推定値Hest”の雑音電力密度が算出され,求められた雑音電力密度は,MMSEC等価器208へ入力される。
【0084】
また,MMSEC等価器208では,フーリエ変換処理部(FFT )209によりフーリエ変換された受信信号のデータ部分から,上述の(7)式に基づいて,入力された補間後の伝送路推定値Hest”と伝送路推定値Hest”の雑音電力密度とにより伝送路が補償された受信データチップDr’が計算される。そして,MMSEC等価器208が出力する伝送路が補償された受信データチップDr’は,逆フーリエ変換処理部(Inverse FFT )210による逆フーリエ変換により,周波数等化された受信データチップとしてFDEから出力される。」(15?18ページ)


同じく原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2004/0047284号明細書(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(8)「Channel Estimation
[0064] It is, of course, very helpful to obtain good channel estimates, since the estimates of the transmitted sequences may depend upon the channel estimates at a number of stages. Manipulation of Eqn. 1 reveals that the frequency domain channel characteristics can be expressed as

[0065] This leads to calculations that may be performed by the receiver signal processing facilities to obtain channel estimates, including the frequency domain MMSE estimates

[0066] and zero-forcing estimates

[0067] The channel estimates of Eqns. 16 and 17 are based upon arbitrary symbol data sequences{s _(0)[n]}and{s _(1)[n]}. Unfortunately, the arbitrary symbol data sequences must generally be estimated themselves, thus compounding any inaccuracies. It may be useful to avoid relying exclusively on such estimates for further deriving estimates of the channel response.
[0068] Preambles and Pilot Words
[0069] The channel estimation process will be less reliant on received symbol estimates when known sequences of symbols are transmitted at identifiable times. These known sequences may be referred to generally as #pilot symbols,# although it should be understood that such sequences might also appear in preambles, or in other forms. In many cases, an identical sequence will be consistently transmitted as pilot symbols, and this fact may be exploited to reduce the complexity of channel estimates computation according to algorithms Such as those listed in Eqns. 16 and 17.
[0070] Pilot sequences with constant magnitude spectrum, i.e.,
|S_(pilot)(e^(jw))|^(2)=K,
[0071] are desirable, because this condition reduces noise emphasis (within certain frequency bands) in the estimation process. Examples of sequences having constant magnitude spectrum properties (or, equivalently, perfect circular autocorrelation properties) may be found, for example, within a trio of references including: Phase Shift Codes with Good Periodic Correlation Properties by R. L Frank and S. A. Zadoff, IRE Trans. Information Theory, October, 1962, pp. 381-382; Polyphase Codes with Good Periodic Correlation Properties by D. C. Chu, IEEE Trans. Information Theory, July, 1972, pp. 531-532; and Periodic Sequences With Optimal Properties for Channel Estimation and Fast Start-up Equalization by A. Milewski, IBM J. Res. And Development, September 1983, pp. 426-431. Each of these references is hereby incorporated herein in its entirety.
[0072] For embodiments that use such constant magnitude pilot sequences, the MMSE channel estimation step in Eqn. 16 may be reduced to

[0073]which does not rely on estimates of the transmitted signals, but instead relies upon the known pilot sequence, the frequency domain representations of the received blocks of the block pair, and a (normalized reciprocal) SNR measured for the receiver. 」(5ページ左欄?6ページ左欄)
([当審仮訳]:
チャネル推定
[0064] 送信されたシーケンスの推定は複数の段階でのチャネル推定に依存する可能性があるので,もちろん,良好なチャネル推定を得ることは非常に有用である。式1の操作により,周波数領域のチャネル特性は,式15のように表すことができる。
(式15は省略)
[0065] これは,チャネル推定を得るために受信機信号処理設備によって実行され得る計算につながる。当該チャネル推定は,式16の周波数領域MMSE推定
(式16は省略)
[0066] 及び式17のゼロフォーシング推定を含む。
(式17は省略)
[0067] 式16及び17のチャネル推定は,任意のシンボルデータ系列{s _(0)[n]}及び{s _(1)[n]}に基づいている。残念なことに,任意のシンボルデータシーケンスは,一般に,それ自体が推定されなければならず,したがって,不正確さを混合する。チャネル応答の推定をさらに導き出すために,そのような推定に専ら依存することを避けることは有用である。
[0068] プリアンブルとパイロットワード
[0069] チャネル推定プロセスは,既知のシンボルシーケンスが識別可能な時間に送信される場合,受信シンボル推定値に依存しない。これらの既知のシーケンスは一般に「パイロットシンボル」と呼ばれることがあるが,このようなシーケンスはプリアンブルまたは他の形態でも現れることが理解されるべきである。多くの場合,同一のシーケンスがパイロットシンボルとして一貫して送信され,この事実を利用して式16及び式17に記されるアルゴリズムに従ったチャネル推定計算の複雑さを軽減することができる。
[0070] 一定の大きさのスペクトラムを有するパイロット系列,すなわち,
|S_(pilot)(e^(jw))|^(2)=K,
[0071] が,この状態は推定処理において(ある周波数バンド内の)ノイズ強調を減じるので,望ましい。一定の大きさのスペクトラム特性(又は,同等に,「完全な」円形の自己相関特性)を有する系列の例は,例えば,以下の3つ文献(文献名は省略)に見ることができる。これらの参考文献の各々は,その全体が本明細書に組み込まれる。
[0072] このような一定の大きさのパイロットシーケンスを使用する実施形態では,式16のMMSEチャネル推定ステップは式18のように縮小することができる。
[0073] 式18は送信された信号の推定によらないが,その代わりに,既知のパイロットシーケンス,ブロック対の受信ブロックの周波数領域表現,および受信機について測定された(正規化された相互関係性)SNRに依存する。)


同じく原査定の拒絶の理由に引用された特表2003-536291号公報(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(9)「【0040】
図3には,1つのフレームの第1のOFDMシンボル内のパイロットの配置が示されている。この場合横軸方向の数字は,OFDMシンボルの種々異なる搬送波を表わしている。符号38は,チャネル推定のために設けられたパイロットを表わしている。符号39は,本発明により第1のシンボルに加算されたパイロットを表わしており,これらはパイロット対もしくはパイロットトリプルを形成するために加えられたものである。これらの付加的なパイロットは,ここではチャネル推定の改善のためにも利用される。これはコヒーレントな復調に必要とされる。
【0041】
パイロット対の配置構成は最初は任意に行われる。この場合は,パイロット対(それらに対してシーケンスが変調される)の数が多ければ多いほど良好なフレーム同期化につながる。これらのパイロットの間には有効情報が存在し,それらはフレーム同期化に利用される第1のシンボル内においても伝送される。非常に良好な相関特性を有する様々な既知のシーケンス(例えばCAZACシーケンス,Milewski-シーケンス,Frank-シーケンス,Lemple-シーケンス,差分量シーケンス“Differenzmengenfolgen”,平方剰余シーケンスなど)毎に異なるメリット係数Λが算出される。その場合,位相状態の少ない10,14及び18のシーケンス長のシーケンスに対しては良好なメリット係数は算出できない。いずれにせよ16のパイロット対を有するシーケンス,Frank-シーケンスは,特に高いメリット係数を有し,それ故に特に堅固である。この場合は4つの位相状態,すなわちQPSKが用いられている。 」(14ページ)

上記(4)?(6),(8)の[0070],[0071],(9)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると,「パイロットシンボルをCAZAC系列(Chu系列,Frank-Zadoff系列等)などの多相系列(Polyphase Codes)から形成すること。」は周知であると認められる(以下,「周知技術1」という。)。

また,パイロットシンボルを用いてチャネル推定を取得することは受信装置で通常行われている事項であるところ,上記(7),(8)の[0064]?[0069],[0072],[0073]の記載からも明らかなように,「周波数応答推定を引き出してチャネル推定を取得すること。」は周知であると認められる(以下,「周知技術2」という。)。


4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
(1)本願明細書の【0113】によれば,本願発明の「装置」は,フォワードリンクにおける無線デバイス,リバースリンクにおける基地局を含むものと認められる。したがって,引用発明の「ノードB」は,本願発明の「装置」に対応する装置といえる。
本願明細書の【0003】によれば,本願発明の「サブバンド」と引用発明の「サブキャリア」は同義である。
本願発明の「巡回語頭」と引用発明の「サイクリックプリフィクス」,本願発明の「シングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)シンボル」と引用発明の「シングルキャリアベースのFDMA(周波数分割多重アクセス)の信号」は,それぞれ表記が異なるのみであって差異は無い。
引用例は,3GPPの寄書であり,LTEに対する提案であるところ,LTEでは送信する情報を変調(QPSK,QAM等)して変調シンボルを形成することは技術常識である。してみると,引用例のデータストリーム等は変調されていると解するのが自然であるから,引用発明の「パイロット」を「パイロットシンボル」と称することは任意である。
引用発明の「復調のための手段」を「復調器」と称することは任意である。
したがって,本願発明と引用発明とは,下記の相違点1は別として,「パイロット送信に使用される選択された組の周波数サブバンドに関するパイロット用のシンボルと,巡回語頭とを具備する,シングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)シンボルを受信して,前記受信されたSC-FDMAシンボルを処理して受信されたパイロットシンボルを取得するように動作可能な復調器」を具備する点で共通する。

(2)引用発明の「IFFT」は周波数ドメインから時間ドメインに変換するものであるから,引用発明の「前記シングルキャリアベースのFDMAの信号は,前記パイロットを前記選択された組のサブキャリアにマッピングし,マッピングされたパイロットをIFFTすることによって生成される」は,下記の相違点1は別として,本願発明の「前記SC-FDMAシンボルは」,「パイロットシンボルを前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換することによって生成される」に相当する。

(3)本願発明の「通信チャネルに対するチャネル推定を取得するために,前記受信されたパイロットシンボルを処理するように動作するプロセッサ」と,引用発明の「アップリンクチャネル品質を測定する手段」とは,以下の相違点2は別して,「チャネルについての情報を取得する手段」である点で共通する。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「パイロット送信に使用される選択された組の周波数サブバンドに関するパイロット用のシンボルと,巡回語頭とを具備する,シングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)シンボルを受信して,前記受信されたSC-FDMAシンボルを処理して受信されたパイロットシンボルを取得するように動作可能な復調器と,前記SC-FDMAシンボルは,前記パイロットシンボルを前記選択された組の周波数サブバンドにマッピングし,マッピングされた系列のパイロットシンボルを周波数ドメインから時間ドメインに変換することによって生成される,
チャネルについての情報を取得する手段と,
を具備する,装置。」

(相違点1)
一致点の「パイロット用のシンボル」に関し,本願発明は「多相系列」であり,これに伴い,一致点の「パイロットシンボル」が「前記多相系列に基づいて形成された第1の系列のパイロットシンボル」であるのに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点2)
一致点の「チャネルについての情報を取得する手段」について,本願発明は,「通信チャネルに対するチャネル推定を取得するために,前記受信されたパイロットシンボルを処理するように動作するプロセッサ」であり,「前記プロセッサは,前記受信されたパイロットシンボルに基づいて,前記通信チャネルのための周波数応答推定を引き出すように動作する」ものであるのに対し,引用発明は「アップリンクチャネル品質を測定する手段」である点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
周知技術1のとおり,「パイロットシンボルをCAZAC系列(Chu系列,Frank-Zadoff系列等)などの多相系列(Polyphase Codes)から形成すること。」は周知であるから,引用発明の「パイロット」を「前記多相系列に基づいて形成された第1の系列のパイロットシンボル」とすることは格別困難なことではなく,当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
通信のための種々の手段をプロセッサにより構成することは常套手段であり,パイロットシンボルを用いてチャネル推定を取得することは受信装置で通常行われている事項であるところ,周知技術2のとおり,「周波数応答推定を引き出してチャネル推定を取得すること。」は周知であるから,引用発明において,「前記受信されたパイロットシンボルに基づいて,前記通信チャネルのための周波数応答推定を引き出すように動作する」「通信チャネルに対するチャネル推定を取得するために,前記受信されたパイロットシンボルを処理するように動作するプロセッサ」を備えるようにすることは,当業者が容易になし得ることである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。


5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-01 
結審通知日 2017-06-06 
審決日 2017-06-23 
出願番号 特願2014-7132(P2014-7132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 57- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽岡 さやか  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
菅原 道晴
発明の名称 周波数分割多重化を利用する通信システムのパイロット送信およびチャネル推定  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  

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